【単独制作作品No.9 Find my place】 Written by Moonstone
水面(みなも)が南の風に煽られて揺れ動き、微妙に色の違う水面が新たに覆っていく。 それは煌びやかな光と水の不規則なダンス。 だが、池の端を見ればそこは塵溜まり。それは現実と同じ。 生い茂る木々に捨てられ、波に翻弄されて辿り着く場所。 誰もそこを見ようとはしない。何時自分がそうなるか分からないのに。 水面の輝きの中にも気ままな波に弄ばれる塵が浮かんでいるんだろう。 ただ空の光を反射して見えないようにしているだけ。それも現実と同じ。 水面を飾る煌びやかな光も、所詮空の光を真似ただけの虚像。 虚像の中で気ままな動きに弄ばれ、やがて囲まれた枠の端にある塵溜まりに辿り着く。 それが生きることの現実。誰も見ようとしないだけ。 所詮作られた箱庭の水溜り。そんな場所に生きるものなど居ない。 子ども達が網を持って池の岸を走り回る。 気ままな波が造り出す魚に似た翳を追っているのか。 無駄な話だ。こんなところに生きるものなど居やしないのに。 それでも子ども達は何かを追う。止めておけ。翳は所詮翳でしかないのだから。 「捕まえた!」そんな歓声が風強い池に響く。まさか・・・。だが本当だった。 確かに子どもの網には激しく暴れる魚が入っている。かなり大きい。 子ども達は魚を池に放つと、また別の翳を追う。別の魚の翳を追う。 箱庭の汚れた水溜りに生きるものが居た。 どうせ一生出られはしないのに・・・何故生きる? 何故この汚れた虚構の世界に身体を適応させる? ・・・否、適応させたのではない。見出したのだ。生きる場所を。 ほんのささやかな、自分一人入るのが精一杯の生きる場所を見出したのだ。 虚構の光に溢れ、波が縦に横に動き、端には塵が溜まる世界の中に。 一生そこから出られはしないのに。 ・・・ならば自分も見出してみよう。生きる場所を。 理不尽なことばかり溢れ、ルールなど有名無実のこの世界の中に。 そこに自分一人の生きる場所を見出そう。 一生そこから出られなくても。ただ自分自身のために。 |
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