【単独制作作品No.27 泣き濡れて・・・】

Written by Moonstone

泣いた。私は泣いた。赤ん坊のように。
いいえ。赤ん坊は何かを求めて泣くけれど、
私はただひたすら泣いた。溢れる激情に任せて。
食事も食べず、テレビも見ず、
家に駆け込むなり溢れ出す涙を解き放った。
ただひたすらに、私は泣いた。

ふと目を開けると、カーテンの隙間から光が差し込んでいた。
何時眠ったのか、私には分からない。
泣き疲れて眠るなんて、何時以来だろう。・・・思い出せない。
荒れ狂った心の嵐も静まり、空風が吹き抜ける。
ベッドに跪くように突っ伏していた身体を起こす。
私は立ち上がり、洗面台へ向かう。

酷い顔。我ながらそう思う。
瞼は腫れ、化粧は崩れ、髪は乱れ放題。
怪談に出てくる幽霊より酷い。
いいえ。幽霊に失礼なほど荒れている。
私は蛇口を捻り、がむしゃらに顔を洗う。
昨日の遺跡を洪水で流し消してしまおう。

徐に髪を梳き、雫滴る顔をぐいと拭う。
瞼は腫れている。でもどこかさっぱりしている。
昨日の激情も、その遺跡も流し消したからだろう。
私はカーテンを力任せに開く。
オレンジ色の朝日が目に飛び込んでくる。
それが不思議と・・・心地良い。

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