芸術創造センター こぼれ話
Dropped talk of Performing Arts Center

2004年8月31日更新 Updated on August 31th,2004

2004/8/31

[学生諸氏は楽園の終了?]
 今日で大半の学生諸氏は夏休み終わり。さあ、明日から頑張って早起きしよう。・・・って、今時は塾やら何やらで普段と変わらないのかな?就職活動中の学生さんは「夏休み?何の話?」という気分かもしれませんね。就職が厳しいのは貴方のせいじゃありません。利益を少しでも増やすために企業が政府の応援を受けて人減らしと正規採用の手控えを両立させているからです。
 今(8/30 23:00頃)、こちらは台風の影響で外は大荒れです。天気予報では明日朝にはすっかり晴れるそうですが、それ以前にこれから眠れるかどうかが心配です。今は精神がかなり参っている関係でちょっとした音でも耳障りに感じるので、この風と雨が作る雑音の中で眠れるか、と。
 それにしても、今年は西日本と北陸地方は散々ですね。台風が去ったと思ったら次のが来るんですから。家屋や産業の被害も結構なものになるでしょう。こういうのを「あの」アメリカでも公的支援するのに、日本が支援するのは大手銀行とゼネコンと軍需産業だけですからね。
 晶子は携帯を操作して液晶画面に見入る。その表情に嬉しさと幸せが同時に浮かんで来る。どうやら喜んでもらえたらしい。我ながらちょっと気取った文章だと思うが、晶子に喜んでもらえたならそれで良い。

「返信しますね。」
「ああ。」

 晶子は携帯を操作し始める。何度かボタンを押す動作はややぎこちないし−PCで日記を書く時のキータイプはかなり早い−表情もちょっと硬いが、真剣さの表れと思う。ゆっくりと時間が流れた後、晶子の指の動きが止まる。入力内容を確かめているんだろう。そしてボタンを押す。程なく俺の携帯から晶子と同じ効果音が流れる。液晶画面を見ると「メールを受信しました」というメッセージが出ている。ボタンを操作して「受信箱」を見ると、題名と差出人の署名「井上晶子(Masako Inoue)」が縦に並んで表示されている。題名は・・・照れくさくもあるし嬉しくもある。

「届いたよ。晶子からのメール。」

 俺は晶子に携帯の液晶画面を見せる。晶子は表情を綻ばせる。

「私からのメールですね。」
「読ませてもらうよ。」

 俺は携帯を操作してメールの内容を見る。・・・これまた照れくさくもあるし嬉しくもあるものだ。文字数という観点からすれば短いものだが、晶子の気持ちが綴られているというだけで満足だ。表情が緩んでいるのを感じる。

雨上がりの午後 第1632回

written by Moonstone

「ああ、間違いないよ。」
「それじゃ、読ませてもらいますね。」

2004/8/30

[ちょっと復活]
 昨日は午前から昼過ぎにかけて、猛烈な悪寒と発熱の繰り返しに苦しめられましたが(自律神経のバランス崩壊で体温調節が正常に出来ない)、どうにかそこそこ食べられました。メインで使っているノートPCでの作品制作は腰に負担がかかるので、サブPC(Windows95)で実行。漢字変換の勝手の違いに戸惑いましたが、どうにか1作完成しました(かなり梃子摺りましたけど)。多分次回は少なくとも4作品が足並みを揃えると思います。
 思えばこの半月、まともに米を食べてない(汗)。病院で処方される牛乳に味がついたような栄養剤か職場で買うゼリー状の栄養剤が主体でしたからね。栄養剤を飲んだだけでも酷い嘔吐感にやられる状態では、良く言えば腹持ちが良い、悪く言えば腹に残る米は食べられません。
 今日からまた仕事ですが、どうにか続けていけそうです。時間に余裕があればもう1作書き下ろして公開に繋げますが、あまり期待しないでください。それからメールのお返事は明日付で行う予定ですので、該当する方は今暫くお待ちください。遅れ遅れですみません(_ _)。

「試しに俺から晶子にメールを送るよ。」
「あ、はい。」

 俺はメニューから「新規メール作成」を選んで、まず送信者を選択する。とは言っても、これが最初だから一から晶子のメールアドレスを入力しないといけない。メモ帳の文字列と比較しながらボタンを操作する。変更したメールアドレスは気に入ってるが、入力はやっぱり面倒だ。
 どうにか入力を終えてメモ帳の文字列を比較して確認してから、題名を選択する。「テスト」じゃ味気ないからこうするか。何度かボタンを押して題名を入力する。携帯のサービスが入籍した、或いは入籍予定のカップルが使えるものだし、大学でも二人揃って結婚していることを公言したし、携帯でのやり取りが主に晶子との間のものになることを考えると、最も適切なものだと思う。
 次は内容。これも「テスト」じゃ味も素っ気もないし、晶子への初めてのメールだから、それなりのものにしたい。考えつつ、時に後戻りしながら入力していく。そしてようやく入力完了。第三者から見れば馬鹿げたものかもしれないが、その第三者に見せるものじゃないから構わない。そして「送信」を選択して十字キーの中央を押す。「送信しますか?」という確認メッセージが出るが、迷わず「はい」を選択。すると液晶画面にメールが送られていくようなアニメーションが表示され、その後に「メールを送信しました」というメッセージが表示される。その直後、晶子の携帯から効果音が流れる。携帯を操作した晶子の表情に喜びが浮かぶ。

「メール、届きましたよ。差出人はこれで良いですよね?」

 晶子は俺に携帯の液晶画面を見せる。そこには題名と差出人の署名「安藤祐司(Yuhji Andoh)」が縦に並んで表示されている。署名はメールアドレス変更の時に併せて変更したものだ−初期設定では空白だった−。題名も俺が入力したものだし、俺からのメールに間違いない。

雨上がりの午後 第1631回

written by Moonstone

 入力を終えて、俺と晶子はメモ帳に書かれた文字列と照らし合わせる。間違いはない。これで設定をすれば・・・。良し、これでOKだ。でも、これで本当に良いんだろうか?液晶画面には「メールアドレスを変更しました」という表示が出ているから変更されたんだろうが、何となく信用出来ない。

2004/8/29

[やる気ゼロ]
 いざ休日となるとやる気がとことんなくなるのが最近の傾向なんですが、昨日は食事が適当なのは勿論、買い物にも行かず、殆ど横になってました。最初目覚めた後でもう一度睡眠薬を飲んで寝たので(本当はいけない)眠気はかなり取れましたが、やる気の向上には至りません。
 連載の書き溜めファイルが今日の分から7番目に入りました。書き溜めファイルを作り始めたのは連載を始めて少ししてからなので全て網羅しているわけではありませんが、それでも400kBくらいはあります。3000行を区切りにしているんですが、過去の分を見ても大体8ヶ月くらいで到達するようです。
 今日の掲載分で携帯のメールアドレス設定のシーンがありますが、数年前なら実際に掲載出来たんですが、ウィルスや迷惑メールが氾濫する現状では書こうにも書けません。嫌な世の中になったものです。

「まずはメールアドレスを変えましょうよ。初期設定のだと何だかつまらないですし。」
「そうだな。」

 携帯の初期メールアドレスは英数字の羅列だ。説明書の該当部分を見たところ、悪戯メールや迷惑メールを防ぐために英数字を織り交ぜた長いものが良いそうだ。変えてみようとは言うものの、適当な文字列が思い浮かばない。どうしたものかな・・・。自分の名前が真っ先に浮かぶが、説明書の忠告から逸脱する。どうせなら分かりやすくて晶子と共通するものが良いんだが・・・。

「晶子。何か思いつくか?」
「そうですね・・・。こんなのなんてどうですか?」

 晶子は俺の電話の横に置いてあるメモ帳−使った例(ためし)がないが−に文字列を2つ書く。・・・なるほど。これなら俺と晶子に共通するものを含んでいるし、無味乾燥なものでもないし、英数字を織り交ぜた長い文字列という条件も満たしている。

「良いな。これにしよう。」
「はい。」

 俺と晶子は携帯を操作してメールアドレスを変更する。それにしても・・・入力が面倒だな。PCとかのキーボードならローマ字入力にしろ仮名入力にしろ、文字列をタタタ・・・と入力してスペースキーを何度か押せば良いんだが、携帯だと一つの文字を入力するのも結構手間がかかる。まあ、PCのキーボードよりキーの数が格段に少ないから仕方ないか。

雨上がりの午後 第1630回

written by Moonstone

 その後晶子と共に帰宅した俺は、晶子手製の昼食を食べた後、レポートを出来るところまで仕上げてから揃って携帯弄(いじ)りを始めた。レポートをしている間に携帯を充電しておいたし、晶子には先に説明書を読んでもらっておいた。

2004/8/28

[睡眠不足が原因らしい]
 昨日は朝っぱらから体調は最悪。重い頭痛、猛烈な嘔吐感、平衡感覚低下両手足の痺れなどなど。仕事どころか座ることさえままならず、このままだと危険、と思って休憩室へゴー。居室から遠いので到着した時には壁伝いでないと歩けない有様。その後ベッドにバッタリ。
 ・・・約6時間気絶(汗)。普段睡眠薬を飲まないと1時間も寝られない私がこれほど長時間気絶したということは、睡眠不足が尋常じゃなかったということでしょう。このところ(4月以降)薬を飲んでも3、4時間程度しか眠れてなかったので。頭痛と新たに出て来た腰痛が痛かったですが、どうにか復活。仕事に取り組みました。寝ていた分を残業したので帰宅したのは23:00前でしたが(汗)。
 今も頭痛がしますし腰痛は酷いんですが(屈み続ける仕事だったので)、これまでの自殺願望を伴う激しい気分の落ち込みはかなり緩和されました。よってキャプションのカウントダウンも停止。何とか更新しましたので、お楽しみくださいませ。まだあまり食事をする気にはなりませんが。
「はい。」
「楽しみにしてるわ。それじゃ、また後で。」
「はい。失礼します。」

 少し間を置いてプツッと切れる。液晶画面を見ると、受話器を置いた絵の描かれたボタンを押してください、と表示されている。割合静かに切れるものなんだな。潤子さんが静かに受話器を置いたせいかもしれないが。俺がボタンを押すと、液晶画面が最初の状態に戻る。

「記念すべき第1回目の通話は、祐司君と井上さんの間にすべきだったかな。」
「それはこれから何度でも出来ますから。」
「井上さんの言うとおりだな。それじゃ、一先ず家に戻ろうか。」
「「はい。」」

 俺と晶子はマスターの後をついていく。まだ便利さという面では実感を持てないが、使っているうちに分かるものだろう。お揃いの携帯、か・・・。そう言えばそういうシチュエーションがあるネット小説がある、とかいう話を聞いたことがある。指輪に続くお揃いの品。何となく嬉しい。

 マスターに連れられて店に戻った俺と晶子は、潤子さんに真新しい携帯を見せた。しげしげと観察された後、指輪と同じね、と言われた。指輪の材質は銀だからそのとおりだ。その後、晶子が、ファミリープランを契約したこと、そのサービスが入籍していなくても後日入籍したことを証明すればOKというサービスだと嬉しそうに言った。指輪をプレゼントした時と同じだ。

雨上がりの午後 第1629回

written by Moonstone

「もしもし。祐司です。」
「こっちに戻って来たら一度見せてね。」

2004/8/27

[4]
 3日ぶりに夕食らしい夕食を食べた。その後何気に左手が疼くな、と思って見たら、左手親指の付け根から血が滲んでいた。傷つけた記憶がないところからすると、無意識のうちに包丁を突き立てていたのだと思う。
 終業後のオンラインニュースで、東京都教育委員会(都教委)が「新しい歴史教科書をつくる会」が編纂した扶桑社の歴史教科書を2005年開校の都立中高一貫校で採択した、とあった。教育委員は自治体首長が任命する。財界とアメリカとタッグを組んで右翼改憲街道まっしぐらの自民&公明、自民のスペアとして財界が育てた民主が、代表的右翼の一人である都知事を支援しているのだから、都教委の委員が右翼連中勢揃いになるのは必然的。おまけに扶桑社は右翼マスコミの筆頭格、フジ・サンケイグループの一つ。虚構と欺瞞に溢れた臨海副都心に系列テレビ局の本社を構えるマスコミならではだ。
 今の日本は右翼と財界の側が勝ち組だ。勝ち組は自分達がいざとなったら日の丸と鉄砲を担いで戦争の最前線に立つことがないと分かっているから、ただ安全地帯で旗を振り回して煽るだけだと分かっているから、ああいうふざけたことが出来る。他のマスコミも勝ち組に回ろうとしているから他人事の報道で終わる。60年前の惨劇でも構図はまったく同じだった。歴史を覚えるだけで学ぶことをしなかった日本の行く末は見えている。
 女性は書類を入れた袋を先に出されていた手提げ袋に入れて、俺と晶子に近付ける。俺と晶子は袋を手に取る。

「消耗品のご交換などは当店以外の弊社支店でもお受けいたしますので、お気軽にご利用ください。ご契約ありがとうございました。」

 女性が頭を下げると、俺と晶子はつられるように頭を下げてから窓口を後にして、マスターの元へ向かう。立っていたマスターに先導される形で、ありがとうございました、の声に送られて俺と晶子は店を出る。

「どうだ?携帯を持った気分は。」
「まだ何とも・・・。」
「それじゃ、家(うち)に電話してみると良い。かけ方は分かるだろ?」
「はい。見本を適当に弄(いじ)っていたら直ぐ分かりました。」

 俺は携帯を広げてボタンを操作する。受話器を上げた状態の絵が描かれたボタンを押して、店の電話番号を入力してから−市外局番から入力しないといけないのが面倒だな−十字キーボタンの中央を押す。耳に当てると普通の電話と同じコール音が聞こえてくる。

「はい、渡辺です。」
「あ、潤子さんですか?祐司です。今、晶子とマスターと一緒に携帯の店の前に居ます。」
「ということは、祐司君の携帯からかけてるのね?」
「はい。普通の電話と変わらないです。」
「電話機を持ち歩いているのと同じ感覚で良いのよ。機種は晶子ちゃんとお揃い?」
「はい。色も。」
「やっぱりね。それじゃ、ちょっと晶子ちゃんに代わってくれる?」
「はい。」

 俺は晶子に携帯を差し出す。晶子は携帯を受け取って耳に当てる。

雨上がりの午後 第1628回

written by Moonstone

「今回ご購入いただいた機種の取扱説明書などは、こちらに入っております。充電セットやアダプターなども入っております。電池は予め充電されておりますが、本格的にご利用される前に一度完全に充電していただきますようお願いいたします。」

2004/8/26

[5]
 食欲が減退。薬は食後服用となっているので、儀礼的に栄養剤と葡萄一房を放り込んでから飲む。私は夏になると夏バテしていなくても2、3kg体重が減るが、今年はそれ以上減りそうだ。多分60kgを切るだろう。
 メーラーのフィルタリング機能の設定を変えたが、どうしても受信途中で一度止まる。使用者のポンコツぶりが伝染したのだろうか。
 電車の中や講義の最中なんかにも携帯で会話したりメールを読み書きしたりしているのは、そういう要因もあると思う。何時でも連絡が取れる筈なのに応答がないと余計に不安になるんじゃないか?元々携帯そのものに良い印象を持っていなかったせいもあるんだろうが、これで万事解決か、と思う。

「1番の番号札をお持ちのお客様。」

 女性の呼び声が店内に響く。番号札を持っていた俺と晶子は立ち上がり、揃って先に紹介された窓口へ向かう。そこには別の女性が立っていて、カウンターには小さめの手提げ袋が2つと銀色の物体が2つ並べられている。俺が番号札を差し出すと、女性は一礼する。

「お待たせいたしました。こちらがご購入の機種になります。」

 俺と晶子は女性から携帯を受け取る。真新しい銀色をした蝶番(ちょうつがい)の本体を広げると、効果音のような音がして夜景の写真が液晶画面に映し出される。畳むとまた効果音がする。

「こちらがご契約書、お申込書のお客様控え、そして請求書兼領収書になります。電話番号はこちらに記載されております。」

 女性は書類を順に広げて見せる。契約したサービスの内容やら氏名やらが記載されている。女性は俺と晶子の前で一連の書類を折り畳んで、カウンターの下から取り出した冊子らしいものが入った袋の中に入れる。

雨上がりの午後 第1627回

written by Moonstone

 マスターのアドバイスは頭では分かるが、まだ実感とまではいかない。そりゃああの無闇に広い大学の何処に居るかの目星もつかない相手と何時でも通話やメールのやり取りが出来るんだから、使いようによっては便利だとは思う。だが、何時でも使える、ということは裏を返せば、何時連絡が入るか分からない、という不安を抱えることにもなる。

2004/8/25

[6]
 昨日は結局仕事1つ完了出来ず。身体がまるで言うことを聞かなかった。誰も居ない職場で一人済ませた夕食も消化不良を起こしているらしくて嘔吐感がずっと続いている。それも仕事を完了出来なかった理由の一つだが、所詮は言い訳に過ぎない。自分の無力無能ぶりを改めて思い知る。
 昼休みにぼんやりページを彷徨っていたら、何年度だったかは忘れたが、自殺者数は交通事故死者数の3倍だと知る。交通事故はニュースのネタになるが自殺は有名人か衝撃的なもの以外はネタにならないので報道しないらしい。
 「貴方を愛する人が最もショックを受ける」と言うが、私を愛する人など居やしない。「愛されなくても愛することは出来る」「果実を与えることの喜び」と言うが、愛や信頼を悉く弄ばれて踏み躙られた私には、受け取る相手が居ない果実をばら撒く余裕はない。相手が居ないのに与えた果実は、落ちて砕けて腐るだけ。所詮はそういう空しさを知らない勝ち組の戯言に過ぎない。そういうのは慈善ではなく偽善ということを勝ち組であるその人は知るまい。
「何で知ってるんですか?」
「この静かな店内でこの距離なら十分聞こえるよ。」

 俺は周囲を見回す。それほど広いとは言えない店に居る客は、俺と晶子とマスターを含めても10人に満たない。店内には薄くBCMが流れているが、会話や接客を阻害するには至らない。待機用のソファは店のほぼ中央にある。ちょっと耳を澄ませば他所の会話なんかを十分聞き取れる。
 今は待つしかないから、俺はマスターの向かいに座る。俺の左隣に晶子が腰を下ろす。他の客は窓口に居たり陳列されている新機種を見ていたりするから、座るのに特に遠慮は要らない。

「それにしても、祐司君はまだしも、井上さんが携帯を持ってなかったっていうのは意外だな。」
「そうですか?確かに学科やゼミでも携帯を持ってないのは私くらいで、持ってないって言うと珍しがられますけど。」
「この質問は二人に共通するけど、どうして今まで携帯を持ってなかったんだい?」
「持つ理由が見当たらなかったからです。」
「私もです。」
「ということは、それこそ二人専用の新しいコミュニケーションの道具になるわけか。持つことになった経緯は別として、丁度良い機会になったんじゃないか?」
「まだ実感が湧かないです。どんな時に使えば良いのかよく分からなくて・・・。」
「そう難しく考えなくて良い。自分が今何処に居るかを伝えるとか、今から迎えに行くとか、内容は業務連絡のようなものでも、今まで相手を探して面と向かわないと言えなかったことを伝える手段にすれば良い。そもそも電話自体が、それまで手紙や電報くらいしかなかった通信手段に新たに加わったものなんだし、それが今度はわざわざ公衆電話を探さなくても何時でも使えるようになった、という程度に思っておけば良い。」

雨上がりの午後 第1626回

written by Moonstone

「お待たせしました。」
「ん?否。後は引き渡し待ちってところか。」
「はい。」
「で、将来の入籍を前提にしたサービスで、機種も色もお揃い、と。」

2004/8/24

[7]
 昨日(正確には一昨日夜)から巡回ページを半減。足切りの目安は「頻繁(最低でも2、3日に1回)に更新されるコンテンツがあるかないか」。これを職場でも適用(始業前や昼休みに見る)。職場では見るページが殆どなくなった。
 最初から最後までフル稼働。他人と喋ったのは5回で時間は何れも30秒以内。予想していた上司からの叱責はなし。だが終了報告と同時にあるだろう。そのつもりだし、気構えがより確固たるものになるだけだが。今日は意地でも1つ終了させる。夕食の基本は準備してあるし自宅からちょっと持っていく。帰宅時間は何時になるか分からないが、昨日の進行具合から見て日付変更を迎えるには至らない様子。
 昼休みと通院時に雨。昼は久々に大降りだったが傘は使わなかった。濡れて風邪をひいても構わない。昼休みにページを検索。目的のページは見当たらず。引き止める内容のものはあったが、負け組の私には勝ち組の哀れみにしか見えない。エヴァで綾波レイが「私が死んでも代わりは居る」と言ったが、私もそうだ。勝ち組はどれだけでも負け組を作れる。自分が何時そうなるか分からないのに、いい気なもんだ。でもその間は人生を謳歌出来るから良い身分ではある。
 本人以外の人間が契約して口座から金を巻き上げさせるわけにはいかないから、当然だな。俺はズボンのポケットから、晶子はハンドバッグから財布を取り出してそこから持参した運転免許証を取り出す。親は確実な身分証明になると言ってたし、マスターも警察屋が保証してるものだから最も確実と言ってたがこういう時になると実感出来る。顔写真もあるし本籍地も住所もバッチリ記載されているから、確認する側としても一番やりやすいだろう。
 女性は俺と晶子が差し出した運転免許証と書類、そして俺と晶子の顔を忙しなく見比べる。一人であれだけの書類の確認をするのか。大変だな。確認が終了したのか、ありがとうございました、と言って運転免許証を返すと、今度はPCに向かってキーボードを叩き始める。時折マウスを操作しつつ書類を見ながらだが入力スピードはかなり速い。所謂ブラインドタッチというやつか。暫くしてPCの操作を終えた女性が向き直る。

「センターに登録いたしました。サービスAとファミリープランの併用とPAC910ASを2機ご購入で、安藤祐司様が32500円、井上晶子様が5350円になります。」

 契約書でファミリープランの「代表者」となっていたのは俺だったから−差し出された書類がそうなっていた−料金は俺の方が高くなるわけか。この程度なら痛くも痒くもない。俺は財布から4万円を出す。晶子は6000円を出す。女性は釣り銭とレシート、そして・・・番号札?を差し出す。

「こちら番号札になります。現在センターからの返信や電話番号などの設定をいたしておりますので、番号が呼ばれましたら、あちらの窓口へお願いいたします。それまで掛けてお待ちください。」

 何だ、契約完了で金を払ったら直ぐ引渡し、じゃないのか。まあ、金を払ったから後は待つだけだ。俺と晶子は席を立つ。ありがとうございました、の声に送られてマスターが座っているソファに向かう。

雨上がりの午後 第1625回

written by Moonstone

「恐れ入りますが、運転免許証などご本人様と確認出来るものをご提示願います。」

2004/8/23

[8]
 2日間で5行。これが今週の作品制作量。やりたいこと、やらなければならないこと、その何れもが出来ない苦悩。そしてそれから生まれる自己嫌悪、否、自己否定。期待外れに終わらせるだけなら居ない方が良い。今の世の中が「勝ち組」「負け組」で二極化している意味がよく分かる。勝ち組だけで十分。負け組は消えろ。そう言いたいのだから。
 勝ち組の栄光が、幹部の飲み食いに費やされている受信料で高らかに宣伝される一方、負け組は音もなく消えていく。心配と迷惑をかけるだけの負け組に残された道なんて所詮そんなもの。その程度の存在なのだから仕方ない。
 今日からまた仕事。行けば上司の叱責が待っているだろう。出来ている筈、否、出来ていて当たり前のことが出来ていないのだから止む無し。今抱えている仕事2件を片付ける最長のタイムリミットは8/31。それまではとりあえず生きる。後は知らない。今でさえも分からないのに将来のことなど分かる筈もない。
「そうですね。この機種にしようかな。晶子はそれで良いか?」
「はい。色は出来ればシルバーが良いです。」
「俺もそう思ってた。」

 俺は女性に向き直って見本を差し出す。

「この機種で色は2台ともシルバーでお願いします。」
「かしこまりました。」

 女性はサービスのメニューや携帯の見本を手早く片付けると、書類を何枚か取り出してボールペンと共に差し出す。「サービス申込書」やら「口座振替申込書」やら色々ある。この辺はレンタカーを借りた時とよく似てるな。ものは違えど契約だから似ていても不思議じゃないか。

「それでは恐れ入りますが、こちらの書類の太枠内に必要事項をご記入ください。印鑑もお願いします。」

 俺と晶子は揃って書類に氏名やら住所やらを書き込んでいく。フリガナを書く欄が少々狭いのはこの手の書類のお約束。生年月日と満年齢。職業は・・・学生だよな、やっぱり。で、金融機関の名前と口座番号。その他あれやこれやと書いて「印」とあるところに片っ端から印鑑を押す。朱肉は出されていた。
 チラッと晶子の方を見る。晶子が字を書くのを見るのって今回が初めて、か?年賀状は出してないし、レポートを書いてるところも見たことないし。綺麗な字だな。俺のが余計に雑に見える。晶子と揃えて書類を差し出す。

雨上がりの午後 第1624回

written by Moonstone

「どうもありがとうございました。」
「いえ。宜しかったでしょうか?」

2004/8/22

[衝動と葛藤]
 兎に角今は音や人が耳障り目障りに感じられてなりません。ロードノイズ(車の走行音)はおろか、ラジオやCDの音も雑踏も神経を逆なでされているようにしか感じられません。夜、気晴らしになるかと思って近くのショッピングセンターに出かけたのですが、そこで見かけた人、特に女子どもが無性に目障りで(何度殴りかかりそうになったことか)、気分の悪さが限界に達したところで帰宅しました。
 自宅ではモジュラージャックを引き抜き、携帯の電源は切りました。兎に角自分の感情が高ぶる要因となるものを遠ざけたいからです。自分で情緒不安定がただならない状態だと分かっているので、今はそれを抑えるのが精一杯です。
 無性に何かを壊したい、誰かを殴りたいとかいう衝動が絶え間なく湧き上がってきて、それをどうにか抑え込んでいるのは良心とか理性とかいうものが多少なりとも残っているからでしょうか。それが良いのか悪いのかは分かりませんが、意識ある限りこの葛藤は続くでしょう。

「その機種は幾らですか?」

 今現在の俺にとっての最重要課題を挙げる。乗り気の晶子には悪いが背に腹は代えられない。金が足りなくて払えません、なんて恥ずかしくて言えない。この質問をした時点で「手持ちの金に限度があります」って宣言してるようなものかもしれないが。

「こちらは29800円になります。お客様のプランですともう1台の方は2980円になります。」
「そうですか。」

 何だ、意外と安いな・・・。しかし、もう1台の値段が1/10になるっていうのは何なんだ?そんなんで商売やっていけるのか?会社を乗り換えない限りは安くしておくことやサービスとかで客を寄せて儲けるという算段か?・・・こんなこと考えても仕方ないな。今は携帯を買うことに専念しよう。
 俺は他の機種の機能や値段を尋ねる。だが、機能もそうだが値段も似たり寄ったり。こういう場合、現時点での最高性能の機種を買うのがセオリーだが、使い勝手が知りたい。確実に必要な機能である通話とメールがすんなり出来ないことには話にならない。

「ちょっと使ってみて良いですか?使い勝手を見たいので。」
「はい。見本ですので機能の実行は出来ませんのでご了承ください。」

 女性が差し出した「お勧め」の携帯を受け取る。折り畳むと掌にすっぽり納まる程度の大きさ。広げてボタンを操作して機能を探る。通話は・・・このボタンを押して電話番号を入力すればOK、か。メールは・・・このボタンを押してメニューの中から選ぶわけか。その他「着信メロディ」やら「カメラ」やら色々ある。シンセサイザーとかと操作感覚が似ている部分がある。いじっているだけでも結構楽しめそうだ。

雨上がりの午後 第1623回

written by Moonstone

 ふーん。着信メロディを赤外線通信でやり取りか。そう言えば、何処そこのアーティストの着信メロディが今度携帯サイトからダウンロード出来るとか、そんな会話を大学だったか電車の中だったかで耳にしたことがあるな。まあ、ありきたりな電話のコール音より良いかもしれない。

2004/8/21

[臨界点突破中]
 頭痛、吐き気、両足の痺れ、平衡感覚低下、自己嫌悪、情緒不安定。これらが今の私が自覚出来る症状です。昨日(実際には一昨日)から特に後ろ2つが酷く、普通なら何も感じない筈のラジオすら五月蝿く感じ、オリンピックの中継に切り替わったところで激怒してラジオのスイッチを文字どおり叩き切りました(指で十分OF/OFF出来るものに拳を落とした)。
 元々オリンピックに否定的な側面はありますが、普通ならこんなに極端な行動はしません。でも今は普段ならさして気にならないようなことでも神経を逆撫でされる気分になり、自己嫌悪も相俟って包丁など刃物類を持つのが非常に怖いです。このお話をしている今でも、無性に何かを壊したくてなりません。
 一昨日に職場で紹介されていたストレス度診断を実施したら、結果は全て危険水域どころか臨界点突破。そのアドバイス文ですら読んでいて無性に腹が立って、昨日のキャプションが生まれたわけです。今は表面上冷静ですが、実際は非常に危険です。この土日で収まらなかったら薬増やします。
 それに値段との兼ね合いもある。陳列してあった機種は機能こそ大々的に書いてあったが、どれも値段は書いてなかった。一応所持金はそれなりにあるが、5万6万となると月曜の朝一番にATMへ直行だ。それ以上は払えない。幾らくらいなんだろうな・・・。

「主にお二人の間でお使いでしたら、同じ色にされると宜しいかと。」
「そうするつもりですけど、色々あって目移りしちゃいますね・・・。」
「今でしたら、こちらがお勧めです。」

 晶子が言うと、女性はカウンターに並べてあった見本の一つを取って広げて見せる。

「こちらは先月発売された最新機種でして、カメラの画素数は300万、動画の作成・編集、赤外線通信機能、着信メロディなどにご利用いただけます同時発音数は64音など、豊富な機能が凝縮されております。」
「色は何色がありますか?」
「こちらですとブラック、ホワイト、シルバー、プラチナブルー、エメラルドグリーン、ショッキングピンクの6種類からお選びいただけます。お客様の指輪に合わせるのでしたら、シルバーがお勧めですね。」
「あ、さっき着信メロディの説明がありましたけど、それって自分でも作れるんですか?」
「はい。お客様ご自身で作っていただくことも可能です。お作りの着信メロディはメールに添付してやり取り出来ますし、こちらの機種でしたら赤外線通信機能をご利用いただくことでもやり取りできます。赤外線通信機能でのやり取りですと料金が発生しませんので、お客様がお選びいただいたプランですとより一層お得かと。」

雨上がりの午後 第1622回

written by Moonstone

 次はいよいよ機種選びか。俺は手元にあったメニューを晶子の方に寄せる。機能が少ないものを探すのが難しい。目立った違いと言えば、せいぜい色やカメラの画素数といった細かいことだ。新機種の方が性能としては良いんだろうが、性能と使い勝手は必ずしも一致しない。

2004/8/20

[出来るものならとっくにやってる!!]
 ・・・以上。
「何でございましょう?」
「今、俺達が使っている金融機関は別なんですけど、それでも大丈夫ですか?」
「はい。弊社とのご契約者様の中には、ご結婚された後もご勤務先などへの届出が大変、或いは金銭管理を区分したいなどのご理由で金融機関や口座が別のままのご夫婦も居られます。弊社では様々なライフスタイルに柔軟に対応いたします。金融機関や口座などの変更につきましては弊社支店にて随時お受けいたします。勿論変更は無料でございますのでご安心ください。」

 ここまで土俵が固められていてはそこに上らざるを得ない。俺の気持ちを新たな方向から固める材料になるし、何より晶子に恥をかかせたくない。チラッと晶子を見ると、その目が何を言いたいかを明確に示している。

「それじゃ、このサービスとファミリープランをお願いします。」
「かしこまりました。それではこちらから機種をお選びください。」

雨上がりの午後 第1621回

written by Moonstone

「祐司さん。このサービスとファミリープランの併用で良いですか?」
「・・・一つ聞きたいんですけど。」

2004/8/19

[ルールなければモラルなし]
 仕事では際限なきセキュリティ対策に頭を悩ませ、自宅では容赦なしに押し寄せてくるウィルスとDMの嵐に辟易している私ですが、今の日本社会を見てみると、他人を困らせたり自分さえ良ければ良いという考えの方が当たり前のようですね。約30年近くも発電所の重要な設備を点検するどころか、指摘されても聞き流した関西電力、選手がオーナーに逆らうなと王様気取りで(実際その気だったようですが)振る舞い、自身が最高責任者を務めていた球団の不祥事についてはだんまりを決め込む渡辺恒夫氏などなど・・・。
 これが当たり前なら、ウィルスを作ってばら撒いたり、腹が立ったから誰でも良いから人を刺す、なんて事件が起こって当然です。政治家や財界人や「識者」やらがモラルの低下を批判したりしてますが、貴様らが言えた義理か、と思うばかりです。自分の利益追求の邪魔になるルールは何でもかんでも「規制緩和」の美名で排除してやりたい放題やっておいて、他人のモラル低下を偉そうに批判出来る立場か、身の程を知れ、と。
 今は情報の量も入り口も一昔前とは桁違いです。子どもは大人の嘘や欺瞞などとうに見抜いています。今の大多数の大人、特に組織の頂点に立つ奴らや「識者」は子どもや社会のモラル低下を偉そうに批判出来やしません。こんな社会を作ったのは他ならぬ今の「大人」なんですから。
 文字の場合は対応する文字コードがあるから、それに置き換えれば良い。置き換えや元に戻すことはコンピュータの仕事だ。置き換えたデータも画像や音声に比べればもの凄く小さい。女性の説明どおり伝言メモの代わりに使う程度の量だとそれこそたかが知れている。だから音声を取り扱う留守番電話は別途申し込みで−こういう場合は大抵有料を意味する−、メールは無料なんだろう。

「お客様の場合ですと、ファミリープランを併用されると更にお得になりますよ。」

 女性の言葉を理解するのにタイムラグがあった。この女性、俺と晶子を夫婦と思ってるらしい。

「あ、あの、俺と・・・」
「そのプランはどういったものなんですか?」
「こちらになります。順にご説明いたしますと・・・。」

 俺の言葉を遮った晶子の問いに、女性は別のメニューを出して説明を始める。夫婦や家族だと誰か一人が先に提示された基本料金を払うだけで他の分の基本料金は全て割引になる他、プランに加入している夫婦や家族間の通話やメールが割引になるとか色々「特典」がある。・・・魅力的ではある。

「−というプランです。」
「私達は事情があってまだ入籍していないんですけど、それでもそのプランは適応されるんですか?」
「はい。ご契約期間内に戸籍謄本(こせきとうほん)の写しなど、入籍されたことを証明する書類を弊社支店に提出していただければ構いません。婚約されたお二人が、記念の一つとして弊社のこのプランをご契約される例が数多くございます。」
「契約期間というのは何年になるんですか?」
「1年単位でして、解約を申し出られない限りは弊社で更新手続きをさせていただきます。尚、このプランをご利用の場合、入籍されないまま解約されますと、それまでのご利用に相当する料金を請求いたしますのでご注意ください。」

 こうしてまた一つ既成事実が出来ようとしている。晶子が乗り気で−横顔の輝きを見れば分かる−女性もここまで説明したということは、少なくとも女性には俺の説明は通用しないだろう。それどころか、説明すれば晶子に大恥をかかせることになる。

雨上がりの午後 第1620回

written by Moonstone

 晶子の問いに女性が答える。画像も音声もコンピュータで記録出来るようにするには何らかの方法で0と1の羅列にしなきゃならない。所謂ディジタル化というやつだが、その場合、元に忠実に再現しようとすればするほどディジタル化されたデータは大きくなる。逆にデータを小さくしようとすると元とはかけ離れてしまう。再現の良さかデータの縮小かのどちらかの選択を迫られるということだが、どちらにせよ画像や音声のデータは、ちょっとしたものでもかなり大きくなってしまう。

2004/8/18

[ベネズエラ国民の選択]
 商業新聞ではちょこっと取り上げている程度でしたが、南米の一国でまた一つ大きな自主独立の波が起きました。ベネズエラという国をご存知でしょうか?南米で唯一OPEC(石油輸出国機構)に加盟する石油産出国です。この国でチャベス大統領罷免の是非を問う国民投票が行われ、反対多数で罷免が否決されました。
 これだけだと「?」と思われるでしょう。実はベネズエラのチャベス政権はこれまでの対米言いなり外交路線を自主外交路線に転換し、国民の圧倒的多数を占める貧困層の生活水準底上げ、教育制度の拡充など社会基盤整備に取り組んできました。それが気に入らない前政権与党や財界は同じくチャベス政権が気に入らないアメリカの支援を受けて、自身が掌握する大手マスコミを軸に反チャベス政権の大キャンペーンを展開してきました。
 これまでにも前政権与党や財界、アメリカはクーデター(失敗)や石油公営企業のゼネストなどで妨害してきて、今回の大統領罷免の是非を問う国民投票もチャベス政権を「独裁的」「強権的」と大手マスコミが宣伝する中行われました(某新聞はアメリカの影響そのままの垂れ流し報道をやってました)。しかし結果は「ノー」。アメリカの圧力を跳ね返した国民世論。どこぞの政府と国民も遠い南米の一国の胎動を見習うべき時ではないでしょうか。
 女性は少々困惑した様子で脇のPCのキーボードを叩き始める。こんな条件を提示してその料金を計算しろ、って言ってくる客が来るとは思ってなかったんだろう。俺だって別に意地悪してるわけじゃない。基準とは行かなくても目安が知りたいだけのことだ。
 キーボードを叩く女性の手が断続的に止まる。待つだけの時間が過ぎていくが別に退屈はしない。時々カウンターに出された携帯の見本を見ながら結果が出るのを待つ。暫くして女性の視線がこちらに戻る。

「ご提示いただいた条件ですとこちら、ベース1の料金枠内で十分収まる計算になります。」

 女性は、問題のサービスが書かれた場所の、基本料金が倍になる前の「一定枠内」の部分を指差す。

「通話されるお時間を1回3分、メールを1回500文字としますと、このサービスでしたら一月あたり通話は100回、メールは200回ご利用いただけます。500文字というのは相当な量ですので、伝言メモの代わりに使われるようなイメージでしたら、ご利用回数はぐっと増えます。」
「そうですか。」
「メールに限定してお話いたしますと、メールの料金計算は回数もそうですが、1回あたりの送信量にも依存いたします。メールに別のファイルを添付、特に動画を添付されますと送信量は大きくなりますが、メール単体でしたら非常に小さなものです。伝言メモの代わりのようなイメージですと多くて100文字くらいですから、ご用件をお伝えの場合は通話よりメールをご利用される方が宜しいかと思います。」
「どうしてですか?」
「通話ですと、相手の方の携帯の電源が切れていたり電波が届かない地域にいらっしゃったりすると、別途お申し込みいただく留守番電話に切り替わるか、繋がらない旨のメッセージが流れます。メールでしたら送信履歴は残りますし、送信されたメールは全て一旦センターがお預かりしますから、お相手の方が後でも受信出来ます。弊社のサービスではメールのお預かりに関しましては無料ですから、料金的にも確実性の面からもお得かと。」

雨上がりの午後 第1619回

written by Moonstone

「例えば、通話は毎日2回で各3分、パケットは・・・携帯サイトとかは使わないからメールだけで毎日1回500文字くらいだとして、それだとどうなりますか?」
「えっと・・・。少々お待ちいただけますか?」

2004/8/17

[消せるボールペン]
 8/14に行ってきたコミケで、目的のサークルを回った後ホールを出て何気なく歩いていたら、文具やら何やらの売り場に居ました(基本的に方向音痴)。そこで空くじなしの無記名アンケートをやっていたので、大して考えることなしに答えて提出。で、くじをひいたんですが、4等。まあ、1等から4等までですから空くじなしという触れ込みには違いないけど(- -;)。
 それで賞品を選んでいたら(最下位だけにいっぱいあった)、ふと目にとまった「消せるボールペン」。ボールペンを使う機会は仕事でそれなりにありますし(メモや仕様設計の下書きなど)、その時の誤字脱字はごちょごちょと塗り潰して横から再開、なんてことやってる関係もあって、ちょっと興味を持ってゲット。
 試してみたのですが、確かに消えます。書いてからあまり時間が経過していなければ、キャップについている専用の消しゴム(らしいもの)で消せます。惜しむらくはよく考えもせずに青色を選んできたこと。まあ、自宅の私用と割り切って使います。替え芯とかあると長く使えそうですけどね。

「ねえ、祐司さん。これなんかどうです?」

 尋ねてきた晶子が指差しているサービスのメニュー−一覧というべきか−を見る。一定枠内は通話とパケットが基準の基本料金込みで、それを超えると基本料金が倍になる程度の天井で一定になる、というやつだ。利用頻度によって料金が2通りに分かれる、といった感じか。他のと見比べてみても一番妥当そうだ。
 通話は時間という分かりやすい料金の基準があるからまだしも、問題はメールだな・・・。大学で使えるPCのメールは無料だから−金取られたらたまらない−メールの料金基準ってのが感覚的によく分からない。分からないまま使ってべらぼうな料金を請求されたらたまらない。聞いておくか。

「あの・・・。このサービスだと通話とパケットの量に応じて基本料金が2通りに分かれるみたいですけど、分かれる目安となる通話とパケットの量はそれぞれどのくらいですか?」
「えー、それはですね・・・。通話とパケットの割合でも変わってまいりますし、それぞれのご利用時間によっても変わってまいりますので・・・。」

 窓口の女性の歯切れは良くない。改めてサービスのメニューを見てみる。「一定量ならこのお値段!」とか宣伝文句が書いてあるが、その端に数字を伴う※印がある。メニューの一番下に細かい文字で色々書いてある。何々・・・。あ、女性の言うとおりだ。通話とパケットの利用割合やそれぞれの利用時間によって変動する、って書いてある。
 だが、俺としては明確な基準が欲しい。この程度なら大丈夫だろう、と思っていていざ請求書を見たらあらびっくり、なんて御免だ。でも、上回った場合の天井額も固定だし、それでも月5000円もいかないから聞く必要はないかもしれない。それに、割合や時間によって違うというから女性も説明しようがないということくらいは分かる。それじゃ仮の条件を提示してみるか。

雨上がりの午後 第1618回

written by Moonstone

 通話が出来てメモ代わりにメールが使えればそれで良い、と思っていた俺の考えは甘かったようだ。たかが持ち歩きの電話にこんな機能があってどうするんだ、という気持ちもあるが、それをない方をくれというのが無茶な以上は仕方ない。使わなきゃ良いだけの話だし。

2004/8/16

[リスト作成]
 昨日まで5日間休みでしたが、作品制作につぎ込めたのは1日だけ。残る2日は完全に突っ伏し、1日はコミケ後これまた突っ伏し、1日(昨日)は実家から来た査察団(両親(笑))の相手の他は殆ど突っ伏し。これじゃ普通の週末と大して変わらない(汗)。
 そんな中、昨日からボツボツとキャプションにあるようにリスト作成の準備に入りました。連載の中には幾つも曲が登場するんですが、全て実在する(私が持っている、というレベルで)ものです。ですが、「これってどんな曲?」っていう方も多いんじゃないか、否、むしろその方が圧倒的多数かと思います。「Fly me to the moon」や倉木麻衣さんの曲はまだしも、他のは完全に私の趣味丸出しですからね(嫌、前者2つもそうなんですが)。
 私自身、これまでどれだけ登場させたか知りたい、なんて気持ちが前からちょっとありましたし、この際一覧出来るようにするのも良いかな、と。そんな暇あるなら新作作れ、と言われそうですが、身体がままならない現状ではとりあえずやりたいことからするつもりです。無理をするのは仕事だけで沢山です。一気に全部は無理でしょうから小出ししていきます。
「ということで、日曜の朝一番にお願いします。」
「分かった。朝9時までに店の裏側に来なさい。会社の場所は大体知ってるから、機種とサービス選びを全部ひっくるめても2時間あれば事足りるだろう。」
「電話のかけ方は簡単だから、機種とサービスを選ぶことだけ考えれば良いわよ。」
「「宜しくお願いします。」」

 これで携帯を買うことは決まった。後はどんな機種を買うか、どんなサービスを選ぶか、だな。電話機を持ち歩くようなもんだから通話が毎日1回くらいの頻度で出来て、それで料金が固定電話くらいで納まれば良いんだが。
 学科の奴は智一を含めて全員−俺が知る限りだが−携帯を持ってる。使用禁止の筈の図書館や講義の最中でも携帯を操作している奴をちょくちょく目にする。メールを打ったり読んだりしたり、携帯サイトにアクセスしたりしているという。電波が届かない時の−携帯の画面を見ながらアンテナが1本とか言っているところに遭遇したことがあるからだ−メモ代わりに出来るならあった方が便利かな。

 そして日曜日。時間は午後9時過ぎ。場所はマスターが連れて行ってくれた携帯の店。東門から、という条件付きだが大学に程近い。大学の周囲は学生を見込んだアパートやマンション、一般住宅が犇(ひしめ)く住宅街。おまけに近辺には高校や中学もあるという−見たことがないから聞いた話を信じるしかない−。客には事欠かないだろう。
 かく言う俺は窓口−銀行みたいだが俺には他に適当な表現は見当たらない−で見せられたサービスの内容と機種の多さに戸惑っていたりする。マスターが言っていたとおり、一定時間内なら通話料金は基本料金込み、ってな感じのサービスどころか、メールやら何やらも一定量なら基本料金込み、なんてサービスがあって、まさに選り取りみどり。更に機種も色とりどりで機能はカメラやら動画作成、編集なんかが出来たりするのが当たり前でこれまた選り取りみどり。それらがない方を要求するのが無理のようだ。

雨上がりの午後 第1617回

written by Moonstone

「それじゃ・・・日曜の朝一番に連れて行ってもらうってことで良いか?」
「私は良いです。」

2004/8/15

[宴の後]
 コミケに行ってきました。前日の予報で最高気温が34、5℃となってましたがやはり暑かったです。それでも暑さに耐性がある私にはそれほど厳しくなかったです。薬の副作用でやたら口が渇くので水分補給はしましたが。昨年は3日目だったかな?会場の周囲をぐるりと一周させられてようやく入れたんですが(2時間は並んだ)、今年は2日目ということと入場制限解除の時間(11時頃)を見越して行ったので、割とすんなり入れました。
 で、お目当てのサークル3つを回ってブツを購入(予想どおり最初迷った(汗))。その後ひととおり会場を巡って昼食を食べてから帰還。往復の所要時間約6時間、会場に居た時間約1時間。・・・何しに行った、と思われるかもしれませんが、遠出、まして日帰りなんて大抵こんなもんじゃないですか?
 大勢の人で賑わう会場。これもひとえに平和だからこその光景。時の流れを逆戻りさせようと衆議院議員の9割が争っている今、59年前の傷痕を見直してみてはいかがでしょうか?今日は59回目の終戦記念日です。
「祐司君と晶子ちゃんなら月何万円にもなるような使い方はしないだろうし、この機会に新しいコミュニケーションの手段が出来るとでも思ってもらえれば良いわ。お金のことは気にしないで、二人のことだけ考えてね。」

 マスターと潤子さんの言葉は、俺と晶子を単なる一時期のバイトの学生と軽く考えていないことを改めて裏付けるものだ。こんな「支援」が得られるのなら携帯を買うことに迷う必要はない。となれば、後で決めて電話するより、この場で決めておいた方がマスターと潤子さんにとって都合が良いだろう。

「マスター。前言撤回になりますけど、この場で晶子と相談して曜日と時間を決めます。良いですか?」
「ああ、それは構わんよ。」

 「足」となるマスターの了解を得て晶子に向き直る。俺は殆ど自炊をしてないに等しいからレポートを作る時間さえ確保出来れば何時でも良い。晶子は自炊してる関係で買出しとかがあるから、晶子の都合を優先した方が良いだろう。

「晶子は何時頃が良い?俺は投げやりに聞こえるかもしれないけど何時でも良い。」
「私は・・・買い物を土曜の午前に済ませておきたいので、それ以外なら何時でも。」
「この店が開くのが午前11時だから、それまでに済ませられるものならその方が良いな。マスターと潤子さんにもあまり迷惑がかからないし。」
「となると、日曜の午前中で・・・午前9時頃でしょうか?携帯を売っているお店が何時頃から営業しているのか分かりませんから。」
「携帯の店は此処と同じでサービス業だから、定休日があれば大抵平日だし、午前9時頃から営業してる。」

 マスターの補足が入る。俺と晶子が居ない時間帯の混み具合は知らないが、俺が来る時間帯には平日だろうが土日だろうがかなり混んでるから、潤子さん一人で切り盛りするのは大変だろう。そうとなれば此処が開く前に連れて行ってもらってさっさと買うに限る。どうせ会社を選り好みする気はないから尚更だ。

雨上がりの午後 第1616回

written by Moonstone

「そういうこと。二人のどちらかに何かあって欠ける方がこっちにとっては大損害だ。それを未然に防ぐ措置を施すために必要な金は、十分店の必要経費枠内。二人合わせて・・・月・・・40000円くらいか?今の店の売上と二人の貢献度を考えれば安いもんだ。」

2004/8/14

[いざ東京へ]
 昨日から東京のビッグサイトでコミックマーケット(略称コミケ)が3日間の日程で始まっています。冷夏の上雨模様だった昨年とは打って変わって今年は猛暑ですので、日射病や熱中症で倒れる人も出るんじゃないか、と思っています。あの混雑は本当に洒落になりませんからね。特に3日目(日曜日)は尋常じゃありません。よくあれだけの人間を収納出来るものだ(汗)。
 今年は休暇の目処がギリギリまで立たなかったので宿を取れず、土曜日、つまり今日だけ行ってきます。お目当てのサークルは3つですから電車が止まったりしなければ夕方ぐらいには帰って来られるでしょう。ですから更新休止ということはありません(昨年はPCを持っていったけどネットに繋げなかったので休止)。
 私はこれまで買う側のみですけど、一度は売る側になってみたいです。とはいっても売るものが見当たらないんですが(汗)。このページで公開している目玉の作品は殆どが連載中ですし、仮に本に出来るとしても買う人が居るとは思えない(苦笑)。Music Group 1で公開中の曲を原版(General MIDIじゃない、手持ちの音源で作ったもの)をCDに焼く、という手もありますが。
 一つ頭に浮かんできたことがある。形は違えど電話を新たに持つということは、必然的にあの問題を伴ってくる。決して惜しむつもりはないが懸念材料であることには違いない。

「何だい?」
「料金って大体どれくらいですか?」
「んー。まあ、会社によっても違うし、一つの会社でも色んな料金プランがあるから多少上下するけど、固定電話と同じくらいだね。大抵の会社はある一定の通話時間なら月々の基本料金込みってサービスがあるし、毎日ずっと通話するようなことをしたりしなければ、月4000円くらいで収まる。」
「そうですか・・・。」
「祐司君は仕送りプラス此処でのバイト代で生活してるから、料金が気になるのは当然だろう。それなら心配ない。携帯の料金を払えるくらいのバイト代を出すから。」
「え?!」
「マスター、それって・・・。」
「そう。時給上乗せ。祐司君は4月からだから1500円、井上さんは祐司君より半月遅れだから1400円ってところでどうかな?勿論、今月分から。」
「そんな・・・。申し訳ないですよ・・・。」

 今の時給は俺が1200円で晶子が1100円。普通のバイトより格段に儲かる。1000円単位の時給なんて塾の講師くらいだ、って聞いたこともある。それに今回の事件は俺と晶子のこと。単純計算で週6日×4週×200円×4時間=19200円も上乗せだなんて・・・。

「何も申し訳ないなんて思う必要はないわよ。ただでさえ祐司君と晶子ちゃんにはよく働いてもらってるのに割に合わない時給だって前々から思ってたし、上乗せしようかってマスターと相談してたから。」

雨上がりの午後 第1615回

written by Moonstone

「あの・・・、もの凄く初歩的な質問かもしれないけど、良いですか?」

2004/8/13

[やっぱり変えよう]
 昨日実家から電話があったのですが、買って3ヶ月以上経つのにどうしても携帯のコール音に違和感を感じます。元々私は電話が苦手ですし、携帯の「ピリリリリ・・・」というコール音が特に嫌いなんです。昨日の電話が食事中だったというのもありますが。食事と睡眠と思考の邪魔をされるとかなり腹が立つんです。数年前休日に熟睡中にインターホンをしつこく鳴らされ、出てみたら宗教の勧誘だった時には完全にキレました(相手は逃げ帰った)。
 かと言ってデフォルトで入っている他のコール音は何やら騒々しいですし(行進曲やらあるし(汗))、これだと余計に神経を逆撫でされるので、好きな音楽にするのが一番良さそうです。でもレコード会社のサイトからゲットしようとなると大抵月々幾らか取られますし、そう度々変更するものじゃないので(PCの壁紙は毎月変えるが(笑))、たかが1回2回のために今後月々払うのは馬鹿らしい。
 そんなわけで好きな曲を自分でちまちま打ち込もうか、と。この前は「Feel Fine!」と自作曲2曲を候補に上げましたが、コール音でびっくりする、というのは嫌なので「Secret of my heart」か「Stay by my side」のサビ部分が良いかな、と思い直し中。両方共メロディとコード進行は把握しているので、適当にアレンジして打ち込めばさほど時間はかからないんじゃないかな・・・。
「料金体系やサービスは携帯の会社によって色々だから、どこがベストとは一概に言えないが、祐司君と井上さんで共通の連絡手段を持つことと、ホームページを見たりTVやラジオを視聴したりといった、電話以外の使用を考えていないことで一致出来るのなら、ぶっちゃけ、会社は何処でも良いよ。」

 マスターの助言を受けて俺と晶子は顔を見合わせる。今回の最重要課題はいざと言う時に即相手の声が聞けるようにすることだ。ホームページは大学のレポートで調べものがある時−図書館では見つからないこともある−検索で使うくらいだし、俺は元々TVは殆ど見ないしラジオも家でたまに聞く程度。味も素っ気もないと言われればそこまでだが、俺にとってはそれが当たり前だから仕方ない。晶子はどうだろう?

「俺は携帯を持ってれば良いけど、晶子は?」
「私も別に携帯でTVを見ようとか思ってませんから、他人事みたいな言い方に聞こえるかもしれませんけど、どの会社でも良いです。」
「ということです。マスター。」
「それなら、二人で曜日と大体の時間を相談して決めてこっちに電話しなさい。大学に近い店に車で連れて行ってあげるよ。大学に近ければ消耗品の交換とかにも便利だろうし、そういう店は学生相手も慣れてるだろうから。」
「でも、お店が・・・。」
「昼間は私一人でも大丈夫よ。二人に来てもらう夕方に近いと流石にちょっと困るけどね。」

 晶子の言葉を潤子さんがやんわりと遮る。会社も機種も選り好みする気はさらさらないし、午前中にさっさと済ませてしまった方が良いな。

「それじゃ、晶子と相談して曜日と時間を決めて俺が電話します。」
「そうかい。じゃあ祐司君からの電話待ちということで。別に明日の午前中でも良いよ。その時にも言うけど、運転免許証と印鑑、それから使っている金融機関の支店名と口座番号を書いたメモを用意しておいてくれ。契約の時に身分証明が必要なんだけど、そういう時は運転免許証が一番手っ取り早いし確実だ。警察屋さんが保障しているものだからね。」

雨上がりの午後 第1614回

written by Moonstone

「携帯を売ってる店が何処にあるのか知らないです。」
「私も知りません。」

2004/8/12

[新作1本完成]
 うう、滅茶苦茶時間かかった(汗)。ちょっと手の込んだことをしようと思って前から考えてたことだったんですけど、実際文章にするとなると大変でした。プログラム言語を考案する人ってもの凄い頭脳の持ち主なんだろう、と実感。プログラミングでひいひい言ってる私じゃ出来ませんわ(^^;)。
 ダイアルアップでのロード時間を考えて大体1話30kBを目処に書いているんですけど、昨日書き上げた新作は37kBで合計10時間。活字アレルギーの人には蕁麻疹が出そうな、文字がぎっしり詰まったものになりましたが、書きたかったことが書けて満足満足♪
 それにしても、水の消費量が凄い(汗)。昨日だけで6リットル(ペットボトル2本×3回)。何でも今年は某スポーツ飲料が需要に供給が追いつかなくて品薄状態だそうですが、それに換算するととんでもない出費になりそう。
 マスターの言うとおり、相手が相手、取り巻きも取り巻きだから何をして来るか分からない。こういう場合は常に最悪の状況を想定するのが最善だ。最悪を考えることが最善なんて妙な話だし、晶子には嫌な気分を常に抱かせるものだ。しかし、今回は性悪説を取るしかない。

「そう言えば・・・、祐司君と晶子ちゃんは携帯持ってる?」
「いえ、持ってないです。」
「私もです。」

 帰省した時、親も携帯を持っていて、便利だからお前も持ったらどうだ、と親に勧められた。弟は持っていて、俺が冬休みの宿題を見てやっている最中も傍らに携帯を置いていた。弟が通う高校はバイトが認められているから、料金一切を自分で捻出することを条件に買ったそうだ。
 俺は親に勧められたが、普通の−携帯が普通じゃないとは思わないが−電話があるから要らない、と言って断った。携帯を持つ理由が見当たらなかったからだ。晶子とはこの店に来れば会えるし、バイトが終わった後や月曜の夜は一緒に過ごす。それに電車の中や講義の真っ最中に携帯を使っているのを見たのもあって、携帯にあまり良い印象を持っていないこともある。

「明日明後日は祐司君と晶子ちゃん、それぞれ用事はあるの?」
「俺は・・・レポートを書くのが主で、あとは近くのコンビニに買い物に行って、洗濯するくらいですね。」
「私は掃除洗濯と買出しが主です。レポートも少しありますけど。」
「それなら土日のどちらかに二人揃って携帯を買いに行くと良い。」

 なければ買う、か。確かに携帯を持っていれば、わざわざPCの部屋に行く必要もない。それにメールが来ているかどうかPCのある部屋に行って、いざ確認したら「メールはありません」じゃ時間と手間の無駄だ。携帯ならその場その時に連絡が取れる。そう考えると便利な代物ではある。だけど・・・。

雨上がりの午後 第1613回

written by Moonstone

「祐司君と晶子ちゃんは大学でメールを呼んだり書いたり出来るのよね?」
「ええ。でもPCがある部屋に行って、IDとパスワードを入力しないといけないんです。PCは2人か3人で共有ですから。」
「となると、その場その時に確認したりすることは出来ないわね。祐司君は月曜日は実験があって終了時間なんかも不規則だから、尚のこと厳しいわね。」
「PCがある部屋に向かう途中に罠を仕掛けてくる可能性も考えられなくもない。」

2004/8/11

[今日から休み(此処は営業(笑))]
 此処最近、現状の自己に対する激しい疑念やら週末の稼動でかなり疲労が溜まってましたので(月曜なんて午前中仮死状態だった)、夏期休暇(3日)を取りました。土日を含めれば5連休。そのうち土曜日は東京で開催されるコミケに行く予定です。今回は日帰り(休暇の目処が立たなかったので宿が取れなかった(汗))。K様、H様、T様(見てないかな?)当日スペースへお邪魔しますので、新刊キープお願いします(見てないかな(汗))。
 あとはほぼ丸々作品制作に充てる予定。このところなかなか新作を書けなかったので、頭の中を切り替えるためにも、思いっきりやりたかったことに専念しようと思います。これで食事とかがなけりゃあね(^^;)。
 休暇が終わったら仕事の納期が連続で襲ってきますが、この状況で進めていっても疑念と疲労に翻弄されるだけでまともに進まないでしょうから、すっきりきっかり休んで仕事から手を引く方が良いかな、と。大渋滞を起こしている掲示板の対応もしていく予定です。

「祐司君と晶子ちゃんは大学でメールを呼んだり書いたり出来るのよね?」
「ええ。でもPCがある部屋に行って、IDとパスワードを入力しないといけないんです。PCは2人か3人で共有ですから。」
「となると、その場その時に確認したりすることは出来ないわね。祐司君は月曜日は実験があって終了時間なんかも不規則だから、尚のこと厳しいわね。」
「PCがある部屋に向かう途中に罠を仕掛けてくる可能性も考えられなくもない。」

 マスターの言うとおり、相手が相手、取り巻きも取り巻きだから何をして来るか分からない。こういう場合は常に最悪の状況を想定するのが最善だ。最悪を考えることが最善なんて妙な話だし、晶子には嫌な気分を常に抱かせるものだ。しかし、今回は性悪説を取るしかない。

「そう言えば・・・、祐司君と晶子ちゃんは携帯持ってる?」
「いえ、持ってないです。」
「私もです。」

 帰省した時、親も携帯を持っていて、便利だからお前も持ったらどうだ、と親に勧められた。弟は持っていて、俺が冬休みの宿題を見てやっている最中も傍らに携帯を置いていた。弟が通う高校はバイトが認められているから、料金一切を自分で捻出することを条件に買ったそうだ。
 俺は親に勧められたが、普通の−携帯が普通じゃないとは思わないが−電話があるから要らない、と言って断った。携帯を持つ理由が見当たらなかったからだ。晶子とはこの店に来れば会えるし、バイトが終わった後や月曜の夜は一緒に過ごす。それに電車の中や講義の真っ最中に携帯を使っているのを見たのもあって、携帯にあまり良い印象を持っていないこともある。

雨上がりの午後 第1612回

written by Moonstone

 了承の返答はしたものの、晶子の表情は重い。思えば俺が雑誌を引き取りに行くのは翌日でも良かった。別に当日引取りに行かなきゃ消えてなくなる、なんてことはないんだから。今更気付いても遅いが、軽率だったな・・・。

2004/8/10

[記録公開は必要か?]
 このコーナーでセコセコ続けている連載は計算上、2006年に2000回を迎えます。トップページにでかでかと掲載しているタイガースの金本選手が計算上世界記録を塗り替える年と同じなわけです。まあ、こちらの記録は金本選手には遠く及びませんが、大きな節目を迎えることには違いありません。
 でも、此処の連載を第1回からご覧の方はごく少数、或いはいらっしゃらないかもしれません。初めて見たら既に○○回だった、という方のほうがむしろ多いでしょう。そんな方は、2000回って本当?と思われるかもしれません。
 変なところで几帳面な私は連載開始以降(正確にはこのコーナーを始めて以降)のログを保存しています。勿論、掲載したままの状態ですから誤字脱字も結構ありますが(汗)。第1回から見たい!なんて方がいらっしゃるのであれば、公開しても良いです。約5年分、1ヶ月で100kBくらいありますから、全て目を通すのには相当時間はかかると思いますが。
「ですよね・・・。」
「そんなことがあったんですか・・・。」

 晶子の横顔は申し訳なさそうだ。自分のせいで俺をトラブルに巻き込んだ、という思いなんだろう。前の一件もあるから尚更。だが、少なくとも今回は晶子に何の非もない。あの女がそれこそ勝手に逆恨みしているだけのことだ。

「晶子は何も気にしなくて良い。あの女の一方的な逆恨みなんだから。」
「でも・・・。」
「祐司君の言うとおり、晶子ちゃんには何の誤りもないわ。晶子ちゃんは祐司君の依頼で生協の店舗に雑誌を引き取りに行っただけなんだし、それで取り巻きの男の子を取られた、なんて思い上がりも甚だしいわ。」
「だが、相手が相手だ。万全を期すに越したことはないね。」
「・・・ええ。」
「どういうことですか?マスター。」
「ほとぼりが冷めるまで、井上さんは少なくとも大学との往復は祐司君に同行してもらいなさい。あと、顔も名前も知らない誰かが、否、知っている人でも、祐司君が呼んでる、とか言って来ても、井上さんは祐司君と直接連絡を取って確認するか、祐司君に出向いてもらうかのどちらかにしなさい。」
「補足すると、これから日が沈むのがもっと早くなるから、晶子ちゃんは人気のないところを一人で歩かないことね。晶子ちゃんを連れてきて謝らせろ、って言って来たくらいだから、取り巻きの男の子を使って何をして来るか分からないわ。」
「用心に用心を重ねろ、ってことですね?」
「そういうこと。井上さんにしてみれば見る人来る人全てを疑わなきゃならないわけだから気分の良いことじゃないだろうが、我慢するしかない。」
「・・・はい。」

雨上がりの午後 第1611回

written by Moonstone

「その女子学生が、井上さんを連れてきて謝らせろ、とまで言ったんだから、相当妬んでいるんだろう。祐司君の推測どおり、このまま大人しく引っ込む可能性は低いね。男が自分に反抗するのは許さない、っていう思いもあるだろうし。」

2004/8/9

[着メロ]
 携帯電話を持っていない方が珍しい、と言われる(私もつい数ヶ月前までは言われていた(笑))時代ですからキャプションの意味が分からないという方は多分居ないでしょうが、携帯電話が電話やメールを受けた時に鳴る音です。念のため。
 私は携帯を持つことになった経緯が経緯なので(緊急時に直ぐ連絡が取れるように、ということで携帯電話の販売店に連行された)受信が分かればそれで良い、ということで着信音などは初期設定のままです。で、昨日(起きたのは昼前)何気なしに携帯の取扱説明書を読んでいたら、着メロを自作出来る、とのこと。以前弟が携帯の着メロを楽譜を見ながら入力してましたから、今の機種でも出来て当然ですね。
 そう頻繁に変えるわけがないのでレコード会社とかのサービスを利用するのは気が引けますし、どうせなら自分だけの着メロにしよう、と思って検討中。候補は倉木麻衣さんの「Feel Fine!」と自分で作曲した「HALCYON」か「SATURNALIA」(共にMIDI版がMusic Group 1にあります)。耳で聞いて楽譜にすること(通称「耳コピー」)は出来ますから「Feel Fine!」でも良いんですが、自分だけの、となると自作の方が良いかな、とも。ま、作るとしても当分先の話ですけどね。ページの新作を作るのが先だ。
 俺は一呼吸置いてから一連の事件の経緯を話し始める。大学祭のミスコンテストを2連覇した工学部の女が絡んできたこと。昨日は無視してやり過ごしたが、今日は晶子を「人質」にされてやむなく女について行ったこと。その女が俺の依頼で生協の店舗に雑誌を引き取りに来た晶子に自分の取り巻きの一部を取られたことを逆恨みして、晶子を自分の前で謝らせろ、と要求してきたこと。俺が二度と近づくな、と威嚇した後は何もなかったが、その後が気になっていること。

「なるほどね・・・。かなり厄介なタイプだな。その女子学生が祐司君の名前はおろか、学科も学年も知っていたということは、井上さんが居る学部学科や学年も把握している可能性が高いね。」
「大学は同じ学科の同じ学年でも名前と顔が一致しないことが珍しくないから、一回だけ祐司君の学科に近い生協の店舗に顔を出しただけの晶子ちゃんに付き合っている相手が居ることは勿論、そのお相手である祐司君の名前や所在も掴んでいたっていうことは、晶子ちゃんの詳細も掴んでいるでしょうね。」
「どうやって掴んだんでしょうか?」
「晶子ちゃんが生協の店舗に訪れた時に、その女の子の取り巻き、若しくはそうでなくても単に話を聞きつけて見に行った誰かが携帯のカメラで晶子ちゃんを撮影して、それを元に調べたんじゃないかしら?証拠がないから断言は出来ないけど。」
「去年、井上さんが単位と引き換えに大学の先生に交際を迫られたことを訴えた際に実名入りのデマメールを流されたというから、そのメールの情報を元に取り巻き連中に探らせることも出来るね。」

 マスターと潤子さんの推測もありうる。それに、使い方は知っているが実行したことはないから詳細は知らないが、大学のPCには学校関係者−教職員や学生のことだ−しかアクセス出来ないページがある。それには氏名を入力すると該当する人物の身分−教職員なら役職、学生なら所属学科や学年−とメールアドレスとかを検索して表示する機能がある。その他にも学科単位のホームページがあるから、断片的にでも情報を掴めば割り出すことは不可能じゃないだろう。

雨上がりの午後 第1610回

written by Moonstone

「・・・あの・・・。マスター、潤子さん。」
「どうしたの?」
「・・・相談と言えるものかどうか分からないんですけど、聞いて欲しいことがあって・・・。」
「遠慮は要らんよ。」

2004/8/8

[つ、疲れたぁ・・・]
 昨日職場のレクリエーションの実行委員ということで昼食後間もなく出かけたんですが、やっぱり大変でした(汗)。準備は勿論、本番も警備やら何やらが30分単位で分担されていたのでろくに休む間もなく、終わったら即座に後片付け。後片付けが一番疲れるんですよね。それまでに削られた残りの体力で準備と同等以上のことをしなきゃならないんですから。散らかすのは簡単でも片付けるのは大変なものです。
 夕食は、木曜に買っておいた食事(ゼリー状の栄養剤(名前忘れた)やらそんなもの)を僅かな休憩時間の間に食べて済ませました。まあ、食べる量は以前の半分程度になってますから、どうにか凌げました。蒸し暑かったので時々水を飲んでました。
 結局帰宅したのは23:00過ぎ。それから急いで連載を書いて(実は昨日の分でストックが尽きた)このお話をしてアップ。今日はボチボチ新作でも書きます。起きられれば、の話ですが。

「はい、どうぞ。」
「いただきます。」

 俺は早速食べ始める。揚げたてのコロッケはホクホクして美味い。食を進めつつキッチンを見ると、潤子さんがサンドイッチを作り、晶子がスパゲッティを茹でている。時々かき混ぜながらスパゲッティの様子を見る晶子の表情は真剣そのものだ。
 サックスが甘く奏でる「Fly me to the moon」をBGMに食事を進め、全て食べて茶を飲み干す。満足の溜息が出る。俺はトレイに割り箸を乗せ、カウンターに差し出す。

「ご馳走様でした。」
「はい。それじゃ準備の方をお願いね。」
「はい。」

 潤子さんがトレイを受け取ったところで、俺はカウンターからキッチンを経由して着替えに向かう。気分もすっきりした。今日もバイトに励むとするか。

 「DreamWeaver」が流れる中、店を切り盛りする俺を含めた4人がホットコーヒーを口にする。当たり前とは言え、やっぱり今日も忙しかった。湯気と共に立ち上る芳香が疲れが染み込んだ身体に溶け込んでいく。
 今年のクリスマスコンサートのことが主な話題となる中、俺は現状を踏まえて答えたり提案したりしつつ、あのことを話すべきかどうか考える。俺の依頼を受けて一度だけ理系学部エリアの生協の店舗に来た晶子へ取り巻きの一部が流れたことを逆恨みして晶子に謝らせろ、と迫ってきたあの女が、このまま大人しく引き下がるとは考え難い。今日は俺が威嚇して手を引かせたが、あの女の腐った性格を考えると、それを逆恨みのどす黒い炎に放り込んで勢いを増ささせる可能性が高い。マスターと潤子さんの助言を仰ぐべきだろうか、やっぱり・・・。

雨上がりの午後 第1609回

written by Moonstone

 少しして潤子さんが揚げ物の鍋からコロッケを取り出し、油を切って野菜が乗った皿に盛り付けてソースをかける。そしてその間に用意されていた味噌汁用の器に加熱した味噌汁を入れ、冷蔵庫から付け合せの和え物が入った小さな器を取り出し、ご飯を盛り付けて全部トレイに乗せて差し出す。

2004/8/7

[忙しい土曜日]
 今日は午後から職場へ行きます。仕事じゃありません。職場のレクリエーションの実行委員なのですよ。物品の手配は済ませましたけど、会場の設営や物品の運搬(でかいのがある)、警備場所の分担や順番、客の案内など色々あるのですよ。終了が22:00の予定ですが、ずれ込むんじゃないかな・・・。そんなわけで更新時刻がずれ込むかと思いますがご容赦を。
 実行委員は各部署から一人ずつ人身御供、もとい(汗)、選出されるんです。他の部署は若い人(20代後半ですが)が結構居るので大抵そういう人が人身御供(訂正しない(汗))にされるんですが、私の部署は人の入れ替わりが殆どない上に年齢層が大きく分けて2つに固まっていることもあってなかなか決まらないんです。で、ぐだぐだもめるのを聞くのは真っ平なので私が名乗り出たわけです。
 自己犠牲なんて大嫌いですし、休みほぼ1日ぶっ潰すのは癪ですが、最近システム開発で神経が逆立っているので気分転換になれば良いかな、と。夕食をどうするかが問題ですが。
 潤子さんがコロッケを揚げつつ出してくれた水を一口飲んで客席を見る。今日もかなり混んでいる。金曜日は社会人の多くが休みの前日ということもあって、客層は女性の割合が高い。時間が経つにつれて混雑してくるのは最早当たり前。住宅街の真中にぽつんとある飲食店が盛況なのは、あまりないことだ。実家が自営業だから、立地条件というのも客の出入りを左右する一因だということは何となく知っている。
 晶子が見えた。俺から見て左を向いて、テーブル席を囲む客から注文を取っている。注文を取り終えたらしく小さく一礼して、こっちを向く。客席を過ぎたところで小走りになる。

「祐司さん。」

 俺の隣に来たところで声をかける。明るい表情が、腐臭に燻されて黒ずんだ俺の心を洗ってくれる。

「今日はちょっと早いですね。」
「早い時間の電車に乗れたんだ。」
「そうですか。あ、潤子さん。サンドイッチセット1つ、ミートスパゲッティセット2つ、ホットコーヒー2つ、ホットティー1つです。」
「はい。今、祐司君の夕食作ってるから、ミートスパゲッティをお願いね。」
「分かりました。」

 晶子は俺の後ろを通り過ぎてカウンターの端からキッチンに入る。潤子さんがコロッケを揚げながら付け合せの野菜を刻んだりしている一方で、晶子がスパゲッティを茹でる準備をする。この店の看板メニューの一つを任されているのは、それだけ腕を買われているということだ。

雨上がりの午後 第1608回

written by Moonstone

 俺が返事をすると、潤子さんは揚げ物用の鍋が乗ったコンロに点火する。緊急時以外は俺が自発的に話そうとしない限り問い質そうとはしない。昼間あの女の高慢ちきな様子を目の当りにしたから、余計に対照的に映る。やっぱり名は体を顕す、とは一概には言えないようだ。

2004/8/6

[ある夏休みの思い出]
 小学生の時、家族旅行で広島を訪れました。その頃はまだ原爆というものを新聞(父親に漢字の読みを教わって社会面やら経済面やら読んでいました(汗))やTVで名前だけ聞いたことがある、という程度でした。単に本の写真とかでしか見たことがない原爆ドームが見られる、というお遊び気分でした。
 原爆ドームを見た時、鉄骨にコンクリートの断片がへばりついたような姿に、特に何も感じませんでした。その足で隣接する原爆資料館へ。そこで目にしたものは衝撃以外の何物でもありませんでした。ぐちゃぐちゃに溶けて固まったガラス瓶などの遺物。そして記録映像に映された焼け爛(ただ)れた人々。全身から血の気が引き、後に胃液だけになっても嘔吐し続け、丸2日間水を飲むのがやっとでした。
 21世紀になった今、日本は「自衛」「国際貢献」「日米同盟」を掲げて有事法制を整え、自衛隊という名の軍隊をアメリカと共に世界中で展開出来る体制を着々と整え、無数の人々の血で染まった旗と当時の最高責任者の永遠の繁栄を願うという歌を強制する動きが強まっています。「使いやすい核」と平気で口にする暴君に粛々と従う人々は、一度原爆資料館に行くことです。今日は地獄の一日から59周年です。
 高校までなら程度にも依るが自宅謹慎か停学くらいで済んだだろうが、世間的に「大人」とされている大学生がキャンパス内で暴力沙汰を起こしたら、良くて停学、悪ければ退学だろう。折角此処まで来たのに退学なんて真っ平御免だし、そもそも晶子の立場を悪くしてしまう。性悪極まりないとはいえ相手は女。その女を殴って取り巻き連中と乱闘して退学、なんてことになったら晶子は、あんな最低男と結婚したの、とか言われるだろう。理由がどうであれ、男と女が喧嘩になったら男が不利、という図式くらいは知っている。
 そう言えば・・・、あの女に聞かなかったな。どうして俺の名前も学科も学年も知ってるんだ、って。何か悪いことを企んでいそうな気がするんだが・・・。考えない方が良いな。あの女のことを思い出すだけで鼻を摘みたくなるような心の腐臭が気分が悪くなる。俺は目の前に迫ったドアを開ける。カランカラン、とカウベルが来客を告げる。

「こんばんは。」
「あら祐司君、こんばんは。」

 出迎えてくれたのは潤子さんだった。そう言えばあの女の名前も「じゅんこ」だったな。漢字は知らないが−知りたくもないが−同じ読みなのにこうも違うものか。名は体を顕す、というが、あまり当てになりそうにないな。カウンターの何時もの席に腰を下ろすと、思わず溜息が出る。

「何か嫌なことでもあったの?」

 潤子さんの声がかかる。疲れた様子ね、とかじゃなくて一歩踏み込んだ問いを投げかけてきた。思わず潤子さんを見ると、潤子さんはコロッケを包んだラップを剥がしながら俺を見ている。その視線には、言いなさい、とかいう強迫の念は全然感じない。

「・・・ええ、ちょっと・・・。大したことじゃないですけど。」
「話して楽になるようだったら、遠慮なく話してね。」
「はい。」

雨上がりの午後 第1607回

written by Moonstone

 昼休み以降、あの高飛車女が絡んで来ることはなかった。男に胸座を掴まれるとは思わなかったんだろう。あのまま妄言を続けていたら殴っていたかもしれない。男だろうが女だろうが、人を殴りたくない。だが、俺は頭に血が上ると自分が見えなくなる時がある。田畑助教授絡みのトラブルの時も、田畑助教授に嘲笑されて気が付いたら晶子と智一に両腕を掴まれていたくらいだ。

2004/8/5

[益々嫌になる・・・]
 昨日のお話と関連しますけど、仕事で開発中のシステムのセキュリティ向上のために書籍やネット検索で色々資料を集めたのですが、知れば知るほどプログラミングを進めるのが嫌になってきました。システム本体よりセキュリティ対策にはるかに神経を尖らせて手をかけてもきりがないんです。
 職場で一人資料を読んだりしていて、口から出るのは溜息ばかり。ネットの世界はどう足掻いても最終的には利用者の良心に頼らざるを得ない、という実感が強まるにしたがって、これまでシステム開発につぎ込んできた時間や手間、それに纏わる記憶が空しくなっていくばかりです。
 気に入らないから、とかいう短絡的思考で平気で人を殺したりウィルスを作ったりする奴らが居ますが、人を蹴落としてでも自分が、という悪しきアメリカ的思考が蔓延っている今じゃ、そんな奴らが出てくるのは当然なのかもしれません。そんな中で必死にまっとうな道を歩むのが馬鹿らしく思えたりもします。それでも道を踏み外さないで居るのは得なのか損なのか、良心があるのかお人好しなのか・・・。ジレンマに苛まれる日々は当分続きそうです。
 こんな馬鹿女の妄言に付き合ってるほど暇じゃない。俺は女に大股で歩み寄り、その胸座を両手で力任せに掴み上げる。女の表情が驚きか恐怖か何かで強張る。

「ふざけるのもいい加減にしろ!」
「ひっ・・・。」
「テリトリーだ、失礼だ、とか好き放題言いやがって!そんなに女王様ごっこがしたいなら、夜のネオン街でやれ!」
「おい!お前・・・」
「外野は黙ってろ!」

 取り巻きの声が聞こえたところで俺は一喝する。近づいてきていた取り巻き連中の足がぴたりと止まったのを見て、俺は女に向き直る。

「金輪際俺に近付くなよ。」

 俺は女を突き飛ばすように放す。背を向けたところでどさっという小さな音がするが、振り向かずに真っ直ぐ早足で生協の食堂へ向かう。時間の無駄とはこのことだ。行列に並んでる方がどれだけましだったことか。
 智一の言っていたことの裏付けが取れた。あの女は元々女の絶対数が少ないこの理系学部エリアで自分のルックスが良いことに、大学祭のミスコンテストで2連覇したことなんかが重なって取り巻きが増えたせいで悦に浸っていたんだ。そんな栄光の玉座を思わぬ形で傷つけられたもんだから八つ当たりしてきたわけだ。馬鹿馬鹿しいにも程がある。
 気分が悪い。あの女の心が放つ猛烈な腐臭が未だ鼻を突く。だが、この気分の悪さは身体的なものじゃないから吐き気という形で出て来ない。それで余計に腹が嫌な燻り方をする。とっとと頭を切り替えられれば良いんだが、俺にはなかなかそれが出来ないんだよな・・・。

雨上がりの午後 第1606回

written by Moonstone

「それで今回のことは・・・」

2004/8/4

[嫌になってくる・・・]
 仕事でプログラミングをしていることは此処で何度もお話していますが、考えれば考えるほど「これは怪しいんじゃないか」と疑ってしまってきりがありません。サーバーの種類と性質、ブラウザの種類も把握したんですが、その分不信感が募ってしまいました。
 サーバーとやり取りするというのはセキュリティホールと背中合わせです。今回はアクセス可能な端末(PC)の数が限定されているのですが、それでもサーバやブラウザの性質なんかを知れば知るほど、サーバーに攻撃を仕掛ける可能性が思い浮かんでくるんです。で、勿論それへの対策を施すわけですが、それでも疑いは消えません。
 高度になればなるほど使い手の良心という観念論的なものに頼らざるを得なくなるということに、ジレンマを感じています。使用者はごく限られていますし、サーバー攻撃なんて思いつきもしないと言えばそうなんですが・・・。「名探偵コナン」で刑事ってのはどんな良い人間でも疑わなけりゃならない嫌な商売、とかいう台詞がありましたが、仕事では際限のないもぐら叩きを続け、自宅ではウィルスとDMの嵐を受けていると、その台詞の内側に込められた気持ちが嫌でも分かります。プログラミングは本来夢を形にする楽しいものの一つの筈なんですけど・・・。

「何のことか全然分からないんだけど。」
「呆れた。」

 女は短く吐き捨てて溜息を吐く。本当に呆れた様子だ。でも、全然話が見えない。この女の恨みを買うようなことをした覚えなんてないし、そもそも恨みの原因がまったく見えないからどうしようもない。

「先週の月曜日の昼休み、生協の店舗に彼女を呼び寄せたでしょ?」
「・・・俺が購読してる雑誌の引取りを頼んだだけだ。」
「彼女、問い掛けた男達に貴方との関係を説明して証拠まで見せびらかしてくれたそうじゃない。」
「だから何だって言うんだ?」
「貴方が彼女を呼び寄せてくれたお陰でね、私のファンの一部が彼女に流れちゃったのよ。」

 ・・・呆れて物が言えないとはこのことか。否、言える言えない以前に言葉が見当たらない。女は髪をかきあげる。髪が長いとどうしても一部が前に流れるからかきあげるのが半ば癖になるそうだが、この女の場合、嫌味にしか見えない。

「テリトリーを荒らされると困るのよね。こちらとしては。」
「・・・で、俺にどうしろと?」
「彼女を私の元に連れてきて、失礼なことをしました、って頭下げさせて頂戴。」

 胸の中で黒い炎が勢いを増してくる。自分の取り巻きが減ったのを逆恨みしているとしか言い様がない。女王だか何だか知らないが、性根は夏場に放置した生ゴミ以上に腐りきってやがる。どれだけ服やアクセサリーで飾ってもその腐臭は消せやしない。

雨上がりの午後 第1605回

written by Moonstone

 思わず自分でも間抜けと思える声で問い返した俺に、女は眉を吊り上げて畳み掛けてくる。言葉から推測するにこの女、どうやら俺に何か恨みを持っているようだが、恨まれるようなことをした覚えはない。

2004/8/3

[燻し銀の栄光]
 トップページ最上段にでかでかと掲載しましたが、8/1にタイガースの金本選手が連続フルイニング出場の日本記録を更新されました。詳細は掲載したメッセージをご覧いただくとして、金本選手の偉業は地味ではありますが、日々の積み重ねなしでは絶対に成しえない大きな金字塔です。
 このページの運営を始めて今年で5周年。このコーナーも10月10日に5周年を迎えます。1600回を越えた連載の総計は現時点で約2MB。1日に消費する量が約2kBですから、改めて積み重ねの大きさを実感します。5年前に思いつきで始めた連載が今では4桁に達し、千の桁が増える時期が見えてきました。半月以上出遅れたとは言え、このコーナーの歴史はこのページの歴史でもあります。
 開始以来のログは保存してあります。「見解・主張書庫」に掲載した論評の生原稿もそのままです。ぼやいたり叫んだり、嘆いたり笑ったり・・・。「今」の積み重ねがふと気付けば大きな「何か」を築いている。兎角スピードや効率が最優先される今、時間をかけること、根気の要ることに目を向けるべきだと思います。金本選手には遠く及びませんが、私も日々の積み重ねを続けていこうと思います。
 癇に障る言い方に拍車がかかる。どうだ、これで逃げられまい、と勝ち誇っているのが嫌でも分かる。だが、この女は俺に彼女が居ることを知ってる。口ぶりからするに名前とかも知ってるようだ。何を考えてるのか知らないが、晶子を「人質」に取られた以上はとりあえず言うとおりにするしかない。

「・・・分かった。」
「じゃ、ついてきて。」

 女は勝ち誇ったかのように髪をかきあげてから、生協の食堂とは逆の方向に歩き始める。その後を女の後ろに居た男達、そして俺が続く。何だかワルに因縁つけられてリンチされに行くみたいで嫌な気分だな・・・。それ以前に、あの女の態度が嫌でならないんだが。

 女が止まったのは−俺の前を歩く男達の動きが止まったからそう思っただけだが−、情報工学科の講義棟の裏だった。情報工学の講義棟には計算機関係の講義で通ったことがある。俺が居る電子工学科には計算機工学の研究室があるし、実験にもマイコンのプログラミングがある。それにPCやマイコンではハードとソフトは切っても切れない関係だ。
 男達が両脇に退く。空いた道を女が俺に向かって進んでくる。モーゼじゃあるまいし・・・。女はとりあえず別として、取り巻きの男達は完全に家来気分だな。まあ、そうでもなけりゃ、こんな高慢ちきな女の尻を追いかけてられないだろうけど。

「あれは何のつもり?」
「は?」
「とぼけないでくれる?先週の月曜日、あんたが何をしでかしてくれたか分かってるの?」

雨上がりの午後 第1604回

written by Moonstone

「流石に彼女のこととなると、無視出来ないようね。」
「・・・何をした?」
「それを話してあげるわ。来てくれるわよね?勿論。」

2004/8/2

[持つのは良いけどさ・・・]
 私が携帯電話を持つ、否、持たされるようになってもうすぐ3ヶ月になろうとしています。持たされた理由が「何時でも連絡が取れるように」というものなので、実家の両親からかかってくるだけです。稀にワン切りがありますが送信履歴から即座に抹消してます。
 で、土曜日の出張の際にも当然持っていったわけですが、電車での移動や作業中は電源を切っていました。作業中は勿論ですが、電車など公共交通機関を使う際に携帯電話の電源を入れておくのはご法度です。心臓のペースメーカーを誤作動させてしまう危険性がありますし(病院で携帯が使用禁止になっているのと関連があります)、何より車内で電話することは迷惑なものです。
 ところが久しぶりに電車に乗ったら・・・居ました。電車の中で携帯使ってる奴らが。しかもいっぱい。車内の中吊り広告でも車内アナウンスでも「車内では携帯電話の電源を切って」とあるのに尚も切らないとは・・・。煙草を喧しく言う一方で携帯電話についてはだんまりなのは、広告料金とかも絡んでるんでしょうね(溜息)。

「ようやくお越しのようね。」

 俺が前を通り過ぎようとすると、挨拶もなしに相変わらず高飛車な口調で話し掛けて来た。絡んで来た、と言った方が良いか。別に俺は待っていてくれ、なんて一言も言ってない。なのに私をこんなに待たせてどういうつもりか、と言わんばかりの態度は鼻について仕方がない。

「・・・吉弘さん、だったっけ?俺は2コマ目も講義があるんだよ。」
「今日こそ来てくれるわよね?」
「今から昼飯食うから。」
「どうせ順番待ちよ。暇潰しとでも思って来てくれない?」
「断る。」
「ど、どうしてよ?!」
「話があるなら此処でしてくれ。それとも人が行き交うところじゃ出来ない話だとでも?」
「一応私としては、貴方のプライバシーを最大限考慮してあげてるつもりなんだけど。」

 とてもそうには思えない。何のつもりだか知らないが、女王面してここまでしつこく付き纏われるのは迷惑の一言だ。この女と顔を合わせる時間すらも勿体無く思えてならない。

「取り巻きが欲しいなら他を当たれ。俺にはそんなつもりはない。」
「貴方の彼女が話に絡んでいても?」

 さっさと立ち去ろうとしたところで、女が引き止める。女自身は腕を掴んだりしてはいない。それ以上に強力な鎖が俺の心を縛り付けた。俺は思わず女の方を向く。女はこれなら逃げるわけにはいかないでしょう?と言うような嫌らしい笑みを浮かべている。

雨上がりの午後 第1603回

written by Moonstone

 ・・・ん?何だか入り口付近に人だかりが出来てるな。学生自治会の宣伝活動か?更に近付いて行くと、その手のものではないらしい。一人の女の周りに−正確には背後−男が揃っている。あの女・・・昨日癇に障る高飛車な態度で声をかけてきた吉弘っていう女じゃないか。まさか待ち伏せか?

2004/8/1

[出張帰りのお話]
 8月は彼方此方で花火大会が開かれますので、背景写真を花火にしました。花火って動的なものですから(開きっ放しの花火なんて変だ(汗))、撮影が難しいんですよ。シャッターボタンを押してから実際にシャッターが切れるまでのタイムラグをしっかり把握してないと真っ暗画像になったりします(ボツになった写真は掲載分の約3倍(汗))。ポスターなんかでは綺麗に撮影されていますが、ああいうのを撮影したいです。・・・そう言えばPhoto Group 1更新してない(汗)。あ、此処もあそこも(大汗)。
 出張帰りで結構疲れていますが、ずっと起きていなければならなかった(当たり前)上に現地での作業時間より往復や待機時間の方がはるかに長かったという馬鹿みたいな状況でしたし、更に最寄駅から目的地まで徒歩3分程度で道程も単純な筈なのにちょっと迷ってしまって焦りました。ああ哀しき方向音痴(^^;)。
 まあ、起きていられたお陰で久しぶりに「チューボーですよ!」が見られるから良いんですが、その前番組の「ブロードキャスター」は相変わらず低俗ぶりを晒す恥知らずぶり。警察庁長官銃撃事件で公安警察のリーク情報を垂れ流した責任には一切言及せず、喧しいコメンテーターも知らん振り。マスコミというものはもの凄くお気楽極楽稼業ですな(嘲笑)。
 俺の問いかけに、晶子は俺の肩口に顔を埋めたまま頷き、腕に込めた力を強める。自らを崖っぷちに追い込んでまでも俺と一緒に暮らすと決めた晶子の心を引き裂くようなことはしたくない。しちゃいけない。今こそ左手薬指に填まっている指輪の意味とその重みを証明する時だ。
 俺は晶子をそっと抱き締める。芳(かぐわ)しい香りと心地良い弾力を腕いっぱいに感じて目を閉じる。腕に抱えられるのはこの華奢な身体。だけど心に抱えられる、抱えなければならない、何としてでも抱えたい想いは計り知れない。突然俺の前に降臨したこの女神をこの世に留める役目を担うのは・・・俺だ。想いを受けたものとして。絆の証を贈った者として。そして絆の証を公言した者として・・・。

 翌日。2コマ目が終わった後、鞄だけ3コマ目の講義がある部屋に置いて生協に向かう。智一はこの講義を受けていない。2コマ目の講義は、必要な単位を全て取得しておけば試験免除且つ何年かの実務経験を積めば自動的に取得出来る資格に必要な講義だから、その資格取得条件が欲しくなければ受講しなくても良いし、そもそも2年の後期に4年進級に必要な単位を落としている奴は受けられない。ちなみに智一は前者の方だ。
 生協の食堂はどうしても混雑する。智一はそれを避ける目的もあって2コマ目の講義を受けずに早めに昼飯を済ませてからその辺で適当に暇を潰している。暇と言える時間があるならレポートを自分でやれ、と何度も言ったんだがこれまた一向に改まる気配がないから放っておいている。やっぱり俺って甘いんだろうな・・・。
 生協の食堂が見えてきた。ガラス越しに見える食堂はやっぱり混んでいる。昼飯時は理系学部の学生が学部1年から博士3年まで殆ど一斉に集まるから、幾ら収容人数が多いとは言っても限界がある。半月に1回行われる生協への要望では「食堂の拡張を」っていう意見が圧倒的に多いんだが、「予算の関係」を理由に実施されない。無駄に広い敷地があるんだからそこにおっ建てれば有効利用出来る、というのは素人考えなんだろうか。

雨上がりの午後 第1602回

written by Moonstone

「入籍どころかプロポーズもしてないけど、前言撤回、なんてことはしたくない。書面になっていてもいなくても、約束の重みは同じだと思うから。俺は約束を守る。晶子にはそれを見てもらう。不器用な俺にはそれしか思いつかない。・・・良いか?」


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