【単独制作作品No.45 雨上がりの午後】 Written by Moonstone
雨が好き、って言う人間は、 雨の冷たさを包み込む温かさがある居場所があるから。 雨の冷たさを気持ち良く感じられる心の余裕があるから。 だから私は雨なんて嫌いだ。 私にそんなものはありはしないから。 今日も雨が降っている。しとしとと。さらさらと。 陰鬱な気分で傘を差し、歩き始める。 傘を差していても、傘を持つ手の反対側が濡れてしまう。 濡れないようにしようとすると、不自然な姿勢になる。 だから私は雨なんて嫌いだ。 何一つ私にとって良いことを与えてはくれないから。 午後になって、雨が止んだ。 鉛色の雲に亀裂が走り、そこから太陽の光が降り注ぐ。 神々しいその光景はやがて抜けるような青空に変わり、 眩い光を放つ光球が姿を現す。 私は思わず外に出る。 燦々と輝く太陽は、眩しいけれどどこか優しい。 爽やかな一陣の微風が、私の横を走り抜けていく。 雨の面影は、アスファルトの色が濃くなっているのと、 心地良い肌触りの水分が肌を潤すくらい。 雨は何時までも降り続けるものじゃない。 何時か必ず止み、その後にやがて青空が現れる。 私は雨なんて嫌いだ。 でも、雨があるからその後に青が鮮やかに空を彩る。 雨は必ずしも嫌なものの固まりじゃないのかもしれない。 雨上がりの午後。 済んだ青空と優しい陽射しが、私の頭上に広がる。 雨上がりの午後。 私はほんの少しだけ、雨を見直した。 |
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