〜この作品はフィクションです〜
〜登場人物、団体などは実在のものとは無関係です〜
本作品はクリスマス特別企画作品です。
「−職業は・・・会社員。では年収は?」
「えっと・・・300万くらいです。小さな会社なんで。」
「御用意できるデートコースは?」
「自分の家でケーキとかを買ってパーティーをしようと。この時期外に出るのは無理なんで。」
「申し訳ありませんが、登録はできません。」
「ど、どうしてですか?!」
「どうしてと申されましても・・・。年収、職業、デートコース、用意できるプレゼント・・・など、どの条件をとっても貴方は女性の希望の最低ラインに到達して
ないんですよ。これでは登録しても見向きもされません。」
「そ、そんな!確かに俺は豪華なディナーやホテルを用意できるほど余裕はない。でも、手作りの過ごし方だって良いと思う女性だって一人くらいは
居るんじゃないか?そっちが勝手に設定した条件で門前払いするなんて横暴だ!」
「あのですね・・・。こちらに照会を希望する女性がそんな安上がりのイブを希望していると本気で思っておいでですか?」
「え?」
「女性はより豪華なディナー、印象に残るイベント、形になるプレゼントを望んでいるんです。それで一夜を過ごす相手を吟味するんですから。男性がより良い
条件でより良い女性を引き付けて一夜を過ごそうと画策する。言わばギブアンドテイク、需要と供給でイブの夜は成立するんですよ。しかし、貴方には
女性を引き付けるその条件がないんです。これでは登録したところで女性には見向きもされません。」
「・・・。」
「もし貴方が提示する安上がりのイブをお望みでしたら、御自分でお相手を見つけられることを強くお勧めします。」
「・・・そうですか。」
「では、良いイブをお過ごし下さい。」
「さっきの人、随分落ち込んでたな。」
「多分門前払いを食らったんだろうな。ま、あの形(ナリ)じゃ無理だぞ。背は低いしファッションもダサかったし。」
「スーツじゃなくてもカッコ良く決めてれば良いけどさ、あんな普段着そのままじゃ駄目だって。」
「この時期門前払いだともう彼女ゲットは無理じゃないか?」
「多分な。ああ嫌だ嫌だ。ああはなりたくないね。」
「やっぱ、良い女を抱きたいなら金がないとな。イブの夜なんて金で買うようなもんなんだから。」
「そうそう。金が無いのにイブを彼女と過ごすなんて無理だって。女だってそのつもりなんだからさ。」
「あ、あの人ってもしかして・・・独りイブじゃない?」
「多分そうだぞ。この時期街中を一人出歩くなんて独りイブ以外ないって。」
「なんか哀愁漂ってるよねぇ。あんなんで同情引けると思ってんのかな?」
「無理無理。今時気持ちだけで女は寄ってこないって。」
「そうよねぇ。あたしもあんたが超豪華なイブを用意できるって言うからOKしたんだもんね。」
「やっぱ男は甲斐性っしょ?」
『今時ディナーを手作りぃ?』
『ホテルで夜景も無いのぉ?』
『プレゼントがそんな安物なんて信じらんなーい』
金で何でも買えるわけではない。
誠実さが第一。
見た目より中身が大切。
「本音で語ろう」「個性の時代」とほざくなら、何故画一化しようとする!
それならいっそ、愛や気持ちなど奇麗事でしかないと、はっきり公言したらどうなんだ!
「はい、こちらはレインボーキャッスル前です。夜景の新名所はご覧の通り、物凄いカップルの数。何処を見てもカップルです。」
「もはや全国的イベントとなったイブの夜、このテレビをご覧の皆さんは・・・もしかして独りイブですかぁ?それはさて置き、此処スターダスト・ブリッジ前に
来ているカップルにお話を伺いたいと思います。すみませーん。」
「あ、はい。」
「イブの予算はズバリ、如何ほどですか?」
「えっと、今年はちょっと張り込んで50万です。」
「50万ですか?!凄いですねぇ。そうするとAランクってやつですか?」
「そうでーす!あたしの彼バリバリのエリートでぇ、プレゼントも超豪華。ファルティーの指輪にぃ、ネルジャのバッグ。もう最高!」
「うわーっ、羨ましいですねぇ。」
「やっぱりですね、クリスマスイブの経済効果というのは絶大でして、兎角消費が女性に比較して鈍い男性が夏と共に大量消費に走る
イベントなんですよ。」
「本来の意味を逸脱した商業主義的イベントだという批判の声も、一部から上がっていますが?」
「それはあくまでも一部でしょ?利益を敵視する古臭いイデオロギー集団に、経済効果に水を差すようなことをされるのは迷惑ですね。」
「そうですね。理想をいうのも結構ですが、やはり現実を見ればイブの経済効果が日本経済に与える影響は無視できないだというのは、もはや明らか
ですよね。」
イブに独りの、男達は
女や世間の、笑い者
でもその年の、クリスマスの日
サンタの女性は、言いました
「やられたよ。昨日ホテルに連れ込めると思ったら、『あたし、門限があるから』だって。俺知ってるぜ?あの女一人暮らしで門限なんかありゃしないってこと。
プレゼントとディナーを持ち逃げされちまったぜ。」
「俺はどうにか抱けた。」
「何だ、自慢かよ。」
「ところがその後だよ、問題は。『責任とってよ』とか言い出してさ。結婚を前提にお付き合いしようって・・・。」
「良いじゃないか。」
「良くねえよ!その女、子連れだったんだよ!それもそのガキってのが誰の子どもだかも判らねえっていうんだぜ?」
「げ、そりゃ詐欺じゃねえか。」
「俺に経済力があるからって言うけどさ・・・俺、イブのお陰で借金背負っちまったっていうのに、ガキまで背負い込むんだぜ?」
「そりゃ悲惨だわ。」
「ほらほら見て、このダイヤ。昨日の彼からゲットしちゃった。」
「あたしはバッグに服。でもディナーが思ったより豪華じゃなかったからホテルはパスしちゃった。」
「結構シビアねぇ。あたしはベッドインしちゃった。」
「えー?!」
「だってさぁ、彼キャリア官僚だし、将来は事務次官って言う出世コースだもん。これを逃しちゃ損でしょ?」
「え?それってAランクの中でも最上級クラスじゃん?ラッキーじゃないの。」
「彼には『これが初めてなの』とか言ってさ。そしたら彼、感激しちゃってさ、『一生大切にするよ』って言ってくれたの〜。」
「うわーっ、あんた去年も同じ事言ったんじゃないの?そう言えばあの彼は?」
「青年実業家っていうのは捨て難いけどさ、やっぱり不景気でも安心できる方が良いでしょ?」
「あたしは掛け持ちしちゃってさ。プレゼントダブルでゲット。」
「同じ物貰ってどうすんのよ?」
「決まってんじゃん。片方は質屋に突っ込んでお金にするのよ。カードでいっぱい使っちゃったからきつかったのよね。」
「あんたの方が詐欺じゃん。」
「そう?だって男だって女のカラダ目当てでしょ?これって駆け引きじゃない?」
「そうそう。イブって女の子の為のイベントよ。楽しまなきゃ駄目。」
イブに独りの、男達は
女や世間の、笑い者
でもその年の、クリスマスの日
サンタの女性は、言いました
暗い夜道は、お金よね
ディナーも夜景も、貴方持ちでね
何時も泣いてた、一人男は
これが現実かと、悟りました