芸術創造センター こぼれ話
Dropped talk of Performing Arts Center

2004年6月30日更新 Updated on June 30th,2004

2004/6/30

[6月最後の日]
 結局今月は腰痛との闘いで終わったな(汗)。お陰で満足に作品制作が出来なかったのが悔しいです。作品制作の大前提である「座る」という動作も満足に出来ないんじゃ仕方ないと言えばそうなんですが、更新を楽しみにしている方にしてみれば、所詮言い訳に過ぎないでしょうね。幸い職場の健康診断でも少なくとも腎臓に異常がある形跡は見られなかったですし(潜血とか、その場で分かる項目で異常がなかったので)、風邪が治った今では腰痛も治まってますから、やはり風邪が腰に回っていたようです。身体鍛えた方が良いかな・・・。
 昨日は(このお話をしている段階では今日ですが)誕生日ということで外食。そこで偶然部署は違いますが同じ職場の方と会いまして、飲んだり食べたりしながら歓談しました。ちなみにその方は韓国人なので職場の公用語である英語(国内外の人の出入りが激しい関係で、暗黙の了解でそうなってます)での会話となりました。そこで韓国の食文化やマナーを少し教えてもらいました。今日(6/29)は私の誕生日、と話したら酒を奢ってもらいました(^^)。で、来月此処(昨日行った店)で会いましょう、ということになりました。
 その方と会うのは7/9(金)。参議院選挙目前の日です。折角の機会ですので、韓国人という立場から「北朝鮮との関係」「夫婦別姓(韓国は夫婦別姓です)」「(夫婦別姓に伴う)家族の認識」「日本に対する認識」をどう思うか聞いてみようと思います。もしリスナーの方で「韓国についてこんなことが知りたい」ということがあれば、メールか掲示板JewelBoxでお伝えください。質問の回答は7/10付の日記か特別コーナーで発表するつもりです。

「それじゃ、今から帰る。車だとどのくらいかかるか分からないけど、30分くらいかな・・・。」
「気を付けて帰ってきてくださいね。」
「ああ。それじゃ・・・。」

 俺は少しの間を挟んでから受話器を静かに置く。スロットから吐き出されたカードを素早く取って財布に仕舞う。そして踵を返して智一が居る交差点に戻る。

「待たせたな。」
「否、別に待つほど時間経ってないが・・・、祐司。お前が電話したところって・・・。」
「俺の家だ。」
「てことは晶子ちゃん、お前の家に居るのか?」
「合鍵は渡してあるからな。」

 俺は歩き始める。程なく智一が横に並ぶ。その表情には驚愕と疑念がごちゃ混ぜになって浮かんでいる。

「・・・何時から一緒に住むようになったんだ?」
「まだ一緒に住んでない。今日は俺と晶子の事情が合致したから来てもらっただけだ。」
「そうか・・・。ま、結婚してるなら夕飯作りに来てても不思議じゃないか。お前が今日やけに苛立ってたのは、早く晶子ちゃんと夕飯食べたかったからか?」
「夕食作らせておきながら、それを目の前に長々と待ちぼうけを食らわせるわけにはいかないだろ?ましてや『今日は帰らない』なんて言えるかよ。」
「そりゃそうだな。・・・悪いことしたな。今回ばかりはマジ悪かった。」
「もう良い。とりあえず胡桃町駅まで送っていってくれ。」
「任せとけ!」
「その元気とやる気を実験でも見せてくれりゃあな・・・。」 「お、お前さん。それは言わない約束だよ?」

 何処かで聞いたような台詞を何処かで聞いたような口調で言う智一を見て、思わず笑ってしまう。これまで何かの度に晶子に対するアプローチの態度を見せていた智一は、本当は口惜しくてならないんだろう。だが、そんな憎っくき恋敵の俺を、こともあろうに「標的」の女が夕飯作って待っている、っていう新婚家庭さながらの状況を演出する手伝いを快く引き受けてくれる。果たして俺と智一の立場が逆だったら、こんなことが出来ただろうか?

雨上がりの午後 第1570回

written by Moonstone

「準備は出来てます。後は温めたりすれば良いだけの状態にしてありますよ。」
「まだ食べてないのか?」
「約束したじゃないですか。一緒に食べよう、って。約束を守るのが円滑な人間関係構築の基本ですよ。」

 こういう時は頑固だな、本当に・・・。一刻も早く帰ること。それ以外に電話の向こうに居る女神を動かす手段はない。

2004/6/29

[○○th birthday to me!]
 はい、今日は私の誕生日です。キャプションの○○に入る数値は聞かないで下さい(苦笑)。とりわけ急ぐ仕事もないので、仕事休んで色々楽しもうと思います。まあ、普段どおり起きて朝からPCに向かって作品制作して、夕暮れ時に外食に、って感じですかね(色気ねえ(汗))。
 昨夜ケーキ買ってきました。ケーキに限らず甘いものは結構好きなのですが、こういう時でもないとケーキなんて買わないですからね。ケーキ買う金があったら食材に回す、ってもの凄い所帯じみたことを真っ先に考える始末(汗)。ケーキって閉店間際でも安売りしないのね。私が買いに行った店だけかもしれませんけど。
 自分の誕生日がある関係で親しみがある6月なんですが、祝祭日が1つもないんですよね。7月は海の日が出来ましたし、8月は夏休みなんてものがあるので、祝祭日は元より長期の休みに何ら関わりがない。今度の選挙は6月に祝祭日を作ると公約する政党(若しくは候補者)に投票するかな(大嘘)。ま、ちょこまかと更新しましたので、よろしければお楽しみくださいませ。

「お、俺ん家に泊まってけよ。大学から近いしさ。」
「否、胡桃町駅まで送っていけ。自分の家に帰る。」
「無理に帰らなくても良いじゃねえか。・・・あ、飯か。近くに24時間営業のファミレスがあるから、そこで食えば良い。メニューも豊富だし。勿論、金は俺が持つからさ。」
「そういうわけにもいかない。待ってるんだ。飯が。」
「あれ?お前、自炊してたっけ?お前は普段月曜の夕飯は大学で食ったり食わなかったりしてるけど。」
「約束があるんだ。一緒に食おう、って。俺が帰って来るのを待ってるんだ。」
「ま、待ってるって、お前・・・。」
「電話してくる。」

 俺は程近い生協の店舗へ向かう。・・・流石に怒ってるかな。待ちきれなくて先に食べた、って言われても文句は言えない。俺は実験が終わるまで色々してたからまだしも、晶子はずっと狭い室内で何時帰って来るかはおろか、次の電話が何時かさえも分からないのを待ってるんだから。
 兎も角、約束どおり電話しないと。生協の店舗前にある公衆電話に辿り着くと、俺は財布からテレホンカードを取り出し、受話器を上げてスロットに差し込む。自分の家の電話番号を押して受話器を耳に当てる。コール音が鳴り始める。1回目。2回目。3回目。そこでガチャッという音がする。

「はい、安藤です。」
「あ、晶子?祐司だよ。」
「祐司さん。今何処ですか?」
「まだ大学。ようやく実験が終わったんだ。」
「この時間だと、最終電車は出ちゃってるんじゃ・・・。」
「智一に胡桃町駅まで送ってもらう。それより・・・夕飯は?」

雨上がりの午後 第1569回

written by Moonstone

 俺が視線だけ向けると、智一はさっと顔を逸らす。気まずいと思ってるだけましと思っておくか。

2004/6/28

[エアコンの出番]
 蒸し暑い。土日はこの一言に尽きました。私は寒さにはめっぽう弱いのですが暑いのは平気です。でも、気温30℃以上、湿度80%の密閉空間は流石に厳しいです。じっとしていても汗が出てきますからね(汗かきです)。その分水分補給をしないといけませんし、何より汗が目に入ったりするのが我慢ならない。というわけでエアコンの使用に踏み切りました。
 厄介なことに私は冷房に弱いので、設定はドライです(冬は暖房ですけど)。気温は28度設定。気温が高くても湿度が低ければかなり涼しく感じるものです。今はかなり快適です。こんなことならもっと早くエアコン使うんだったな・・・。何か悔しいです(苦笑)。
 明日は仕事を休みます。勿論事前に届け出てありますからサボりではありません。念のため。誕生日なのでのんびりして外食に行こうか、と。仕事も落ち着いていることですし、今月は最初から腰痛と風邪との闘いが続いたので、気分転換をした方が良いかな、と。ちなみに明日ちょこっと更新しますので、チェックの程を宜しく♪
 俺は受話器をそっと置く。スロットからテレホンカードを吐き出した電話機が、早くしろ、と催促するように甲高い電子音を鳴らす。俺はテレホンカードを取り出して財布にしまう。さて、出来るだけ晶子を待たせないためにも、奴らの尻を叩いて実験を少しでも早く終わらせよう。

 23:30過ぎ。日付が変わるまであと30分を切った。
実験はどうにか終了した。だが、平穏無事とはとても言えない。智一他実験グループのメンバーは担当教官の設問に半分も解答出来ず、散々説教を食らっちまった。その後俺が残りをどうにか答えてようやく解放と相成った。

「うー、もうすぐ0時じゃねえか。まさかこんなに長引くとはなぁ。」
「それは俺の台詞だ。」

 実験室がある建物を出たところで出た智一のぼやきに俺が半ば反射的に斧を振り下ろす。全員で取り組んで出来なかった、っていうならまだ納得がいく。だが、結局今日も俺が終始動き回り、設問に答え、おまけに説教を食らっちまった。その結果終電を過ぎたんじゃ、俺は一体何をしてたんだ、と思う。

「1時間経たずに戻って来たと思ったら、声を揃えて『分からなかった』。前のグループの情報だけで突破出来るほど設問が甘くないってことは、もう十分分かってるだろ。」
「そりゃそうだけどさ・・・。」
「全員揃って取り組んでもどうしても出来なかった、分からなかった、なら仕方ない。けど、俺におんぶに抱っこで乗り切ろうって魂胆が許せない。」
「あう・・・。」
「終電は過ぎちまった。この責任、どう取ってくれる?」

雨上がりの午後 第1568回

written by Moonstone

「・・・それじゃ、また電話する。」
「はい。また後で・・・。」

2004/6/27

[今日は断続的に更新します]
 調整が予想以上に長引いたので、とりあえず2グループを先行更新します。メーつと掲示板のチェック&ページ巡回が終わったら、直ちに次の更新準備をして2回目の更新をします。腰痛は再発していませんが、今週は無理に無理を重ねて乗り切ったので、休日になった途端に疲れがドバッと噴出してきたようです。
 で、こういう時に限って連載のストックが底をついていたり(汗)。色々お話したいことはあるんですが、また後日ということにします。4月以降ずっとこんな調子ですね。忙しくなったのが影響してるのか、単に時間の使い方が下手なのか・・・。
「それじゃ、そろそろ戻る。メンバーがギブアップしてとんぼ返りしてる可能性があるから。」
「分かりました。また後で。」
「・・・あ、ちょっと。」

 受話器を置こうとしたところで急にある不安の入道雲がむくむくと膨れ上がってきたのを感じて、晶子を呼び止める。

「何ですか?」
「鍵・・・しっかり掛けておけよ。玄関も窓も。俺ん家は1階だから。」
「鍵は掛けてありますよ。勿論ドアチェーンも。」
「心配性なんでな・・・。晶子の家みたいにガッチリしたセキュリティがないから、余計なんだけど。」
「心配してくれてるんですね。」
「そりゃ当然さ。俺の・・・。」

 続きを言って良いものかどうか躊躇する。だが、優柔不断な俺を崖っぷちに追い込むためには言うべきだろう。

「大切な・・・妻なんだから。」
「・・・はい。」

雨上がりの午後 第1567回

written by Moonstone

「・・・待っててくれよな。」
「はい。」

2004/6/26

[只今準備中]
 本来は今日付で幾つかのグループを更新するつもりだったのですが、時間の関係で明日に延期します。さっきまで調整してました。うー、伏線貼ったのは良いけど、難しいな・・・。
 あ、腰痛はどうにか治まりました。職場の健康診断で、少なくとも腎臓に異常はないらしいということが分かったので。今日はこの辺で。

「・・・昼は大学で、だよな?」
「ええ。昼からも講義がありますから。」
「・・・晶子。今日は先に・・・」
「待ってますね。」

 次の言葉が出て来ない。俺だって腹減ってる。現に智一達実験のメンバーに図書館に行くよう指示、否、命令した時は、今思い返せば確実に冷静さを相当量食い尽くされていた。だが、比較的昼食を摂るのが遅かった俺より、晶子は腹を減らしている筈だ。その晶子はあくまで俺が帰って来るのを待つと言う。失われた冷静さが温かい何かで修復されているのが分かる。

「・・・終わったら改めて電話するよ。その時終電に乗れそうだったら、胡桃町駅からの電話になるけど。」
「それはその場その時次第になって当然ですから、構いませんよ。」
「今日のメニューは?」
「何時ものとおり、帰ってからのお楽しみ、ということで。」

 俺の口から小さな溜息に続いて笑みが零れる。受話器の向こうから聞こえる「Tonights,I feel close to you」があまりにもタイミングが良い。

雨上がりの午後 第1566回

written by Moonstone

 つまりはまだ食べてない、ということ。約束を守ってくれてるのは勿論嬉しいが、今日中に帰れるかどうかも分からない今となっては申し訳ない。

2004/6/25

[眠りたい]
 今はこの一言です。昨日付の日記は通常と違って表記と同じ日付になってから書いたものですが(普段は前日の23:00前後に書いています)、帰宅してから家事をしたりメール&掲示板チェックをしていたりしたら寝る機会を逸してしまい、現時点(6/24 23:00頃)まで一睡もしていません。
 以前、私が出張の際に薬の持参を忘れてしまったことをご記憶の方・・・は居られないかな?私は転寝程度ならまだしも、「眠くなったら眠れる」という意味での本来の睡眠が薬の力を借りないと出来ません。逆を言えば薬を飲まなければ眠気を我慢しなくても徹夜出来るのですが、脳は起きているのに身体は寝ようとするため所謂「金縛り」と同じ状態になり、その後は思考が定まらない、手足の痺れ、消化器や感覚(主に味覚と触覚)の機能不良(或いは停止)などあまり表面には出ない、当の本人にとっては静かで凄まじい拷問が続きます。
 そういう場合に限って、専門技能の指導という通常でも厄介な事態が控えていたりするんですよね(汗)。前々から頼まれていた上に承諾した以上は、「寝られなかったので寝るために休みます」なんてことはとても言えないので、猛烈な吐き気を抑えながら何時もより早く出勤(その6時間前まで職場に居たりする)。噴き出る脂汗を拭って痺れる手足を動かして昨日はどうにか予定どおり終了。まだ完全に安心は出来ませんが、ひとまず48時間ぶりの睡眠を取れます。疲れている筈なのに眠れない、という方は迷わず最寄の精神科若しくは心療内科まで。それでは皆様、お休みなさい。
 それに・・・何より今住んでいる町を離れたくない。行き来する場所はたかが知れてるがそれなりに愛着が出来てるし、引っ越すということはすなわち、晶子との距離が広がることでもある。バイトも出来なくなる。生活がギリギリになるのは言うまでもないが、晶子と離れたくない。距離が出来ることが別れに繋がるとは思わない。思いたくない。でも、結果的にそうなったという苦い経験がある。距離が出来れば多かれ少なかれ疑心暗鬼になる。今は大学では「すれ違い」だが、バイト先では必ず会える。それで「解消」出来ている。
 ・・・今は兎に角、「現状報告」だな。俺は歩みを再開して公衆電話へ向かう。蛍光灯に照らされたそれは、やけに寂しげだ。俺は財布からテレホンカードを取り出し、受話器を取ってからスロットに差し込む。テレホンカードがスルリと吸い込まれて度数表示が出たところで、自分の家の電話番号を押す。
 トゥルルルルル、というコール音が鳴り始める。1回目・・・。2回目・・・。3回目・・・。4回目にさしかかろうとした時、ガチャッという音でコール音が途切れる。心の何処かでやけに張り詰めていた糸が緩んだような気がする。

「はい、安藤です。」
「あ、晶子?祐司だよ。」
「祐司さん。今何処ですか?」
「大学だよ。まだ実験が終わってないんだ。」
「じゃあ、祐司さんはどうして今電話出来るんですか?」
「メンバーを図書館に向かわせた。口頭発表に答えられるようにするためにな。答えられなかったら説教が待ってる。その上やり直しまで食らったら洒落にならない。」
「そうですか。大変ですね・・・。」

 少しの間沈黙が続く。

「腹・・・減っただろ?」
「いえ。それより帰って来られます?」
「情けない話だけど・・・多分、としか言えない。終電に乗れるかどうかの確証すら持てないんだ。・・・夕食は?」
「準備は出来てますよ。」

雨上がりの午後 第1565回

written by Moonstone

 だが、それは今の仕送りとバイトがあっての話。引越しをするのは大変でこれまた現金な話だが金がかかるってことは、入学前に父さんと一緒に不動産屋を回った時なんかに分かった。父さんは契約することになった段階で、仲介料と敷金を出した。その札束の重みはバイトとは言え自分で働くようになってそれなりに分かったつもりだ。大学の都合とは言え、引っ越したい、とは言えない。

2004/6/24

[さあ、見解発表開始(8)]
 更新が遅れました(汗)。まあ、WWWCなどでマメにチェックされている方以外には分からないでしょうけど。何年ぶりかに職場で日付が変わりました(要するに深夜0:00)を越えた、ってこと)。寝ないと危険、ってことで帰宅しましたが、今日の出勤が早まるので大して変わりありません。

 (続きです)親の考えや制度が変わる毎に姓が変えられることで、人生の断絶を感じるのは子どもも同様である。大人や社会の都合で振り回されては、子どもにとってはいい迷惑でしかない。「改めて子どもに選ばせる」にしても、「自分の姓を大事にしたい」という意志で夫婦別姓を選んだ夫婦が、子どもが自分の姓を取るか相手の姓を取るかで干渉や軋轢を生むとも限らない。親族がしゃしゃり出て来て余計に拗らせる危険性も無視できない(現在でも結婚相手に関して五月蝿いのは親族の場合が多い)。「夫婦別姓では子どもが可愛そう」という反対派の主張は、その意味では正論である。姓は夫婦のみの問題ではないということを、推進派はもっと考慮すべきである。
 結婚に伴う姓の問題は、ずっと辿っていくと最終的には「役所に書類を提出しなければ夫婦でないのか」という法律婚や戸籍制度への疑問に繋がる大きなテーマである。夫婦のみの問題に矮小化したり、同姓あるいは別姓が当然と決め付けることなく、十分な議論を重ねていくことが望まれる(おわり)。

「一体何時まで待たせる気だ?測定値をテキストどおりピックアップしてグラフにすれば、設問の解答はある程度予測出来る。それに該当する分野の教科書を見て書いた事前のレポートを加えれば予測はほぼ確信になる。現に俺は出来たんだからな。それが出来ないってことは、実験の流れを何も把握してないって証拠だ。どういう意味かは・・・分かるよな?」
「「「・・・。」」」
「図書館はカードで通れる。今から調べて来い。」
「い、今から?!」
「行け。」

 悲鳴に近いもう一人の奴が発した声に俺が鉈を振り下ろす。自分でもその勢いが荒いのが分かる。智一と残り二人はそそくさと立ち上がり、逃げるように実験室から出て行く。調べるのに最低1時間と見積もっても・・・終了は終電ギリギリだな。電話してくるか。
 実験室を出て廊下を進み、外に出る。空は満天の星空・・・とは言い難い。秋は星が少ないからな。公衆電話は生協の店舗出入り口にある。携帯持ってるのが当たり前のこのご時世、公衆電話があるだけありがたいと思った方が良いのかもしれないが。
 通りに人影はない。生協の店舗が近付いてきたところでふと振り向くと、建物の窓は幾つも白色の光を放っている。卒業研究が主体になる4年や院生は文字どおり夜を徹して、ってこともあるらしい。各研究室には寝泊まり出来る設備があるにはあるが−一応仮配属になってるし、他の研究室の情報も流れてくる−、少なくとも俺の居る研究室には所属学生全員の分はない。終電に乗れなきゃ研究室で寝泊まり、か・・・。
 仕送りの額が増えるわけでもなし。ましてや大学の近くに引越しなんて出来ない。学費に加えて月10万を捻出することがどんなに大変かは、一人暮らしをしてバイトするようになって肌身に染みて分かった。幸か不幸か、ファッションとか車とか旅行とかスキーとかにてんで無頓着な俺の生活は楽だ。銀行の残高は1年分の学費を出せるまでに貯まってる。

雨上がりの午後 第1564回

written by Moonstone

 グループの一人が発した頼りない救いを求める声に俺が答える。苛立ちが抑えられない。19時頃に智一に夕食に誘われたが断っている。勿論晶子との約束を守るためだ。だが、腹を空かせた腹の虫は冷静さをじわじわ蝕んでいく。ふと気付けば俺は奥歯を噛み締めている有様だ。

2004/6/23

[さあ、見解発表開始(7)]
 腰痛はどうにか小康状態ですが、背凭れは必須です。今日職場で健康診断があるので、それでこのしつこい腰痛の原因が判明するかもしれません。「整形外科へ行け」ならまだ良いんですけどね。あれはあれで結構痛いそうですけど。

 (続きです)パネリストの発言に代表されるような本音と建前の使い分けや、夫婦別姓以外は認めないと暗に仄めかしていたシンポジウム会場の雰囲気を考えると、このまま夫婦別姓制度が推進されることにはちょっと待った、と言わざるを得ない。反対派の主張には、「別姓制度が導入されれば、自分の妻が別姓を言い出すのでは」「これまで自分が抱いてきた価値観が否定される」という不安や警戒感があると推測されるが、このような感情を無視していては、「夫婦別姓を強制しようとしている」と言われても「言論の自由だ」「反対派に対する粛正だ」の水掛け論になるだけで事態は進展しないし、無理に進めればどこかでひずみが生じるのは必然的である。
 また、別姓制度が夫婦(になる男女)だけの問題のように語られ、子どもに対する配慮が欠けている点も無視できない。夫婦別姓の場合の子どもの姓に関しては、「どちらかの姓に統一すべき」「出生時にどちらか届け出て、ある年齢に達した時点で改めて子どもに選ばせるべき」など様々な意見があるが、「とにかく実施して、問題が発生した時点で議論する」などという意見もある。姓を重視する傾向が強い日本社会の思考がそう簡単に変わるとは思えないことを考えると、あまりにも子どもに対して無責任ではないか(続く)。
 智一の誉め言葉を適当にあしらって、俺は実験装置一式の元に向かう。実験はようやく3/4が終わったというところだ。割合としては少ないが、この後口頭発表があるから油断ならない。この分だと終了は早くても21時だな。終了の目処がついた段階で晶子に電話するか。

 21時過ぎ。大学に半日居る計算になる。
こんな計算したくない。だが、状況が許さない。実験はどうにか終わったが、口頭発表に備えてグラフを描くのは勿論、実験結果の考察やテキストにある問題を答えなきゃならない。実験指導担当の教官に指名されるのは誰だか分からないから−分かったら迷わず占い師か何かになってる−、自分だけ分かっていても意味がない。答えられなかったら説教が待ってる。ほぼ毎回と言って良いほど食らってるが、何度食わされても不味くてたまらない。俺は食らう必要がないものなんだが、グループ単位で実験をしている以上はどうしようもない。
 机には俺以外の三人が脇にそれぞれのテキストを開き、グラフ用紙や測定値を記録したノートを囲んで唸っている。智一を含むこいつらが設問に答えられるようにしないといけないから、ふらりと戻って来た二人を捕まえてやらせている。
 俺は何度も覗き込むが、まったく進んでいないようにしか見えない。そりゃ、俺の指示を受けて機械的に動いていただけ、或いは実験そのものもろくに把握せずにふらついているだけじゃ出来なくて当然なんだが。

「この問題の答え、分かる?」
「え?確か情報だと、ここがこうなる時にはこうなって・・・。」
「あ、それって別のグループは聞かれなかったって言ってたよ?」
「これを答えられなくてやり直し食らったグループもあるぞ。」
「マジ?!」

 それは俺の台詞だ。実験指導担当の教官は同じ質問をぶつけてこない。時と場合によってさらりと流したり突っ込んだことを聞いてきたりする。「口頭発表の内容が同じだと次のグループに流れてしまう」というのがその理由なんだが、こういう時になるとその「対策」の素晴らしさに溜息が出る。勿論、ありがた迷惑なんだが。

「どうする?前のグループに聞く?」
「とっくに帰っちまったよ。」

雨上がりの午後 第1563回

written by Moonstone

「−こんなもんだろう。」
「おおっ、見事。」
「次の実験に取り掛かるぞ。」

2004/6/22

[ご、御免なさい・・・]
 突然2日も行方くらまして申し訳ありません。実はこの土日(6/19、6/20)と腰痛が悪化して殆ど寝込んでました。メールと掲示板のチェックをするのが精一杯で更新はとても無理でした。月曜から仕事なので容態の回復を最優先させ、鎮痛剤の服用と湿布貼りをして安静にしていました。食事は手っ取り早く済ませました。
 幸い昨日(月曜)にはかなり回復したのですが、まだ長時間(1時間以上)座っていられません(背凭れ必須)。更新準備は半ば無理矢理済ませましたが、「土曜以降に更新を延期する」と言った以上は更新したかったからです。
 それにしても、2日突然音沙汰なくしても、来るメールはウィルスか英語のDMとはね・・・(溜息)。あることも重なってかなり気分が悪いです(吐き気がするという意味じゃなくて)。見解発表の続きは明日以降にします。
 実験項目は多い上に測定項目も多い。更に測定してその時の電圧やらをひたすら記録してはいおしまい、というわけじゃない。それらをグラフにして特性を明らかにして、実験指導担当の教官に説明しないといけない。これもこの実験に限ったことじゃないんだが。

「智一、グラフは出来たか?」
「えっと・・・、どれを縦軸にしてどれを横軸にすれば・・・。」
「・・・あのなぁ。テキストに書いてあるだろ、そんなことくらい。」
「それは分かるんだけどさ・・・。どうやってグラフ用紙の中に収めりゃ良いのか・・・。」

 俺は溜息を吐く。グラフは必ずしも0を基点にすれば良いってもんじゃない。測定値が斑なく収まるように縦軸横軸の分割を決め、出来るだけ直線になるようにする−そのために使用するのが片対数や両対数のグラフ用紙だ−のが基本だ。分割をどうするか、どのグラフ用紙を使うかといったことを判断するのも実験の一つ、と言われたことがある。
 だが、智一は測定こそ出来るが−この計器の値を読んで記録しろ、と指示するのは専ら俺だが−肝心の纏めの段階であるグラフ製作はまるで駄目だ。丘のグループではグラフの製作や特性の把握をしている間に次の実験の段取りを固める予備実験をしたりするんだが、俺のグループではそんなことは出来ない。他の二人はまったく姿が見えないし、智一がこの調子だから結局俺があれこれ指示したり実際にグラフ製作や特性把握−これらが実験後の口頭発表に繋がる−をしないといけない。
 俺は次の実験の準備をしていた手を止めて智一が居る机に駆け寄り、ノートに書かれた測定値をざっと見て、最適なグラフ用紙を選択する。そして縦軸横軸の分割を決めてノートの端に適当に描いてみて、テキストと照らし合わせて測定値が実験の目的に一致しているかどうかを確認してから、グラフを描く。これにあまり時間はかけられない。実験そのものに要する時間が長いからだ。

雨上がりの午後 第1562回

written by Moonstone

 18時過ぎ。普通の講義ならとっくに終わってて、バイトに行こうとしている時間帯だ。だが今日は、否、今日も実験は終わってない。俺のグループが手がけている電動機の実験を含む、所謂重電関係の実験は普通にしていてもなかなかスムーズにいかない。電動機には慣性があるから定格に乗せるのにも時間がかかるし、止めようとすると今度はそう簡単に止まらない。まあ、慣性があるのはこれに限ったことじゃないんだが。

2004/6/21

[さあ、見解発表開始(6)]
 ※この日記は6/21に書いています。理由は6/22付日記をご覧下さい。

 (続きです)また、同じくパネリストの衆議院議員(当時)は、梶山前官房長官(当時)の発言を取り上げ、「(私の妻は夫婦同姓がいい、と言ったことに関して)何て遅れた考えだろう、このような考えの方が自民党の中心にいるんです」と述べた。重複するが、夫婦や家族の姓の問題が価値観的命題の一つである以上、一律的に強制力を伴う法律という形を取るかどうかを問わず、ある「回答」を強制するのは問題である。仮に個人で夫婦同姓は遅れていると考えていても、それを立法や法改正の理由にすべきではない。 「彼はこう考えているが、それも一つ。しかし、様々な理由で別姓制度を望む人もいるから推進する」というのなら大いに賛成だが、パネリスト諸氏のこのような発言を聞いていると、どちらも価値観的命題に対して「全てかくあるべし」と強要する姿勢を見せているという点では、「賛成派も反対派もどっちもどっちだな」という冷めた印象しか持てない。そもそも、このシンポジウムのパネリストがすべて女性だったことや、案内状を女性にしか配布しなかったという態度(私は情報を聞きつけて参加した。参加条件に「女性のみ」とはなかった)にも、どこかきな臭いものを感じる(続く)。
 俺と智一は生協の食堂に入る。ピークを過ぎてることもあって全体的に閑散としている。もっとも月曜は大抵、否、絶対こんな風景しか見られない時間にしか来られないんだが。食事が出されるカウンターにも列は殆ど出来ていない。俺は食券を買ってからトレイを持って短い列に並ぶ。この分だと直ぐだな。
 何時もの要領でカウンター越しに料理を受け取り、茶を入れて空いている席に座る。智一がそれに少し遅れて俺の向かい側に座る。俺は徐に食べ始める。今日は魚のフライか。デジャブを感じるのは今日に限ったことじゃない。

「昼からは逃げるなよ。」

 俺が食べながら言うと、向かいでむせる音がする。俺は構わず食べ続ける。

「い、いきなり何だよ・・・。」
「無負荷でのトルク測定は途中だったんだぞ。それを途中で放り出しやがって。お陰で最初からやり直しだ。この不始末、どうしてくれる?」
「そ、それは悪いと思ってるさ。だけど女が、しかも美人が稀少なこのエリアに見知らぬ美人が姿を現したとなれば見に行きたくなるのが、男のロマンってやつだろ?」
「男のロマン、ねえ・・・。」

 俺は智一の言葉を反芻して味噌汁を啜る。

「そのロマンとやらで実験の終了が遅れたら、話にならないだろ。お前も知ってるだろ?今日の実験はスムーズに進むのが奇跡的で、終了した時には終電過ぎてたグループもあるって。」
「あ、ああ。」
「俺は電車通学だってことは・・・知ってるよな?」
「わ、分かってるって!」

 智一の言葉が急に狼狽の度合いを強める。飯を食いながらだから顔は見てないが、声の調子で分かる。どうやら言いたいことの半分は伝わったらしい。もう半分は・・・言わなくて良いな。・・・少なくとも今は。

雨上がりの午後 第1561回

written by Moonstone

 どうやら晶子は伊達や酔狂に類する気持ちで答えたんじゃなさそうだ。もっとも今朝の会話や晶子の性格から考えるに、口から出任せを言うとは思えないが。同時に俺を試すつもりだったんだろう。今朝の会話で約束したことを実行するかどうか、それだけ俺の気持ちが真剣なものかどうかを。私は約束どおり答えましたから祐司さんも約束どおり答えてくださいね、と伝えたかったんだろう。自分に詰め寄った後恐らく俺のところに向かうと予想出来ただろう、智一を含む学科の連中を介する形で。

2004/6/20

[さあ、見解発表開始(5)]
 ※この日記は6/21に書いています。理由は6/22付日記をご覧下さい。

 (続きです)これらを臭わせる発言として、パネリストの弁護士は「女ばかりの姉妹や一人娘で家名、墓の心配から(別姓を)望む人もいます。・・・こういう心配も男ならない」と述べた。これは、結婚しないと家系が断絶する、墓を守る人間がいなくなるという周囲(特に親族)の圧力に晒され、追い回されている現代の男性の実情を知らないのか、あるいは「男性は加害者で女性は被害者」であり、「被害者の女性の主張は絶対正しく、加害者の男性や社会は絶対間違っている」という図式を描きたいが為に意図的に無視したのか。このような一方的な見解をさも正論の如く言われては、男性の一人としては容易に承服し難い(続く)。
 俺が前に進み出すと、人垣が左右に分かれる。映画か何かみたいだな。ふと後ろを見ると、智一がついて来ている。それを確認して、俺は実験室を出る。急に空腹を感じてきた。無意識に緊張していたんだろうか?今までこの手の質問に真正面から答えたことがなかったから、当然かもしれないな。

「しかし、マジにお前と晶子ちゃんが結婚してたとはな・・・。」

 生協の食堂に向かう道中で、横に並んだ智一が話し掛けてきた。

「俺を含む学科の奴等が、生協の店舗を出て来た晶子ちゃんに尋ねた時は流石に驚いた様子だったけど。」
「見知らぬ男が大挙して自分に向かって来たら、普通びっくりするだろ。」
「そりゃそうだがさ・・・。俺達の問いに晶子ちゃん、何の躊躇いもなく答えて証拠です、って言って指輪を見せるもんだから、全員仰天したぞ。」
「で、確認のために今度は俺のところに来た、ってわけか。」
「ああ。」
「それで、晶子はどうしたんだ?」
「指輪を見せた後、『午後から講義がありますので失礼します』って言って頭下げて行っちゃったよ。」
「そうか。なら良い。」
「どういうことだ?」
「お前達が妙な質問投げかけて、晶子を引き止めてたんじゃないかと思ってな。」
「あんな強烈な回答されたら、相手のお前に確認しにいかないといけないだろ。それにあの時の晶子ちゃん、『これ以上お話するようなことがありますか?』って雰囲気だったからな・・・。」

雨上がりの午後 第1550回

written by Moonstone

「昼飯食ったのか?」
「い、否、まだだ。」
「それじゃ、一緒に行こう。推測では今の実験を済ませるには相当時間がかかるだろうからな。2時までは耐えられん。」

2004/6/19

[さあ、見解発表開始(4)]
 天候とは裏腹にこの1週間は体調が芳しくありません。腰痛はかなり治まったもののまだ時折疼きますし(鎮痛剤は服用しています)、午前中と夕食後に猛烈に眠くなって此処の更新がやっとの状況です。グループの更新などは明日以降に延期します。定期更新じゃないので何時更新するかは私の自由と言ってしまえばそれまでですが、土曜が楽しみ、という方も居られるかもしれませんし。では、かなり間が空きましたが見解発表を再開します。
 
 (続きです)一つ目に関して言えば、これを逆手に取れば「同姓を望む夫婦は、相手の姓や立場を犠牲にしようという思いからそうする」「(同姓を望む夫婦は)夫婦の絆を強めようと考えている訳ではない」と言いたいのではないか。だとすれば、「選択肢を増やす」ことで「違いを認めあえる成熟した社会をつくる」などという美辞麗句は建前にすぎない。
 二つ目に関して言えば、家庭崩壊の原因は木島議員も述べているように、「雇用や賃金など経済・くらしの問題、子育て・教育問題、病気や老後の不安、退廃的な文化(この表現も引っ掛かるが)など、複雑な要因がからみあって」いるからであり、別姓にしたところで即座に解決するものでもないのではないか。法律の条文や制度の変更で個人の考えが180度変わるなら、日本は日本国憲法や現行民法の施行段階で、世界に誇る民主国家になっている筈だ。
 木島議員の発言はもとより、私が夫婦別姓制度研究の取材のために出席した「選択的夫婦別姓に関するシンポジウム」(以下、シンポジウム)におけるパネリスト諸氏の発言を耳にしている中で、「結婚しても自分の姓でいたい」「いろんな生き方を認めあえる成熟した社会を」「違いを認めあえる社会を」という主張はあくまでも賛同を集めるための建前であり、本音では「夫婦別姓こそ男女同権の象徴であり、それに異を唱えるのは男女差別」と考え、それを実行しようとしているのではないか、「夫婦の姓をどうするかは女性の問題であり、男性は女性の意向、即ち夫婦別姓に異議を唱える権利はない」と言いたいのではないかという疑問がさらに膨らんだ次第である。

「ゆ、指輪って、晶子ちゃんの誕生日にプレゼントしたペアリングだ、ってお前・・・。」
「ものはペアリングには違いない。でも、プレゼントした時にこの指に填めて填めさせた時点で、双方合意したんだ。・・・結婚するってな。結婚は男女ペアでするものだから、ペアリングでも問題ないだろ?」
「・・・。」
「俺はプライベートに関して積極的に話すタイプじゃないから、必要以上は喋らないで居た。今回は晶子がお前達の質問に答えて、それを俺に大挙して確認しに来たから証拠を見せて、一致して当然の回答を示した。それだけだ。」

 俺の周囲は水を打ったかのように静まり返っている。以前智一に見せたのをきっかけに晶子との写真の披露会になり、それから派生した妙な質問−晶子のスリーサイズとかそういうことだ−は適当にはぐらかした。答える必要は内と思ったのもあるが、そうする以外に回避する手段が思いつかなかったのもある。
 だが、晶子が予想どおりというか、生協の店舗で俺と同じ学科の連中に出くわし−大半は急速に広まった話を耳にして見に行ったようだが−、これまた予想どおりというべき回答をしたからには、肝心の俺が矛盾する回答をするわけにはいかない。

「・・・結婚してたなんて・・・。」
「羨ましいな・・・。」
「あんな美人と学生結婚とはね・・・。」

 周囲がざわめく。見知らぬ男が大量に押し寄せてきたと思ったら俺との関係について質問されたから、「虫除け」のために答えただけ、という思いも程度の差は違えどあったんだろう。だが、俺が一致する回答をしたことで、まさか、という気持ちが、そうだったのか、という気持ちに変わったんだろう。自分で既成事実を作ったことになるが、背に腹は代えられない。言う時は言わないとな。耕次が言ったように、自分を崖っぷちに追い込んでまで俺と一緒に暮らすことを決めた晶子に対する俺の責任だ。

「さて・・・、実験はどのみちやり直しだから、昼飯にするかな。」

 俺は定期入れをポケットに仕舞って智一を見る。智一はびくっと身体を震わせる。そんなに怖い顔してるんだろうか?

「智一。お前、実験を途中で放り出してわざわざ生協の店舗に行ったのか?」
「あ、いや、まあ・・・そういうことになるな。」

雨上がりの午後 第1559回

written by Moonstone

 狼狽した様子で尋ねてきた智一に答える。俺の答えは晶子の言った言葉の受け売りだが、この場合最も簡潔且つ具体的で説得力があるものだろう。

2004/6/18

[リスナーの皆様にお尋ねします]
 唐突ですが、皆様はこのページをご覧くださる際のブラウザに何を使っておられますか?私は「Total Guidance」でも紹介していますとおり、Netscape4.7で表示(動作)確認をしています。ですが、6/12にSide Story Group 1で公開した「魂の降る里」第102章ではドイツ語のウムラウト(uとoの上に二つ点がついたような文字)を使う単語があり、それはNetscape4.7では「?」になってしまったので(前に「表示に苦心している」とお話したのはこのことです)、Netscape7.0とInternet Explorer(以下IE)6.0を使って表示確認をしました。
 私は最初に触れたブラウザがNetscapeだったこと、IEがWindows添付で「勢力」を拡大するという、商業の本道から逸脱する方法で広まったことに対する反発心からNetscapeを使っているのですが、Netscapeは6以降極端に重くなり、また4.7までの表示が正常に反映されないという、バージョンアップに反する動作が一向に改善されないため通常は使っていません。馴染みがあって軽い、ということから4.7を使っています。
 しかし、近年のWindowsとIEの普及具合を見ると、IEを表示(動作)確認ブラウザにした方が良いかも、という気持ちもあることもまた事実。<TABLE>タグの<TD>タグのALIGNアトリビュートを指定しないとセンタリングされるという面倒な問題もありますが。投票所Cometや掲示板JewelBoxなどで教えてくだされば幸いです。
「ああ。今日が発売日だし、何時生協の店舗に引き取りに行けるか分からないから代わりに引き取って貰うように頼んだんだ。組合員証を貸してな。それで?」
「彼女が生協の店舗を出たところで俺達が聞いたんだ。君って電子工学科3年の安藤祐司君の彼女か、って。」

 今度は別の奴が進み出て来る。

「そうしたら彼女、『彼女でもありますけど妻でもあります。』って言ったんだ。そして左手を見せて『これが証拠です』って。」
「これと同じ指輪だよ。」

 俺が左手を突き出すと、周囲からどよめきが起こる。俺と晶子の絆を示す白銀色に輝く小さな、しかし薬指に填まることで大きな力を秘める指輪。今まで表立って見せたことはなかったが、今朝晶子と約束したとおり、ここぞという時には見せないとな。
 ついでにこれも見せるか。俺はズボンのポケットに右手を突っ込んで定期入れを取り出し、広げて全員に見せる。収まったどよめきが音量を増す。その中に、確かにこの娘(こ)だ、とか、間違いないこの顔だ、とかいう声が混じってくる。

「これだけ証拠見せれば満足か?」
「ゆ、祐司。お前何時晶子ちゃんと結婚したんだ?!」
「・・・この指輪をプレゼントした時だよ。」

 周囲からまたどよめきが起こる。ここまで来たらもう後には引けない。俺と晶子の言うことに食い違いがあったら妙な誤解や憶測−俺が晶子を騙して他に女を作っているとか−を生みかねない。俺でもそれくらいは分かるつもりだ。

「し、式は何時したんだ?!」
「・・・まだしてない。指輪の交換だけ先に済ませたって格好だ。」

雨上がりの午後 第1558回

written by Moonstone

「それで?」
「で、まさかと思って声をかけてみたら案の定晶子ちゃんだったんだ。何でも、お前が購読してる雑誌を代わりに引き取りに来た、って。」

2004/6/17

[また風邪ひいたぁ]
 ようやく腰痛が収束に向かいつつあると思っていた矢先に、朝晩の気温の変化に追従出来ずにまたしても風邪をひいてしまいました。このお話をする直前まで横になって安静にしていました。このところの睡眠不良(寝る時間はそこそこあっても浅い、とかいう意味)も背景にあったんでしょうけど。
 やりたいこと、やらなければならないことがどんどん先延ばしになっていくのがどうしてもやりきれません。この時期は体調を崩しやすい、とは聞きましたが、例年この時期は難なく乗り切ってきたので油断もあったんでしょう。週末まであと少し。早めに治すようにします。
 13時前、すなわち昼休み終了前。
俄かに廊下が騒がしくなってきた。昼食帰りか?智一が帰ってこないところからするに、奴もどさくさに紛れて昼飯を食いに行ってたな?ったく、今日ばかりはキツく釘を刺しておかないと駄目だな。あと二人は言うだけ無駄だから別として。
 実験室−幾つかに分かれている−にどやどやと人が入って来た。あれ?随分多いな・・・。と思ったら、俺の方に来た。何だ?一体。

「なあ、安藤君。」「あの娘(こ)と結婚してるってマジ?」「指輪見せられたけど。」
「一気に喋るな。わけが分からん。」

 俺は聖徳太子じゃない。一斉にあれこれ聞かれてそれに答えられる並行処理能力は俺の頭にはない。俺の前に出来た人だかりはどうにか鎮まったものの、どいつもこいつも何か言いたくてたまらない、といった様子だ。・・・多分、あのことだろう。というか、それ以外思いつかない。

「祐司。」

 智一が前に進み出て来た。

「何だ?」
「昼休みに生協の店舗にこの辺じゃ見たことがない美人が居る、って話を聞いて見に行ったら、白のブラウスにブルーのベストとフレアスカート、腰ほどまである茶色がかった長い髪の美人が雑誌か何かが入った袋を抱えてたんだ。」

雨上がりの午後 第1557回

written by Moonstone

 俺は周囲を見回す。普段なら幾つかのグループは残っているんだが、今日はやけに閑散としている。どうしたんだ?今日は・・・。ま、智一が帰って来るまで一休みするか。食事に行ってたら一発ぶっ飛ばしてやる。

2004/6/16

[全リスナーに通達します]
 6/14の参議院で有事法制が自民、公明、民主の賛成多数で強行成立しました。この法律は「備えあれば憂いなし」という美辞麗句が添えられていますが、実際はアメリカがアジアで起こす、国連憲章違反のイラク型先制・侵略攻撃を「武力攻撃予測事態」「周辺事態」と称して自衛隊はもとより国民を総動員する、まさに戦前に国家総動員法です。詳細はトップページのリンクからご覧下さい。
 有事法制もイラク特措法も、アメリカ発9条改憲命令、言い換えれば日本を戦争出来る国に作り変えろ、という命令に粛々と従った結果です(トップページ最上段の「決議」参照)。国民にも国会にも相談せず、首脳会談の場でいきなり多国籍軍への参加を約束した首相の言動もその一環です。政府与党は言うに及ばず、民主も所詮は財界に自民のスペアとして期待され、そのとおりに動いている政党。政府与党と一体であることは明らかです。
 「アメリカに守ってもらっているから仕方ない」という見方もあるでしょう。では聞きますが、何時アメリカが日本人を守りましたか?単に旧ソ連との冷戦における最前線基地を確保するために憲法を捻じ曲げさせて自衛隊という名の軍隊を創り上げさせ、こともあろうにベトナムでもイラクでも、その国の何の罪もない住民を「自衛」「治安」の名目で虐殺するために使わせただけではないでしょうか?それでも尚アメリカの力を借りる必要があると言うなら、「有事」になったらまっさきに日の丸と鉄砲を担いで最前線に向かってください。戦争の当事者でもない者に戦争の重圧や残酷さなど分かる筈がありません。安全なところで日の丸を振って君が代を歌う暇があるなら、真っ先に国家とやらを守る先頭に立ってください。その時は有事立法に賛成した自民、公明、民主の議員を連れて行くこともお忘れなきよう。
「おはよう、じゃねえよ。俺より朝早く来てると思ったら、ぼうっとしてやがる。寝ぼけてんのか?」
「いや、ちょっと考えごとをしてただけさ。それよりレポートは?」
「う・・・。」
「その様子だと出来なかった、否、やらなかったところがあるみたいだな。今回も。」
「うぐぐ・・・。『やらなかった』と『も』を強調するなよ・・・。」
「俺のレポートはクローン培養中だ。お前も培養に加われ。」
「りょ、了解。」

 智一は一転して恐縮した表情になって、いそいそとクローン培養に加わる。智一の場合は部分培養だが、俺からすれば大して変わりはない。晶子とのやり取りを思い浮かべていたが、この連中を引き摺っていたら昼休みに晶子と偶然を装って会うどころか、昼休みが何時になるかも分かりゃしない。キャンパスで晶子と会うのは夢のまた夢、か・・・。

 12時20分前、すなわち昼休み中。
実験は予想どおりと言おうか、見事に滞ってしまっている。役立たずを極めた二人は実験開始早々姿を消してしまったし、奴らを探して引き摺り戻す暇があったら進めた方がましだ、と思って放っておいてある。まだ使える智一も完全に俺の指示待ち状態。今は無負荷でのトルク(註:モータが単位距離あたりに行える仕事量)を測定しているんだが、俺がその場で実験の段取りを決めて、俺がこれをするからお前はこうしろ、と言わないといけないから、気が休まる時がない。
 ・・・ん?何やら廊下が騒がしいな。何かあったんだろうか?そんなこと考えてる場合じゃない。兎も角、この測定を終えないことには昼飯どころじゃない。この分だと1時過ぎるな。毎度のことだけど。

「それじゃ智一。徐々に回転速度を上げていくから測定値を・・・。」

 テキストから顔を上げて見ると、そこにあるべき智一の姿がない。あ、あの野郎。これじゃ実験が進められないじゃないか。幾ら何でもこの測定は俺一人じゃ無理だ。同時に測定する値が一人じゃ面倒見切れない数だからだ。ったく智一の奴、何処へ行きやがったんだ?まだ測定開始間もないってのにこんなところで放り出されたんじゃ先に進めやしない。最初からやり直し、か・・・。晶子と会うどころの話じゃないな。兎も角この測定を終えないことにはひと段落とはいかないから、智一が帰ってくるのを待つか。

雨上がりの午後 第1556回

written by Moonstone

 我に帰って声の方を向くと、眉間に皺を寄せた智一が俺の横に立っていた。何時の間に居たんだ?こいつ。

「あ、何だ、智一か。おはよう。」

2004/6/15

[これ、ちょっとおかしい・・・かも]
 今でもしつこく腰痛が続いているわけですが、ただの(と言うと腰痛持ちの方には「分かってない!」って言われるでしょうけど、私も腰痛持ちですので気持ちは分かります。念のため)腰痛とはちょっと性質が違うような気がしてならないです。
 理由その1:「やけに長引いていること」。今まで経験してきた腰痛は大抵2、3日安静にしていれば治ったんですが、今回は発生から1週間以上経った今でも痛むんです。今は動けないと言うほどではないものの、発生した先週の土日は本当に寝返りも打てないほど痛かったですし・・・。今までの腰痛はここまで酷くならなかったんですが・・・。
 理由その2:「痛む位置がおかしい」。腰痛だと普通に考えれば、骨盤と脊椎のあたりに問題があるから、必然的に脊椎のあるところに痛みが発生しますよね?今までは確かそうだったと思います。ですけど、今回は脊椎より少し離れたところが痛むんです。以前にもお話したと思いますが、この位置は確か腎臓のある場所。風邪がきっかけで腎臓を痛めることもあると聞いたことがあるので、実はかなり不安だったりします。来週に職場で健康診断があるので、それではっきりすると言えばそうなんですが、その前に病院に行った方が賢明でしょうか?
 実験開始、すなわち2コマ目開始の30分前。
俺のレポートは例によって例の如くというか、「まったく」動かない二人のが提出するレポートのクローンの基となっている。今日は俺が早く来たのを喜んで、頼んできた時には目を潤ませてさえいた。まあ、そんなことはどうでも良い。どのみち苦労するのは奴等だ。今、俺の頭の中では、道が分かれる時に晶子が笑顔と共に贈ってくれた言葉がリフレインしている。

夕ご飯、期待していてくださいね。
私、待ってますから。

 今日の昼、俺が買ってる雑誌をこっちの生協の店舗まで引き取りに来てくれるんだよな・・・。時間を合わせて行ってみようかな・・・。もし出くわしたら晶子、どんな顔するかな・・・。やっぱり驚くかな・・・。それとも喜ぶかな・・・。

「お、祐司。何だ、今日は。随分早いな。」

 どうしたんですか?この時間はまだ実験の真っ只中かもしれない、って・・・。かもしれない、だろ?今日はこの時間に実験がひと段落ついたんだ。・・・迷惑だったか?いいえ、此処でこうして祐司さんと会えるなんて思わなかったから・・・。

「?どうしたんだ、祐司。」

 雑誌、このまま持って行って良いですか?ああ、勿論。俺が頼んで引取りに来てもらったんだから。

「おい、祐司。」

 実験、頑張ってくださいね。美味しい夕ご飯作って待ってますから。ああ。出来るだけ早く終わらせる。

「こら!祐司!」

雨上がりの午後 第1555回

written by Moonstone

 晶子の気持ちは分かるつもりだ。「夫」であるところの俺からも自分達の関係を公言して欲しい、ということくらい。外堀はおろか、内堀も埋め尽くされていくのが分かる。でも、俺にはそれくらいの崖っぷちの状況が必要だろう。晶子が自分をそれ以上の状況に追い込んでまで、俺との結婚と一緒に暮らすことを思い描いているようになるためには・・・。

2004/6/14

[一体誰だ?!(激怒)]
 一昨日頃から妙なメールが舞い込んでいます。勿論感想ではなく、「会いませんか?」という主旨のメール。しかも、どれも「掲示板を見た」というくだりが。
 あのな・・・。掲示板って・・・。私はそんな掲示板のあるところに出入りしちゃいないし、そんなところに書き込む筈がない!(激怒)どうも誰かが私の名(Moonstone)とメールアドレスを使って、その手の掲示板に書き込んでいる模様。調べてないので(そんなメール送ってきた相手に事情を問い合わせるのも何ですし)断言は出来ませんが、多分そうでしょう。
 ウィルスメールと言い英語のDMと言い、気分が悪いことばかり続きます。腰の具合も芳しくない上にこんなことが積み重なると、ネットについて負のイメージが強くなってきます。長崎の事件もネットが関係しているということですが、そんな事件が起こっても不思議じゃないような・・・。
「前の騒動で田畑先生が停職プラス減給になって以降、少なくともゼミや学部ではそう思われているみたいです。たまに生協で学食を食べてたり店舗で本を見ていたり、講義室の移動の時なんかに声をかけられるんですけど、その時はこの指輪を見せて、私はこれが示すとおりです、って言ってますよ。」
「・・・つまりは、公言してる、ってことか・・・。」

 指輪を填めている場所が場所だけに格好の虫除けにはなるだろうが、まだ結婚はおろかプロポーズもしていない段階で既成事実を作られるのはな・・・。まあ、晶子の強い要求を受けてペアリングを左手薬指に填めさせて填めたんだし、今の関係を大学時代の思い出にするつもりはさらさらない以上は、晶子がそうしても不思議じゃないか。

「昼休みにそっちの生協の店舗に行くつもりですけど、私の顔は祐司さんの居る学科の人に知られてるんですよね?」
「ああ。写真を見せたからな。今も憶えてるかどうかは知らないけど。」
「時間が時間ですからもしかすると、祐司さんと同じ学科の人と出くわして尋ねられるかもしれませんけど、その時は指輪を見せて答えても良いですよね?」

 外堀は完全に埋め尽くされたな。ここまで来たなら覚悟を決めなきゃなるまい。少なくとも嫌じゃないし。

「良いよ。」
「祐司さんも聞かれたら答えてくださいね。」
「分かった。写真と指輪を見せれば一発だと思うけど。」
「まずは言葉で説明してくださいね。」
「そうする。」

雨上がりの午後 第1554回

written by Moonstone

「こうして指輪を填めている以上、そこまで考えが及んでも何ら不思議じゃないでしょう?」
「先に聞くけど・・・、晶子はゼミや学部で結婚してる、って言ってるのか?」

2004/6/13

[まだ駄目です]
 随分落ち着いてきましたが、まだ時々不規則に、時によっては強く痛みます。勿論、鎮痛剤は服用を続けています。長く座っていられないのが最も致命的ですね。3時間が限度かな?背凭れのある椅子でも腰に負担がかかるらしく、じわじわと痛んできます、これが結構辛いです。
 昨日は平日の睡眠不足解消も兼ねて、昼頃まで寝ていました。買い物には行きましたが、それと食事以外は殆ど横になってました。横になっても痛い時は痛いんですが、先週のように寝返りすら出来ない、というほど酷い状況ではないだけまだましでしょう。
 今日くらいは本格的に作品制作に着手したいんですがね・・・。まだ無理かな?腰痛がこれほど長引いたのは患って以来(記憶にある限りでは)初めてですが、座るにせよ立つにせよ、腰には常に負担がかかる、ということですから、治るまでは大人しくした方が無難でしょう。動けなくなりました、なんて洒落になりませんから。
「ええ・・・。」
「だから、さ。」

 俺は何を言われても構わない。だが、俺のせいで晶子が余計な被害を受けることは絶対にしちゃならない。これは、思いやりとかどうとか言う以前のレベルだろう。少なくとも俺はそう思う。

「私のこと、心配してくれてるんですね。」

 嬉しそうに微笑んでいる晶子を見ていると、俺まで嬉しくなってくる。

「そりゃ心配するし、大切にするさ。俺のパートナーなんだから。」
「パートナーって単語の中には、妻っていう単語も含まれてますか?」

 突拍子もない晶子の問いかけで、俺は思わずむせてしまう。バンドのメンバーと宮城に続いて、本人である晶子の口からも一歩進んだ、否、俺と晶子の左手薬指に填まっている指輪の意味を確固たるものにする単語が出るとは・・・。

「大丈夫ですか?」
「あ、ああ・・・。それよりどうして妻にまで飛躍するんだ?」
「だって、この指に・・・。」

 晶子は鞄を右手で持ち−普段は左手で持っている−空いた左手を見せる。その薬指には、俺の左手薬指に填まっているものと同じ指輪が白銀色の輝きを放っている。

雨上がりの午後 第1553回

written by Moonstone

「えてしてそういうもんだよ。それに、仮に自慢のつもりでそんなこと話したとすると、今日みたいに晶子と一緒に大学へ行ったり、晶子が工学部とかに近い生協の店舗に姿を現した時、俺は兎も角、晶子が大変な目に遭うぞ。お前が電子工学科の安藤祐司と寝た女か、とか詰め寄られたり。そんなの嫌だろ?」

2004/6/12

[散々だな・・・(汗)]
 先週の更新より数が少ないっていうのは私自身納得出来ませんが、場合が場合だけに止むを得ないと割り切って、次回に向けて取り組みを進めた方が良いでしょうね。腰の具合は小康状態が続いています。普通に生活する分にはほぼ支障ありませんが、まだ時折痛みますし、鎮痛剤の服用は続けています。
 とりあえずこの更新を終えたらとっとと寝ます。間違っても悪化させることだけは避けたいので。「雨上がりの午後」に関しては、今後暫く週1くらいのペースで更新していく予定です。いや、連載のストック消費が早い分、かなりNovels Group 3掲載分との間隔が空いて来たので。アナザーストーリーも始めたいですし。
 台風が近付いているらしく、雨風が強いです。昨日は帰宅途中で傘の骨を折られました。自分の骨を折られたわけじゃないのでまだましですが、風で傘の骨を折られたのは初めての経験。朝方まで残るそうですが、早めに過ぎ去って欲しいところです。今年は長雨になるのかな・・・。

「祐司さんの居る工学部って、どんな感じなんですか?」
「どんな感じって言うと?」
「学部の雰囲気とか。」
「そうだなぁ・・・。熱心な奴は熱心だし、だらけてる奴はだらけてる。両極端だな。それに俺の学科は男が圧倒的多数のせいか、女関係の話がよく出て来る。」
「祐司さんは、私のことを話したことはありますか?」
「自分から話したことはない。聞かれて答えたことはあるけど。」
「どうしてですか?」
「聞かれたくないことまで根掘り葉掘り聞かれるのが嫌だから。」
「聞かれたくないことって言うと?」
「どこまで進んだのかとか、彼女のスリーサイズはとか、そんな話題。俺と晶子がこの春に撮った写真を智一に見せた時、智一が大騒ぎしたもんだから学科の奴等が押し寄せて来て、写真の披露会みたいになったんだ。その時、凄い美人と付き合ってるんだな、って異口同音に言われたんだけど、そこからさっき言った、どこまで進んだのかとか、彼女のスリーサイズはとかいう方向に突っ走り始めたんだ。勿論話さなかったけど。俺がこんな相手と付き合ってる、ってことくらいは話しても良いけど、それ以上のことまで話す必要なんてないさ。」
「高校時代のお友達には話したんですか?」
「出逢ったきっかけとかアプローチはどっちから始めたとか、どうやって結婚指輪填めさせたのかとかは聞かれて話したけど、それ以上のことは話してない。幾ら何でも俺と晶子が寝たとか、晶子のスリーサイズとか、そんなことまで教える必要はないだろ?」
「それはそうですね。私の時はせいぜい祐司さんの外見だけ評価されておしまい、だったんですけど、男の人だと相手との交際状況や相手の容姿の詳細にまで話が及ぶんですね。」

雨上がりの午後 第1552回

written by Moonstone

 それにしても、こういう通学って良いな・・・。火曜の朝以外は慌てて駅に駆け込むという毎日だし、土日は殆ど昼まで寝てるし・・・。時間的なゆとりは精神的なゆとりも生み出すようだ。何かにつけてスピードを要求される風潮だが、こういうゆとりがないといけないと思う。

2004/6/11

[な、何事?!(汗)]
 何だか此処のリスナー数の伸びが異様に多いんですけど(汗)。6/9夜にチェックした段階では確か80500強。それが今(6/10 23:00)では85000強。どう考えてもおかしい(汗)。トップページのアクセス数は安定期(?)の数値なのに・・・。一応言っておきますが、ブックマークやお気に入りはトップページ若しくは上位ページ(URLの.org/までの部分)にお願いします。トップページのアクセス数も増やしてね(はぁと)。
 (汗)・・・えー、現状ですが、普通に生活する分にはほぼ支障ない程度まで痛みは治まっています。ただ、痛む時は痛みますし、まだ鎮痛剤の服用が欠かせません。それに特別痛む個所が脊髄ではなくて(うろ覚えですが)腎臓のある部分なので、尚も警戒中です。風邪が発端で腎臓を痛めることもあるそうなので。もしそうだとすると厄介だな・・・。
 メールも掲示板もお返事停滞中ですが(掲示板が特に酷いな・・・)、まずは体調の回復に専念させていただきます。腰の痛みが治まらないことにはどうにもこうにもならないので、ご了承願います。
 俺は薄いブルーのシャツに紺のズボンとブレザー、晶子は白のブラウスにブルーのベストとフレアスカートという服装だ。晶子の耳たぶには俺がプレゼントした、小さなエメラルドがついたイアリングがぶら下がっている。ちなみにポニーテールは解いてストレートになっている。
 それぞれ鞄や財布なんかを持ち−俺の生協の組合員証は晶子の財布の中だ−、二人揃って出たところでドアを閉めて鍵をかける。・・・あ、念のため確認しておくか。大丈夫だとは思うけど。

「晶子。鍵は持ってるよな?」
「はい。」
「俺じゃあるまいし、確認する必要なんてないか。」
「私だって人間ですから、忘れてしまうこともありますよ。」

 晶子は穏やかな笑みを浮かべる。俺は表情が自然と緩むのを感じつつ、ドアの傍に立てかけてある自転車に近付く。鍵を外そうとしたところでふと時計を見る。8時半過ぎ、か。普段なら自転車でぶっ飛ばしていかなきゃならないところだが、今日は十分余裕がある。空は秋晴れという言葉が相応しい色合いを見せている。

「今日は歩いて行こうか?」
「え?良いんですか?」
「時間は十分余裕あるし、晴れの時にのんびり歩いて駅まで、っていうのも良いかな、って思ってさ・・・。どうだ?」
「喜んで。」

 晶子はやっぱり嬉しそうに俺の傍に並ぶ。二人で歩くちょっと遅い、のんびりした朝の風景は、何処となく平穏に感じる。見慣れた風景な筈なのに、気分次第でこうも違うものなんだろうか?そう言えば・・・宮城にいきなり最後通牒を突きつけられたあの日の夜以降暫く見るものが、特に女がどす黒くて醜悪なものに見えたっけ・・・。目に映るものとそれを頭で感じるまでの間に、感情という名の特別なフィルターがあるからだろう。

雨上がりの午後 第1551回

written by Moonstone

 長閑(のどか)な朝飯を済ませた後、俺と晶子は交代でシャワーを浴びてから−昨夜ひと汗かいたからだ−一緒に着替えた。本当は俺が風呂場で着替えるつもりだったんだが、「見せ合っても問題ないでしょ?」という晶子の言葉で方針を切り替えた。勿論カーテンは閉めた。俺だけならまだしも、晶子の着替えを見せるわけにはいかない。これも立派な独占欲なのか?やっぱり。

2004/6/10

[まだ痛いぃ(汗)]
 鎮痛剤の世話になっています。振動を気にせず歩けるようになっただけまだましですが、姿勢を変える動作はまだ辛いですし、疼きます。座る時は背凭れ必須です。まあ、職場も自宅も椅子には背凭れがあるのでその点では救われてますが。
 今度の週末に予定している更新には、あまり期待しないでください。書き下ろしが必要な1作品は確実に落としますし、更新が滞っている他の作品に手をつける余裕はありませんでしたから。肝心の土日にPCに向かうどころか寝返りさえ打てなかった有様では、ね。
 こういう時、一人暮らしは厳しいです。幾ら具合が悪かろうが、自分でどうにかしないことには食べるものも食べられませんからね。食材を仕入れる今度の土日までには治って欲しいんですが・・・。

「普段は祐司さんが読んだものを興味本位で見せてもらってるだけですけど、今日は一度私から読んでみたいな、って思って・・・。」
「・・・それで良いのか?」
「え?」
「いや、雑誌取りに来てもらうだけでも十分なのに、その程度で良いのか、って思ってさ・・・。」
「本来なら祐司さんが買って読む雑誌を先に読めるのも、祐司さんのパートナーである私の特権でしょう?それを使わない手はないな、って・・・。」
「勿論良いよ。」

 俺の承諾に、晶子はこれまた心底嬉しそうに微笑む。言葉は悪いが、その程度で喜んでもらえるのなら、それで良い。

「あと、俺が帰るまでこの部屋にあるものは好きに使って良いから。」
「良いんですか?」
「勿論。CDかけるなり雑誌読むなり。それも晶子の特権だからな。」
「それじゃ、お言葉に甘えて。」

 晶子はやはり嬉しそうに微笑む。俺と一緒に居られること、俺と時間を共有出来ることそのものに喜びや幸せを見出す女・・・。本当に俺は、何て素敵な女神と出逢えたんだろう。その女神が抱えている想いと自分を追い込んだ状況。それを共有して幸せへの階段を一緒に上るのが、俺の特権であり、責任でもある。・・・しっかりしないとな。

雨上がりの午後 第1550回

written by Moonstone

 あまりにも呆気ない依頼で言葉を失った俺の前で、晶子は遠慮気味に言う。

2004/6/9

[この腰痛、しつこい・・・]
 動けないとかいうレベルではないのですが、月曜に処方してもらった鎮痛剤で痛みを軽減している状態が続いています。1日に朝晩の2回飲むんですが、薬の効き目が切れる朝や夜になるとかなり痛みが強くなって、姿勢を変える(立つ→座るor座る→立つetc.)のも一苦労です。
 風邪が「爆弾」を抱える腰に回った結果、だと踏んでいるのですが、このまま1週間経過しても状況が改善しなければ改めて精密検査を受けに行きます。以前、あまりにも酷い腹痛が収まらず、何とか近くの病院に行って診察を受けたらウィルス性腸炎or盲腸だった、ということがあるので、またウィルスにやられた可能性があります。場所が場所なのでちょっと怖い・・・。
 あ、そう言えば此処の延べリスナー数が何時の間にやら80000人突破してますね。ありがとうございます。私が腰痛でぶっ倒れていた前の土日に突破したようで・・・。申し訳ないです。

「私が代わりに引き取りに行きますよ。」
「引き取りに行く、って、俺が注文してる生協の店舗は・・・。」
「場所は分かってますよ。」
「いや、そうじゃなくて・・・。」
「一度、祐司さんが居るところに行ってみたいな、って思って。」

 晶子は少しはにかんだ微笑みを浮かべる。そう言えば、俺は一般教養で晶子の居る文学部をはじめとする文系学部のあるエリアに行ったことがあるが、晶子は俺の居るところ、すなわち理系学部のあるエリアに来たことがないな。縁もないから当たり前、と言ってしまえばそれまでだが。

「・・・俺は昼休みも実験の真っ只中かもしれないから、待ち合わせは出来ないけど。」
「実験の真っ最中なのに出て来てくれ、なんて言いませんよ。昼休みにそっちの店舗に出向いて、雑誌を引き取ったら戻ります。」
「それじゃ・・・、頼めるか?」
「はい。」

 俺は立ち上がってデスクに向かい、置いてある財布から生協の組合員証を取り出してテーブルに戻り、それをテーブルに乗せてずらす感じで晶子に差し出す。これを提示しないと割引制度が適用されないのは勿論、代理の引き取りが出来ないからだ。

「一つお願いして良いですか?」
「何を?」
「雑誌、先に私が読んでも良いですか?」

雨上がりの午後 第1549回

written by Moonstone

 思わず聞き返した俺に晶子が答える。そうだ。今日は俺が毎月買っているギターの雑誌の発売日。普段は昼休みに生協に−生協だと割り引かれる−取りに行くんだが、今月は月曜に重なっちまった。月曜は昼食が遅いし不定期、その上買ってしまうと読みたくなるのが人の性(さが)。

2004/6/8

[とりあえず、沈静化]
 本当は昨日朝一番で薬局に行くつもりでした。しかし、薬を処方するには医師の処方箋が必要で、その時間だと仕事に間に合わない、ということで強行出撃。その時点から拷問確定。今はプログラミングをしているので、基本的にPCに向かいっ放し。時々水分補給のために(飲んでる薬の副作用で口が渇くんです)席を立つ。立ったり座ったりはおろか、歩くのにも神経を配らなければならない状態の私がそんな状況になれば、腰痛が悪化するのは自明の理(汗)。
 定刻を過ぎた時点で激烈な腰の痛みを引き摺って病院へ。病院で待たされること30分。何と長く感じられたことか(汗)。呼ばれて主治医に事情を話してその場で鎮痛剤を貰って服用。その後処方箋を貰って薬局で薬を貰いました。
 今は鎮痛剤のお陰でかなり楽になりました。普通に歩けます。それでも長時間(3時間が限度かな)同じ姿勢を保てませんし、前屈みになるのはちょっと辛いです。主治医からは十分休養を取るように、と言われたので暫く大人しくします。このところなりを潜めていた腰痛がまさかこんな形で「炸裂」するとはね・・・。やっぱり私にとって、風邪は生涯の宿敵です。肺炎で病院送りになったのも風邪がきっかけでしたし。
「これだけ立派なものを並べられると・・・、何か・・・これから一人で朝飯腹に詰め込むのが侘しくなりそう・・・。」
「祐司さん・・・。」
「あ、悪い。こんなことこんな時に言うもんじゃないよな。いただきます。」

 俺は雰囲気を切り替えるべく−自分で持ち込んでおいて何だが−茶を一口啜ってから目の前に並ぶ朝飯を食べ始める。まずは味噌汁。一口啜って程なく良い感じの旨味と味噌の味が口に広がる。最初はやや違和感があった白味噌との混ぜ具合が−俺の実家は赤味噌のみだ−口いっぱいに広がる。

「うん、美味いな。」
「良かった・・・。それじゃ、私も。」

 晶子は、いただきます、と言ってから食べ始める。背景にうっすらと「明日に掛ける橋」が流れる、ゆったりした月曜の朝のひと時。普段時間ギリギリまで寝ていて、朝飯に着替え、荷物の確認、そして出発という慌しい普段の月曜が嘘のようだ。これが夢なら・・・という使い古された言い回しがあるが、今はそれを使いたくてならない。

「祐司さん。」

 ゆったりした雰囲気に浸り切って朝飯を食べていた俺に、晶子の声がかかる。俺は残りの味噌汁を飲んでから顔を上げる。

「ん?何?」
「今日、発売ですよね?」
「え?」
「祐司さんが何時も買ってる、ギターの雑誌。」

雨上がりの午後 第1548回

written by Moonstone

「豪勢だな・・・。」
「祐司さん、今日は体力も精神力も使う実験でしょう?そうでなくても朝御飯はしっかり食べておかないといけませんよ。一日のエネルギー源なんですから。」

2004/6/7

[ぐ、ぐぞぉ・・・]
 結局昨日の更新は断念。結局土日を殆ど寝て過ごしました。その寝ることさえも痛みでままならなかったので、横になっていただけ、と言うべきなんですが(汗)。今日から仕事ですが、その前に薬局で薬を買っていきます。しっかり聞いてくれると良いけどな・・・。「症状が一向に改善しないから病院で精密検査を受けたら入院街道まっしぐら」なんてのは、もう御免だぞ(汗)。でも、そうなりそうで怖い(汗)。
 先に夕飯食べててくれ、と言おうとしたところで晶子が明るい表情で、しかしはっきりした口調で言う。言葉を失った俺は、気が付いたら目の焦点すら合わなくなっていた。俺は晶子に焦点を合わせる。

「実験が終わった時点で電話してください。温める必要があるメニューは、その電話を受けてから温めますから。その方が美味しいでしょうし。」
「いや、俺は・・・。」
「一緒に夕ご飯、食べましょうね。」
「・・・ああ。一緒に食べよう。」

 期待感と幸福感溢れる晶子の顔を目の前にして、懇願とも言うべき念押しまでされたら、こうとしか答えようがない。晶子は心底嬉しそうな笑顔を見せた後、冷蔵庫へ向かう。その足取りも跳ねているという表現がぴったりだ。晶子の月曜の講義は3コマ目で終わる。少なく見積もっても3時間はある。場合によってはその倍以上も・・・。待たせておくのは心苦しい。だが、そこまでして晶子が望むのなら、俺はそれに応えたい。

 1時間後、俺の前に立派な食事が並べられた。ご飯、味噌汁、ハムエッグ−こういう場合、卵焼き付きハム、と言うべきか−、焼いたシシャモ、納豆、そしてお茶。納豆以外は全て湯気を立ち上らせている。

雨上がりの午後 第1547回

written by Moonstone

「そうですか・・・。大変ですね。」
「だから、一段落ついた時点で電話する。あまりにも長引くようだったら・・・」
「私、待ってますから。」

2004/6/6

[うぐぐ・・・]
 こ、腰が痛い・・・。しゃ、洒落にならん、この痛みは・・・。こ、これじゃ、更新は無理・・・だな・・・。明日には治ってると良いけど・・・、期待しない方が良いな・・・。

「今日の実験が終わる時間は予想出来ますか?」

 テーブルの前に行こうとしたところで、晶子が尋ねてきた。見ると、晶子は炊飯ジャーの前に立ってエプロンで手を拭いている。これからご飯を炊くんだろう。

「今まで以上に予想し辛い。長引くってことはほぼ確実だけど。」
「そんなに難しい実験なんですか?」
「先にやったグループからの情報は全部、梃子摺る、っていうものだったんだ。事前提出のレポートを書いてても、実際難しそうだ、って思った。」

 今日の実験は電動機−モーターの和名だ−の特性測定。これも一度測定を始めたら終了までやり直しが出来ないというし−基本的に測定は時間的に連続で行わないといけない−、電動機は半導体並み、或いはそれ以上に癖があって測定し辛いという。その一方、項目は多い。実験が長引くのは必然的だ。
 今までは遅くても9時頃には終わったけど、今日はもっと遅くなるかもしれない。終了した頃には終電過ぎてた、っていうグループもあったらしい。相も変わらずろくに動けない、というか動かない連中を引き摺っている俺のグループじゃ、深夜になっても何ら不思議じゃない。

雨上がりの午後 第1546回

written by Moonstone

 ふと晶子の方を見ると、米を研いでるその横顔が心なしか楽しげだ。それを見ているだけで俺も幸せな気分を感じる。俺はデスクに向かい、鞄の中身を確かめる。実験のテキスト、関数電卓、先週分のレポート、今日の実験の概要を纏めたレポート、グラフ用紙、筆記用具。・・・全部揃ってる。

2004/6/5

[KO中・・・]
 このところの劇的な気温変化に対応し切れなかったらしく、風邪をひいてしまいました。悪化させるわけにはいかないので、グループの更新などは明日付更新以降に延期させていただきます。
 年金法案についてちょっとコメント。「保険料は上限固定」「給付は現役の5割確保」の二枚看板がまったくの嘘偽りだったことが明らかになった以上、廃案が当然。自民、公明両党は論外。廃案を目指す、と息巻いている民主党は自民公明両党と国会外での取引で法案の衆議院通過に手を貸した重大な責任を忘れています。そんな政党に野党を名乗る資格はありません。自民、公明、民主の3党は全員議員を辞職し、国民年金のみで生活せよ。
 ・・・あ、何だ。朝飯の大まかな傾向を聞いてきただけか。

「ん・・・。そうだな・・・。今日の実験は長引くだろうから、腹持ちの良いご飯の方が良いな。」
「それじゃ、そうしますね。ご飯炊くのに時間かかりますから、まだ寝ていても良いですよ。」
「二度寝してしまうかもしれないし、晶子が料理してる間暢気に寝てるのも何だから。」

 俺はベッドに腰掛けて、下着とパジャマを着る。キッチンの方から何やら砂を擦り合せるような音がする。見ると、晶子がボウルに手を入れて掻き混ぜている。あ、米を砥いでるんだな。そう言えば、月曜の夜晶子の家で夕食をご馳走になる時にはご飯は炊けてるから、米を研いでるところはあまり、否、殆ど見たことないな・・・。ああやって毎日、自分で米を研いで炊いてるんだろうか。このくらいの時間に起きる、って言ってたから、多分そうだろう。
 晶子が朝飯の準備をしている間ぼうっとしてるのも何だな・・・。とりあえずカーテンを開ける。目に飛び込んでくる朝日が眩しい。CDでもかけるか。コンポの電源を入れると、少ししてCDプレイヤーの表示が出る。あ、昨日寝る前CDを取り出さなかったっけ。全曲リピートに設定してから再生ボタンを押す。「明日に掛ける橋」がうっすらと流れ始める。まだ朝早いし−少なくとも俺には−、外も静かだし、近所迷惑になるからこれくらいが丁度良いだろう。

雨上がりの午後 第1545回

written by Moonstone

「あ、何?」
「ご飯が良いですか?パンが良いですか?」

2004/6/4

[さあ、見解発表開始(3)]
 ふう、何とか泥沼から這い出た(安堵)。条件式一つでああも動作が変わるというのは、プログラミングの難しいところですな。それじゃ、昨日の続きと行きますか。

 (続きです)「選択肢が多いことが民主主義の成熟度を示す」ともいわれるが、その観点からも、2通りの選択肢のうち1つが圧倒的多数で半ば自動的に「選定」される現状下で、実生活や精神的に大きな矛盾や苦痛を感じる人に「新たな選択肢」を提供できるのであれば、選択的という条件を付加した形での夫婦別姓制度は大いに賛成であるし、早く実施されて然るべきものだと考える。
 しかし、私は夫婦別姓制度に無条件に賛成することはできない。私がこの問題が世間に広まる以前から抱いてきた、「夫婦別姓制度そのものは賛成だが、同姓にする人に圧力が掛からないか」という疑問が消えないのは、「夫婦別姓こそ男女平等の証明」「男性は改姓に伴う『家』や『墓』の心配はないから反対する」「夫婦別姓に反対するのはおかしい、遅れている」というような主張が度々「無条件推進派」から聞こえて来るからである。そのような姿勢で夫婦別姓制度を推し進めるなら、敢えて待ったをかけなければならない。
 1980年代から夫婦別姓を含む民法の改正を提唱している日本共産党の木島日出男衆議院議員(当時)は、「別姓を望む夫婦というのは、お互いに相手の姓、立場を大事にしようという思いからそうする」「むしろ夫婦の絆を強めようという意志のあらわれ」(「女性のひろば」1998年1月号p12)、「多くの国民が家庭崩壊に胸を痛めて」いることは「同姓を強制することで解決できるものではありません」(同)と述べている。これには異論を挟まざるをえない(続く)。

「俺はしょっちゅう夜更かしするくせに朝早いから、こういう癖のあるやつじゃないと駄目なんだ。それでも眠気眼(まなこ)でスイッチ操作して止めて二度寝するから、朝大慌てするんだけどな。」
「今日はすんなり起きられましたね。」
「早く寝たからな・・・。」

 仰向けのまま黙った目覚し時計を枕元に戻して俺が言うと、隣で、否、俺の肩口でうつ伏せになっている晶子が微笑む。

「・・・おはよう。」
「おはようございます。朝御飯作りますね。」
「ああ。」

 晶子は俺の頬に軽くキスしてから上体を起こす。それに伴って掛け布団が一部捲れる。10月も後半になると夜はそれなりに冷える。一頻りキスした後、晶子が俺から唇と身体を離して掛け布団を被った。そして晶子が俺の肩口を枕にして間もなく眠りに落ちた。
 晶子はベッドに腰掛けて下着とパジャマを着る。ボタンを全て填め終えると、半分ほど前に流れていた髪をかきあげる。茶色がかった髪が一瞬ふわりと宙に舞った時に虹色の輝きを残して背中側に流れ落ちる。その穏やかな横顔も相俟って本当に女神のようだ。俺が見詰める中、晶子はすっと立ち上がってデスクの方へ向かう。
 朝飯作るんじゃないのか、と俺が思う一方、晶子はデスクの脇にしゃがみ込んで何やらごそごそする。俺からは背を向けている格好だから何をしているのか分からない。すると晶子は両手で髪を束ねて、それを左手で持つと右手を前に持っていき、再び後ろに戻す。その後の動作を見てようやく分かった。髪をポニーテールにしていたんだ。忘れてないな。
 それで終わるかと思ったら、晶子はまだ立ち上がらずに何やらごそごそする。少しして晶子は立ち上がり、それを「装着」する。エプロンを着けた晶子はキッチンの方へ向かう。いよいよ朝飯を作るんだろう。俺も服を着るか。

「祐司さん。」

 俺が上体を起こしたところで、不意に晶子の声がかかる。

雨上がりの午後 第1544回

written by Moonstone

 俺は晶子の手から目覚し時計を取って、まず頭のスイッチを押して音を止めてから裏側のスイッチをずらす。

2004/6/3

[さあ、見解発表開始(2)]
 あうあう、プログラミングはどつぼに嵌まったままだし、連載は枯渇してるし(汗)。あ、今日のSide Story Group 1の更新内容へのリンクがない、という方は、「魂の降る里」を第1章から全てお読みください。そうすれば自ずと分かる筈です。では、昨日の続きをば。

 (続きです)また、現行の民法では結婚時に夫婦どちらかの姓を選べる(というより統一する)ようになっているが、97%以上が夫の姓になっているということは、必然的に女性の殆どが結婚と同時に姓が変わり、そこでこれまでの自分とこれからの自分に有形無形の断絶が生じる。特に個人名が前面に出る職業、例えば弁護士や税理士、研究者や技術者、芸術家といった「資格職業」や「経歴職業」、自由業に就く人には、姓を重要視する日本社会における改姓は、男性女性を問わず、経歴や実績の重大な断絶を招くことに繋がる。
 日本で名前よりも姓が重要視される傾向が強い。呼称ひとつを採り上げても、普段の生活で「○○さん」と呼ぶときは殆どの場合、姓が使われる。ここで名前を使うのは余程親密な間柄だけが許されるのであり、付き合いの浅い段階で使おうものなら「馴れ馴れしい」「生意気」という印象すら与えかねない。それだけ姓は日本人にとって重要なのであり、それを変更することに大きな問題が生じるのは必然的ともいえる。これは通称使用で解決する問題ではないし、通称にしても使用できる範囲は地域や状況によってかなり制限されているのが現状である。「通称使用でよい」と述べるなら、通称使用の範囲を拡張するように役所や企業などに働きかけるべきである。
 夫婦や家族、そして姓の問題は価値観的命題の一つである。夫婦や家族は同姓でこそ一体感が保てるというのも一つの価値観であるし、夫婦や家族は姓が違っても強固な関係は構築できるというのも然り。また、個人を取り巻く状況も大きく異なる。価値観的命題に対して千差万別の回答が提示されるのは当然だろう。そんな命題に関してある「模範」回答を法律という強制力を伴う形で強要することそのものが誤りであるし、条文化されてなくてもまた然りである。だから現行の「夫婦は同姓であるべき」というのは勿論、「夫婦は別姓が当然」というのを他人に強要するのもおかしい(これに関しては後述)(続く)。
 俺は晶子の背中に回っていた右手をその頬に触れさせる。晶子は目を閉じて愛しげに頬擦りする。

「初めてですね。」
「何が?」
「祐司さんの方から仕掛けてくるのって・・・。」
「たまには良いだろ?」
「たまに、よりも頻度を上げて欲しい・・・。」
「そうしたいとは思うけど・・・、晶子には女特有の事情があるし、その気にならない時だってあるだろ?」

 晶子は俺の問いに、少し間を置いてから遠慮気味に小さく頷く。

「女の性欲ってのは想像の域を出ないから断定は出来ないし、変な言い方だとは思うけど、こういうことは条件が複雑な女の方が準備OKの時に男に合図を送ってくるようにした方が良いと思うんだ・・・。殆ど毎日したい盛りの男の方から仕掛けて女が断ったら男は怒るか、そうでなくても不満に思う。それが積み重なると・・・待っているのは破局だ。それだけは絶対嫌なんだよ、俺・・・。晶子との今の絆を失いたくないからさ・・・。」
「私も失いたくないです・・・。絶対・・・。何としても・・・。」
「今日は晶子が準備OKの合図を送って来たし、俺が確認した時もOKしたから、俺の方から仕掛けたんだ。これからも・・・それで・・・良いんじゃないか?」

 晶子は微笑みを浮かべてゆっくり身を沈めて来た。その動きに合わせて目を閉じている。何をするつもりなのかくらいは分かる。俺は目を閉じて「それ」を受ける。唇に柔らかくて温かいものが触れる。そして頭を抱きかかえられる。気持ち良い・・・。こうしているだけで眠ってしまいそうだ・・・。それも良いな・・・。

Fade out・・・

 ・・・ピピッ。ピピピッ。ピピピッ。
何処からか音が聞こえてくる。・・・あ、この音は・・・。

「ん、あ・・・朝?」

 俺の直ぐ傍で霞がかかった声がしたと思ったら、それが動く。俺は眠気が残る目を擦る。隣で晶子が音量を増した目覚し時計を手にしてまごついている。頭に色違いの部分があるから−それがスイッチだ−それを押せば止まることは察しがついたようだが、止めても少し間を置いたらまた鳴り始めるからだろう。

「そいつの音を消すには、こうするんだ。」

雨上がりの午後 第1543回

written by Moonstone

「記念になったか?」
「ええ、十分・・・。」

2004/6/2

[さあ、見解発表開始(1)]
 うー、プログラミングがどつぼに嵌まっちまった・・・。んじゃ、昨日の公約どおり、見解の発表を始めます。テーマは「夫婦別姓について−賛意に敢えて苦言を付す−」です(長いな・・・)。現国会(参議院段階)に提出されている民法改定案に含まれる夫婦別姓制度についてです。

 「夫婦別姓になると家族の一体感が破壊される」という「反対派」の主張は完全に破綻している。「夫婦別姓=家庭の崩壊」ということは即ち、「夫婦同姓=家族の強固な一体感」となるのだろうが、では何故夫婦同姓の日本で離婚や家庭内別居、果ては親殺し、子殺しといった家庭崩壊が頻発しているのか。
 また、儒教の「女性は男性の家に入ることはできない」という考えが根強い韓国では夫婦は別姓だが(時折「韓国のような男尊女卑の根強い国でも夫婦別姓がある」というような主張があるが、全くの的外れであるばかりか、心の何処かに韓国に対する蔑視感情があると推測される)、夫婦や家族の一体感は強固である。
 国会図書館が夫婦の姓に関する法令や判例、慣習法について40カ国25地域について調査した結果では、34カ国が夫婦別姓を認めている。夫婦別姓を法的に認めている国でも、或いは日本のように夫婦別姓が法的に認められていない国でも、強固な絆を持つ夫婦や家族もあればその逆もある。日本においても結婚して姓が変わったらもはや親子ではない、赤の他人になるかと考えればこれも違う。やはり親子は親子である。これらのことは姓の一致や不一致では合理的に説明できない(続く)。
 応答こそ返したもののまったく動く気配がないところからして、もう力が入らない、否、力そのものがなくなったんだろう。俺は自分と晶子の身体に隙間に挟まれる格好になっていた両手を抜いて−胸を掴んでいたからそうなったんだが−、晶子を優しく抱く。

「このままで・・・良いですか?」
「何で?」
「・・・重いでしょう?」
「全然。」

 晶子は一向に動かない。やはり力を使い果たしたようだ。かく言う俺も、続行出来る体力なんてありゃしない。こうして晶子を抱くのが精一杯だ。今回も双方全力を使ったものになった。夏休みの終わりに「別れずの展望台」へ行った後から数えて約二月。随分間隔が開いたようにも思えるし、随分「せっかち」なような気もする。まあ・・・そんなことどうでも良いか。
 このまま意識をなくしてしまっても不思議じゃない。明日は実験だから尚のこと遅刻は出来ない−別に普段の講義は遅刻欠席し放題って意味じゃない−。俺は晶子から両腕を離し、枕元を探る。えっと、あれは・・・、あった。右手にあるものの感触を感じた俺は、それ−目覚し時計−を掴んで顔の近くまで持って来る。そしてベルが鳴る時間を普段より1時間ほど早くしておいて・・・。これで良し。ベルが鳴るようにスイッチをセットしてから枕元に戻し、再び晶子を抱く。耳元で聞こえる呼吸音は幾分落ち着いてきている。

「朝、6時半で良いか?」
「私は構いませんけど・・・祐司さんは?」
「今日は早く寝られそうだから、良い。普段、このくらいの時間に起きてるんだろ?」
「ええ。朝御飯作りますから・・・。」
「晶子の作った朝飯、ゆっくり食べたい。」

 俺の頬に柔らかいものが触れて離れていく。何をされたかくらいは分かる。普段ならちょっと、否、かなり狼狽するところだが、今は心地良く感じるだけだ。俺に覆い被さっていた重みが軽くなっていくと同時に、闇の中に白い稜線が浮かび上がってくる。晶子は両肘を俺の脇について俺を見詰める。その身体はさっきまでの激闘の余韻を周期的な揺れで表現している。

雨上がりの午後 第1542回

written by Moonstone

「・・・大丈夫か?」
「ええ・・・。な・・・何とか・・・。」

2004/6/1

[ぶるー・わーるど]
 ・・・平仮名で書くと、何だかコミカルな印象(笑)。さて、本日から6月。私のペンネーム(andハンドルネーム)の由来である月長石(moonstone)が誕生石の月で、紫陽花や菖蒲が咲く季節です。・・・一方で一部地域を除いて曇りや雨の日が続いて湿気も高くなるという、苦手な方にとっては地獄のような「梅雨」という時期でもありますね。母の話では、私が生まれた日はもの凄く暑かったそうですので、暑さに耐性があるのはそのせいもあるのでしょうか。その分寒さには極めて弱いですけど(^^;)。
 背景写真は1週間単位で変更していきます。まず最初は蒼の紫陽花。紫陽花と菖蒲が交互に登場します。ちなみに上位ページ(トップページのURLから/pacを取った.org/までの部分です)の背景も変えました。先月サボって変えなかったので。本当は「梅雨の境の青い空」を考えていたんですが、水中になってしまいました(汗)。ま、まあ、これはこれで良いでしょう(大汗)。
 それはそれとして、明日からこの欄で何回かに分けて見解を発表するつもりです。文章そのものはかなり前に出来ていたんですが、今まで公開することなく眠り続けていたものです。今の国会(厳密には参議院段階)にも提出されていて、これまでも何度か提出されたある法案に対するものです。纏まったらこのウィンドウ最上段の「見解・主張書庫」に収録しますので、お楽しみに。
 俺は晶子にキスをする。唇の感触と温もりを確認してから身体を起こす。それと共に首の拘束が解ける。隙間が大きくなったパジャマからは、胸の膨らみがはっきり見える。なまじ完全に見えない分、余計に魅惑的だ。俺は徐に両手をパジャマに伸ばし、隙間をそっと開いてそのまま脱がせる。晶子は何の抵抗もせずに身体と腕を動かす。
 最後は・・・下半身の一部を覆う白い布だけ。チラッと晶子の顔を見る。目を閉じて唇が少し開いている。手を動かす気配はまったくない。俺の心の何処かに僅かながらあった迷い−恐怖心と言うべきか−が消える。俺は晶子の下着に手を伸ばし、手前へ引っ張る。その動きに合わせて晶子の腰と足が動く。
 パサッという音を聞いた後、俺は身を沈めて晶子に覆い被さる。そして唇を首筋に、左手を胸に、右手を下側へ持っていく。最も距離が短かった首筋に唇を触れさせると、甘い吐息が漏れる。左手にそれが持つ独特の柔らかさが伝わると、くぐもった声が浮かぶ。右手がそこにふれた瞬間、あっ、と小さな有声音が浮かび、俺の下側にある身体がびくんと揺れて、呼吸音の周期が更に早まり、そこに呼吸に伴う無声音が加わる。

「晶子・・・。」
「祐司・・・さん・・・。」

 俺の呼びかけに、晶子は荒い呼吸の中に応答を織り込む。再び首筋に唇を付け、止めていた右手の動きを再開する。呼吸音の中に色々な声が不規則に混ざってくる。興奮しているのは間違いない。もう止まらない。止められない。止めたくない。止めるもんか。

・・・。

 絶頂に達した俺の身体が強張る。それとほぼ同時に小さな叫び声が浮かぶ。俺の身体の硬直が解け、両腕に篭っていた力を抜くと、それが支えていた白い幹が倒れこんでくる。僅かな光を受けて仄かに煌く長い茶色の髪を広げて、晶子は俺に覆い被さる。耳元で早くて荒い呼吸音が聞こえる。

雨上がりの午後 第1541回

written by Moonstone

 胸の膨らみをゆっくり揉み解していると、早くて小さくて洗い呼吸音が耳元で聞こえる。俺の首に再び腕が回って引き寄せられる。晶子の頭が俺の唇の動きに沿って動く。呼吸音だけが暗闇の世界に響く。

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