雨上がりの午後

Chapter 98 デマとの闘いU

written by Moonstone


 電車から降りると、俺は走ってホームから改札を通り、自転車置き場へと走る。
時間帯が遅いと言っても今日はまだ早い方だから、自転車置き場は結構混み合っている。
その中から自転車を引っ張り出し、その場でサドルに跨って可能な限りのスピードで外に出ると、一気に加速を始める。
「居ても立っていられない気持ち」とはこういう気持ちのことを言うんだな、とつくづく思う。
 俺は坂道も何のその、まっしぐらにマスターと潤子さんの家を目指してペダルをこぐ。
兎に角今は晶子の顔が見たい。晶子がどんな状態なのかこの目で見たい。
ひたすら自転車を走らせていると、喉が乾燥してくるのが分かる。
だが今はそんなことより晶子の方が大事だ。喉の乾燥は後で水なり茶なり飲めば解決することだ。
俺は街灯が転々と灯る夜道を疾走する。
 ようやく丘の上に灯る人家の灯りが見えてきた。俺は更にスピードを速めて丘を駆け上る。
そして店の裏側、車が止まっている勝手口に回って自転車を止めると、自転車から飛び降りてインターホンを押す。
応答が返ってくるまでに一気に荒くなった呼吸を静めようとするが、そう簡単に収まってはくれない。

「はい、どちら様ですか?」

 インターホンから声が聞こえてきた。これは潤子さんの声だ。
俺は胸を押さえながら呼吸を出来るだけ平静に押さえ込んで応答する。

「こんばんは潤子さん。祐司です。」
「こんばんは、じゃないでしょ?ふふっ、今開けるからちょっと待っててね。」

 潤子さんの声が消えて間もなく、ドアの向こうから人の気配が近づいてくるのが分かる。
そしてドアノブの辺りでガチャガチャという音がして、ドアが開く。

「・・・た、ただいま。」
「そうそう、それで良いのよ。お帰りなさい、祐司君。ご飯の用意出来てるわよ。」
「それより潤子さん、晶子はどうしてますか?」
「晶子ちゃん?晶子ちゃんならキッチンに居るわよ。まだ夕食食べてないから。」
「え?」
「祐司君と一緒に食べたい、って言ってずっと待ってたのよ。さ、中に入って。お姫様がお待ちよ。」

 潤子さんが開けたドアから、俺は駆け込むように中に入る。
そしてキッチンの様子を窺うと・・・居た!両肘をテーブルの上に乗せて、重ねた両手の上に顎を乗せてやや俯き加減の晶子が。
その目や顔に悲しみの痕跡は見当たらない。
それを見たところで俺はようやく安心して溜め息を吐く。良かった。俺が一人で心配していただけに終わって・・・。
俺の溜め息の音を聞いたのか、晶子が俺の方を向く。

「祐司さん、お帰りなさい。」
「ああ。ただいま・・・。ずっと待ってたって聞いたけど・・・。」
「そうだぞ。茶を啜る程度で祐司君の帰りを待ってたんだぞ、井上さんは。」

 晶子の向かい側の席を見ると、マスターが広げていた新聞を下げて俺の方を向いている。
俺はマフラーを外し、コートを脱いで晶子の隣に座る。
晶子は穏やかな笑みを浮かべている。俺の心配が杞憂に終わったのならそれに越したことはない。泣いている晶子の顔なんて見たくないし。

「今から食事を温めるから、祐司君は手洗いとうがいをしてらっしゃい。」
「あ、はい。」

 俺は席を立って洗面台へ向かう。
風邪をひくと大変だ、ということで、俺と晶子それぞれ洗面用具を持参している。それらは洗面台に並んでいる。
俺はまず手洗いをして自分のコップでうがいをする。備え付けのタオルで顔と手の水分を拭って、キッチンに戻る。
良い匂いが立ち込めてくる。この香りは・・・ビーフシチューか。
こういう寒い日には−今まで気にしてる余裕がなかったが−うってつけのメニューだな。
 俺は晶子の隣に座る。
今までの緊迫感とか焦燥感とかいったものが消え失せた代わりに、安堵と疲労が噴き出てきた。
とは言っても、心配かけやがって、とかいう気持ちは起こらない。
心配してたのは俺だし、それが杞憂に終わったのだから腹を立てる理由なんてない。
 少しして目の前に夕食が続々と並んできた。
ビーフシチューに野菜サラダ、ご飯、そして湯飲みからほんのり湯気を立たせる白湯だ。
水でないのは、ビーフシチューで温まる身体を冷やさないためだろう。茶でないのはメニューに合わないからだろう。
この辺は潤子さんのちょっとした気配りだと思う。

「さあ、二人揃ったんだから、遠慮なくどうぞ。」
「あ、はい。いただきます。」
「いただきます。」

 潤子さんの勧めに応じて、俺と晶子は遅い夕食を食べ始める。
ちらっとマスターを見ると、マスターは何事もないかのように新聞を広げている。
潤子さんは俺と晶子に背を向ける形で、俎板の上で包丁を動かしている。明日の店の料理の仕込だろうか?
こういうことを殆ど毎日するんだから、喫茶店商売も楽じゃないな。それを思うと、俺の生活なんてまだ余裕があるほうかもしれない。
 やはり生協の食事とは違う。温かさに加えて旨味が格段に上だ。
腹が減っていた俺は心配事がなくなったこともあって、ぺろりとたいらげてしまった。
晶子の食べるスピードは何時もと変わらないから、まだ若干残っている。
俺は若干冷めた白湯を啜りながら晶子が食べ終わるのを待つ。
晶子が食べ終わると、それを待っていたかのように、八つ切りになった林檎が小さなフォークと共に皿に盛られて二人分差し出される。
デザートまであるとは思わなかった。

「この時期は特に果物を食べておいた方が良いわよ。」

 潤子さんはそう言うと、再び俎板に向かって仕事を再開する。
俺は程良い甘味の林檎を齧りながらぼんやり潤子さんの後姿を眺める。
ふと見ると、マスターの前にも八つ切りの林檎があり、マスターは新聞を読みながら食べていたりする。
さりげない夫婦のやり取りに感心してしまう。マスターは本当に幸せ者だよなぁ。潤子さんみたいな綺麗で料理が上手くて気が利く女性と結婚出来たんだから。
 対する俺はと言うと・・・自分で言うのも何だが今のところマスターには負けてないつもりだ。
晶子だって美人だし、料理も上手いし、細かいところまで気を配ってくれる。
これを結婚までもっていけるかどうかは、今後の俺と晶子にかかっていることだから何とも言えないが。
自信がないわけじゃない。ただ未来の賽がどう転ぶかは予測出来ないだけだ。
将来は結婚間違いなし、と言われていた俺と宮城との関係も、呆気ないほど簡単に切れてしまった。
その二の舞を防ぐには、やはり普段からの意思の疎通が大事なんだろうな・・・。
 俺と晶子は林檎を食べ終わると、それぞれ、ごちそうさまでした、と言う。すると潤子さんが振り返って皿を取って流しに持っていく。
何時の間にかマスターも食べ終わっていて、マスターの皿も潤子さんが取って同じく流しに持っていく。
息が合っているというか相手の動きを心得ていると言うか・・・。流石に夫婦二人で店の経営と生活を共にしているだけのことはあるな。

「お風呂の準備しておくから、12時までには入ってね。それまで2階へ行ってふたりでゆっくりしてらっしゃい。暖房はつけっ放しで構わないから。」
「はい。」

 俺と晶子は席を立って2階へ向かう。
一応部屋は別々ということになっているが、初日に晶子が隣の部屋の物音に耐えられずに「避難」してきて以来、寝るのは一緒というのが二人の了解になっている。
・・・多分マスターと潤子さんは知ってると思うが。
俺は椅子にかけておいたコートとマフラー、そして自分と背凭れの間に挟んでいた鞄を持って、晶子を先導する形でキッチンを出る。
 前を行く俺の左手がきゅっと軽く、しかししっかりと締め付けられる。
後ろを振り向くと、晶子が俺を見上げる格好で俺の手を握っている。
その表情は夕食の時とは違って思い詰めたものになっている。
・・・やっぱりか。
俺は再び前を向いてゆっくりと進み、階段を上っていく。
 2階に辿り着いたところで再び後ろを振り向くと、晶子は視線を落としている。だが、手は離していない。
・・・予想が確信へと変わっていく。
俺は何も言わずに自分に割り当てられた部屋へ−去年と同じ部屋だ−向かう。
中は廊下と同じくらい冷えている。
俺は一先ず部屋の電気を点けて、荷物を部屋の隅に降ろして暖房のスイッチを入れる。
暖まるまでに多少の時間はかかるだろうが、今はそれどころじゃない。
 俺は晶子の手を取ったまま向きを変えて、晶子と向かい合う形でゆっくり腰を降ろす。晶子はそれに合わせて腰を降ろす。
俯き加減の表情は明らかに思い詰めたものになっている。何かあったとしか思えない。
名前が出ただけの俺ですらあの様だ。その上今回は名前を出された上に内容が内容だ。動揺しても何ら不思議じゃない。

「・・・メール、読みました?」

 暫しの沈黙を置いて晶子が顔を上げて口を開く。
改めて、やっぱりか、という思いがする。

「・・・ああ、読んだ。読んだのは実験の合間だけど。」
「じゃあ・・・内容も見ましたよね?」
「流し読みだけどな。今朝実験の部屋に入ったら、いきなり周囲の視線が俺に集中して、ひそひそ話してやがったし、智一が慌てふためいてメールの内容を
話してきたから、きっちり読む必要もなかった。」
「内容・・・、信じてませんよね?」
「あんな馬鹿馬鹿しいメール、信用するかしないか以前の問題だよ。俺は晶子がメールに書いてあったような女じゃないってことは分かってるつもりだし、
そもそもそんな女じゃないって信じてる。」

 俺が答えると、晶子は再び視線を下に落とす。
俺は黙って様子を窺う。こういう時、妙な慰めはしない方が良いだろう。
ただでさえ不器用と言われる俺だ。言いたいことが上手く伝わらずに、晶子を更に追い詰めてしまうことにもなりかねない。
だから黙っているのが、消極的ではあるが、一番妥当だろう。
 また暫し沈黙の時間が流れた後、俺の手を握る晶子の手に力が篭る。再び晶子を見ると、その肩が小刻みに震えている。
・・・やっぱり何かあったんだ。俺は改めてそう確信する。
耐えられないほどの侮辱を浴びたか。それとも嫌がらせを受けたか。
何かは分からないが、問い詰めるようなことはしないで晶子が口を開くのを待つ。それが一番賢明だ。尋問したって晶子を追い詰めるだけだ。

「・・・今朝大学へ行ったら、周囲の視線が明らかに何時もと違ってたんです。祐司さんが経験したみたいに、講義室に入った途端、私に視線が
集中したかと思ったら私をちらちら見ながらひそひそ話すようになって・・・。何かあったと直感した私は、パソコンでメールを確認したんです。
そうしたら・・・あんな内容のメールがあったんです。発信者は不明でしたけど、見当はつきます・・・。」
「・・・。」
「それから後で・・・割と仲の良かった子から『あんたって、ああいう女だったのね』って言われて・・・。休み時間に見たこともない男の人から・・・
面と向かって『ヤらせろ』って言われて・・・。」
「・・・それで、晶子はどうしたんだ?」
「私は『そんな女じゃない』って必死に弁解しました。でも・・・メールを信じ込んだ人が多くて・・・別の子には『あんたの彼氏も可哀相ね。
親が誰かも分からない子どもの親候補にされちゃって』って言われて・・・。もう・・・弁解しても通じる状況じゃない、って分かって・・・沈黙することに
しました・・・。」

 やはりというか、白眼視と嫌がらせは相当なものだった。
見たこともない相手から「ヤらせろ」と言われたら戸惑うのは当然だし、何で私が、と思うだろう。
仲の良かった相手にまで白眼視された日には、もう大学に行くのが辛くて仕方なく思えるだろう。今まで泣かなかったのが不思議なくらいだ。
 相当無理していたんだろう。マスターと潤子さんに涙を見せることで心配を掛けたくなかったんだろう。だからずっと耐えていたんだろう。
そして俺を二人きりになった今、ようやく胸の内を明かすことが出来た・・・。
晶子の心痛を思うと同時に、俺にだけ内情を明かしてくれた晶子を、こう言っちゃ失礼だが、愛しく思う。
俺は晶子の手を手繰り寄せ、晶子をそっと抱きしめる。

「よく耐えたな・・・。それだけで十分だ。」
「でも、祐司さんまで引き合いに出されて・・・。」
「俺の方はどうってことない。言いたい奴には言わせておけば良い。それより大学や行き帰りの道で暗がりを歩くのは避けるんだ。デマを鵜呑みにした
奴らが襲ってくる可能性もある。危険を感じたら迷わず大声で助けを呼ぶんだ。今は自分の身を守ることに専念するんだ。俺のことは気にするな。・・・良いか?」

 晶子は小さく頷く。
そして俺の手を更に強く握り、もう片方の手を俺の胸に当て、しがみつくようにセーターを掴む。

「今回のことは・・・元を辿れば私が軽薄な態度を取ったからです・・・。だから・・・どんな嫌がらせにも耐えます・・・。それが・・・私の責任ですから・・・。」
「そんなに自分を責めるな。あんなメールをばら撒いたのは簡単に見当がつく。計算機センターでログを解析すれば、誰がばら撒いたのかは直ぐ分かる筈だ。
セクハラ対策委員会も黙っちゃ居ないだろう。兎に角今は自分のことだけ考えるんだ。」
「・・・。」
「俺が言うのも何だけど、こっちがどっしり構えてりゃ、根拠のない噂は案外簡単に跳ね返せるもんだ。さっきも言ったけど言いたい奴には言わせておけば良い。
ただ、危害を加えてくるようなら迷わず助けを呼ぶんだ。俺が四六時中一緒に居られるならガードするところだけど、生憎学部が違うからそうもいかない。
だから自分のことだけ考えるんだ。それで良い。」

 俺が言えるだけのことを言うと、晶子の身体の震えがより輪郭をはっきりさせてくる。
幾ら自分の責任だから耐えると言ってみせたとはいえ、女の白眼視やいじめは男の場合より集団的で陰湿だと言う。
話を聞いて想像する限りでも、白眼視や嫌がらせは晶子の神経を相当参らせたに違いない。それがこれからも続くと考えれば、気弱になっても無理はない。
叱咤激励なんて出来ない。より追い詰めるだけだ。

「・・・歌の練習するか?」

 俺は晶子に話を持ちかける。晶子の身体の震えが心なしか少なくなる。
慰め方としては無茶苦茶かもしれない。だが、晶子には悪いが、幾ら泣いても喚いても現実は変えられない。
ひたすら孤独に耐え、ほとぼりが冷めるのを待つしかない。
ならばせめて大学を離れたら、大学のことは忘れるようなことをした方が良いんじゃないかと思う。
 晶子が顔を上げる。その目は涙でいっぱいだ。見ている俺も心が激しく痛む。
だが、俺が一緒に泣いても何にもならない。
俺は笑みを作って見せる。晶子は一人じゃない。そのことが晶子に伝われば十分だ。

「嫌なことなんか歌に乗せて吹き飛ばしちまおう。ここは大学じゃないんだからさ。」
「・・・そうですね。今は祐司さんと一緒に居るんですよね?」
「そうそう。此処はマスターと潤子さんの家。そして俺と晶子にとってもう一つの家だ、ってマスターも潤子さんも言ってた。だから大学じゃ
出来ないことをしよう。折角の場所なんだから。」
「はい・・・。じゃあ、私の練習に付き合ってくれますか?」
「勿論。俺の方も忘れないでくれよ。今度の俺の新曲は、二つ共晶子のコーラスなしじゃ締まりがないからな。」
「はい。」

 ようやく晶子に笑顔が戻る。晶子は目を手で拭って消し去る。
本当は泣きたいところなんだろうけど、俺に合わせてくれてるんだろうな・・・。俺が別の方向に話を振ることで慰めようと思っていると悟って・・・。
こういう時自分が不器用なことを痛感する。もっと気の利いた慰めが出来れば良いんだが・・・。

「・・・こうじゃないといけませんよね。」
「?」
「祐司さんの言うとおり、大学と此処は別ですものね。大学のことを引っ張ってちゃ、勿体ないですよね。」
「・・・さっき言ったことと矛盾するけど・・・無理しなくて良いんだぞ。」
「もう平気です。私には祐司さんが居ることが改めて実感出来ましたから。今回の騒動と無関係な祐司さんまで影響が及んでるのに、肝心の私が
しっかりしてなかったら、祐司さんが困っちゃいますよね。」
「晶子・・・。」
「さ、練習始めましょうよ。まずは言い出しっぺの祐司さんの曲からですね。」

 そう言って俺から離れた晶子は、気丈だと思う。
気丈だがやはり、繊細な心の持ち主だ。無理している部分は多々あると思う。
だが、晶子が自分の足でしっかり立つと宣言した以上、俺が止める理由などない。俺は晶子と共に歩むだけだ。

「そうだな。それじゃ準備するからちょっと待っててくれ。」
「はい。」

 俺と晶子は立ち上がる。そして俺はギターとアンプの準備を始める。
そうだ。大学と此処とは別だ。大学でのごたごたや不満を持ち込むべきじゃない。
それに此処ですべきことは沢山ある。晶子の問題はセクハラ対策委員会という然るべき組織が相応な処分を下すだろう。
今回のデマメールも出所が明らかになれば、計算機センターやセクハラ対策委員会が何らかの対策を講じるだろう。
 ギターとアンプの準備を終えた俺は、簡単にチューニングの確認をする。
夏場と違って湿気が少ないから、多少放っておいてもチューニングが狂って「音痴」になることはあまりない。念のため、というところだ。
そして適当に弦を爪弾いて音を出したところで、晶子の方を向く。晶子は俺の方を向いて立っている。

「まずは『Tonight's the night』からで良いか?」
「はい。」
「よし。それじゃ始めるか。」

 俺は自分でテンポを取ってイントロを弾き始める。
この曲での晶子の役割はヴォーカルじゃなくてコーラスだから、晶子の出番までには多少間がある。
その間は俺のギターの独壇場だから−ブラスセクションが混じるが−、音のツブをはっきりさせる必要がある。
本来ならエフェクターをかけて音を豊かにするところなんだが、アンプしかない今は生音で我慢するしかない。
まあ、これまでの月曜日の練習でも同じだったから、戸惑いはない。
 身体を揺らしてリズムを取っていた晶子のコーラスが入る。
ギターの音と合わさると、晶子と一体になって曲を奏でていることを実感出来る。
ギターがメインの曲ではあるが、コーラスがないと味気ない。
二曲とも俺と同じ姓のギタリストが作った曲だが、様々な方面の知識を自分のものにしているんだと思う。
 俺は独立独歩でいくのが苦にならないし、むしろ助言や忠告を干渉として排除する傾向があるように思う。
「個性の時代」と言いつつ個性を圧殺するようなことが蔓延(はびこ)る理不尽な時代だが、その中で個性を保つには独立独歩が大切だとは思う。
でも、助言や忠告に耳を傾ける必要もあることは、この一件で痛感させられた。
もし潤子さんやマスターの助言や忠告に耳を貸さなかったら、俺は折角手に入れた幸せを自ら投げ捨てるところだったんだから。
 晶子のコーラスとギターの音が上手く噛み合う。
彼氏彼女を自称するなら信じること、信じるのは相手が居ることだけじゃなくて、相手のおかれている事情を信じることが必要だと分かった。
この曲のように二人一緒に何処までも歩んでいきたい。そのためには今の幸せに甘んじず、常に自戒と信心が必要なんだろう・・・。

3日後、セクハラ対策委員会の判断が下った。
田畑助教授には単位認定に関わる関係強要とメール不正使用の罪で停職6ヶ月、減給1年の処分が下された。
晶子の名前は勿論出なかった・・・。


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