芸術創造センター こぼれ話
Dropped talk of Performing Arts Center

2004年1月31日更新 Updated on January 31th,2004

2004/1/31

[月日経つのが早くなる〜♪(歌うな)]
 何だか年々そういう思いが強くなってきています。ついこの前自宅に戻って仕事も再開したと思ったら、あっという間に今週も終わり。しかも今日は月末。平日はバタバタ、休日はぐったり。振り返ってみると今月はその繰り返しでした。お陰で更新も小規模なものばかりで、期待されている方には(居るのか?)には申し訳なかったです。来月にはいよいよ「あれ」を始めるつもりですので、連載読者の方やNovels Group 3のファンの方は更新チェックをお忘れなく。何時始めるか分かりませんので(ま、予測出来るかもしれませんが(苦笑))。
 それにしても、3日間久しぶりに熱く語った余波で、連載のストックかなり使っちゃったなぁ(汗)。特に今週はあまりストックを増やせなかったので冷や冷やしてます。まあ、ストックが尽きたら尽きたでそのとき書き下ろせば良いんですけど、平日だと仕事疲れでなかなか、ね(^^;)。高々2、3kB。多くても4kBいくかいかないかの量でも、テキストだとかなり時間かかるんですよね。こういう時さっさとイラストが描ければそれを貼り付けておしまい、という「荒業」も出来るでしょうが、それだと日記にならないような・・・。
 日記があるページって、毎日更新でなくても巡回コースに組み込んだりしませんか?私の巡回コースにも日記を毎日、そうでなくても頻繁に更新されているページが幾つかあります。そのページの管理人様にその日どんなことがあったのか、今日は何を書いているんだろう、とかかなり期待してます(笑)。譬えテキスト主体の見た目地味なページでも、「生きている」ことがはっきり分かるページというのは見る側としても楽しいですし、末永く続けていって欲しいです。このページもそんなページでありたいものです。
そして演奏と同時に歌声が終わる。フレットの方に向けていた顔を上げようとしたその時、頬に柔らかいものが触れる。一瞬何が起こったか分からなかった俺の目に、笑みを浮かべながら身体を引く晶子が映る。周囲から拍手と共に口笛が飛んで来る。や、やられた・・・。俺は感触が残る頬に手を当てる。晶子は少し首を傾げて悪戯っぽい笑みを浮かべている。

「・・・狙ってたな?」
「さあ。」

 晶子はしれっと俺の追及をかわす。きっと、否、絶対狙っていたに違いない。曲の終わりと同時にタイトルどおりのことをするつもりだったんだ。俺は未だ感触が残る頬に手を当てながら、苦笑いと照れ笑いがごちゃ混ぜになった笑顔を浮かべる。

「嫌ですか?こういうのは。」
「嫌じゃないけどさ・・・。その・・・何て言うか・・・。周囲の状況を考えて、と言うのか、此処は俺の家でも晶子の家でもないんだぞ、と言うのか・・・。」
「唇の方が良かったですか?」
「いや、だからそういう問題じゃなくて・・・。」

 参ったな・・・。照れ隠しのつもりで、何するんだ、とか言おうものなら晶子を悲しませることくらいは俺でも分かる。だけどなぁ・・・。宮城と付き合っていた時はデートのときはおろか、雨の日に相合傘で登下校するだけでも十分冷やかしの対象になっていたから、キスどころか手を繋ぐのもままならなかった。だからこれだけの人だかりの前で−量の問題じゃないが−仲の良さを見せつけることに慣れてないんだよな。
 俺は言葉に詰まって、空いていた右手で頭を掻いて誤魔化す。晶子は俺のそんな様子が面白いのか、目を細めてくすくす笑っている。晶子が策士だということを忘れていた俺の負けなのか?こういう場合。

「折角ですから、もっと私達のことをアピールしましょうよ。」
「何が折角なんだか・・・っ!」

 俺が言いかけたところで晶子が俺の頬に両手を添えて、一気に自分の方に引き寄せる。頬の感触が消えたと思ったら、今度は唇により明瞭な感触が生まれて、仄かな温もりと共に伝わってくる。耳に流れ込んでくる音が完全に遮断される。目には目を閉じている晶子しか映らない。

雨上がりの午後 第1425回

written by Moonstone

 いよいよラストに差し掛かる。どちらかが相手に合わせるのではない、ごく自然な二人三脚のゴールがどんどん近付いてくる。

2004/1/30

[とうとうやっちまったか(3)]
 うー、一日英語と睨めっこは結構しんどいな(汗)。そんじゃ昨日の続きをば。

 「戦闘地域には送らない」「武力行使はしない」と言います。しかし、現地の米軍司令官が「イラク全土が戦闘地域」と公言し、現にイラク全土で米英主導の占領軍はおろか、民間人をも巻き込むテロや武力衝突が発生している現状で「戦闘地域」「非戦闘地域」の線引きなど出来る筈がありません。戦争をしたがる割には戦争の実態を知らない辺りに、実際に戦場に行かない人間の思い上がりと傲慢さが垣間見えると言うものです。
 武力行使はしない、というのも大嘘且つ虚構に過ぎません。前述のとおりイラク全土が戦闘地域で、しかも今のイラクの治安情勢はフセイン政権時代より悪化しています。「テロとの戦い」を言いながらそのテロにやられ、「掃討作戦」と称して民家への乱入や民家そのものの破壊、一般市民の拘束をしてイラク国民の怒りと憎しみを増長させているのが米英主体の占領軍なのです。国連や赤十字の事務所まで巻き添えを食って撤退を余儀なくされ、NGOなどの支援も困難な情勢にしている占領軍と行動を共にする自衛隊が、どうして戦争に巻き込まれないと断言出来るでしょうか。これも実際に戦場に行かないで椅子にふんぞり返って日の丸を振り回すだけの右翼軍国主義、日米同盟絶対主義者の思い上がりと知略の欠如が垣間見える主張と言えます。
 そもそもイラク特別措置法には、「安全確保支援活動」として占領軍の支援が明記されているのです。言い換えれば、米英主体の占領軍と一緒になって、イラク国民の生活と人権を侵害することを宣言しているのです。法に明記してある以上は言い逃れ出来ません。このように、違法、不当な侵略戦争に続く占領(これは過去の政府答弁で「交戦権の行使」に当たると言っている)に手を貸すことは、日本国憲法は勿論のこと、イラク国民も国際法も踏みにじる暴挙以外の何物でもありません。

 他にも重大な問題があるのですが、それは後日「見解・主張書庫」に掲載する際に追記することにします。「戦争に巻き込まれたらどうするか」を考えるのではなく、戦争に手を貸さないことを考え、実行することこそ、過去の侵略戦争で多くの人命を奪った痛苦の反省を基にした憲法を持つ国のするべきことではないでしょうか。今からでも遅くはありません。「自衛隊のイラクからの撤退」の世論を大きく強くしましょう。そして戦争内閣の即時退陣を求めていきましょう(おわり)。
俺はボキャブラリーが貧困だから、そんな感じ、という曖昧な表現しか出来ないし、そう思うのは好きな相手に対する見方や考え方なんかが変わったせいなのか、それとも別の要因なのかは分からない。

「今度は私が尋ねますね。」
「ああ。」
「祐司さんは、どうしてあの曲をレパートリーにしないか、って私に言わなかったんですか?」
「・・・晶子だけに聞いて欲しい、と思ったから。」
「どうしてですか?」
「きっと・・・晶子と同じ理由だと思う・・・。」

 そうとしか言えずに笑みを浮かべる−苦笑いと言うべきだろうか−俺に、晶子は微笑みだけを返す。心底嬉しそうな微笑みを・・・。晶子以外の人間に聞かせてしまったのは残念だが、場所が場所だけに仕方ないと思うべきだろう。晶子が喜んでくれて、しかも一緒に歌ってくれて凄く嬉しいし、幸せだ。それで十分なんじゃないか?

「もう一回だけ、リクエストしても良いですか?」
「ああ、良いよ。」
「『Kiss』、弾いてください。」
「あれは弾き語り用にアレンジも何もしてないぞ。」
「良いんです。今度は私が祐司さんのために歌いますから。」

 晶子の大きな瞳が輝いて見える。晶子が歌うと言うなら弾かないわけにはいかない。俺は三度右手を弦に添える。するとやっぱりというか、周囲のざわめきが消えていく。完全にギャラリーと化してるな。まあ良い。俺は左手の位置を合わせて晶子と見詰め合う。その顔は何時でもどうぞ、と言っているようだ。俺は曲のテンポで首を小さく縦に振る。1、2、3、4。
 演奏を始めると同時に晶子の歌声が流れ始める。「Time after time〜花舞う街で〜」の時の、俺の歌声に添えるような控えめな音量ではないが−叫んでいるわけは決してない−、店のステージや晶子の家と違って無限に広がる臨時かつ特別のステージでは、俺のギターと同じく音量はやはり相対的に小さくなる。だが、晶子の声はよく通る。隣に居ることだけが理由じゃない。晶子の声質に拠るところが大きい。
 周囲から手拍子は起こらない。手拍子をしたら聞こえなくなる、と思っているんだろうか。まあ、手拍子に邪魔されて晶子の歌声が聞こえなくなるよりは良い。人の手で汚されたことがない、譬えその存在を見つけ出したとしても手を付けることが憚られる神聖さを漂わせる泉のように透き通った歌声が、俺の耳に心地良く注ぎ込まれる。お陰で気持ち良く演奏出来る。
 俺は演奏しつつチラチラと晶子を見る。晶子は俺の方を向きながら、本当に晴れやかな顔で歌っている。プロの女性ヴォーカリストのプロモーションビデオを見ているようだ。しかし、俺の目に映る晶子はブラウン管や液晶に映る、決して触れることが出来ない存在じゃない。手を伸ばせばしっかり届くところに居る。胸に染み透る歌声もスピーカーやヘッドフォンというある種のフィルターを介したものじゃない。生(なま)、と言うと文字どおり生々しいが、俺と晶子の間にある空気だけを通して聞こえるものだ。

雨上がりの午後 第1424回

written by Moonstone

 晶子と付き合っている今は不思議とそうは思わない。凄く好きじゃないのか、と問われれば勿論迷わず凄く好きだ、と答える。だが、晶子の場合はむしろ見せびらかしたいって言うか・・・、そんな感じだ。

2004/1/29

[とうとうやっちまったか(2)]
 (昨日の続きです)「(自衛隊を出すことは)国際社会の一員としての責任」と言います。しかし、イラクに軍隊を派兵している国は米英両国を含めて36カ国(日本を含めれば37カ国)。国連加盟国191カ国の約1/5、国連安保理理事国15カ国に絞れば5カ国、1/3と少数派なのです。
 しかも派兵している国はアメリカと同盟関係にあるか(NATO(北大西洋条約機構)加盟国のイギリスやデンマークなど)、アメリカの経済、軍事支援を頼っているか(旧ワルシャワ条約機構加盟国の東欧諸国など)、アメリカの圧力に屈したか(日本など)のどれかです。しかも派兵した国でも、自国の兵士がテロや抵抗活動の標的にされて死亡する事件が起こって、国内で撤退世論が高まっている(オランダや韓国など)のが実情です。
 それに世界の多数を占める非同盟諸国(ASEANなど)やイラクと同じイスラム諸国の圧倒的多数は派兵を拒否し、国連中心の復興に切り替えることを主張しています。「国際社会の一員」を言うなら、米英の違法無法を諌め、国連中心の外交活動に動くのが道理ではないでしょうか。
 小泉首相はこともあろうに自分が「変更」を目論む日本国憲法の前文を引用してイラク派兵を正当化しました。日本国憲法の目指す「名誉ある地位」はアメリカの言いなりになって軍隊を出す従属国家ではありません。国際社会で多数派である国連憲章を守り、国連中心で動く多極化世界における異なる文明の共存共栄を牽引する国家像です。
 改憲を公言しながら都合良く憲法を引用して、憲法違反の存在である自衛隊を憲法違反の武力行使、交戦権行使に向かわせるのは、自国の最高法規である憲法より日米同盟=日米安保条約を優先させているからに他なりません。これが従属国家でなくて何でしょうか(つづく)。
「祐司さんが帰ってからパソコンで日記をつける時にBGMを流してるんですけど、あの曲はリピートさせて何度も聞いてたんですよ。歌詞が凄く好きで・・・。だから何時の間にか憶えちゃったんです。何度も聞いていれば憶えて当たり前と言われればそうなんですけどね。本当はレパートリーに加えたかったんですけど、アレンジや演奏データ作りをしてくれる祐司さんにこれ以上負担をかけるわけにはいかない、と思って言わなかったんです。」

 そうだったのか・・・。気遣ってくれてたんだな。確かに耳コピーのみでのアレンジとデータ作りは結構手間がかかる。何回も聞かなきゃならないし−数回聞いたらすらすら作れるというレベルじゃないからな−、確認のために楽譜を入手しようにも出版されるまでに時間がかかるし、必ずしも目的のアルバムの楽譜が出るとは限らない。それに楽譜を買う金があったら俺はギターの弦を買う。
 だけど、晶子が歌いたい、って言うなら、俺なりに時間の分配を考えて、必要なら睡眠時間を多少削ってでもデータを作る。俺も定期的にとはいかないまでもレパートリーを少しずつ増やしていってるし−最近はそうでもないかもしれないが、店の客は常連の比率が高いからレパートリーに変化がないと飽きられる−、今までも晶子のレパートリーのデータを作ってきたんだから、遠慮なく言えば良かったのに。

「それに・・・。」

 晶子は何か言いかけたところで口を閉ざし、見ているだけで心和む柔らかい笑みを浮かべて俺を見詰める。

「それに?」
「レパートリーに加えたい、っていう気持ちがあったのは確かですけど、一方ではレパートリーにしたくない、とも思っていたんです。」
「どういうこと?」
「何て言うか・・・、聞いているうちに、この曲をお客さんの前で歌うのは惜しい、っていう気がしてきて・・・。」

 晶子はそう言って俺に微笑んでみせる。凄く好きになったからこそ逆に人前で披露するレパートリーの一つにしたくなくなった、っていうわけか・・・。その気持ち、分からなくもない。こんなことを例えに挙げるのは晶子に悪いが、宮城と付き合っていた時は、出来ることなら宮城を他の男の前に出したくない、と思っていたからな。

雨上がりの午後 第1423回

written by Moonstone

「歌も上手かったですよ。私が歌ったのは邪魔でしたね。」
「否。歌詞みたいに一緒に歌えて良かったよ。練習してたのか?」

2004/1/28

[とうとうやっちまったか(1)]
 別に私が疲れと眠気に負けてまたしても寝起きでこのお話をすることになったことではありません(これはこれで問題だが)。1/26、とうとう小泉自民・公明政権は自衛隊をイラクに本格派兵する道に踏み出しました。
 「復興支援のため」と言います。しかし、元々米英軍によるイラク戦争自体が国連安保理の承認を得ずに(得られなかった)一方的に仕掛けた、国連憲章違反の侵略戦争です。その戦争で荒れ果てた他国を復興するのは、違法な戦争を仕掛けた米英の責任で行うべきことです。100歩譲って復興支援だとしても、違法な戦争に続いて占領を続ける米英軍の手助けをするために軍隊を出す必要などありません。
 自衛隊が日本国憲法違反の存在であることは言うまでもありませんが、これまで少なくとも建前上は専守防衛、言い換えれば攻められた時の対抗手段としてのみの存在だった筈です。しかし、今回のイラク派兵においては、米英主導のCPA(連合暫定当局)が日本政府に当てた書簡で、法的にも米英軍の指揮下に入って行動することが明記されています。更にイラク特別措置法案でも「安全確保支援活動」として、米英軍に対するイラク国民の抵抗活動鎮圧支援など、文字どおり米英軍の尻馬に乗ってイラク国民に銃口を向ける活動が明記されているのです。「復興支援」なのに重武装の軍隊を送り込むのはそういう背景があるからです(つづく)。
まったく予感がなかったといえば嘘になるかもしれないが、それに覆い被さるように存在した、その時には精一杯のものだと思っていた愛をある日突然失い、鉄条網で囲われた暗雲立ち込める廃墟と化した、否、自分でそうした俺の心を再生させてくれた晶子に、歌詞のとおりであって欲しい、という願い。寄り添うような歌声を広げる、俺の隣に居る幸せそうな晶子にこの願い、届くと良いな・・・。
 ブックレットに載っている歌詞を歌い終えた俺は、晶子にしか聞こえないような無声音でコーラスを口ずさみつつ最後のフレーズを奏でる。このコーラスはそれこそ脳裏に焼き付くほど何度も聞いて、何とかそれらしく聞こえるようにしたものだ。晶子にしてみればあまりに不恰好な小細工だろうが。
 最後をギターらしい発音のずれが起こるダウンストロークで締める。音が晩夏の空気に溶けて消えた後、俺はやや猫背になっていた背筋を伸ばして小さい溜息を吐く。と同時に、晶子が嬉しそうな笑顔で拍手してくれる。それをかき消すように周囲から拍手の波が押し寄せてくる。俺はそれを頭の中のフィルターで遮断して、晶子の拍手だけを耳に集める。

「へえー、弾き語りも出来るんだー。」
「今のって倉木麻衣の歌だよな。それにしちゃ声も結構ハマってたな。」
「やっぱ、プロなんじゃないか?」
「それっぽいよね。様になってたもん。」
「見た目かなり若いけど、結構年期積んでるんじゃない?バンドやってるとか。」

 周囲が色々言っていることを右から左に聞き流し、拍手を止めた晶子に目で感想を求める。

「まさか此処であの曲が聞けるなんて思わなかったです。それも歌まで・・・。私、あの曲大好きなんです。」

 晶子は俺からの無言の求めに応じて笑顔を崩さずに言う。良かった。気に入って貰えて・・・。晶子が大好きな曲だったなら尚更だ。

雨上がりの午後 第1422回

written by Moonstone

 歌詞もいよいよ最後になる。ここは俺から晶子へのメッセージと言うより、あまりにも脆くて儚い−自分で言うのも何だか変だが−俺から晶子への願いと言うべきだろう。

2004/1/27

[ZZZ・・・]
 薬飲まなきゃ眠れない(そのとんでもない事態は先週嫌と言うほど思い知らされた)。でも薬飲むと眠気が続く。仕事は今割と暇な状況なので資料を読んでいたのですが眠気との闘いが高い比重を占め、帰宅してからは結局殆ど寝てしまいました(「名探偵コナン」は見た)。このお話も寝起きでしています。
 前の週末も一言で言えば「眠気に負けた」というべき状態でしたし、薬を弱めてもらわないといけないようです。仕事は暫く資料との睨めっこが続きますから眠気が残っていては話にならないですし、帰宅してからも眠気が残っていると(疲れで眠くなるのは仕方ないとして)ネット関係のことがまるで手付かずになってしまうので、よろしくありません。連載のストックはあるんですが、豊富にある、とは決して言えませんからね。
 吹雪の中で遭難した人が「寝るなー!寝ると死ぬぞー!」と言うシーンを何らかの形でご覧になった方も居られると思いますが、一度寝ると死にはしないが何時までもだらだらと寝てしまうのは、寒さも影響しているのかもしれません(ただいま室温16度、湿度45%。私には寒いと感じる)早く暖かくならないものか・・・。

「次は、俺が晶子に聞いて欲しい曲を弾く。歌も沿えてな。」
「何て曲ですか?」
「多分・・・、否、きっと晶子も聞いたことがあると思う。」

 俺は下ろしていた右手を弦に添える。すると、騒がしかった周囲が急速に静まっていく。まあ、周囲のことなんてどうでも良い。俺は、以前晶子が俺に言った言葉への回答を兼ねた言葉を含んだこの歌を、晶子に聞いてもらうために弾いて歌うだけだ。何時か晶子だけに聞いてもらおうと思って、密かに練習してきたこの曲を・・・。
 俺は演奏を始める。原曲ではピアノで弾かれるフレーズをギター用にアレンジしたイントロを弾くと、晶子ははっとしたような表情を浮かべる。そしてそれは徐々に嬉しそうな笑顔に替わっていく。聞いたことがある筈だ。半月前のサマーコンサートで演奏した「Kiss」と同じCDに収録されている曲なんだからな。
 わざと音のタイミングを大目にずらしたアップストロークで和音を演奏して、メインに入るまでの少しの間にゆっくり息を吸い込み、タイミングを計って演奏を再開し、同時に歌い始める。と同時に、何も合図をしていないのに、俺の声より音程の高い、そして澄んだ声が俺の隣から流れ始める。
 弾き語りがあまり得意じゃない俺が、店で演奏するレパートリーのアレンジやデータ作りの合間を縫って練習してきたこの曲、「Time after time〜花舞う街で〜」のシアターバージョン。これが「離せって言っても離しませんからね」と言った晶子への俺なりの回答だ。フレットを見なくても歌えるようになるまで何度も何度も練習した。気がついたら夜が明けていたこともあった。そうまでしてでも晶子に聞いて欲しかったんだ。
 俺と晶子の歌声が夏の陽射し降り注ぐこの高台に流れる。俺と晶子は見詰め合って歌う。晶子の歌声は、俺の歌声に覆い被さるのではなく、その隣を歩くように、俺が差し出して手にそっと手を添えるように、控えめに流れる。その顔には嬉しさが溢れている。俺も自然な笑顔を向けながら歌う。

雨上がりの午後 第1421回

written by Moonstone

 色々な声が飛んでくるが、俺はそれを無視して晶子に言う。

2004/1/26

[・・・ま、こういう日もあるか]
 (割と)早く寝たにも関わらず、起きたのは一昨日とほぼ同じ時間。買出しには行きましたが(混んでたなぁ。だから日曜に行くのは嫌なんだよ)、その後の時間を考えるととても新作を書く時間はなかったので、諦めて寝て過ごすことにしました。不本意ではありますが、週末ともなれば作品制作、と決まりきっていたこれまでの生活を考えると、むしろ良い休養になった、と考えるべきなのかもしれません。
 で、日曜洋画劇場を割としっかり見たのですが、「バイオハザード」を髣髴とさせるエイリアンからの逃亡劇には結構見入りました。結構怖かったぞ、あれは(汗)。ああいうホラー作品も何時か書いてみたいです。先週の「シュリ」はラストの方だけ見たんですが、国情を踏まえたものだけに見ていて辛かったです。一つの民族を二つの対立国家にした根本原因には、過去の日本の侵略と占領があったということを、どれだけの日本人が知った上で見たのか、というのが気になりましたが。
 また今日から仕事です。現状は膠着状態と言うべきものですが、何とか打開策を見つけ出したいところです。私の手が届く範囲ならまだしも今回はそうじゃないですから、迂回路を探すしかないんですけどね。果てさて、どうなるやら・・・。

「何が聞きたい?」
「リクエストして良いんですか?」
「今日は特別だ。」
「それじゃ・・・『THE SUMMER OF '68』を。」
「OK。」

 俺は大切な人のリクエストに応えて、ギターの演奏を始める。数え切れないほど演奏してきたから、もうフレットを見なくても演奏出来る。屋外でギターを弾くのはこれが初めてじゃないが、アコギに限定すると今回が初めてだ。屋外で演奏したのは高校時代のバンドでの屋外ライブと、成人式会場前でのスクランブルライブだけだし、それにその時は全部エレキだったからな。
 アコギの音が泡のように宙に浮かんでは消えていく。蒼の世界にアコギの音は予想以上によく似合う。俺は時々晶子を見ながら演奏を続ける。晶子は心地良さそうな表情で、俺がギターを弾く様子を見詰めている。
 ・・・ん?何だか視界に黒いものが増えてきたな。雲にしては動きや形が変だし・・・。何かと思ってふと前を見てみると、何時の間にやら人だかりが出来ていた。俺は思わず演奏を止めそうになったが、晶子の願いを途中で打ち切るわけにはいかない。俺は半自動で動く両手と晶子の両方に意識を二分させて、想定外の観衆は見えないことにする。今は晶子のリクエストに応えて弾いているんだからな。
 最後の一音を爪弾いて演奏を終える。密閉空間でないだけに、音は痕跡を残すことなく消えていく。俺が右手を下ろすと、穏やかな笑顔を浮かべた晶子が拍手をする。それとほぼ同時に、周囲から拍手が起こる。晶子の拍手だけ聞きたいんだが、これだけ人だかりが出来ていては無理な要求というものか。

「凄ーい。上手ーい。」
「なかなかやるじゃん。」
「プロかな?見たことない男性(ひと)だけど。」
「ストリートミュージシャンじゃないのか?」

雨上がりの午後 第1420回

written by Moonstone

 晶子はベンチに腰を下ろす。俺はソフトケースからギターを取り出して、晶子の邪魔にならずに、しかも離れ過ぎない程度の距離を置いて座り、ギターを構えてチューニングをする。・・・よし、これで良いだろう。今日は湿気が少ないせいもあってか、さほど時間を食わなかった。

2004/1/25

[徹夜の反動か?]
 眠い。この一言に尽きます。昨日は目を覚ましたのが10時頃でしたが、どうにも眠くて食事を済ませた後再び寝床へ。その後も食事以外は殆ど寝てました。本来なら昨日は買出しに行く日なんですが、行けませんでした。こんな調子じゃ新作書く暇なんてありません。
 寝たのがちょっと遅かったのもあるんでしょうが、こんなに眠気をずるずると引き摺るのは困りものです。今週は兎に角慌しかった上に徹夜明けで仕事をしたこともありましたから、休みということでそれまで張り詰めていた精神の糸がぷつんと切れてしまって、これまで溜まっていた疲労が一気に噴出したのかもしれません。
 今日は買出しに出た後新作を書く予定です。予定は未定、という言葉がありますが、そうならないように用が済んだらとっとと寝るつもりです。久しぶりに来た感想メールにもまだお返事出来てないし・・・。寝るだけの休日なんて嫌だなぁ。ちなみにこのお話も寝起きでしているので、脈絡がない可能性があります。御免なさい(_ _)。

「何だ?」
「ギター、弾いてください。」

 この景色に俺のギターの音を流すのか・・・。ちょっと恥ずかしいというか、何とも表現し難い複雑な気持ちはあるが、晶子がギターを持って来て欲しいといった理由が分かったし、思えば俺のギターを屋外で晶子に聞かせたことは今まで一度もない。よし、その願い叶えてみせよう。

「分かった。ちょっと聞き取り難いかもしれないけど。」
「しっかり聞きますから。」
「立って弾いても良いけど・・・。どこか良い場所ないかな・・・。」
「あ、あそこが空いてますよ。」

 晶子が大小の丸太を組み合わせて作ったベンチの一つを指差す。近くにはカップルが居るが、まあ良いだろう。俺は晶子と共にそのベンチへ向かう。ベンチの前まで来たところで、俺はギターを背中から下ろす。晶子は座ろうとしない。先に座れば良いのに、どうしたんだろう?

「座れよ。別に立って聞く必要はないんだから。」
「祐司さんのギターの邪魔になるかと思って。」
「大丈夫。その辺は勘考するから。さ、観客は座った、座った。」
「では、お言葉に甘えて。」

雨上がりの午後 第1419回

written by Moonstone

 景色を眺めていた晶子が俺の方を向いて尋ねる。本当に映画のワンシーンみたいで、俺はドキッとする。

2004/1/24

[平穏って良いなぁ〜]
 昨日は(珍しく)期待どおり極めて平穏な日でした。それにしても今週は慌しかったな。あっという間に週末ですよ、奥さん(みの○んた風に)。今週の特徴といえば、何といっても強烈な冷え込み。私の住んでいる地域でも最低気温が氷点下を切り、日中でも気温は一桁。おまけに空気は乾燥してて風も冷たい。これだから冬は嫌なんだよぉ。
 仕事は平穏だったんですが、自宅は修羅場(汗)。食事の準備や洗濯に使う水は冷たいし(この時湯を使うという考えはない。洗濯機は今時二槽式だし、湯を導入出来る環境がない)、暖房をかけても冷え込みは殆ど改善されないし。そんな中、うっかり準備を忘れていた圧縮ファイル作りとNovels Group 4の作品制作、インデックスの準備を済ませてようやくこのお話をしています。
 今日もどうやら冷え込む模様。しかも雪が降る可能性もあるとか。雪が降ったら、徒歩か自転車しか移動手段がない私にとっては「用事があるなら歩け」と宣告されるようなもの。この時期空からの落下物はご勘弁願いたいです。
 柵に近付いていくにしたがって、徐々に晶子が言う理由とやらが明らかになってくる。見渡す限り広がる青い空と青い海が雄大なスペクタクルを形成している。水平線がはるか遠くで青の世界に一本の横線を描いている。坂道を随分上っただけ甲斐があったと言うか、本当に良い眺めだ。

「良い景色だな。これが此処に来たかった理由か?」
「ええ。・・・つまらないですか?」
「いや、良い気分だよ。運転で縮こまっていた身体を思いっきり休められるし、こんな良い景色を見られただけでも此処に来た甲斐があったってもんだ。」
「良かった。喜んで貰えて。」

 晶子は嬉しそうに微笑む。なるほど、確かにこの景色を見ると、マスターと潤子さんのペアと一緒じゃなくて、俺と二人きりで見たかったという晶子の気持ちがよく分かる。二人の思い出ってやつを作りたかったわけだな。誰の手も借りない形で・・・。
 高く上った太陽から降り注ぐ陽射しは厳しいが、高所なのも相俟って爽やかだ。深呼吸すると肺に入ってくる空気も爽やかで気持ち良い。此処で時間の経過を眺めるのも面白そうだな。空の色が変わると同時に海の色も変わっていって・・・。夜になると満天の星空が見えて、きっと綺麗だろうな。
 ふと周囲を見渡すとカップルがやたらと目に付く。というか、カップルだらけだ。何となくだが、男の視線がこっちにチラチラと向けられているように思う。多分、否、きっと晶子を覗き見してるんだろう。風に靡(なび)く茶色がかった長い髪が太陽の光を浴びて虹色に輝いている。心地良さそうなその横顔はさながらCMやポスターの女優かモデルだ。見たくなる気持ちは分かるが、自分の彼女を見てやれよ。

「祐司さん。一つお願いしても良いですか?」

雨上がりの午後 第1418回

written by Moonstone

 晶子は左手でバスケットを持ち、右手を俺の左腕に回して歩き始める。俺は晶子に案内されるままに歩いていく。晶子が此処に来たかった理由とは何なのかが、今から明らかになるわけか。

2004/1/23

[こ、これは試練というものですか?]
 仮眠なしの完全徹夜だった一昨日は、明日の更新準備を済ませた時点で迷わず布団に潜り込みました。一昨日は午前の時点で思考が纏まらず、短い事務的なメールの文面すら送信前に何度も確かめて、果たしてこれで良いのか、と散々迷ってようやく送信、という有様でしたから(普段はキーボードを叩きながら文面を纏めて、タイプ完了後は一度全体を確認してから直ぐ送信します)、これ以上寝なかったら発狂しかねない、否、絶対発狂する、と思って。
 でもすんなり寝付けない(汗)。勿論薬を飲みましたよ。常人なら5分もたずに眠りの世界へさようなら、という強い薬を。それでも効果がなかなか表れなかったんですから、如何に自分の自律神経が滅茶苦茶になっているかがよく分かりました。
 それでもまあ何とか寝られて、昨日は無事出勤。で、早速一昨日の打ち合わせどおり、別の部署へ予告電話をしてからそこへ直行。決して爆弾抱えていたり、刃物ぶら下げていたわけではありません(そんなことしてたらこの話出来ない)。ノートPCは抱えてましたが。目的はマスターテープから講演を聞き取って講演集の原稿を完成させること。マスターテープ(VHSじゃなくてディジタルよ)を再生出来る機器がその部署にしかないということで、職場内出張と相成ったわけです。
 しかし、その聞き取りと記録が半端じゃない難しさ(大汗)。喋るスピードが不規則に変化し、所々急速にフェードアウトしていく部分もあったりで(息が途切れていくため)、約2分半の聞き取りと記録のために3時間かかりました(大汗)。しかも同じ目的で別の職場の方が来たため、午前と午後の2回に分けてその部署に出向く羽目に。寒くて乾燥した外を歩くのは辛かったです(泣)。
 終業+残業後は職場の新年会に。職場の事情で例年この時期になるんです。兎に角空気の乾燥が激しくて、薬の副作用で直ぐ口が渇く私には苦しみに追い討ちをかけられる格好になったので飲み物が手放せませんでした。後片付けをして帰宅したら、自宅も乾燥してました。やかんいっぱいに水をぶち込んでコンロにかけて加湿して、ようやく喉が元どおりになりました。もう少しで潰れるところだった(汗)。今日は何事もなければ良いな・・・。
 視界が一気に開ける。坂道の上にあるとは思えないほどの広大な平面が広がっている。人と車がいっぱい居るなぁ。向こうの方に車が固まっている一角がある。あそこが駐車場なんだろう。俺はそこへ向かって車を走らせる。
 下っていく車が結構あった分、駐車場はかなり空きがある。だが、何処もすんなり停められそうにない。・・・仕方ない。ここは晶子の力を借りるか。俺は奥の空いているところの前まで車を走らせたところで一旦停めて晶子に言う。

「晶子。悪いけど、降りて後ろを見ていてくれないか?」
「分かりました。」

 晶子は嫌な顔一つせずにシートベルトを外して車を降り、車の後ろ側に回り込む。俺はシートベルトを外してギアを「B」に切り替え、座席から身を乗り出して後ろを見ながらハンドルとアクセルを操作してゆっくりバックする。晶子が手招きをしているのが見える。まだ大丈夫だろう。スピードを出さないように慎重に、慎重に・・・。
 晶子が両手を俺に広げて見せる。ストップ、という合図だろう。晶子の後ろにある車の後部がかなり近く見えるし。俺はブレーキを踏んで車を停め、ギアを「P」に切り替えてハンドブレーキを引く。・・・何とか無事辿り着いたな。正直言って生きた心地がしないが、無事で何より、と思っておこう。俺が座席に深く凭れて深い溜息を吐くと、助手席のドアが開く。

「お疲れ様でした。大丈夫ですか?」
「ああ。ちょっと疲れただけ。さて、降りるとするか。」

 俺はもう一度溜息を吐くと、ドアを開けて車から降り、後部座席に寝かしておいたアコギを取り出してドアを閉める。

「お弁当も取りましたから、ロックしてもOKですよ。」
「分かった。」

 俺はギターを背負ってからキーの先端を車の方に向けてボタンを押す。ガチャッとロックされる音がする。俺はシャツの胸ポケットにキーを入れて、助手席の方から駆け寄って来た晶子と合流する。

「爽快なドライブ、とはいかなかったな。」
「安全運転が何よりですよ。それに私、実は車酔いしやすい方なんです。だから、祐司さんの運転で丁度良かったです。」
「事故って俺だけ怪我したり死んだりするならまだしも、晶子を巻き込むわけにはいかないからな。それにあんな道でスピードを出せる勇気もないし。」
「そういうのは勇気じゃなくて、無謀って言うんですよ。それに祐司さん、初めて運転する、って言った割には結構上手かったですよ。安心して乗っていられました。」
「そうか。で、どうして此処に来たかったんだ?」
「それはこれから教えますよ。さ、行きましょう。」

雨上がりの午後 第1417回

written by Moonstone

 懸命に運転していくと、道の向こうに青い空が見えてきた。どうやら終わりは近いようだ。だが、上り切るまで気は抜けない。俺一人なら怪我しても死んでも構わないが、見ず知らずの他人を巻き込むわけにはいかない。それに加えて、俺の隣には俺の大切な人が乗ってるんだ。遅いと言われても大切な人の命には代えられない。

2004/1/22

[ダメ人間の事例]
 昨日の更新を終えてIEでの巡回コースを回り(Netscape4.7をデフォルトにしているので、IEでしか見られないページはIEで見るんです)、ネットから切って明日の更新準備を終えた時点で大人しく薬飲んで寝りゃ良かったんです。それなのに何を思ったか「魂の降る里」を何気なしに読み始めたのが運の尽き。こともあろうに自分の作品にハマってしまい、気付いた時には午前4時(大汗)。
 これで薬を飲んで寝たら間違いなく薬の効力が残った状態で起きなきゃならない羽目になる。そうなったら絶対仕事にならない(それだけ強い薬を飲んでるってことです、はい)。そう判断した私は、薬を飲まずに寝ることにしました。こんな時間まで起きてたんだから寝られるだろう、という観測を抱いて。
 ところがその観測は甘かった。それなりに疲れている筈なのにまったく寝付けない。どうにか眠りに入ったものの、もの凄く浅い眠りだったがために(あれが眠りと言えるのかどうかも正直怪しい)夢だか幻覚だか分からない無茶苦茶な、しかもやたらとリアルな映像と音声に翻弄されて吐き気までもよおす始末(でも起きられなかった)。目覚ましの音でどうにかそれから解放され、朝食済ませて着替えて職場へ。
 起きてましたよ、勿論。健康診断があるから休むわけにもいかず。で、そういう日に限ってPCと長時間睨めっこしたり、彼方此方走り回ったりしなきゃならなかったりするわけで(泣)。勿論残業あり(号泣)。しかも普段より長く(泣笑)。このお話をしている今(1/21 23:00頃)、口の中が酸っぱいです。ええ、胃液が絶えず逆流してきているからです。
 連載のストックはどうにか増やしましたが、後で読み返したら脈絡がない可能性大(大汗)。どれだけいらっしゃるか分からない連載の読者の皆様、「あれ?何だかおかしいぞ」と思う部分が出て来ても、黙っておいてください。Novels Group 3で公開する時にはしっかり修正しておきますから。うー、気持ち悪い・・・。
やがてその流れが止まり、今度は右方向から車が少し多く流れてくる。俺はブレーキを踏んだまま晶子の方を向く。

「退屈だろうけど、我慢してくれよ。」
「全然退屈してませんよ。このまま安全運転を続けてください。」
「そうする。」

 俺は視線を前に戻す。車の流れが加速してくる。信号が黄色か赤に変わり始めているんだろう。だからってそんなにスピードを出してどうするんだ?急患を運ぶ救急車とかじゃないんだから、慌てることもないだろうに。まあ、運転することが精一杯で「爽やかドライブ」とは無縁な俺が言えたもんじゃないんだろうが。
 前方からの車の流れが止まり、信号が赤から青に変わる。その瞬間、否、それより少し前に前の車が離れていく。おいおい、前の車が信号無視して来たらどうするつもりだ。ぶつかるぞ。自分たちだけが怪我したり死ぬなりするのは勝手だが、他の人間まで巻き込みかねないんだから多少は考えろよ・・・。
 兎も角俺はアクセルを踏んで右方向に車を走らせる。前の車はぐんぐん離れていく。Y字路を進んだ先は片側1車線。追い越しは不可能だから後ろを走る車には我慢してもらうしかない。それよりこのまま進んでいけば良いんだろうか?途中で交差点があるなら早めに指示を出して欲しいんだが。

「このまま道に沿って進んで下さい。間もなく坂道が見えてきますから。坂道は蛇行してますから、注意してくださいね。」

 げっ、坂道の上に蛇行か・・・。運転初心者の俺にはカーレースのコースを走るのと同じだな。蛇行する道はすれ違いがかなり怖いんだよな。路上教習ではそんなコースを走らなかったし、父親の運転する車に乗っていた時に、助手席から蛇行する坂道での車のすれ違いがかなり微妙なことを目の当たりにしてきたから油断大敵だ。まあ、スピードさえ出さなければ何とかなるだろう。
 晶子の言うとおり、少し走ると直ぐ坂道が見えてきた。確かに蛇行している。しかも上り坂。間違っても下ってくる車と接触しないように注意しないと・・・。兎に角スピードを出さないこと。今はこれに尽きるな。出せと言われても出す度胸なんてありゃしないが。
 俺はアクセルを踏む力加減とハンドルを切るタイミングに全神経を注ぐ。チラッとバックミラーを見ると・・・後ろの車がかなり接近して来てるな。恐らく、もっとスピード出して走れ、と言いたいんだろうが、それは無理な注文だ。それに事故って進めなくなることを考えたら、ゆっくりでも上っていける方がまだましだろう。それにしても、下ってくる車、随分スピード出してやがるな・・・。ガードレールの向こう側は断崖絶壁だってことを忘れてやいないか?運転慣れしているのか、それとも怖いもの知らずなだけなのか。

雨上がりの午後 第1416回

written by Moonstone

 信号が赤になったのを見て、俺はアクセルペダルに乗せていた足をブレーキペダルに移してゆっくり踏む。車は緩やかに減速して、前に止まっている車の後ろで止まる。俺は右のウインカーを点滅させて溜息を吐く。どうにか此処まで来れたか・・・。前方では左方向から車が少し流れてくる。

2004/1/21

[今日は音声を変えてお送りします(意味ねー)]
 ええ、今思うと何で気付かなかったんだろう、と不思議で仕方ないですね。ことの発端は先週に遡るんですけど、仕事で必要な健康診断の通知が来て、それを私が管轄している、まあ、管轄していると言っても捲るだけなんですけど(笑)、月捲りのカレンダーに書き込んでおいたんですよ。この時点でもう間違いは始まっていたんです。本当に何で気付かなかったんでしょう。
 で、昨日その日程だったので、私はお誘いがかかるのを待ってたんです。健康診断をする場所が職場から歩いて15分ほどのところにあるので、皆で乗り合わせて行くんですよ。ところが、何時まで経ってもお誘いがかからないどころか、誰も行く気配がなかったんです。私は不思議に思いながらも、皆忘れてるんだろう、と思って一人で出かけたんです。
 本当は外へ出た時点で気付くべきだったんです。自分と同じように問診票を持って歩いている人が誰も見当たらないことに。でも、その時の私は、時間が遅いから人が居ないんだろう、と思い込んでいたんです。で、その場所に着いて見たら誰も居ないばかりか、受付の人も居やしない。私は首を傾げてその場所の職員に尋ねたんです。そうしたらこう答えたんです。
(問診票の日付を指差して)ここに書かれてあるとおり、
ご予約は明日明後日となっておりますが・・・。
 そうなんです。日付を間違えていたんです(笑)。私は職員に礼を言ってその場所から出て首を捻りながら職場に戻って、通知に書いてあった日付を確認したんです。そうしたら1日読み違えていたことが明らかになったんです(笑)。いやー、思い込みっていうのは本当に恐ろしいことですねー。私、今日健康診断に行ったら職員に大笑いされるかもしれませんね。ま、自業自得ですけどね(笑)。
・・・この話は全て事実です(滝汗)。
 新京市の市街を走っていくと、道は緩やかなカーブや信号待ちを含んでいる。暫くして建物が徐々に少なくなってくる。退屈どころか緊張で何も喋れない。兎に角今は目的地まで無事に辿り着くことしか考えられない。こういう時、智一なら楽勝だろうが、免許を取って以来約1年車に乗ってない俺に運転以外のことを考える余裕はない。
 更に走っていくと、T字路の交差点が見えてくる。交差点と言っても俺から見て横方向に走る車はかなりスピードを出している。サーキットじゃあるまいし・・・。信号はあるとは言え、のんびり制限速度を守って走っていたら後ろからクラクションを鳴らされるだろう。だが、クラクションを鳴らされようが罵声を浴びせられようが物を投げつけられようが、事故を起こすことを考えれば安全運転に徹するに限る。

「次のT字路を左折してください。」

 晶子の声が耳に届く。左折か・・・。あんな道で右折しろ、と言われたら正直困るが、左折ならまだましだ。俺は左のウインカーを点滅させ、交差点で右方向からの車の流れを見て、その流れが途絶えたところでハンドルを右に切って車道に入りアクセルを踏む。標識を見ると・・・標準速度は50kmか。しかし、対向車が走り去っていくのを見る限り、とてもそれが守られているとは思えない。俺は片側2車線の左側を制限速度そのままのスピードで走らせる。俺と晶子を乗せた車を、右側からどんどん車が追い越していく。とてもじゃないが、スピードを出す気にはなれない。追い抜きたいなら追い抜いてくれ。

「このまま暫く道に沿って走ってください。そのうちY字路が見えてきますから、それを右に行ってください。」

 晶子の指示に応える余裕もない。せめて一言くらい返事をするべきなんだろうが、周りのスピードが速過ぎて、アクセルを踏む足とハンドルを握る手と周囲を見る目に意識を分散させているから、それ以外に分散させる余地がない。これじゃ楽しいドライブとは言い難い、否、とても言えないが、晶子には暫く我慢してもらうしかない。
 緩やかな右カーブを描いている道を走っていくと、前方にY字路の標識が見えてくる。遠くには信号が見える。近いな・・・。信号の色は青だがスピードを出す気にはとてもなれない俺はそのままのスピードで車を走らせる。俺と晶子を乗せた車を追い抜いていく車は、かなりの割合で−正確に数える余裕はないが−右方向へ流れていく。信号が黄色になる。俺はアクセルを踏む足の力を徐々に弱めて減速していくが、右車線を走る車はスピードを緩めるどころか一層増して−俺が減速しているからそう見えるだけかもしれないが−右方向へ疾走していく。

雨上がりの午後 第1415回

written by Moonstone

 ゆっくりとはいえ、自転車とは比較にならない速さで景色が前から後ろへ流れていく。俺は緊張したまま運転を続ける。暫くは直進だそうだからまだ良いが、交差点に入る時が要注意だな。特に右折は。

2004/1/20

[いよいよ通常国会]
 昨日から通常国会が始まりました。この国会ではイラクへの派兵承認案が議員全員への説明(首相の所信表明演説に盛り込まないということ)なしに審議、採決されようとしています。その他、財界の思惑どおりに踊っている自民・公明政権と野党第1党の民主党が憲法改悪や「構造改革」のスピードを競い合う悪政法案が目白押しです。年金制度改悪をはじめ、憲法改悪への地ならしである国民投票法案、有事法制を具体化する「国民保護」法制、などなど・・・。
 この国会終了後に参議院選挙が控えています。それを考えると恐らく会期延長はないものと思われます。ここでも放っておいたら、地方では当たり前の「共産党を除くオール与党」体制が益々進むでしょう。それを阻止する力となるのは他でもない、有権者一人一人の一票の積み重ねです。
 たかが一票、されど一票。「自分一人だけなら」という安易な思いや「誰かに頼まれたから」「労組(或いは宗教団体)に指示されたから」という主体性のなさの積み重ねが、悪政を競い合う構図を国会にも地方にも作り出したのです。有権者の皆さんはそのことをよく頭に叩き込んだ上で、国会の審議や論戦をしっかりチェックしてください。その上で参議院選挙でどの政党や候補者に一票を投じるかを決めてください。これらは次世代への責任でもあるのですから。

「お戻しの際はガソリンを満タンにしてくださいますよう、お願いします。」
「分かりました。」
「それでは、ごゆっくりどうぞ。」

 男性職員は頭を下げる。俺と晶子も頭を下げた後、キーの先を車に向けて簿ボタンを押す。ガチャッという音がしてロックが外れる。俺は後部座席のドアを開けて背負っていたギターを座席に寝かせるように置いた後、俺が運転席に、晶子が助手席に乗り込み、それぞれシートベルトをする。これは基本中の基本だ。俺はキーを差し込んでエンジンをかける。晶子がブラウスの胸ポケットから何かを取り出して広げる。・・・地図か。俺は晶子が行きたいという場所を知らないから、道案内がないことには行きようがない。忘れてなかったか。
 車庫の中に入っていたこともあって、車の中はそれほど暑くない。一応冷房のスイッチを入れて−ご親切にマークが描かれたボタンがある−弱めに設定してからギアを「P」から「D」に切り替え、ハンドブレーキを下ろし、ゆっくりをアクセルを踏む。オートマチックだから教習所の時よりはるかに楽だ。
 男性職員が頭を下げて見送る中、俺はゆっくり車庫から出て道へ向かう。道は混み合っていないが、結構スピードを出している車が多いから油断は禁物だ。俺は道の直ぐ傍まで出たところで晶子に言う。

「どっちだ?左か右か。」
「右へ曲がってください。それから暫くは道に沿って直進です。」
「右折ね。了解。」

 俺は左右を見て車の流れが途絶えたのを見計らって道に出て、右のウインカーを点滅させてから車道を横切って右折する。車が道と並行になったところでゆっくりアクセルを踏む。俺と晶子を乗せた車がどんどん加速していく。どうにか車の流れに乗ることが出来た。標識では・・・40kmか。50kmくらいまでならスピード違反で捕まることもないだろう。だが、免許を取って以来初めての、しかも大切な同乗者が居る運転だから安全運転で行こう。事故ってから後悔しても手遅れだし。

雨上がりの午後 第1414回

written by Moonstone

 男性職員はキーと一緒に名刺サイズの厚紙を差し出す。厚紙には看板にあった自動車を象ったロゴと社名、そして電話番号が記載されている。俺はそれらを受け取る。

2004/1/19

[こうしてまた穴が開く]
 持病の回復にしたがって飲んでいる薬が相対的に強くなってきたらしく、長時間寝られるようになってきました。結果、以前のように薬の力を破ってでも目が覚めるということが少なくなり、目が覚めてもすぐに寝てしまう。よって、寝るのが遅くなると目覚めるのも遅くなる、という普通の人には当然のことが復活してきたわけでして・・・。
 何が言いたいのかというと、寝るのが遅かったせいでこの土日は起きるのが遅くなり、新作執筆に必要な時間が確保出来なくて(一つは構想を練るのに時間が滅茶苦茶かかってるし、もう一つはいまいち書くきっかけが掴めない)、何一つ書けませんでした、ということです(汗)。これで今度の週末の更新は前回と同じ規模になることが確定しました。
 まあ、この一月で寄せられた感想メールはたった2通ですし、どれも1つの作品に対してのもののみ。別に書かなくても支障はないと言えばないんですよね。それに、もの凄い難産になっているのに無理に生み出そうとするとろくなことにならないし。でも、個人的には何としても書き終えたい作品には変わりありませんから・・・難しいところです。
 女性職員はプラスチックの板を差し出す。そこには様々な車の写真が印刷されている。さて、どれにするか・・・。決めるには、晶子がどんな場所へいきたいのかにも依るな。市街地を走りたいなら普通の乗用車で良いし、山道とかを走るなら四駆の方が良いだろうし。

「晶子。どんなところへ行きたいんだ?」
「坂道を登ったところにある展望台みたいなところです。」
「その坂道ってのは舗装されてない道?」
「いえ。片側一車線で舗装されてます。」

 随分詳しいな。以前行ったことがあるんだろうか?ま、舗装された坂道を走るなら、普通の乗用車で良いだろう。それに正直言って四駆なんかは運転する気が引けるし。俺はオーソドックスなタイプの乗用車の写真を指差す。

「それじゃ・・・これをお願いします。」
「かしこまりました。少々お待ちください。」

 女性職員はプラスチックの板を引っ込めて、席を立って奥へ向かう。間もなく男性職員がキーを持ってカウンターから出て来る。

「では、車庫へご案内いたします。」

 俺は晶子の手を引いて、男性職員の後をついて行く。男性職員は事務所を出て車庫へ向かう。そして割と手前の方の車庫へ入っていく。そこには写真にあったのと同じ色と車種の乗用車がある。

「こちらで間違いありませんでしょうか?」
「はい。」
「それでは、こちらが車のキーになります。紛失しないようにお願いします。万が一紛失された場合は直ちにこちらへご連絡ください。」

雨上がりの午後 第1413回

written by Moonstone

「お待たせしました。書類を確認させていただきました。」

 程なく女性職員は顔を上げて言う。

「それでは係の者が車庫へご案内しますので、こちらからどの車種をご希望かお伝えください。」

2004/1/18

[朝、カーテンを開けると・・・]
 雪がどかどかと降っていた(大汗)。雪が滅多に降らない、積もったとしても軽い雪化粧が関の山の筈の私の住んでいる地域でも、昨日は洒落にならない積雪と降雪でした。しかし、食料は買いに行かないといけない(日曜は極力外に出たくない)。ならば強行突破あるのみ、と決断した私は、雪の中歩いて2kmはあるスーパーへ向かいました。
 ところがこういう日に限って買わなきゃならないものが多かったりする(汗)。袋2つにぎっしり詰まった荷物は約20kg(感覚で分かる)。1つは左手に、もう一つは傘の柄にぶら下げ、降り続ける雪の中を歩いて帰りました。こういう時、車があると便利だろうな、と思うんですよね。
 帰宅したらもう正午前(起きるのが遅かったせいもある)。昼食を食べた後は疲れで寝てました。一応PCは起動したんですが、新作の構想は相変わらず纏まらないし、正直疲れでそれどころじゃなかったので。こんなことなら雪が止むという今日まで我慢した方が良かったかな・・・。でも、深夜の低温で路面が凍結して、自転車に乗るとかえって危険なことは以前身をもって経験したことだし(凍結した路面で思いっきりすっ転んだ(汗))・・・。
 5分ほど歩いただろうか。前の方に赤地に白いロゴが描かれた看板が見えてきた。晶子は他の看板には目もくれず、その看板の方へ向かって歩いていく。ロゴが自動車を象ったものからして、あそこが晶子がマスターに教えてもらったというレンタカー会社なんだろう。
 並んでいるとはいえ晶子に手を引かれて、俺はレンタカー会社の敷地に入る。車庫がずらりと並び、その奥から色々な車の前方部分が垣間見える。晶子は車庫の方ではなく、それに隣接するいかにも事務所といった雰囲気の建物へ俺を連れて行く。そりゃ幾らレンタカー会社でも、免許証を見せたら即乗れる、ってわけないよな。
 晶子と共に事務所に入ると、「いらっしゃいませ」という声が幾つか飛んで来る。カウンターの向こうには若い女性職員が座っている。あそこへ行けば良いか。俺は晶子と共にカウンターへ向かう。

「すみません。レンタカーを借りたいんですけど。」
「はい。それでは恐れ入りますが運転される方の免許証をご提示ください。」

 俺はズボンのポケットから免許証を取り出し、女性職員に差し出す。女性職員は少しそれを見た後−期限が切れてないかどうかとか確認しているんだろう−、免許証を俺に差し返して何枚かの書類とボールペンを差し出す。

「確認させていただきました。それではこちらの書類の太枠の部分に必要事項を記入してください。」

 俺はボールペンを受け取って、書類の太枠で囲われた部分に必要事項とやらを記入していく。氏名に住所に電話番号に免許証番号に免許証の種類・・・。結構あるな。何度も同じことを書くこともあって正直面倒に感じるが、車という、使い方によっては犯罪にも使えるし走る凶器にもなるものを見ず知らずの他人に貸すんだから、それなりの書類が必要なんだろう。
 5分ほどで全ての欄に記入し終えて、書類を纏めて女性職員に差し出す。女性職員は、少々お待ちください、と言ってから顔を下に向けて何やらごそごそし始める。多分書類を確認したり俺が書かなかった部分に記入したり印鑑を押したりとかしてるんだろう。俺は黙って女性職員が顔を上げるのを待つ。

雨上がりの午後 第1412回

written by Moonstone

 晶子はそう言って俺の手を取って歩き始める。思わぬ晶子の行動で、俺は前につんのめって危うく転びそうになったところでどうにか堪えて体勢を立て直し、晶子の横に並ぶ。晶子の横顔は本当に楽しそうだ。どうやら晶子も俺と同じ気持ちだったらしい。俺は内心少しほっとして−平手打ちは結構痛いからな−晶子と一緒に見慣れない新京市の街中を歩く。

2004/1/17

[ふと考えてみたこと]
 昨日、昨年末に亡くなられた職場の方の追悼式がありました。その方とは部署は違うのですが、一緒に酒を飲んでも心和んだその方の人柄を反映して、会場は約200名で満員になりました。私はその方が亡くなられた日に帰省したため通夜にも葬儀にも出席出来なかったので、献花の際に遺影の前でその方にお詫びして、心から冥福を祈りました。神も仏も信じちゃいない私ですが、その方には神や仏なるものが天国や極楽浄土なる安楽の地へ案内して欲しいと願わずにはいられません。長い闘病生活、お疲れ様でした。安らかにお眠りください。
 追悼式が終わり、私は帰宅の途でふと考えました。私がその方と同じように死んだとしたら、果たしてどれだけの人が私の死を悼んでくれるのだろうか、と。敵は作っても味方は作れない私では、ああ死んだのか、と流されて終わりだろうな、と。
 私は近い将来、正式な遺言を作るつもりです。私が死んでも通夜や葬儀などは一切しないでくれ。私が好きな場所である海に遺骨か遺灰を撒いてくれれば良い、という主旨の。どうせ誰も悲しむ人が居ないなら、形だけの式典や墓は金の無駄でしかありませんからね。ただ一つ気になるのが、私がこれまで作ってきた、そして今も作っている作品の数々です。多くの時間と労力をつぎ込んで作ってきた作品は、何らかの形で残しておきたい。私という存在がある一時期存在した証として・・・。願わくば、今作っている作品が全て完成するまで命の灯火が消えることがないように・・・。
 婆さんは3つ目の停留所で降りていった。その前に俺と晶子に向かって深々と頭を下げて。まだ喧しい苦悶の声が聞こえてくるが、俺はそれを無視して晶子に言う。

「降りるときになったら言ってくれ。何処で降りるか知らないから。」
「あ、はい。5つ目の停留所ですからもうすぐです。」
「それじゃ先に金を用意しておくか。」

 俺は前方の電光掲示板の「無券」の部分を見て、その分の小銭を用意する。230円か。割とこの辺はバスの運賃が安いな。俺の実家の方が高いだけかもしれないが。
 女性の声のアナウンスが流れた後、晶子が窓枠にある押しボタンを押す。インターホンみたいな音がして押しボタンが赤く光る。どうやら降りる停留所が近付いてきたようだ。・・・まだ苦しんでいるようだが、気にしない、気にしない。
 バスが歩道脇の停留所に止まったところで晶子が席を立つ。立っていた俺が先に歩いて運賃箱に運賃を入れてバスを降りる。晶子も続いて降りてくる。あのおばさん達は降りてこない。降りようにも降りられないのかもしれないが、そんなこと俺の知ったことじゃない。・・・さて、晶子のキツい洗礼でも受けるか。俺は人が行き交う歩道の脇で晶子と向き合う。だが、予想していた平手打ちは一向に飛んでこない。

「・・・何でぶたないんだ?」
「ぶつ理由が何処にあるんですか?」

 俺が尋ねると、逆に晶子に尋ねられる。晶子は笑みを浮かべて言う。

「祐司さんが直ぐにお婆さんを助けに行ったのを見て、今日のデートが益々楽しくなりました。こんな良い人とデート出来るんだ、って。」
「・・・俺は悪党だよ。腹が立ったとは言え、結局あのおばさん達と同じようなことをしたんだから。」
「ああいうのは自業自得って言うんですよ。」

雨上がりの午後 第1411回

written by Moonstone

 俺は笑みを浮かべて吊革を握る。座席は二人用だし、何となく座る気がしないから立つことにする。何事もなかったように走っていくバスの中で、おばさん達の苦悶の声が響く。どこまでも喧しい奴らだ。

2004/1/16

[何だかブルー]
 昨日は帰宅して夕食を済ませてから何時ものようにPCに向かったんですが、キャプションのように何だかブルーな気分で、このお話をするまでぼんやり横になってました。今でもちょっと余波が残ってます。
 理由として思い当たることがないといえば嘘になります。昨日労使協定を締結する場に出席する職員代表を選ぶ選挙で、対立候補に3倍以上の差をつけられて負けたこと、勇気を出して実行に踏み切った仕事が予想外のトラブルで頓挫してしまったこと・・・。
 どちらも仕方がないこと、予想されていたことではあります。前者は対立候補と知名度、組織力(推薦を受けてた。私は単独立候補)で決定的な差がありましたから、ある意味負けて当たり前という選挙で、少なからず私に票が入っただけでも立候補した意義はあったのだと思います。後者はケーブルか回路基板の故障かミスなので、原因を究明して手直しするか修理に出すか(自分では直せない部分がある)すれば良いことです。でも何だかブルー・・・。これまで薬の力で気分が落ち込むのを防いでいたわけですが、異常に高揚することもありませんでした(一昨日は逆に何故かイライラして仕方なかった)。薬を弱めていっている過程でちょっと精神的に不安定な状況にあるのかもしれません。案外、一晩寝たら元どおりになっているかも(^^;)。

「お婆さんは?」
「バスに乗ったよ。このとおり。」
「ご親切にして戴いて・・・。ありがとうございます。」
「良かった・・・。大丈夫か心配だったんですよ。」
「晶子。悪いが先に適当なところに座っていてくれ。」
「はい。」

 俺は馬鹿でかい話し声が聞こえてくる後部座席へ向かう。一番後ろの席で賑やかに喋っているおばさん達の前に立つ。おばさん達は俺に気付いたのか、喋るのを止めて怪訝そうな顔で俺を睨む。

「何なの?あんた。」
「それはこっちの台詞だよ。」

 そう言った次の瞬間、俺は向かって右から順番におばさん達の頬に拳を叩き込む。おばさん達は俺が殴った頬を手で押さえ、目に涙を浮かべてひいひい言っている。

「お年寄りは大切にな。おばさん。」

 俺はおばさん達の脛(すね)に渾身の力を込めた蹴りを入れて悲鳴を上げさせてから、踵を返して晶子が座っている席へ向かう。晶子は婆さんが心配だったらしく、婆さんの隣の席に座っていた。その表情が何を言いたいかを如実に物語っている。

「祐司さん・・・。」
「説教はバスを降りてから聞く。それより婆さん、腰の方は何ともない?」
「ええ。何ともありません。」
「そう。なら良いんだ。最近何かと物騒だから、周囲には気を付けてな。」

雨上がりの午後 第1410回

written by Moonstone

「祐司さん。」

 前の方から晶子が駆け寄って来る。

2004/1/15

[意外にあっさり]
 昨日の日記でも触れた、通称『次回「雨上がりの午後」アナザーストーリーのシーン決定投票システム』(長い)は、昨日未明に完成しました。CGIスクリプトを実行するのに最も肝心要のこと(ファイルの属性を変更すること)を忘れていたために「Internal Server Error」が出て一時焦りましたが(私らしい(笑))、あとはそのCGIファイルへリンクを貼るだけでシステム公開、稼動となります。一番時間を食ったのは何かといえば、タイトルイメージを作ることです。高々レイヤー2枚のイメージを作るだけで1時間かかるようじゃ、CG描いて公開、なんて無謀なことは考えない方が賢明ですな(^^;)。
 昨日の日記やNovels Group 3の「担当より」では3月上旬に実施予定、とお話しましたが、システムも出来たことだし次の新作公開と同時に始めようかな、とも思ってます。私がCGIファイルの場所を忘れてしまう可能性もありますし(かなり忘れっぽいんですよ)、大して賑わうわけでもないのに勿体ぶってわざわざ忙しくなってくる時期に実施するのは如何なものか、というわけで。とっとと実施して一月くらいで締め切って、票が入ったものの中で上位1つか2つを形にしようか、なんて思うわけです。毎日書いている連載と違って、他の作品と同じくゼロからのスタートなので必然的に時間かかりますから。
 何だか投げやりな物言いですが、実際今までの企画は悉く失敗しましたし、投票所Cometの票の動きも殆どありませんから、それを考えるとアクセス殺到という事態は考えられないんですよ。まあ、やってみないと分からない、という側面はありますが。アナザーストーリーご希望の方は投票所CometへGO!
 婆さんは立ち上がろうとするが、腰を打ったときの痛みが強いらしくて起き上がれそうにない。見かねた俺は婆さんの腕を取って肩に回し、ゆっくり立ち上がる。婆さんはそれに動きを合わせて立ち上がってくる。顔を顰めながらも笑顔を浮かべているところからして、どうやら骨が折れたりはしていないらしい。俺は後ろを振り向いて晶子に言う。

「晶子。先にバスに乗って、運転手にちょっと発車を待ってもらうように言ってくれ。」
「あ、はい。」

 晶子が駆け足でバスに乗り込んだのを見て、俺は婆さんの腕を肩から解放して念のために腕を持つ。また倒れるといけないからだ。俺は婆さんの服についた埃を軽く叩いて掃う。

「すみませんねぇ。」
「いえ・・・。それより、一人で立てる?」
「ええ、大丈夫ですよ。もう痛みも殆ど引きましたから。」

 俺がそっと婆さんの腕から手を離すが、婆さんは倒れずに立っている。そして俺の方を向いて頭を下げる。

「ご親切にどうも。」
「良いよ、そんなこと。さ、バスに乗ろう。」
「ええ。本当にありがとうございます。」

 婆さんは笑みを浮かべてゆっくり歩き出す。俺は婆さんの直ぐ後ろについて、不測の事態に備える。幸い、婆さんはゆっくりとした動作ではあるが−こう言っちゃ失礼だがスロー再生を見ているみたいだ−、階段を上ってバスに乗り込む。俺も続いてバスに乗り込む。婆さんがドアに近い座席に腰を下ろして、再び俺に向かって頭を下げたところで、バスがゆっくり動き始める。

雨上がりの午後 第1409回

written by Moonstone

「大丈夫かい?」
「あ、いいえ。ちょっと腰を打っただけですから・・・。」

2004/1/14

[ん?意外に多いな・・・]
 「魂の降る里」を公開した週は、公開初日と2日目でご来場者数がどかっと増えてその後急速に減少して通常のアクセス数に戻るんですが、ここ最近アクセス数が思ったより減りません。何故かな・・・?そりゃ彼方此方の検索ページに登録したけど、ごく一部を除いて今までそれがアクセス数上昇に繋がったことはないんですよね。まあ、多いに越したことはないんですけど。
 それはそうと、一昨日の日記というか告知をご覧になりましたか?ここの連載をご覧の方、またはNovels Group 3のファンの方は今からどのシーンに一票投じるか考えておいてくださいね。早ければ3月上旬から投票を受け付ける態勢に入る予定です。Novels Group 3の「担当より」をご覧になった方はご存知でしょうが、3月以降は私がかなり忙しくなるので、早めに始めないと間に合わないと思いまして。
 実際のところどれだけの方が投票に来てくれるのかは分かりません。正直言って投票が多くなることにはまったく期待していません。今までのこのページの企画は悉く失敗に終わってきましたからね。まあ、5周年という節目の年ですし、何かしたいな、という気持ちから思いついたものですから気楽に構えるつもりです。
 無言のまま見詰め合っていると、次の駅、即ち俺と晶子が降りる駅が近いことを知らせる車内アナウンスが流れる。そうだ。俺と晶子の間に所謂「今時の話題」なんて必要ないんだ。二人一緒に居られればそれでも良いんだ。今日はその上に二人だけで出かけるという楽しみが乗っかるんだ。今日はそういう日なんだ。
 電車が減速していく。やがて見慣れた風景が窓に映ってくる。俺と晶子が通学に使っているホームとその周辺の風景だ。俺と晶子は電車が完全に止まったところで同時に立ち上がり、ドアへ向かう。勿論、バスケットは二人で持っている。ドアが開いて、俺と晶子は電車から降りる。そしてそれぞれ定期券を取り出し、改札を通って駅を出る。

「バスの乗り場は何処だ?」
「こっちです。」

 今度は晶子が先導する形で、これまた閑散としている駅前ターミナルを歩いていく。晶子が立ち止まったのはバス乗り場。遊園地に行った時に二人で並んだ乗り場と2つ離れている。バス乗り場には俺と晶子の他にスーツの上着を脱いだ中年の男性と髪が白一色の婆さん、そしてやたら鼻に染みる香水の臭いを発する、やたら派手な服を着た小太りの中年女性3人組が居る。中年女性3人組は前後の人間のことなどお構いなしに大声で喋り、笑っている。
 少し待っているとバスがやって来た。バスは俺と晶子が並んでいる乗り場のところで停車し、前のドアを開けて乗客を吐き出す。10人ほど客が降りると、中央部のドアが開く。俺と晶子が歩き始めた時、前に居た中年女性3人組が何を思ったか走り出し、バスへ乗り込んでいく。当然前に居た男性と婆さんは横に押し退けられる。男性は顔を引き攣らせ、ブツブツ言いながら乗り込んでいく。何考えてるんだ、あのおばさん達。席取りに急ぐような年齢じゃないだろう。

「い、痛たた・・・。」

 婆さんが尻餅をついた状態で顔を顰めて腰を擦っている。俺はバスケットを持っていた手を離して婆さんのところへ駆け寄る。

雨上がりの午後 第1408回

written by Moonstone

 晶子は柔らかい笑みを浮かべる。見ているだけで心が和むその笑みを見ていると、バスケットを持っている左手に柔らかいものが触れる。見ると、晶子が左手を俺の左手に重ねている。離しませんからね、という意思表示だろうか。俺は自然と笑みが浮かぶのを感じる。分かってる。前に言ったじゃないか。離してくれと言っても離さない、って・・・。

2004/1/13

[外界との隔絶]
 休日は買出し以外は専ら新作の執筆に充てている私は、この3連休を殆ど外界から隔絶した生活を送りました。ニュースはラジオとネットの新聞を見ておしまい、あとは休みボケを防ぐために普段どおりの起床と就寝、食事を挟んで新作の執筆か休息かのどちらかという過ごし方でした。
 映画の一つでも観に行け、と思われるかもしれませんが、観たい映画があるわけでもなし、ラジオのニュースで気温10℃前後という寒い中、用もないのに外に出たくないので、空調の効いた自宅から殆ど外に出ませんでした。
 今日からまた仕事再開です。動作確認で終了する仕事が終わったら、放ったらかしになっている(他の仕事が入ったから手が出せなかった)仕事に取り掛かるつもりです。新作も最低限の分は書けましたし、仕事に励みたいと思います。
 電車のドアが閉まり、軽い衝撃の後にゆっくり窓の外の風景が動き始める。晶子が隣に居るのにそっぽを向くように外を眺めているわけにもいかない。かと言って降りるまでの約10分を潰すような話題なんて持ってない。こういう時、TVを殆ど見ない−見る時間なんてないというべきか−上に読む雑誌といえば音楽雑誌という人間は辛い。さて、どうしたものか・・・。

「通学以外で二人一緒に電車に乗るなんて、去年遊園地へ行った時以来ですね。」
「ん?・・・ああ、そうだな。そう言えば二人で遠出することなんてなかったからな。」

 去年の夏、晶子と二人で遊園地に行った。それ以来二人で胡桃町から出たことがない。あると言えば、半月前のサマーコンサートのために新京市公会堂まで出向いたことくらいだ。あの時はマスターが運転する車に乗っていたから、本当に二人きりで出かけた、というのはやはり去年の遊園地でのデート以来だ。言われてみれば昨日のことのように思い出せるが、何だか遠い昔のことのようにも思える。

「二人きりになることはあっても、二人きりで出かけるってことがなかったよな。本当に。」
「だから余計に楽しみだったんですよ。祐司さんと二人きりで過ごすことは勿論楽しいし幸せですけど、何処か別のところで二人だけの思い出を作りたかったんです。」
「・・・気が回らなくて悪かったな。」
「いいえ。所詮これは私の我が侭なんですから、それに快く応じてくれた祐司さんにお礼を言いたいです。」
「礼を言うなら・・・今日のデートが終わってからにしてくれよ。まだ始まったばかりなんだからさ。」
「はい。」

雨上がりの午後 第1407回

written by Moonstone

 電車が俺と晶子の前で甲高い金属音を立てて停止する。そして空気が抜けるような音がした後ドアが開き、降りる客を吐き出す。学生は夏休み、しかも通勤ラッシュが過ぎているせいで降りる客は疎らだ。客が降りたのを見計らって乗り込むと、向かい合わせの二列の客席は−このタイプはラッシュ時には使われない−大半が空いている。俺は直ぐ近くの空いている席へ向かい、そこに晶子と共に座る。バスケットは晶子が自分の膝の上に持っていく。

2004/1/12

[祝!新成人!ということで]
 ここでの連載を編集、加筆して収録しているNovels Group 3を更新しました。定期更新制度は撤廃したから何時更新するかは不定、という意味がお分かりいただけましたか?他のグループは?と言われると辛いものがあるんですけどね(汗)。「雨上がりの午後」は連日書いているのでストック用ファイルにどかっと過去の連載がありますからそこから引っ張り出して編集、加筆すればOKなんですが(それでも相当手間かかります)、他のグループはゼロからスタートですから。
 それはさておき、新成人の皆さんへ。皆さんは20歳になったことで大手を振って飲酒、喫煙が可能になりましたが、それ以外にもっともっと大切なことがあります。選挙権を持ったということです。つまりは皆さんも、これから政治や社会を批判するなら、それを反対票という形で意思表示しないことには、現政権に白紙委任状を手渡したのと同じ、言い換えれば政治や社会を批判する資格はない、ということです。
 もう皆さんは傍観者ではないのです。それは権利であると同時に、民主主義国家の一員として政治や社会の舵の方向を決める義務でもあります。民主主義の崩壊は根元である一般市民の側から始まるのです。それを決して忘れないで下さい。
 晶子はそう言って微笑む。どうやらこういうのはOKのようだ。それに何だかこうしていると、ある情景が頭に浮かぶ。

「何だかさ、こうやって二人で一つのものを持ってると、子どもの両手を二人で繋いでるみたいだな。」
「そうですね。」

 晶子は嬉しそうに微笑む。俺は内心ほっとする。子ども、というキーワードを持ち出したことで、必然的にそれに関わること−言うまでもなくあれだ−を連想して動揺したりするんじゃないかと思ったんだが、晶子も満更でもないみたいだ。実際に俺と晶子が子どもの手を繋いで歩ける日は何時になるんだろうな・・・。
 二人並んで歩いていくと駅が見えてくる。一月以上大学へ行ってないが、この駅を訪れるのは一月ぶりじゃない。半月ほど前、プロのミュージシャン達と大々的なコンサートを開き、その打ち上げの際に此処に立ち寄ったからだ。
 歩いていくと、あの日の夜の光景が脳裏に蘇ってくる。笑顔で手を振っていたプロのミュージシャン達。桜井さん、青山さん、国府さん、勝田さん・・・。あの人達は今も元気に楽器を弾いているんだろうか?さよなら、とは言わなかった。言いたくなかった。また会う時があると思っていたから。
 駅の改札が見えてくると、俺はポケットから定期券を取り出す。晶子もスカートのポケットから定期券を取り出す。こういう時でも使えるから定期券と言う存在はありがたい。俺が先頭を歩く形で自動改札を通り、再び並んでホームのやや前の方に向かう。
 通勤・通学ラッシュが過ぎたこの時間、ホームは閑散としている。俺と晶子は電車が来るのを待つ。何だか今日はこの時間が妙に長く感じる。つまりはそれだけ今日のデートが楽しみだということか。
 少しイライラし始めた時−通学の時はこんな思いはしないんだが−、電車の到着を告げる、やや間延びしたアナウンスが流れる。少しして見慣れたカラーリングの電車が6両編成で入ってくる。通勤・通学ラッシュの時は8両編成だが、流石にこの時間帯でそれは必要ないだろう。

雨上がりの午後 第1406回

written by Moonstone

「これなら文句ないだろ?」
「・・・やっぱり祐司さん、良い人ですね。」

2004/1/11

[1が並んで〜♪]
 でも、当ページではここの更新以外何もありません(笑)。昨日更新したばかりで更に出せ、なんて無茶言われても困ります。無茶を言うのは小泉内閣や財界ぐらいにして下さい。もっとも、奴らがこのページを見ることなんてありゃしないでしょうけど。
 明日は成人の日ですね。私の頃は1/15固定だったんですが(ああ、歳がばれる〜(笑))、今は1月第3週の月曜日になってますから日付が流動的なんですよね。で、ここのリスナーの皆様の中にどれだけ新成人の方がいらっしゃるか分かりませんが(多分、殆ど居ないだろうなぁ)、明日、新成人を祝して臨時にあるグループを更新します。その準備は完了しています。
 で、その更新の中でも告知するんですが、先にここのリスナーの皆様にニュース速報を。当ページは4/1に開設5周年を迎えるわけですが、それの記念企画として、ここの連載でありNovels Group 3の主力作品でもある「雨上がりの午後」のアナザーストーリー新作を、読者の皆様の投票で決めたいと思います。投票所Cometと同じ形式にするつもりです。是非投票してくださいね♪
 それより、晶子が持っているバスケットが気になる。中身は晶子のことだから心配無用だが、結構大きいし両手で持っているからそれなりに重いんだろう。ここはやはり、男の俺が持つべきじゃないだろうか?

「晶子。そのバスケット、俺が持とうか?」
「これは私が作ったお弁当が入っている、私が持ってきたものですから、私が責任を持って持ちます。そんなに重くないですから大丈夫ですよ。」
「ん・・・。でもなぁ・・・。」
「女に荷物を持たせるのは男として好ましくない、とでも?」
「そんなところ。」

 俺が言うと、晶子は立ち止まって俺を見詰める。

「祐司さんは男女同権に賛成ですか?反対ですか?」

 いきなり小難しい質問だな。そんなこと普段考えないし・・・。まあ、どちらかと言えば・・・。

「賛成、かな。」
「それなら私が持ちますね。」
「何で?」
「男女平等を言うなら女性優遇やレディファーストを言う資格はありませんよ。女性優遇やレディファーストは、強い存在である男性が自分より弱い女性に対する博愛主義の精神で行うことですから、博愛主義のアンチテーゼの平等に賛成なら、女性優遇やレディファーストは無視してください。」

 流石は文学部というか、それとも単に俺が無知なだけか分からないが、要するに男女平等ならすることも平等に、と言いたいんだろう。だったら・・・。俺は晶子が持っているバスケットに左手を伸ばし、自分の方に軽く引き寄せる。俺と晶子が二人でバスケットを持った格好だ。

雨上がりの午後 第1405回

written by Moonstone

 俺は靴を履いて−これも普段履いているものだ−外に出て玄関の鍵を閉める。そして晶子と並んで歩き始める。今日は陽射しこそ厳しいが湿気が少ないせいか清々しい。残暑が厳しい今年にしては珍しい天候だ。何だか俺と晶子の初めてのドライブを祝福してくれているようだ。俺らしくないお姫様みたいな気分だが、実際そう感じるんだから仕方ない。

2004/1/10

[衝撃(というほどでもない)の過去(3)]
 (昨日の続きです)小学、中学の社会科で戦争の悲惨さ、理不尽さを知り、何故戦争が起こるのか、どうして当時の大人達は戦争を止めなかったのか、と思うようになり、同時に過去の侵略戦争に政党として唯一反対した日本共産党の存在を知り、こういう政党が政権を取っていればこんなことにはならなかったのではないか、なのに何故今尚共産党というだけで嫌悪する人が居るのか、と思っていました。
 学生時代、単独行動が自由に出来るようになったので、自分の在籍学部(工学部)とはまったく毛色の違う政治学、経済学に触れ、そこで日本経済の根本にある支配構造と矛盾、日本共産党の掲げる科学的社会主義とその源泉であるマルクス・エンゲルス経済学とそれが指摘する資本主義の問題点、ソ連や東欧諸国が言う「社会主義」の問題点を知りました。それらが今の私の思想信条を形成し、私は確固たる精神的な拠り所を得るに至りました。
 以後10年来、本業の一方で政治経済を勉強し、商業マスコミが喧伝する内容の裏を知り、それに踊らされないように注意してきました。ですからこのページも未だ過去の作品に固執したり、政治や社会を作品に反映させるようなことをしているのです。幸か不幸か現在までこのページを運営してきているわけですが、あくまでも自分の主義主張、思想信条にこだわったページにしていこうと思っています。それが資金力も組織力もない私が出来る精一杯の自己表現だと思うからです(おわり)。
 眠気が残ったまま手っ取り早く朝食を済ませて髭を剃り−髭は濃くないから剃る必要もないんだが、今日は事情が事情だからな−、顔を洗って歯を磨く。夏のぬるい水では眠気を吹き飛ばせない。初めてのドライブで居眠り運転で事故、なんてことになったら洒落にならないどころの話じゃない。そう思った俺は、パジャマを脱いで風呂に入り、水のシャワーを浴びる。流石に全身に浴びると、顔を洗った時にはぬるいと感じた水道水も冷たく感じる。
 眠気が完全に吹っ飛んだところで水を止め、風呂場から出て全身を拭き、そのまま箪笥のところへ向かう。こういう時一人暮らしは気軽で良い。突然の来客があったらひと騒動になるところだが。俺は薄いブルーの半袖開襟シャツにベージュのズボンという、普段着と変わらない服を着る。服装には点で無頓着な俺が、デートのために着るような服を用意している筈がない。・・・あまり威張れることじゃないが。
 鏡の前でしっとりした髪を梳いて整え−くせっ毛じゃないからこうしておけば良い−、財布と定期券と運転免許証をズボンのポケットに入れて家の鍵を持つ。晶子が言うには、レンタカーを借りるには運転免許証が必要らしい。そりゃまあちょっと考えれば当然のことだ。無免許の人間に車を貸すわけにはいくまい。荷物と言えばこのくらいだ。・・・おっと、肝心のあれを忘れてた。俺はソフトケースに入ったアコギを背負う。昼食は晶子が弁当を作ってきてくれることになっているから用意する必要はない。
 俺は左腕に時計を填めて時刻を見る。8時半前か・・・。もうすぐ来る頃だな。

ピンポーン

 インターホンが鳴る。本当に時間ぴったりだな。俺は感心半分、呆れ半分で玄関に向かい、ドアを開ける。ドアの向こうから姿を現したのは、茶色がかった髪に白のリボンを着け、耳には今年の晶子の誕生日にプレゼントした小さなエメラルドがくっついているイアリング、そしてピンクの長袖ブラウスに薄い茶色のフレアスカートという出で立ちの晶子だ。その手には大きめのバスケットがある。弁当が入っているんだろう。

「おはよう。時間丁度だな。」
「おはようございます。待たせるわけにはいきませんよ。」
「それじゃ、出発するか。」
「はい。」

雨上がりの午後 第1404回

written by Moonstone

 翌朝、俺は何時もより4、5時間ほど早く目を覚ました。否、正確に言えば覚まさせられた、だ。疲れていたせいで熟睡して予定時刻に目を覚ます筈がない、と思って目覚ましを仕掛けておいたからだ。夏休みに入ってから午前中に目を覚ましたのは数回しかない。晶子が起こしてくれる火曜の朝だけだ。

2004/1/9

[衝撃(というほどでもない)の過去(2)]
 (昨日の続きです)その時のショックは私の幼心に深い傷を刻みました。どんなに自分が親しいと思っていても、相手は決してそうは思っていない。それどころか自分を疎ましいとさえ思っている。そんな思いを残したまま幼少期を過ごしました。
 それを決定的にしたのが、大学生時代です。バイト先で偶然中学時代のクラスメートと再会したんですが、ある日その人が何気なしに言った言葉で、私は仲良くしてくれた、と思っていた過去が偽りのものだったことを思い知りました。「同窓会」。その単語は私がその時初めて聞いたものです。実は中学時代のクラスメートは同窓会を開いていたのです。しかし、私は一度もその誘いを受けたことがありません。転居してませんでしたからどうにでも伝えることは出来た筈。なのに伝わらなかったということは、私に伝える気がなかったということ。所詮クラスメートなんてその程度か、と思いました。今学生時代で交流があるのは片手で余る数。しかも殆どは年賀状のみです。
 今の職場に就職したのは、一人暮らしをしたかったというのもありますが、暗い思い出しかない過去が残る故郷と決別したかったからです。自分で動かないと何も進まない一人暮らしは予想以上に大変なものでしたが、直ぐに慣れました。ともすれば孤独感に打ちのめされかねない私の心を支えたのは、所詮自分は独り、という気持ちと学生時代に触れた社会学、経済学でした(つづく)。

「言っておくけど、俺は免許取って以来一度も車運転してないから、安全運転を絵に描いたような運転しかしないぞ。というか、出来ない。」
「私もその方が安心出来ますから、気にしないで下さい。」
「あと・・・、晶子が行きたいっていうその場所までの道案内は頼むぞ。俺は運転するのが精一杯だろうから。」
「明日地図を買ってきますから、道案内は私がきちんとします。・・・連れて行ってくれますか?」

 晶子は少し潤んだ瞳で俺を見詰める。こういう目で見られると、断るのが悪いことに思えるんだよなぁ・・・。まあ、断るつもりはないけど。

「ああ。月曜日は晶子の行きたいところへ連れて行ってやるよ。」

 俺が言うと、晶子はそれこそ雲が晴れていくかのようにぱあっと表情を明るくする。よっぽど行きたい場所があるらしいな。晶子のことだから、そこがどういう場所か聞いても、当日教えますから、とか何とか言ってはぐらかすだろうから、聞かないでおこう。

「お弁当作っておきますね。あと、祐司さんにもう一つお願いがあるんですけど・・・。」
「何?」
「ギターを持って来て欲しいんです。」
「ギターを?・・・電源なんてないからアコースティックギターしか持っていけないけど、それでも良いか?」
「はい。そこで祐司さんにギターを弾いて欲しいんです。」

 なるほど、行きたい場所で俺の演奏を聞きたいというわけか。それくらいならお安い御用だ。俺は首を縦に振る。晶子は心底嬉しそうな笑顔を浮かべる。運転にはまったく自信がないが、スピードさえ出さなきゃ大丈夫だろう。免許を取って初めてのドライブが晶子と二人きりなんて、楽しみだな・・・。

雨上がりの午後 第1403回

written by Moonstone

 晶子は切実という表現が相応しい表情で俺に訴える。俺と二人きりで行きたい場所・・・。一体何処にあるんだ?そんなところ。何やらよく分からないが、折角の休みに一日晶子の家に居るのも勿体無いし−晶子の家に居るのが嫌だという意味じゃない−、たまにはドライブというのも良いだろう。だが・・・。

2004/1/8

[衝撃(というほどでもない)の過去(1)]
 (昨日の続きです)私は幼い頃かなり病弱で、冬になると必ず風邪をひいて寝込むほどでした。盲腸の痛みに一晩耐えぬいた今からすると嘘みたいな話ですが(苦笑)。で、そのせいもあって家に居る機会が多く、絵本を読みつつレコードを聞くという日々を過ごしていました。その影響で3歳から鍵盤の前に座るようになり、作曲が出来るまでになったんですが。
 そんな生活をしていると当然外で遊ぶ機会が少なくなるというもので・・・。病弱で運動神経も鈍かった(これは今でも変わらない(汗))私は遊びの仲間になかなか入れず、泣いて帰るということが多かったです。盲腸の痛みに一晩耐えぬき、一人で身支度して病院へ行ったことからは想像も出来ないでしょうね。
 そんな幼心にショックを与えたのが、小学校2、3年生の誕生日の時。その時、近所の遊び友達や親しい(と思っていた)クラスメートが祝ってくれるというので、母がその分の料理を作ってくれて皆が来るのを待ったのですが、その日誰も来ませんでした。その後、手紙が寄せられたのですが、祝いの言葉の代わりに「何故直ぐ泣くのですか」などと書かれたものばかりで、誕生日を祝ってくれなかった上に自分の欠点を責められたことが酷くショックでした(つづく)。

「晶子。俺は智一と違って車なんて持ってやしないぞ。車もないのにどうやってドライブに連れて行けば良いんだよ。」
「レンタカーを借りれば良いじゃないですか。」

 確かにそうだ。だが、俺は新京市の何処にレンタカー会社があるなんて知らないぞ。

「レンタカーを借りるって言っても、何処で借りるんだよ。」
「場所はマスターから教えてもらいました。大学最寄の駅からバスで行けます。」

 そう言えば晶子、バイトの最中にマスターと何やら話してたな。あの時は、何を話してるんだろう、とくらいにしか思わなかったが−あれこれ考えてる暇がなかったせいだ−、レンタカー会社への行き方を聞いていたのか。

「でも、何でまたドライブに連れて行って欲しい、なんて・・・。」

 俺は核心の部分を明らかにすべく尋ねる。俺が車を持っていないことを承知の上で、レンタカー会社の場所まで教えてもらってドライブに連れて行けるように堀を埋めている。策士の晶子らしいと言えばそうだが、そこまでしていきたい場所があるんだろうか?

「祐司さんと二人で行きたい場所があるんです。マスターに聞いたんですけど、そこはバスが通っていないらしくて・・・。祐司さんが車を持ってないことはマスターも知ってますから、それならレンタカーを借りて行けば良いんじゃないか、って言われてレンタカー会社の場所を教えてもらったんです。」
「車ならマスターが持ってるから、潤子さんも加えて四人で行く、ってことは考えなかったのか?」
「今度行きたい場所は、祐司さんと二人きりで行きたいんです。」

雨上がりの午後 第1402回

written by Moonstone

 晶子の口から飛び出した思いがけない単語を俺はおうむ返しに言う。なるほど、確かに自動車免許がないことにはドライブなんて出来っこないよな。だが、晶子は肝心要のことを忘れてやしないか?

2004/1/7

[機械に名前を・・・]
 私の自宅は電気電子機器だらけです。PCは言うに及ばず、シンセサイザー、エフェクター(音にエコーなどを付加する機器)、ミニコンポ(CD部分が使用不能)、ラジオ、CDプレイヤーetc.・・・。PCは3台あって、1台はメインで使っているノートPC、もう1台は彼是15年以上動いている、シンセサイザー部隊制御専用、そしてもう1台はメインPCが使用不能など不測の事態になった場合に使うサブPC(現在は冬眠中)。
 PCをはじめとする電気電子機器に名前を付ける方が居らっしゃるのは別段珍しいことではありません。名前の由来は人それぞれで、ここで挙げればきりがありません。で、私はどうかと言うと、そんなことはしません。私にとって機器は自分の道具であり、「主人」である私の操作にどこまでも忠実に動くべき「モノ」に過ぎません。ですからペットのように名前を付ける必要はない、と考えていますし、異常動作を起こした場合は「モノ」の分際で「主人」の操作に忠実に動かない、と怒るわけです。
 こうお話すると、PCなどに名前をつけておられる方には、非常に冷たい人間だ、と思われるかもしれません。私は、義理人情を重視する一面と、自分以外の人間を敵か味方かに二極化する冷徹な一面の両方を持っています。これは多分、私の幼少時代と学生時代の二つの時代の影響だと思いますが、それについては明日にでもお話しましょう(つづく)。
 晶子は手を洗うと早速紅茶を入れる。夏でも紅茶はホットだ。普通ならアイスティーとなるところだろうが、晶子のこだわりがあって、紅茶は年中ホットだ。暑い中で熱い飲み物を飲むというのはミスマッチだと最初の頃は思っていたが、今はそれが当たり前だと思っている。こういうのも洗脳と言うんだろうか?
 冷房が効き始めて来た頃になって、晶子が俺の前と向かい側の自分の席にペアのティーカップを置き、交互に量が均等になるように紅茶を注ぐ。この香りは・・・アップルティーだな。2年近くほぼ毎日晶子の入れる紅茶を飲んでいるせいで、紅茶に関してはど素人の俺でも香りの区別が出来るようになった。これも洗脳の部類に入るんだろうか?
 俺は紅茶をご馳走になる前に洗面所で手を洗う。そして改めて席に座り、ティーカップを手に取り、晶子のそれと軽く合わせる。

「今日も一日お疲れ様でした。」
「お疲れ様。」

 労いの言葉を交わした後、入れたての紅茶を一口啜る。バイト中は僅かな隙を狙って水を飲むのが精一杯だから、芳香と仄かな苦味を伴う紅茶が余計に美味く感じる。さて、俺へのお願いとやらを聞くとするか。俺はティーカップを置いて晶子に尋ねる。

「で・・・、お願いって何だ?」

 紅茶を飲んでいた晶子は、ちょっと神妙な面持ちでティーカップを置いて俺を見詰める。・・・何だか嫌な雰囲気だな。まさか、別れよう、なんて言うんじゃないだろうな。一瞬そう思った俺の心の中で、それが急速に増幅していく。

「お願いっていうのはですね・・・。」
「・・・。」
「今度の月曜日に、ドライブに連れて行って欲しい、ってことなんです。」
「ドライブ?」

雨上がりの午後 第1401回

written by Moonstone

 もう見飽きた感のあるガチガチのセキュリティを晶子に解除してもらって、晶子の家があるマンションに入る。エレベーターで3階まで上って廊下を歩いて晶子が鍵を開けて中に入る。密閉度が高い分、外より熱気と湿気が篭っていて蒸し暑い。晶子が電灯を点けたのに続いてエアコンの電源を入れる。涼しくなるまでは我慢だな。毎度のことだけど。

2004/1/6

[いやぁ、楽しかったなぁ♪]
 昨日は仕事始め。休みボケしないというありがたい体質の私は、何時もの時間に出勤して少し残業してから病院へ。身体の調子が良いということで、これまで飲んでいた薬から一つ薬を抜いてもらいました。前回(去年の暮れ)で「自分で調節しても(飲まなくても)構わない」と言われていた薬です。あれを飲むとやたら眠くなるようになってきたのでそれを言うと、「薬が効いてきている証拠」だそうで。これで完全回復に向けてまた一歩前進です。
 そして帰宅後手早く夕食を済ませてTVの電源をON。TVをあまり見ない私が夕食を手早く済ませ、洗い物もしないで見たものとは・・・
名探偵コナン スペシャル
 ・・・誰ですか?笑った人は。今回のスペシャルは原作でもあったものですが(TVオリジナルじゃない、という意味)、それが2時間半という映画並みの時間で放送されるというので楽しみにしてたんです。原作だと台詞だらけで読むのが大変だったところもアニメだと楽♪それに蘭ちゃんが相変わらず健気で可愛い♪我が身よりコナンの身を案じるシェリーも良し♪(ロリの気はないぞ。念のため)原作を知っている私でも十分楽しめた2時間半でした(^^)。・・・それにしても毛利のオヤジは邪魔だな。蘭ちゃんがあのオヤジの娘だなんて未だに信じられん。母親似で良かったね、蘭ちゃん♪
 しかし、昼まで寝てバイトして、帰宅したらギターの練習をして寝る、という生活は単調そのものだ。この中には洗濯やそれに関する事項も含まれるが、生活そのものを大きく変えるほどのものじゃない。月曜は晶子の家に行って一緒に夕食を食べて一緒に寝て、一緒に朝食を食べて帰宅、という生活だが、ちょっとこれも単調ではある。晶子と一緒に居るのがつまらないとか間が持たないとかいうことはない。ただ、折角一緒に居るんだから何か変化が欲しい、というのが正直なところだ。

「祐司さん。」

 晶子が話し掛けて来た。

「何だ?」
「祐司さんって、自動車免許持ってますよね?」
「ああ、去年取ったよ。晶子も知ってるだろ?」
「ええ。それでお願いがあるんですが・・・聞いてもらえます?」

 自動車免許の所持の確認に続いてお願い。一体何だろう?まさかとは思うが・・・、念のため言っておくか。

「借金の連帯保証人だけは勘弁してくれよ。幾ら晶子が俺の彼女でも、そればかりは引き受けるわけにはいかない。親にも散々言われてるしな。」
「そんなことじゃありませんよ。私だって頼んで良いことと悪いことの区別くらい出来ます。第一、私が借金しなきゃならないような生活してると思います?」
「そうだよな。で、お願いって何だ?」
「それは私の家でお話します。」

 何だか気になるな・・・。まあ、晶子のことだから無茶なことは言わないだろう。それに晶子の願いなら何とか叶えてやりたいし。晶子の家で紅茶をご馳走になりながら話を聞くとするか。

雨上がりの午後 第1400回

written by Moonstone

 明日は日曜。休みまであと一日の辛抱だ。最近は店が忙しいこともあって、昼過ぎまで寝ていることが多い。寝る前にギターの練習を2、3時間ほどしているせいで床に入る時間がずれ込んでいるせいもあるだろうが、9月からの講義再開に向けて生活リズムを朝方に戻していかないといけないな。

2004/1/5

[少し進歩しました]
 本当は昨日実行するつもりだったんですが、更新の勢いがあるうちにやってしまおう、ということで一昨日の夜(昨日の未明という言い方も出来る)に実行に移しました。昨日の日記でも書いた、「ページの謎を隠す」ことです。
 やり方は大体分かっていたんですが、うろ覚えだったことと前のSEO診断でアドバイスされた方法も断片的なものだったので、確か本で読んだことがある、ということを頼りに本棚を探って資料を探しました。
 何とか発見し、オフラインでは実行出来ましたがこれがオンラインで実行出来るかどうか不明だったのです(サーバーレベルの操作が必要だが、私の環境ではセキュリティの関係で出来ない)。それで、必要なファイルをアップした後、前のインデックスファイルの名前を変えて新しいインデックスファイルをアップしてアクセスしてみたら・・・成功!ということで、上位ページも変更してめでたしめでたし。これでぺーじの謎を知られることもないでしょう。・・・隠すほどのことじゃないと言われればそれまでですが(汗)。
 マスターと桜井さんの間で別れの言葉が飛び交う。爽やかな形で別れることが出来たと思う。本当に楽しかった。こんな経験が出来たのも、俺がバイト先を探している時にマスターと潤子さんの店の噂を聞き、ギター片手に飛び込んだことが大元のきっかけだ。そしてあの日の夜、自棄酒を飲んで不貞寝した後に出向いたコンビニで晶子と出会ったことも大切なきっかけだ。思わぬ形で思わぬ形の人の繋がりが出来る。今回のコンサートでそれを実感した。
 桜井さん、青山さん、国府さん、勝田さん。もしかしたら、また一緒に演奏することになるかもしれません。その時は宜しくお願いします。きっと、皆さんの期待に添えるような演奏をしてみせますから。

きっと・・・。


 夏休みもあと1週間ほどを残すのみとなった。今日は土曜日。世間一般では休日となることが一般化してきている曜日だが、俺はそうもいかない。店はあのコンサートの話を聞きつけた客が訪れ、俺や晶子、そしてマスターや潤子さんも色紙にサインを求められるようになった。一時はどうしようかと思ったが、客の頼みを足蹴にするわけにはいかないということでサインに応じている。俺のサインが価値あるものになるとはとても思えないんだが、客が喜んでくれるなら良いだろう。
 店も連日大盛況で、俺や晶子は注文取りや料理の運搬、それにステージでの演奏と息つく暇もない。否、俺はまだ良い。晶子は潤子さんと一緒にキッチンで料理を作ることも加わるから、俺より疲れているだろう。俺の隣を歩いている晶子の顔には明白な疲労の色が浮かんでいる。俺は晶子の意識をはっきりさせる意味も込めて、その手を握る手に少し力を込めている。晶子も歩いている途中で眠ってしまわないようにか、俺の手をしっかり握っている。

雨上がりの午後 第1399回

written by Moonstone

「またな!」
「ああ、またな!」

2004/1/4

[久々の更新ですな]
 はい、今日付が自宅に戻ってから初めての更新です。なのに何もなし、というのはちょっとつまらないので、久々に隠し部屋をいじってみました。内容は見てのお楽しみ、ということで。更新内容をご覧いただければお分かりでしょうが、入り口も変更しました。時間のある方は探してみてください。まあ、ソースを見るかある手段を使えば簡単に分かるでしょうが、そこをぐっと堪えて自分の力で探すというのも良いのではないでしょうか?
 それからトップページをみて、おや?、と思った方も居られるでしょう。トップページ上段のスペースに、このページで扱っている内容を列記してみました。これで多少は検索で引っ掛かりやすくなるんじゃないかな、と思ってますが結果や如何に?
 今日あたり、もう少しページのソースをいじってみようと思います。作品制作が優先ですけど。今のままだとソースを覗かれると折角の謎(と言うほどのもんじゃないが)が簡単にばれてしまうので、それを隠そうかと。場合によっては私のデフォルトブラウザ(Netscape4.7)より古いブラウザでは機能しなくなってしまうかもしれませんが、その点はご容赦ください。大体、このページに来られる方って、圧倒的にIEを使ってるんじゃないですか?調べたわけじゃないから分かりませんけどシェアを考えれば・・・ねぇ。

「またこういう機会が持てると良いな。」

 桜井さんが言うと、年長者集団の視線が俺と晶子に、否、俺に集中する。俺次第って言いたいのか?困ったな・・・。何て答えたら良いんだろう?

「期待に添えられるかどうかは分かりませんけど・・・、今回皆さんと演奏出来て良かったです。機会があったら、またメンバーに加えてください。」
「君達、今年3年生だったよね?」
「「はい。」」
「今回のコンサートが今後を決める上で何かの鍵になれば、俺達はそれで満足だよ。でも・・・、出来ることなら君達とまた一緒にやりたい。それは此処に居る年長者集団の共通の思いだよ。」

 桜井さんの言葉に、マスターと潤子さんをはじめ、青山さんも、国府さんも、勝田さんも頷く。そしてどちらともなく歩み寄り、俺と晶子はプロ集団、即ち桜井さん、青山さん、国府さん、勝田さんと固い握手を交わす。どの手も温かい。普段シーケンサを従えて演奏している俺は、生身の人間と力と息を合わせて演奏したんだ、と改めて実感する。

「それじゃ・・・また会おう。」
「はい。何時かまた・・・。」

 さよなら、とは言わない。言いたくない。今回限りの袖の擦れ合いとは思いたくない。俺と晶子は、マスターと潤子さんに続いて歩き始めながら笑顔で手を振る。桜井さん達も笑顔で手を振っている。マスターと潤子さんも後ろを振り向きながら笑顔で手を振っている。

雨上がりの午後 第1398回

written by Moonstone

 桜井さんが笑って言うと、どっと笑いが起こる。

2004/1/3

[今日からナローバンド復帰(汗)]
 私の仕事始めは5日からなので、今日の午後自宅に戻ります。つまり、弟の快適極まりないネット環境にぶら下がっていられるのもこれが最後です。次回以降帰省しても弟が一人暮らしをしていて実家に居ない以上、その環境にぶら下がることが出来ませんからね(環境がないのにぶら下がるも何もないわな)。
 正直言って、弟のネット環境があまりにも良過ぎる為に、ナローバンドである自宅に戻ってのネット接続には2、3日ほどかなり抵抗感を感じるんですよね。当たり前って言えばそのとおりですけど、どのみちこれから規制した時にネットに接続するにはナローバンド環境しかないわけですから、2年程前の水準に戻る、と考えた方が良いのかな?(実家にADSLを・・・っつっても無理だな(汗))
 ともあれ、更新は出来るだけ毎日続けていくつもりです。少なからずこのページに毎日来てくださっている方が居る以上、「何かが更新される」ということは必要不可欠だと思っているからです。連載の方も場面の転機が近付いていますし、今のメインである「書く」ということに集中していきます。
 宴は続く。俺は晶子と料理を食べさせ合いながら、桜井さんや青山さん、そしてマスターと潤子さんのペアと話をする。そこに国府さんや勝田さんも飛び込んでくる。賑やかで楽しい宴は続く。音楽という共通項で結ばれたこの関係は、今回限りのものにしたくない。ずっと大事にしていきたい。俺が将来ミュージシャンになってもならなくても・・・。

 打ち上げは大盛り上がりのうちに終わった。気付いてみれば11時を過ぎていた。楽しい時ほど時間が過ぎるのが早いと言うが、あれは本当だな。桜井さんが代表して会計を済ませて、店を出てからマスター、青山さん、国府さん、勝田さんがそれぞれ「分担金」を桜井さんに払った。俺と晶子はその後で年長者集団に改めて礼を言った。
 全員揃って良い気分で来た道を引き返していく。かなりビールを飲んだが−結局ビール以外飲まなかった−食べる方もしっかり食べたから悪酔いはしていない。左腕には晶子が抱きついているが、往路みたいに照れくさいとかそんなことは思わない。酔いが回っているせいだろう。
 連絡通路を渡り、東口に出たところで先を歩いていた年長者集団が歩を止める。俺と晶子も足を止める。

「よーし、それじゃ此処で解散ということで。」
「お前ら、どうやって帰るんだ?行きはどうやって来たのか知らんが、電車はもう残り僅かだぞ。」
「タクシーって手段があるだろ。心配するな。」
「結構距離あるんじゃないのか?」
「懐具合なら心配無用。4人纏めて乗っていけば安く済む。それにこういう時ぐらいでもないとタクシーなんて使えんからな。」
「嫁さんに怒られるからだろ?」
「あはは、ご名答。」

雨上がりの午後 第1397回

written by Moonstone

 俺の腕が何度か軽く突かれる。振り返ると少々むくれた晶子が料理を摘んだ箸を持って身構えている。俺は小さく頷いてから口を開けて晶子に料理を食べさせてもらう。もう恥ずかしくも照れくさくも何ともなくなってきた。酔いが回ったせいだろうが、何を言われても気にならない。

2004/1/2

[ラジオは良いねぇ]
 リリンが生み出した技術の極みだよ。・・・って、何処かで聞いたような台詞はさておき(笑)、年末年始は殆どTVを見ないで(元々見る番組が少ないのもあるが)ラジオを聞いています。BGM代わりですけど。TVはどうも五月蝿く感じるし、兎に角CMが鬱陶しい(音量も増すし)。それに年末年始とかだと他愛もない長時間番組しか放送しないので(紅白歌合戦は見ました?倉木麻衣さんが生中継で歌ったんですよ(喜))、尚更見なくなるんですよね。
 ラジオだとCMはTVと比べると格段に少ないですし(番組の間には結構入るが)、何より番組が年末年始などでも殆ど変わらないので、この曜日にはこの番組が聞ける、という確証が持てるのが一番の魅力ですね。喋りも一部を除いて五月蝿くないですから、つけっぱなしでも邪魔になりませんし。
 元旦から何時もネットに繋いでいる時間に聞いている「MOTHER MUSIC」もやってます。このお話を初めて聞いた方も聴けると思います(放送時間は月〜木の22:00〜23:55)。ネットのお供は音楽かラジオをどうぞ・・・。

「俺と嫁さんの出会いも、文彦と潤子さんと同じで、仕事で出向いた先のバーだったんだ。店と嫁さんとの年齢差は違うけどね。」
「明。俺に対するあてつけか?」
「よく分かったな。それ以前によく聞いてたな。てっきり聞いちゃ居ないと思ってたんだが。」
「俺はこう見えても地獄耳なんでな。それに愛があれば歳の差なんて、って言うだろうが。」
「そういう逃げ方があるか・・・。やるな。」
「事実を言ったまでだ。」

 マスターと桜井さんが笑う。愛があれば歳の差なんて、か・・・。俺と晶子は1歳違い、しかも晶子の方が年上。まあ、そんなこと意識したことはないけど。知った時に多少びっくりしたくらいだな。財産目当てなら兎も角−俺の場合、狙われるような財産はないが−、マスターの言うことは正論だと思う。

「ま、今はこういうご時世だから親が心配する気持ちは分からなくもないけど、最終的には自分でどうにかしなきゃならないし、そうすべきなんだ。特別の事情がないのに何時までも親と同居して安穏としてる方が、よっぽど始末が悪い。あれは寄生虫と一緒だ。」
「そうですね。」
「君も奥さんと一緒に将来の道を切り開いていけば良い。どうやら君の奥さんも音楽やこういう職業については理解があるみたいだし、君一人で何でもやらなきゃいけない、なんて思わないことだね。夫婦は協力して家庭っていう一つの小さな、でも大切な社会を構築していくもんだよ。」

 桜井さんの言葉が身に染みる。そうだ、俺一人で何もかもやっていかなければいけないわけじゃない。俺には晶子っていう、心強いパートナーが居る。晶子と一緒なら、結婚式の誓いの言葉じゃないが、どんな苦しみも乗り越えていける。晶子もきっと俺と一緒に歩いてくれるだろう。

雨上がりの午後 第1396回

written by Moonstone

 波乱万丈の人生だな・・・。俺は名立たると言われる新京大学に通ってるから、ミュージシャンになる、なんて言ったら親との衝突は避けられないだろう。その点からも、桜井さんの話は参考になる。

2004/1/1

[本当の日本改革の年を目指して]
 リスナーの皆様、新年のご挨拶を申し上げます(喪中の方もいらっしゃるかもしれないので)。昨年の東証の大納会では株価回復で大騒ぎしていましたが、果たして株価が上がったことで私達の暮らしに何か良い影響があったでしょうか?所詮東証に上場した大企業が大規模な首切り、人減らしの末に得た巨万の利益が映し出されたに過ぎません。本当に私達の暮らしを良くするには、私達の目線に立った政党の政権獲得が必要です。
 昨年はその絶好の機会だったにも関わらず、財界のシナリオどおりに動いた自民党+公明党=創価学会と民主党の実効性の乏しい「マニフェスト」選挙をマスコミが煽ったお陰で、有権者の多くは愚かしい選択をしてしまいました。その結果、2004年度政府予算案は国民負担増、給付減を基本にした国民いじめのものとなりました。
 もう地縁血縁や、労組や宗教団体の指示で動く投票は終わりにしましょう。幸い今夏には参議院選挙があります。半数の改選ですが、結果次第では衆議院にも大きな影響を与える重要な選挙です。私達の目線に立った政党を色眼鏡なしで見据え、その党を強く大きくすることを願って新年のご挨拶と致します。

本年も宜しくお願いいたします

「明。前にも話したと思うが、祐司君は将来の道を模索している段階だ。出来る限り質問に答えてやってくれ。」
「了解。」
「あなた、はい。」
「おう。」

 潤子さんの声で、マスターは潤子さんの方を向いて料理を食べさせてもらう。今までマスターと潤子さんとは何度か一緒に食事をしているけど、こんな風に食べさせ合いをするのを見るのは今回が初めてだな。その割には恥ずかしがったりする様子がない。実は二人きりの時には当たり前のようにやっているんだろうか?
 折角の機会だ。聞けることは聞いておこう。・・・やっぱりあのことは聞いておくべきだろうな。俺の将来は勿論のこと、晶子の将来にもかかわってくるであろう重大なことだから。

「一つ・・・聞いても良いですか?」
「何?」
「今の職業に就く時、ご両親に何か言われましたか?」
「そりゃ色々言われたよ。そんなことは職業の中に入らない、とか、世の中なめてかかってる、とか、まあ色々散々。俺は、自分の将来は自分で決める、やってみなきゃ分からない、って言って話し合い−怒鳴り合いと言うべきかな?それは平行線を辿るばかり。最後は、勝手にしろ、って突き放されたよ。アパートの保証人にもならない、って言われた。」
「じゃあ、住む所はどうやって確保したんですか?」
「叔父さん夫婦に親に内緒でなってもらった。嫁さんと結婚して今住んでる所に引っ越した時は、嫁さんが親を押し切って保証人になってもらったんだよ。俺が言うのも何だけど、嫁さんは芯が強いからね。」
「へえ・・・。」
「で、子どもが出来てようやく、俺の親にも嫁さんの親にも認めてもらえた、って感じかな。人間ってやつはどうも孫には弱いらしい。まあ、認められようが認められなかろうが、俺は今の職業を辞めるつもりはなかったし、嫁さんからは、辞めるくらいなら別れる、って逆にケツを叩かれたよ。」

雨上がりの午後 第1395回

written by Moonstone

「それが良いね。まだ安藤君の将来構想は未定みたいだし、井上さんの将来構想だってあるから、それを擦り合わせないといけないからね。学生の段階じゃ見えない部分は多いし。」


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