雨上がりの午後
Chapter 145 二人に掛かる橋
written by Moonstone
マスターに連れられて店に戻った俺と晶子は、潤子さんに真新しい携帯を見せた。しげしげと観察された後、指輪と同じね、と言われた。
指輪の材質は銀だから−晶子には言ってないが−そのとおりだ。
その後、晶子が、ファミリープランを契約したこと、そのサービスが入籍していなくても後日入籍したことを証明すればOKというサービスだと嬉しそうに言った。
指輪をプレゼントした時と同じだ。
その後晶子と共に帰宅した俺は、晶子手製の昼食を食べた後、レポートを出来るところまで仕上げてから揃って携帯弄(いじ)りを始めた。
レポートをしている間に携帯を充電しておいたし、晶子には先に説明書を読んでもらっておいた。
「まずはメールアドレスを変えましょうよ。初期設定のだと何だかつまらないですし。」
「そうだな。」
携帯の初期メールアドレスは英数字の羅列だ。
説明書の該当部分を見たところ、悪戯メールや迷惑メールを防ぐために英数字を織り交ぜた長いものが良いそうだ。
変えてみようとは言うものの、適当な文字列が思い浮かばない。どうしたものかな・・・。
自分の名前が真っ先に浮かぶが、説明書の忠告から逸脱する。どうせなら分かりやすくて晶子と共通するものが良いんだが・・・。
「晶子。何か思いつくか?」
「そうですね・・・。こんなのなんてどうですか?」
晶子は俺の電話の横に置いてあるメモ帳−使った例(ためし)がないが−に文字列を2つ書く。
・・・なるほど。これなら俺と晶子に共通するものを含んでいるし、無味乾燥なものでもないし、英数字を織り交ぜた長い文字列という条件も満たしている。
「良いな。これにしよう。」
「はい。」
俺と晶子は携帯を操作してメールアドレスを変更する。
それにしても・・・入力が面倒だな。PCとかのキーボードならローマ字入力にしろ仮名入力にしろ、文字列をタタタ・・・と入力してスペースキーを何度か押せば
良いんだが、携帯だと一つの文字を入力するのも結構手間がかかる。まあ、PCのキーボードよりキーの数が格段に少ないから仕方ないか。
入力を終えて、俺と晶子はメモ帳に書かれた文字列と照らし合わせる。間違いはない。これで設定をすれば・・・。良し、これでOKだ。
でも、これで本当に良いんだろうか?液晶画面には「メールアドレスを変更しました」という表示が出ているから変更されたんだろうが、何となく信用出来ない。
「試しに俺から晶子にメールを送るよ。」
「あ、はい。」
俺はメニューから「新規メール作成」を選んで、まず送信者を選択する。とは言っても、これが最初だから一から晶子のメールアドレスを入力しないといけない。
メモ帳の文字列と比較しながらボタンを操作する。変更したメールアドレスは気に入ってるが、入力はやっぱり面倒だ。
どうにか入力を終えてメモ帳の文字列を比較して確認してから、題名を選択する。「テスト」じゃ味気ないからこうするか。何度かボタンを押して題名を入力する。
携帯のサービスが入籍した、或いは入籍予定のカップルが使えるものだし、大学でも二人揃って結婚していることを公言したし、携帯でのやり取りが
主に晶子との間のものになることを考えると、最も適切なものだと思う。
次は内容。これも「テスト」じゃ味も素っ気もないし、晶子への初めてのメールだから、それなりのものにしたい。
考えつつ、時に後戻りしながら入力していく。そしてようやく入力完了。
第三者から見れば馬鹿げたものかもしれないが、その第三者に見せるものじゃないから構わない。そして「送信」を選択して十字キーの中央を押す。
「送信しますか?」という確認メッセージが出るが、迷わず「はい」を選択。すると液晶画面にメールが送られていくようなアニメーションが表示され、
その後に「メールを送信しました」というメッセージが表示される。その直後、晶子の携帯から効果音が流れる。携帯を操作した晶子の表情に喜びが浮かぶ。
「メール、届きましたよ。差出人はこれで良いですよね?」
晶子は俺に携帯の液晶画面を見せる。そこには題名と差出人の署名「安藤祐司(Yuhji Andoh)」が縦に並んで表示されている。署名はメールアドレス変更の時に
併せて変更したものだ−初期設定では空白だった−。題名も俺が入力したものだし、俺からのメールに間違いない。
「ああ、間違いないよ。」
「それじゃ、読ませてもらいますね。」
晶子は携帯を操作して液晶画面に見入る。その表情に嬉しさと幸せが同時に浮かんで来る。どうやら喜んでもらえたらしい。
我ながらちょっと気取った文章だと思うが、晶子に喜んでもらえたならそれで良い。
「返信しますね。」
「ああ。」
晶子は携帯を操作し始める。何度かボタンを押す動作はややぎこちないし−PCで日記を書く時のキータイプはかなり早い−表情もちょっと硬いが、
真剣さの表れと思う。
ゆっくりと時間が流れた後、晶子の指の動きが止まる。入力内容を確かめているんだろう。
そしてボタンを押す。程なく俺の携帯から晶子と同じ効果音が流れる。
液晶画面を見ると「メールを受信しました」というメッセージが出ている。
ボタンを操作して「受信箱」を見ると、題名と差出人の署名「井上晶子(Masako Inoue)」が縦に並んで表示されている。題名は・・・照れくさくもあるし嬉しくもある。
「届いたよ。晶子からのメール。」
俺は晶子に携帯の液晶画面を見せる。晶子は表情を綻ばせる。
「私からのメールですね。」
「読ませてもらうよ。」
俺は携帯を操作してメールの内容を見る。・・・これまた照れくさくもあるし嬉しくもあるものだ。
文字数という観点からすれば短いものだが、晶子の気持ちが綴られているというだけで満足だ。表情が緩んでいるのを感じる。
「どうですか?」
「嬉しいよ。ありがとう。」
「こちらこそ。」
晶子は嬉しそうに微笑む。電車の中や講義中でも携帯を操作している奴等の気持ちが何となく分かったような気がする。
その度毎に相手のところへ向かわなくても、或いは電話を探さなくてもやり取り出来るんだから便利だし、相手との繋がりが深く強いほど楽しいものだろう。
もっとも、顔が見えない分だけ言葉を選ばないといけないことくらいは察しがつく。
「祐司さん。着信音も変えませんか?」
「そうだな。えっと・・・、どうやって変えるんだっけ?」
俺が説明書を捲り始めて間もなく、右腕に晶子の手が重ねられる。
「最初から色々入ってますけど、そうじゃないものが良いです。」
「となると、着信メロディとかを配布している携帯サイトにアクセスしないといけないな。」
「それだと、何処かで誰かが使っているかもしれないじゃないですか。折角ですから、祐司さんと私だけのものが良いです。」
「・・・俺がアレンジした曲にしたい、ってこと?」
俺の確認の問いかけに、晶子は微笑みながら頷く。
確かに携帯サイトで配布されている着信メロディとかは有名どころか殆どだろうし、有名どころということは誰かが使っている可能性を全否定出来ない。
自分のだ、と思って携帯を取り出したら別人のものだった、という笑い話にもなりそうにないことも考えられる。
俺と晶子の新しいコミュニケーションの道具として買ったんだから、俺と晶子しか使ってないものが良いには違いない。
だけど、着信メロディとかがデフォルトで幾つかあって、携帯サイトで配布されているということは、入力がそれだけ大変だということの裏返しとも考えられる。
店での説明では確か同時発音数は64音とか言ってた。店で演奏する曲のデータをシーケンサで作っている経験からすると、演奏時間は短くても
データを作る時間はその何倍、何十倍にもなる。
ベロシティ(註:発音時の強さ)が違うだけの鍵盤楽器や打楽器でも、違和感なく聞こえるようにするためには−いかにも打ち込みました、という
単調なものでないという意味だ−細々と調整するし、音程や音量が発音中でも微妙に変化する管楽器や弦楽器はもの凄く大変だ。
それを考えるとどうしても尻込みしてしまう。
「今直ぐデータを作って晶子の携帯に転送、ってわけにはいかないぞ。」
「それは分かってます。説明書では使う楽器毎に一音一音入力する、とありましたし。」
「じゃあ、暇を見て作っておくよ。曲は何が良い?」
「えっと・・・。電話のコール音は『Fly me to the moon』で、メール着信音は『明日へ架ける橋』が良いです。」
両方共俺も晶子も好きな曲だ。「Fly me to the moon」は俺がアレンジしたギターソロバージョンと晶子のヴォーカルバージョンがある−演奏はギターのみだ−
店の定番曲の一つだし、「明日へ掛ける橋」は最近投入したばかりにも関わらず、晶子個人のそれを差し引いても人気が高い。
それに歌詞が勇気を与える感じだし、離れたところに居る相手と繋ぐ「橋」という意味にも重なる。
「『Fly me to the moon』はどのバージョンにする?」
「ギターバージョンが良いです。」
「コール音にしてはちょっと大人し過ぎないか?」
「コール音で驚きたくないですから。」
晶子の言うことには一理ある。電車の中や生協の食堂で賑やかな曲が突然鳴り響いてびっくりして音の方を見たら携帯を使っている奴が居た、ってことは
何度か経験がある。気付きやすいという点では賑やかな方が良いんだろうが、あ、電話だ、とコール音でふと和めることを望んでいるんだろう。
「それじゃ曲は晶子の提案どおりにするとして、どの辺から鳴らす?」
「『Fly me to the moon』は歌が入るところからで、『明日へ掛ける橋』はイントロ部分が良いです。」
「分かった。そうするよ。」
これまた嬉しそうに微笑む晶子に笑みを返してから、俺は携帯の取扱説明書を捲る。
いざ小型のシンセサイザーとも言えるものを手にしたは良いが、電話とメールの送受信以外は殆ど未知の領域だ。
店で見本を触ったが、主目的の電話をかけることとメールの機能に辿り着くこと以外は、こんな機能があるのか、という程度しか覚えていなかったりする。
その上、説明書は大学の講義で使うテキスト並み、或いはそれ以上に分厚い。
これだけの厚みになるということは機能が豊富か、説明に無駄が多いかのどちらかだろう。
新機種を買った、とかいう話を小耳に挟んだことがあるが、店で説明を聞いただけでも電話とメールに加えて赤外線通信機能やらカメラ機能やらがあるというから、
機能を使いこなさないうちに買い換えるんだろうか。俺からすると勿体無い話だが。
着信メロディの自作に関する説明を見つけて早読みしていく。・・・やっぱり1音1音入力していくしかないようだ。
鍵盤があればとりあえず、印刷されたものでも手書きでも良いからテンポを落としてでも楽譜どおりに弾いて後から調整する、という手段が使えるから
俺もデータ作りではそうしているが、この小さな筐体にMIDI端子を付けるなんてどだい無理な話だ。
もう少し念入りに読んでみる。音域はちょっと狭い感じがする。
音色は結構あるが、見たところGeneral MIDI(註:メーカーが違っても音色が共通するMIDIの規格。音楽部門2グループで公開中の曲がこれに対応している)には
対応してないようだ。これだと俺が作ったデータを活用出来ないな。
まあ此処、すなわち俺の家にはインターネットの環境がないし、大学ではホームページは見られても作ることは今のところ出来ない。
大学全体や学部単位、研究室単位のホームページがあるから、研究室に正式配属されたら多少は関与出来るかもしれないが、個人用のページが作れるかどうかは
確認してないから分からないし、作る時間的余裕があるかどうか疑問だ。
メールで送るという手段は・・・無理だ。ウィルスの問題とかで、添付ファイルは送信した時点で削除されることになっているからな。
それにGeneral MIDIに対応してないんじゃ、俺の家で作ったデータをディスクにコピーして大学へ持って行って、メールで俺と晶子の携帯に転送しても無意味だ。
仕方ない。ちょこちょこ作っていくか。
「データを作るのは・・・ちょっと手間取りそうだな・・・。」
「お店で使うような、しっかりしたデータじゃなくて良いですよ。この曲が鳴ったら祐司さんからのものか、私からのものかが分かれば十分ですから。」
「『Fly me to the moon』はアレンジしたものだから、そのままでも俺と晶子だけのものって分かるけど、『明日へ掛ける橋』は携帯サイトから持って来て
イントロ部分だけ切り取っておしまい、っていう手段がある。でもそれだと、晶子が言った、俺と晶子だけのもの、っていう条件から外れるな・・・。」
「確かにそうですね・・・。!あ。」
うんと考え込んだと思ったら、表情が一気に明るくして手を叩く。何か閃いたらしい。
「『Fly me to the moon』がギターバージョンですから、『明日へ掛ける橋』もギターバージョンにすれば良いんじゃないですか?・・・って、駄目ですね。
それは。祐司さんの手間を増やしてしまうことになりますから。」
明るくしかもかなり早い口調で思いついたことを喋っていた晶子の表情が、口調と共に今度は一気に重くなる。
『明日へ掛ける橋』は他のヴォーカル曲と同じように晶子が歌うようにデータをデータを作ってあるから、『Fly me to the moon』と揃えるべく
ギターバージョンにしたいなら当然アレンジが必要だ。
「名案」を思いついたは良いものの、提案の途中で重大なことに気付いたという気持ちなんだろう。
「『明日へ掛ける橋』は携帯サイトからダウンロードして、祐司さんがイントロを切り出してください。それで良いです。」
「・・・否、それだと俺と晶子だけのものにならない。自分で作る。」
晶子はまさか、と言うように目を見開いている。
「全部となるとかなり手間がかかるが、イントロだけならさほどでもない。それにあの曲のイントロは一つのフレーズを少し変形して並べたような感じだし、
晶子用のデータを作った時もそれを利用した。何とかする。」
「祐司さん・・・。」
「何時もみたいに完成するまで出さない、となると予め入ってる音を使う時間が長くなるから、最初はベタ打ち(註:ベロシティや発音時間などを音符の
種類毎に一定にしてデータを作ること。演劇でいうところの棒読み)でオルゴールみたいな状態にして渡す。それからちょっとずつ調整していって
バージョンアップしていけば良いと思うけど、どうだ?」
俺の提案に晶子は嬉しそうな微笑みを浮かべて頷く。
「それまでは最初から入ってるものを使うしかないけど、初期設定のままで良いか?」
「はい。他の人とやり取りするために買ったんじゃありませんから。」
「じゃあ、携帯に関しては一先ずこれで由、と。」
俺は携帯を折り畳む。俺と晶子だけが使える着信メロディのためにアレンジという手間が加わったが、それくらいは許容範囲だ。
今まで良くない印象を持っていた携帯だが、実際持ってみると楽しいもんだ。晶子とお揃いという特別な意味もあるからなんだろうけど。
ピリリリリ、ピリリリリ、ピリリリリ。
・・・ん?何だ?この音・・・。かなり俺の目覚ましってこんな音だったっけ・・・?
眠気に逆らいながら目を開けて音の方を見ると、銀色の物体が音を鳴らしている。
携帯・・・!そうだ。晶子が俺のためにモーニングコールするって約束したんだった。俺は携帯を手に取って広げ、フックオフのボタンを押して耳に当てる。
「はい。祐司です。」
「おはようございます。祐司さん。晶子です。」
「おはよう。携帯の音で目を覚ましたよ。」
「これから朝御飯を食べてそっちに向かいますから、祐司さんも仕度を済ませておいてくださいね。」
「ああ、分かった。それじゃ、また後で。」
「はい。」
俺はフックオンのボタンを押して携帯を切り、上体を起こす。
今日は月曜。2コマめから始まるから今まではそれに間に合うまで寝ていたんだが、今日からは月曜から金曜まで同じ時間に起きて晶子と一緒に大学に行くことになる。
理由はただ一つ。あの女王様の逆恨みから晶子を守るためだ。
守るといっても行き帰りを一緒にするくらいなんだが、それだけでも結構違うだろう。
平均からすればやや小柄な方の俺だが、腕っ節には多少自信がある。相手が格闘技を齧っていたりしなければ、2、3人くらいは相手出来るつもりだ。
さて、朝飯食って着替えるか・・・。
折角起こしてもらったのにいざ迎えに来られた時にはまだ準備出来てない、なんていうのはみっともないどころか、晶子に迷惑をかける。
俺はベッドから出て冷蔵庫へ向かう。ドアを開けて食パンとジャムを取り出し、食パンをトースターに入れてタイマーをセットして、焼きあがるまでの間に
片手鍋にコップ1杯分の水を入れてコンロにかける。いちいちポットを使うより、この方が効率的だと最近発見した。
鍋に入れた水の縁が満遍なく泡を立ててきた頃、オーブンが甲高い音を鳴らす。
俺はコンロの火を切ってインスタントコーヒーを入れておいたコップに湯を注いで掻き混ぜて先にテーブルに持っていき、オーブンから狐色になったパンを
取り出してバターナイフを乗せておいた皿に乗せて運ぶ。
食パンにジャムを塗って齧り、時々コーヒーを啜る。何時もの朝食だ。
まだちょっと眠いが1コマ分の余裕が出来るから、その間身体を休めておけば良いだろう。
静かな部屋で淡々と食事を済ませ、さっさと食器を洗って洗い桶に放り込み、歯を磨いて顔を洗って着替える。
外見の準備が出来た後、持ち物を確認する。鞄には筆記用具にノート、今日提出するレポート、実験のテキストが入っている。OKだ。
あ、そうそう。今日から新しく「仲間」が加わるんだった。枕元に置いてあった携帯をシャツの胸ポケットに入れる。
身繕いをした後−と言っても大層なものじゃないが−、腕時計を見る。
適当に食べて適当に服を着る俺には十分待ち合わせの時間に余裕があるが、晶子は慌しいだろう。
此処は大通りより少し奥に入ったところにあるから、その手間くらい省いても罰は当たるまい。
俺は財布をズボンのポケットに入れて鍵を持って部屋を出る。ドアに鍵をかけてから鍵を鞄のポケットに放り込んで大通りに向かう。
今日も湿気が少なくて爽やかで、長袖シャツにブレザーという服装だとちょっと肌寒く感じるくらいだ。人通りのない道路を歩き、大通りに出る。
車が結構な頻度で駅の方へ向かっている。丁度通勤時間帯だからな。
「祐司さん。」
呼び声が聞こえる。声の方を向くと、晶子が間近に迫っていた。
俺は晶子が来るまでにはまだ時間があるだろうと思ってぼんやり車が行き来するのを眺めていたから、声がかかるまでまったく気付かなかった。
薄いピンクのブラウスに茶色のベストとフレアスカート、そして白いカーディガンを羽織った晶子が駆け寄って来る。
「おはよう。」
「おはようございます。待たせて御免なさい。」
「否、俺は朝飯も着替えも適当だから早く済んだだけだよ。それより、モーニングコール、ありがとう。助かったよ。」
「約束ですからね。」
「それじゃ、行こうか。」
「はい。」
俺と晶子は並んで歩き始める。車が頻繁に大通りを行き来するが、時間的には十分余裕がある。
1コマ目の講義に余裕で間に合う時間の電車に乗れる時間だ。
この町に来て大学に通い始めた頃はこの時間帯だったんだが、1ヶ月持たずに時間ギリギリまで寝る道に変更した。
「今日の実験はどんな感じですか?」
「今回も重電関係だからな・・・。前ほどではないにしてもかなり時間がかかると思う。」
「大変ですね。」
「実験は俺が居る工学関係の学科じゃ避けて通れないものだし、それより、俺の実験が終わるまで待ってられるか?」
「それなら大丈夫です。約束した場所で待ってますから。」
晶子は笑顔で応える。「約束した場所」というのは、大学にある図書館。
そこは通常の利用可能時間外でもカードがあれば24時間入れるし、普通の店のように何も買わずに居ても怪しまれるようなことはない。
それに、大学構内ということが予め分かっているだけでも安心感が随分違う。
「腹減らないか?あそこは飲食物持込は一切禁止だけど。」
「私のことは心配しなくて良いですよ。祐司さんは実験を終わらせることだけ考えてくださいね。夕食はきちんと用意しますから。」
「ありがとう。」
「いえ。」
晶子は微笑みを返す。俺の表情も自然と緩むのが分かる。
きっかけは馬鹿みたいなことだが、晶子と一緒に大学と行き帰りを同じく出来るようになったのは素直に嬉しい。それに、何時でも連絡を取れる手段も加わったし。
駅が見えてきた。通勤・通学ラッシュの時間帯に入るこの時間、駅前は賑わう。
何時もはそれこそ「何時もの光景」としか思えない、或いはそう思う暇もない光景だが、何となくそんな光景が平和なものに感じる。
こういうのは心に余裕があるからこそそう思えるんだろうな。
「あ、祐司!随分早いじゃないか。」
実験室でぼんやりしていた俺に声がかかる。智一が妙に嬉しそうな表情で駆け寄って来る。
この様子だと、レポートが出来なかったから俺が何時来るかどうかと悩んで−俺からしてみれば悩みのうちに入らないが−いたところに俺が居たことが嬉しいんだろう。
「レポートは出来てないと見た。」
「う・・・。」
「写すなら写せ。今クローン2体が培養真っ最中だ。」
俺は背後を左手の親指で肩越しに指差す。後ろでは役立たずを現実にした二人がせっせとクローン培養をしている。
こいつらも俺が朝早く来たことに驚いたクチだ。内心喜んでいたことくらいは分かる。
智一は鞄を放り出すと、クローン培養に加わる。この調子だと今日も終了がずれ込みそうだな・・・。
まあ、毎度のことと言ってしまえばそれまでだが。俺は小さく溜息を吐いて腕時計を見る。1コマめが始まった頃だ。
この間に晶子に今日も遅くなりそうだ、ってメールを送っておくか。勿論、普段は二人揃ってマナーモードにしている。
大学で音を鳴らすのは昼休みや空き時間くらいだ。携帯を持つ者としてその辺の分別はしないといけない。
俺はシャツの胸ポケットから携帯を取り出して広げる。
メール関連のメニューで「新規メール作成」を選択する。宛先は「アドレス帳から選択する」を選んで、そこに1件だけ登録されている名前−所定の操作をすると
メールアドレスの編集が出来る−を選択してボタンを押す。
次は題名。・・・何てしようかな。「今日の予想」なんて素っ気無いし、ギャンブルみたいな感じもする。かと言って適当なものが思い浮かばない。
・・・ここで時間を食ってても仕方ない。「今日の実験終了の見通し」と入力する。本当に業務連絡だな。
次は本文。そのまま現状を書いておしまい、ってのも何だかつまらない気がする。
・・・考え考え、3歩進んで2歩下がる、を繰り返して入力を終える。
こんな感じで良いだろう。「プレビュー」を選択して入力した内容を表示する。
送信元:安藤祐司(Yuhji Andoh)
題名:今日の実験終了の見通し
こちらは今、実験前でのんびりしている。後ろではグループのメンバーがせっせとレポートのクローンを作っている。それは兎も角、今朝駅へ行く時に話したと思うけど、やっぱり今日の実験は長引きそうだ。頃合を見てまた連絡する。また後で。
|
やっぱり素っ気無いかな・・・。どうも良い文章ってのが思いつかない。この辺は文章力のなさということを晶子に理解してもらうしかないな。
俺はメールを送信する。液晶画面にメールが送られていくアニメーションが表示されて少ししてから「メールを送信しました」というメッセージが表示される。
どんな返事が返ってくるかな・・・。
実験の最中。とは言っても智一は俺の指示がないと動かないし、後2人の姿は見えない。ったく懲りない奴らだ。
奴らは1時間程度説教されてレポートを写せばそれで良い、と思ってるんだろうが、必死こいて実験を進めて設問に答えた挙句に奴らと一緒に説教を食らう
俺の身にもなって欲しい。ま、それが出来るくらいなら毎度毎度同じことを繰り返したりはしないか。
どうにかひと段落ついた。まだ始まったばかりだが、進んだことには違いない。
データを取る役割をさせていた智一のノートを覗き込む。・・・うん、しっかり取ってあるな。これくらい出来てもらわないと困るんだが。
「データはきっちり取ったぞ。」
「取れてなかったらお前と残り2人にさせるだけだ。」
「あう・・・。ま、この辺で一休みしようぜ?どうせもうすぐ昼休みだし。」
「次は確か・・・。」
俺は机の上に広げておいてあるテキストを見る。
流れからすると、一旦次の実験を始めるとかなり時間がかかりそうだ。
時間は・・・11時半過ぎ。昼飯にはちょっと早い気がするが、区切りと続く実験の流れを考えると、ここで昼休みにした方が良さそうだ。
「昼飯にするか。」
「そうしましょ、そうしましょ。」
智一はノートとシャーペンを放り出すと、軽い足取りで出入り口へ向かう。調子良いな・・・。
実験の時は昼休みはこの時間内でないといけない、ということはないし、1時間とかいう明確な区切りもない。極論を言えば、何時休んでも構わない。
ただし、実験を終わらせて担当教官のOKを貰わないと終了とならないから、自己管理が要求される。
実験室がある建物を出て大通りを通って生協の食堂に入る。時間が早いせいでまだゆとりがある。
昼休み恒例の光景である行列は、まだ行列と言うレベルじゃない。
何時もの要領で定食の食券を買ってトレイを持ち、そこに食券と箸とコップを置いて流れ作業的にメニューを受け取ると、コップに茶を汲んで空いている
手近な席に座る。智一が少し遅れてその向かいに座る。
智一が食べ始める。俺は箸を取ってチラッとシャツのポケットを見る。そこに入っている携帯は未だ微動だにしない。
メールは送ったが、まだ見てないんだろうか?メールをやり取り出来るようになると、こういう不安を伴うわけか。携帯だからといって万能じゃないわけか。
当たり前と言えばそうだろうが。
待っていても仕方ないからとりあえず食事を始める。
晶子には晶子の事情があるだろうし、返事がないからとっとと送れ、なんて文学部に乗り込んだら晶子に大恥をかかせるばかりか、メールを送った意味がない。
思えば「待つ」と言えば、俺と晶子では俺が晶子を待たせる方が圧倒的に多い。それを考えれば、今度は俺が待つ番と思うべきだろう。
「どうした?祐司。」
智一の声がかかる。見ると、智一は齧った魚の天ぷらを皿に置いている。
「食べるのが早いお前らしくないな。どうかしたのか?」
「否、別に。」
「そうか。」
智一は食事を再開する。別に隠すようなことじゃないんだろうが、俺が晶子とお揃いの携帯を買って晶子からのメールを待っている、なんて智一には言い辛い。
結婚を公言したんだから何を今更、という気がしないでもないが、俺からすれば明らかに女好きの類に入る智一が絞り込んだ「標的」を掠め取った、という
前歴があるから、ちょっと言い辛いものがある。
食事半ばにして、胸に振動が伝わる。
振動の元を見ると、シャツの胸ポケットに入っている銀色の物体が緑色の光を発しながら小刻みに震動しているが見える。
俺はポケットから携帯を取り出して見る。振動が止まった携帯の液晶画面に「着信1件あり」と表示されている。晶子からだ。
そう思った俺は迷わず携帯を広げてメール関連のメニューから「受信メール一覧」を選択して開ける。
一覧には「井上晶子(Masako Inoue)」という署名のメールが1件だけある。
1件だけだが、それは俺が待ち望んでいたメール。俺はそれを開ける。
送信元:井上晶子(Masako Inoue)
題名:お疲れ様
メールありがとうございます。私は今、文系学部エリアの生協の食堂に居ます。本当は1コマめが終わった後に返事をするつもりだったんですけど、携帯を同じゼミの娘(こ)に見られて、それって旦那とお揃いなの、とか言われてそれの応対に精一杯で(実は今も同じゼミの娘に囲まれています)今までずれ込んでしまいました。遅くなるのは一向に構いませんから、祐司さんは実験を終わらせることだけ考えてくださいね。次は私からメールを送るかもしれません。勿論祐司さんからのメールも待ってます。それでは、また後で。
|
あ、同じゼミの奴に見られてその対応に追われてたのか。それじゃ遅くなっても無理ないよな。
晶子も携帯持つのは初めてだそうだし。何を言われているのか、と想像するとちょっと嬉しいような照れくさいような・・・。
高校時代、宮城に用があって先に帰った時に俺の下駄箱に残していった小さな手紙、メモのような手紙を見て感じた幸福感とよく似てる。
・・・否、今はもっと幸せだ。俺は小さいかもしれないが心温まる幸福感の余韻に浸りながら、携帯を畳んでシャツの胸ポケットに仕舞う。
「祐司。お前何時携帯買ったんだ?」
また智一が声をかけてくる。食べていて気付かないと思ったんだが。
「ついこの前まで生協の公衆電話に走ってたじゃねえか。」
「昨日買ったばかりだよ。」
「もしかして晶子ちゃんとお揃いか?」
「そのまさか、だ。」
智一はひゅう、と口笛を鳴らして肩を竦める。と思ったら目を輝かせて手を差し出す。
「どんな機種だよ。ちょっと見せてくれ。」
やっぱりそう来たか。まあ、別に断る理由もないから応じる。智一は携帯を開いてしげしげと観察する。
「シルバーか・・・。お前と晶子ちゃんの指輪と同じ色だな。これってPAC910ASだよな?」
「ああ。先月発売されたばかりの新機種だ、っていうし、他に選ぶ理由がなかったからそれにしたんだ。」
「ふーん。お前もとうとう携帯を持ったか。」
智一は俺に携帯を返す。携帯を受け取った俺はシャツの胸ポケットに仕舞う。
「さっきは晶子ちゃんからのメールを見てたってところか。」
「ああ。お前がレポートのクローンを培養している間に送ったんだ。」
「晶子ちゃんも携帯持ってなかったのか。まあ、お前がわざわざ公衆電話に走って電話してたくらいだから晶子ちゃんも持ってなかった、と考える方が
自然だけど、何でまた急に?」
「あの女王様対策だよ。」
智一は納得した様子で何度か首を縦に振る。
「あの様子だと何をしかけてくるか分からない。だけど大学の端末へ行き来したり、お前が実験とかで遅くなったりした時連絡を取るのが難しいから
携帯を持つことにした、ってところか。」
「ああ。」
「ま、きっかけは馬鹿みたいなことだけど丁度良かったんじゃないか?今時携帯持ってない奴を探す方が難しいくらいだし、お前と晶子ちゃんが電話なり
メールなりで何時でも連絡が取れるようになったんだから。」
「そう思ってる。」
「着メロとかどうしてるんだ?さっきは音を消してたみたいだけど。」
「今は最初から入ってたやつを使ってる。そのうち俺が作ったやつを晶子に渡すことにしてる。」
「何でまたそんな面倒なことを。その辺のサイトからダウンロードすりゃ一発じゃねえか。」
「俺と晶子の新しいコミュニケーション手段だから、互いに相手からのものだって直ぐ分かるようにしよう、って相談して決めたんだ。携帯サイトとかのものだと
誰かが使ってる可能性があるから、どうせならこの世で俺と晶子だけが持ってるものにしようと思ってな。」
「さながら、お前と晶子ちゃんの携帯は二人を結ぶ虹の橋、ってところか。」
俺は思わず吹き出しそうになって慌てて口を押さえる。そうしていても笑いがこみ上げてきて仕方がない。
「何笑ってんだよ。」
「・・・い、いや・・・、と、智一の口からそんな洒落た言葉が出てくるとは思わなくてさ・・・。」
「嘘や誤魔化しとアンニュイが似合わない不器用人間のお前と一緒にするな。・・・あ、そうだ。」
智一の口調が急変する。何かを思いついた様子だ。
「どうした?」
「晶子ちゃんの・・・」
「断る。」
晶子、という固有名詞が出た時点で智一の考えは分かった。
携帯の電話番号かメールアドレス、あわよくばその両方を手に入れるつもりなんだろう。そうは問屋が卸さない。
この携帯は俺と晶子が公衆電話を探さなくても連絡が取れるように、という目的で買ったものだ。俺のなら兎も角、俺しか知らない晶子の秘密を教えてなるものか。
「俺、まだ最後まで言ってないんだけど。」
「晶子の携帯の電話番号とメールアドレスを教えろ、って言いたいんだろ?」
「うっ、お主何故そこまで分かる?」
「お前の口から固有名詞が出た時点で分かった。生憎だが、俺と晶子が持ってる携帯はお前の言葉を借りれば、俺と晶子を結ぶ虹の橋。その橋を俺と晶子以外の奴に
渡す許可は与えない。まあ、これまでの実験での不始末を全部埋め合わせられるっていうなら検討しても良いけど。」
「その条件はキツイぞ、祐司。仮にそれが出来たとしても検討しても良い、ってことは、教えることの確証にはならないんだろ?」
「まあ、そういうことになるよな。」
「晶子ちゃんが同じゼミの娘(こ)に教えるんじゃないのか?メール交換しよう、とか言ってさ。」
「教えることはない。」
俺は即答する。晶子とは昨日、マスターと潤子さん以外には携帯の電話番号を教えない、メールアドレスは二人だけの秘密にする、と約束した。
俺はその約束を破るつもりは毛頭ないし、晶子も破らないと信じてる。
晶子からのメールで同じゼミの奴に囲まれてる、ってあったのが気がかりじゃないと言えば嘘になるが、時に思いもよらない頑固さを見せるから大丈夫だろう。
「本当に二人だけの連絡手段にする腹積もりって訳か。普通携帯持ったら、メール交換したり携帯サイト見たり、色々するんだけどなぁ。」
「遊びのために買ったんじゃないからな。」
「まあ、そういう使い方もありか。携帯はこう使わなきゃならない、なんて法律はないし。」
元々俺は学科での人付き合いが少ない。
講義が終わったらバイト、土日も夕方からバイト、っていう生活だからなかなか飲みに行ったりする時間がなかったのもあるし、まだ余裕があった1年の前半は
宮城と遠距離恋愛をやってたこともある。
日頃の付き合いはなくてもレポートや研究室のゼミとなると途端に人が群がってくるんだが。
そんな奴らに携帯の電話番号を教えたり、メール交換をしたりするつもりはない。
昼休みとか土日にレポートが出来ない、とか泣きつかれたら敵わない。
ついこの前も、PCでプログラムを組んで計算させないとやってられないレポートが出て、俺が夜中の3時までかかって仕上げたレポートを持っていると知るや
ハイエナみたいに群がってきた有様だ。
それに、メールアドレスを付き合いの薄い、或いはない奴に知られたくない。
メールと言えばあのことを思い出す。晶子が田畑助教授に交際を迫られて田畑助教授が処罰されるまでの過程で、とんでもないデマメールが流されたことだ。
教えた携帯のメールアドレスが悪用されないという保障はない。今回携帯を持つことになったことからも性悪説を取るのが無難だ。
「どうだ?メール貰ってみて。」
食事をしていたら、また智一が話し掛けてきた。・・・やっぱり・・・。
「嬉しい、な。来るまでちょっとじらされるけど。」
「そういうもんだ。俺、メル友居るんだけど、相手からメールが来ないと待ち遠しいし不安になったり。メル友だと相手から返事が来なくなって
自然消滅、ってこともある。」
「何の予告もなしでか?」
「ああ。メル友の段階じゃそんなの珍しくない。相手の顔どころか、本名も知らないってのが殆どだからな。差出人の署名にハンドルネーム、まあ、ペンネーム
みたいなものだけど、そういうのを使うのが普通だからな。かなり長くやり取りして、結構プライベートで突っ込んだ話が出来るようになって、
一度会ってみよう、って約束して会ってようやく本名が分かる、ってな具合だ。」
「仮面舞踏会だな。」
「そんなところはある。お互い匿名だから言いたいことが言えるって側面もあるし、ある日いきなり化けの皮が剥がれる、なんてこともありうるから、
それまでは素性を隠して腹の探り合いをする、って感じだな。」
「ふーん・・・。」
「お前と晶子ちゃんみたいに、相手の顔も名前も性格とかも知ってる関係なら話は別だ。それこそ電話機持ち歩いてて、この前みたいに『今から帰る』
『待ってますね』なんて会話するのと同じだ。・・・あ、そう言えば。」
「何だ。晶子に関する情報は一切教えないぞ。」
「今さっき気付いたけど、お前の携帯、ストラップ付いてないな。」
そう。俺と晶子の携帯にはストラップが付いてない。
携帯を買った後で潤子さんにも言われた。キーホルダーみたいなもんだし、こうやってシャツの胸ポケットに入れるから要らないと思ってる。
智一が箸を動かしていた手を止めて腰の方を見て何やらもぞもぞしたかと思ったら、携帯を見せる。
黒の携帯には、ペンダントか何かみたいな細い金属っぽい質感の細い紐の先にマスコットがぶら下がっている。
「携帯買った時にストラップも買えば良かったのに。」
「携帯を買ったときもストラップのことは全然頭になかった。今も要らないと思ってる。そんなのぶら下げてて邪魔にならないか?」
「これもファッションや趣味の一つだぜ?まあ、お前はファッションとかにはてんで興味がないからそう思うんだろうけど、折角携帯がお揃いなんだから
ストラップもお揃いのやつを買ったらどうだ?」
「考えておく。」
ストラップ、か・・・。徐に食事をしながら考えてみる。
今でこそ薄れたが、携帯に対するアレルギーと言うか拒絶反応と言うか、そういうものが完全に消えたわけじゃない。
今持っている携帯も、電話とメールが使えれば良い、という感覚だ。着メロは二人だけのものとする「証明」の一つとして使えるが、他の機能はなくても
良いと思っている。
俺は基本的に実用レベル以上のものを求めるタイプじゃない。
自分や他人を不快にさせるものじゃないという範囲内でだが、食事は食べられるものなら、服は着られるものならそれで良い。
金を使う時は使うが、それ以外は極端に見えるかもしれないほど財布の口を固く閉ざす。
だから、晶子とのコミュニケーション手段として買った携帯に、ストラップとかアクセサリーを付けたりするのは興味がないし、使う時にブラブラして
邪魔じゃないか、と思うくらいだ。・・・まあ、晶子とお揃いの品がもう一つ増えるっていうことは良いかな、とは思うが。
このホームページの著作権一切は作者、若しくは本ページの管理人に帰属します。
Copyright (C) Author,or Administrator of this page,all rights reserved.
|
Chapter 144へ戻る
-Back to Chapter 144- |
|
Chapter 146へ進む
-Go to Chapter 146- |
|
第3創作グループへ戻る
-Back to Novels Group 3- |
|
PAC Entrance Hallへ戻る
-Back to PAC Entrance Hall- |