芸術創造センター こぼれ話
Dropped talk of Performing Arts Center

2004年5月31日更新 Updated on May 31th,2004

2004/5/31

[あっという間に終わり]
 何だか日増しに時間の流れが速まっているような気がします。それだけ歳を食ったっていう証拠ですかね(苦笑)。それでも未だ出来てないことが多い。仕事のある日は自動的に決まった時間に目が覚めるんですが、休日となると途端に目覚めが悪くなって、時計を見たら午後だった、なんてことがままありますからね。平日の寝不足を休日で取り戻しているんでしょうか。
 明日から6月です。当然トップページの背景写真が変わります。年単位の常連さんならお分かりでしょうが、5月に比べてやたらと多い、紫陽花や菖蒲が咲き誇ります。実際の紫陽花も、早いものはもう開花していますからね。ページそのものがテキスト主体なので味も素っ気もない分、背景でカバーしようかと。
 確か、紫陽花の花言葉は「移り気」。あまり良い印象のない言葉ですが、私は変わらぬ心や想いというものを信じていたいです。時間の流れは思い出や気持ちをセピア色に変えるものですが、それはその思い出や気持ちがその程度のものだからだと思います。我が身朽ち果てても心は残る。神や仏など信じちゃいませんが、肉体は魂の入れ物、という「定義」は、そうであって欲しいです。

「今日の朝・・・電話があったんだ。高校時代のバンドのメンバーから。」
「あの写真の感想ですか?」
「ああ。裏工作でもしたかのように立て続けにな。皆一様に言ってた。晶子は凄い美人だな、って。」

 微かな光で浮かび上がる晶子の顔には、はにかんだ笑顔が浮かんでいる。

「そしてもう一つ。結婚式には必ず呼べ、って。予想どおりの感想だった。」
「自慢したんですか?」
「否。それ以前に殆どの奴から言われた。本気で彼女と一緒に暮らすつもりなら、お前がしっかりしろ、って。表現の違いは別としてな。それだけ俺と晶子の幸せが俺の双肩にかかってる、ってことだよな・・・。」

 俺と晶子は暗闇の中で見詰め合う。こうしていても俺の心の深淵から性的衝動は湧き上がって来ない。晶子は何も言わないし何もしない。何を思っているのかも分からない。俺の出方を・・・待っているんだろうか?今まで晶子と寝た時は殆ど、否、全て晶子から「仕掛けて」きた。今度は俺の番だ。俺は上体を起こし、視界に晶子を収めたまま晶子に乗りかかる。晶子は俺の動きに合わせて身体と頭を動かす。
 俺は晶子の両脇に手をつき、晶子を見る。その瞳は俺だけしか映っていない。驚きもしない。跳ね除けもしない。やっぱり・・・俺の出方を待っているんだろうか?
 ただ見詰め合うだけの時間がゆっくり流れていく。俺は決意を固めて目を閉じながら身体を沈める。狭まっていく視界の中で、目を閉じていく晶子の顔が映る。俺の唇に柔らかい感触が伝わる。俺は腕を晶子の背中に差し込んで抱き締める。俺の首に何かが回り、軽く引き寄せられる。舌はあえて差し込まない。唇の感触を温もりを味わうだけの時間が過ぎていく。
 どれほどの時間が流れただろう。俺はゆっくりと晶子から離れる。離れたといっても、顔面に神経を集中させれば微かに周期的に押し寄せる空気の流れを感じるくらいの距離だ。目は閉じたままだから晶子の表情がどうなっているのかは分からない。俺は再び身体を沈め、晶子の首筋に唇を付ける。

雨上がりの午後 第1540回

written by Moonstone

 俺は上体を起こして掛け布団を掴み、それを引っ張る形で掛ける。静かな部屋の片隅にあるベッドに俺と・・・晶子が横になっている。ふと左を見ると、晶子が俺の方に身体と顔を向けていた。

2004/5/30

[何年ぶりかな・・・]
 金曜の夜から、ふと思うことがあってPS(プレイステーション)を起動しました。更新を終えてとっとと寝ようと思ったんですが、今準備している「魂の降る里」で戦闘機関連のことが出て来るので(あ、ネタバレになるかな)、気分を変えてゲームでもしてみようか、と。連載が軌道に乗って以来、ゲームにまったく手を出してなかったですからね。
 プレイしたのは「エースコンバット3」。PS2は持ってないのでシリーズは3までしか知らないんですが、3は1のフライトシミュレータ的要素と2のゲーム性、そして謎解きの要素が絡み合った傑作だと思っています。クリアするのに随分時間がかかった記憶があります。
 何年ぶりかですからメモリーカードが生きているかどうか疑問だったんですが、しっかり残ってました。その中で全てのミッションをクリアしたデータをロードして(ゲーム中に搭乗した特別なカラーリングの機体が選べます)、幾つかのミッションをプレイ。最初こそ戸惑いましたが、直ぐに操作を思い出して楽しみました。戦闘機やミサイルが飛び交うのはゲームの中だけで十分だ、とつくづく思いました。
 風呂に入ると早速シャワーを捻って全身を濡らす。髪と身体が適当に水分を吸ったところでシャワーを止めて、髪と身体を洗う。ひととおり洗ったらシャワーを捻って、全身に纏った泡を洗い落とす。これで完了。我ながら呆気ない。
 そして湯船に浸かる。この湯にほんのちょっと前、晶子が入ってたんだよな。・・・そう思うことは思うが、性的衝動は湧き上がってこない。こんな状況、しかも相手はその気っていうこの状況で、性的衝動が湧き上がってこないのはやっぱりどうかしているんだろうか?俺にとって女神だからか?・・・渉が言ってたな。だから・・・変な言い方だが微妙なタイミングが一致しないといけないんだろうか?
 ・・・出るか。考えてたところでどうになるわけでもない。俺は湯船から出て風呂場を出ると、ドアに掛けてあるバスタオルを取って身体の水分を拭う。そして下着とパジャマの順に着る。これで完了。俺は普段どおりの気分のままでリビングへ向かう。「明日に架ける橋」がうっすらと流れるリビングの脇にあるベッドには、ピンクのパジャマ姿の晶子が腰掛けている。

「早いですね。」
「分かってるだろ?俺が烏の行水だってことは。」
「普段もこんな感じなんですか?」
「ああ。時間はもっと遅いけどな。月曜以降のレポートを書いたり、ギターの練習したりするから。」
「それじゃ、今日はまだお風呂に入らない方が良かったですね。」
「否、今日は良い。判明している分のレポートは仕上げたし、ギターも今日は昼間結構練習出来たから。」
「音楽、消しましょうか。」
「俺がやるよ。」

 俺は立ち上がろうとした晶子を制して、CDの演奏を止める。そしてその足で部屋の電気のスイッチを切る。一転して静寂と暗闇の世界と化した部屋で、俺はベッドに乗って横たわり、普段より右よりの位置に身体をずらす。晶子は黙って俺の左側に横たわる。

雨上がりの午後 第1539回

written by Moonstone

 俺は適当に誤魔化して−多分誤魔化しになってないだろうが−立ち上がり、風呂へ向かう。一応晶子から見えないのを確認してから服を脱ぐ。もう何もかも見られているから何を隠す必要があるか、と言われればそれまでだが、晶子の家ではリビングと風呂が壁とドアで完全に遮断されているから、そっちに慣れてしまっているせいもあるだろう。

2004/5/29

[この週末は忙しい(汗)]
 予定は未定、と言いますが、なかなか思うようにことが進みません。「魂の降る里」の直筆の挨拶文、5周年の挨拶文は何れも手付かず。力仕事ばかりで疲れていたのもありますが、ギリギリの状態で今日の更新を迎えました。何とかこの週末でやりたいことをやろうと思っています。
 本当なら徹夜してでもやりたいのですが、徹夜したら後々とんでもないことになりますからね・・・。それで翌日丸潰れになった、なんてこともままありますし、そうなっては本末転倒ですから、生活リズムを維持した上でこの週末を動きます。
 掲示板のお返事が延々と遅れて大渋滞を引き起こしていますが、リンクのお申し出は受け付けております。掲示板では原則書き込み記事No.順にお返事していく方針ですので、お急ぎの方はメールでお願いします。メールの方は9割以上はウィルスか英語のDMですので、応答はこちらの方が速いです。
 俺一人残された部屋に流れる曲は、「Lover Boy」「愛をもっと」、そして「明日に架ける橋」のインストルメンタル・バージョン−曲のデータを作る際にかなり参考になった−へと推移し、「明日に架ける橋」に戻る。俺は頬杖をついてぼんやりと聞き入る。こうしていると、女が一人暮らしの俺の家に泊まる、という性的興奮を招く筈の事実が意識の深淵にさらさらと流れ込んでいく。このベッドだけでなく、「聖域」だった晶子の家でも晶子を抱いた。もはや場所に躊躇する必要はない。だけど・・・晶子を抱きたい、という衝動は湧き上がってこない。
 晶子を初めて抱いた「記念日」、すなわち俺の誕生日から1ヶ月が過ぎた。あれから1年。それまで4回。今時の若いカップルからすれば異常に少ないかもしれない。晶子を抱いた時の様子を思い描いて欲求を「処理」したことも珍しくない。なのにその欲求を直接向けられる相手と一緒に過ごすとなると、欲求の荒波は凪へと変わっていく。
 晶子が今夜俺の家に泊まりたい、と切り出した時、覚悟は出来てるのか、と俺は言った。晶子はそれを肯定したし、俺もそのつもりだった。だが、「現地」に到着してから今に至るまでの過程で、異性という意識に代わって友人という意識が表立ってきた。これで・・・良いんだろうか?

「お待たせしました。」

 晶子の声で俺は我に帰って声の方を見る。ピンクのパジャマを着た晶子の髪が、電灯の光を受けて虹色に輝いている。晶子は不思議そうな様子で歩み寄ってきて、首を少し傾げて俺の顔を見る。

「どうかしたんですか?」
「・・・あ、いや、別に何も・・・。」

雨上がりの午後 第1538回

written by Moonstone

 「Lover Boy」が流れる中、晶子は鞄から取り出したバスタオルとパジャマを持って風呂へ向かう。風呂に隣接する脱衣場−洗濯機を置くスペースでもあるが−は俺が腰掛けているベッドからは陰になって見えない。晶子は結構風呂の時間が長いから−俺が極端に短いせいもあるだろうが−、のんびり待つとしよう。今夜は一緒に居られるんだから。

2004/5/28

[冷や汗ものの1時間]
 昨日は、前回(先週)に当初予定より長引いたために延期になっていた勉強会の講師役でした。人数はせいぜい10人程度とは言え、半分以上はその手の(物理学関係)専門。しかも私の担当分(陽子/電子加速装置:陽子や電子を所定の原理で高速で走らせる装置で、これから放射光というある周波数成分の光を取り出す(虹の7色の1色のみ取り出す、というイメージ)。毒物カレー事件で使われた毒物が容疑者宅の家宅捜索で得た毒物と一致するかどうか、兵庫県にあるSpring8という施設で検証されたが、それでも放射光が使われた)を運転したり使用したりしている専門家集団、ということで始まる前からドキドキ(汗)。
 図書館に篭ったり自宅で大学時代のテキストを引っ張り出して調べるなど、入念な準備をしてはいましたが、いざ公式の解説や演習問題の解答の提示をするとなると、やっぱり緊張しました。何時どこで突っ込みが入るか、しかもどれだけ深い突っ込みが入るか分かりませんからね。
 まあ、やっただけのことはあったと言いますか、滞りなく終わりました。電磁気学の理論を使った公式の解説では、かなりの好感触が得られました。私自身えらく梃子摺ったのですが(普段使わないからねぇ)、きちんと筋道を示せば納得を得られるようです。勉強会そのものはまだ中盤に差し掛かったところですが、最後までやり遂げようと思います。

「鞄、俺のデスクの横に運んでおくから。」
「お願いします。」

 俺は晶子の鞄をデスクの横に運ぶ。風呂の準備が出来るのにはもう暫くかかるだろうし、晶子の食材収納にもそれなりに時間がかかるだろう。風呂の準備は自動だし、食材収納を手伝えるだけの技術はないから、俺はベッドに腰掛けて待つしかない。
 てきぱきと冷蔵庫に食材を収納していく晶子の後姿を見詰める。缶ビールと食パンとジャムくらいしか入ってないから、スペースには余裕がある筈だ。逆に生活感がなさ過ぎて晶子は内心呆れ返っているかもしれない。
 少しして、食材を詰めていたビニール袋が全て空になり、晶子は冷蔵庫のドアを閉める。そして隣接する流しで手を洗い、冷蔵庫のドアにぶら下がっているタオルで拭う。どうやら食材収納は完了したようだ。晶子は俺の隣に腰を下ろす。

「お疲れさん。ありがとう。」
「いえ。」
「風呂の準備が出来たら、晶子が先に入って。此処では晶子は客だから。」
「それじゃ、お言葉に甘えて。」

 晶子の微笑を伴う返事を得て、俺は徐に立ち上がってCDをセットする。ピアノの明るい旋律が流れ始める。この前投入した晶子用の新曲「明日に架ける橋」だ。ピアノとストリングスの比重が大きく、タイトルに象徴されるように歌詞が前向きな曲で、データを作る時にはストリングスのボリュームのコントロールデータをこまめに入力した。この曲も客にはかなり好評で−晶子がステージに立つだけでも喜ぶ客も居るが−、投入してからほぼ毎日のようにリクエストされている。
 控えめに流れる曲に、ベッドに腰を下ろした俺の隣からうっすらと歌声が被さる。晶子が曲に合わせて歌っている。無声音だが距離が近いせいか、よく聞こえる。それに、ただ歌詞をなぞるんじゃなくて、息継ぎや強弱はしっかり再現している。本当に綺麗な歌声だ。何時の間にか俺は晶子の方を向き、歌う横顔を見ていた。聞き惚れる、とはこのことか。
 「明日に架ける橋」が終わったところで、ピピッ、ピピッ、という甲高い電子音が響く。風呂の準備が出来た合図だ。晶子が俺を見る。俺は何も言わずに首を小さく縦に振る。

雨上がりの午後 第1537回

written by Moonstone

 晶子の返事を受けて、俺は風呂の準備をする。準備と言っても、風呂桶の栓が閉じていることを確認してボタンを押すだけだから簡単だ。俺は手早く用意を済ませると、床に置かれている晶子の鞄を手に取る。

2004/5/27

[・・・かなりショック]
 言葉の綾ってやつなのかもしれません。気にするだけ損なのかもしれません。ですが、昨日受けた一言は私の心に深々と突き刺さりました。このお話をしている今でも気分が沈んでいます。・・・本気で考えた方が良いかな、やっぱり。このままじゃ・・・やっていけない・・・。

「お邪魔します。」
「どうぞ。」

 通り一遍の挨拶をした後、晶子が入ってドアを閉めて鍵をかける。更にはドアチェーンもかける。普段ガチガチのセキュリティに守られているから欠けてしまいがちな防犯意識もしっかりしている。

「冷蔵庫、使わせてもらいますね。」
「ああ。俺も手伝おうか?」
「これは私に任せてください。」
「分かった。それじゃ宜しく頼む。」
「はい。」

 俺はキッチンに持っていた袋を置いてからリビングの電灯を点ける。キッチン周りの電灯は晶子が食材の収納に必要だろうから、点けたままで良いだろう。はて、晶子が食材を収納する間、俺はどうすりゃ良いんだ?・・・あ、風呂の準備をしておくか。今日も忙しかったからそれなりに汗をかいた。幾ら涼しくなってきたといっても、動き回ってりゃ嫌でも汗をかく。

「風呂の用意しておくよ。ちょっと時間かかるけど、良いだろ?」
「はい。」

雨上がりの午後 第1536回

written by Moonstone

 晶子の家に立ち寄った俺と晶子は、食材の入った袋を幾つもぶら下げて−晶子は着替えも持っている−俺の家に入る。鍵を外してドアを開けるが、当然真っ暗だ。俺は先に中に入り、滅多に使わないキッチン周りを照らす電灯のスイッチをONにする。白色の光が眩しい。

2004/5/26

[小さいけど痛い]
 昨日、職場の引越しがありました。基本的には居室と作業室を分離するだけなんですが、引越しに必ずと言って良いほど付き纏う大量のゴミの分別と処分が結構な手間でして・・・。特にダンボールの分解が手間取るんですよね。一昔前みたいに接合部分をホッチキスの極太バージョン(で良いのか?)で閉じていませんが、テープをカッターナイフで切って分解して畳む、の繰り返し。
 かなり大きなダンボールを解体していた時のことです。それは四隅の接合部が接着剤で固定されていたのでそれを剥がしていたのですが、力の入れ方が拙かったのでしょう。右手人差し指の爪を1/3ほど剥がしてしまいました(汗)。その瞬間激痛がして、出血。幸い完全に剥がれることはなかったものの、出血部分は今でも内出血していて、爪先を何かに当てるとかなり痛いです。
 私は右利きで、PCのキーボードを使う時爪先を立てる傾向が強いので、うっかりしていると痛い思いをします。爪を剥がすと治るのに時間がかかるそうなので、暫く注意しなければなりません。でも、引越しはまだ終わっていないので、指先に緩衝材をつけられるならつけたいところです。
 晶子の言葉の裏にある意思を感じ取る。この前迎えた「出逢って2周年」記念日は、バイトが終わった後晶子の家で紅茶とケーキ−晶子が事前に買ってきたものだ−を囲んでささやかに祝った。当時とこれまでの軌跡を振り返って和やかで幸せな時間を過ごした。俺はそれで満足したつもりだった。だけど、「つもり」から一歩踏み出したい、という気持ちがなかったわけじゃない。晶子の意思を感じ取った今、その気持ちが急激に頭を擡げてくる。

「・・・男の俺の家に泊まりたいってことは・・・。」
「・・・。」
「覚悟は・・・出来てるのか?」

 俺の問いに、晶子は一度だけゆっくりと、しかし真剣且つ切実な表情で頷くことで答える。ここまで固まっている晶子の意思を拒む理由はない。拒みたくない。

「食事はどうする?」
「一旦私の家に寄ってください。必要な食材を持って来ますから。」
「一人じゃ持てないだろ?・・・2日も泊まるとなると。」

 言ってから、深読みし過ぎたか、と思う。俺の方から今日も明日も泊まっていけ、と言ったようなものだ。だが、晶子は少しも驚いた様子を見せずに表情を明るくする。

「じゃあ、お願い出来ますか?」
「ああ。・・・行こうか。」
「はい。」

 俺と晶子は再び歩き出す。会話はない。だが、これからのことは言わずとも分かる。晶子はそのつもりで話を切り出してきたんだし、俺もそれを知ってOKしたんだから。胸が高鳴る。晶子を抱いた一番新しい記憶は、夏休みの終わりに「別れずの展望台」へ行った後。久しぶりに味わう温もりと感触に浸りきり、力の限り求め合った。今日も・・・そうなるんだろうか?

雨上がりの午後 第1535回

written by Moonstone

「出逢って・・・2年経ちましたよね?」
「ああ。」
「その思い出も作りたいですから・・・。」

2004/5/25

[な、何だこれ?!]
 昨日自宅に戻って来たんですが、メールチェックしたらもの凄い数のメール。しかもその9割以上はウィルスメールか英語のDM。特に後者は最近増加が著しんです。以前も時々来て、その度に案内に沿ってREMOVEしていたんですが、今はとても手に負えない数になりましたし、REMOVEしてもきりがないどころか逆効果のようなので、無視することにしています。
 感想や私用のメールならまだしも、この手のメールは数に比例(反比例?)して気持ちが萎えます。ウィルスメールはプロバイダ側で何も対策をしていないらしくて素通りですし、英語のDMはどうにも防ぎようがないので、果たしてどうしたものか・・・。
 プロバイダを変えて、フリーのメールアドレスを使用するようにするのも一案ですが、連載の1章を1作品とすると軽く100を越える作品の末尾にあるメールアドレスを変える時間と手間を考えるととても手が出せません。ひたすら無視するしかないというのは嫌なものです。「DM送って来たら損害賠償請求するぞ」と警告してもこの手の相手には無意味でしょうし・・・(溜息)。

「今日もあっという間でしたね。」
「そうだな。まあ、暇よりかは良いんだろうけど。」

 俺と晶子は街灯が点々と灯る闇の住宅街を歩いている。何時ものように手を繋いで。晶子の言うとおり、今日も接客にステージにとてんてこ舞いしているうちにあっという間に過ぎ去った。リクエストでは予想どおりと言おうか、「UNITED SOUL」が候補の一つに挙がった。どちらかと言えば客層は若い世代が多いから、ノリの良いあの曲はかなり好評だ。常連のOL集団から声援を貰って、ちょっと嬉しかったりする。

「祐司さん、明日は実験でしょう?朝、大丈夫ですか?」
「ああ。2コマ目からだし、レポートは事前事後両方共昨日の夜に仕上げたから、大丈夫。」
「・・・祐司さんの家に泊まって良いですか?」

 晶子の突然の申し出に、俺は思わず足を止める。月曜の夜は晶子の家で夕食を食べて−時間が後ろにずれ込むのは相変わらずだが−泊まって一緒に朝食を食べて大学へ、というパターンだが、日曜の夜、しかも晶子が俺の家に泊まって良いか、と言ってきたのは今日が初めてだ。

「駄目ですか?」
「いや、そうじゃなくて・・・、何かあったのか?」
「私、明日は2コマ目からなんですよ。1コマ目が突然休講になって・・・。」

 晶子の月曜は1コマ目から始まる。俺は2コマ目から始まるのを良いことにギリギリまで寝てるし、晶子もそのことを知ってるから一緒に行きたい、とは言ったことがない。進路指導担当の教官から散々説教を食らったにも関わらずろくに動こうとしない3人を引き摺って実験を進めなきゃならない、と思うと月曜の朝は気が重いんだが、晶子と一緒に大学に行けるなら気分も軽くなるってもんだ。
 俺の左手が強く握られる。勿論、痛くはないが。晶子は何かを訴えるような瞳で俺を見詰めている。一緒に居たい、と言っているような気がしてならない。

雨上がりの午後 第1534回

written by Moonstone

 俺は演奏を始める。この曲はかなり人気が高い。俺自身ギターメインということで気に入っている。演奏しているとどんどん曲にのめりこんで行く。今日も機会があればこの曲を演奏するつもりだ。リクエストでも候補に挙がっても不思議じゃない。客も自分も満足出来るようにしっかりと、そして楽しく演奏しよう・・・。

2004/5/22

[ちょっとお休みします]
 告知が遅くなりましたが、トップの「シャットダウン日程」にありますように、明日明後日はお休みします。従姉妹の結婚式に出席するためです。従姉妹と言っても幼い頃から兄妹同様に育ってきた仲ですし、それぞれが仕事している関係で会う機会がなかなか持てなかったので、お祝いを兼ねて出席する、と伝えてあるんです。それに式場の場所が遠い関係上実家を中継する形を取るので、休まざるを得ないんですよ。
 本当はこの週末で掲示板のお返事を出来るだけ進めるつもりだったんですが、とんぼ返りして直ぐ、はちょっと体力的に辛いので、お休みさせていただきます。今日の更新の他、公開中の作品でお楽しみください。
 あ、そうそう。昨日、倉木麻衣さんの約1年ぶりの新曲「明日に架ける橋」を買いました。「明日に架ける橋」は勿論、カップリングの曲も良くて満足です(^^)。「明日へ架ける橋」は早くも憶えてしまいました(笑)。ラジオではまったくオンエアされなくて不満だったんですが、これでラジオを無視して聞きまくることが出来ます。良い曲ですよ。是非皆様も聞いてみてください。

それじゃ、いってきまーす!

「御免、祐司。お呼びがかかったから今日はこれで切るわ。元気でね。」
「ああ。そっちこそな。」

 俺の返事が届いたかどうか確認する前に、通話はぷつっと切れてしまった。何の仕事してるのか知らんが、結構慌しそうだな。まあ、宮城は新人だからまだ波を乗りこなせないところもあるんだろう。俺は受話器を置いて溜息を吐く。何やら今日は電話の嵐だったな・・・。こうも図ったように順番に電話がかかってくるなんて、それこそ宝くじに適用出来たら一晩で大金持ち!
 ・・・って、何馬鹿なこと考えてんだ、俺は・・・。宝くじならもう当たってる。それも絶対金には代えられない、特製の宝くじが。それをどう生かすかは俺次第ってところも普通の宝くじとは違う。俺はデスクに置いてある写真立てを見る。そこに写る俺と、俺が偶然手にした特製宝くじ・・・。絶対、大当たりにしないとな。俺にとっても、晶子にとっても。
 さて、と。今から何をしようか・・・。レポートは昨日の夜一気に片付けちまったし・・・。ギターの練習でもするかな。普段はやりたくても講義の都合で思う存分出来ない時が多いから、やれる時にやっておこう。時間は・・・。椅子から立ち上がってベッドの枕元の目覚し時計を見ると、まだ1時前だ。晶子を迎えに行くために家を出るのが5時だから、まだ十分余裕はある。
 俺はギターとシーケンサの準備をする。練習するのはやっぱり、この前投入したばかりの新曲「UNITED SOUL」だな。マウスを操作して曲のデータを開くと、画面の約半分を占めるデータ画面に幾つもの黒い点が−これがデータだ−現れる。アンプの音量を控えめにして、フレットに左手を添えてから右手で「PLAY」ボタンをクリックすると、演奏が始まる。勿論、タイミングを取れるようにちょっとアレンジしてあるが。
 この曲はほぼギターが主役の座を独占する。その他は殆どベースとドラム、パーカッション、ギター−原曲はオーバーダブ(註:別々に録音した音声を一つに集約すること)でもう一つ入ってる−でシンセの出番は少ない。サックスとユニゾンするところは多いが、ギターが前面に出る感じだから無いなら無いで構わない。実際、店じゃ俺一人で演奏してる。まあ、混雑が当たり前になってる店で二人以上ステージに上がるのは厳しいという現状もあるんだが。ちなみにこの曲、俺と同じ姓のギタリストの手に拠るものだ。

雨上がりの午後 第1533回

written by Moonstone

 受話器の向こうから何やら物音がする。よく聞こえないが、宮城を呼んでいるらしい。はい、今行きます、というややくぐもった声の後−口の部分を手で塞いでいたんだろう−少し慌てた様子の声が聞こえてくる。

2004/5/21

[1週間延期]
 準備していた勉強会の当番が、キャプションのとおり1週間延期になりました。前の残りが予想以上に長引いて所定時間(1時間)に達したからです。まあ、あのレベルの問題をあれだけの数片付けるにはそれなりに時間がかかって当然ですが、何だか肩透かしを食ったような気分です。気合入れて準備してきただけに(苦笑)。
 こちらでは連日雨続きです。この様子だとこのまま入梅しそう。朝から晩まで降っているので当然湿気は高いですが、気温が低いので割と過ごしやすいです。歩いての通勤は今までは面倒且つ退屈なものだったんですが、今は結構楽しかったりします(何故かは秘密♪)
 週明けからドキドキ9割ワクワク1割(こら)で居るんですが、今の今までスルーされちゃってます(苦笑)。気にならないのか目立たないのか。一人発見した人が居ますが、適当に受け流しておきました。結構驚いてたっけ。ま、今日が終われば早くも休日。もうひと踏ん張りしますかね・・・。
「な、何でそんなこと知ってるんだ?!」
「言わなかった?あたしの職場は小宮栄にあって、住んでるところはオフィス街のど真ん中だって。」
「そう言えば・・・。」

 深層から記憶が蘇ってくる。晶子の田畑助教授「対策」のためにICレコーダーを買おうと小宮栄を歩いていたら偶然宮城と出くわして、昼飯食いながら近況を話したことを。その時宮城が言ってたっけ。職場は小宮栄にあって、住むところも決まってて、オフィス街のど真ん中って。

「そんな関係で小宮栄周辺にある彼方此方のお店に出入りしてるんだけど、その手の店じゃ凄い評判になってたわよ。プロを唸らせる凄腕の若手ギタリストを加えてコンサートする、って。お店の人が、そのプロの人達が今度手を組むのは新京市の喫茶店の人達だ、って言ってたからピンと来たのよ。祐司のバイト先は喫茶店。そもそもギターの腕を云々言う喫茶店なんて、普通聞かないからね。」
「まさか宮城・・・。お前もあのコンサートに来てたのか?」
「チケット買おうと思ったら、とっくに売り切れてたのよ。チケット置いてあるお店が彼方此方にあった分、一つのお店の割り当てが少なかったらしくてね。コンサートの評判は、チケット買って観に行ったっていうお店のお客さんから聞いたのよ。凄かったって言ってた。」
「そうか・・・。」

 まさかこんな形であの夏のコンサートの話が宮城の耳に入っていたとは・・・。宮城の職場が小宮栄にあって、住んでるところもオフィス街のど真ん中ってことはすっかり忘れてたし、まさか宮城がその手の店に出入りしてたとは思いもしなかったからな。まあ、その時はそんなこと考えてる余裕なんてなかったが。世間って案外狭いもんだ。

雨上がりの午後 第1532回

written by Moonstone

「あたしは祐司の腕ならプロとしてやっていけると思うけどね。この前、新京市の公会堂で、プロの人達と一緒にコンサートやったんでしょ?客席いっぱいにして大成功だったそうじゃない。」

2004/5/20

[独り部屋に篭って〜♪]
 ・・・歌ってどうする(汗)。今日の(お話してる時点では明日ですけどね)勉強会に備えての予習のために午後から図書館に行ってました。職場の関係で図書館は職場の敷地内にあるんですよ。まあ、新聞や雑誌は多少ラウンジに置いてありますけど、勉強会の予習ですからそこはパスして、耐性がない人が踏み込んだら顔を顰(しか)めるか居眠りするかのどちらかの、専門書ばかりの階ですけどね(そっちの方が割合が圧倒的に多いんですけど)。
 そこで探した本は、物理学関係の専門書。それとテキストとペンを持って個室に入ってお勉強。色気も味気もありゃしません。あったら勉強どころじゃないでしょうけど。専門外のことばかりでもの凄く梃子摺ってしまって、何とか片付けた頃には終業時間。それでも分からない個所があったので、これから大学時代に使っていたテキスト(勿論、専門書♪)を引っ張り出して、今日職場へ持っていって調べる予定です。勉強会は職場公認のもの(しかも一人でも多い参加が望まれてたりする)なので、勤務時間中にしても問題ありません。念のため。
 一人で何かをすることは昔からなので、さして苦痛には感じません。むしろ大勢でああだこうだする方が不慣れです。こうして5年もページを管理運営していられるのも、一人で出来るからでしょう。.orgドメインはコストパフォーマンスとタイミングと(ドメイン取るのは早い者勝ち)組織形態を取っているというこのページの構成上(in Moonstone Studioってあるでしょ?)そうなっちゃっただけのことです。

「祐司、大丈夫?」
「・・・ああ、何とかな。そ、それより・・・何で結婚式まで話が飛躍するんだ?」
「ファッションなんかにてんで無頓着な祐司がアクセサリーを着けること自体が驚異的なことなのに、そんな目立って訳ありを示す指にペアリングを填めてるなら、そうなって当然でしょ?」
「・・・やっぱり目立つか?」
「当たり前よ。分からない方がどうかしてるわ。それで、結婚式は何時するの?」
「未定だ。プロポーズもまだしてないし。」
「私が言うのも何だけどさ・・・、祐司がプロポーズして式挙げて、その時に指輪填めさせる、っていう順番は守った方が良いんじゃない?このままだと、出来ちゃった結婚になっちゃうわよ。ま、それは否定しないけど。」
「去年の夏、言っただろ?ペアリングを左手薬指に填めてるのは、彼女がそうしてくれ、って譲らなかったから、って。」
「でも、今の彼女を真剣に愛してるからそうした、とも言ってたわよね?」
「・・・都合の良いところだけ憶えてるな。」

 思わず溜息が口を突いて出る。自分が不利になりそうだと察すると誤魔化したり流そうとしたりして、自分に有利になりそうだととことん突っ込んでくる。こういう小悪魔ぶりは全然変わってないな・・・。まあ、余程のことがない限り、人間の性格がころっと変わることなんてないらしいし。

「・・・ああ。真剣に愛してるさ。今の彼女をな。」
「祐司、一途だもんね。でもさ、祐司。」
「何だよ。」
「祐司ってまだ進路決まってないんでしょ?」
「・・・何で知ってるんだよ。」
「ペアリングのこと話した時に本田君達から聞いたのよ。祐司が進路で迷ってるって。ミュージシャンになることも考えてるけど、親の苦労も分かるし、プロとしてやっていけるのか不安だから迷ってる、ってね。」
「・・・ああ。そのとおりだよ。この前進路指導の個人面談があったんだけど、その時出した選択肢も体裁を整えただけって感じだった。自分で言うのも何だけどな。実際、今になっても決められないでいる。」

雨上がりの午後 第1531回

written by Moonstone

 俺は思わずむせてしまう。メンバー4人に続いて宮城まで・・・。ふと左手を見る−俺は右手で受話器を持つのが習慣になっている−。その薬指に光る指輪。やっぱりこれは目立つ上に「その後」を期待させるものなんだろうか?

2004/5/19

[鉄扉には勝てません]
 昨日、夕方に差し掛かった頃になって彼方此方走り回ることになりまして。いえ、別に悪さしでかしたわけじゃなくて、私も加わる講義がいよいよ始まるのを受けて、それに必要な書類の到着の確認や関係者への通達発送をしていただけです。その過程で一旦居室から出て戻ってきたのですが、その時、居室の扉(鉄製)に膝蹴りを食らわせてしまいました(汗)。
 骨がある部分ならまだしも、角度が悪くて骨のないところで、しかも勢いがやたら良かったので当然激痛。しかもその時内線電話を保留していたので、痛みを堪えて出たのは良いのですが、その場に座り込んでしまいました。それ以後、一時膝が曲がらなくなるほど酷くなりましたが、どうにか今は傷みがかなり引きました。
 今日期限の重要書類が、必要書類と時間の不足で今尚書けず、このお話をお聞きいただいている頃にはその作成をしていると思います。あ、勉強会の準備も手付かずだ(汗)。どうやら今日も忙しくなりそう・・・。
「昼休みだからこそ、よ。ちょっと一息、って時にふと、祐司はどうしてるかな、って思って電話してみたの。・・・迷惑だった?」
「否、今日は朝から電話の連続だったから目も覚めちまったよ。」
「祐司に連続で電話なんて、何かあったの?ファンクラブでも出来たとか。」
「馬鹿言うな。高校時代のバンドのメンバーからだよ。俺が奴らに送った写真の感想を立て続けに言ってきたんだよ。まるで裏工作でもしたかのように連続でな。」
「写真って、もしかして今の彼女が写ってる写真?」
「ほぼ正解。今年の春、俺と二人で撮ったんだ。それを耕次にメンバー全員に送れ、って命令されてな。」
「ああ、本田君ね。本田君と和泉君と須藤君と則竹君には成人式の後、私が祐司の現状についてしっかり報告してあげたから。ペアリングのこと、皆凄く興味持ってたわよ。祐司の奴早くも結婚か、って特に本田君と則竹君が大騒ぎ。」
「やっぱりか・・・。」

 耕次の話に裏付けが取れた。俺は晶子と付き合ってることをメンバーに隠そうとしていたわけじゃないが、話すことは頭になかった。約束どおり成人式会場前で会ってライブをすることしか考えてなかったからだ。進路のことで迷ってることを話したのもその時の流れに拠るもの。それを覚えていて電話してきたのは勿論、それを晶子のことに結び付けた耕次の話術にまんまと嵌まったってわけか・・・。
 高校時代、耕次が渉と宏一と共に俺のところに来て、一緒にバンドやらないか、と言って来た時のことを思い出す。いきなり何だ、と訝りつつも頼まれるがままに俺がギターを演奏した後、お前のギターが必要だ、一緒にやろう、と真剣に訴えてきた耕次。そして結局OKして、その直後勝平が加わり、バンド活動がスタートした。仲間達と記憶は全てそこから生まれた、と言って良い。

「で、その彼女とは今でも上手くやってるの?」
「ああ。今度の冬で2周年になる。」
「何時結婚式するの?」

雨上がりの午後 第1530回

written by Moonstone

「良いよ。もう過ぎたことだし。」
「そういうところ、祐司らしいね。」
「そうかな・・・。で、どうして電話してきたんだ?昼休みくらいゆっくりしたいだろ?」

2004/5/18

[運が良かったのかな?]
 5/15が穏やかな五月晴れだったのに、翌日は雨。昨日は一応晴れたものの、病院から帰宅する頃にはポツリ、ポツリ、と雨が・・・。湿度も高いですし、何時の間にやら入梅宣言、ってことになるのでは(汗)。冷え性かつ低血圧の私としては寒いより熱い方が断然良いのですが、湿度が高いと汗が頻繁に出て困るんですよね。私、汗かきですから。
 今も手元の湿度計が70%を越えていて蒸し暑いのですが、5/15だけは凄く爽やかでした。あんな服装でも暑くなかったですからね。のんびり景色を眺めていた時に頭に浮かんだのは倉木麻衣さんの「風のららら」(笑)。明日発売の約1年ぶりのシングルは予約してあります。フフフ、楽しみ楽しみ〜。
 以前お話したかもしれませんが、私は基本的にシングルは買いません。どうも割高感が拭えないのもありますし、大抵はアルバムに入るからそれまで待てば良いや、という気持ちがあるからです。でも、今回は別。先行オンエアされているTV番組で聞いた時、凄く良い曲だな、と思って。もっとラジオで流してくれないかな・・・。
 味も素っ気もない、もはや呼吸と同じレベルに達したこの食事が、余計に味気なく感じる。ま、自炊を投げ出してその時間を勉強と音楽につぎ込むことを選んだ以上は仕方ない、か・・・。
 ブランチが済み、食器を流しに持っていって手早く洗い、洗い桶に放り込んでデスクに座る。そして今日の「話題」になった写真が入っている写真立てを手に取る。春の陽射しの中で腕を組んで笑顔を浮かべている俺と晶子・・・。そう言えば、写真を撮ってくれたおばさんが言ってたな。

あんた達、今時珍しく感じ良いね。嫌味が全然ないよ。

 自分で言うのも何だが、確かにこの写真からは嫌味を感じない。見ているだけで心温まる一コマだ。晶子のゼミじゃ評判は悪いらしいが、それはそれで良い。この写真に写っている俺と晶子が幸せなんだから。
 電話がコール音を立てる。写真を送ったバンドのメンバーからは、裏工作があったと思わざるを得ない、立て続けの感想行列があった。もう奴らから言うことはないだろう。となれば・・・親からか?俺は写真立てを元の位置に戻して受話器を取る。

「はい、安藤です。」
「あ、祐司。誰だか分かる?」
「・・・もしかして、宮城か?」
「正解。そのまさかよ。」

 間違いない。この声は宮城のものだ。声を聞くのは今年の成人式以来。電話を介して声を聞くのは・・・宮城と切れたあの夜以来だな。

「どうしたんだ?宮城。今日は仕事休みか?」
「ううん、昼休み中。私の仕事、カレンダーや曜日なんて表記の違いでしかないのよね。」

雨上がりの午後 第1529回

written by Moonstone

 ・・・分かってる。分かってる。だが、どうしてもその道に踏み出そうとすると一歩が出ない。このままじゃ一緒に暮らすどころか、プロポーズも出来やしない。晶子だって、俺が宙ぶらりんの状態でプロポーズすることを待ってやしないだろう。俺次第、か・・・。だが、俺には背中を押してくれる存在が必要なんじゃないだろうか?

2004/5/17

[悦に浸る奴(汗)]
 昨日は一昨日の余韻を味わっていたら、何時の間にやら定刻を過ぎてました(汗)。昨日寝たのは空が白む午前5時過ぎ、起きたのは12時過ぎじゃあ、ね。あー、何て安上がりかつお馬鹿な奴なんでしょ?私は。ま、今日から気合入れて行きますかね。さて、どういう騒動が待っているやら・・・。意外とスルーされたりして(^^;)。私としてはその方が良いですけど。
 土曜日の更新で第100章に達した「魂の降る里」、かなり反響が良いようです。何気なしに投票所Cometを見てみたら、これまでトップを走っていた「雨上がりの午後」を一気に逆転してトップに踊り出ましたからね。投票数も一気に増えましたし。勿論嬉しいですよ。読んでくださった方、ありがとうございます。
 「雨上がりの午後」は祐司君が井上さんにプロポーズするところまで進めないと、逆転は難しいかな・・・。もう構想は練ってあるんですが、祐司君の進路が決まらないことには書けないので。さあ!とっとと進路決めてプロポーズするんだ!祐司君!(喧しい!(祐司:談))
 耳に入ってくる音といえばせいぜい、たまに聞こえる自動車の走行音くらい。静かな日曜の昼下がり、俺は黙々とブランチと洒落込む。苺味のトーストを咀嚼しつつ苦味の効いたブラックコーヒーを口に含みながら、メンバーからの写真の感想を反芻する。・・・やっぱりと言うか、どれも晶子については高い評価が得られたな。勿論嬉しいし、もっと自慢しても良かったかな、なんて思ったりする。その一方、どれにも共通していたことはやはり、俺と晶子の結婚式に期待している、ということだったな。つまりは、今の関係を発展させろ、ということだ。
 宏一は兎も角、渉も勝平も耕次も表現は違えど口々に言ってたな。晶子の幸せを壊すことはするな、と。それは言葉を変えれば、今の今になってもまだ舵取りの方向を決められずに居る俺に進路方向の決定を督促するものだ。分かってはいる。だが、まだどうにも決められないのもまた事実。本当に俺はどうすれば良いんだろう?
 親、特に母さんは公務員を頻りに勧める。だが、その筋に詳しい耕次の言うとおり−奴は法学部だ−公務員だから生涯安泰、なんてどっかり椅子にふんぞり返っていられないことくらいは知ってる。それはごく一握りのキャリア官僚と言われる人種くらいのものだ。そのキャリア官僚も猛烈な出世競争に放り込まれ、「脱落者」は定年前に退職せざるを得ない状況に追い込まれるということも知ってる。そんなの真っ平御免だ。
 進路指導の個人面談の時、レコード会社という選択肢も挙げるには挙げた。だが、CDやDVD制作に直接携われるかどうかは分からない。購読している音楽雑誌では、ミキシング・エンジニア(註:CDやDVDに収録する音声をミキサーという機械で調節する職業)とか音楽制作により密接に関われる職業は、大抵その筋の専門学校から「供給」されるとあった。ということは、大学生の俺が介入出来る余地はほぼないと言える。耕次も言ってたが、今は即戦力とやらが求められる時代。それがない俺が幾ら社内で希望しても一蹴されるのがオチだろう。
 となると、音楽に接することが出来るのは、やはり自分がプレイヤーになること、すなわちプロのミュージシャンになる道に絞られてくる。だが、その道を選ぶとなれば、親との衝突は避けられない。耕次は言った。俺は晶子との絆と親への気持ちを天秤にかけている、と。そして、結婚は自分のためにするもんだ、親のためにするもんじゃない、と。そして、晶子と一緒に暮らすことを真剣に考えているなら自ら親子の縁を切る覚悟を持て、それが晶子に対する俺の責任だ、と。

雨上がりの午後 第1528回

written by Moonstone

 程なくトースターがチン、と音を立てる。タイミング良く湯も沸いた。インスタントコーヒーを作って、トーストを皿に乗せて、と。何時もの朝食が完成だ。あ、今日は昼食も兼ねてたっけ。まあ、大差ないか。俺は冷蔵庫から取り出した苺ジャムとバターナイフを持って来てテーブルに置き、質素なブランチを始める。

2004/5/16

[ああ、幸せ〜♪]
 こんな気分になれる週末は何時以来でしょうかね。一日を満喫しました。手元にその証が2つ。どれも入念に選んだものだけに、見ているだけでも心安らぐものです。そのうち1つは私が予想した以上に目立つらしくて、手にした事情を話したら(詳細は言ってません)もの凄く驚かれました(^^;)。これ、週明けから騒動を呼ぶのかな、やっぱり。呼んでも仕方ないとは思いますけどね(笑)。
 それにしても、あれは凄かったな・・・。初めて見たけど迫力満点。話では聞いてましたが、まさかあんなにでかいとは思わなかったです。あれが表舞台に出るともっと凄いことになるんだろうな。あ、そうそう。ショーもカッコ良かった、の一言。惜しむらくは写真が思うように撮れなかったこと。あれだけの動きを予測して撮影する、なんてのはその筋の専門家しか出来まい、と思っておこう(^^;)。後で見てみたら意外に撮れてたし。
 ・・・え?何のことやら分からん?そりゃそうでしょう。一連の事情を知る人は片手で数えても余るほどしか居ないんですから。ちなみにこのお話をしている服装は、出掛けた時の服装そのままです。こんな格好で週末を過ごすのは初めてなんですが、結構悦に浸ってます(笑)。1作品仕上げたことですし、今日から新たな気持ちで行きますかね。

「勝平と渉と宏一が何て言ったのかは知らんが、少なくともお前と彼女のゴールイン、すなわち結婚を期待してる筈だ。だが、結婚は新たなスタートでもある。これまでまったく違う生い立ちを辿って、尚且つそれぞれの過去を背負った二人が一緒に暮らすんだ。十分な準備運動もなしに二人三脚を始めれば、転倒するか足の引っ張り合いになるかのどちらかになる。お前も彼女もバツ一っていう履歴欲しさに結婚を考えてるんじゃないだろうし、彼女がお前の将来設計に自分を当てはめると言っている以上は、お前の準備運動が不可欠だ。・・・言いたいことは分かるな?」
「ああ。」
「俺は、お前と彼女がこの写真と同じ、否、それ以上の幸せな顔で式を挙げることを期待してる。式を挙げなくても書類を役所に出せば結婚は成立することくらいは知ってる。だが、俺としてはお前と彼女が二人揃って新しいスタートラインに着く儀式を見たい。もしその気があるなら、日程が決まり次第連絡してくれ。必ず行く。」
「分かった。何らかの形で式は挙げるつもりだから、その時になったら連絡する。」
「よし。彼女と仲良くしろよ。それじゃ、またな。」
「ああ、またな。」

 俺は受話器を置く。裏工作していたかのように、宏一を筆頭にしてメンツ全員から感想を聞かされた。やはり、美人じゃないか、という感想は表現の違いはあれど共通していた。そして、俺と晶子の結婚式への期待も・・・。ありがたいのは勿論だが、いかに俺が重大な立場にあるかを痛感させられた。俺が抱えている、そして晶子が抱えている幸せを大学時代の自慰行為の顛末にする気はさらさらない。そうしちゃならない。やっぱり、俺がしっかりしないといけない。
 分かってはいる。だが、その肝心の一歩を未だに踏み出せないで居る。自分の進路を決めて動き出し、道が踏み固まった時点で晶子にプロポーズして挙式して一緒に暮らし始める。纏めれば簡単だが、それが出来ない俺が現に居る。自分の気持ちを知っていながら、晶子の気持ちを知っていながら・・・。今の今になって何をやってるんだ?俺は・・・。
 とりあえず、朝飯でも食べるか。俺は冷蔵庫に向かい、食パンを一枚取り出してトースターに放り込んでインスタントコーヒーの準備をする。時間は・・・11時前か。中途半端な時間だな。ちょっと量は少ないが、これを朝昼兼用にするか。一食抜いただけで死ぬわけじゃあるまいし。

雨上がりの午後 第1527回

written by Moonstone

 耕次の言葉が重く響く。晶子の決意が固いことは知っている。だからこそ、俺はそれを受け止める態勢を一刻も早く整えなきゃならない。言い換えれば、進路を一刻も早く決めなきゃならない。俺のために、そして何より晶子のために・・・。改めて俺が今居る立場の重大さを痛感する。

2004/5/15

[今日か・・・]
 更新内容が貧弱で申し訳ありません(汗)。これというのも連休中にくたばっていた上に、直前の週末でもくたばってしまって準備がままならなかったためです。Side Story Group 1で準備する筈だったものは勿論、5周年記念の挨拶文もまだ手付かずという有様だったり(汗)。
 そんな中途半端な自分とも今日でお別れします。昨日、大雨の中で強行した一昨日の下調べで目をつけたブツを購入しました。天気予報では今日は晴れとのこと。週初めには曇りと言っていたので不安だったのですが、今回ばかりは神や仏なるものが「舞台」を整えたようです。
 今日は彼方此方動き回るので帰宅が遅れ、更新時間がずれ込む可能性が高いです。滞っている掲示板のお返事も順次再開していくつもりです。原則として書き込み記事No.順にお返事しますし、一つのお返事に滅茶苦茶時間がかかるので一気に全部、とはいきませんので、その辺はご了承願います。
はは、調べて良かった(^^;)
「文学部だ。」
「だとすると、尚更条件的に厳しくなる。言葉は悪いことを承知で言うが、そんな学部出て何が出来るんだ、って企業に突っ込まれる可能性は高い。今は即戦力とやらを求めて来るからな。自分達の都合で将来性から即戦力とやらに基準を変えて、おまけに自分達は何もしないんだから勝手な言い分だとは思うが、それが現実だ。それを変えようとする人間が少数派な以上は、歯噛みしながら頭を下げるか、お前の選択肢にあるように企業に背を向けるかどちらかしかない。」
「確かに・・・。」
「それに、彼女の髪が茶色がかってるってのも問題だ。念のため最初に言っておくが、これは彼女が悪いわけじゃない。俺が行ってる大学の学部でも就職説明会みたいなものがあったんだが、就職活動の際の服装は黒のスーツに白のシャツ、髪のパーマや染色脱色は不可、ってな有様だ。中学高校ならまだしも−まあ、それが良いかどうかはとりあえず置いといて、服装にまで画一性を強いてくるのが今の企業の実態だ。彼女の性格やお前の話から推測するに、彼女は就職のために髪を黒く染めたりするようなことはしないだろう。そうするくらいなら迷わず企業に背を向ける道を選ぶだろうな。」
「・・・。」
「となると、進路は必然的にほぼ試験の成績で決まる公務員か、服装や髪にはあまりこだわらないサービス業に限られてくる。公務員が生涯安泰なんてのはもはや過去の幻想だし、場合によっては遠方への転勤もあり得る。だが、彼女の性格から推測するに、仕事のためにお前と離れることはしないだろう。そうなると、給料は低水準のままにならざるを得ない。転勤を繰り返して昇格する、ってのが公務員の実態だからな。」
「・・・。」
「それに、サービス業の労働条件はお世辞にも良いとは言えない。どういう形にせよ、大学卒業と同時にお前と暮らすしか選択肢はないと言って良いだろう。彼女はそこまで思い詰めてるんだ。一時の伊達や酔狂で左手薬指に指輪を填めたんじゃないなら、尚のことお前は真剣に、選択肢によっては親に勘当されることを覚悟しろ。前にも言ったが、それが彼女に対するお前の責任だ。」
「・・・分かった。」

雨上がりの午後 第1526回

written by Moonstone

「ことがここまで進んだ以上は、後はお前次第だ。お前が進路を決めないことにはお前も彼女も身動きが取れないし、ましてや結婚して一緒に暮らす−まあ、結婚しなくても一緒に暮らすことは可能だが、ある程度の将来構想もない状態では綱渡り状態になっちまう。その場その時で考える、なんて悠長なことはやってられない。一つ聞くが、彼女の学部は何だ?」

2004/5/14

[調べてきました]
 昨日お話したとおり、仕事が終わってから一旦帰宅し、下調べに行きました。準備を整えて(財布と鍵持っただけですが)いざ出陣、と玄関を開けたら・・・大雨(汗)。そう言えばラジオの天気予報で、この辺は夜大雨になるとか言ってたな、と思いながら歩いていくと・・・道が川になってる(大汗)。はい、あまりの大雨で道路が水浸しを通り越して川になってたんですよ。でも、今日行かないことには話が始まらない、ってことで強行しました。
 で、目的地到着。休日の昼間はごった返すのですが、平日の夜、しかも雨ということで割と閑散としてました。早速ブツを発見。いざ見てみると・・・貧弱過ぎる(- -;)。手頃と言えなくもないですが幾ら何でもこれでは、と思って物色すること約1時間(その間、別の買い物をしましたが)。やっぱり専門店じゃないと無理かな、と思いながら出ようとしたところでふと脇を見ると・・・あるじゃないか(^^;)。はは、気がつかなかったです。
 そこには入った時に見えたブツとは比較にならない立派な体裁のものがズラリ。これ良いなぁ、と思ったものはやっぱりそれなりの値段でしたが、それは承知の上。さあ買うか、と思ったら・・・これで良いのか?(汗)肝心要の情報(というか知識)が不足していて、場違いのものを買ってしまったら話にならない、ってことで、場所と時間だけ確認して退散しました。このお話をご覧いただいている頃には、多分その調べものをしていると思います。あれが買えると良いんだけどな・・・。
赤と黒は知ってたけど・・・
 耕次の奴、断片的な「情報」からよく分かるな・・・。高校時代同じバンドで行動を共にして来た過程で、人の心やその場の雰囲気を掴むのが上手いとは思ってたが、まさかこれほどとは・・・。

「話はころっと変わるが、彼女の手料理を食ったことはあるか?」
「あ、ああ。」
「腕前は?」
「良い。煮物とかが甘くなる傾向があるが、俺の好みに合わせてくれる。自分で魚捌いて刺身も作れる。」
「随分立派なもんだな。レパートリーも豊富なんだろ?」
「ああ。和食、中華、洋食まで色々。」
「言葉は悪いが、選り取りみどりってやつか。で、維持費はどうなんだ?」
「言葉は悪いが、もの凄く良い。話題のペアリングもそうだが、彼女にプレゼントしたものは全部1万円以下だ。勿論、それなりに選んではいるけどな。物の値段や材質とかで気持ちを測ることはしない。俺から何かをもらうこと、俺と一緒に居られることそのものを喜ぶタイプだ。」
「今時珍しいな。優子ちゃんからの情報や前のお前の話からするに、頑固なところもあるけど、基本的には控えめで穏やかな性格なんだろ?」
「ああ。」
「これだけ見栄えが良いと、それこそ男は選り取りみどり、って妙な勘違いして高慢になりやすいんだがな。結構狙われてたんじゃないか?」
「ああ。俺がプレゼントしたペアリングを填めて以来、声をかけられる回数は激減したらしいが。」
「彼女にペアリングをプレゼントすることは、事前に言ってたのか?」
「否、ひた隠しにしてた。彼女も知らなかったらしい。彼女の指輪のサイズは、言葉は悪いが騙し騙し調べた。」
「てことは、お前にペアリングをプレゼントされることが分かった時点で、彼女にとっては少なくとも婚約という位置付けだったんだろう。左手薬指に填めてくれ、って譲らなかったっていうのも、そう考えれば筋が通る。」

 耕次の奴、刑事か探偵になったら絶対成功するぞ。断片的な情報でこれだけ背景を見通せるとは・・・。俺を含めた一癖二癖あるメンツをほぼ3年間束ねてきただけのことはある。これは俺じゃ絶対真似出来ないことだ。

雨上がりの午後 第1525回

written by Moonstone

「てことは、少なくとも中学高校じゃあまり良い思いはしなかっただろうな。お前と同じ新京大学に入るくらいの成績だったんだ。彼女の経歴は知らんが、恐らくその地方じゃ有名な進学校だったんだろう。俺達と同じで。そんな中で茶色がかった髪で居たんじゃ、程度の低い奴らや頭の固い連中が揃う生活指導の教師の目の敵にされてたと考えても不自然じゃない。」

2004/5/13

[はは、昨日と同じ(汗)]
 制作した電子機器の動作試験でちょっとトラブったものの(電源電圧くらい打ち合わせのものを準備しておいてよ)、その他は滞りなく進みました。・・・否、プログラミングはトラブルだらけだったんですが、機密上あまり話せないのです。別に怪しいものじゃありません。記録を取る性質のものなのでそれについてお話すると、何処かから突かれる危険性があるからです。これは日々ウィルスメールや怪しいHTMLメール(HTMLメール自体が宜しくないものですが)の危険に晒されている皆様ならお分かりでしょう。
 それ以外は昨日と殆ど同じ経過を辿りました。やってることが変わらなければ、そうそう大きな変化があるものではないので。平和な証拠と言えばそうなんですがね。
 今日は仕事が終わったら、下調べに行く予定です。当日いきなり行って、なかった、じゃ済まないので事前に観に行っておこうか、と。別にこれがないと駄目だ、というものじゃないんですが、あった方が良いかな、と思いまして。何分こういうのは初めてですからちょっと足を運び辛いんですが。
硫黄に弱いのか・・・
 やっぱりな・・・。まあ、今回の「騒動」を引き起こした張本人の耕次が、写真を持ってない筈はないか。さて、どんな感想が聞けるのやら。ついでに尋問もありそうだが。

「では改めて感想を言わせてもらう。覚悟は出来てるか?」
「一応な・・・。」

 思わず溜息が出る。「氷山の一角」が当の本人から出たから、幾ら俺が鈍いといっても大方の予想はつく。これまでの3人に共通していた感想が飛び出すのは確定している。

「彼女、情報どおりの美人だな。茶色がかった長い髪が綺麗なのは勿論、写真から推測するに、身長は165cmくらいってところか。女優かモデルやってても不思議じゃない。残念なのは、この服装じゃスタイルがよく分からないことだな。付き合って・・・2年くらいか。彼女のスリーサイズは知ってるだろ?」
「知らん。」

 実は知ってたりする。「別れずの展望台」から帰って晶子の家で晶子を抱いた時、その時の流れで俺が尋ねて聞いた。予想以上に均整の取れた見事なスリーサイズだった。だが、そんなこと間違っても口にしちゃいけない。ここは知らぬ存ぜぬを通すに限る。

「まあ、その件は置いといて・・・。彼女の髪が茶色がかってるのは染めたりしてるからか?」
「否、生まれつきのものだそうだ。」
「大学は同じか?」
「ああ。学部は違うが。」

雨上がりの午後 第1524回

written by Moonstone

「それが宝くじの時に発揮されると良いんだけどな。」
「こんな美人を捕まえておいて、宝くじまで欲を伸ばすのは贅沢ってもんだぞ。」
「写真が手元にあるのか?」
「ああ、勿論。」

2004/5/12

[特にないです(汗)]
 昨日の仕事は終日プログラミングとその打ち合わせ。帰宅後は食事と転寝と連載ストック増やし(直ぐなくなるけど(汗))。ですので特別お話するようなことはありません。それが良いのか悪いのかは分かりませんが。
 このお話をお聞きいただいている頃には、私は手早く巡回をしていることでしょう。その後はさっさと寝ます。特段体調が悪いとかいうのではなくて、単に夜更かしの連続で眠いだけです。
 今日はこのくらいにしておきます。皆様、お休みなさいませ。
もう1回行かないと(汗)
 俺が凄むと勝平は軽くいなす。だが、それに続いた言葉はズシリと心に圧し掛かる。勝平の言うとおり、俺は彼女を、晶子を泣かせるようなことをしちゃならない。俺は晶子ともそう約束した。その約束は守らなきゃならない。印鑑が押された書面であってもそうでなくても、人の信頼の上に結ばれた約束の重みは同じだ。婚約もその一つだと俺は思う。

「恐らく今頃耕次が手薬煉引いて待ってるだろうから、この辺にしておく。彼女と仲良くな。それじゃ、また。」
「ああ。またな。」

 俺は受話器を置く。次はやっぱり・・・耕次が待ってるんだろうか?そう考えた方が自然か。宏一、渉、勝平、と来たら、残るは耕次しか居ない。俺と晶子が一緒に写ってる写真を送れ、と言ったのは他ならぬ耕次。感想を楽しみに待ってろ、と言ったのも耕次だ。このまま待ってようかな。
 と思っていたら電話がコール音を立て始めた。俺は予想が確信にレベルに高まるのを感じながら受話器を取る。

「はい、安藤です。」
「おう、祐司か。耕次だ。おはよう。」
「おはよう、耕次。・・・写真の件か?」
「よく分かったな。」
「分かるも何も・・・、お前の直前に宏一、渉、勝平の順で電話があったんだ。勿論写真のことについて、な。念のため聞くが・・・、メンツで順番に電話するように裏工作してたんじゃないだろうな?」
「偶然に偶然が重なるってことはあるもんだ。」

雨上がりの午後 第1523回

written by Moonstone

「しかし、本当に美人な彼女だな。写真をスキャナで取り込んで、お前の部分を俺に置き換えたいところだ。」
「勝平。」
「冗談だ。だが、彼女を泣かせるようなことをしたらそうされても文句は言えないってことを頭に入れておけよ。」
「ああ。」

2004/5/11

[復帰?]
 昨日「名探偵コナン」を見たのですが、林原めぐみさんは一時お休みしてたんでしょうか。これより前の少年探偵団もの(アニメオリジナル版)では林原さんがCV(Character Voiceの略。つまりは声優さんのこと))をしている灰原が居なかったですし、前回までの期間を考えるとお休みしていたと考えるのが自然ではないか、と。
 ご存知の方も居られるでしょうが、林原さんは綾波レイのCVをしていますし(他には「3×3EYES」のパイ役)、Novels Group 1で連載中の「Saint Guardians」のリーナ・アルフォンのCVイメージでもあります。登場人物紹介でもありますけど、リーナのCVイメージを林原さんにしたのは、「名探偵コナン」の灰原(そこでは「シェリー」とありますが、詳細については原作を読んで下さい)の声がイメージに重なったからです。
 CVって重要だと思うんですよ。その声でキャラの性格やイメージが違ってきますから(ああ、白鳥警部ぅ・・・)。ああいうのって、オーディションとかで決めるんでしょうか?それとも製作スタッフが相談して決めるんでしょうか?まあ、少なくとも私みたいに自分の好みで決めるようなことはしないと思いますが(笑)。
わ、忘れてた(汗)
「へえ、そりゃかなりのもんだな。俺の知ってる範囲だが、今時自分で魚捌ける女なんてそうそう居ないぞ。お前のバイト、確か喫茶店だったな。」
「ああ。」
「お前と同じバイトで料理が出来るってことは、彼女は料理担当か?」
「接客もするけどな。」
「看板娘ってところか。」
「店のマスターの奥さんと人気を二分してる。彼女のファンからは、同じ指輪填めてるってことで睨まれてる。」
「それは当然のことと思え。」

 俺は苦笑いする。実際今でも睨まれてるんだが、やっぱり当然なのかな・・・。晶子は同じゼミの奴から、あんたには似合わない、とか言われたそうだが、確かに俺には豪華過ぎる愛に溢れた花束だ。渉が女神、と言ったのを思い出す。俺は突然降臨した女神から愛が溢れる花束を受け取ったんだろう。・・・女神本人と共に。

「まあ、それはそれとして・・・、入籍はしたのか?」
「にゅ、入籍?」
「祐司。結婚指輪填めさせたんなら、入籍したのかどうか疑問に思うのは当然じゃないか?」
「だ、だからあれは結婚指輪じゃないって。」
「二人揃って左手薬指に填めてる以上、言い逃れ出来ると思うな。で、入籍はしたのか?」
「・・・否、してない。」
「式は?」
「まだだ。」
「てことは、指輪の交換だけ先にやっちまったってことか。ま、それはそれで良いだろう。式には呼べよ。この目でしかと確かめさせてもらうからな。」
「ああ、そのつもりだ。」

雨上がりの午後 第1522回

written by Moonstone

「どちらもだ。で、料理の腕は?」
「良い。実家の地域の違いで煮物とかが甘くなる傾向があるが、俺の好みに合わせてくれてる。自分で魚捌いて刺身も作れる。」

2004/5/10

[大丈夫かな?]
 私は今日から仕事再開です。今週は制作した機器の動作試験、勉強会への出席など、それなりに大きな課題が待ち受けています。なのに体調は悪化の一途(汗)。昨日は昼食を食べず、夕食も簡単なもので済ませました。それはあるもののお陰でころっと回復しましたけど。やっぱり気の持ちようなのかな?でもこれはまだその時期じゃないですし・・・。
 あー、もう直ぐなんだなぁ。重要文書がまだ手付かずですし(連休中殆どくたばってましたからね)、下調べもしないといけないってのに。なかなか思うようにはいかないものです。今なら出来そうな気がしますので、更新と巡回を終えたらひと踏ん張りしてみようかな。
 ちょっと次回の更新が危機的状況です(汗)。連休中殆どくたばっていたので最低限のラインナップを揃えることすら出来なかったんですよ。どうにか2つは準備が整いましたが、最低でもあと2つをどうにかしないことには・・・。かなり厳しい状況ですが、何とかやってみます。
来たー!!(喜)
 少し間を置いて、勝平が言う。

「彼女、凄い美人だな。正直言って驚いた。優子ちゃんから話は聞いてたが。彼女、モデルでもやってるのか?」
「否、俺と同じバイトをしてる。」
「大学は同じか?」
「ああ。学部は違うが。」
「なのにどうやって知り合ったんだ?古傷を抉ることを承知で言うが、優子ちゃんと別れたのが確か一昨年の今頃だろ?」
「・・・そうだ。宮城との電話で最後通牒を突きつけられたショックで自棄酒飲んで、大学とバイトをサボっちまってな・・・。その夜、遅い夕食を買いに行ったコンビニのレジで偶然。」
「ふーん・・・。で、結婚指輪填めさせて今に至る、と。」
「否、あれは結婚指輪じゃない。彼女の誕生日に贈ったペアリングだ。」
「でも、どういう経緯があったにせよ、お前も彼女も左手薬指に填めてるってことは、双方本気なんだろ?」
「ああ。」

 少し沈黙の時間が流れる。

「彼女にはウェディングドレスが似合うだろうな。優子ちゃんからの情報どおり髪が茶色がかってるし、色白だから。」
「ウェディングドレスは、彼女も憧れてるそうだ。」
「今、俺は問題のブツを持ってるんだが、お前は兎も角、彼女の笑顔が印象的だ。本当にモデルとしても通用すると思う。よくまあ、こんな美人を彼女に出来たもんだな。」
「勝平。誉めてるのか、貶(けな)してるのか、どっちだ。」

雨上がりの午後 第1521回

written by Moonstone

「よく分かるな。超能力が開花したか?」
「馬鹿言うな。お前の前に宏一、渉の順で電話があったんだ。勿論、俺が送った写真のことについて、な。」
「それなら話は早いな。」

2004/5/9

[戻ってきました]
 帰省するのは良いですけど、戻った時が嫌なんですよね。何かにつけてああだこうだ言われるので。私は元々掃除が苦手で嫌い、それにそんな暇があるならその時したいことをする(今は大抵寝てますが)という考えなので、整理整頓や「欠陥」を指摘されると非常に気分が悪くなるんですよ。ま、これで暫くは気兼ねなく寛げるます。
 一昨日から重い頭痛に悩まされています。風邪じゃないとは思うんですが(私は気管支が弱いので風邪をひいたら最初に喉をやられます)、PCの前に居るのがかなり辛いです。かと言って常用している薬がある以上は下手に市販の薬を飲めないので(「飲み合わせ」という事態が生じる恐れがあるからです。このため、昨年の盲腸による入院の時も薬の記録を持っていって照合してもらいました)、治るのを待つしかありません。
 今日一日で次の更新の準備をしたいのですが、この調子だとまた終日寝て過ごす、ということも・・・(汗)。メールと掲示板のお返事はまた先延ばしにせざるをえません。暫くお待ちくださいませ。
あったー!!(喜)

「式の目処はついてるのか?」
「否、まだ・・・。」
「まあ、お前の進路がまだ定まってないということは耕次からも聞いてるし、それを決めないことにはお前も彼女も身動きが取れないだろう。どんな式にするのかはそれこそお前と彼女が相談して決めるべきことだが、する時は呼んでくれ。必ず行く。」
「勿論、結婚式の時は呼ぶつもりだ。」
「よし。楽しみにしてるぞ。彼女と仲良くな。それじゃまた。」
「ああ、またな。」

 俺は受話器を置く。終始クールだったが−その前が宏一だったから余計そう感じるんだろうが−期待と激励が篭っていたのが分かる。どういう結婚式にするかどころか、プロポーズさえもしてない−しなきゃ結婚出来ないということはないだろうが−現状では渉の問いにまともに答えることが出来なかった。そう思うと、やはり肝心要の俺が進路をはっきりさせないといけない、と改めて痛感する。
 眠気も随分消え失せた。朝食でも食べるかな・・・。俺が冷蔵庫へ向かおうとしたところで電話がコール音を鳴らし始める。何だ、今日は・・・。俺は身体の向きを変えて受話器を取る。

「はい、安藤です。」
「おはよう、祐司。勝平だ。」
「ああ、勝平か。おはよう。」

 宏一、渉に続いて勝平か・・・。こうなると用件は嫌でも察しがつく。

「メンツで順番に電話するように裏工作してたのか?」
「否、俺ん家は土曜も工場が動いてるから、その手伝いがある。レポートもあるしな。この辺はお前も同じ理数系なら分かるだろ?」
「ああ。偶々ってわけか。」
「そういうこと。で、用件だが・・・。」
「俺が送った写真のことだろ?」

雨上がりの午後 第1520回

written by Moonstone

 渉の言葉は口調こそクールだが、重みがある。渉の言うとおり、今俺と晶子の左手薬指に填まっている指輪の意味が分かっていて、それを確固たるものにしようと思うなら、間違っても晶子を泣かせるようなことはしちゃいけない。耕次に以前言われたとおり、それは自分を崖っぷちに追い詰めてまでも俺と一緒に暮らすことを決めた晶子に対する俺の責任だ。

2004/5/8

[携帯電話]
 はい、持ちました(笑)、というより、持たされました(苦笑)。昨日お話した親の「理論」に押し切られて店に連れて行かれ、その場で買わされました(汗)。メーカーと機種名は秘密ですが、自分の好みの色と形が選べて良かったかな、と思います。思うようにしてます(苦笑)。
 電話帳への登録やメールアドレスの設定といった必要事項は、説明書をパラパラ見ながら適当に操作していたらあっさり出来るようになりました。この程度なら私でも使えます。メールも試しましたが、入力に多少戸惑いがあるものの(片手での操作はちょっと苦しい)、そこそこのスピードで入力出来ます。これは親の携帯電話でのメールの返信などを教えた経験もあるからなんですが(説明書も何もないのに、やり方教えてくれ、と頼まれたんだから自分であれこれ試すしかない)。
 今まであまり実感が湧かなかった携帯電話の使用場面が、かなり現実味を帯びました。これは今後の執筆にも良い影響を与えると思います(結局それ)。「魂の降る里」は元より、「雨上がりの午後」でも何れ必要になると思いますから。使用場所は勿論弁えます。そうじゃないと、5/5に此処でお話したことを自ら反故にすることになりますし、それはしたくないですからね。
来るかな?
 今度の電話の主は渉。メンバーの中で最も理性的な奴だ。思わず溜息が出る。

「さっき電話したら通話中だったんでな。メンツの誰かか?」
「ご名答。宏一からだった。」
「ま、内容は察しがつくよな?」
「ああ。」
「写真は見せてもらった。随分美人だな。優子ちゃんからの情報どおり、茶色がかった長い髪で、何より笑顔が綺麗だ。優子ちゃんとあんな別れ方したお前にとっちゃ、まさに女神だろう。」
「俺もそう思う。」

 女神、か・・・。渉らしい簡潔で的確な表現だな。実際、女なんか信じられるか、二度と恋愛なんてするもんか、と凝り固まって膝を抱えて蹲っていた俺の前に現れて俺を立ち上がらせてくれた晶子は、俺にとって女神と言うに相応しい。

「で、問題の結婚指輪だが。」
「否、あれは結婚指輪じゃない。彼女の誕生日に贈ったペアリングだ。」
「だが、どんな事情があったかは別にせよ、彼女もお前も今の指に填めてるってことは、当然その意味は分かってるよな?」
「ああ。」
「てことは、彼女もお前も、今の付き合いを大学卒業と同時におしまいにするつもりはさらさらないってことだな。」
「ああ。」
「今手元に写真があるが、彼女もお前も本当に幸せそうだ。こんなことを引き合いに出すのは良くないことは承知の上で言うが、お前が優子ちゃんと付き合っていた時に優子ちゃんに見せたり優子ちゃんのことを話題にされた時のお前の顔と同じくらい、否、それ以上に幸せそうだ。本気で今の付き合いを続けて指輪の意味を確固たるものにしようと思ってるなら、彼女のこの笑顔を壊すことだけは絶対するなよ。」
「ああ。」

雨上がりの午後 第1519回

written by Moonstone

「はい、安藤です。」
「おはよう、祐司。渉だ。」
「あ、渉か。おはよう。」

2004/5/7

[最後の日]
 今日でこのページを閉鎖するわけではないので誤解のないようにお願いします。現在帰省している私は、今日が1日ゆっくり出来る最後の日なのです。明日には自宅に戻ります。滞っているメールや掲示板のお返事も順次再開していくつもりです(実家は猛烈にネット接続環境が悪い)。更新準備もありますし。
 でも、明日は1日ゆっくり、とはいかないかな・・・。携帯電話持たせる、って親が言ってるもんで。私は元々電話が苦手で、携帯電話を持っていると四六時中電話に監視されているようで嫌なので持ちたくないんですけど、買い物や本業などで伝えてある連絡先に電話が繋がらない時万が一の場合に困る、という親の「理論」は説得力がありますし、長時間会話するわけでもないから(親も私が電話嫌いなのを知ってます)料金はこっちで持つ、と言ってますし。
 連載「雨上がりの午後」で、祐司君と井上さんが携帯電話を持ってない理由には、私が携帯電話を持ってないのでそれでコミュニケーションを取る、というシーンをあまり想像出来ないのもあります。それにこの二人、今は携帯電話は必要ないと思います(笑)。バイトでほぼ毎日会ってますし、通い婚状態が続いてますから。今時こんな関係あるか、と言われるでしょうけど、こういうのが私の理想です。
来るかな?
「お嬢様なのか?」
「実家の事情は彼女があまり話したがらないし、俺も聞かないからよく知らないが、躾は結構厳しかったらしい。」
「で、祐司さん、って呼ばれてるってのはマジなのか?」
「ああ。」
「同い年なんだろ?」
「否、学年は同じだが歳は彼女の方が1つ上だ。」
「オウ・・・。こんな美人に、しかも燃費が良くて料理も上手い彼女にさん付けで呼ばれてるとは・・・。何て女引っ掛けるのが上手い奴なんだ、お前は!」
「だから、引っ掛けるなんて人聞きの悪いこと言うなって言ってるだろ。」

 はっきり言って、宏一に女引っ掛ける、なんて言われたくない。高校時代、ルックスの良さと口の軽さを武器にそれこそ女を引っ掛けまくり、あろうことか俺と付き合っていた宮城にまで度々ちょっかいを出した−勿論撃退したが−、とんでもない女垂らしの宏一には。

「で、結婚式は何時なんだ?」
「はぁ?」
「絶対呼べよ!この目でしっかり拝ませてもらう!呼ばなかったら承知しねえぞ、ベイビィ!ってなわけで、またな。」

 俺が呼び止める間もなく、電話は一方的に切れてしまった。ツーツーという音を鳴らす受話器を置く。ったく、言いたい放題言って切りやがって・・・。まあ、宏一らしいと言えば宏一らしいが。
 まだ若干眠気が残っている。寝たのが遅かったからな・・・。まあ、昨日頑張ったから今日は安心して寝ていられる。もう一眠りするか。欠伸をしつつベッドへ戻ろうとしたところで電話がコール音を鳴らし始める。宏一の奴、まだ言い足りないことでもあるのか?俺は溜息を吐いて受話器を取る。

雨上がりの午後 第1518回

written by Moonstone

「随分燃費が良いな・・・。料理の腕は?」
「良い。実家の地域の違いで煮物とかが甘くなる傾向があるが、俺の好みに合わせてくれてる。自分で魚捌いて刺身も作れる。」

2004/5/6

[面倒だなぁ・・・]
 今日は片道2時間半かけて職場へ行きます。事情があって行かなければならなくなったのです。私はまだ休暇中だってのに・・・。まあ、仕方ないんですけどね。ちょっくら行ってきます。土産なんて「決して」ありませんので、期待しないように願います(しないか)。
 実は作品制作が週明けから滞っています。休日になると寝込んでしまう悪い癖が出てきたからです。明後日には帰宅するのでいい加減直しておかないと来週からの仕事再開が辛いので、今日を契機に何とかしたいと思います。
 何だか新手のウィルスが蔓延しているようですね。防衛は勿論していますが、こういうのって何とかならないもんですかね?英語のDMも最近出鱈目に多いし・・・。欲しいメールが来ないので余計にうんざりします。ほとぼりが冷めるのを待つしかないのかな・・・(溜息)。
まだだった(汗)
「言ってなかったか?俺は夜バイトがあるんだ。だから普通電話をする時間には誰も居ない。で?」
「で?じゃねぇよ!お前、本当にこの写真の彼女と付き合ってるのか?!」
「耕次達とも話して聞いたんだろ?俺の今の事情は。お前に送った写真に写ってるのは、紛れもなく俺と今付き合ってる彼女だ。」
「無茶苦茶美人じゃないか!何処でどうやって引っ掛けたんだ?!全部吐け!ベイビィ!」
「引っ掛けたって・・・人聞きの悪いこと言うなよ。お前じゃあるまいし。」
「何処で出会った?!どっちから声かけたんだ?!どうやって結婚指輪填めさせたんだ?!」
「・・・ったく。」

 こりゃ説明しないことには解放されそうにないな。俺は溜息を吐いてから経緯を簡単に話す。宮城と別れた直後、遅い夕食を買いにコンビニに出かけた時、偶然レジで出会ったこと。アプローチは晶子の方から始まったこと、指輪は晶子の誕生日プレゼントに贈ったペアリングだが、晶子が左手薬指に填めてくれと言って譲らなかったからそうしたこと。

「・・・こんなところだ。」
「こんな美人から言い寄られるなんて・・・何て運の良い奴なんだ、お前。で、彼女の性格はどんな感じだ?」
「控えめで物腰は柔らかい。かなり頑固なところもあるが。」
「プレゼントとかは豪華にしてるのか?」
「否、値段がどうとかより、俺と一緒に居られることそのものを喜ぶタイプだ。実際、彼女に今まで贈ったプレゼントはアクセサリーなんだが、全部1万円以下。でも彼女は値段や材質とか、そんなことは一切聞かない。話題になってるペアリングもそうだが、譲らなかったのは左手薬指に填めてくれってことだけだ。」

雨上がりの午後 第1517回

written by Moonstone

「宏一か?お前・・・、挨拶くらいしろよ。いきなり電話口で叫ぶ奴があるか。間違い電話だったらどうするつもりだ?」
「これが叫ばずに居られるかってんだ!耕次から連絡があったとおり、お前が今付き合ってる彼女と一緒に写ってる写真を受け取ったんだが、夜電話に出やしねえから今電話したんだぞ?ベイビィ!」

2004/5/5

[子どもの日にあたって]
 今日は子どもの日です。私も幼い頃、鯉のぼりを上げてもらって喜んだ記憶があります(私は男です。念のため)。鎧兜はなかったですが。最近も鯉のぼりを見て「ああ、あの家には男の子が居るんだな」と思ったことがあります。
 出生率は23年連続で減少。将来を担う世代の減少は国家的問題として政府は子育てしやすい環境作りをしなければなりません。残業しなければ、否、過労死するまでしても生計を維持出来る賃金を出さないばかりか、「成果主義」の名の元で体良く人件費削減と利益拡大に突っ走る財界を抑え、GDPの6割を支える個人消費の拡大に真剣に取り組むと共に、育児休暇の充実、進学の機会均等の充実などが必要です。子どもが欲しくても金がかかるから二の足を踏む、ということはあってはなりません。
 一方、次世代にバトンを渡す役割を担う大人の意識や姿勢も根本的に皆長掛ければなりません。大人が平気で嘘をつき、疑問に対するまともな説明や議論もなしに勝手放題し、「大人の言うことを聞け」と一方的に子どもを抑え付けるような姿勢を社会を維持する上で必要不可欠と言わんばかりにやってのけるのを見聞きして、誰が真剣に生きようと思うでしょうか。今と昔とでは情報量が桁違いです。大人の嘘偽りなど、子どもはしっかり見抜いています。
 また、子どもに社会的マナー(道徳とは言いません)を身に付けさせる姿勢がまるでなってないのも問題です。自分勝手に振舞う大人を見ていれば、子どもがこんなことでも許される、こうして何が悪い、と思って当然です。一方で子どもに社会的マナーをきちんと身に付けさせない親が目立つのも問題です。店や車内で走り回り、大声を上げるのを放置するどころか、注意すると「何故注意するのか」と怒ることもままあります。多数で社会を構成・維持する以上は、基盤となるルールであるところの社会的マナーをきちんと身に付けさせなければなりません。それは親の責任であり、周囲の大人の責任でもあります。
 子どもの日は、今の社会を担う大人が、今の自分、ひいては今の社会を見直す日でもあるのではないか、と思います。・・・ま、子どもどころか結婚もしてない私がこんなこと言うのも何ですが。
買えるかな?

「愛してます・・・。」
「愛してる・・・。」

 キスの合間に短いやり取りが浮かぶ。目を開けることはない。それ以外の言葉はない。そんな必要はない。ただ・・・キスという行為で気持ちを伝えて気持ちを感じれば良い。それだけで・・・十分だ。

「「こんばんはー!」」

 俺と晶子はドアを開け放って店に駆け込む。

「おう、こんばんは。どうしたんだ?今日は。二人揃ってご出勤はまだしも、時間ギリギリじゃないか。」
「す、すみません・・・。俺が寝過ごしたもんで・・・。」

 勿論これは口から出任せだ。晶子とキスをし続け、気が付いたら本来の出発時間をとっくに過ぎてしまっていて、俺と晶子は大慌てで晶子の家を出て通勤ろを全力疾走して店に到着した、というのが本当のところだ。

「こんばんは。祐司君、晶子ちゃん。」
「あ、こ、こんばんは。」
「こんばんは。お、遅くなりました・・・。」
「珍しいわね。二人揃って出勤の日に二人揃って駆け込みだなんて。ま、兎に角夕食食べちゃって。今日もかなり混んでるから。」
「は、はい。」
「分かりました。」

 潤子さんの言葉に従って、俺と晶子は何時もの席に腰掛ける。荒い呼吸を無理矢理鎮めつつ客席を見る。今日もかなりの混雑だ。のんびり食べてる暇はなさそうだ。時間ギリギリだったから尚更だ。
 愛しさと幸せにどっぷり浸っていた結果、とんだハプニングを生んでしまった。まあ、これも幸せのうちだろう。今日のバイトも忙しくなりそうだ。気持ちを切り替えてひと踏ん張りしよう・・・。

 1週間後の日曜日。俺は電話のコール音で目を覚まさせられた。昨夜は実験のレポートに加え、火曜日期限の講義のレポート2つ、週1回のゼミの和訳が自分担当ということでその準備に終われ、結局寝たのは午前4時。そのくせ電話のコール音で強制覚醒されたのは午前9時。はっきり言わなくても迷惑だ。俺は欠伸をしながら受話器を取る。

「はい、安藤です。」
「こらーっ!祐司ーっ!」

 この声は・・・宏一か。第一声が叫び声とは・・・。

雨上がりの午後 第1516回

written by Moonstone

 俺と晶子は目を閉じながら唇を重ねる。時折僅かに距離を置いて、微妙に角度を変えたり押し付ける強さを変えたりする。俺の右手がきゅっと握られる。俺は痛くないと思う程度に握り返す。愛しい。たまらなく愛しい。それだけを思いながら啄(つい)ばむような口付けを続ける。

2004/5/4

[んじゃ、そろそろお話しますか(3)]
 あー!とうとう連載のストックがなくなちまったぁ!(大汗)や、止むを得まい。兎に角何とか態勢を立て直さないことには・・・。じゃ、昨日の続きをお話しますね。
 (昨日の続きです)一方、田中議員の公私混同ぶりも大問題です。議員の仕事で国外に長女を連れまわして暢気に買い物と洒落込んだり(本業終了後に土産を買ったりするのは良いですけど)、長女を集会に出すなど、国民生活の舵取りを担う国会議員の仕事を放棄した上に、所謂「田中ファミリー」の存在をアピールして、先に述べた日本の悪しき「ムラ意識」の踏襲を実行しているのですから、週刊文春に「(田中議員の)長女は田中議員の後継者だから」という民主主義の「み」の字も知らない馬鹿げた主張をさせてしまうのです。こんな議員の「活動」を何の疑問もなく垂れ流すマスコミなど論外です。
 プライバシーは尊重されて然るべきです。「後継者」という「公人」の看板を勝手に掲げてプライバシーに踏み込み暴露し、それを利益の元にするなど、ジャーナリズムの精神を云々言う以前の問題です。その観点からすれば、出版差止め命令は至極当然であり、それを取り消した東京高裁の人権意識は厳しく批判しなければなりません。同時に、今回の週刊文春のような低レベルの情報公開を「商品」購入という形で支える有権者や国民の意識、それにそのような議員の行動を追認し、さもそれが当然であるかのように垂れ流すマスコミや「有識者」の意識も厳しく糾弾されなければなりません。今回の事件は、報道のあり方は元より、我々有権者や国民の民主主義やプライバシーの理解を改めて見直すきっかけにすべきではないでしょうか(終わり)。
器がない・・・

「絶対・・・離しませんからね。離せって言っても・・・離しませんからね・・・。」
「晶子・・・。」
「執念深さでは・・・普通の人に負けない自信がありますから。」

 言葉が進むにしたがって、晶子の大きな二つの瞳がどんどん潤んでくる。・・・思い出したんだろう。俺と付き合う前、もっと正確に言うなら、この町に移り住んで今の大学に入るまでに展開したという大恋愛を。そして、それを無残に引き裂かれた時の古傷を。
 晶子は俺との絆に残りの一生を賭けることに生き甲斐と幸せを見出した。今後別の幸せが、もっと光り輝く幸せが現れるかもしれないという可能性を切り捨ててまで。そして親との本当の絶縁を決意してまで。俺は過去の失恋の傷を癒すと同時に、もう二度とないと思っていた幸せを手に入れた。しかし、それは同時に、切羽詰った相手の想いを受け止めなければならないという責任を背負ったことでもあったわけだ。
 俺は晶子の左手を引き寄せ、晶子の背中に左腕を回して自分の身体に押し付ける。愛しい。たまらなく愛しい。俺はそれだけを思いながら晶子を抱き締める。自然と目が閉じていく。言葉は要らない。使わない。この華奢な身体が抱えた大きな想いに俺が今示せる姿勢は・・・これしかない。
 俺の背中に何かが回り、前に軽く引き寄せられる。そして俺の左頬にきめ細かくて滑らかな感触を感じる。その感触が前後にゆっくり動く。俺もそれに合わせてゆっくりと首を動かす。

「晶子・・・。」
「祐司さん・・・。」

 無意識に漏らした呼びかけに、囁きが返って来る。互いの名を呼んだだけ。だが、それだけでも本当に嬉しい。本当に愛しい。想いが膨れ上がっていく。俺と晶子は抱き合いながら頬擦りを続ける。
 どれだけ時間が経ったか分からない。どちらが合図するわけでもなく頬擦りが終わる。左頬に感じていた感触がゆっくり離れていく。その持ち主が、晶子が俺の真正面に来る。閉じていた目が自然に開いて正面に来た晶子の顔だけを映す。潤んだ瞳と微かに震える唇が、何を言いたいかを無言のうちに強く訴えている。

雨上がりの午後 第1515回

written by Moonstone

 右手に軽い圧迫感を感じ、柔らかい感触と温もりが強まる。晶子の右手を取っていた俺の右手が握り返された。晶子を改めて見ると、その顔には笑みこそ浮かんではいるが、その瞳は痛々しいほどの切実な思いに溢れている。

2004/5/3

[んじゃ、そろそろお話しますか(2)]
 うー、連載のストックが枯渇状態・・・。こういう時に限ってストックの消費が激しいんだよなぁ。グループの作品のストック作りを優先してるからこんな事態になるんですけどね。前置きはこれくらいにしますかね。
 (昨日の続きです)その地域における有権者の代表を選抜するのは、議会制民主主義を採用している国の有権者の権利であり責任でもあります。そしてそのためにある主義主張を掲げる政治結社であるところの政党が、自らの代表者を候補者として擁立し、有権者の審判を受けるのです。ですから、自治体という比較的限られた地域の代表者である地方議員の数と、国民生活全体を制御・維持する役割を担う国会議員の数が比例していない政党、言い換えれば「頭でっかち」の政党は、自治体で自らの存在を隠しているに他なりません。自治体単位で自らの存在を示せない政党が何故国民全体の代表者を送り出せるのか。日本におけるこの議会制民主主義の根本問題を突き詰めなければなりませんし、有権者も猛省が必要です。
 週刊文春の主張は、その地域の「有力者」なる者が地域の利害を代表し、そのまま国民全体の代表者として送り出すという、日本の悪しき「ムラ意識」を踏襲するもので、民主主義の「み」の字も知らないことをも自ら立証したのです。この程度の存在がジャーナリズムだの報道の自由だのを語り、記事を書いて利益を上げるなどもってのほかです。このような姿勢を「商品」であるところの雑誌(今回では週刊文春)を買うことで支持する国民の意識も非常に問題です。興味本位などという低レベルの意識のままでいるから、民主主義が未だに成熟せず、族議員や利害団体の代弁者が跋扈する国会を生み出し、自分達の首を締めていることを自覚しなければなりません(続く)。
一晩持つか?
 それからの俺と晶子は対照的な動きをした。俺は照れくささから出来るだけ人に見せないようにしてきたが、それでも目ざとく智一に発見されて問い詰められ、俺が経緯を話すと半ば錯乱したし、店でも男性客、特に晶子のファンが多い塾帰りの中高生が、俺が注文を取る時や料理を運ぶ時にこれまた目ざとく発見して驚きの声を上げ、それ以来彼らからは強烈な敵意というか殺意というか、そんな視線をビシビシ感じるようになった。
 対する晶子は、講義ではあまり見ることがなかったが−カリキュラムの相違による受講講義の違いのためだ−俺と一緒の時は必ず左手を机の上に置いていたし、帰りが一緒になった時は智一にも見せたことがしばしばあった。それ以外の時も極力見えるようにしていたと言う。店ではさり気ないつもりで見せびらかし、特に常連の女性客や中高生の質問攻めに遭い−俺もだが−、プレゼントされたんです、と嬉しそうに答えていた。これらは今でも大差ない。
 晶子がペアリングをプレゼントされたことを心底喜んでいることは−他のプレゼントを喜ばなかったという意味じゃない−分かっていたつもりだった。だが、その頃から俺と一緒に暮らすこと、その「前祝」として結婚を真剣に考えていたことを知って、晶子がどれだけ今の幸せを大切にしたいか改めて思い知らされた。

「そこまで思い詰めてまで・・・、俺との絆を確かなものにしようと思ってたんだな・・・。」
「もう二度と幸せを失いたくないから・・・。今度幸せを掴んだらずっと抱えていきたいから・・・。決めたんです。ペアリングをプレゼントしてもらうことが分かった時、絶対左手薬指に填めてもらおう、って。」
「一応聞くけど・・・、俺がペアリングをプレゼントしようと動いていたことは、あの時知らなかったんだよな?」
「ええ。祐司さんが何かあれこれ考えているなぁ、とは思ってましたけど。」
「で、いざ俺がペアリングを出した時にその場で決めたのか。」
「ええ。」
「あの時点では・・・、キスだけだったよな。まだ、って言うと変だけど。それでも俺に決めたのか?」
「ええ。大学時代の思い出作りのためだけにキスしたわけじゃありませんから。」

 勿論俺も自分の気持ちと正面から向き合い、必死の思いで晶子に交際を申し込んだ、否、返事をした。そしてクリスマスコンサートが終わった日の夜に、手編みのマフラーと共にキスを貰った。キスすることそのものは初めてじゃなかった。だが、今その時付き合っている相手との初めてのキスを気軽に受け入れられるほど、俺は恋愛に慣れてない。

雨上がりの午後 第1514回

written by Moonstone

 翌日バイトのために店に行った時、揃って夕食を食べる前に晶子は左手を見えるようにして−俺は右手で覆い隠していた−マスターと潤子さんに問われると、祐司さんにプレゼントしてもらったんです、と凄く嬉しそうに言った。あの時の晶子の横顔は照れくさくてあまり見なかったが、今思い返すと本当に幸せそうだったと思う。私はこんな素敵なプレゼントを貰ったんですよ、と言っているようで・・・。

2004/5/2

[んじゃ、そろそろお話しますか(1)]
 更新時刻がずれ込んでいてすみません(汗)。体調は全般的に好調です。土日になると、どういうわけか昼間でも転寝を繰り返すのは変わりませんが(汗)。目覚ましがなくても勝手に7時半に目を覚ましてしまうのが困りものと言えば困りものですが。
 さて、前からお話する、と言っていて先延ばしにして来たテーマについてお話します。田中真紀子衆院議員の長女に関する週刊文春のプライバシー報道についてです(長いな・・・)。これはSide Story Group 1で連載中の「魂の降る里」で今後大きな焦点の一つとなるマスコミ訴訟とも関連することですので、作者としてこの問題に関して見解を発表しておこうか、と。
 結論から言うと、東京地裁の出版差し止め命令が妥当だと思います。そもそも公人と私人という区別が問題です。その職務や関連事項(議員の場合は集会での挨拶や演説など)に携わっている時はその職務や責任を全うしなければなりませんが、それ以外の時間は良識的範囲であれば何をしようがその人の自由です。議員が賄賂を受け取って問題になるのは、その職務に関係する地位を悪用して業者などの便宜を図るという、専ら有権者の代表として活動すべき議員にあるまじき反社会的行為だからです。
 「田中議員の長女は田中議員の後継者だから」という週刊文春の主張は出鱈目極まりないどころか、民主主義の「み」の字も知らないことを自ら露呈した、問題点を提起して世論形成に寄与するジャーナリズムを関わる資格をも問わなければならないものです。その議員の引退或いは死去に伴う「後継者」は有権者が選択するものです。そのために政党は自らの主義主張に賛同する個人を結集し、その中からその地域における(選挙区など)政党の代表者として候補者を選抜して擁立するのです。それが議会制民主主義の根本理念です。その点からすれば、利害団体である労働組合や企業や宗教団体などが、自分の組織の人間を擁立して支援するというのも甚だ問題で、こういう点をマスコミや有識者なる存在は徹底的に糾弾しなければなりません(続く)。
10本で幾ら?

「祐司さんの理想の結婚式って、どんなものですか?」
「え?うーん・・・。結婚式や披露宴には一度も出たことがないから、実体験に基づくイメージは言えないけど・・・。まあ、シンプルなスタイルが理想かな。親しい友人を集めた宴会みたいな感じの。TVで芸能人の結婚披露宴を見たことがあるんだけど、ああいうのはちょっと俺には合いそうにない。」
「私も同じです。でも、ウェディングドレスにはちょっと憧れてるんですよ。」

 晶子ははにかんだ微笑みを浮かべる。女ってウェディングドレスには憧れてるもんなんだな。宮城も、私もこんなの着たい、って雑誌を見ながら言ってたっけ・・・。

「教会での結婚式ってわけ?」
「形式だけは。誓いの言葉を言ってキスをして。それから後は着替えて気軽に食事、って流れが良いな、って。」
「指輪の交換は?」
「それはもうしてますからパスします。」
「これで良いのか?」

 俺は左手で晶子の左手を取って自分の方に近付ける。俺と晶子が付き合うようになって初めて向かえた晶子の誕生日に、あれこれ考えてプレゼントしたペアリングが薬指に光っている。白銀の小さな輝きは少しも衰えていない。

「これだからこそ良いんですよ。プレゼントしてもらった時、私が左手薬指に填めて欲しい、って言って譲らなかったのは、私にとって結婚式の指輪の交換という位置付けだったからなんですよ。」
「もうその頃から考えてたのか・・・。」
「ええ。」

 ペアリングを注文する時、俺は左手の中指に填めることを想定していた。右手は俺も晶子も利き手だし、料理もする晶子は包丁を持ったりするのに邪魔になるかと思ったからだ。
 だが、いざプレゼントの段階で、晶子は左手薬指に填めてくれ、と言って譲らなかった。もの凄く照れくさく思いながら晶子の左手薬指に填めてから自分は中指に、と思って填めようとしたら、私と同じ指に填めてください、と言ってこれまた譲らなかった。顔が火照るのを感じながら左手薬指に填めたら、晶子は本当に喜んでくれた。文字どおり満面の笑顔で。
 このペアリングは決して高価な部類−俺からすれば1万でも高価だが−に入るものじゃない。給料3か月分、という誰が決めたか分からない相場からすれば、あまりにも「安上がり」じゃないか、と買う時もプレゼントする前までも思った。だが、晶子は物の値段を気持ちに比例させて測る女じゃないことを、プレゼントする時改めて思い知らされた。実際、晶子は指輪の値段や材質に関しては一言も口にしなかったし、今に至ってもそれは変わらない。

雨上がりの午後 第1513回

written by Moonstone

 俺は笑みを浮かべ、晶子はくすくすと笑う。その笑顔は本当に幸せそうだ。この笑顔を悲しみの濁流に放り出すことだけは絶対にしたくない。してはならない。それが晶子の彼氏を名乗る、晶子との将来を真剣に考えている俺の責任だ。耕次の言葉を改めて実感する。

2004/5/1

[今日から5月]
 ということでトップページの背景写真を変更しました。藤の花です。こちらでは4月下旬に咲くので5月の背景写真とするのは「?」という気持ちもあるにはあるのですが、そんなことを言い出したら「4月に桜ぁ?こっちじゃまだ雪降ってるわ!」ということになるので、「5月=藤」の方向で。
 このところ更新時間がずれ込み気味ですみません(汗)。現在連載小説のストックを制作中なんですが、かなりのヤマ場なので書いている私自身がのめり込んでしまい(汗)、校正を終えた段階で既に23:00を越してました。これからまだ緊張の場面が続くから、油断ならないな・・・。
 ・・・あ、しまった。まだ5周年の挨拶文書いてないや(汗)。ま、良いか。来年の3月31日までは5周年だし(良いのか?)。連休中はトップページ最上段の表記が頻繁に変化しますし、勢いづいて何処かのグループに新作を投入する可能性があるので、逐次チェックしてくだされば幸いです。
赤い薔薇
 薄いBGMが流れる中、晶子はティーポットを軽く揺すってから2つのカップに交互に赤褐色の液体を注いでいく。この香りは・・・ミントだな。そう言えば、ミントには鎮静作用がある、って以前晶子が言ってたっけ。寛いでくださいね、という暗黙の意思表示が感じられる。

「話し疲れたでしょうから、ちょっと息抜き、ということで。」
「・・・晶子の方が疲れただろ?」
「少なくとも祐司さんよりは疲れてませんよ。」

 俺は紅茶を啜る。ミント独特のすうっとした芳香が口から鼻を通り抜けていく。カップから口を離すと無意識のうちに溜息が出る。胸に痞えていたものを小出しにしているという感覚だ。
 寛げる空間と時間をこうして晶子は提供してくれる。決して押し付けがましくなく、同時に嫌々という雰囲気は微塵も感じさせない。俺には勿体無いくらい良い女、否、良い人間だ。だからこそ・・・大切にしないとな。耕次が言ってたな。自分を崖っぷちに追い込んでまでも俺と一緒に暮らすと決めた彼女に対する俺の責任だ、って。その責任は全うしないといけない。出来なかったら晶子は・・・死を選ぶだろう。迷うことなく。

「祐司さん、お友達に私と一緒に写っている写真を送るんですよね?」
「ん?ああ。」
「感想が来たら、聞かせてくださいね。」
「多分、表現は違っても内容は同じだと思う。凄い美人じゃないか、って。晶子の容姿の全容は伝わってるし、そのイメージを崩すことはないだろう。」
「自慢出来ると良いですね。」
「自慢すると多分こう言われる。お前、こんな美人にもう結婚指輪填めさせたのか、ってな。指輪を填めてることも伝わってるし。」
「会わせろ、って言われたら、どうします?」
「そうだな・・・。会いたいならこっちに来い、とでも言うかな。結婚式には絶対呼べ、って返されそうだけど。」

雨上がりの午後 第1512回

written by Moonstone

 晶子はそれで「指定席」に戻るかと思ったら、そのまま部屋を出て行く。トイレだろうか?まあ、あんな長話に付き合っていたらもよおしても当然だよな。両腕をテーブルに置いてぼんやりしているとドアが開き、両手でトレイを持った晶子が入って来た。晶子が俺の前とその隣に置いたものは、空のティーカップ。そしてその中央にビスケットの乗った皿。お茶菓子まで用意してくれるとは・・・。それだけで心を縛り付けていた鎖が解けていくような気がする。

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