雨上がりの午後
Chapter 141 夜から朝へと移り行く二人の時間
written by Moonstone
食事が済んで洗い物−今日は二人でやった−を終えた時には、午前1時を過ぎていた。
洗い物をする前に風呂の準備をしたが、洗い物にかかる時間なんて100リットルを越える湯を溜める時間と比較すれば短いもんだ。
二人が風呂に入って寝るのは、この分だと2時くらいになるかな。まあ、普段もそんなもんだから良いんだけど。
風呂の準備が出来るまであと20分くらいはかかるな。・・・俺のためにずっと待っててくれた晶子のために、一曲弾くか。指慣らしも兼ねて。
わざわざPCを起動してシーケンサなんかを準備しなくても、弾ける曲はあるからな。
「ちょっと待っててくれ。今からギターの準備するから。」
「何を弾くんですか?」
「それは聞いてみてのお楽しみ。」
ベッドに腰掛けている晶子を時々横目で見ながら、エレキギターの準備をする。
配線して電源を入れ、適当に爪弾きながらボリュームを調整する。・・・これで良いだろう。
俺はデスクの椅子に腰掛け、丁度晶子と向かい合う形になって、ギターを構える。
緩やかな沈黙が部屋を支配している。晶子が俺を注視する中、演奏を始める。
乳白色の満月の光をイメージしたオープニングに続いて音域をフルに使ったアルペジオからなるイントロを奏でる。
もう分かっただろう。そう、「Fly me to the moon」のギターソロバージョン。
俺と晶子のレパートリーの一つであり、俺と晶子を結び付けるきっかけの一つになったアイテムでもある。
店ではアコギを使うんだが、店に比べると圧倒的に狭いこの閉鎖空間ではかなりの音量になる。時間も時間だ。近所迷惑になったら話にならない。
多少イメージは違ってくるが、こういう時は全体の音量を任意に調節出来るエレキギターを使うに限る。
この曲は今でも時折リクエストを受けるし、忙しい合間を縫ってステージで弾く時もある。
俺を含めた店の関係者4人がそれぞれのバージョンを持つから、原曲を知っている人も意外な楽しみを感じられるからだろう。
店が今連日大盛況なのも、コーヒーや軽食片手に生演奏が楽しめるという喫茶店らしからぬ「余興」があることが広まったからだしな。
駆け下りるようなフレーズを奏でて、最後に零れ落ちる光をイメージした装飾音符付きの高音を一つ奏でる。
音が消えて俺がフレットから左手を離すと、パチパチパチと拍手の音が鳴り始める。
たった一人の、でも誰よりも大切な人からの拍手。これだけでも演奏した甲斐があったってもんだ。
「何時聞いても良いですね。」
「アコースティックだともっと良いんだけどな。」
「その曲と演奏が融合して生み出す雰囲気があれば十分ですよ。音楽は音という形で人の心に共鳴を呼んで、感動を生み出す芸術の一つなんですから。」
「そうだよな・・・。」
音楽は自分が楽しむのも大切だが、俺の場合は人に聞かせて楽しんでもらうことを要求される。今回はその目的が達せられたんだから、それで良い。
まだ時間はあるな。もう1曲くらい演奏出来そうだ。さて、何にしようか・・・。
折角だ。晶子にリクエストしてもらうとするか。優柔不断と言えなくもないが。
「何か聞きたい曲はある?」
「それじゃ『AZURE』を。」
「分かった。」
何となく予想はしていた。
失恋のショックでささくれ立っててひたすら晶子を避けていた俺の前にまた現れ、挙げ句の果てには同じバイトとして食い込んだ時に弾いていた曲。
この曲を弾く度にあの時を思い出す。
新曲を喜び勇んで投入し、夢中になって弾いていた俺が顔を上げた先に見えた、驚愕と感動が入り混じった晶子の顔を・・・。
深夜の、たった一人の観客を程近いところに置いた短いコンサートが続く。
俺は進むべき道を、否、進まなければならない道をまだ決めていない。否が応にも決めなければならない時期が間もなくやって来る。
少なくとも晶子と、今俺の前に居る大切な人と、自分を崖っぷちに追い込んでまでも俺との幸せに全てを見出した孤独な女神との幸せを掴むために、
心を固めておこう。
10本の指が奏でる音の流れと、それに纏わる記憶で・・・。
・・・ピピッ。ピピピッ。ピピピッ。
何処かから音が聞こえてくる。頭の中が急速に白んでくる俺の傍でごそごそと何かが動く。
俺が目を開けたところで音が止まる。両肘を布団についた晶子が目覚ましの背面を操作している。
「これで良いんですよね?」
「どれ・・・。」
俺は目覚ましを受け取り、背面のスイッチを見る。この位置なら少し時間をおけばまた鳴り出すことはない。
俺は腕を伸ばして目覚し時計を元の位置に戻す。元の位置、と言っても適当なもんだが。
「あれなら大丈夫。・・・おはよう。」
「おはようございます。朝御飯作りますね。」
「ああ。」
晶子は俺の頬に軽くキスしてからゆっくり起き上がる。そしてベッドの脇に腰掛けて下着をパジャマを着る。
・・・そう。昨夜も一戦交えた。
交互に風呂に入って揃ってベッドに入り、寝る時の挨拶を交わした直後に晶子が俺の手を握って目で訴えかけてきたから「戦闘」に突入した。
よく眠れたが、ちょっと寝不足な気もする。
晶子が服を着終えた後で、俺はベッドから出て下着とパジャマを着る。
閉じられたカーテンの片方を掴んで少し捲ると、明るくて柔らかい陽射しが差し込んで来る。どうやら今日も秋晴れのようだ。
キッチンから色々な音が聞こえてくる。水が蛇口から流れ出る音、何かを掻き混ぜる音、何かが軽くぶつかり合う小さくて甲高い音。
俺一人で慌しく向かえる朝に奏でられる狂想曲とは全然違う、心地良くて穏やかな時間に相応しいプレリュードだ。
俺は陽射しを遮る厚手のカーテンだけ開ける。薄暗かった部屋が一気に明るくなる。今日一日が始まったと言う気分が強まる。
晶子が朝飯を作ってくれている間、俺は大学へ行く準備をする。
準備と言っても大層なものじゃない。テキストとノート、レポート、筆記用具を鞄に入れればおしまいだ。
後は・・・大人しく待つとするか。勝手を知らない俺が手を出しても足手纏いになるだけだしな。
「あ、聞かなかったですけど、今日もご飯で良いですか?」
「ん?ああ、良いよ。」
俺一人の時は大抵、否、殆どパンなんだが−ご飯炊いてる時間がない−、こういうゆったりした時間はゆっくりご飯を食べたい。
パンとご飯では腹持ちが違う。それは昨日よく分かった。頬杖をついてぼんやり窓を眺めていると、肩にそっと手がかかる。
「ご飯が炊けるまで時間かかりますから、もう少し待っててくださいね。」
「慌てなくて良いさ。何時も火曜の朝はこの時間に起きてるんだろ?」
「ええ。私は朝にご飯を食べますし、炊き立てを食べるのが好きですから。」
「時間も十分あるし、美味いものを作ってくれれば良いよ。」
「それは任せてください。」
ゆったりした朝のひと時。火曜の朝はこんな感じだ。だが、晶子の家で向かえる朝とはまた趣が違う。
普段はレポートの作成とギターの練習と風呂と寝ることくらいしか存在しない空間に、温かくて美味い食事が出来る過程とそれを作り出す人が居る。
それだけでも全然違う。土くれで作られた人型に息吹が吹き込まれたような、そんな感じだ。
何かと慌しい毎日。
ともすれば大学と此処、そしてバイト先と此処とのピストン運動の反復になってしまう、言い換えれば惰性そのものになりがちな毎日に刺激と活力を
与えてくれる、晶子という存在。
晶子は、何時になるとも知れぬ俺の帰りを手作りの食事と共にじっと待っていてくれた。その食事を一緒に食べた。
そして昨夜は短い時間だったがギターを披露した。更に夜を共にした。
愛する相手と一緒に居るという幸せが凝縮されたひと時だった。
否、「だった」という表現は適切じゃないな。今でも続いているんだから。
俺の背後から腕を首に絡めて左肩口に顎を乗せている晶子との時間は、確かにまだ続いている。
耳に感じる、前後にゆっくり行き交う微かな風が、その存在を静かに、しかし如実に物語っている。
「こういう時間って、良いですね・・・。」
「そうだな・・・。」
耳に流れ込んでくる囁きに対して、思ったままが言葉になって返って行く。
こういう時間。こういう関係。幸せなんだ、と改めて実感出来る。
左頬に滑らかな感触を感じる。それはゆっくり前後し始める。磨かれた石の滑らかさと程好い弾力が合わさった心地良さに、俺は目を閉じる。
「あまりに安っぽいと思うかもしれないけど、一緒に手作りの料理を食べたり、こうやって特に何もせずに漠然と二人だけで過ごしたりするのが、
俺の理想だったんだ・・・。」
「ちっとも安っぽくないですよ。少なくとも私にとっては・・・。少しでも、短くても良いから、好きな人と時間を共有出来る関係が幸せなんです。
だから日曜の夜から泊まらせてもらったんです。一緒に居られることそのものを大切に出来る人と一緒に居たかったから・・・。それに・・・。」
「それに?」
「私が愛してもらえる時に・・・愛して欲しかったから・・・。」
その言葉の後に、それまで止まっていた滑らかな感触の動きが再開される。
思えば、今まで晶子を抱いた時は避妊をしていない。それは妊娠を避けるためでもあり、晶子が俺に愛されていることを直接感じたいからだろう。
昨日と一昨日は「その時」だったんだ。だから日曜から此処に泊り込み、俺を求めたんだろう。
「そのせいで、祐司さんを苦しめてるのは心苦しいですけど・・・。」
「否、それで良いんだ。男は性欲を自分で適当に処理出来るからな。だけど、相手が居る以上は相手のことを考えないといけない。前にも言ったかもしれないけど、
男って奴は一旦女の味を占めてしまうと、なかなかストップがかけられないんだ。しかもその相手が好きだという気持ちを持ってると尚更・・・。」
「・・・。」
「前に潤子さんに言われただろ?子どもを出汁にした関係にはなるな、って。俺と晶子が合意の上なら良いけど、殆ど毎日したい盛りの男の都合で晶子が
妊娠したら、結婚するか中絶するかの選択を迫られる。心の準備も実際の生活の準備も出来てないのに結婚したら行き詰まるだろうし、中絶は話でしか
聞いたことないけど、女にとっては二度と子どもを産めない身体になっちまうこともある危険なものなんだろう?」
「ええ。」
「そんな危険に晶子を放り出したくない。そんなことは晶子に対しては勿論、本来生まれてくるべき命を絶ってしまうんだから、その子どもに対しても
責任放棄だと思う。そんなことになるなら、ベッドで妄想して欲望を処理してた方がずっと良い。誰にも迷惑かけないから。」
「だから、私が態度で示さないと祐司さんは行動に移さないんですね?場所が祐司さんの家でも。」
「ああ。生まれてくるべき子どもの命を弄んだ挙句に、それがきっかけになって晶子との関係が壊れるなんて真っ平御免だからな。」
晶子の頬擦りがまた始まる。
つい数時間前、暗闇の中でこの肌の感触と温もりを指と唇で堪能した。悩ましい喘ぎ声と魅惑的な動きも見聞きした。
だが、朝日が染み込む今は、左頬に感じる滑らかな感触、そして背中に感じる柔らかい感触がどれも心地良くて幸せだ。
今度は何時晶子がOKサインを出すかは分からない。そんなのを待ってるだけの関係なんて御免だ。
湧き上がってくる欲望は適当に処理するか時の流れに放り込むかしておいて、左手薬指に象徴される晶子との関係を大切にすることに専念した方が良い。
否、そうしなきゃならない。少なからぬ周囲に結婚を公言し、晶子とその約束をしている以上は・・・。
ゆったりした雰囲気の中で一緒に朝飯を食った後、シャワーを浴びてから着替え、家を出た。
朝の空気が肌にひんやりと染み入る。その感覚はやがて訪れる冬を予感させる。
俺と晶子が並んで歩く通りは、活気に満ちている。活気と言うより喧騒と言った方が良いか。
定時までに学校や会社へ向かうべく人も車も急ぐ。そんな忙しない日常の光景から、俺と晶子が切り離されているように思う。
俺と晶子は1コマ目の開始に十分間に合う時間の電車に乗る。しかもこうして歩いていっても十分間に合う時間だ。あえて周囲の流れに乗る必要はない。
改札を通り、混雑するホームで電車を待つ。
小宮栄方面のホームは鼠が入る隙間もないほどごった返してる。反対側のこっちのホームはそれほどではないにしても結構混雑している。
大学の他に新京市の市役所や県庁があるし−市役所へは住民票移動のために1回行ったことがある−、小宮栄には遠く及ばないにしても企業がそれなりに
集中している中心部があるから当然と言えばそうだが。
甲高いブレーキ音と共に、見慣れたカラーリングの電車がホームに入ってくる。
電車が目前に来ただけで早々と出入り口付近に移動するのも、何時もの光景の一つだ。
そして空気が抜けるような音に続いてドアが開き、若干の乗客を吐き出した後大量の乗客を吸い込むのも、これまた何時もの光景だ。
俺が晶子の手を握って離れないようにするのは、火曜の朝に限った光景だ。
「大丈夫か?」
「はい。」
俺と向かい合わせで密着している晶子が答える。鮨詰めの車内だからこそ実現可能な、ある種の役得だ。
俺と晶子はあまり身長差がないから、晶子とほぼ同じ高さの目線で向かい合える。
身長があまり伸びなかったことに少々劣等感を持っていたこともあるが、それはもう過去の話だ。
軽い衝撃の後、電車が動き出す。
窓の外は窺い知ることは出来ないが、俺に密着して左肩口に頭を委ねている晶子の存在は十二分に感じ取れる。
茶色がかった長い髪の隙間から垣間見える銀と緑の小さなコントラストが、小さく揺れている。
今日、晶子は講義が終わったら俺の家に向かい、荷物を持って自分の家に戻る。2日間の突然の蜜月−蜜日と言うべきか−は終わる。
けれど、それで以って俺と晶子の関係が終わるわけじゃない。
間近で甘い香りを放つ髪と、俺の左手を軽く握る手が、短い蜜月の終幕を名残惜しんでいるように思う。
混み合う空間に幽閉されて揺られること暫し。聞き慣れたアナウンスが流れ、電車が次第に減速していく。
軽い衝撃の後空気が抜けるような音がして、人の波が音の方向へ向かう。俺は晶子の手を取ったままその流れに乗って電車から降りる。
人に溢れるホームに晶子と共に降り立ったことを確認して手を離す。手は離しても距離は変わらない。
電車がゆっくり去っていくのをチラッと見て、人の波に乗って改札へ向かう。
混雑した改札を抜けると、人の波が大きく二手に分かれる。一方はバス乗り場。もう一方は大学方向。俺と晶子は当然後者だ。
「過ぎてしまうとあっという間ですね。」
大学へ向かう道を歩いている途中、晶子の言葉が耳に流れ込んでくる。
「2日間だけでしたけど、自分の家じゃないところで食事を作ったり、それを一緒に食べたり、好きな人からの電話や好きな人が帰って来るのを
待ったりするのが凄く楽しくて幸せで・・・。」
「・・・。」
「同じバイトしてますし、1週間に1度は朝御飯を一緒に食べられますけど、それとはまた違う幸せがありました。・・・安っぽいですよね?」
「否。俺も同じだよ。」
歩を止めず、顔だけ晶子の方を向ける。
「ゆっくり味わいながら朝飯食って、実験の合間に電話で声聞いて、帰った時に普段なら真っ暗な窓が明るくて、ドアが開いたら好きな相手が笑顔で
お帰りなさい、って迎えてくれる・・・。本当に嬉しかったし、幸せだった。特に・・・帰ったら迎えてくれるってのが。」
「・・・。」
「あれは・・・実家から戻って来た時以来だったからな。ドアが開いて晶子が迎えてくれた瞬間、帰って来たんだ、って実感したよ。あれで実験の疲れが
一気に取れたし、約束守って良かった、って思った。」
「祐司さん・・・。」
「俺はこんな性格だしファッションとか流行とかに全然興味ないから、たまにプレゼントするものと言えば小さなアクセサリーくらいだし、気の利いた言葉も
言えない。一緒に居られる時間を作ってそれを一緒に過ごすのが関の山。だけどそれで晶子が幸せなら、俺も幸せだよ。他のどんなものにも変えられない
ものだからさ・・・。金額で価値がつけられないから安っぽい、って言われればそれまでだけど、俺はそれで良い。」
「私も同じですよ。」
晶子の柔和な微笑みに誘導されて、俺は笑みを返す。
週に1度は何処かにドライブに出かけて洒落たディナーを食したり、何かのイベント毎に高価なプレゼントを贈ったりするのも幸せの一つなら、俺と晶子が
共有しているものも幸せの一つの形。
妥協の産物かもしれない。貧乏学生の絵空事かもしれない。でも、それに俺と晶子が幸せを感じているのは事実だし、それならそれで良い。
やがて大学の建物と正門が見えてくる。
そこを入って少し歩くと、俺が居る工学部他理系学部のエリアへ続く道と、晶子が居る文学部他文系学部エリアへ通じる道に分かれる。
此処で一旦お別れだ。この時交わす挨拶と言えば・・・。
「それじゃ、また後で。」
「はい。また後で。」
晶子は笑顔で手を振ってから、文系学部エリアへ通じる道を歩いていく。
俺と晶子はまた何時もの生活に戻る。「すれ違いカップル」とバイト仲間という両面を持ち合わせた関係に。
晶子も言ってたが、幸せな時間ってのは過ぎ去ってしまうとあっという間だ。
あの幸せを本当に手中にしたいなら、もう決めないといけない。どの道に進むのかを。
晶子の姿が見えなくなったのを見て、俺は講義棟への歩みを再開する。
晶子と出会ってもう2年が過ぎた。正式に付き合い始めて間もなく2周年。
それに大学卒業と同時にピリオドを打ちたくなければ、尚のこと俺が進むべき道を決めなきゃならない。晶子は俺の将来設計に合わせる、と言ってるんだから。
俺は・・・どうしたら良いんだろう?この根本的な疑問に未だ回答を見出せないでいる。
就きたい職業ってもんが明確にあったわけじゃない。
どういうわけか成績優秀だったことと、ちょっとした家電製品にもコンピュータが内蔵されている今の時代と、趣味の音楽に関係するカリキュラムが
あるってことで今の大学を受験候補に入れて、結果合格して入学出来た。それだけだ。
妙な選り好みをしなければ、全国に名立たると言われるこの大学の学生、ってことでそれなりに職はあるだろう。
だが、受験戦争という濁流に投げ込まれてしがみ付いた岸が偶々今の大学の今の学科、って有様だった惰性で就職したくない。
金を稼ぐことはこんなもんだ、と妥協して仕事するのも必要かもしれない。だが、それは俺の性に合いそうにない。
他人から見ればささやかでも良い。安っぽくても良い。今抱いている幸せを手放したくない。
自らを崖っぷちに追い込んでまでも俺と一緒に生きることを決めた女神の悲壮な決意を足蹴にしないためにも・・・。
それは同時に、金や看板より幸せを優先させることでもある。
俺は・・・どうしたら良いんだろう?
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