【単独制作作品No.84 舞い散る木の葉に君を思う】

Written by Moonstone

木の葉が色づき 風に舞い散る。
高い青空に少しの時間舞い上がる木の葉。
秋の当たり前の光景が 僕の記憶を呼び覚ます。

僕はかつて1人の女性に恋していた。
ふとしたことから毎日の一部を共に過ごせるようになって
そんな毎日を幸せに感じていたあの頃。
外を並んで歩く時 一陣の風が彼女の髪を舞い上げた。
少しの間だけ宙に浮かぶ 彼女の長い黒髪。
光を受けて微かに煌く自然な艶と 微かに鼻をくすぐる甘い匂い。
舞い降りた髪を手で後ろに押し流すその仕草にも 胸が高鳴った。

時は流れ 彼女とも離れて久しい。
臆病だった僕は 結局彼女に気持ちを伝えられずに離れてしまった。
写真すらない彼女の面影は 今でも僕の脳裏に焼きついている。
風でたなびく長い髪。胸高鳴らせる自然な笑顔。
綺麗なまま封印された思い出と記憶は 僕の無形の宝物。

街を歩けば 携帯電話片手に喧騒を生み出すだけ。
見詰めることさえ 犯罪扱いしかねない。
そんな生き物と関わり合うことが あまりにも息苦しくて疲れたから
僕は 現在の女性に恋しない。

僕は 記憶の中だけに居る彼女に恋している。
これを知れば、現実に戻れ、と言う人も居るだろう。
現実があまりにも汚濁と危険に塗れているから 僕はそれを避けてるだけ。
記憶の中の彼女は 変わらぬ笑顔で居てくれる。

プレゼントやデートで財布と相談することもない。
自分勝手な心を落ち着かせるために気遣いすることもない。
ただ一緒に居られれば 一緒に居てくれれば それで良い。
それを叶えてくれるのは 記憶の中の彼女以外に居ないから・・・。

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