【単独制作作品No.94 火の粉】

written by Moonstone

暗闇の中、巨大な炎が揺れる、揺れる。
枯れ木がくべられるたびに、炎が勢いを増す。
パチン、パチン、と音を立てて、紅い炎が揺らめく。
枯れ木からの餞別か、枯れ木のすすり泣きか。

炎から火の粉が上がる、上がる。
黒一色の空に届かんとばかりに、勢い良く。
細やかな螺旋を描いたり、細かい波を描いたりしながら、
黒一色の空に上って行って、闇に溶けて消えていく。

枯れ木に留まっていた木々の魂が、炎で生の呪縛から解かれ、
新たな木々となるべく、寒空高く上っていく。
時折降ってくる火の粉は、まだこの世に未練があって、
地上に戻ろうとしたものだろうか。

再び枯れ木がくべられる。
枯葉がついているものだと、炎の勢いがより強まる。
閃光が放たれ、熱が強まり、歓声が上がり、火の粉が噴き出す。
境内の中心で、木々の魂の最後の合唱が繰り広げられる。
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