雨上がりの午後

Chapter 267 熱い2人と冷めた1人

written by Moonstone

 速い呼吸では足りない酸素を、深い呼吸で補おうとする。・・・多少落ち着いたかな。首を左に向けると晶子の寝顔が直ぐ傍にある。頬に軽く手を添えて
みるが、目覚める気配はない。
 脱衣場に運んだ晶子を下着1枚まで脱がした。晶子が髪を纏めた後、風呂に入った。背中を流し合ってそれぞれ残りを洗い、部屋での開闢(かいびゃく)と
同じく俺が晶子を後ろから抱きかかえる体勢で湯船に浸かった。晶子は一瞬と惑った様子を見せたが、直ぐ喜んで甘えてきた。晶子の笑顔で高揚した気分の
方向性が変わり、湯船では触れたり揉んだりはそこそこに密着を重点に置いた。すっかりリラックスした晶子が、俺が風呂場で始めると思っていたことと
−そう思っても不思議じゃない−、帰宅してからもこうして一緒に風呂に入りたいと言った。俺はその希望を叶えると約束した。
 長く湯船に浸かってリラックスした後、身体を拭いて往路と同様に晶子を抱きかかえて部屋の布団に運び、明かりを消して営みを始めた。枕元にあった
浴衣を持っていかなかったし、脱いで脱がした服を着る必要もないと思ったからだ。
 ギリギリまで溜め込んだ欲望を小細工なしに解放した昨夜と異なり、濃密にした。晶子を上に下にして動き動かし思うが侭にしたのは同じだが、合間に
「愛してる」を多めに言ったりキスする回数を増やした。それで強い幸福感に満たされたらしい晶子は、最後の攻勢で絶頂に達して失神してそのまま寝て
しまった。晶子を抱き寄せて掛け布団を被って今に至る。
 よく寝てるな、晶子・・・。昨夜と違って終わった後でこうして晶子を見て触れても、欲望の炭に再び炎が灯ることはない。晶子の寝顔を見ることはあまり
ないが、こんなに気持ち良さそうな寝顔は初めて見るような気がする。こんな晶子の寝顔を見ていると、もっとこの寝顔を見たいと思う。そのために俺が出来る
ことは…、晶子の夫として望む幸せを叶える努力をしていくこと。就職して一定の生活資金を得て、それを原資に共同生活を営んで、ゆくゆくは子どもを
もうけて一緒に育てる、所謂「普通の生活」。
 「普通の生活」は簡単なようで難しい。収入は勿論必要だが、あればあるだけ使うような生活はやがて破綻する。収入に即した生活レベルを見極めて軌道に
乗せることでも、2人で暮らすなら2人の一致点を模索して協力することが不可欠だ。子どもに関しては、めぐみちゃんの親代わり体験でこれまで漠然として
いた「親になること」に少し実感がわいた。だが、子どもが欲しいと積極的になるには達していない。確固たる生活の保障を得てからなら良いかもと思うが、あの
件はめぐみちゃんだから世話に翻弄されずに済んだという猜疑心が根強い。晶子が子ども好きとはいえ、晶子に子育てを一任するのは良くない。乳児の時は
授乳の関係で母親が付きっきりにならざるをえないし、いくら子ども好きでも四六時中1対1で相手しているとストレスは溜まるだろう。だからと言って乳児の段階
から終日保育園に預けるのが良いとも思えない。
 めぐみちゃんは強い自制が出来る子だった。だが、俺と晶子の子どもが生まれた段階からあんな親に都合の良い自制が可能な筈はない。最初は言葉も
まともに通じないんだから、親の生活リズムに合わせて寝たり起きたり授乳されたりなんて出来る方がおかしい。その分、子どもの気持ちを汲み取ることが必要
だが、俺に出来るかどうか分からない。
 親になってしまえば子どもの成長と共に親になるという子育て理論は、ある面では正解だがある面では間違いだ。子どもを受け入れる体勢が整って
いないと、子どもの世話で自分の欲求が抑圧されて強いストレスになる。体勢は資金だったり親になる心構えだったり両方だったり様々だが、終始カリカリして
いる親の顔色を恐れて親の暴力に怯える子どもが健やかに育つとは思えない。めぐみちゃんの事例で目の当たりにしたばかりだ。
 「親」がキーワードなのか、子どものことのみが懸念材料として頭に漂い続ける。あながち間違ったことじゃない。金銭感覚や趣味嗜好の方向性は驚くほど
共通しているし、晶子が住み着くようになって、生活がより豊かに快適になって幸せとか家の居心地が良いと思うことはあっても、足手纏いとか邪魔とか思った
ことはない。晶子が住み着くようになったのは、俺との時間を増やしたいからに他ならない。田中さんの台頭でその意思は強まり、強まるあまり一時方向性を
見失った。夫の浮気や浪費のリスクに憂うことなく暮らして子どもをもうけて育てるという夢を少しずつでも実現に近付けるために、晶子は努力している。その
努力の恩恵を受ける俺は、晶子の夢の実現に協力する義務がある。その一環として、目の前にあるこの安らかな寝顔をより多く出せるようにすることを目標に
据えてみるかな…。

Fade out...

 意識の闇が晴れていく。代わって現れた霧は視界がどうにか出来る程度。スヌーズ機能を上限に設定している携帯のアラーム音は鳴っていないから、まだ
仲居が来る前のようだ。隣では晶子が変わらぬ気持ち良さげな寝顔を見せている。晶子が俺より朝が遅いことはなかなかないし、2日連続となると記憶に
ない。これも非日常の1つだろうか。…晶子の閉じた瞼が小刻みに震える。その後ゆっくり開き始める。

「…祐司…さん。」
「おはよう。」
「おはよう…ございます。」

 俺の方を向いて微笑む晶子は気だるそうだ。一昨日の夜もかなり体力を削られたと言っていたから、失神した後そのまま寝入った昨夜に削減された体力は
まだあまり戻ってないようだ。晶子は身体全体も俺に向ける。その動きややはりかなり緩慢だ。

「私…、最後で失神しちゃったんですね…。」
「終わってから様子を見てたら、息が寝息に変わってた。」
「頭の中が真っ白になっていって…、魂が抜けていくような感じがして…。」

 昨夜の最後が脳裏に蘇ってくる。晶子は俺の下で我を忘れて喘ぎ、絶頂に上り詰める過程で身体を大きく反らして最後に叫んで果てた。どうにか身体を
動かせる程度の体力だけが残った俺の下で、無防備に横たわる晶子は幸福感と支配欲を満たすに余りあった。

「凄く…幸せでした…。」

 晶子は俺の左腕に抱きつく。後ろから包み込むように抱いたことで膨れ上がった幸福感は、未だに晶子の中で強い余韻を生み続けているようだ。ああする
ことで一晩明けてもなお残る幸福感を与えられるなら、もっと前からこうするんだったと少し後悔。これからの心がけと実践で埋め合わせれば良いか。

「深く考えてなかったんだが…、後ろから抱くのは晶子のツボに嵌ったみたいだな。」
「ああしてもらうのは…凄く嬉しいですし、溢れるような幸せに浸れるんでよす…。祐司さんに全部包み込んでもらっているようで…。」

 昨日の風呂では下着1枚まで脱がすにも何ら抵抗しなかった。だが、嬉々として脱がされるというより観念したというようだった。身体を洗って湯船に浸かり、
俺が後ろから抱き込んで喜び甘えた晶子が、俺が風呂場で始めると思ったと言ったのはその表れだろう。風呂場で始めると観念していたところで、甚く気に
入った後ろからの抱き込みで密着を主体にしたスキンシップになり、心底リラックスした。こうして一緒に風呂に入りたいという希望は、後ろからの抱き込みで
幸せを感じて浸りたいという気持ちから派生したんだろう。そう考えると…、昨日に続いて思うがままにしたことに罪悪感を感じる。

「…晶子に悪いことしちまったな。」
「え?な、何がですか?」
「一昨日昨日と、晶子を思うがままにしたことだ。」
「そんなの、少しも悪くないですよ。」

 誤解されたと思ったらしく、晶子は動揺しつつ否定する。一気に目が覚めたのか、口調もさっきまでの半分寝ているようなものから普段の快活明瞭なものに
戻っている。

「祐司さんとのセックスは凄く幸せです。祐司さんには私で性的に興奮して発散してほしいですし、そのためにセックスは必要と思っています。」
「…。」
「一昨日と昨日のように、祐司さんが私を思いのままにして、征服して支配することを、恥辱とは捉えていません。少しも…。だから…、祐司さんが悪いと思う
ことなんて、何もないんです…。誤解しないでください…。」

 晶子は俺の左腕への抱きつきをしがみつきへと変える。言葉どおり誤解を解こうと懸命な気持ちが表面化している。包み込まれるような幸せに浸ることと
激しい攻めや姿勢や行為をされるがままになることは、必ずしも連動しなくても良いようだ。だが、俺だけ満足出来れば良いというわけじゃないことは間違い
ない。

「晶子は、昨日や一昨日のように色々されても…満足してるか?」
「はい。祐司さんにあんなに愛されて…凄く満足してますし、幸せです。」
「分かった。」

 2年あまり付き合い、法的な夫婦関係成立直前まで進み、心も体も知り尽くしたつもりでも、ふとした拍子で思い違いや認識のずれは生じる。付き合いが長い
とか関係が深いとかで相手はここまで言わなくても分かるだろう、と思い込むことが余計にずれを深刻にする。長い付き合いだから、関係が深いから尚のこと
意思疎通を惜しまないことも、初心に帰ることの1つだな。
 俺は自由に動かせる右腕を支えにして身体を起こす。誤解が解けて安堵して俺の腕の拘束を緩めた晶子も、次いで身体を起こす。身体を起こすことで、
掛け布団に隠されていた上半身が露わになる。それは晶子も例外じゃない。俺に密着している晶子の身体は、白くて豊満で綺麗だ。全てを見て触れて
感じて知っている筈なのに見慣れたという意識が芽生えてこないのは、肌を出さない昼と全てを晒す夜の違いによるものだろうな。

「…隠さないんだな。」
「祐司さんしか居ないんですから、隠す必要なんてないですよ。…後ろから抱いてもらえますか?」
「おいで。」
「はい。」

 晶子はゆっくりした動作で、俺の太ももを乗り越えて身体を俺の前に持ってくる。拘束が解けた左腕でウエストのあたりを抱き込むのと、晶子が身体を委ねて
来るのがほぼ同時。晶子は左手を俺の左手に乗せて、首の向きを変えて俺の方を向く。

「本当にお気に入りだな。この体勢。」
「凄く温かくて幸せで…、安心出来るんです…。」

 俺自身、こうするのは結構好きだ。まず晶子と密着出来る。身体を起こしている時に密着するのは意外と難しい。向き合うとどちらかが膝を曲げて、身体を
反らすようにしないと密着し難い。後ろからだとどちらかが難しい姿勢をしなくても簡単に密着出来る。次に晶子の身体を視覚と触覚両面で堪能出来る。向き
合うと視界には基本的に上半身だけしか入らない。距離を詰めると顔だけになる。それはそれで良いんだが、顔以外の部分を見るには視線を顔ごと下げる
必要があって、それはセックスの時だけと言って良い。
 晶子は肌の露出が少なめだ。それは肌は俺だけに見せるためというのは嬉しいが、目の保養という面では物足りない時もある。まれに性欲が突沸して
明るいところでの−俺か晶子の家でだけ−セックスになだれ込むが、その時は全部脱がさない。ややこしいことにその時はその方が興奮するからだ。結局
晶子の身体は闇に慣れた目で見るのが殆どになっている。後ろから抱くことで、晶子の肩越しにその身体を一望出来る。身体のラインも色の違いも、顔全体を
動かさずに全て。視覚で堪能しつつ手を動かすことで触覚でも堪能出来る。今俺が晶子の何処を触っているかも直接見られる。一体感や幸福感を感じ
つつ、支配欲も満たせるんだからありがたい。

「寒くないか?」
「いえ、全然…。」
「まだ少しだるそうだな。」
「祐司さんの思うがままになりましたから…。だから…、もうしばらくこのままで居させてください…。」
「勿論。俺も…こうしていたい。」

 俺は晶子のウエストを抱き込む腕に込める力を増やし、首筋に唇をつける。俺に身体を預けている晶子は甘い溜息を洩らす。この吐息を耳元で浴びると、
へその下奥が刺激されるな…。

「どうぞ…お気に召すままに…。」
「気持ち良さに水を差さない程度にする。」
「遠慮しないでください…。もう…全て祐司さんのものなんですから…。」
「あまり刺激するな…。朝から始めるぞ…?」
「仲居の方が来るまでなら、それでも…。」

 言葉どおり自分の扱いを一任するつもりか、朝から始めるとは思えないと踏んでの挑発かは分からない。仲居以外に他の宿泊客も廊下を出ている可能性が
高い朝に営みの声を流せば、困った方面での集客をしてしまう。そんな意図はないから、触るまでにとどめておこう。
 晶子の身体に指を這わせ、ほど近い位置に見える2つの形の良い大きな隆起を軽く揉む。敏感の度合いに応じて耳元の吐息のスピードが変わる。胸
いっぱい、腕いっぱいに広がる柔らかさと温かさを堪能出来るのは至福だが、それ以上先に進められないのは贅沢な拷問だな…。
 朝飯を終えて茶を飲みつつ寛いでいる。揃って鳴った携帯のアラームを合図に密着を一時終了して、浴衣を着たところで仲居がドアをノックした。携帯の
アラームを解除しておかなくて良かったと思う。
 茶を飲む時も、俺が座椅子のように晶子を後ろから抱き込む、晶子お気に入りの体勢。これから2人で寛ぐ時はこの体勢が定番になりそうだ。俺にもこの
体勢のメリットは多々あるからそれでも良いが、腰が重くなるような気がする。

「目は覚めたか?」
「ええ。おかげさまで。」

 朝飯を終えてさあ出発とならなかったのは、晶子のだるそうな様子が気になったからだ。原因は多分に俺にあるだけに見ぬふりは出来ず、眠気覚ましの
効果もある茶を飲んで楽にすることで、晶子の体力回復や眠気解消を待つことにした。晶子はそういう気遣いが相当嬉しかったらしく、俺が言い出した時には
感激した様子さえ見せた。晶子のリクエストに応えて、抱き込み座椅子と勝手に命名した晶子お気に入りの体勢になり、茶を飲んで晶子の様子を見ていた。
 再び2人きりになってリラックスすれば、だるさの原因の疲労が噴き出るのは自明の理。晶子は少しの間寝入った。重くなる瞼を何度も押し上げていたが、
重みには勝てなかった。俺は晶子を抱いて目覚めるのを待った。時間にして30分くらいだと思う。こんな時に時計で逐一時間を確認するほど、俺はロジック
シンキングを徹底出来ない。再び目覚めた晶子は、畳に置いた自分の湯のみを取って茶を飲み、眠気の残りをかき消して今に至る。

「起きて間もないのにまた寝ちゃうなんて、だらしないですね。」
「今は眠いなら寝て良い。此処は特にそういう場所だから。」

 今まで何度か、激しかった翌朝に晶子が眠そうにしていることがあった。それでも大学に行ったり家のことをしたりと普段どおりにすることで、眠い様子を
見せないようにしていた。今は誤魔化す必要はない。宿のチェックアウトは10時だから、朝飯が終わってからも単純計算で2時間以上ある。時計と時刻表と
地図を逐次比較しながら目的地を移動するわけでもない。ゆったり寛ぐことも旅行の1つだ。

「祐司さんとはやっぱり体力が違いますね。」
「そう…なのか?自分じゃよく分からん。」
「私には分かりますよ。体力や腕力の差を感じると、男性と女性の違いだなって思うんです。」

 俺は凡人という表現が色々な場面で当てはまる。身長は170cmで高くもなく低くもなく、体重は60kgくらいで重くもなく軽くもない。体型は太っていないし
痩せてもない。人目を引くほど美形じゃないし、人に出会えば逃げられるほど醜くもない−つもり−。外見はまに「何処にでも居る」「普通」の若年男性だ。
体力も腕力も秀でて高いわけじゃない。かといって誰かの助力を必要とするほど非力でもない。日常生活を送るには支障ないレベルだから、肉体的な面でも
特記するような人物じゃない。実際中学高校と体育の成績は5段階評価で大抵3でたまに4だった。
 一方、晶子は非力を売りにしない。買い物帰りに荷物が詰まったレジ袋も持つし、米袋も十分持ち運び出来る。バイトでは多量の料理に対応するため
大きくて重いフライパンをしっかり煽り、鍋の移動もする。やはり日常生活には支障ないが、男として可もなく不可もない俺に対して、力仕事が出来る晶子は
女性として秀でている。
 俺が晶子に心を掴まれた要因は色々ある。大きな要因は料理と世話好きなところだが、日常の力仕事が十分出来ることも見逃せない。お姫様扱いが
出来ないし出来たとしてもさせるつもりはない俺は、女性も日常生活に必要な力仕事はするべきだと思っている。何も箪笥や冷蔵庫を1人で持ち運びしろ
とは言わない−俺だって出来ない−。買い物帰りに荷物を運んだり、家で米袋や宅配物を運んだり収納したり出来る程度のことだ。料理好きや世話好きは
日常の力仕事が十分出来ることの証左でもあると最近認識した。料理をするにも食材や器具を頻繁に移動しないといけないし、洗濯物や布団の出し入れでも
それなりに力は必要だ。お姫様待遇なら食器が持てれば十分だろうが、姫を置いておけるほど俺は裕福じゃない。

「俺は、普段重いフライパンや鍋を自由自在に扱う晶子も十分力があると思うけどな。」
「料理器具の扱いは慣れの部分が大きいですよ。祐司さんのギターは、私にはフライパンや鍋よりずっと重く感じます。」

 晶子が俺のギターを手に取ったことはほんの数回、片手で数えて余るくらいしかない。興味や関心がないんじゃなくて、ギターは俺の大切な一種の商売
道具であり、使い方を知らない自分が安易に触るのは憚られる、と晶子は言っていた。躊躇に興味が勝って、ある日晶子はおずおずとギターを手に取って
みたいと頼んできた。俺はエレキとアコギの両方を持たせてやった。想像以上に重かったらしく、姿勢を崩した晶子を支えた。その後ストラップを通して改めて
持たせたが、重さに対処するのが精いっぱいでフレットへの指の置き方や弦の弾き方には頭が回らず、壊さないうちにと返された。
 俺のギターは凡人の自分を反映するように特別重くも軽くもないタイプだ。だが、ギターを持てばまずはストラップに身体を通して安定させるし、フレットに
左手を、弦に右手を添えて扱うものだと身体が覚えている。ギターの扱いが十分分かっているから、重さが気にならないと言えば確かにそうだ。
 晶子が扱うフライパンや鍋は自宅−俺と晶子それぞれの本来の家にあるものより重いが、フライパンなら片手で持てないというほど重くはない。家での食事
関連で俺が担当するのは洗い物中心で、上下や前後に煽ったりするほどフライパンを使い慣れてない。扱いに慣れれば重い軽いを感じる以前の問題になる
かもしれないな。

「この先も、料理は私がしたいです。祐司さんには自分のこと−私よりずっと大変な卒業研究や進路の確定に専念してほしいですし、料理を作ることでその
支えになりたいから…。良いですか?」
「そうして欲しい。俺には晶子の料理を断る理由が見当たらない。」

 晶子の料理を食べる機会が多くなるにつれて、他の料理で違和感なく食べられるのは潤子さんが出してくれるバイト先での夕食くらいになった。晶子が俺の
意見や要望を受け入れて味の微調整を繰り返した料理の数々は、もはや俺の生活には欠かせない存在位置を形成している。
 男性の心を掴むには胃袋を掴めと言われるが、あれは本当だと思う。食べなきゃ生きていけないし、その欲求を十二分に満足させる料理を出せる晶子に
料理を人質にされたら敵う気がしない。朝起きたら量も質も十分な食事が並べられ、大学でのひと時にふたを開けたら冷めても美味い、見た目も綺麗な
弁当が食べられるとあれば、晶子の料理担当継続を拒む理由を探すのは不可能だ。それくらい晶子の料理に虜になっている。

「旅行に出ると、晶子の料理が食べられないのが残念だな。」
「キッチンがあれば作るんですけど、こればかりは・・・。」
「無茶なことくらい分かってるから、真剣に考えなくて良い。」
「帰ったら、祐司さんの好きな料理を作りますね。」
「期待の連続だな。」
「私には安心と安らぎの連続ですよ。」

 俺は晶子から美味い料理や手際の良い掃除や洗濯、気の利いた茶菓子の用意など快適な生活をもらっている。晶子は俺から安心と安らぎ、そして恐らく
居場所を得ている。どちらの比重が高いとか分担の比率がどうとか交渉や協議をしたことはない。俺と晶子が互いに出来て与えられるものでギブ&テイクは
十分成り立っている。分担の比率や内容の軽重がまず最初に出るのは、相互補完出来る共同生活をしたいんじゃなくて人手という道具が欲しいだけだ。
 晶子が俺の家に住み着くようになったのは、俺との時間を増やすことで俺の浮気リスクを更に低減しようという考えの他に、何かと向けられる視線を払い
のけたいという希望もあるようだ。晶子は男受けする容姿をしている。多くの女性がテレビや雑誌からの情報と同性からの同調圧力で目指す方向性と離れた
飾り気のない質素さは、表に出ないが男受けしやすい。だが、それは晶子の意図するものじゃない。大学の往復、特に新京市中心部への通勤ラッシュと
重なる往路や、週末の買い物で時々行く大型ショッピングセンターで、晶子に向けられる視線が多くなる。どうやら直ぐ隣に居る俺は視界から除外されている
らしいが、俺でも分かるくらいだから当事者の晶子は嫌と言うほど分かっている。晶子はその都度、俺の左腕に左手を添えるようにして指輪を見せることで
かわしている。それはつい昨日、下鴨神社の中にある相生神社でも実践したことだ。視線を退けるたびに後で晶子はご機嫌になるが、たえずそうするわけ
にもいかない。
 女性ならではの身の危険は、色々な場面で付き纏う。晶子の元々の家があるマンションでも例外じゃない。女性専用と銘打ち、オートロックで管理人が常駐
しているタイプの管理が厳重なマンションだが、それらのセキュリティや管理はあくまで正面玄関を通過しようとする場合に限られる。管理会社から文書で防犯
意識の周知徹底が何度か図られているが、最重要事項としてベランダからの侵入が挙げられていた。晶子の家がある階も割と高層だし、梯子を持って来れば
目立つだろうにどうやってベランダに上るのか分からないが、高層階だから大丈夫という意識が呆気なく覆される危険性がある。
 俺の家や晶子の家があるあたりは治安が良いから、転居してきて以来住居侵入を伴う犯罪は起こっていないし聞いてもいない。だが、変質者の出没は
街灯が少ないところで散発しているらしい。犯罪は「此処なら安全」「自分は大丈夫」という意識を簡単に覆す形で起こることは、女性だからこそ我が身のことと
感じる部分があるらしい。
 見た目も力も凡人の俺だが、生活を一緒にすることで晶子にとっては強い安心感を与えるらしい。大学も一緒に行くようになった−俺の講義が多かった
ことで晶子が朝早い時間に合わせる形になる−ことで、晶子が受ける視線は確実に減った。今までは大学の往復でも視線を感じることがしばしばあった
そうだ。俺でも視線が遠ざかったのが分かるくらいだから、それは決して被害妄想や自意識過剰ではない。

「料理を作ることの見返りというのは何ですけど・・・。」
「時間がある時にこうして欲しい、ってのが願いか?」
「お見通しでしたか。」
「昨日あたりからの晶子の様子を見てたら、分からない方がおかしい。・・・勿論OKだ。」
「嬉しい・・・。」

 晶子は俺の左手を両手で包み込む。買い物から帰った時や午後のひと時に、普段向かい合って座っているところを今のように座ることで叶えられる。あまり
長時間は出来ないかもしれないが−卒研や就職活動は予断を許さない−、ひと時でもこうすることで晶子は強い安心感や安らぎを感じられるんだから、
しない手はない。
 ちょっとしたことの積み重ねや継続が大きなことをなしえたり、信頼関係を熟成したりする。夫婦関係もその1つだと思う。どちらも自由人でなければ忙しい
ことも疲れることもある。それを言い訳にしないで短い時間でも些細なことでも実行して継続していくことが、夫婦円満の秘訣なのかもしれないな・・・。
 晶子が十分満足したことで、宿を出ることにした。浴衣から服に着替えて、携帯と財布を持てば準備完了。こういう時晶子が化粧に念を入れるタイプだと
余分な時間がかかるが、その点は心配要らない。
 観光案内は俺が持ち、部屋を出て鍵をかける。廊下は時間の経過に伴って喧騒の度合いが増していった昨夜が嘘のように静まり返っている。昨日挙式
だった新婚夫婦と親族は、俺と晶子がのんびりしている間に宿を出たんだろうか。
 廊下を歩いていく。前方から1人の男性が歩いてくる。浴衣を着ているから宿泊客だな。・・・ぐったりした様子なのが気になるな。

「君達は・・・この宿の宿泊客か?」

 俺と晶子に気づいた男性が話しかけてくる。本来智一の父親が経営している会社関係者しか宿泊出来ない宿だ。智一の厚意で宿の提供を受けているん
だし、晶子に色目を使う様子もないから邪険にする必要はない。・・・何だか随分やつれているように見える。歳は俺や晶子とそれほど変わりないみたい
だが・・・。

「はい。」
「見たところかなり若いみたいだね。・・・新婚?」
「はい。」
「そうか・・・。もう1組新婚の夫婦が宿泊してるって仲居が言っていたけど、君達だったのか・・・。」

 男性はそこまで言って溜息を吐く。心底疲れている様子だ。夜が激しくてまだ疲れが取れないといった具合じゃないな・・・。

「・・・結婚なんてしないに越したことはないよ。今の時代、男はね。」

 男性の言葉は投げやりで自嘲的だ。挙式を済ませて間もない新婚の男性から出る言葉とは俄かに信じがたい。だが、男性の疲れた表情からは、
冷やかしやからかいで言っているとはとても思えない。

「どういう・・・ことですか?」
「質問返しになるけど・・・、僕の結婚式関連で使った金額は幾らだと思う?」
「えっと・・・、100万か200万くらいですか?」
「500万だよ。」

 男性の吐き捨てるような答えで、思わず絶句する。500万って・・・、自分の手に持った札束の最高額がシンセの1台を買った時の20万−シンセはかなり
高額−だから、その25倍の札束を使った計算か。使っても満足するものならよく散財したなと思う程度だろう。だが、男性の今の心境はそれとはかけ離れた
ものだということくらいは俺にも分かる。

「式場の手配から親族連中の宿泊代補助や結婚指輪まで、生活に無関係なことばかりに500万。これが昨日1日のために消し飛んじゃった。」
「・・・。」
「・・・費用を低減することは出来なかったんですか?」
「出来るわけがない。嫁の定番の殺し文句『一生に一度のこと』と、それにやられた嫁の家族と親族に押し切られたんだから。何回ごねられたことか・・・。」

 晶子の遠慮気味の問いに対する男性の口調は忌々しげでもある。一生に一度、か。その言葉は今もどこぞの老人が出す印籠に匹敵する力がある。否、力を
持たせ続けている。
 これだけ離婚が増えて、しかも数年程度や若年層の離婚も増加している中で、一生に一度って文句は説得力が薄い。法的な夫婦関係目前の晶子が隣に
いてこうも冷めた見方をするのは変かもしれないが、離婚の増加や普遍化が結婚が一生ものではないことを示しているのは事実。執拗にごねられて男性は
疲れ果てたんだろう。男性の気持ちは分かるつもりだ。

「500万あれば持ち家の頭金の足しにも出来るし、生活用品を揃えることも十分出来る。それが、一生に一度の記録を作りたいっていう嫁と、世間体や面子を
加えて後押しする嫁の家族や親族には考えが及ばない。嫁側が一生に一度や結婚を使えば、婿側の主張、特に婿単独のものなんて吹けば飛ぶ程度の
軽いもんさ。」
「「・・・。」」
「だいたい、僕が仕事や出張で留守の間、嫁が何をしてるか分かったもんじゃない。『寂しかった』と言えば嫁の不貞行為も婿の責任になる世の中だからね。」
「・・・失礼ですが、奥様が不貞行為をしていることを事実として掴んでおられるんですか?」
「今のところはない。だが、今後もしないとは言えない。そもそも、将来予測される範囲内にある事象への言及に対して証拠がない、根拠がないと言って
退けて、いざ起こした自分の不実は途端に涙を交えて正当化するのは、女の常套手段だよ。」

 なんとなく話の展開のさせ方が俺に似てるな・・・。この男性が挙式翌日から不満や怒りを充満させるに至った理由は分からないし、聞くのは憚られる。だが、
なんとなく男性が望んだ形の結婚じゃなかったことや、奥さんに対する強い不信感を抱くに至った何かがあったことは推測出来る。

「価値観の多様化とかどうとか言っても、所詮それは女のライフスタイルとやらの奔放で物欲塗れの生き方を正当化するための扇動文句。男は良い大学に
行き、良い会社に就職して、結婚して家族を養うことまで既定路線が何処までも押し付けられて、それに逆らえば親兄弟も含めた周囲から欠陥品、さらには
危険物扱いされる。・・・そういうもんさ。」
「「・・・。」」
「君、男の方だけど、嫁の離婚宣告に備えてしっかり蓄財しておいた方が良いよ。給与振込みを自分の専用口座経由にするとかしてね。離婚の際に慰謝料
だの養育費だのを払わされるのは、ほぼ間違いなく男の方なんだからね。・・・じゃあ。」

 一頻り言ったことで多少気が晴れたのか、男性は幾分俯き加減だった姿勢を戻して立ち去っていく。最後の忠告を俺に限定したのは、同じように苦難の
道を歩かされる立場にある男にだけに言うことで、晶子は男性の奥さんと同じく怒るべき、或いは憎むべき対象でしかないからだろうか。

「女性の1人として・・・、凄く耳の痛い言葉でした・・・。」

 女性批判の色合いが強かった男性の言葉は、晶子にはかなり堪えたようだ。

「女性であることを自己都合の甘えや依存の道具にする・・・。それは男性に不当な我慢や忍耐を強いる・・・。それに気づかない女性が多いのもまた事実・・・。
潤子さんに言われたことに重なる部分がたくさんありましたし、私自身とても否定出来ないのもやはり事実です・・・。」
「・・・。」
「あの男性の言葉は・・・、女性としての権利を要求する一方で、女性としての責任はおざなりにしがちな女性全般に対する男性の怒りや不信の、ほんの一部
なんでしょうね・・・。」

 そんなことはない、晶子は他の女性とは違う、と即座に言えない俺がいる。男性が矢継ぎ早に語ったことは書籍なり人づてなりインターネットなりで見聞き
する。離婚調停で男性が親権を得るのは非常に難しいことや、同じ未婚でも女性は「結婚しない」とポジティブで男性は「結婚出来ない」とネガティブに
扱われることなどは、男性の言葉と重なる部分が多い。そして、女性であることを甘えや依存の理由にすることは、晶子がつい最近やってしまったことだ。その
事実を天文学的な確率の事故と片付けられるほど、俺は寛容じゃない。
 第一、男性には女性の過ちや不実を無条件に受け入れるかどうか、女性に何を言われたりされたりしても流せるかどうかで器量の有無が言われるが、
女性が男性の過ちや不実を同様に無条件に受け入れるか、男性に何を言われてもされても流せるかどうかを問えば、女性云々を持ち出して否定や排撃に
しゃにむになることが多いのも厳然とした事実。この旅行中にも幾度か直面したことだ。
 「女性だから」は免罪符になっても、「男性だから」は生活費を得るために必要な仕事でも手厳しく批判される。「女のくせに」は差別と糾弾されても、「男の
くせに」は器量だ何だと無条件で受け入れることを明に暗に強要される。これらもまた、男の1人として何度か経験してきたことだ。男性の言ったことは他人事
とは言えないし、甘えと叱責することも出来ない。

「祐司さんに妻としてもらったのも・・・、元を辿れば、私が望む幸せ−ささやかにでも好きな人と一緒に暮らせて、子どもが出来たら一緒に育てる生活を実現
するために、女性というある種の強みを利用したと言われれば・・・、全否定出来ません。」
「・・・晶子が何の特徴もない俺に押しかけ女房をして、誕生日プレゼントを結婚指輪に格付けしてまでも妻になったのは、晶子が言ったような幸せの願望を
叶えるためだったってことは、この旅行を通じて理解していた。ようやくだけどな。」
「・・・。」
「子どもについてはまだ強い希望にはなってない。・・・だけどな、晶子。」

 結婚解消と言われる覚悟を固めようとしているのか表情が強張っている晶子を見据えて、俺は言う。

「晶子が望んでいる幸せは、俺が思い描いていた結婚生活の夢や理想とよく似てる。殆ど同じと言って良い。だから、俺は晶子が妻になることを拒否
しなかった。」
「・・・祐司さん・・・。」
「女性を盾にすることや利用すること、人の心を試すことの誤りは、晶子自身この前の一件でよく分かった筈だ。それを強く自戒し続ければ大丈夫だ。」
「・・・はい。」

 明快に返答した晶子の瞳は微かに潤んでいる。前の一件、さっきの男性が暴露した結婚に絡む事情や意識、更に自分の願望に俺を利用していたと
勘付かれて結婚解消されたり、そこまで言われなくとも俺の気持ちが冷める可能性があると感じていたんだろう。自ら願望を明かしたのは懺悔のつもりだと
思う。だが、晶子が俺の妻としての地位や足場を着々と固めることに、俺は拒否感を抱いた記憶が見当たらない。家に居る時に美味い料理が出されるのは
ありがたかった。弁当は気恥ずかしさは未だ完全には消えないが、迷惑どころか実験や講義の連続で疲れた心身を癒す強力な薬だ。レポートの連続で手が
回るのが遅れる家事が手早く綺麗にこなされることで、俺はレポートや試験の準備に専念出来たし、単位を取るばかりでなく高い評価を得られた。
 性の面でも晶子の存在は大きい。疲れていても湧き出てくる性欲は晶子とのセックスで十分充足できる。夜は娼婦のようにという一昔前の妻の姿勢
そのものの奉仕は、性欲を幸福感と満足感と征服感に変える。「俺の妻」「俺の女」と実感出来るから、俺は晶子が恥ずかしくないように学生の本分である
勉学に励んで、バイトも無遅刻無欠勤を続ける。そして、晶子が明かした結婚生活の願望は、今の基本単身者向けの家での生活に、法的根拠を加えて親と
いう可能性を付加したものだ。家というより部屋での生活は、俺が晶子に高級ブランドを買い与えたり海外旅行や高級車での送迎でお姫様待遇を齎さ
なければならないプレッシャーとは無縁の、ささやかだが落ち着けて安らげる幸せな生活だ。そこに満足や幸福感はあっても、怒りや不信はない。
 男性の話は生々しかったし、見聞きする女性優遇や逆差別の事情を裏付けるものには違いない。だが、晶子が豪華な結婚式と巨額の投資を望んでいる
かと言えば違うし、親や親族を背景に条件受託を迫ると言えば、むしろ逆。その手の事実は存在するし増えているのも事実だが、希少な例外というものも
確かに存在するのも事実だ。

「俺の方がむしろ、親や親族の圧力から晶子を守る心構えをしていかないといけないな。」
「私は祐司さんについて行きます。」
「その期待や覚悟を潰さないように、俺も足場を固めていく。・・・さ、行こう。」
「はい。」

 男性の口から語られた事実や事情を以って、自分の妻も結婚も負担でしかない駄目なものとして切り捨てることも可能ではある。だが、俺は今感じている
幸せや満足感、安心感を継続すること、すなわち晶子との結婚を推し進めていくことを選ぶ。
 男性が語った辛辣な内容は、親や親族が絡む部分が大きなウェイトを閉めていた。親や親戚の思惑や圧力は、冠婚葬祭で露呈する。当事者を祝ったり
偲んだりする筈が、親や親戚の見栄や欲望の衝突の場になるなんて滑稽だし無価値だが、思惑や圧力を向けることが当人や当事者のためであり、それが
受け入れることが面子と思い込んでいるからこそ起こる。そしてそれらは一定程度避けられないものでもある。そこで重要なのは当人や当事者だ。金を出す
から口も出す、金は出さないが口は出す、という申し出に可能な譲歩や妥協をしたり、不可能なものや受け入れられないものは毅然と退けて完遂する強い
意志と、当事者間−結婚だと夫婦の密な連携と協力が必要になる。
 様々な圧力や思惑が向けられるだろう。それこそ世間体や恥なるものまで持ち出して。だが、そんな世間体や恥はそれを言う連中の面子でしかない。
それらはすっぱり縁と共に切り捨てる意志が必要だろう。その程度で切れる縁なら切った方が、その後の付き合いが減ってむしろ楽になる。その意志は生活
基盤が出来ていないと、金で揺さぶりをかけられて切り崩される可能性がある。意志を貫くなら、生活基盤を確立するのは必須ではないが強みになる。遠い
問題ではない就職はその一環として、より主体的に取り組んでいかないとな・・・。
 気分を切り替えて京都市内観光に出発。宿を出たところで観光案内の地図を広げる。さて、今日は何処へ行くか・・・。
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