【単独制作作品No.20 夏の終わり】

Written by Moonstone

肌を焦がす日々が続く。暦の上ではもう秋になったというのに。
空を見上げれば、自分を遮るもの一つない眩い光の球が光と熱を放ち続けている。
外に出るだけで汗を浮かばせ、喉を干上がらせる日々は何時まで続くのだろう?
噴き出る汗を拭いながら、私は歩き続ける。

何気なく木陰に足を踏み入れる。今まで何ら避暑にならなかった黒い場所へ。
違う。今までとは違う。確かに違う。
逃げ場がないほど充満していた熱気が急に和らぐ。
ささやかな避暑の場で暫し足を止めて、熱に奪われた体力の回復を待つ。

ふと耳に意識を向けると、甲高い蝉の声が彼方此方から聞こえる。
だが違う。今までとは違う。明らかに違う。
倦怠感を増すような声の中に違う声が混じっているのが分かる。
それは・・・夏の終わりを告げる使者の、短い間の言伝。

汗を拭って視線を下に落とすと、何かが蠢いていた。
それは、今尚街に夏を喧伝する声の主の一人。
仰向けになってもがくそれは、少しずつではあるが確かにその動きを弱めていく。
やがてそれは動かなくなった。

夏を喧伝する使者の死と夏の終わりを告げる使者の声。そして黒い場所での空気の違い。
暦が示すとおり、夏は終わりへ向かって歩んでいるのだ。
やがて外の空気から熱が消えていくだろう。木々の葉が色づく季節が訪れるのだろう。
安堵と同時に何処か寂寥感を覚えながら、私はつかの間の避暑を終えて再び歩き始める・・・。

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