この2日間、シャルがホログラフィで挑発と翻弄を続けていることで、挟撃を狙うAo県警と勢力増強を狙う自衛隊は、国道544号線と国道113号線で足止めされている。だけど、このホテルはイザワ村の西側を勢力圏内とする自衛隊が休養と交代のための事実上の陣地としているのは変わらない。SNSで自衛隊が銃を構えて徘徊していると拡散されたことで、新規の予約は全く入らないらしい。そうなると、収益の面でもこのホテルが自衛隊に退去を求める選択肢はないだろう。
ホテルにいる自衛隊は、国道113号線方面からの援軍が来ないことで、東側を勢力圏内とするAo警察を押し返せずにいる。通信で早期の到着を繰り返し求めているが、Ao警察と交戦中と返されるから、それ以上どうしようもない。下手に陣地であるホテルを空けたくないらしい。だから、ホテル周辺を自衛隊が警備していることは変わりない。
僕とシャルは明日チェックアウトだけど、ホテルに問い合わせたところ、トザノ湖南西の国道103号線はA県側だから、そこから出て欲しいという回答だった。A県県警には応援要請が来ていないらしい。オオジン村の壊滅への対処でそれどころじゃないのもあるだろう。一応脱出ルートはあるけど、ハイキングコースからイザワ村に入るという目的から逸脱する。
「予定どおり、ハイキングコースからイザワ村に入ります。」
運ばれた朝ご飯を食べ終えたシャルが言う。「自衛隊や警察に遠慮する理由はありません。」
「此処からハイキングコースは近いけど、自衛隊が彼方此方に居る中でハイキングコースに突っ込むのは色々危険だよ。」
「自衛隊にばれることですか?別にばれても構いませんが、ばれないように入れますよ。」
食料や日用品は、まだ十分な余裕がある。シャル本体のラゲッジスペースに温度管理がなされた状態で保管されているから、食中毒の恐れもない。調理もシャル本体で可能だから、車中泊で過ごせる。しかも銃弾なんて石ころにもならない。ロケットランチャーやミサイルでもびくともしないという。文字どおりの動く要塞となって、イザワ村に乗り込んで謎を明らかにして、ヒヒイロカネや情報を回収する。
忘れ物がないか確認して、部屋を出る。こういう時、荷物が少ないと楽で良い。相変わらず廊下を迷彩服姿の自衛隊員が跋扈している。銃を下ろして隠すところは徹底されているけど、威圧感は隠せない。軍隊だからそういうものだと思うしかないし、こちらに危害を加えてこなければ無視すれば良い。もっとも、何かした瞬間に腕の1本は確実に無くすだろうけど。
自衛隊員が跋扈する中、フロントでチェックアウトの手続き。予定どおりの日程だから特に追加料金の発生はない。土地勘がないと踏んだのか、トザノ湖周辺の地図を出して国道103号線へのルートと、国道103号線からA県方面へのルートを説明してくれる。実際にはこのルートは使わないけど、カモフラージュも兼ねてしっかり聞いておく。
地図をもらって、ホテルを出る。その足で駐車場へ。雪がしっかり積もっている。本来ならシャルが一瞬で溶かしてしまえるけど、自衛隊が彼方此方に居る中でそれは出来ないから、ラゲッジスペースからシャベルを取り出して退ける。脚立も出してもらって高さはカバーできるけど、雪の重さはどうしようもない。終わった頃には汗が滲む。
「お疲れさまでした。運転はゆっくりで構わないので、ハイキングコースへ向かってください。」
「分かった。自衛隊対策は頼むね。」
「任せてください。どのみち、ヒロキさんと私に構っている暇はありませんよ。」
自衛隊は僕とシャルには全く目もくれず、銃を構えて北の方へ疾走していく。いったい何が起こっているんだろう?僕とシャルも途中までは同じ方向を走っていくけど、自衛隊はまったく気づいていないかのように前を走っていく。僕は途中で方向を変えて、ハイキングコースに入る。
「コースには転落防止対策などを施していますが、HUDの指示に従って慎重に進んでください。」
「分かった。ところで、自衛隊は何処に行ったの?何だかかなり急いでたみたいだけど。」
「ホログラフィで、Ao県警が国道544号線からトザノ湖周辺に進入したように見せかけました。」
国道113号線方面からの援軍は、今もホログラフィで足止め中。このまま弾薬を使い続けると、あと1週間程度で弾薬が底をつく見通しだ。一方で、トライ岳周辺の捜索は今も続けている。シャルは自衛隊の攪乱と弾薬の削ぎ落しのため、ホログラフィと偽の無線でAo県警が進入してきたことを装い、ホログラフィに向かって弾薬を浪費させる作戦に出た。
ちなみに、シャル本体には光学迷彩を施している。更に、ホログラフィで国道103号線方面に走っているところも演出している。だから、自衛隊は僕とシャルが車に乗って国道103号線方面に脱出しているようにしか見えない。万一を考えてホログラフィ側はレーダー照射への対応も出来るし、本体はステルス機能を実行している。更に轍が残らないようにリアルタイムで雪を集めて消去している。
「-本当に凄いね。」
「複数同時の大規模ホログラフィは、先の機能強化で出来るようになったことです。ヒロキさんが私を信じてくれたから強化できたんです。それが必要な今、私が機能実行を躊躇う理由はありません。」
「ここまでお膳立てしてもらったんだから、何としてもイザワ村へ入ろう。」
「はい。周辺や上空の警備は万全です。運転に集中してください。」
「分かった。」
峠を越えるというハイキングコースの性質が、蛇行しながらの登坂として現れている。それだけでも運転が難しい条件なのに、幅員は狭小、片側は崖、更に雪という悪条件てんこ盛り。それでも、自衛隊や警察との交戦を避けてイザワ村に入るには、このルートを進むしかない。
遠くに微かな銃声を聞きながら、HUDの指示どおりにハンドルを切る。この勾配と蛇行だとスピードはとても30km/hは出せない。しかも雪がある。20km/h、否、10km/hも満足に出せない。歩くのと違うところは労力だけだろう。この勾配と蛇行を雪と低温に晒されずに移動できるだけありがたいと思うべきところだ。
ナビを見ると、明らかに道がないところを進んでいる。一方、HUDには相変わらず上昇しながら蛇行するという運転者泣かせのルートが表示されている。そして、到着予定時刻として17時と出ている。ホテルを出たのが10時前だったから、7時間かかるってことか。よく分からないけどハイキングコースだからそんなものかと思う。
「歩くことを考えたら当然だろうけど、凄い蛇行だね。シャルは車酔いしてない?」
「まったく問題ありません。この車は私本体ですから、感覚としては運転しているヒロキさんと同じです。」
「そういえばそうだったね。」
「私を気遣ってくれるのは凄く嬉しいですよ。空調や座席への体重分散はリアルタイムで最適なように調整していますから、運転に専念してください。」
「うん、分かった。」
暫く走っていると、前方が少し開ける。此処が峠のようだ。
「左手の方向にトライ岳の上部が見えます。HUDにマーカーを表示します。」
HUDの左上部に赤色のマーカーが表示される。森に覆われた山が様々な起伏を描く中に、他の山より低い、何とか頂上が見える程度の山にマーカーがある。あれがトライ岳か。もっと巨大なものを想像していたけど、規模だけではそれの重要性は分からない。「少し降りたところに休憩ポイントを設けてあります。そこで休憩を取ってください。」
「分かった。」
休憩ポイントがどんなものか聞いてなかったから、気づかずに通り過ぎるかもと思っていたけど、峠から10分ほど下ったところに少し広めの平地が見えて来る。明らかにそこが休憩ポイントだと分かる。注意深く左にハンドルを切って休憩ポイントに入る。車2台が並列駐車できる程度のスペースだから、シャル本体1台の今は十分広い。
シャルに確認して、固まった感覚が少しある足腰を伸ばすために外に出る。強い冷気が肌に刺さる。シャルのルート整備で除雪されているから休憩ポイントに影響はないけど、周囲は雪がう高く積みあがっている。足腰を十分伸ばしたらシャル本体に戻る。この寒さで外に長くいるのは厳しいし、シャルの警備の負担を増やしかねない。
「お湯を用意しました。ゆっくり飲むと良いですよ。」
「ありがとう。…うん。丁度良い熱さ。」
「現在まで順調に進行中です。周辺警備は万全にしているので、引き続き運転に専念してください。」
「分かった。フォローは頼むよ。」
下りながらの蛇行を慎重に続けていく。どうも下りの方が傾斜がきついらしくて、少しブレーキを緩めると簡単に加速する。考えてみれば、トザノ湖はカルデラ湖だから結構高い位置にある。対してイザワ村の集落部分は平地。高低差は下りの方が大きくて当然ではある。
慎重に運転を続けていくと、微かに銃声が聞こえてくる。戦闘が到着ポイントの近くで勃発しているんだろうか?シャル本体に居る限りは集中砲火を浴びても大丈夫だけど、戦争の真っただ中に突入するという緊張感は否めない。
「Ao県警との交戦ラインはもっと東の方です。自衛隊の弾薬を消耗させるため、Ao県警のホログラフィを展開させています。」
「此処でもホログラフィが展開できてるんだ。エネルギーの消耗が大きそうだけど、大丈夫?」
「エネルギーは、この有り余る雪を利用することで補充できます。今も小型プラントを光学迷彩付きで走らせて、雪を取り込んで水素を生成していますよ。」
「そんなことまで出来るんだ。」
「雪は一般にはもはや害ですけど、水素を生成できる立場では無尽蔵にエネルギー源があるのと等価です。」
水素は化学式では水、すなわちH2Oを分解することで得られる(2H2O→2H2+O2)。だけど、それが簡単にできるなら何の苦労もない。水を電気分解すれば確かに化学式のとおりに水素と酸素を得られるけど、実験室で分離する程度なら兎も角、車や工場を動かすだけの水素を得るだけの電気をどうやって調達するか、という話になる。水の分子は共有結合という強力な結合をしている。強力な結合は安定性が高い一方で、容易に分離できないことを意味する。
結局、現在は炭化水素(特にメタン(CH4))を含む天然ガスや石炭を採掘して、高温環境下(500~1100℃)で水蒸気を投入して金属触媒を使用することで、一酸化炭素と水素を得る(CH4+H2O→CO+3H2)、水蒸気メタン改質という方法が主流だ。電気分解で製造される水素は実は少数派で、石油に代わるクリーンなエネルギーと言いながら、実際には石油や天然ガスを掘り続けないと水素の大量製造が困難という本末転倒ぶりだったりする。
シャルが稼働させている氷から水素を直接製造するプラントは、オクセンダ町の温泉で使われたものの改造だろう。何にせよ、サイズや製造効率、そして水蒸気メタン改質を使わない真の意味でクリーンなエネルギー製造という点で非常に画期的だ。インフラ産業が知ったら目の色を変えるだろう。勿論、軍需産業は黙ってはいない筈。
確かに、HUD右下の燃料メーターの数値は、トザノ湖に入ってから一度も水素を補給していないのに95%以上を維持している。ホテルにいる間にもプラントで雪を取り込んで水素を製造して補給していたんだろう。この無尽蔵な水素製造すらも、多くの人々の生活のためよりも、軍事利用で利益を得ることを優先する輩がいる。それはヒヒイロカネに集まる欲望の権化とほぼ重なる。
「間もなく到着ポイントです。HUDの指示に従ってポイントに入ってください。」
「分かった。」
「お疲れさまでした。予定時刻どおりに到着ポイントに入りました。車内で少し休んでください。」
「うん、そうする。イザワ村に入ったんだよね?」
「間違いありません。そしてここから1kmほど東に走ったところに、自衛隊が今も調査を続けるトライ岳があります。」
「これからどうするの?」
「自衛隊と警察を同時に消耗させつつ、2か所で本格的に交戦させます。」
「え?!」
「今は自衛隊の消耗を図っていますが、だからと言って警察に肩入れするつもりはありません。警察にもこの村から出て行ってもらいます。」
「安全確保を口実にして事実上の監禁を強いられている住民の不満は強く、特に学校に通えず、友人との交流を絶たれた幼児や小中学生の不満は限界に近づいています。1つの自治体を舞台に抗争を続ける警察と自衛隊を擁護する理由はありません。」
「村で本格的に交戦となると、住宅を隠れ場所や盾にするかもしれない。それは大丈夫?」
「交戦ポイントは集落から十分離れた場所に配置しますし、万一の流れ弾などは住民や住宅、田畑には届かないようにシールドを設置します。」
「それならシャルの方針どおりに進めて良いよ。」
「!は、はい。」
集落で本格的な交戦になったら、住民だけじゃなくて住宅や田畑に直接間接の被害が出るだろうから、それを懸念していた。警察も自衛隊もイザワ村で交戦状態ということは住民にも知らされていない。客観的には当然だろうけど、これによって生じた損害はまず補償されないし、闇に葬られると見て良い。山林も誰かの所有物だけど、少子高齢化と過疎化で十分な整備が行われているとは言い難い。まだ山林あたりで実弾を用いたサバイバルゲームに興じてもらう方が良い。
「交戦ポイントに警察と自衛隊の誘導を開始しました。村に配置した交戦ポイントは1時間後、トザノ湖に配置した交戦ポイントには1時間半後に両方が終結する見通しです。」
HUDに略地図と赤いマーカーが表示される。色で土地の利用状況が分かるようになっている。村の交戦ポイントは、僕とシャルがいる青のマーカーから2kmほど東の山林。トザノ湖の交戦ポイントは展望台の辺りか。確かに住居はないし田畑もないから交戦ポイントとするには好都合だ。「2つの交戦ポイントの周辺にはSMSAを配備しています。万一住民や観光客が近づいても安全に隔離します。」
「それなら安全だね。念のため、周辺の警戒は続けて。」
「勿論です。」
だけど、僕としては住民と住居とその主な生活源である田畑に被害が及ばなければ良いと思っている。理由はシャルと同じ。結局、安全保障を口実に住民を監禁して、ヒヒイロカネを巡って村を勝手に占拠して戦争している警察と自衛隊のやり口が気に入らないし、ヒヒイロカネ捜索と回収の邪魔だから。誰が命令したのか知らないけど、自治体を舞台に実弾でサバイバルゲームに興じている時点で同情や擁護の余地はない。
「僕とシャルは、警察と自衛隊の交戦が終わって撤退完了するまで待機?」
「はい。ですので、ヒロキさんは休んでいてください。」
「生憎森の中で空は雪雲なので、画像処理をしても見るものがありません。」
「休憩だから良いよ。こうして完全に横になれるだけで十分。」
「何だか釈然としません。光学迷彩で外からは絶対見えないし、防音も完璧なのに。」
「競う対象はないんだから…!」
「シャ、シャル?!」
「車というのは移動できるプライベート空間だと実感します。ましてや光学迷彩に防音処理もしている私は、完全な密室です。何でも出来ますよ?」
「何でもって…。」
「ヒロキさんが私に毎晩していること。」
「ん…。」
シャルが僕にキスをする。先手を打ってきた。どんどん積極的と言うか、大胆になってる感がある。「こういうことが好きなだけ出来るってことです。」
「ここでは…控えめにしておこうかな。」
「どうして?」
「体勢を変えたりし辛いから。」
「それは…確かに…。」
「少し関連するけど、イザワ村を警察と自衛隊から解放した後、宿泊はどうするの?イザワ村には旅館やホテルがない、ってシャルが情報を出してくれたけど。」
「宿泊場所は別にあります。それを成立させるためにも、住民が住む自治体で、しかも実弾でサバイバルゲームに興じる警察と自衛隊を排除する必要があります。」
「じゃあ、それまでは…。」
「ヒロキさん。起きてください。」
シャルの声で目を覚ます。何時の間にか眠っていたようだ。「作戦は?」
「成功しました。警察と自衛隊は両者損耗が甚大で、全滅の恐れがあるという判断で撤収しました。イザワ村とトザノ湖近くのどちらにも、警察と自衛隊の姿はありません。」
「国道の通行止めは?」
「まだ解除されていません。雪で部隊の撤収に時間がかかったのが原因です。きちんと名目どおり除雪しておけば良かったものを。」
「宿泊場所への移動は、通行止めが解除されてからだね。」
「それが賢明ですね。宿泊場所は国道が通行できるという前提が必要なので。」
除雪は、シャルがイザワ村の役場に匿名で情報を伝えると共に、これからの夜間~未明の時間帯に一定程度除去しておくことで、前提条件を早期に作れるようにするそうだ。既に県には応援要請がなされていて、明日の午前には通行止めが解除になる見通しだという。
また、村から住民に、警察と自衛隊が村から完全に撤収したこと、外出が可能になったことが伝えられている。時間が時間だから今から学校とかは無理だけど、明日から学校も再開するとのこと。子ども達は久しぶりに学校に行って友達に会えると知って大喜びだそうだ。子ども達は今回の勢力争いの最大の犠牲者と言って過言じゃない。大人を保護するために子どもを犠牲にしておいて、少子化対策や子育て支援が聞いて呆れる。
今夜やハイキングコースの片隅で夜を明かす。それ自体は何も問題ない。シャルが内部を変化させて、しゃがんでなら移動できるように全面フラットにしたし、食料は保存してあるし調理器具も自由自在。水素は今も外付けのプラントで生成しているからエネルギー源は無尽蔵。トイレも別途創造されているし、料理の排水も含めて完全分解される。空調も完備だから何の不自由もない。キャンプと言うよりグランピングか移動式のホテルだ。
「本体サイズの変更は出来ないので、手狭なのは我慢してください。」
「これだけ整っているのに文句を言うなんて、贅沢でしかないよ。」
「はー、美味しかった。」
「ありがとうございます。食器は此処に入れてください。」
「これって食器洗い乾燥機?」
「そうです。ヒーターや調理器具は洗浄してから私に同化します。」
「本当に凄いね。」
「私だけなら水素が補給できれば事足りますが、ヒロキさんの栄養補給や休息は重要ですし、何より私がこうして人形を取り続けているのは、ヒロキさんと同じ生活をしたいからです。」
食器洗い乾燥機に食器と調理器具を入れると、蓋が自動で閉じる。本来なら洗えるはずがないヒーターまで洗えるのは、創造したシャルだからこそできることだ。ついさっきまで温かい湯気を放つ鍋やそれを取って食べる食器があったのに、今は僕とシャルが、後部座席も同化して広々としたラゲッジルームに向かい合っているだけだ。
「シャワーはどうしますか?」
「汗はかいてないし、そこまでしてくれなくて良いよ。これだけ広いと足を伸ばして寝られそうだから、それが嬉しい。」
「寝具一式も用意できますよ。」
「私は専用の枕がありますから。」
「?!」
「足を伸ばして寝られるのは、確かにリラックスできて良いですね。」
「それとこれとはあんまり関係ないような…。」
「んー?何か言いましたかー?」
「何でもないです。」
緊張が長く続いた細くて狭い道の運転での疲労に、美味しい料理の満腹と丁度良いクッション具合のベッドが重なって、どんどん眠くなってくる。こういうシチュエーションだと、シャルにいっぱい触って色々して、となるところなんだろうけど…、この眠気には勝てない…。
それは明日から存分に出来ますよ。
…。