寒さ極まるある冬の夜、ふとベランダに出てみた。
空調が効いた空間からサッシ1枚隔てた先にある、冬の深夜の冷気に身が縮む。
一瞬戻ろうと思ったが、空に浮かぶ星を見て迷いを消し去る。
黒一色の空に散らばる小さな光のかけらは、どれも豊かなきらめきを放っている。
こんなに星が綺麗に見えたのは、何時以来だろう。
帰る途中や帰宅してから何気なしに星空を見る機会はあったけど、
こんなに星が綺麗に見えた記憶はない。
もっと空が明るくて、星が見えなかった・・・。
・・・ああ、そういうことか。
街が明る過ぎて、星の光がかき消されてたんだ。
何時出かけても何でも買える店があって、午前様でも道が分かる街灯があって、
便利で快適で安全な分、星の光を遠ざけてたんだ。
この街は、住むには静かで快適だけど、便利さでは劣る。
コンビニは大通りに出ないとないし、街灯が少なくて夜は真っ暗だ。
だけど、光や音に邪魔されず、こうして綺麗な星を眺められることに気がついたから、
星を見たくなくなるまでこの街に住み続けよう。そう思う。