芸術創造センター こぼれ話
Dropped talk of Performing Arts Center

2003年6月30日更新 Updated on June 30th,2003

2003/6/30

[今日で1年の折り返し]
 年明けから早半年。もう折り返し地点です。今月は一部予定どおりにいかなかったとは言え、自分の誕生日にそれなりの更新履歴を残すことが出来ましたし、新鮮な気分で梅雨明け、そして夏本番を迎えることが出来そうです。
 昨日は弟が訪ねて来て、修理が完了して戻って来たシンセサイザーを持って来てくれた上に、夕食を奢ってもらいました。v(^^)v 自分の誕生日で食事をご馳走してもらうのは一人暮らしをするようになって以来初めてのことなので、何時も以上に感慨深かったです。
 シンセサイザーも無事直っていましたし(データセーブを忘れていたために、一部データが消失してしまいましたが(汗))、長い間更新が滞っている音楽グループの再稼動に向けて始動していきたいと思います。このページの御来場者数も450000人を突破しましたし、この勢いで50万、そして夢のミリオンHIT達成へ向けて驀進したいところです。

「ちょっと、な。」
「祐司さん、奥手ですからね。それで萎縮しちゃったら勿体無いですよ。まあ、私はそういう祐司さんの慎重なところも好きなんですけど。」
「・・・ありがとう。」

 晶子の言うとおり、萎縮してしまったら折角の機会を台無しにしてしまいかねない。ここはひとつ一念発起して、自分の腕を存分にプロのミュージシャンにぶつけてみよう。そして自分の腕がどこまで通用するのか知ろう。マスターの台詞じゃないが、就職活動の一種になるだろう。
 俺はかなり冷めた紅茶を一気に飲み干す。すうっとした芳香が鼻と喉を通る。よし、残された期間はかなりあるとも言えるしさほど多くないとも言える。限られた時間を曲選びと練習に全力投球しよう。きっとこの夏も良い思い出が出来るだろう。否、出来るんじゃなくて創るんだ。自分の未来を切り開くのは自分自身の筈なんだからな・・・。

 それから1週間ほどの間に、晶子とも相談した結果、俺と晶子の演奏曲をマスターと潤子さんに順次報告した。俺は「プラチナ通り」「Jungle Dance」、そして最近レパートリーに加えた「THE SUMMER OF '68」「CHATCHER IN THE RYE」、晶子は「Secret of my heart」「PACIFIC OCEAN PARADISE」、そして最近レパートリーに加えた「Feel fine!」「Make my day」と各4曲ずつ。マスターや潤子さん、そして相手方の演奏曲目を考えたら、これでも多いくらいだ。
 マスターと潤子さんも演奏曲を知らせてくれた。マスターは滅多に演奏しない曲が殆どで「MORNING STAR」「BIG CITY」「Aquatic Wall」「HIBISCUS」、潤子さんはお馴染みの「energy flow」に加えて初めて聞く−リクエストされる機会が限られてるから俺や晶子が知らなかっただけだ−「TERRA DI VERDE」「put you hands up(piano version)」「鉄道員(piano version)」。やはり各4曲ずつだ。

雨上がりの午後 第1214回

written by Moonstone

 晶子が言う。自分じゃ分からないが何処で分かったんだろう?やっぱり・・・表情かな。俺の口元に笑みが浮かぶのが分かる。

2003/6/29

[(一応)特別な日(^^;)]
 トップページ最上段に堂々と記載してあるとおり、今日6/29は私の誕生日です。まあ、この歳になると(年齢はトップシークレット(笑))「あー、また歳食ったか」って思うのが先になっちゃうんですが、1年のうちの区切りの日としては心理的に重要な意味を感じます。
 更新も予定より1日ずらして(管理人の特権)、どうしてもこの季節に書きたかった作品「続・あるまどろみの風景」を公開しました。完成したのが昨日の午前中なんですよ。今回はスケジュールより早く進行しているので、運良くかける時間と機会に恵まれたわけです。
 アスカが主役の一方を演じる作品を書くのは実に久しぶりのことです(「魂の降る里」は除く)。別にアスカが嫌いとかいうんじゃなくて、Side Story Group 1は「魂の降る里」「マヤちゃん、ふぁいとぉ!PAC編」の更新に追われ、他のグループも手がけているので構想は出来ていても書く機会がなかったんです。私にとって特別なこの日に構想どおりの作品が公開出来たのには満足しています。出来れば一言でも感想をいただけると嬉しいです。
 俺は紅茶を一口啜る。・・・良いことなんじゃないだろうか?単にドレミをなぞるだけなら、それなりに練習を積めば出来ることだ。だが、局に表情をつけること、そして晶子が言ったような「歌う」ことは、俺のギターの腕が単に技術的に高度なだけじゃないということの証明なんじゃないだろうか?

「祐司さんのギターは、私みたいな音楽を始めて2年経つか経たないかの素人でさえも率直に、あ、このギターの音は優しく歌ってるな、とか感じさせるものなんですよ。プロの人も祐司さんのギターに込める思いに共鳴したんだと思います。だから絶賛したんですよ。」
「そうかな・・・?」
「そうですよ。」

 晶子はこれ以外の答えがあるか、といった口調で断言する。俺のギターが人の心に響くものになっている・・・。少なからずプロのミュージシャンへの希望を抱く俺にとっては得難い賞賛の言葉だ。それに安住しちゃいけないが、それを自信に変えるのは良いかもしれない。
 俺はまた紅茶を一口啜る。大学じゃ講義に実験にゼミ、バイトじゃ接客に演奏、家じゃ大学のレポートに曲のデータ作りにと忙殺されてばかりだが、こうして晶子の家でのんびり紅茶を啜っていると、自分の現状を客観的に見れて良い。
 少なくとも晶子には心に響くものを聞かせている。そして今度セッションするプロの人も俺のギターに興味を持ったと言う。ならば今度のセッションはその興味に応えて、ギタリスト安藤祐司此処にあり、ということを示す絶好の機会なんじゃないだろうか?譬えプロを目指さないにしても、マスターや潤子さんが言っていたようにまたとない機会だ。自分の限界をとことん追及してみるのも悪くはないだろう。

「祐司さん、心が晴れてきたみたいですね。」

 晶子が言う。自分じゃ分からないが何処で分かったんだろう?やっぱり・・・表情かな。俺の口元に笑みが浮かぶのが分かる。

雨上がりの午後 第1213回

written by Moonstone

 単に上手だと誉められるのとはちょっと、否、かなり違う気分だ。俺のギターが歌っている・・・。俺はギターで時に熱く、時にクールに、時に優しくそのメロディに相応しいと思う演奏をしているに過ぎない。だが、それが少なくとも晶子の耳には「歌っている」と聞こえるらしい。

2003/6/28

[今日は臨時休業]
 何時もの調子で行けば今日は小規模な更新をする日なんですが(一体何のために定期更新制度を撤廃したのやら(汗))、今日はお休みです。その代わりと言っては何ですが、明日更新します。
 理由は単純。自分の誕生日(明日6/29)に更新履歴を残したいからです。何時もの調子だと明日は背景写真の変更に留まるので、折角の誕生日なんだから記録に残ることをしたいと思いまして。まあ、それほど大規模な更新は出来ませんが。
 しかし、来週は1週間で2回背景写真が変わるのか(7月最初の変更があるので)。そろそろ背景写真の新作を加えたいのですが、近場で撮影出来そうなところは大体行きましたからね。ちょっと遠出する必要があるのかな、やっぱり。
湿気を抜いて−エアコンはドライ設定だそうだ−涼しくなったところで温かい紅茶を飲むというのも変な話かもしれないが、自分の家に変える前のこの一杯が心を癒してくれる大切なものなんだよな。
 晶子が俺の前とその向かい側にティーカップを置いて、そこに紅茶を注ぐ。ミントのすうっとする芳香が鼻によく通る。晶子は俺の向かい側に座る。俺は紅茶を一口啜ると、カップを置いてまた小さい溜息を吐く。本当にこのままで大丈夫なんだろうか?俺の心の中でそんな不安が膨張してくる。

「・・・なあ、晶子。」
「何ですか?」
「率直に言ってくれ。晶子から見て俺のギターの腕はどんなものなんだ?」

 俺の問いかけに、晶子は普段どおりの表情で口を開く。

「凄いと思いますよ。色んな曲を弾きこなせて、いいえ、ただ弾くだけじゃなくてギターで歌うことが出来る、凄い腕前の人だと思ってます。」
「歌う・・・?」
「ええ。祐司さんのレパートリーの中でギターがメロディを担当する曲が何曲があるじゃないですか。あれなんか特にそう感じますよ。ギターが歌ってる、って・・・。あの歌声を聞くと、忙しいバイトの合間にほっと一息つけるんですよ。私のバックで演奏してくれている時はバックコーラスみたいで。」
「歌う、か・・・。」

雨上がりの午後 第1212回

written by Moonstone

 俺は晶子の家に入る。湿気が多いせいか蒸し暑く感じる。晶子はエアコンのスイッチを入れてから紅茶の準備を始める。

2003/6/27

[特になし Part2・・・じゃないな(汗)]
 日常じゃろくに変化のない日が続いてます。まあ、波乱万丈の毎日っていうのも考えものですが、良い意味でそういう日常なら悪くはなさそうですね。
 さて、一昨日言及した共産党の筆坂元議員の処分についてですが、共産党のホームページで常任幹部会からの党員、支持者へ向けたメッセージが掲載されていました。読んではみたんですが、未だもって承服出来ないことばかりです。現役の最高幹部の一人が、しかも現職議員が破廉恥な行為に及びながら、罷免だけで済ませられたのか。これが地方レベルで発生したら間違いなく除名でしょう。中央幹部ならより厳しい処分を下して当然の筈。
 更に筆坂の処分発表で党員諸氏や支持者は顔に泥を塗られたのです。もう一つおまけに付け加えるなら、過去に女性問題で名誉委員が除名になっているのに何故今回は罷免で終わりなのか。中央批判をする「さざ波通信」を敵視し、同じく中央批判をした下里氏を除名しながら、中央はおろか全党員や支持者を侮辱する行為に及んだ筆坂を何故除名出来ないのか。筆坂が除名されるまで、私は繰り返し共産党に要求していくつもりです。

「祐司さんが不安に思うことはないと思いますよ。」
「そう言われてもなぁ・・・。」
「だって、マスターも言ってたじゃないですか。祐司さんのギター演奏にミュージシャンの人達も凄く興味を持ってる、って。祐司さんは期待されてるんですよ。それもプロの人達から。もっと自信を持って良いですよ。」
「期待されてるって言われても、実感がないからなぁ・・・。」
「大丈夫。祐司さんの腕はプロの人さえも唸らせるものなんですから、普段の演奏を聞かせてくれれば良いんですよ。」
「普段の演奏か・・・。」
「私も楽しみにしてるんですよ。祐司さんがプロのミュージシャンと共演するところを。きっと祐司さんなら何ら遜色ない演奏を聞かせてくれると信じてます。」

 晶子ははっきりした口調で言い切る。果たして俺はこの期待に応えることが出来るんだろうか?晶子の励ましは勿論嬉しいが、今の俺には不安を膨らませる要因にしかならない。
 自分の腕にまるで自信がないわけじゃない。これでも高校時代は校内随一の人気を誇るロックバンドのギタリストとして、度々別のバンドから助っ人の依頼や移籍の誘いがあった−宮城と付き合っていたってことで知名度が上昇したことは否定出来ないが−。だが、今度の相手は格が違う。実際にプロとして生活している人達相手に俺の腕が通用するのかどうかはまったくの未知数。両者唯一のギタリストとして下手な真似は出来ない。それらが俺の肩に重く圧し掛かってくる。

「私の家で紅茶でも飲んでゆっくりしましょうよ。少しは気が楽になるかもしれませんよ。」
「そうだな。」

 俺が今どんな表情をしているのかは分からないが、恐らく暗い不安げな表情なんだろう。そんな俺を晶子は叱咤することなく、温かい誘いをかけてくれる。本当に晶子が居なかったら、俺は今頃どうなっていたんだろう・・・。

雨上がりの午後 第1211回

written by Moonstone

 俺は小さく溜息を吐く。やはり晶子はまったくと言って良いほど気負いがない。興味と興奮をそそられる機会と捉えているようだ。良いな、晶子は・・・。何の気負いも不安もなく共演の機会を待っていられるんだから・・・。

2003/6/26

[特になし]
 昨日は波もなく静かに過ぎていきました。夕食後に爆睡したくらいで。これがよるまともに寝られない原因なのかなぁ・・・。この悪循環を断つには相当の試練を乗り越えないといけないような気がします。
 外は雨が降ったり止んだり忙しないです。それでも沖縄はもう梅雨明けしたそうですし、私の地方の梅雨明けもそう遠い日のことではないでしょう。常に雨の心配をしなくて良いような季節が来て欲しいものです。その前に一度はあの公園へ行って紫陽花と菖蒲を見に行きたいなぁ・・・。もう無理かな?
 晶子が−相合傘のせいか、普段より更に距離を詰めている−やや興奮気味に言う。晶子にしてみれば、俺を追いかけた結果あの店でバイトをするようになったことで、プロのミュージシャンと共演する機会が出来たのは幸運以外の何物でもないだろう。気負いがない晶子が羨ましい。

「何かドキドキしますね。プロのミュージシャンの演奏をバックに歌うなんて想像したこともなかったですから。」
「晶子のドキドキの中には不安はないのか?」

 俺が尋ねると、晶子は一瞬きょとんとした表情を浮かべる。だが、直ぐにそれは消えて、宝物を見つけた子どもみたいに目を輝かせる。

「まったくないといえば嘘になりますけど、それよりプロのミュージシャンと共演出来る、ってことが嬉しくて楽しみで・・・。今まで祐司さんのギターとシンセサイザーの演奏をバックに歌ってきましたけど、それがプロのミュージシャンに置き換わると思うと・・・どうなるのかワクワクします。」
「そうか・・・。」

雨上がりの午後 第1210回

written by Moonstone

「プロの人と共演するなんて、こんな機会があるなんて思いませんでしたよ。」

2003/6/25

[共産党は筆坂を除名せよ!]
 昨日の昼のニュースで唖然としました。共産党の筆坂秀世政策委員長・参議院議員がセクハラをしたことが発覚して党の役職を全て罷免され、議員辞職したと言うのです。
 共産党の規律は厳格ですし、ことがセクハラという人格、人権に関わる問題であるが故に党の役職罷免、議員辞職は当然の措置です。しかし、私はこの処分ですらも甘過ぎる、党の最高処分である除名処分にすべきだと憤っています。何故なら名実共に党を代表する一員であり、「共産党」という政党の看板を背負った議員として、ことを自ら公にせず女性からの告発を受けて事実を認めたから罷免、というのは女性の告発がなかったらそのまま居座っていたのであり、到底許せません。
 これを共産党の関係者の方がお聞きがどうかは分かりませんが、メールではこの主張を伝えました。共産党の党員や支持者の顔に泥を塗った筆坂こそ除名すべきだ、とこの場で改めて強く訴えます。
「「分かりました。」」
「プロのミュージシャンとセッション出来る機会なんてそうそうないことだ。ま、人生の思い出に残るように普段どおりの良い演奏を聞かせてくれ。期待してるぞ。」
「「はい。」」
「突然のことでびっくりしたと思うけど、祐司君も晶子ちゃんも何かの縁があってこの店でバイトするようになったんだから、今回もその縁の一環として大切にしてね。」
「「はい。」」

 マスターと潤子さんからの言葉に身が引き締まる思いがする。確かにバイト先でプロのミュージシャンとセッション出来るなんて滅多とない絶好の機会だ。この店でバイトするようになったのも、晶子と知り合ったのも全て何かの縁。その縁を大切に、思い切りセッションを楽しみたい。

 店を出た俺と晶子は、相変わらずしとしとと降り続ける雨の中を歩く。ちなみに開いている傘は一つだ。店に行く時間が違うし、今日は朝から雨だったから傘が別になるのが当然だ。だが、二人一緒ということで晶子が傘を畳み、俺が開いた傘の中に入っている。所謂相合傘だ。梅雨に入ってから結構相合傘をする機会が多くなったが、普段する機会が少ないだけに新鮮で胸がドキドキする。

「サマーコンサートか・・・。」

 俺がぼそっと呟く。マスターの話を聞いている時は気分がだんだんと高揚していったが、店を離れて冷静になってみるとまた不安が大きくなってきた。CDを出していないとはいえ−CDを出しているかどうかでプロかアマチュアか区別出来るものじゃないが−、相手はプロのミュージシャン。しかもマスターと共にジャズバーを席巻して、今でも活動中の現役だ。そんな人相手に俺のギターが通用するのか、甚だ疑問だ。

雨上がりの午後 第1209回

written by Moonstone

 随分楽観的な見通しだな。新京市の市民公会堂が何処にあるのかは知らないが、果たして学生連中が金を払ってまでそこまで出向くだろうか?まあ、この店の常連はマスターの言うとおり、結構飲み食いしてる。だから接客に演奏にと忙しいんだが。

「ま、梅雨明けまでにはまだ大体半月くらいかかるだろう。曲選びと練習に専念してくれれば良い。曲が決まったら俺か潤子に伝えてくれ。」

2003/6/24

[薬が効かない(泣)]
 昨日は散々でした。睡眠薬がまったく効かず(普通の人なら5分もかからずKOされる内容なのに)、ベッドで眠くなるのをじっと待つこと3時間(寝たのは2時過ぎ)。もう眠れん、と判断してPCを起動してゲームをしたりオフラインで自分の作品を読んだりしていたら、8時を過ぎて急に睡魔が!
 寝ないように注意していたんですが、薬の内容が内容だけに勝てず、結局寝こけてしまい、壮大に遅刻する羽目に・・・。その余波は今でも続いていて、ここ数日の寝不足が一気に噴出した格好です。
 昨日病院で事情を話して薬の内容を変更してもらいました。果たして吉と出るか凶と出るか・・・。いい加減にこんな無茶苦茶な生活リズムから脱却して、寝たいときに普通に寝られるように戻りたいものです。
「今度のセッション、というかコンサートは、新京市の市民公会堂を借りてやることになった。」
「ええ?!」

 俺はまた思わず聞き返す。てっきりこの店でするのかと思ってた。まさかそこまで大々的にやるとはとても思わなかった。

「場所の確保は日程の調整と絡むが、まず大丈夫だろう。チケットもそれにあわせて作る。市民公会堂の大ホールで確か1000人収容だから、チケット代は1000円から2000円ってところかな。」
「ちょ、ちょっとマスター。何で此処でやらないんですか?此処なら場所取りの必要もないのに・・・。」
「今度はベースやドラムも入るし、人数も多い。それに相手はプロだ。学園祭じゃあるまいしプロの演奏を無料で聞かせるわけにはいくまい。」
「それはそうですけど・・・俺と晶子っていう素人も居るんですよ?」
「アマチュアでも金とってライブやってるだろ?何ら問題ない。それに、此処2年間のクリスマスコンサートの入場者数の推移を考えると、とても此処じゃ入りきらん。」
「そんなに来ますかねぇ・・・。」
「金払ってでも聞きたいと思う連中は間違いなく来る。チケット代も学生でも出しやすい金額にすれば、来る可能性は十分ある。普段コーヒーやらサンドイッチやら飲み食いしながらこの店に通ってる常連だぞ?飲食費がチケット代に変わると思えば安いもんだろう。」

雨上がりの午後 第1208回

written by Moonstone

「あ、そうそう。肝心なことを言うのを忘れてた。」
「何ですか?」

2003/6/23

[2日連続はちょっと・・・(^^;)]
 昨日は一昨日に続いて1日2本執筆に挑戦したんですが、スタートからして差があり過ぎました。一昨日は5時起きでしたが、昨日は4時半に寝て10時前に起きるという状態でしたからね(デフラグなんてするんじゃなかった)。
 何とか1作品は仕上げたものの眠気が完全に取れず、もう1本は途中までしか書けませんでした。まあ、「これだけ書いておけば、次の週末1日で完成に持ち込める」というところまでは書きましたけど。
 相変わらず暑いです。湿気が高いです。横になっているだけでも汗が滲んできます。そろそろ寝辛い季節かなぁ。まだエアコンの電源は入れたくないんですが、睡眠不足には替えられませんし・・・。果たして今年の梅雨と夏はどうなるやら。
「井上さんも、向こうには居ないヴォーカルということで、勿論参加してもらう。大体、君を引き離したら井上さんに何をされるか分からんよ。」
「マスター。人を化け物みたいに言わないで下さいよ。」
「スマンスマン。それは兎も角、二人共何曲か選んでおいてくれ。大体5、6曲を目安にしてくれれば良い。」
「今度ご一緒する皆さんの演奏楽器は何なんですか?」
「あ、言うのを忘れてたな。サックス、ピアノ、ベース、ドラムだ。俺が引退する少し前にサックスが加入したんだ。だから俺とは違うサックスが聞けるぞ。向こうのサックスはフルートやEWIも出来るマルチプレイヤーだ。そうそう、勿論、ピアノもな。潤子とはまた違うタッチだ。」

 不安が消えた俺の胸の中で希望的観測が幾つも浮上してくる。プロのミュージシャンとのセッション。マスターと共にジャズバーを席巻した人々に評価された俺の腕試し。更にマスターじゃないサックス、潤子さんじゃないピアノも聞けるという。これまで心で膨れ上がっていた不安に代わって、胸躍るようなワクワク感が膨れ上がってくる。

「私の人生が変わったのは、マスターと今度のお相手のセッションを見たからなのよ。きっと祐司君も晶子ちゃんもカルチャーショックを受けると思うわ。」

 潤子さんの言うとおりだろう。それまでOL生活を送っていた潤子さんが、親に勘当されてまでマスターと一緒になって、一風変わった喫茶店を切り盛りするようになったんだ。きっと俺にとっても晶子にとっても衝撃的な出会いが待っているだろう。

雨上がりの午後 第1207回

written by Moonstone

「どうだ?やる気になったかな?」
「俺は良いですけど、晶子は・・・。」

2003/6/22

[出来るもんだなぁ〜]
 昨日は夜2時半頃に寝て午前五時前に覚醒。ここで二度寝すると一日ぐったり、と言う事になるとこれまでの経験で予想出来たので思い切って起床。朝食後直ちに新作の執筆に取り掛かり、買出しに出かける前に完成。これならもう1本書ける、と思って買出しに出発。
 しかし世の中そんなに甘くない(^^;)。買出し疲れで横になったら(横になると危ない)眠気が出てきて、昼食を挟んで4時間程ロスタイム。それから執筆を開始して夕食と後片付けを挟んで、こちらも総計約4時間程で完成。1日に長編2本を書くことが出来ました。
 今日は本来なら長編1本を書く日なのですが、昨日書いてしまったので、別シリーズの作品を執筆しようかと思います。季節が季節ですし、書ける時に書かないとこのページが停止してしまうので。6/29の更新目指して頑張るぞぉ!(^o^)/
 ・・・え?何で6/29なのかって?それはこのページの常連さんならお覚えの筈。最近このページを知った方もいらっしゃるかもしれませんから改めて発表します。「6/29は私の誕生日です。」・・・以上(笑)。

「連中は君のギターの演奏を聞いて、君の腕前に非常に興味を持ったみたいだ。特にアコギの演奏は下手なプロを凌駕する、と絶賛していた。」
「俺の演奏がですか?」
「ああ。さっきも言ったように向こうはギタリストが居ない。だから尚更、これだけの腕を持つギタリストとセッションしたいと思っているんだろう。」

 知らない間に演奏を録音されていたのは別に何とも思わないが、マスターと一緒にジャズバーを席巻していたプロのミュージシャンから高い評価を得られたというのは正直嬉しい。そんなに評価されているのなら・・・逃げるのは損だ。正面からぶつかって、自分の腕が何処まで通用するか試すのも、マスターが言ったように就職活動の一種になって良い経験になる筈だ。
 残る問題は曲だ。こっちでは専らジャズ・フュージョン系を演奏しているが、向こうはジャズ専門だろう。そうなると一から新曲を幾つも練習しないといけないだろう。正直言って、今の俺にそんな時間的余裕はない。

「マスター。演奏する曲はどうなるんですか?」
「それはこっちで決めてくれ、ということだ。セッションを申し込んできたのは向こうだし、連中も此処で演奏している曲を即興で演奏出来るだけの力はある。聞いたことがあるか楽譜があれば問題はない。日程も梅雨明け以降、君達が夏休みに入った頃を目安にして調整しようということになってる。だから安心して曲選びと練習に専念してもらえば良い。」
「そうですか・・・。」

 マスターの回答でまた一つ不安が消えた。向こうがこちらに対応出来るのなら問題はない。しかし、聞いたことがあるか楽譜があれば問題ない、というのは流石プロだな。そう言えば俺も此処の「採用試験」で「Fly me to the moon」の楽譜を渡されて、即興でアレンジして演奏しろ、って言われたっけ。何て試験だ、と思いつつ楽譜をパラパラ捲(めく)ってその場でアレンジして演奏したら、拍手を貰ってその場で採用、となったんだっけ。

雨上がりの午後 第1206回

written by Moonstone

 俺は自分の記憶の大地を掘り返す。・・・ああ、確かに言われてみればそんな日があったな。何時ものとおり忙しい中、マスターから接客は俺がするから演奏を頼む、と頻りに言われて、何が何だか分からないままにレパートリーを演奏しまくった日があった。あの時録音してたのか・・・。

2003/6/21

[どこまでイラクと憲法を蹂躙する気か?!(3)]
 更に国内では重大な胎動があります。自民党の内閣・国防・外交三部会の合同会議が十二日にイラク特措法案の了承にあたってあげた決議の一節には「国際的基準に合致した武器使用権限の規定を設けることを含む恒久的な法制の早期整備に努めることを法案の附則に明記する」とあります。この決議は今回のイラク特別措置法案には反映されなかったものの、福田官房長官は「恒久法とはどういうものかということについて、これから大いに議論してほしい」(6月13日の会見)と述べています。
 「恒久法」とは「国連決議に基づき派遣される多国間の平和活動(いわゆる『多国籍軍』)への我が国の協力(例えば、医療・通信・運輸等の後方支援)について一般的な法整備の検討を開始する」「国際平和協力法(PKO協力法)では・・・『多国籍軍』は対象とはならず、また、テロ対策特措法も・・・限時法であるため、いわゆる『多国籍軍』への協力のための部隊要員派遣についての一般的な法的根拠がない」と福田官房長官の諮問機関「国際平和協力懇談会」が述べています。要するに「普通の国」に近づけるために特別措置法案を必要としない、何時でも海外で武力行使出来る法整備をせよと言っているのです。軍国主義自民党の本性が露呈した格好です。
 「恒久法」の議論が少なからず今回のイラク特別措置法案の策定経過に絡んでいたことは、先に強行成立した有事法制とあわせ、自衛隊が建前上の「専守防衛」の原則を投げ捨て、アメリカと共に堂々と海外で武力行使する突破口となる危険があります。このような時代錯誤の盲動を続ける政党とそれにつき従う政党には、選挙という場で厳しい審判を下す必要があります(終わり)。
参考、引用文献:「しんぶん赤旗」2003年6月19日付
 だが、プロのミュージシャンになるという決断が出来るか、と言われれば、それはちょっと待ってくれ、としか言えない状況でもある。俺の将来は俺のものだが、親や親戚の思惑が絡んでくるのは目に見えている。潤子さんのように勘当されてでもプロのミュージシャンへの道を選択する覚悟は出来ていない。それだけのバックボーンがあるかどうか疑わしいからだ。

「音楽のプロっていうのは、何もCDをレコード店に並べる人間だけを指すものじゃないと思う。日々音楽と共に歩み、少人数の前ででも、或いは誰も聞いていなくても音楽を奏でることが出来る人間のことを指すと思う。」
「・・・。」
「俺がジャズバーで演奏していた時代の面子は、そういう観点からすれば一流のプロだ。俺のようにオーディションを受けても落っこちた人間も居るが、逆にオーディションに合格出来る腕前を持ちながらあえて今の道を選択した人間も居る。そんな奴らから話を聞くだけでも、将来を選択する上で参考になるんじゃないかな?」
「確かにそうですけど・・・。」
「別に今回セッションしたからといって、絶対プロのミュージシャンを目指せというつもりはない。そんな権利もないからね。就職活動の一種だとでも思ってもらえば良い。」

 マスターの言葉で俺の不安は解消された。今回のセッションを契機にミュージシャンへの道へ身体を向けられることになったら、道が違うだけで状況に流されるがままにレールに乗っかることには何ら変わりない。それだけは御免だ。自分の将来なんだから、出来ることなら誰にも干渉されずに歩む方向を選択したい。

「それから祐司君。連中も君とセッションしたがっているんだ。」
「え?」

 俺は思わず聞き返す。何で顔も名前も知らないマスターのジャズバー席巻時代の人達が俺のことを知ってて、尚且つ俺とセッションしたいなんて思うんだ?

「実はね、連中とセッションしようという話になった後、この前のバイトの時間に君の演奏を録音しておいたんだ。向こうはギタリストが居ないし、君の腕が連中にどう映るか試してみたかったんでね。」
「何時の間に・・・。」
「ほら、半月ほど前かな?君に頻りにステージでの演奏を勧めた日があっただろう?あの時だよ。」

雨上がりの午後 第1205回

written by Moonstone

 俺は返す言葉が見つからず口を噤(つぐ)む。確かに将来の道はまだ決めていない。否、日々の生活に忙殺されて考える暇がないと言ったほうが良いかもしれない。このままじゃ普通に就職活動、普通に就職、っていうある種の王道、言い方を変えればお決まりのレールに乗っかることになってしまうだろう。

2003/6/20

[どこまでイラクと憲法を蹂躙する気か?!(2)]
 (昨日の続きです)更に問題なのは武器使用基準を緩和しようとしていることです。交戦権放棄を憲法で謳っている日本に武器使用基準があること自体が矛盾なのですが、その武器使用基準を緩和することで益々自衛隊の海外での武力行使をやりやすくするものです。
 イラクのインフラ復旧や治安回復といったことはジュネーブ条約に基づき占領軍である米英軍が行わなければなりませんが、その他イラク国民への生活物資の輸送などは国連主導で行われなければなりません。現に今、ユネスコや世界保健機構(WHO)、国際NGOなどがそれを行っています。日本が支援すべきはそのような行動であり、占領を追認しその尻馬に乗ることではありません。ユネスコなどが行っている支援活動は治安悪化で思うように進まないのが現状なのです。
 日本が憲法とイラク国民を蹂躙してまで自衛隊派兵に躍起になるのは何故か?そこには5月の日米首脳会談が背景にあります。ここでは「地球規模の日米同盟」が提起され、小泉首相は「安全保障面での日米協力を更に強化するため、グローバル(地球規模)な課題への取り組みを含め、両政府間の協議を更に進める」(外務省発表文)と発言。ブッシュ米大統領はこれを称賛してます。イラク戦争支持、占領米英軍の支援は「地球規模の日米同盟」を具体化したものなのです(続く)。

Fade out・・・

 それは突然のことだった。
外は相変わらずと言っても差し支えない雨模様、しとしと音もなく降り続ける雨が窓ガラス越しに店の照明に照らし出される夜。何時ものように慌しいバイトを終えた「仕事の後の一杯」の席上でいきなり俎上のものになった。

「サマーコンサートをやろうか。」

 俺は失礼だが、一瞬梅雨のじめじめした気候でマスターの頭にカビでも生えたのか、と思った。コンサートは毎年12月24、25日の両日やっている。2回しか出演していないとは言え、俺の中では年間行事の一つになっている。そのコンサートを夏にやるだって?今年は意表を突いて、とでも言うんだろうか?

「俺がジャズバーで演奏していた頃の面子から久しぶりに連絡があってね。梅雨が明けたら景気付けを兼ねて久しぶりにセッションをしないか、って話になったんだ。」
「で、マスターはそれをOKした、と。」
「御名答。」

 御名答って・・・これまた失礼だが、マスターは気楽で良いよな。俺は大学じゃ講義に実験にゼミ、家じゃレポートや宿題や−絶対高校時代よりよく勉強してるぞ−ギターの練習に追われる毎日だ。そんな状態で顔も知らない人とセッションするための時間も心理的余裕もないんだが。

「これは俺の個人的な感情もあるが、祐司君。君の可能性を試す機会でもあると思ってる。」
「俺の・・・?」
「君はまだ将来の道を模索している段階だろう。仮にプロのミュージシャンを目指すなら、長年経験を積んだプロとのセッションを経験するのは良い機会だと思うんだ。」

雨上がりの午後 第1204回

written by Moonstone

 晶子が愛しい。誰よりも、何よりも・・・。この気持ち、何時までも大切にしたい。一度肉体関係を持ったからって、二人きりになったら即ベッドイン、なんてことはしたくない。そんな発情期の動物みたいな−人間は万年発情期の動物だとも言うが−ことはしたくない。俺は晶子を大事にしたい。晶子との時間を大切にしたい。それだけだ・・・。

2003/6/19

[どこまでイラクと憲法を蹂躙する気か?!(1)]
 与党が数の力で会期延長してまで成立を狙うイラク特別措置法案。これは一見イラクを支援するように見えますが、実際は自衛隊をより本格的に戦地に送り込み、実戦に臨ませやすくする法律であり、イラクと憲法を蹂躙する法案です。
 まず、法案は国連安保理決議を持ち出してイラク戦争を合理化しています。しかし、一連の国連安保理決議の中にイラク攻撃を容認したものは一つもありません。だからアメリカやイギリスは国連憲章違反、国際法違反、と厳しく内外から批判されているのです。そんな無法な戦争を追認することは、イラク国民はおろか中東イスラム諸国を侮辱するものです。
 そして問題なのは、占領軍、即ち米英軍の指揮下で兵站(へいたん)支援(武器、弾薬、物資の輸送、通信など後方支援)を行うことです。武器弾薬、そして米英兵を輸送することは、イラク国民側からすれば自衛隊は米英側に立っていると見なされ、今でも続いている散発的な反撃やテロの標的にされかねません。「兵站支援は非戦闘地域で行う」としていますが、イラク全土が戦闘地域、とアメリカの司令官が言っている状況下で戦闘地域、非戦闘地域の線引きが出来る筈がありません。こうして「自衛」を口実にイラク国民に銃口を向けたり、イラク国民に米援軍と同等と見なされて銃口を向けられることになるのです(続く)。
「・・・。」
「さっきのだって、晶子が俺の頬にキスをしたのをきっかけに俺が押し倒してキスしたのが発端だっただろ?そんな、勢いや成り行きで晶子を抱くっていうのは、どうも・・・心の何かが許さないんだ。さっきだってそうだった。場所が晶子の家だってことよりも、心の何かが引っ掛かって二の足を踏んだ、ていうか・・・そんな感じだった。だから、場所が俺の家だったとしても、何も出来なかったかもしれない、って思うんだ・・・。」

 俺が独白のように言うと、晶子は表情を緩めて微笑みを浮かべる。女神を思わせる優しくて慈愛溢れる微笑みだ。それを見ていると、心が不思議と安らいでいくのが分かる。

「私は・・・この場で祐司さんに抱かれても良いと思ってました・・・。場所が何処だろうが、隣の人に聞かれようが構わない、って・・・。だけど、心の何処かで、このまま祐司さんに抱かれて良いんだろうか、っていう思いがありました。こんな抱かれ方されるのって、何だか自分が売春婦みたいにも思えて・・・。」
「・・・。」
「だから、祐司さんが困ったような表情で自分自身と葛藤していた、って分かって、凄く嬉しい・・・。祐司さんが私を抱くことを特別なこととして意識しているんだ、ってことが分かって・・・。」

 晶子はゆっくりを身を沈めて俺の頬に自分の頬をそっと擦り合せる。滑らかな感触がとても心地良い。俺は自然に目を閉じて晶子を優しく抱き締める。薄手のパジャマを通して伝わってくる独特の柔らかい感触も、妙に精神を興奮させることなく、逆に晶子と触れ合っているんだ、っていう安心感のようなものを感じさせる。
 俺と晶子は頬擦りを続ける。風呂上りで服も薄い、おまけにとびきりの美人とベッドの上で抱き合っていて服を脱いだり脱がしにかかったりしないのは、どうかしているのかもしれない。でも、俺はそれで良い。俺にとって大切な晶子とこうして触れ合っているだけでも十分幸せだ・・・。晶子を抱くのは心に引っ掛かりを感じないように「条件」を全て満たした時で構わない。何も焦る必要はない。俺と晶子は自分達のスタイルで気持ちを深めて絡め合わせていけばいい。そういう関係もあって良い筈だ。

雨上がりの午後 第1203回

written by Moonstone

「俺だって普通の男だ。ベッドの上で色気を充満させてる自分の彼女が横になっているのを間近で見たら、抱きたいと思うのが普通だと思う。だけど、晶子を抱くには・・・何て言うか・・・ただ誘われるがまま、とか、その場の欲求に任せて、とかじゃ・・・上手く言えないけど・・・条件が揃わないような気がするんだ。」

2003/6/18

[また寝てた(爆)]
 もう夕食後ネットに繋ぐまで寝るのは日課となってますね。そんな中、昨日は夢を見ました。夢を見ることは別に珍しいことではないんですが、その夢は三人称、つまり、自分は傍観者という立場で、キャラが行動するのを見ている(キャラからは見えない)という状況の変わった夢です。
 そのせいか、内容も目覚めて暫く経つにも関わらずしっかり覚えています。一度描きたいと思っている近未来を舞台にしたアクションもので、実際に紙面にしたら結構な量になるものです。
 今は多数の連載を抱えていますので到底書けないでしょうが、何らかの機会を見つけて形にしたいと思います。こういう話をオフライン、即ちコミケなどへの出品材料にすれば良いのかな?夢を直接小説やマンガとして具体化出来る装置があったら面白いでしょうね。
 くっそー、晶子の色気に惑わされたって訳か。俺は苦笑いするしかない。女ってやつは魔物だな。否、蜘蛛か?俺を当惑させるに余りある色気を発散させて、俺の頭を混乱させて、不意をついて体勢を逆転させるとは・・・。しかし、晶子は何時の間にあんな自然にもの凄い色気を発散する技を身につけたんだ?
 そんなことを思っていると、晶子の表情が俄かに真剣みを帯びてくる。今度は何だっていうんだ?晶子は普段は素直で誠実なんだが、時々悪戯をしたり、息を飲む真剣さを見せたりするからな・・・。

「ねえ、祐司さん。」
「何だ?」
「此処が私の家じゃなくて祐司さんの家だったら・・・どうしてました?」

 そんなこといきなり聞かれてもなぁ・・・。俺は真剣な表情の晶子と向き合いながら考える。此処が俺の家だったら・・・。今まで晶子と寝たのは全て俺の家だった。そして晶子が見せたあのとてつもない色気・・・。場所と雰囲気が出揃ったら・・・俺は・・・。

「晶子を抱いてたかもしれない・・・。」
「・・・。」
「でも、立ち往生して何も出来なかったかもしれない・・・。あの時の晶子から感じた色気は、俺の性欲を高揚させるには十分だった。十分過ぎるくらいだった。それでも俺は晶子を抱くには至らなかった。場所が晶子の家だから、ってこともあったと思う。だけど、それだけじゃないような気がするんだ・・・。」
「・・・。」

雨上がりの午後 第1202回

written by Moonstone

「やーい、ひっかかった、ひっかかった。」
「!だ、騙したな?!」
「祐司さんったら、凄く困ったような顔するんですもの。」

2003/6/17

[平凡な日]
 昨日は特にこれといったことのない、平凡な一日でした。ネットに繋ぐまで約3時間ぐっすり寝たくらいですね。これも最近じゃ珍しくなくなってますし。本当に何気なく過ぎた一日でした。
 しかし、最近寝てばかりだな・・・。睡眠の制御が出来ないのは前々からですが、幾ら寝ても寝すぎたという感覚がない・・・。「寝る子は育つ」って言いますが、もうこれ以上育っても仕方ないですし。
 すると今度は俺の口の中に柔らかくて温かいものが入ってくる。するり、という感じで入ってきたかと思うと、俺がやったように俺の口の中を這いずり回り、俺の舌に絡みつく。ゆっくり、しかし濃厚な舌のダンスは、入ってきたときと同じようにゆっくりと終わって遠ざかっていく。
 俺はゆっくりと顔を上げる。それに伴って俺と晶子の口の間に一筋の糸の橋が出来る。晶子の目は半開きで、同じく半開きの口と相俟って、もの凄い色気を発散している。一言で言うなら、とろんとしている、というやつだが、その色気は今まで見たこともないくらいだ。こんな表情を間近で見せられると、むらむらと何かが込み上げて来るじゃないか。俺は晶子に軽くキスして、口と口を繋いでいた糸の橋を切る。だが、晶子の表情は変わらない。

「もっと・・・してくれないんですか?」
「もっと、って・・・。」
「今は・・・二人きりなんですよ・・・。」

 二人きりって・・・。そりゃそうだけど、此処は女性専用マンションだぞ?そんな場所で声や音を出すわけには・・・。否、そういう問題じゃなくて・・・。今は晶子を抱きたいとは思うけど、何か心に引っ掛かるものがある・・・。そう思っていると、晶子がにっと笑って俺を抱き寄せる。そして身体を反転させて俺が晶子に覆い被さられる格好になる。晶子は顔を上げて悪戯っぽい笑顔で言う。

雨上がりの午後 第1201回

written by Moonstone

 晶子の両手が俺の背中に回ったのを感じる。俺は晶子の口の中で晶子の舌に絡ませ、口の中を斑なく引っ掻き回し、入れたときとは正反対にゆっくりと舌を自分の口の中に戻す。俺と晶子は口を全開にして重ね合わせたままだ。

2003/6/16

[次回更新は御免なさい]
 昨日は何とか1作品書き上げたんですが、続く1作品がどうしても展開が纏まらず、書けませんでした。この週末を逃したら新作を書く時間は事実上ないので、次回更新はちょっと寂しいものになりそうです。楽しみにされていた方御免なさい(_ _)。更新内容は当日までのお楽しみ、ということで。
 元々難しいテーマの作品ですからね。目標のテーマまで繋ぐのが余計に難しいんです。まあ、所詮は私の描写能力の問題なんでしょうが、暫く此処で悩みそうだなぁ・・・。
 あ、今回で連載が1200回になりました(拍手)。100回積み重ねるのもなかなか大変ですが、まだ終わりそうにないです(^^;)。今後も続けていきますので、ご愛読の程を宜しくお願いいたします。
 あれから小説は進んだのかな?晶子のことだからしっかり書いていて、相当な長編になってるんだろうな。また何時か見せてもらおう。出会って以来の俺と晶子の触れ合いと衝突の日々が、晶子の視点でどんな風に書かれてるのか興味あるし。
 ドアが開いて、髪をポニーテールにしたピンクのパジャマ姿の晶子が入ってくる。ここ最近、具体的に言えば桜が咲く季節になって以来、風呂上りは専らポニーテールにしている。以前、俺と二人きりの時はポニーテールにする、って約束したのもあるだろうが、俺はさらさらのロングヘアーに対する憧れもあるし、風呂上りが寒い時は髪を下ろしていた。ポニーテールじゃなきゃ駄目だ、なんて思っちゃいないから晶子がしたいときにすれば良い。でも、何時見てもロングヘアーのポニーテールは様になるなぁ。

「お待たせしました。」
「すっきりした?」
「ええ。」

 晶子は俺の隣に座ると、不意に頬に唇を触れさせてきた。さっきのお返しか?柔らかいものが触れた感触が残る部分に思わず手をやりながら晶子を見ると、悪戯っぽい笑みを浮かべている。俺は苦笑いしながら晶子の額を軽く指で弾く。

「この悪戯娘め。」
「さっきのお返しですよ。」
「それじゃ・・・これならどうだ?」
「?!」

 俺は晶子を力いっぱい抱き締め、そのままベッドに押し倒す。きゃっ、という小さい悲鳴が聞こえるが、そんなことはこの際無視だ。俺は晶子の肩口から顔を上げると、驚いたような表情の晶子の唇に自分の唇を押し付ける。そして間髪入れずに舌を差し込む。晶子の口は抵抗なく開いて俺の舌を受け入れる。

雨上がりの午後 第1200回

written by Moonstone

 そう言えば、あのノートパソコンには、晶子の家計簿や自作の小説が入ってるんだよな。家計簿は別として、小説は進んでいるんだろうか?前に見せてもらった時は、半分私小説みたいなものだ、っていう、恥ずかしそうな晶子の説明を受けたんだっけ。自分を主人公にした日記風味の小説、か。俺じゃ3日続くかどうかも怪しいな。

2003/6/15

[寝てばかり・・・]
 朝目覚めたのが5時前。幾ら何でも早すぎる(寝たのが2時過ぎ)と思って二度寝したら8時。朝食後新作の執筆に取り掛かったのですが、どうにもやる気が起こらず、おまけに眠気も出てきてベッドにばったり。買出しには行きましたが、その後ずっと起きていられず、食事以外はずっと寝ているという「悪夢」を先週の日曜日に続いてやってしまいました。
 このままでは来週の更新メンバーはろくに出揃いません。何とかしたいのですが、今はやはり身体の調子が谷間にあるらしく、言うことを聞きません。出来ないときは出来ない、と見切りをつけた方が良いんでしょうが、今月は私の誕生月なので、よりしっかり更新したいんですよね。
 このお話をする寸前まで寝てました。寝たり起きたりを断続的に。ですので寝不足解消、とはなってません。今日はきっちり書けると良いんですが、果たして吉と出るか凶と出るか・・・。
 だけど、どうしても気になってしまう。考えてしまう。晶子が何処か話しにくそうにしていたこと。会ったところを見られたら俺が晶子を嫌いになってしまうということ。一体、晶子と兄さん、そして両親との間に何があったんだ?普通じゃありえないことがあったんだろうか?普通じゃありえないこと・・・。親が引き裂くほど仲の良かった兄妹・・・。

もしかして・・・。

 駄目だ!これ以上考えちゃ駄目だ!俺は今の晶子が、帰りが遅くなっても電話さえすれば、温かい食事を作って待っていてくれる、心底疲れた俺の愚痴を嫌な顔一つせずに聞いてくれる、そして何より、俺にこれとない愛情を向けてくれる今の晶子が好きなんだ。そんな1年以上も育んできた大切な気持ちを自分で崩すようなことをして何が面白い?!いい加減にしろ、祐司!
 俺は深い溜息を吐く。自分のねちっこさに呆れを通り越して怒りすら湧き上がってくる。俺は今の晶子が好きなんだ。それで良いじゃないか。晶子だって、俺の過去を知っても、その残像が俺を追いかけてきていることを知っても、俺を好きで居てくれたじゃないか。そんなありがたい気持ちを無にするようなことをしてどうするつもりなんだ。それこそ晶子を足蹴にするようなもんだ。こんな性格、早いとこ矯正しないといけないな。
 もう一度深い溜息を吐いた後、俺は改めて部屋を一望する。必要最小限のものがさっぱりと、機能的に配置されたこの部屋・・・。ある人の持ち物や部屋なんかはその人の性格を反映するっていうけど、この部屋は本当に晶子の性格を反映してるよな。俺みたいにウジウジしない、何事もそつなくこなす晶子らしい。
 毎週月曜日の夜、この部屋で寝泊りするようになってから久しいが、何時来ても乱れたところがなく、整理整頓されている。デスクなんてその典型だ。俺のデスクの上なんて、楽譜やレポートやノートが乱雑に乗っかっているのに、晶子のデスクはノートや本が本棚に整然と並べられていて、あるのはノートパソコンくらい・・・。

雨上がりの午後 第1199回

written by Moonstone

 俺はベッドに腰を下ろす。すると頭の中にさっきの疑念が浮かんでくる。打ち消そうと思っても、頭の隅にこびり付いて取れそうにない。こんなこと幾ら考えたって何の得にもなりゃしないのに。それどころか、晶子に対する自分の気持ちそのものを疑うようなことになってしまいかねない。

2003/6/14

[何とか間に合ったぁ〜]
 今日の更新で2グループに短編(コントだな)をアップしましたが、Side Story Group 2の方はネット接続1時間前に急いで書き上げたものです。本当は前日準備するつもりだったんですが、事務処理に追われて手がつけられなかったんです。で、昨日は昨日で「あたしンち」を見たら寝てしまってギリギリの時間になってしまいました(汗)。
 どうしても更新前にバタバタすることが多いですね。詩やコントを書く時は、時間的に切羽詰っている方が書き易いんですよ。長編は十分な時間がないと書けませんけどね。これって不思議かもしれません。言っておきますが、決して詩やコントで手抜きしてるわけじゃないですよ。それなりにきちんと考えて書いてます。
 このお話をしているのはネット接続10分前です(爆)。もっと余裕を持って更新したいんですが、眠気には勝てませんわ(^^;)。それより、Side Story Group 2の更新が軌道に乗って来たようで嬉しいです。随分長い間沈黙してましたからね。この調子を持続したいです。
 晶子の肩の細かい震えが止んでいく。どうやら落ち着きを取り戻しつつあるようだ。俺は晶子の髪と背中を撫で続ける。晶子が俺の胸から顔を離したところで、俺は晶子をそっと離す。涙の跡が二つ、頬に残っている。目は真っ赤に充血していて痛々しい。俺は晶子の頬にある痛苦の痕跡を拭ってやる。

「晶子の家や家族関係にも色々事情はあるよな。なのにそれを尋問するようなことをして・・・悪かった。」
「いいえ・・・。祐司さんが私を嫌いにならないで居てくれるなら良いんです・・・。御免なさい。取り乱してしまって・・・。」
「もう晶子の家族のことは聞かない。晶子が言うまでは。」
「祐司さん・・・。」
「言いたくなったら言ってくれよな。俺は・・・さっきも言ったけど、晶子が俺を捨てない限り、晶子を嫌いになったりしないから。」
「私は祐司さんを捨てたりなんかしません。絶対、何があっても・・・。」

 晶子ははっきり言い切る。それだけ言われると嬉しいし、同時に何があっても受け止めるだけの「土台」であり続けなきゃ、という意気込みみたいなものが沸いてくる。「土台」がぐらついてちゃ、晶子は安心して立っていられない。頼りないと思われがちな俺だからこそ、しっかりしないとな。

「・・・お風呂、行って来ますね。」
「ああ。待ってるから。」

 俺はそう言って、晶子の頬に軽くキスをする。何だか妖しいシーンになってしまったかもしれないが、そうせずには居られない。そんな気分だったから滅多にしないようなことをした。それだけだ。晶子は嬉しそうな笑みを浮かべて、ありがとう、と言って小走りに部屋を出て行く。ちょっとは効果があったみたいだな。・・・何だかこっちの方が恥ずかしくなってきた。

雨上がりの午後 第1198回

written by Moonstone

 俺が言うと、晶子は無言で首を横に振る。両手は変わらず俺の背中を擦り続けている。俺は晶子を抱き続ける。不器用な俺が今晶子に出来ることはこれが精一杯だ。晶子にありったけの愛情を注ぐこと。俺にはそれしか出来ないし、それ以外のことは不要だろう。

2003/6/13

[重大事だという認識がないのか?]
 一昨日の党首討論で、日本共産党の志井委員長にイラクが大量破壊兵器を持っていると(自分が発行しているメールマガジンで)断定した具体的根拠は、と問われた小泉首相は、フセイン大統領が見つかっていないのだからフセイン大統領が存在しなかったと言えるか、という妄言を吐きました。全然答えになってません。大量破壊兵器を持っている具体的根拠は、と問われているのにフセイン大統領の安否を持ち出してどうするのでしょう。
 これは単なる妄言では済みません。問題は首相が米英軍による国連憲章、国際法違反のイラク侵略戦争を支持した理由なんですから。今、米英ではイラクに大量破壊兵器があったという情報が虚偽、誇張、捏造されたものではないかとして追及が始まっています。疑惑はありました。しかし、それを検証していて、戦争が始まるまで「大量破壊兵器はない」としてきたのが国連監視検証査察委員会なのです。疑惑が一足飛びに断定する理由にはなりません。
 首相は結局、アメリカの言うことを鵜呑みにしておうむ返しにしたに過ぎなかったのです。戦争の支持不支持表明は一国の政府の態度が問われる重大問題です。それをあの国が言っているんだから、などという安直な態度で支持したとなれば、まさに属国日本を証明したことになるのではないでしょうか。こんな首相にイラクの復興云々を言う資格はありません。
実の兄妹を引き裂かなければならないほどの理由が・・・。俺は気を取り直して晶子に歩み寄り、その両肩を掴んで俺の方を向かせる。突然のことのせいか、晶子の表情には戸惑いが見える。

「何で・・・駄目、にまで発展するんだ?会うと何かまずいことでもあるのか?」
「・・・会うと・・・今の幸せが壊れてしまうかもしれないから・・・。」

 晶子はそう言って横を向く。その瞳から一筋の涙が頬を伝い、床に音もなく落ちる。

「私は・・・兄とは会っちゃいけないんです。どれだけ会いたくても・・・。もし会ってしまったら・・・私と兄が会ったところを見たら・・・祐司さんはきっと私を嫌いになってしまう・・・。」

 ど、どういうことだ?仲の良い兄妹の再会を見て、そりゃあ多少は焼餅を焼くかもしれないが、見ていて決して気分が悪くなるもんじゃない。ましてや晶子を嫌いになる要素なんて見当たらない。なのにどうして・・・。そこに晶子の両親が晶子と兄さんを引き裂いた要因があるんじゃ・・・。
 否、今はそんなことにあれこれ邪推を巡らせる状況じゃない。俺は・・・晶子の彼氏なんだ。探偵でも警察でもない。晶子を調査したり尋問したりして暗部を−こんな表現は使いたくないが−引きずり出す立場じゃない。俺は晶子を抱き寄せ、その茶色がかった髪と、力を入れたら折れそうな背中を優しく撫でる。

「俺は・・・晶子が俺を捨てない限り、晶子を嫌いになったりはしない・・・。」
「祐司さん・・・。」

 俺の背に晶子の両腕が回ったのを感じる。俺という存在を確かめるように、両手が俺の背中を擦り続ける。そうだ。晶子は今、拠り所が必要なんだ。だったら尚のこと、俺がでんと構えて受け止めてやらなきゃ駄目だ。

「悪かったな。嫌な聞き方したりして。」

雨上がりの午後 第1197回

written by Moonstone

 それに駄目、っていうのはどういうことだ?会うと何かまずいことでもあるのか?・・・もしかして、晶子の両親が晶子と兄さんを引き裂いたのは、そこに原因があるからなのか?

2003/6/12

[なかなかどうも・・・]
 月曜、火曜、と睡眠時間を短くすることで薬を複数使わないようにする作戦はそこそこ順調に言っていたんですが、やはり睡眠不足の蓄積は否めません。昨日は眠くて眠くてたまりませんでした。うつらうつらしながら図面と格闘し、気がついたら居室に自分一人だけだった、という状態でした。
 睡眠の制御は非常に難しいです。何分薬を使わないとまともに寝られない状態なので、薬を飲むタイミング、そのときの疲労度など諸々の条件で翌日の状態が決まるという、極めて厄介な状況下にあります。この時間に薬を飲めば良い、という明確な判断基準がないのが一番困ります。
 ま、それはそれとして・・・、昨日、通販で注文した同人誌が届きました。楽しみにしていたものだったので一気に読みました(量はさほど多くなかった)。同封されていたペーパー(って言うんでしょうね?)はいかにも同人誌って感じで良かったです。何時か自分も、と思うんですが、イラスト描けなきゃ駄目でしょうね。早くも挫折か、トホホ(泣)。

「それにしちゃ、表情が暗いな。」
「そう・・・見えますか?」
「ああ。」
「兄からの電話は嬉しいのは勿論ですけど、時間が短かったですから大した話が出来なかったんです。兄は仕事で疲れてるでしょうから仕方ないんですけど・・・。」
「晶子の兄さんって、社会人なのか?」
「ええ。言ってませんでしたか?」
「社会人か・・・。だとすると、俺よりずっと大変なんだろうな。そんな兄さんからの電話だったら、俺に構わないで話してて良かったのに。」
「兄の方から、今日はこれまで、って切り出されましたから文句は言えませんよ。」

 晶子はしんみりとした表情と口調だ。まさに名残惜しそうな・・・。晶子と兄さんとの兄弟仲は、俺が想像出来ないほど良かったんだろうな。しょっちゅう喧嘩していた俺と弟じゃ比較の仕様がない。でも、そんな仲だったら俺に構わず電話を続けていても良さそうなものなのに。
 兄さんの方も、俺が言うのも何だが、時間を気にする必要はなかったと思う。ろくに会話も出来ないほど疲れていると考えることも出来るが、俺が、否、俺でなくても想像出来ないほど仲の良かった妹との電話なら、会話しているうちに疲れも取れてくるんじゃないだろうか?少なくとも俺は晶子と会話していてそう感じる。

「折角の機会だったのにな。・・・もしかして、俺が入って来たのが邪魔だったか?」
「そんなことはないです。兄の方にも事情はあるでしょうし、学生身分の私が引き止めるなんて出来ないですよ。」
「ゆっくり電話出来る機会があると良いな。電話じゃなくて実際に会うのも・・・」
「それは駄目です!」

 晶子のいきなりな、しかも強い口調の否定に俺は思わずたじろく。な、何だ一体・・・。親が引き裂いてそれがきっかけで親と半ば絶縁状態にまでなった程の仲の良い兄さんとなら、電話だけじゃなくて会いたいと思うのが自然だと思うんだが・・・。

雨上がりの午後 第1196回

written by Moonstone

 晶子の兄さんからか・・・。そう言えば晶子、兄さんと凄く仲が良かったんだったっけ。それを両親に引き裂かれたもんだから両親と半ば絶縁状態になってる、って。でも、そんなに仲が良い兄さんからの電話だったら、もっと嬉しそうにしても良さそうなもんだが・・・。

2003/6/11

[ボス!事件です!]
 とうとう来ましたよ、私んとこにも。身に覚えのない利用料だの何だのを指定口座に振り込め、という噂のメールが。念のためヘッダを含めて全文印刷して警察に相談したんですが、結論はやはり「相手にするな」でした。この手のメールは結構相談が多いらしくて、警察の方もかなり詳しく教えてくれました。
 教えていただいたことで、リスナーの皆様にも役立つ(必要ない方が良いですけどね、そりゃ)ことを此処でお伝えしましょう。(1)まず、身に覚えがないなら文面がどうであれ無視すること。顧問法律事務所だの「回答がない」「誠意がない」だの中傷されても「自宅や勤務先に回収しに行く」などと脅迫めいた文面だとしても、気にしてはいけません(かなり腹立つ内容だったな、しかし)。(2)債権回収は回収相手と連絡が取れないと無効ということ。相手のメールアドレスが送信専用で応対出来ないというのは、この詐欺の典型的なものであり、そもそもそういう形式での債権回収は無効なので振り込む必要はありません。
 ネット活動やっていると、ウィルスメールは来るわダイレクトメールは来るわと鬱陶しかったんですが、今回ほど腹立ったと同時に動揺させられたのは初めてです。皆様もくれぐれもご注意くださいね。
 俺はベッドから立ち上がると、鞄からパジャマと下着を取り出して部屋を出て風呂場へ向かう。バスタオルは1枚晶子の家に置いてあるし、身体を洗うスポンジも俺専用のものがある。だから着替えだけ持っていけば良い。何だか日を重ねる毎に此処が俺の第二の家みたいな気分になってくる。実際そうなっていると言われれば反論出来ないが。
 俺は服を脱いで風呂場に入り、ドアを閉めてジャワーの蛇口を捻る。適度な熱さの湯が一日の汗を流していく。髪と身体を洗って湯船に浸かる。この時点で自然に深い溜息が出る。一日の疲れや不満の残りが噴出した感じだ。実験で心身共に疲れ果てた日は、晶子の家で寛ぐに限るな。本当に晶子が居なかったらどうなっていたやら・・・。
 のんびり湯に身体を浸した後、俺は湯船から出てそのまま風呂場から出る。用意されていたバスタオルを取って身体を拭こうとしたところで、ドアの向こうから微かに声が聞こえて来る。・・・電話か?こんな時間に?
 妙に気になった俺は、手早く髪と身体を拭いて下着とパジャマを着ると、小走りでリビングに入る。その頃、晶子はデスクの上にある電話を置いたところだった。俺に向かって背を向けている格好だから表情は分からない。誰からだったんだろう?俄かに心がざわめき始める。

「晶子。お先に。」
「ゆっくり出来ましたか?」

 振り向いてそう言った晶子の表情は微笑んではいるもののやや暗い。何か変な電話だったんだろうか?

「電話・・・誰からだったんだ?」
「・・・兄からです。」

雨上がりの午後 第1195回

written by Moonstone

「お先にどうぞ。ゆっくりしてきてくださいね。」
「ああ。ありがとう。」

2003/6/10

[そろそろ危険]
 病院へ行った以外は大した変化のない日でした。窓を開けていたら涼しくて気持ち良かったので寝入ってしまいましたが。で、こんなことを続けているもんだから、連載のストックが底をつき始めています。まあ、危なくなったら更新時間をずらしてでもその場で書いて掲載する、という手段を取りますから(病気を患う前は実際そうしてたし)多分休載ということにはならないでしょう。
 こちらでは今日明日あたり入梅らしいですが、そうなると歩いて通勤しないといけないのが辛いなぁ・・・。異常に疲れやすい今の私は、歩くだけで相当体力を消耗するんですよね。雨天決行で傘を差して自転車に乗る度胸はありません。危ないですし。
「・・・ありがとう。」

 今はそれしか言えない。それがもどかしい。だけど晶子との間に余計な装飾は不要だ。思ったことをそのまま言えば良い。それが衝突に発展することになったとしても、本音を隠して上っ面の付き合いをするよりずっと互いの心をぶつけ合えて良いと思う。もっとも言うだけ言うんじゃなくて、前に順子さんに言われたように言う前に10数える必要はあるだろうが。

「エアコン、入れましょうか?」
「良いよ。汗を流せばすっきりするさ。」
「お風呂の準備してきますから、ちょっと待っててくださいね。」

 晶子は部屋を出て行き、少しして戻って来る。風呂の準備と言ってもボタンを押すだけだから簡単なもんだ。俺はギターとアンプを片付ける。電源プラグを抜き、ギターとアンプの結線を外し、ギターをソフトケースに入れてアンプと一緒に部屋の隅に置けば片付け完了。俺は滲んでくる額の汗を拭ってベッドに腰を下ろす。
 果てさて、風呂の準備が出来るまでの時間、どう過ごそう?黙ったままってのも何だしな・・・。かと言って俺の口から出るものと言えば左右に忙しなく揺れ動く将来の天秤の具合か、大学生活のぼやき矢口くらいのもんだしな・・・。こういう時、話下手なのが恨めしく思う。まあ、これで晶子が退屈しないから、言い方を替えれば一緒に居るだけで良いっていうタイプだからその点安心なんだが。
 暫くぼんやりしていると、風呂の準備が出来たことを知らせる電子音が聞こえて来る。頭の中に立ち込めてきた霞みを取り払うべく欠伸をすると、晶子が言う。

雨上がりの午後 第1194回

written by Moonstone

「それはさっき言ったとおりですよ。私の知らない時間に祐司さんがどんな様子で過ごしているのか分かるから、話してくれる方が嬉しいんです。私で良かったら遠慮なく話してくださいね。」

2003/6/9

[今更春眠?]
 昨日は一昨日に増して眠気が酷く、殆ど1日横になっていました。目覚めもそこそこすっきりしているというのに、一体何故でしょう?特別身体の調子が悪いというわけではないんですが、兎に角眠い。ただこれだけです。これが厄介なんですが。
 こうも眠気が酷くては何も出来ません。こういう時でも食事とか身の回りのことは自分でしないといけないのが一人暮らしの辛いところ。手っ取り早く済ます方向に走ってしまいがちなんですが止むを得まい。
 先週は1日仕事休みましたから、もうこれ以上休んでいられません。眠気を忘れるほど没頭出来れば良いんですが、何分退屈な仕事が続きますからねぇ。まあ、寝るとき寝られればそれに越したことはないんですが。
「今日も実験で帰りが遅かったですものね。」
「役立たずが三人も揃ってりゃ、早く出来るものも遅くなるさ。はあ・・・。せめてサポートくらいしっかりやってくれりゃなぁ・・・。」

 俺はギターのストラップから身体を抜きながらぼやく。今日の実験はマイコンのプログラミングという、情報ではかなり簡単で早く終われる部類に入るものだった。ところが智一はまるで見当違いのことを言って実験の進行を混乱させるし、残る二人は完全に傍観を決め込む有様。俺の気苦労は学年が変わっても少しも減りそうにない。
 腹が減るのを我慢して、晶子に夕食の準備をしてもらうように頼んだのは正解だった。腹立たしくてどうしようもなかった気分が、晶子の料理を食べて晶子に今日の苦労を話しているうちにかなり軽くなった。愚痴を聞かされる晶子はたまったもんじゃないだろうが、嫌な顔一つせずに話を聞いてくれるのはありがたい。

「俺の話って・・・聞いててつまらなくないか?」
「いいえ、ちっとも。それより私の知らない時間に祐司さんがどんな様子で過ごしているのか分かるから、話してくれた方が嬉しいですよ。」
「そんなもんか?」
「祐司さんと私じゃ、大学生活の大変さのレベルが違うってことくらい分かるつもりですよ。それに祐司さんは孤軍奮闘。本当なら弱音の一つでも吐いて良いと思うんです。でも祐司さんはぼやくけど弱音は吐かない。むしろそれが無理してるんじゃないかな、って心配になるんです。」
「今の大学生活が大変だ、って思ったことはある。だけどそれは自分で知ってて選んだ道だし、もう何を言っても無駄だ、っていう部分もあることが分かってるから口から出るのは愚痴かぼやきくらいのもんだよ。それを聞いてくれる晶子が嫌な気分になってないか、っていう方が気がかりなんだ。」

雨上がりの午後 第1193回

written by Moonstone

「今日はこのくらいにしましょうか?」
「そうだな。結構疲れたし。」

2003/6/8

[眠い・・・]
 金曜日に睡眠障害で眠気が限界に達していたので仕事休んで一日寝てたというお話はしたと思いますが、今でもまだ眠いです。朝起きるのも遅ければ、暇さえあればすぐ寝る始末。新作を休みなしで書き上げたのは正解でした。度々「寝たい」という欲求が襲ってきましたから。
 多分これは睡眠障害による眠気の蓄積だけではなくて、持病の谷間に居るからだと思います。私の持病は調子が良くなったり悪くなったりしながら回復していくということですし、以前にもこのようなことがあったので。お陰で予定していたことがなかなか出来なくて困ってます。
 まあ、身体の調子が悪ければ無理はしない方が良いんでしょう。無理をして逆戻り、というのが一番質が悪いですから。公約どおり背景写真を変更しましたが、これでちょっとは状況転換になると良いな・・・。
「ヴォーカルが無いところは祐司さんが演奏するじゃないですか。それを見てたんですけど、祐司さんの両手が凄く忙しそうに動き回っていましたから。」
「吹いて音を出す楽器を弾いて音を出す楽器で再現しようってんだから、そもそも無理があるんだよなぁ。出来るだけ近付ける努力はしてるけど、どう聞こえてるんだろ?知ってる人も居るだろうし。」
「私はCDと聞き比べてみたんですけど、今はエフェクタでしたっけ、それがありませんから音は違って当たり前ですけど、雰囲気は良く出てると思いますよ。流石はギタリストだなぁ、って。」
「マスターがソプラノサックスを蹴ったから、二人揃ってステージに上がる時は俺がやるしかないし。家でも練習してるんだけど、どうも違和感が拭えないんだよ。まあ、ハーモニカをギターで再現するんだから無理があって当然だと思うけど。」
「・・・演奏したくなかったですか?」
「折角の晶子のレパートリーを崩すようなことだけはしたくないからさ、やるとなった以上はギタリストとしての技術を総動員して演奏する。それが晶子の歌に音を添える人間の役割だからな。」
「私は、祐司さんと一緒にステージに上がれるほうが良いですから。」

 晶子はそう言って微笑む。少々不満が−欲求不満に近いものがある−溜まっていた俺だが、晶子のそれを見ていると苦労して演奏するのもまた由か、と思ってしまう。
 晶子を指導するのは、とは言ってももう指導することなんてありゃしないが、それは俺の役割と最初から決まっていたし、晶子のパートナーを務めるのは俺だという自負もある。決まったことにガタガタ文句をいう暇があったら、自分の演奏技術の幅を広げると良い方向に考えて練習に励んだ方が賢明だな。

雨上がりの午後 第1192回

written by Moonstone

「祐司さん、演奏大変そうでしたね。」
「分かる?」

2003/6/7

[国会の愚を見た!]
 昨日は身体の具合が思わしくなかった上に睡眠不良が重なって限界に達していたので仕事を休んで殆ど一日寝てました。そんな中、ラジオを流していたのですが、国会で有事法案が与党三党と民主党、自由党の賛成多数で成立した、というニュース速報を聞いて愕然としました。
 現在公開中の決議(今日修正します)やリンク先でも紹介されているとおり、戦争を放棄した国で戦争協力を拒否したら罰せられるという矛盾が発生する、反戦集会や反戦デモも「公共の福祉」の名の元に規制される、など憲法違反が明白な法案です。それに賛成した与党三党は勿論、修正を「画期的」と自画自賛する民主党と自由党は、結局その名が示すとおり、自民党の亜流でしかなかったということが確実に証明されました。
 アメリカ言いなりの政府与党が「現実的」を称する民主党と、自民党の中でももっともタカ派な集団である自由党を抱きこんで成立させた有事法案。今頃自民党内部では祝賀会が催されていることでしょう。有事法案が成立しても発動を許さない厳しい監視の目を向けていかなければなりません。「何時か来た道」に踏み込むかどうかは我々、特に有権者の目と手にかかっているのです。
 「PACIFIC OCEAN PARADISE」。これはこれからの季節のための曲とも言える。この曲が厄介なところはメロディやソロにハーモニカを使っているところだ。マスターのソプラノサックスで代用しようかと思ったんだが、「井上さんは君の担当」と一蹴されたから、ギターのエフェクトや演奏方法、ボリューム加減を色々工夫してハーモニカみたいな音と演奏を作り出した。今まで何曲もデータを作ってきてギターのパートを練習してきたが、この曲ほどあれこれ試行錯誤した曲はないと思う。
 今はエフェクタなしだからナチュラルトーンで気分だけ、とするしかない。俺は晶子の準備が整ったのを確認して演奏を始める。ボリュームペダルがないから、せめて足だけでも動かしてその「つもり」で練習しておく必要がある。アームやビブラート(註:音程が微妙に上下すること)を多用してハーモニカの演奏に少しでも近付けるように苦心しつつ演奏する。
 俺が暫く演奏すると、晶子のヴォーカルが入る。今回は「ATE SABER」とは対照的にウィスパリングを存分に効かせた、漣(ささなみ)のような印象を与える歌い方だ。倉木麻衣の曲を歌うときより更にウィスパリングが効いているから、無声音にかなり近い。
 しかし、歌は簡単かというとこれがなかなか忙しい。晶子みたいに流暢に英語が発音出来ないと追いつかないだろう。ウィスパリングが効いているからそれで誤魔化そうと思えば出来ないことも無いだろうが、それは晶子のヴォーカリストとしてのプライドが許さないだろう。発音は俺でも聞き取れるほど明瞭だ。この辺、流石だと思わせる。
 曲は俺のギターと晶子のヴォーカルを交互にしながら進んでいく。2回交互に繰り返したところで俺のソロが入る。元々息で鳴らす楽器の音や響きを弦を弾く楽器で再現しようというのだからかなり難しい。今はエフェクタが無いから、アクセントやアーム、ビブラートを意識して「聞かせる」ようにする。それだけでも難しいのに、高温低音を幅広く使うから余計に難しい。ソプラノサックスの出番を拒否したマスターが恨めしい。
 どうにかソロが終わると、また晶子のヴォーカルが入る。この曲における晶子のヴォーカルは同じフレーズの部分で歌詞だけ違うというタイプのものだ。だから晶子としては割と歌いやすいだろう。ウィスパリングで誤魔化さないではっきり聞き取れるようにするのは、晶子ほどの腕前があれば十分可能だろう。実際傍で聞いていても違和感を感じるところはない。
 晶子のコーラスが16小節ほど続いたところで、俺がダウンストロークで夏の波間を髣髴とさせる締めくくりをする。やれやれ。どうにか終わったか。やっぱりこの曲はせめてソプラノサックスを使うべきだ。ギターじゃどうしても無理がある。

雨上がりの午後 第1191回

written by Moonstone

「次は『PACIFIC OCEAN PARADISE』にしましょうよ。」
「俺は良いけど・・・晶子は大丈夫なのか?無理すると喉が潰れるぞ。」
「今は湿気が多いですから、適度に喉が湿って良いんですよ。」
「そうか。んじゃやるか。」

2003/6/6

[作品読破]
 一昨日、「魔法遣いに大切なこと プライマル」(メディアファクトリー刊)を読破しました。買ってから約1ヶ月かかっての読破です。ハードカバーの分厚い本なのか、と思われるかもしれませんが、新書版タイプ(普通のコミックスとほぼ同じサイズ)で厚さも程々。一気に読んでしまえば1日で十分な量です。
 何でこんなに時間がかかったのかと言えば答えは簡単。読んでる時間がなかったからです。だって平日は帰宅して夕食を食べたら寝るか(寝るな)連載の執筆にこのコーナーの準備がありますし、休日は作品執筆でエネルギーの殆どを使ってしまいますから、読書とまではいかないんですよ。
 同時期に買ったもう1作品(「魔法遣いに大切なこと1 夏と空と少女の思い出」(富士見ミステリー文庫刊)」はまた手付かず。これから読もうと思っています。読んだ頃には話の筋書きを忘れてしまった、なんてことにはならないのでまだ大丈夫なんですが、ゆっくり本を読む時間が欲しいものです。だけどこのページの更新の手を抜くわけにはいかないですし・・・。難しいものです。
 晶子の歌が終わった後の、俺が付け加えたギターバッキングを締めて終わる。元々忙しい曲なのに湿気の多さが加わってすっかり汗だくだ。晶子も額の汗を拭っている。半袖のシャツから伸びる白い腕にも汗が滲んでいる。これからの時期は他以上に体力が要るから、練習でしっかり鍛えておかないといけない。バテてしまって歌えません(弾けません)、なんてみっともないどころの話じゃない。

「ふーっ、暑いですね。」
「時期が時期だからな。これからの季節、ギターは大変だよ。湿気と熱で直ぐにチューニングが狂っちまうから。」
「潤子さんもこの時期にピアノを調律してもらう、って言ってましたよね。ピアノもそういうのが必要なんですか?」
「原則1年に1回は必要、って言われてる。ピアノも見た目は鍵盤楽器だけど、発音の形式はギターと同じ撥弦(はつげん)楽器だから、放っておくと音程が狂うぞ。」
「その点、シンセサイザーは良いですよね。」
「まあな。でも、俺と晶子、それにマスターと潤子さんも生き物みたいな楽器を扱ってそれぞれ評判を得ているんだから、手持ちの楽器の日頃のメンテナンスは大切だよ。それに、生演奏が聞ける夜の喫茶店、ってことで来てる客も多いんだし。」

 この前、来客にアンケートをしたことがある。その質問の一つに、「どうやってこの店を知りましたか」というのがあって、回答の中で目立ったのは「生演奏が聞ける喫茶店という話を知人から聞いた」というのがかなり目立った。確かにジャズバーなら生演奏が聞ける店はあるだろうが−行ったことはない−、喫茶店で生演奏付き、というのは珍しいだろう。
 あの店は駅からも繁華街からも距離があるし、客の候補と言えば近くにある塾に通う中高生くらいのもんだ。にも関わらず社会人の客も多いというのは、この店の特色を耳にして、実際に体験してそれが気に入ったからに他ならない。客を選別するつもりは無いが、あの店の特色である「生演奏が聞ける」ことを気に入った客の足を繋ぎとめるためには、やはりレパートリーの充実と演奏技術の向上は欠かせない。

雨上がりの午後 第1190回

written by Moonstone

 この曲はテーマ毎にギターのバッキングパターンが違うし、その上トリッキーな部分が多いから、晶子と共にステージに上がる時は今でもちょっと緊張する。これくらい簡単にこなせないようじゃ、プロのギタリストなんて夢のまた夢かもしれないな・・・。何にせよ、晶子に負けないようにしないとな。

2003/6/5

[堂々巡り]
 一昨日からずっとアートワーク(回路基板の実際の配線図)を修正しています。使っているソフトウェアが肝心なところで抜けていて、移動した場所がグリッド(桝目)にぴったり合わずに微妙にずれるので、ずれた分を修正しなければいけないからです。修正しなくても出来るとは思うんですが、私にはどうも気分が悪いものなので(余計なところでこだわる)。
 しかし、一昨日その作業がほぼ完了したところでライブラリのエディタを起動して確認してから終了したら、ソフトウェア自体が強制修了の憂き目に遭い(ゲイツOSの殺人技)、セーブをしてなかったので修正が全部抹消されて最初からやり直し。これじゃ気分も乗りません。
 どうにか進めてはいるんですが、同じことを、しかもやたら細かい作業を繰り返すのは気分的に非常に嫌なものです。気分が乗らないのでなかなか進まず、余計に気分が乗らない、という悪循環に陥っています。車なんかで制御系が突然使用不能になったら裁判沙汰になるのに、PCではOSの我が侭や相性で片付けられるんですから、PC産業は殿様産業ですね、まったく・・・。
 この鬱陶しい梅雨が明けたら夏だということもあって、夏っぽい曲もあれば、オールシーズン通用する曲もある。倉木麻衣の曲もあれば俺と同じくギタリストの鳥山雄司の曲もあったりする。選曲の幅は広い。データを作る俺の方は多忙に多忙が重なっているが、結構楽しんでやってたりする。

「さっきの曲からにしましょうか?」
「『ATE SABER』か。俺の方も練習が必要だからな。そうするか。」

 「ATE SABER」。これがあの鳥山雄司の−漢字こそ違うが俺と同じ名前なんだよな−歌ものだ。勿論というか、誰にでも歌えるような易しい曲じゃない。何と言っても歌詞が日本語でも英語でもない。晶子が言うにはラテン語だというが、晶子がこれを歌いたい、と言って聞かされたCDを初めて聞いた時は首を傾げた。ギターのバッキングも流石ギタリストだけあってトリッキーだし、歌は勿論歌い辛い。
 歌はCDを真似るしかないか、と思ったら、この辺り流石文学部というか、晶子は独学でラテン語の勉強をして、発音もCDの物真似に終わらないものにしていた。俺はそれで安心して、ギターの音取りに専念出来た。この曲は殆どギターがバッキングを務めるから、俺としてもやり甲斐がある。
 晶子が小さく頷いたのを合図にして、俺はギターのバッキングを始める。シーケンサのデータはギターのバッキングにシンセ少々とベースとドラムを加えた程度のものだから、ギタリストが作った曲らしいと言えばそうだ。だが、その分ギターの占める比重が大きいから油断ならないが。
 晶子の歌声が始まる。芯は普段の歌より太めで音程も女性にしては低い。原曲に近づけるように晶子も歌い方を研究したらしい。その甲斐あって良い仕上がりになっている。初めて披露した時は、客が当初頭上に「?」を浮かべていたが−何言ってるのかさっぱり分からないだろうから無理もない−、適度なテンポと晶子の新しい声に共鳴したのか、直ぐに客から反応が表れた。今じゃオールシーズン通用するタイプの1曲として認識されている。

雨上がりの午後 第1189回

written by Moonstone

 晶子は立ち上がり、俺は再びギターのストラップに身体を通す。晶子のレパートリーを増やそうという意思、否、良い意味での欲は深い。今年に入って10曲近く増やしたんじゃないかな・・・。正確に数勘定してないし、そんな暇があったら演奏用のデータを作ってるから、正確に幾つかというのは分からないが。

2003/6/4

[自民党の本質、此処にあり]
 5月31日に自民党の麻生政調会長が「『創氏改名』は朝鮮の人の意思だった」と発言し、一応謝罪はしたものの「歴史研究の展開を見ないと言えない」などと言って発言の撤回を拒否しています。これは日韓、日朝関係に冷水を浴びせる重大発言だという自覚がまったく無いどころか、歴史を知らない、或いは歴史を知っていてそれを認めたくないという本音が表れたといえる出来事です。
 1940年の「皇紀2600年(神武天皇即位から2600年目ということ)」に鳴り物入りで行われた朝鮮人に対する創氏改名は、ありとあらゆる手段をもって強制された、朝鮮人の民族的自立性を根本から潰す非常識極まりないものでした。学校で「創氏改名」していない子どもを叱り殴る、進学や就職で差別するなど、「創氏改名」即ち日本人(皇民)にならないと不自由だぞ、と有形無形の様々な圧力をかけて強要したものです。そこに朝鮮人の自由意志などありません。強制が具体化する前に役所に「創氏改名」を届け出たのは、朝鮮総督府(当時の日本の朝鮮占領の拠点)の迫害を恐れてのものです。
 自民党はこれまで幾度も植民地支配の美化を行ってきました。しかし、今までと大きく異なるのは、現在国会で日本の自衛隊を文字どおり海外で活動出来る軍隊にする有事法案の審議が行われていること、そして今月に韓国大統領の訪日を控えているということです。政調会長という要職にある人物がこのような妄言を平気で発言するのは、如何に自民党がアジアを軽視しているかということを如実に証明しているものです。これを即行批判し、発言撤回しなけりゃ連立解消、と言わない公明、保守新両党も笑止。実際に韓国に出向き、植民地支配を経験した世代の生の声を聞きにいけ、と言っておきます。
俺はその度答えてきたが、その時々によって答えが違っているのが分かっている。その時の気分や状況によって−例えば試験の間だと、やっぱり普通に就職か、という具合−心変わりするんだが、いい加減道を固め始めないといけないと思う。でも・・・。

「まだ・・・よく分からないな。どうしたいんだろう、俺・・・。普通に就職するのか、プロのギタリストを目指すのか・・・。天秤に掛けても左右に振れるばかりで定まりそうにない。」
「重大な問題ですからね。無理もないですよ。」
「自分のことなんだから最終的には自分で決断するしかないのは分かってる。ただ、決断までの過程に親の意向や自分のしょうもない見栄とかがからんでくるだろうから、余計に決断し辛くなると思う・・・。」
「親御さんとしては、折角難関って言われる大学に入ったんだから、それを活かして就職先を選んで欲しい、って思うでしょうね。私も親になったら子どもには苦労する道を歩ませたくない、って思うでしょうし・・・。」
「こういう時に偏差値や成績で進学先を勧められることが恨めしいな・・・。良い大学、良い会社、っていうレールに乗っかって進むように仕向けられるんだから。いっそ地元の大学にしておけば良かったのかもな。そうすりゃ難関校の学生だ、って親戚中に持ち上げられることも、将来に向けての圧力もなかっただろうし。」
「祐司さんは・・・今の大学に入ったことを後悔してるんですか?」
「そういう妙な持ち上げやプレッシャーの材料を提供した、っていう点ではな。でも、今の大学に入ったことそのものは後悔してない。目標に向かって懸命に勉強した結果が報われた、っていう充実感が持てたし、大学生活も何だかんだ言ってもそれなりにこなしてるし、何より・・・晶子と出会えたから。」

 晶子の顔が少し驚きのそれになったと思ったら、徐々に嬉しさが広がっていく。その笑顔を見ていると、俺の表情から緊張感が取れて解れていく。晶子との時間は、日頃の勉強やバイトで疲れた自分の心を癒せる大切な時間なんだとつくづく思う。だからこそ大切にしていかないとな。

「さ、そろそろ歌の練習の続きをしよう。」
「そうですね。」

雨上がりの午後 第1188回

written by Moonstone

 来たか。最近二人になると時々この話が振られる。ピクニックの時にも話の流れでこの話に行き着いた。

2003/6/3

[うーん・・・]
 ここ最近なりを潜めていたウィルスメールが、また大量に届くようになりました。ウィルスメールは添付ファイルがある分受信に時間がかかるので、メールの数に「おおっ」と思っていると激しい脱力感に包まれることになります。昨日なんて5件中4件がウィルスメールだったもんなぁ。
 ウィルスメールの発信元を取り締まることは出来ないんでしょうか?踏み台にされていることもあるので一概に発信元が悪いとは言い切れませんが、少なくとも何らかの罰則を適用できるようにしても良いと思うんですが。
 今日もこのお話をし終えたらネットに繋いでメールチェックをするんですが、またウィルスメールが大量に舞い込むのかなぁ・・・。メールの送受信に手数料がかかったら、絶対にキレてるぞ、ホントに(- -;)。
「・・・。」
「それより俺は、晶子が俺を真剣に想ってくれていることが嬉しい。その想いさえあれば、他人から俺達のことをどう見られようが、俺のことを何と言われようが気にならない。さっきも言ったけど、言いたい奴には言わせておけ、ってのが俺の考えなんだ。」
「祐司さん・・・。」
「ただ晶子を中傷されるのは許せない。前のはデマだって分かりきってたから、火消しに回るのも馬鹿馬鹿しいから何もしなかったけど、出所が違ってたら絶対許さない。それだけは言える。」

 俺が言うと、晶子は俺の肩に頭を乗せてくる。斜め上から見えるその顔は嬉しそうに微笑んでいる。俺は晶子の肩を抱く。こうしているだけでも日頃の疲れが消えていくから不思議だ。本当に俺独りだったら、今頃どうなっていたんだろう?ただ缶ビールを飲みまくって寝るだけの不毛な生活になっていたんじゃないだろうか?

「・・・祐司さん。」

 暫く軽やかな沈黙の時間が流れた後、晶子が顔を上げて話し掛けてくる。表情は深刻さや暗さこそないものの真剣みを帯びている。

「何だ?」
「将来・・・どうするか固まってきましたか?」

雨上がりの午後 第1187回

written by Moonstone

「祐司さんは、自分が悪く言われたことが悔しくないんですか?」
「俺は見てくれも冴えないし、服装のセンスもないことは十分分かってるし、そんなことで劣等感を持ってないから、別に悔しくも何ともないよ。」

2003/6/2

[あー、よく寝た♪]
 昨日はやはりと言いましょうか、A.M.7:00に目を覚まして朝食。これじゃ何時もと変わらないなぁ、と思いつつ小説執筆を開始しようとしたら、ちょっと眠気が出てきたので迷わずベッドへ。目を覚ましたのは昼前でした(爆)。
 そしてようやく小説執筆開始。しかし、執筆に行き詰まり、気分転換兼休憩〜、とばかりにベッドに横になったのが運の尽き。夕暮れ時まで寝てしまいました(猛爆)。
 その後珍しくTVのプロ野球中継を流しながら執筆再開。応援していたチームが呆気なく逆点サヨナラを食らって呆けた気分になりつつも執筆続行。無事書き上げることが出来ました(^^)。このところ休日も雨模様が多くて外へ出るにも出るのが億劫。インドア趣味を持つ私にとっては、丁度良いのかもしれません。しかし、湿気の高さだけは何とかならんのか?蒸し暑くて鬱陶しい(- -;)。
私、祐司さんを馬鹿にされたことが凄く悔しくて、思わずその場で『私の大切な人の悪口言わないで』って叫んだんです。そうしたら今度は・・・『悪口じゃないわ。本当のことを言ったまでよ。』って。もう私、悔しくて悔しくて何て言ったら良いか分からなくて・・・。」

 晶子は言い終わると視線を床に落とす。その横顔は悔しさとやり場のない怒りに溢れている。閉じられた唇が微かに震えている。余程悔しかったんだろう。不謹慎だが、俺はそれが嬉しく思う。

「良いじゃないか。実際そのとおりなんだし。」
「祐司さん。」
「言いたい奴には言わせてやれよ。俺は晶子にさえ気に入ってもらえればそれで十分なんだから。」

 実際そのとおりだ。他人から見て凸凹カップルに見えようが月とスッポンのカップルに見えようが構わない。それに俺が見てくれも冴えないし服装のセンスもないことくらい自分で良く分かってるし、それに劣等感を感じてなんかいないからどういわれても気にしない。気にするだけ損だ。
 でも、晶子が俺を悪く言われたことが悔しくてならないと思うのは嬉しい。俺だって仮に晶子のことを悪く言われれば怒るだろうし、悔しく思うだろう。前の田畑助教授の件で流れたメールはデマだと分かりきっていたから怒るにも値しないことだし、晶子が悪く言われる可能性は俺から見ればその要素がない。だから晶子になりきれるかと言われれば悩まざるを得ないが、自分のことを真剣に想われて嬉しくない筈はない。

雨上がりの午後 第1186回

written by Moonstone

「『貴方はその彼氏には勿体無いわよ。』『髪型も服装も何の色気もないじゃないの』『もっとカッコ良い相手紹介してあげるから』って・・・。

2003/6/1

[いよいよ水無月。私の月です(をい)]
 今日から6月です。入梅の月です(北海道は梅雨がないそうですね。良いなぁ)。とはいっても5月中旬から雨模様の日が多く、昨日に至っては台風が早々に上陸する始末。もう入梅宣言してしまっても良いかもしれませんね。
 さて、今月はトップページ最上段に表記したとおり、私の誕生月です。ムーンストーン、即ち月長石は6月の誕生石ですからね。もっとも私の誕生日は最後の方なんですが(6/29)、ページの方はちょっと色々やってみようと思っています。
 このページ恒例の背景写真変更を毎週1回にします。つまり、日曜日毎に背景写真が変わるということです。最初はご覧のとおり青の紫陽花ですが、来週は何でしょうね(笑)。あと、隠し部屋をいじったりSide Story Group 1のインデックスを分割したりと細々とした更新をするつもりです。「水が無い」と書きながら水だらけのこの月。宜しくお付き合いください。
 晶子はそう言って一呼吸置き、俺の目を見ながら話し始める。

「4月にピクニックに行った時、写真を撮ったこと覚えてます?」
「忘れるわけないだろ。定期入れの中に入れてお守り代わりにしてるくらいなんだから。」

 そう、今年の4月にも良く晴れた休みの日にピクニックに出かけ、その時、二人腕を組んだところを晶子が買ったデジカメで通りがかった何処かのおばさんに撮影してもらったんだ。それを本物の−カメラみたいにこう言うとデジカメが偽物みたいで語弊があるが−プリントしてもらって、定期入れとわざわざこのためにお揃いで買った写真立てに入れている。現に晶子のデスクの上には、そのいわくつきの写真立てが閉じられたノートパソコンと共にその存在感をかもし出している。
 そんな大切な写真の存在を忘れる筈がない。何せ付き合うようになって1年以上経つというのに、今までツーショットどころか互いの写真さえ撮ったことがなかったんだから。その写真がどうかしたんだろうか?まさかなくした、なんて言わないだろうな?

「この前、同じゼミの子数人と話をしてたら、何時の間にか私が彼氏の写真見せてよ、って迫られることになったんですよ。」
「で、見せたと。」
「ええ。そうしたら・・・何て言ったと思います?」

 何となく予想はつくが、俺はあえて黙って晶子の話を聞くことにする。

雨上がりの午後 第1185回

written by Moonstone

「気になるから聞きたい。」
「そうですか・・・。それじゃ教えますね。」


このホームページの著作権一切は作者、若しくは本ページの管理人に帰属します。
Copyright (C) Author,or Administrator of this page,all rights reserved.
ご意見、ご感想はこちらまでお寄せください。
Please mail to msstudio@sun-inet.or.jp.