小さい頃、世界は不思議の塊だった。
どうしてお日様やお月様は東から出て西に沈むの?
どうしてお天気だと空は青いの?
死んだら…どうなっちゃうの?
大きくなる過程で不思議は知識へと変わっていった。
地球が自転していて…
太陽光が空気の分子で散乱して…
脳神経回路の機能停止で…
不思議が知識に代わっても、世界への眺望は続いている。
広い空には、その時々で形も色も全く異なる雲がある。
どれだけ速く走っても、雲を追い抜くことは出来ない。
ましてや、空の向こうの様子を同時に見る術はない。
立体角の所以だとは知っている。雲の高さの計算も出来るくらいだ。
それでも、雲を追い抜けないかと思うことは変わらない。
今も眺望と羨望の対象であり続ける空を見るたび、
私はカメラを向けたくなる。
二度と同じ形を取ることはない空と雲との出逢いの記憶を残したくて。