契約家族

written by Moonstone

〜この作品はフィクションです〜
〜登場人物、団体などは実在のものとは無関係です〜

第4章

 そして土曜日。
金曜日に残業をして無事に仕事を片付けた海原は、眠りの深淵からゆっくりと浮上する。
身体を起こして周囲を見回すが、特別変わった様子はない。
海原はプランが実行されなかったのか、と訝るが、部屋のよく見てある点が違うことに気付く。
部屋の隅にアイロンがかけられないまま山積みになっていた服が、忽然と姿を消しているのだ。
これまで洗濯はされてもアイロンはろくにかけられずに適当に畳まれて放置されていた、通勤用のワイシャツや家で着る服といったものだ。
 海原は布団から出て、パジャマ姿のまま喧騒が消えた本物の−戸籍上の−子ども達の部屋の前を通り過ぎ、階段を駆け下りて行く。
子ども達がどうなったのか、海原はまったく考えない。
自分たちを扶養する義務を果たしている父親を尊敬しないどころか邪魔者扱いするガキのことなど、海原は完全に度外視しているのだ。
 1階のダイニングに出た海原は、セイウチのような巨体が大音量を発するテレビの前に横たわっているのを見る。
駆け下りてきた足音で海原に気付いたのか、巨体の主である本物の−戸籍上の−妻が海原の方を向いて訝しげな表情を浮かべて言う。

「何なの、あんた。こんな早い時間に起きてきて。ご飯はないわよ。」
「俺の服はどうした?」
「あんたの服?ああ、小奇麗な女が抱えて外へ出てったわよ。」

 海原は契約内容を変更した「安らぎプラン」が実行されていることを知って、安堵の溜息を漏らす。
あの会社の提供する「安らぎプラン」は間違いなく文字どおりの「安らぎ」を提供してくれるが、休日の今日もきちんと実行されていることを知って
改めて「安らぎプラン」の契約内容を変更して良かったと思う。
恐らくその女性は服を洗濯するために持ち出したのだろう。洗濯機は外にある。
 セイウチ妻はフン、と鼻息をしてテレビの方に向き直るが、海原はそれを見ずにサンダルを履いて、洗濯機がある裏口の方へ出る。
すると、からりと晴れ上がった空の下で繰り広げられる眩しい光景が海原の目に飛び込んできた。
セイウチ妻とは似ても似つかぬスリムな髪の長い女性が自分の服を干しているのだ。
 海原は何時以来かの光景を暫しじっと眺める。
何枚目かの服を干し終えて洗濯籠から服を取り出そうとしたその女性が、海原の存在に気付いて笑顔を見せる。
海原はこれまた何時以来かの心のときめきを感じ、思わず頬を赤らめて身を硬くする。
ちなみに女性は昨日とはまた別人だが、契約内容の詳細を昨日改めて知らされた海原は別段驚くこともない。

「あなた、随分早いですね。良く眠れたんですか?」
「あ、ああ。起きたら服がなかったんで、どうなったのかと思ってね。」
「御免なさいね。埃が積もってたし折角だから、と思って全部洗っちゃったのよ。悪いけど今日はパジャマのままで居てくれないかしら?」
「そんなことは構わないよ。外出する用事もないし。」
「あ、そうそう。洗濯物を干し終わったら急いで朝御飯を準備しますね。」
「急がなくて良いよ。休日なんだから。」
「折角早く起きてくれたのに朝食を準備しないわけにはいきませんわ。すみませんけど、部屋で待っていてくれませんか?」
「分かった。待っているよ。」

 海原が快諾すると、その女性−契約上の妻だ−はもう一度微笑みを見せてから洗濯物を干すのを再開する。
海原は手伝うにしても勝手が分からないし、突っ立っているのも何なので部屋に戻ることにする。
セイウチ妻が横たわるダイニングを通り過ぎ、部屋に戻ると、海原はまずカーテンを開ける。
眩い爽やかな光が海原を照らし、部屋に飛び込んでくる。
 この部屋に太陽の光を入れるのは久しぶりのことだ。
これまで休日といえば昼まで寝ていたし、起きた時には誰も居ないことが当たり前で、海原は一人でトーストと牛乳のブランチを済ませて、
自分の居室であるこの部屋でゴロゴロして妻の帰りと夕食を待つという、味も素っ気もないものだった。
洗濯物も、取り込まれたものの中でワイシャツにちょっとアイロンが消しただけで適当に畳まれて部屋に投げ出された。
酷い時は生乾きのものもあって、黙々とハンガーを通して部屋の中に干したこともあるくらいだ。
それがどうだ。今日は自分の洗濯物を燦々と輝く太陽の下に干してもらっている。そして自分が起きてきたら妻が食事を作ってくれるという。
海原は、高い料金と本物の家族との事実上の絶縁と引き換えに手に入れた「安らぎプラン」の充実ぶりに改めて感慨を深める。
 暫くして、階段を上ってくる足音が聞こえてきた。足音は徐々に海原の部屋に近付いてくる。
ドアが開き、湯気が立つ料理が乗った盆を持って「妻」が入ってきた。

「お待たせ。本当はダイニングでテレビでも見ながらのんびり食べた方が良いんでしょうけど・・・。」
「良いって良いって。誰も居ない部屋で一人ぼんやり食べるより、こっちの方がずっと良い。」
「そう言ってもらえると嬉しいですわ。さ、どうぞ。」
「いただきます。」

 海原は深い感慨の中、温かい朝食を口にし始める。
今まででは決して味わうことが出来なかったご飯と味噌汁、ハムエッグに漬物という立派な休日の朝食を、海原は満足感と共に噛み締める。
海原の朝食は静かに、しかしのんびりと過ぎていく。
 契約内容では朝食と夕食を平日だけでなく休日にまで「拡張」すること、そして洗濯と掃除を追加することになっている。
この部屋も自分一人になってから掃除をしてなくて久しい。あのセイウチ妻は一度も掃除に来たことがない。
そのくせ、自分が出す洗濯物は臭いだの何だのと文句を言うのだから始末に終えない。
その点、「安らぎプラン」の「妻」は文句を言うどころか笑顔を見せるし、朝早く起きた自分を気遣ってもくれる。
これだけでも月10万の契約を結んだだけの価値はある、と海原は思う。

「ご馳走様。美味かったよ。」
「どういたしまして。」

 海原が全ての食事を食べ終わると、「妻」は笑顔を向ける。海原は腹と同時に心まで満腹になった気がする。
笑顔一つでこれほど心が和むのだから、海原が如何に今まで荒んだ生活を過ごしてきたかが分かるというものだ。
食後の茶を啜る海原に、「妻」は綺麗に料理がなくなった食器を重ねながら言う。

「食器を片付けてから、ここを掃除しますね。」
「何か・・・手伝おうか?」
「良いんですよ。たまの休日くらい、のんびりしていてくださいな。」
「でも、何もしないで部屋に居ると邪魔にならないか?」
「夫の存在を邪魔に思うようじゃ、扶養されている妻の名に値しないですよ。」

 「妻」から戸籍上の妻からは想像もつかない言葉がかけられて、海原は感激する。
「妻」はそう言って部屋を出て行き、少しして掃除機と叩(はた)きをを持って来て、早速掃除を始める。
海原は当初どうして良いか分からずその場に突っ立っていたが、「妻」の邪魔にならないようにこまめに場所を移動する。
 「妻」は叩きを斑なくかけ終わると、窓を開け、掃除機をこれまた斑なく部屋全体にかけていく。
海原が邪魔にならないように部屋の彼方此方を行ったり来たりする中、「妻」は布団を畳み、布団の下もきっちり掃除機をかける。
戸籍上の妻からはまったく期待出来ないことの連続に、海原は感激の嵐に晒される。
 1時間ほどして掃除が完了し、「妻」は額の汗を拭うと、海原の布団を窓まで持っていき、出来るだけ太陽の光が当たるように干す。
長い間敷きっぱなしだった煎餅(せんべい)布団に日が当たる時が来た。
追加した掃除のプランにはこんなことまで入っているのか、と海原は驚き、感激を新たにする。
布団を干し終えると、「妻」は海原に尋ねる。

「あなた。布団も干したので横になれる場所もなくなりましたけど、良いですか?」
「あ、ああ。そんなことは構わないよ。それより充実したプランだなぁ。」
「お客様に心の安らぎを提供するのが我が社のモットーですから。」

 「妻」はこれが当たり前と言うように言ってのける。
正直、海原は文字どおり掃除と洗濯だけで終わると思っていたし、それで十分だと思っていたから、海原にとっては嬉しい誤算だ。
布団も干され、燦々とした太陽の光と新鮮な空気が部屋に飛び込む中、「妻」は尋ねる。

「あなた。今日は服を全部洗濯しちゃったから無理ですけど、お休みの日は何処かへ出かけるんですか?」
「いや、部屋でゴロゴロしているだけだよ。」
「休養も大切ですけど、折角の休日ですから普段は出来ないことをした方が良いんじゃないですか?」
「うーん・・・。そう言われてもなぁ・・・。スポーツをするには道具を揃えなきゃならないし、そんな余裕はないし、場所も仲間もないし・・・。」

 海原が困った様子でスポーツの実戦を躊躇うと、「妻」が提案する。

「それじゃ、本を読むなんていうのはどうですか?」
「本?」
「ええ。本でしたら座ってでも横になってでも出来ますし、お金もスポーツ用品に比べればずっと安いですよ。」
「なるほど、読書か。だけど、今流行りの本なんて知らないからなぁ。」

 海原が一旦表情を明るくしてまた困った様子を見せると、「妻」がまた提案する。

「よろしければ、私が適当に見繕ってきましょうか?」
「良いのか?そんなことまで。契約したプランにはそんなことまで含まれていなかった筈だが・・・。」
「食事に料理を出すだけじゃなくて後片付けも入っているように、掃除と洗濯にもそれを実行するにあたって必要な行為も無償で提供しますわ。」

 掃除と洗濯と本を買ってきてもらうことにはあまり関係ない気がするが、よく考えてみると、外出用の服は全て洗濯してもらったから外に出ようがないし、
このままゴロゴロしているようではこれまでの生活と変わらない。それでは何のために月10万のプランを契約したのか分からない。
自分の代わりに買い物に行ってもらう感覚で良いのか、と思った海原は、洋服箪笥へ向かい、そこに入っている自分のスーツの上着のポケットに入っている
財布から半端な−見た目余っているように見える、と言った方が適切か−千円冊二枚を取り出して「妻」に差し出す。

「それじゃ、これで適当に買って来てくれないか?」
「分かりました。ジャンルはどのようなものが良いですか?」
「そうだなぁ・・・。ハードカバーの本は持ち運びが大変だろうし、ビジネス書は読む気がしないし・・・。それ以外の本で読書に相応しいと思うものなら
何でも良い。その辺の選択は任せる。」
「はい。それじゃ暫く待っていてくださいね。」

 「妻」は小走りで部屋を出て行く。
休みの日なんだからそんなに急がなくても、と海原は一瞬思うが、ここは「安らぎプラン」の充実さに委ねた方が賢明だと思い直す。
海原は「妻」が帰ってくるまでの間、洋服箪笥くらいしかない部屋を改めて見回し、溜息を吐く。
 今まで平日は朝から晩まで仕事でくたくたになり、休日は何もすることがないから部屋でゴロゴロしているだけだった。
思い返せば、何と無味乾燥な生活を過ごしてきたことか。
これもそれも、全てあの女−戸籍上の妻−や自分を尊敬するどころか無視して小遣いだけはしっかり要求する身勝手なガキ共−戸籍上の子ども−のせいだ。
海原は自分のこれまでの生活を振り返り、戸籍上の妻と子どもに対する怒りを沸騰させる。
 戸籍上の妻は昨日の「絶縁宣言」で、「家族がどんなにありがたいものか、思い知るが良いわ」と言った。
だが、戸籍上の家族は自分に何もしてくれない。せいぜいあのセイウチ女が服を洗濯して適当に乾いたところでちょいちょいとアイロンがけして
部屋に放り込むことと、冷め切った夕食を用意することくらいだ。
それに比べて、「妻」の甲斐甲斐しい働きぶりと自分への労わりはどうだ。こんなこと、あのセイウチ女じゃ逆立ちしたって期待出来ない。
「家族のありがたみ」とやらを知るどころか、「家族」が変わって清々した、というのが率直な感想だ。
月10万の出費は決して痛くないわけではないが、これだけ充実した「安らぎプラン」と引き換えなら安いものだ、とさえ思う。
 暫く太陽の光が差し込む部屋でぼうっと横になっていると、とたとた・・・と階段を駆け上がってくる音が聞こえてきた。
帰って来たのか、と海原は身体を起こしてその場に座る。
すっかり色褪せた新婚時代を髣髴とさせるこんなドキドキ感を感じられるのも、「安らぎプラン」のお陰だ。
海原が改めて「安らぎプラン」の充実ぶりに感嘆する中、ドアが開いて「妻」が入ってくる。今度は人が変わることはなかった。
もっとも、あのセイウチ女に比べれば、妻の人相がどう変わっても何ら不満はないのだが。
「妻」は小脇に小さなサイズの本を数冊抱えている。どうやら文庫本を買ってきたらしい。

「お待たせしました。こんなところでどうでしょう?」

 「妻」は抱えていた本を海原に差し出す。海原は本の表紙に目を通す。
本は「雨上がりの午後」というタイトルの連作ものだった。作者はMoonstone。その名は海原も小耳に挟んだことがある。
この「雨上がりの午後」はMoonstoneの代表作の一つで、文庫本では異例の連作小説として鳴り物入りで発売されたものだ。
内容までは流石に知らないが、実態を知らない評論家が自分の主張を勝手気ままに書き連ねたビジネス本や、見ただけで読む気が失せるハードカバーの
分厚い本より、ずっと気軽に読めるものであることは間違いないだろう。

「良い本を選んできてくれたね。ありがとう。」

 「家族」に「ありがとう」を言うのも何時以来だろう、と記憶の物置を弄らないと出てこないものだ。
「妻」は安堵の表情を浮かべ、海原に言う。

「どうしたしまして。内容は気に入ってもらえるかどうかは読んでもらわないと分からないんですけど、気楽に読める本、と思って探したら偶々この本が
並んでいたので・・・。」
「これだけあると暫く楽しめそうだな。本当にありがとう。」
「お礼を言ってもらう必要なんてないですよ。」
「いや、今はそう言いたい気分なんだ。今までこんな気分とは無縁だったからな・・・。」

 海原の表情に少し陰が差す。
仕事では上からの圧力と下からの突き上げに押し潰され、くたくたになって帰れば冷めた夕食が待っている。
休日はと言えば起きた頃には誰も居らず、一人ぼそぼそとブランチを済ませ、戸籍上の妻の帰りと夕食を待ってゴロゴロするだけ。
洗濯物さえまともにしてくれない。普段着に至っては埃を被る有様だ。
風呂に入るにもタイミングを見計らわないといけない。寛げるのはこの8畳の部屋の中だけ。
こんな生活の何処に「ありがとう」を言えるタイミングがあるだろうか。
「ありがとう」という言葉は相手に感謝の気持ちを伝えると同時に、自分の心をも温かくするものなのか、と海原は痛感する。

「あなた?」

 「妻」の呼びかけで、海原は我に返って「妻」を見る。

「どうかしたんですか?」
「あ、ああ。『安らぎプラン』を変更して良かったな、と思ってね。」
「そう言っていただけると嬉しいです。お昼ご飯までゆっくりしていてくださいね。」
「ああ。そうさせてもらうよ。」

 「妻」が笑顔を残して出て行くと、海原は早速文庫本の最初の巻に手を伸ばす。
会社で書類という形で文章を読むことはあっても、それには何の味気も色気もないものだ。要求するのも無理な話だが。
本を読むなんて何時以来だろう。これまた記憶の物置を徹底的に弄らないと出てきそうにない。
海原は文庫本を開いて、長閑(のどか)で静かな雰囲気の中で文章を目で追い始める・・・。
 「妻」が運んで来た昼食を挟んで、海原の休日の読書はゆったりと流れていった。
正直、海原は読書で退屈しないか、という不安が微かにあった。
しかし、読んでいくうちに作品の世界にのめり込んでいき、気がつけば布団は「妻」に取り込まれて敷き直され、部屋に差し込む太陽の光も部屋の床から
壁へと場所を移し、その色を黄金色に変えていた。
 海原は区切りの良いところまで読み終わるとそこにしおりを挟み、その場でぐっと伸びをする。
振り返ってみればあっという間の休日だったが、充実感はこれまでとは比較にならない。読書というものも良いものだな、と海原は認識を新たにする。
 海原が文庫本を重ねて部屋の隅に置いた時、ドアがノックされる。はい、と海原が応答すると、「妻」が入ってくる。
今度の「妻」は昼までの「妻」とは違う人物だが、海原は気にしない。
ショートカットの小奇麗な身なりの比較的若いその「妻」は、海原に尋ねる。

「あなた。今日の夕食は何にしますか?」

 海原はえっ、と声を上げて驚く。夕食のメニューを聞かれることなんて、色褪せた新婚時代でもあまりなかったことだ。
驚きのあまりその場で硬直してしまった海原に、「妻」は再度尋ねる。

「あなた。どうしますか?」
「あ、ああ。そうだなぁ・・・。煮魚なんてどうかな?」

 煮魚は海原の好物であるが、これまではガキ共が骨っぽいから嫌い、という理由で食卓に上ることがなかった。
海原の遠慮気味な回答に、「妻」は元気良く応える。

「煮魚ですね?じゃあ、そうしましょう。時間はかかりますけど、良いですか?」
「ああ。それは構わない。のんびり待たせてもらうよ。」
「それじゃ、作ってきますね。」

 「妻」は温かい微笑みを残して小走りで部屋を出て行く。
「妻」の女性は割とせっかちな人が多いな、と思いながら、海原は部屋の隅に片付けた文庫本に再び手を伸ばす。
煮魚を作るには味を染み込ませるためにそれなりの時間を要する。それまでの時間をただぼうっと過ごすのは勿体無い、と海原は思ったのだ。
海原の中で何かが大きく変化したようだ。
 約1時間後−海原にはもっと短く感じたが−、ドアが開き、「妻」が夕食を運んでくる。
机の上に並べられた料理は、まさに海原が食べたかった煮魚をはじめ、様々なメニューが並んだ豪華なものだ。
海原は文庫本にしおりを挟んで片付け、改めて夕食を見る。香ばしい醤油の臭いが湯気と共に煮魚から立ち上っている。

「さ、あなた。冷めちゃわないうちに。」
「そ、そうだな。いただきます。」
「はい、どうぞ。」

 海原は早速煮魚に手を伸ばす。
箸で器用に皮を解(ほぐ)し、身の部分を一摘み取り出して口に入れる。温かさの中に濃厚にしてさっぱりした微妙な味加減が効いている。

「美味い。」
「口に合って良かったです。」

 思わず感想を口にした海原に、「妻」ははにかんだ笑顔で応える。
海原は煮魚をもう少し食べ終えた後、他のメニューにも手を伸ばす。
どれもこれも、海原の下に良く馴染む味だ。味の好みも十分計算に入れてあるのだろうか。
海原は充実した「安らぎプラン」と共に手作りの、電子レンジで温めたのではない夕食を噛み締める・・・。
第3章へ戻る
-Return Chapter 3-
第5章へ進む
-Go to Chapter 5-
第2創作グループへ戻る
-Return Novels Group 2-
PAC Entrance Hallへ戻る
-Return PAC Entrance Hall-