【単独制作作品No.92 変わり行く故郷】

written by Moonstone

久しぶりに故郷の町を歩く。
離れて以来2桁の年月が流れた町は、色々変わっていた。
駅に近いところには飲食店が多く出来ていた。
毎日のように通った書店はなくなっていた。
高層マンションが建っていた。

一期一会、とよく言われる。
万物は全て流転する。だからその一瞬を大切にするように、と。
あの時の風景は二度と戻らないと分かって、一期一会の意味が分かった。
人と人との出逢いだけじゃなくて、風景や日常も一期一会なんだ、と。

ひたすら「あの頃は良かった」と過去にしがみつくつもりはない。
今の生活にはそこそこ満足している。欲を言い出したらきりがない。
あの頃あの時こんな風景があった。あの風景の時代にはこんな生活だった。
過去を懐かしむ瞬間が、偶にはあっても良い。

今度歩くのは何時になるか分からない。
今歩いて見渡すこの風景も、次に歩く時には変わっているだろう。
一期一会は今この一瞬でもあり、常に続いていくことでもある。
常に記憶と過去は作られていく。それが自分の終わりまで続く。
第4創作グループへ戻る
-Return Novels Group 4-
PAC Entrance Hallへ戻る
-Return PAC Entrance Hall-