【単独制作作品No.91 住み慣れた町の1日】

written by Moonstone

高台から見る、住み慣れた町の遠景
だが、こうして1日通して見る機会は、これが初めてだ

夜明け、闇が切り裂かれて闇に包まれていた建物や緑が姿を現す
まだ緩やかな日差しに促されるが、目覚めには時間がかかるようだ
朝、徐々に町の血管に車が流れ始める
高台から見ると、大小様々な車は全部玩具に見えて仕方がない

昼、強い日差しが町を照らし、雲が気ままに空を行く
少し遠くに見える高速道路は、今日も渋滞気味らしい

夕方、光がオレンジ色に変わり、寂寥感を醸し出す
道行く車の数々は、1日最後の追い込みに勤しんで居るんだろうか
夜、あっという間に覆った闇に、無数の光が煌めいている
佇む光と動く光 孤独な光と群れる光 様々な形の光がそこにある

自分が知っている町の風景は、ごく一部
此処から見える遠景のごく一部の、朝と夜だけ
携帯もパソコンも使えない、治るまで出られない病院と言う名の牢獄
住み慣れた町の1日を俯瞰するのは、今の自分の希少な楽しみ
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