「お待たせしました。それでは作戦会議を始めます。」
そう切り出したのはリーク本人だった。昨日と同じく、進行役は自ら行おうという姿勢らしい。中央の、それも最高幹部自らこういう地味な役を買って出る「まずは資料を配布します。ではよろしく。」
リークが言うと、同じ列の左右に座っていた計4人が、テーブルに置いていた紙の束を持って左右に分かれて配り始める。資料は厚さ0.5セームあるか「それでは、最初のページを見て下さい。」
その場にいた全員がほぼ同時にページを1枚捲る。最初に現れたのは地図で、そこにはナルビア周辺の地形と大まかな森林などの他に下方から
ナルビアへ向けてほぼ直進する矢印と、一旦北へ向かって森林を東へ通り、北方からナルビアへ向かう矢印の二つが描かれている。
「今回の作戦は二手に分かれて行いたいと思います。矢印をご覧になればお分かりのとおり、此処からナルビアへ向けて敵の戦線を突破しつつ向かう
コース、そして一旦北から森林に入り、鍾乳洞を経由して城の排水溝から進入するコースの二つです。双方にはそれぞれ重要な役割があります。直進する
コースは城に近い敵の勢力を排除すること、そして森林から入るコースは城内部に潜入して我らの同志と重要人物を救出し、同時に敵勢力を霍乱する
ことです。」
「重要人物って・・・。」
「貴方の父上ともう一人、アルフォン家の令嬢のことですよ。」
リークがアレンに説明する。
フィリアはアレンの父ジルムが救出対象として含まれているのは勿論嬉しいのだが、アルフォン家令嬢ことリーナまで重要人物扱いされることには納得
しかねるものがある。しかし、それは多分に個人的感情であって、それをこの場では口にするべきでないことくらいは分かるので、フィリアはぐっと堪える。
「現在、敵の戦力はこれまでドルフィン殿の一行が進行して来られたコース上の都市、テルサとミルマの奪還に向かうことはなく、我が『赤い狼』が
最大勢力を誇る都市であるエルスとバードの二都市の攻略に向けられる一方、文字どおり最後の砦であるナルビアの迎撃力整備に向けられています。
念のためもあり、また国家特別警察によって破壊された人民の生活の復興を最優先する立場から、テルサやミルマの支部組織は今回の作戦に合流すること
なく、それぞれの都市で生活基盤の再構築に当たってもらうよう、指示を出しました。」
「ということは、此処中央の人間と俺達だけで今回の作戦を決行するということか。」
「はい。今回の作戦に参加する我々の戦力は総勢約2500。敵勢力はナルビア駐留分で推定5万、マシェンリー川付近に待機中の戦力約1万が合流すれば
計約6万ですから、戦力としてはおよそ28倍の開きがあります。」
「ちょ、ちょっと。28倍の戦力差なんて話にならないじゃないですか?」
「数の上では確かに圧倒的に敵が有利です。しかし、敵勢力は戦略に欠ける面が多く、数で力押しするような感があります。実際、エルスとバードでも
戦力では圧倒的に我々が不利でしたが、現在では敵勢力をほぼ撃退することに成功したくらいです。それに敵勢力の中には数と権威の鎧を剥がせば、
実力的には素人同然の勢力が相当数存在します。」
「ふーん・・・。侵略の軍隊だからもっと強力な戦力を備えてても良さそうなものなのに・・・。そう言えば、テルサも魔術師が居なかったし、いきなり
攻め入って威圧してその勢いのままで町を支配したって感じだったわね。」
「ミルマの場合もほぼ同様です。さらにミルマには国王勢力と密接な関係があるミルマ経済連がありますし、自警団も事実上ミルマ経済連の支配下に
ありましたから、街の支配はむしろテルサより容易だったかもしれません。そんな事情もありますから、今回も数の面では圧倒的に不利でも、この度
ドルフィン殿の御一行との共闘関係を締結できたことで勝機は我々に十分あります。」
「なるほど・・・。」
「そこでドルフィン殿。貴方には直進するコースに加わっていただきたいのです。こちらはマシェンリー川に待機中の戦力など、敵勢力と多く交戦するのが
必至。貴方の力が是非とも必要です。よろしいでしょうか?」
「分かった。」
「ありがとうございます。で、残るお二人は森林から迂回するコースに加わっていただきたいと思います。こちらは情報部隊が中心となって行動します。
勿論、情報部隊も実戦能力を備えていますのでご安心下さい。」
「あの・・・どうして俺とフィリアをドルフィンと別コースにするんですか?」
「今回作戦に加わるメンバーの大半はアルフォン家令嬢の顔を見たことがありませんし、当方で把握している人相などの情報だけでは判別の決め手に
欠けます。貴方の父上は尚更です。顔を知っている貴方達の少なくともどちらかに加わって戴かないことには救出に手間取る可能性が高くなります。」
「あ、そうか・・・。」
「あいつの顔なんて思い出したくもないけどね・・・。」
「それで、森林から入るコースは一旦、森林前で前線基地を作ります。そこから先陣が内部に侵入して重要人物を救出する一方で救出した同志と共に
内部を霍乱、そして一度前線基地へ引き返した後、直進するコースと同時に城へ突入するというのが今回の作戦です。」
「森林からのコースはかなり危険を伴うな。」
「はい。しかし今回の共闘作戦の条件である重要人物2名の救出を行い、且つ我々の行動が囚われの身となっている人民への報復行動になることを
避けるには、今回の作戦が最も適切なものかと思います。」
「俺が加わるコースは道さえ案内して貰えれば人数は少なくても良い。この二人の身の安全を最優先してくれ。」
「失礼ですが・・・ドルフィン殿。私達は貴方の力を知らない。先程の言葉をそのまま受け取って良いんですか?」
「お前達『赤い狼』は、俺の力が欲しいから主義主張の同化を棚上げにしてまで俺達に共闘を申し込んだんじゃないのか?」
「それはあくまで中央本部として下した総合的な判断です。テルサ支部やミルマ支部からの情報で比類なき力と聞き及んではいますが。」
「見たいんならその目で見てみることだ。もっとも戦力の配分が許せば、だが。」
「この場で一度お見せいただきたい。我々にとって戦力の把握は重要なことです。」
「止めなさい、バルジェ。我々『赤い狼』はテルサ支部やミルマ支部からの情報だけでなく、我々の目的である王権打倒の達成に最も近付いている現在の
情勢を踏まえた上で、中央本部で検討した結果、ドルフィン殿の一行と共闘関係を締結することを決めたのだ。今この場において議論すべきは共闘作戦の
内容であって、情報の信憑性ではない。」
「しかし代表。信憑性が疑わしい情報を元にした作戦を議論するのは・・・」
「さっきも言った筈だ。情報だけを元に共闘関係を締結したのではない、と。」
「話を元に戻します。戦力の配分は直進するコースと森林を通過するコースでおよそ6:4の割合で配分します。森林を通過するコースは進軍の途中で
他都市から召集された敵勢力と鉢合わせになる可能性も考えられますので、魔術師や魔道剣士も多めに配備します。」
「配分はそちらで決めてもらえば良い。進軍の順番や日程はどうなってるんだ?」
「それは次のページをご覧下さい。」
「表記中『北進コース』と書いてある方が、先程まで直進するコースと称していた方です。そして『潜入コース』と書いてある方が森林から入るコースと
称していた方です。で、まず北進コースの方から出発して潜入コースはこの中央本部で待機してもらいます。北進コースは一旦エルスとバードの応援に
向かいます。この状態になった段階で潜入コースに連絡を行いますので、直ちに出発してもらいます。」
「エルスとバードまで所要時間は丸1日か・・・。これは不眠不休で突っ走った場合か?」
「いいえ。途中8ジム程の断続的な休憩を挟みます。そうでないと戦闘に支障をきたす恐れがありますので。」
「そうか。分かった。」
「北進コースはここでエルスとバードで交戦中の我が支部と合流して戦闘を行い、敵勢力を撤退に追い込み、それを追う形で北進します。そして
マシェンリー川を渡り、物資や戦力を補給するために待機中の敵勢力と交戦、さらにこれらを徹底的に追い込み、それを追う形でナルビアの手前まで
進みます。ここで可能な限り敵勢力を削減することが望ましいので、ドルフィン殿のお力を借りたいということです。」
「まあ、テルサ程度の兵力なら軽いもんだが・・・。魔術師や魔道剣士が居ると少々面倒だな。それで所用時間を10日としているわけか。」
「はい。ドルフィン殿のお力は情報で聞き及んではおりますが、敵勢力が向上している可能性も考えられますので、余裕を考えてそのように設定した
次第です。それに加えて、エルスとバードは町そのものも一時戦場になっていましたので、ある程度復興しないと人民の生活基盤が崩壊してしまいます。
北進コースはその方面での救援的役割も担うことになります。」
「それは仮にも国王にとって代わろうというなら当然のことだ。一般人の生活支援も出来ないようじゃ、単なるゲリラ集団と同じだ。」
「おっしゃるとおり、我々はあくまでもある主義主張を元に国を運営しようと考える組織ですから、戦闘のみならず、必要ならば人民の生活基盤を整備、
支援するのは当然のことです。さて・・・潜入コースは北進コースからの連絡を受けて出発します。この連絡の所要時間には北進コースのエルスとバードへの
到着時間である丸1日を想定していますが、北進コースが途中で敵勢力と交戦するなど、諸般の事情で連絡が遅れる可能性があります。北進コースが
出発してから連絡が到着するまでに最大所要時間の2日プラス3日を過ぎた場合、潜入コースはそれ以上連絡を待たずに出発してもらいます。」
「代表。潜入コースは出発から図中にある森林前の前線基地構築までの所要時間を6日と見込んでいますが、もう少し長くした方が良いのでは
ないでしょうか?」
「その理由は?」
「距離としてはこちらの方が長いですし、他都市から召集された援軍と交戦状態になる可能性もあります。戦力を等価に配分したとしても、前線基地を
構築する期間を含めた所要時間を最低15日は見込んでおくべきではないかと思います。」
「ふむ・・・。しかし、15日は長過ぎるのではないか?あまり遅いと北進コースが足止めを食らうことになって、さらに戦闘が行われることになる。そうなると、
囚人や非戦闘員が戦闘に駆り立てられたり、みすみす増援を待つことになりかねない。」
「え?ということは、国王勢力は囚人や一般の人を徴収したものじゃなかったんですか?」
「ええ。敵勢力は国外から派遣されてきた兵士を従来の国軍の配下にしているそうです。」
「それは何処からの情報なんですか?」
「これまでの戦闘結果と捕虜にした国家特別警察の兵士から得た情報です。国家特別警察の構成は従来の国軍の下士官クラスを各都市の支部長官や
幹部クラスと定め、その配下に従来の国軍の一部と多数の派遣されてきた兵士を置いているということが判明しています。その為か捕虜にした兵士達は
一様に国王に対する忠誠心が希薄で、中には国王の名前すら知らない者もいるほどです。」
「そんな兵士を一体何処から大勢・・・。」
「アレン。今は作戦についてのことだけに考えを集中するんだ。特に今はお前が加わるコースに関することを議論してる。話を終えてから推測しても
遅くない。」
「よろしいですかな?」
「は、はい。リークさん、すみませんでした。」
「いやいや。では本題に戻して・・・この件に関して他に意見はありますか?」
「代表。15日は長いとしても、前線基地構築の場所が敵の航空部隊に発見されたりしないよう森林内部に構築するとして、その分の手間を考えて10日
ぐらいは見込んでおくべきだと思います。」
「私も同感です。倍の12日くらいが適当かと思います。」
「しかし、迅速性も要求される今回の作戦では、そもそも北進コースの10日というのも長すぎるような気がする・・・。」
「潜入コースの場所までは余裕を持っても4日で到着する距離だ。我々の技量なら2、3日あれば十分前線基地を構築できる筈だ。」
「潜入コースは先陣が続いて敵本陣である城内に突入するんだから、体力回復の時間を考慮して7日か8日は見込むべきじゃないか?」
「北進コースも戦闘が続く。それで余裕を持って10日としているとのことだから、潜入コースは出発までのロスを除いてももっと多めに見込んでおいた方が
良いと思うぞ。」
「日程に関して出された意見は大別して二つ。一つは今回提案したもので良いというもの、もう一つは、潜入コースは出発までのロスや体力回復、
前線基地構築の時間を多めに見込むべきだというものです。他に意見はありますか?」
「・・・。」
「意見がないようですので、それらに関して順番に意見を主張してもらって、最終的に多数決で日程の案を決定することにします。まず、日程は現状どおりで
良いと思う人は挙手してそれを支持する理由を述べてください。」
「今回は事態が急を要する。相手が今まで実力や忠誠心に乏しい傭兵で組織されてきたとはいえ、新たに投入される部隊が必ずそうであるという保証は
何処にもない。相手である国王勢力に補給や援軍の時間を与えることは賢明じゃない。北進コースは早め早めに敵を叩いてナルビアまで追い込み、遠距離
攻撃が可能ならそれで潜入コースの到着や連絡を待たずに極力ナルビアの戦力を削っておく。そうすれば潜入コースが進軍し、前線基地を構築する余裕も
生じる。」
「今回こうして二つのコースに分けたのは陽動作戦の意味もあってのことですが、ドルフィン殿はその意味をさらに強めようということですか?」
「そうだ。北進コースで国王勢力を撤退させるのに10日というのも、俺に言わせればむしろ長過ぎるくらいだ。戦闘だけでそれが殺し合いも辞さないと
いうのであれば、2日3日あれば十分だ。市民生活の復旧に時間をかけたいといっても、それは最低限に留めるかその町の支部を復旧活動に専念させるなり
して、本隊はあくまでナルビアを目指した方が良い。」
「殺し合いも辞さない・・・それは、今までの戦闘でもそうでした。我々とて無意味に死傷者を出したくはありませんが、自己防衛や人民の生活を圧政から
救うために、敵兵を相当数殺害しています。無論、我々の側でも死傷者は出ています。」
「戦争で出た死傷者に無意味も何もない。戦争は殺し合いなんだから死傷者が出るのは当然だ。違うのはその数が多いか少ないかでしかない。それに
死傷者の位置付けや戦争の目的なんてのは前でも後でもどうにでも付け足せる。国王勢力がお前達を殺すのは国家のため、治安維持のため、と言って、
その過程で出た死傷者は国家のため、治安維持のために戦って傷つき、或いは死んだのだと賞賛するのと同じだ。立場が違えば死傷者の位置付けも相手を
殺す目的も違う。戦争ってのはそういうもんだ。」
「・・・では、潜入コースの日程の方はどうでしょう?」
「同時に出発しても差し支えはないんじゃないか?『赤い狼』は情報伝達手段に関しては奴等より上手のようだし、それを使えば北進コースと潜入コースが
どんな場所に居ても状況や指示のやり取りができるだろう。・・・俺が今言いたいのはそれだけだ。」
「・・・他に、現在の日程に関して支持する理由のある人は。」
リークが滞った空気を破って問いかけけるが、ドルフィンの言葉があまりにも重く圧し掛かったせいか、他に挙手する者はなかなか出てこない。「・・・私もドルフィン殿と同じく、日程的には原案を支持します。北進コースにはドルフィン殿が加わるということですし、敵勢力の撃退にさほど時間を
要しないと思います。市民生活の復旧はエルスとバードの支部に任せることにして、我々はあくまで敵の本陣であるナルビアへ後退する敵勢力を追うことに
専念すべきだと思います。」
「潜入コースの日程に関しては?」
「出発までの待ち時間の3日というのは長いと思います。ドルフィン殿も言ったように、むしろ同日に出発して一刻も早く作戦の実行に当たるべきだと思います。
日程としてはナルビアやミルマ以東の他都市10)からの追撃隊との交戦を考えると、これで丁度良いくらいではないでしょうか?」
「ミルマ以西から応援が通過してくると厄介なことになるぞ。現在までにミルマに他都市からの応援が通過しようとしたなどという情報は届いているのか?」
「ミルマ支部からの情報では、他都市やナルビアから国家特別警察が派遣されたということはないということです。また、テルサからもつい先日情報が入り、
現在は支部の建て直しと同時に町の防衛力整備に協力しており、他都市からの敵勢力の襲撃は今のところないそうです。」
「だとすると、ミルマ以西からの敵勢力の進入の可能性は非常に低くなりますから、エルスとバードの攻略に大きな戦力を割いている敵の情勢から考えても、
この日程で妥当ではないかと思います。以上です。」
「分かりました。他に支持理由を述べる人は居ますか?」
「では次に、所要時間を大目に見込むべきだという人は挙手して支持理由を述べてください。」
これには同時に3人が挙手する。何れも先程その意見を述べた者だ。
「所要時間は大目に見込むべきだと思います。潜入コースはドルフィン殿が居ない為、一旦交戦状態に突入すると長引く可能性があります。その体力回復や
体勢の建て直し、そして森林内の前線基地構築という困難な状況を踏まえると、所要時間は10日では少ないと考えます。以上です。」
「私も同じです。我々の戦力を代表が先程述べたように配分すると潜入コースの方が少なく、交戦時には非常に不利です。出来るだけ安全なルートを
辿ると必然的に遠回りを余儀なくされます。その上前線基地の構築がありますから、所要時間は多く見込むべきだと思います。終わります。」
「私も潜入コースの所要時間を多く見込むべきだと思います。やはり戦力そのものが敵勢力より圧倒的に少ない上にそれを2コースに配分するわけですから、
余程強力な精鋭でも揃えない限り厳しい戦いは避けられません。今のところ安全が保証されているミルマ寄りに大きく迂回することや前線基地構築を
考えて、原案より多めに所要時間を見込むべきだと考えます。以上です。」
「以上で二つの案の支持理由が述べられました。これ以外に質問や意見などはありませんか?」
見渡してやはり挙手する様子はない。これで全ての案とその支持理由が出揃ったと言える。「ではまず肝心の、潜入コースの日程がこれで良いかどうかの採決を行います。これまで述べられた意見を踏まえて各自判断して挙手してください。
過半数が挙手した案を採択し、必要なら続いて日程について議論します。」
「今から10ミムほど間をおきますので、休息がてらその間に判断してください。」
リークの宣言に合わせて周囲がざわめき始める。近くの人間と討論しているのだろう。アレンとフィリアは半ば眠気を感じていたところに採決すると「ねえ。ドルフィンはどっちの案が良いと思う?」
アレンが尋ねると、ドルフィンは首だけ二人の方を向けて短く答える。
「自分達に関係することなんだから、自分の頭で考えることだ。」
考えても分からないから意見を求めているのに、とアレンは少しむっとするが、確かにドルフィンの言うことはもっともである。コースが分かれることは「アレンはどっちが良いと思う?」
「さっきから考えてるんだけど・・・地図を見ると距離的にはこの紙に書いてある案で十分だと思うけど・・・敵と鉢合わせになったりそれを避けるために
出来るだけ迂回することとか考えると、大目に見込んでおいたような良いような気がするし・・・迷うんだよなぁ・・・。」
「アレンも迷ってるのかぁ・・・。私も人のこと言えないけど・・・。」
「では、時間がきましたので採決を行います。」
リークの宣言を聞いて二人は早過ぎないか、と思わず時計を見るが、確かに時計の針はリークの前の宣言から10ミムを過ぎている。二人は必死で自分の「まず、原案どおりで問題ないとする人は挙手して下さい。」
ドルフィンとバルジェの他、意外に多くの出席者が挙手する。その中にはあのイアソンも含まれている。リークは挙げられた手の数を素早く数えて、「次に、日程の変更をすべきだという人は挙手して下さい。」
これには先程挙手しなかった面々に加えてアレンとフィリアが挙手する。ドルフィンの力無しに挑んだハーデード山脈の古代遺跡内の戦闘での経験を「採決の結果、私と私の横に並ぶ副代表、書記長、書記委員4名の計7名を除く有効票数80のうち、原案支持が47、日程変更案の支持が43。よって原案を
採用するものとします。」
「では潜入コースの日程は原案どおりとして、次の議題は潜入コースの出発時期です。これに関しては、原案どおり北進コースの出発から最長5日後に
出発するか、ドルフィン殿が言われたように北進コースと同時に出発するかの二案が現在までに出ています。それ以外に意見はありませんか?」
「こちらは直ちに採決を行います。まず、原案どおり北進コースの出発から最長5日後に出発する案を支持する人は挙手して下さい。」
今度は明らかに挙手の数が少ない。リークはしかし、その数を数えて右隣の男性に伝える。やはり先程挙手の数を数えていた4名も−彼らが書記委員で「続いて、北進コースと同時に出発する案を支持する人は挙手して下さい。」
今度は先程とは逆にアレン、フィリア、ドルフィン、そしてイアソンやバルジェの他に多数の手が挙がる。やはり今回でも、ドルフィンが加わる