芸術創造センター こぼれ話
Dropped talk of Performing Arts Center

2003年4月30日更新 Updated on April 30th,2002

2003/4/30

[げ、もう今月も終わりか(汗)]
 昨日は徹夜明けで掃除をして帰省。その後小説を執筆するも襲ってきた睡魔と展開がまとまらなかったことが重なって殆ど進まず。で、今に至ります(見えないって)。例によって例の如く、弟のネット環境に居候させてもらっているので、ネットサーフィンには最適です。ただ、最低小説3本書き終えるまでは我慢だな。次の更新あるし。
 昨日歳だ何だと言ってましたが、薬さえ飲まなければ徹夜明け+相当の過負荷でも3、4時間程度転寝すれば平気なようです。もっともこんな無茶苦茶なリズムの生活はしないに越したことはないんですが。
 今日は明日に向けた更新準備に追われそうです。背景写真の選定に上位ページの背景作成。小説書く時間がないなぁ。ちょっと最近行き詰まり気味なような・・・。今まで走り続けてきましたからちょっとスピードを落とす必要があるのかもしれませんね。

「その分ハートを込めた演奏をするぜ!曲は『HEARTFUL ROMANCE』だ!聞いてくれよな!」

 「HEARTFUL ROMANCE」。作詞が耕次、作曲が俺のラブバラードだ。耕次の奴、この曲を最後に選ぶとは・・・。この曲は俺と宮城が付き合い始めたことを記念して耕次が詞を書いて俺が曲を付けて、宮城と付き合い始めて初めての校内ライブで披露した曲だ。完全に吹っ切らせてやる、とでも言いたいんだろうか。ご丁寧なことを・・・。
 宏一のスネアとタムの同時打ちに続いて、俺のギターフレーズが始まる。高音部を意識して使った切ないイメージを目指したフレーズだ。勝平と渉は白玉中心のバッキングに専念する。宏一は適時フィルを入れる。8小節分のフレーズが終わりに近付くと、耕次がマイクを構える。

♪君の心に届けたい 俺の気持ちの全てを
♪雲を掴もうとするような思いが続いた日々に
♪ピリオドを打ったのは君の思いがけない言葉
♪だけど俺はまだ 君に想いを伝えていない
♪君の気持ちに任せっきりな日々が続いて
♪その心地良さに安住していた

♪だけど言わなきゃ駄目だよな 最初は君からだったとしても
♪想い始めたのは 俺の方が早かった筈だから

♪HEARTFUL ROMANCEを踊ろう 風に舞う花弁のように
♪君と手を取り合い 身を寄せ合って
♪HEARTFUL ROMANCEを語ろう 季節を詠う詩人のように
♪君と向かい合い 瞳を見詰め合って

雨上がりの午後 第1153回

written by Moonstone

「皆と何時までも一緒に居たいけど、俺達の約束は演奏5曲と決まってる。だから次が最後の曲になっちまう!」

 観客から一斉に残念がる声をあげる。俺だって続けられる限り続けたいが、何時かは区切りを付けなきゃならない。今回は次の曲で区切りをつけるというわけだ。

2003/4/29

[歳・・・なのか?]
 昨日は一日ぶっ倒れてました。まあ、明け方まで統一地方選挙の開票速報を見ていましたから眠くなるのは仕方ないにしても、徹夜やそうまでいかなくても短時間の睡眠で翌日元気に、ということが出来なくなってきました。
 食事にしても、今の自宅に住むようになった頃は毎日米1合は平気で食べてたんですが、今は1合食べたら腹いっぱい。エネルギーの消費量が落ちてきている。それに加えて先に述べたように睡眠時間の無理が利かない(病気のせいもあるんでしょうけど)。これってやっぱり・・・歳のせいなんでしょうか?
 私も決して若いと言える年齢ではありません。でも自分ではまだまだこれから、だと思ってますし、若狭とは単に年齢で計れるものではない、というのが自論です。でも年齢による衰えというものはやはり否定出来ないようです。せめて気持ちくらい若く持っていたいものです。
♪HARD TO ESCAPE けど逃げなきゃやられちまう
♪HARD TO ESCAPE 此処は俺が居る場所じゃない
♪生き残るためには逃げるしかない
♪血と悲鳴の世界から逃げ出せ 生きて帰るために

♪HARD TO ESCAPE 銃口が俺を狙ってる
♪HARD TO ESCAPE 此処は獣達の住む世界
♪生き残るためには逃げるしかない
♪血と悲鳴の世界から逃げ出せ 生きて帰るために

 耕次のヴォーカルが終わると再び最初のリフを鳴らす。それを16小節分演奏した後、ファイナルだ。宏一が激しいフィルを叩き、残る楽器部隊の白玉に合わせてダブルクラッシュを決める。そしてシンバルのフラムが鳴り響く中、俺と勝平と渉がアドリブを入れ、耕次のジャンプに合わせて音を止める。
 今まで以上に大きな拍手と歓声が、人垣から俺たちに向かって押し寄せてくる。冷気が天然のエアコンみたいで心地良い。それだけ俺の身体が火照ってるってことだろう。これだけ激しい演奏を繰り広げれば熱くなっても無理はないか。

「皆、ありがとう!みんなのお陰でここまで来れたよ!」

 耕次の感謝の言葉に人垣が拍手や歓声や指笛で応える。ここが成人式会場の敷地内だということを忘れてしまう盛り上がりぶりだ。手を休めている俺も心拍数の上昇は抑えられない。むしろ加速していく一方だ。

雨上がりの午後 第1152回

written by Moonstone

♪血の臭いが立ち込める 銃の白い煙が見える
♪俺に迫り来るのは Oh DANDEROUS TIME

2003/4/28

[今日はお掃除♪(の予定)]
 前にもここでお話したかもしれませんが、私は掃除が嫌いです。掃除しても直ぐ汚れるからしないほうが良いや、というある種の悟りの領域に達したもので(大袈裟)。勿論目に付くごみとかは拾って捨ててますけど。
 明日実家へ向かうのですが、その前に掃除をすることが恒例になっていますので、今日は掃除をする予定です。掃除は部屋全体の掃除機かけと台所の拭き掃除。面倒ですが自分しかやる人間が居ないのでは仕方ありません。こういう時メイドさんが居てくれたら・・・なんて都合良く思ったり(笑)。
 昨日は久しぶりに晴れたので布団干し。ふかふかの布団で休み休みしながら新作を1本書き上げました。1日1本が最低目標なのでとりあえず昨日は成功。さて、今日はどうなるやら・・・。
♪血の臭いが立ち込める 銃の白い煙が見える
♪俺に迫り来るのは Oh DANDEROUS TIME

♪HARD TO ESCAPE けど逃げなきゃやられちまう
♪HARD TO ESCAPE 此処は俺が居る場所じゃない
♪生き残るためには逃げるしかない
♪血と悲鳴の世界から逃げ出せ 生きて帰るために

 耕次の熱いヴォーカルが終わると、俺がライトハンドを駆使したソロを奏でる。こういう場面ではディストーションを効かせたギターがよく似合う。俺はオーバーアクションを交えながら、客に演奏しているところをアピールする。8小節のソロが終わりに近付くと、耕次が再びマイクを構える。

♪血塗れのDANGEROUS TIMEは 俺を追いかけてくる
♪血の海の荒神(あらがみ)を鎮めるために 生贄が必要なのか

 再び俺のソロが入る。ここでもテクニックを前面に押し出した格好だ。こういう場面では目立つに限る。俺は耕次と同じ位置にまで踏み出して、耕次の隣でオーバーアクションを交えて演奏を続ける。耕次は客と一緒に手拍子をしつつ俺に向かって小さく頷く。俺も頷いて、クライマックスへ向けてボルテージを上げる。
 最初のリフに戻る。俺と勝平と渉はそのままだが、宏一は激しくドラムを打ち鳴らす。ギターソロと並んでこの曲の目玉として俺が編み出したフレーズだ。パラティドルや4WAYを多用した−乱用したとも言える−ドラマー泣かせのソロだ。しかし、宏一は他の楽器部隊の音をバックに、一糸乱れぬフレーズを展開する。流石は宏一。女好きもドラムの腕も変わってないな。

雨上がりの午後 第1151回

written by Moonstone

♪拳銃の音が聞こえる 女の絶叫が響く
♪とんでもない危険地帯に踏み込んじまった
♪人が駆ける音がこだまする 男の怒声が響く
♪何が起こっているのかさっぱり分からない

2003/4/27

[ちょんまげ切らずに腹を切れ!]
 暴力団関係者との黒い関係が発覚した与党保守新党の松浪衆院議員が、トレードマークのちょんまげを切って「生まれ変わった」と言い、あくまで辞職する考えのないことを表明しました。まったく与党に限らず政党の殆どは身内に甘すぎます。
 暴力団は反社会的集団。その集団と関係を持っていたということは、国権の最高機関たる国会議員としての資格がないということです。反社会的集団に与していたのですから。こんなこと、共産党だったら問答無用で議員強制辞職&除名ですよ(尼崎市では不正が発覚した時点で全員議員を辞職させられた)。国会議員という職業ならそれくらい厳格で普通です。
 大体ちょんまげを切って「生まれ変わった」なんて言うこと自体認識が甘すぎます。ちょんまげ切って責任を取ったつもりなんでしょうが、ちょんまげをしていたのは侍を気取ってのことでしょう。侍を気取るくらいなら、ちょんまげ切らずに腹を切れ、と言いたい。今度の衆院選挙でこんな議員を当選させるのかどうかも、有権者の資質が問われると言えます。

「式に出ないのは此処に居る皆の意思だ。式に出るよりこっちの方が面白い、ってな。式に出て欲しけりゃ、それなりのプログラムでも準備しやがれ!客を取られて俺たちに八つ当たりするんじゃねえや!」

 人垣からの、そうだ、そのとおり、という声やブーイングは益々大きくなる。まさに四面楚歌の状況に陥った大人達は、辺りをきょろきょろ見回すばかりで何も出来ない。高校時代は教師が恫喝して生徒が更に激しく抗議するという事態に発展したが、どうやら今回はそういうことはなさそうだ。

「さあ、分かったなら行った行った。ライブの邪魔だ!」

 人垣からの声やブーイングが、帰れコールに変化する。その勢いは凄まじく、下手なシュプレヒコールを凌駕するものだ。大人達は四方八方からの帰れコールに耐えらえなくなったらしく、まさしく逃げるように人垣を掻き分けてその場を去っていく。大人達が逃げていったことで、帰れコールが拍手と歓喜の声に変わる。

「皆、応援ありがとう!みんなのお陰でライブは続けられるよ!」

 耕次が明るい口調で呼びかけると、人垣から拍手と歓声が返ってくる。観客との一体感を間近に感じられるこういうライブも良いもんだ。それに今回は客に助けられたと言っても過言じゃない。それだけ俺達のライブが気に入ってもらえたということだろうか。

「とんだ邪魔が入っちまったが、次行こう!曲は『DANGEROUS TIME』だ!」

 「DANGEROUS TIME」。作詞は耕次、作曲は俺の、バリバリのロックナンバーだ。宏一のシンプルなフィルを受けて、俺はディストーションを効かせたバッキングを勝平と渉の白玉演奏プラス宏一のフィルに乗せる。それを8小節分続けた後、宏一のドラムがハーフオープンのハイハットを使った8ビートに変わり、ロック色を強める。勝平と渉もロックらしいバッキングを奏でる。それが8小節続いたところで、耕次がマイクを構える。

雨上がりの午後 第1150回

written by Moonstone

 耕次の叫びに続いて人垣から、そのとおり、という声やブーイングが起こる。ブーイングは急速に大きくなる。大人達は周囲を見回しておろおろし始める。高校時代の生活指導の教師と客の生徒との対決を思い出す。

2003/4/26

[ふー、やれやれ(溜息)]
 昨日の勤務終了を以って私はゴールデンウィークの長期休暇の突入しました。勿論、シャットダウンはしませんよ。このコーナー共々毎日チェックしてくださいね。私は毎日このコーナーの更新をはじめ、作品のストックを増やすべく連日執筆に励む日々になるでしょうから(汗)。
 労働組合が立ち上がっていればメーデーに繰り出そうと思っていたんですが、事務方に妨害されて頓挫して以来全く進展がないんですよね。折角の時間ですから、作品制作だけでなく労働状況や問題点の把握をしようかとも思います。
 今回も帰省するわけですが、今日からというわけではなく、火曜日からになります。月曜日に病院の予約が入っていて下手にずらせないので、今回は変則日程になります。まあ、このページの更新には影響ないでしょうけど。今回は中学時代の友人と約20年ぶりに再会するつもりです。どう変わっているか興味深々です。私の方が変わってそうだな(笑)。
「さっさと会場に入りなさい!まだ式は終わってませんよ!」

 どうやら式の出席者があまりにも少ないのを訝って外の様子を見に来たんだろう。それか入り口に近い受付の人が告げ口したか。何にせよ、俺たちやこの集団を快く思っていないことだけは確かのようだ。耕次が言った台詞じゃないが、「客」を取られて不愉快なんだろう。その上原因が俺達の予告無しのライブだとなれば尚更だろう。

「早くしなさい!まったく最近の若者は何時までも子ども気分で!」
「おい、ちょっと待て。此処でライブをやっちゃいけないって決まりでもあるのかよ。」

 耕次がマイクを通して大人達に尋ねる。否、その口調には明らかに抗議の意思が詰まっている。

「決まり以前の問題だろう!式にも出ないで大騒ぎしおって!」
「決まりがあるかないか聞いてるんだよ。人の言うこと聞けよな。」

 耕次が言うと、人垣から、そうだそうだ、という声が飛び交う。大人達の顔が歪む。痛いところを突かれたという感じだ。若しくはたかが20歳の若造が、という思いから来るものか。両方かもしれないが。

「俺達は高校卒業の時、成人式会場に集合してライブをしようと約束して、それを実行したまでだ。そして俺達の演奏を聞いてくれてる此処に居る皆は俺達が呼び寄せたわけじゃない。自主的に集まったんだ。」
「式に来たなら式に出るのが常識だろう!」
「じゃあ聞くけど、一体誰のための式なんだよ。あんたらのための式か?それとも式に呼んだお偉いさん方のための式か?」
「ぐっ・・・。」
「お偉いさん方の顔を立てるためにする式なんざ意味ねえよ。俺達のための式じゃないんだからな。そんな式に出ようが出まいが人の自由だろうがよ!」

雨上がりの午後 第1149回

written by Moonstone

 耕次が次の曲の紹介をしようとした時、野太い怒声が割って入る。人垣を掻き分けて、スーツ姿の中年の男女数人が俺達の前に現れる。多分成人式の会場関係者だろう。この場でスーツ姿といえば俺たち新成人を除けば会場関係者くらいしか考えられない。

「式にも出席しないで何をしておるかと思えば、外で大騒ぎしおって!何を考えとるんだね、まったく!」

2003/4/25

[久しぶりの半田ごて]
 昨日、約4ヶ月ぶりくらいに半田ごてを握りました。私の本業は半田ごてを使って回路基板を作ることの筈なんですが、年明けから業務発表の準備や練習に追われ、それが終わったと思ったらPCに向かってのプログラミングやアートワーク云々といったデスクワークが続いて、半田ごてから遠ざかっていました。今回並行して製作している電子機器の回路基板が必要になったので、リプレース(置き換え)が済んでいないPCを退けて作業机に向かいました。
 久しぶりに嗅ぐ半田の匂いは、私の本業が何だったのかということと本来中心にやるべきことを思い出させてくれました。昼休みを挟んで終日作業机に向かい、電子機器に必要な回路基板2枚を(機器は2台作る)完成させました。
 今日は新たに導入された機械の講習会や会議があって、仕事が出来るのは午後もかなり進んだ時間になりそうです。連休前の最後の出勤日なので、出来る限りのことを全て片付けて、すっきりした気分で連休を迎えたいものです。
 耕次のヴォーカルに続いて勝平のピアノソロが入る。ここじゃギターは完全に脇役だ。だが、こういう曲はキーボードを入れた俺達のバンドだからこそ出来る曲だ。脇役に徹する時は徹するに限る。勝平の綺麗な、そして切ないピアノソロが胸に響く。4小節のソロが終わりを迎える頃、耕次がマイクを構える。

♪だけど虫の良い本音が言えるなら
♪俺の心が君に届いて欲しい
♪逃げてた俺が言うのも何だけど
♪それが俺の願いだから

 宏一のシンバルのフラム(註:楽器をひたすら連打する、ドラムも基本奏法の一つ)に続いて、今度は俺がソロを始める。アームを効かせたメロディアスなソロだ。俺はギターの弦の上で指を優しく躍らせる。このソロは大切な「聞かせる」部分だ。ヴォーカルになったつもりでギターを歌わせる。

♪汚い奴だと嘲るだろう そうさ俺は汚い奴
♪恐怖から逃げ回り続けた汚い奴
♪I Love Youが聞けなくても構わない
♪心あるがままを君に伝えたのなら 俺は満足だ

 耕次のヴォーカルが終わると俺が主旋律を奏で、徐々にテンポを落として楽器部隊が全員揃って白玉で締める。バラードでよくあるパターンの締めくくり方だ。楽器の音が消えるまでそのままの姿勢を保つ。音が消えると大きな拍手と歓声が沸き起こる。

「皆、聞いてくれてありがとう!それじゃ次は・・・」
「何をしておるんだ、君達は!」

雨上がりの午後 第1148回

written by Moonstone

♪弱い奴と罵るだろう そうさ俺は弱い奴
♪自分の心を抑え続けた弱い奴
♪I Love Youを伝えた後は構わない
♪心あるがままを君に伝えたのなら 俺は満足だ

2003/4/24

[雨が多い日々]
 ここ最近雨の日が多いです。昨日も朝と夜に雨が降りました。通勤には影響なかったんですが、流石に今日は駄目でしょう。天気予報でも降水確率が50%超えてるし、今でも雨が降ってるし。
 今こちらでは八重桜が見頃を向かえているんですが、こうやって雨の日が続くと花が散っちゃいますね。今年は夜桜や晴天の桜撮影には成功しましたが(Photo Group 1で公開中)、八重桜は新作を撮れないまま散るのを見るしかなさそう。
 雨は情緒感こそあっても普段の生活には何かと不便なことが多いんですよね。特に車を持ってない私のような人間には、移動手段が自分の足しかなくなるので緊急時(忘れ物をして家に戻るとか)に苦労するんですよね。まあ、雨が全く降らないで水不足だ、と騒がなきゃならないよりはましでしょうが。
 耕次の紹介に続いて、勝平がさっきのシンセ音でアドリブを入れる。

「そしてクールで鋭い音を聞かせる、ギターの安藤祐司!」

 耕次の紹介を受けて、俺がギターでアドリブを入れる。

「そして最後は熱い声で歌う、俺、ヴォーカルの本田耕次!以上5人のメンバーで『客を取って悪いねお偉いさんライブ』をお送りします!」

 何ちゅうお題目だ、耕次の奴。まあ、確かに成人式の「客」を少なからず取っているのは事実だろうし、即興で巧みにMCを入れることが出来る耕次らしいといえばそれまでだが。やっぱり変わってないな、こいつも。

「それじゃ次はちょっと火照ったハートを鎮めてじっくり聞いてもらおうか。曲は『心あるがままに』。聞いてくれよな!」

 拍手と歓声が沸き起こる中、宏一のスティック音が響く。そして俺と渉が白玉中心のバッキングを始め、そこに勝平がピアノのフレーズを入れる。この曲も作詞が耕次で作曲が勝平だ。さっきまでとは打って変わって落ち着いた感じの曲調が、拍手と歓声を自然と鎮めていく。4小節のイントロが終わりに入ると、耕次がマイクを構える。
♪何時も俺は黙っていたよ 君の声を聞くために
♪何時も俺は見詰めていたよ 君の姿を見るために
♪近付きたくても近づけない 近付きたくても近付かない
♪俺の心が露になるのが怖かったから
♪君の呼びかけに背を向けた 君の視線から目を逸らした
♪だけど気持ちを偽るのはもう止める 今沈黙を破るよ
♪心あるがままを君に伝えるために

雨上がりの午後 第1147回

written by Moonstone

「そして俺達の縁の下の力持ち、ベースの須藤渉!」

 耕次の紹介で、渉がチョッパーベースのアドリブを入れる。

「そしてバックにソロにと忙しい、キーボードの和泉勝平!」

2003/4/23

[ATMまで撤去するな!]
 私が利用している銀行が、ここ最近土曜日昼間の利用でも手数料を取るようになったと思ったら、職場から近い支店をいきなり遠く離れた支店に統合するという、利用者の利便無視の暴挙を重ねてきました。でも、郵送されてきた支店統合の案内には「お客様の利便を考え」とあったので、それを信じてました。
 昨日仕事に一区切りついたところで、銀行へ向かいました(ちなみに終業時間は過ぎてました)。支店はなくなってもATMはある筈。「お客様の利便を考え」ているならそれくらいは、と思って。ところが支店があった場所に辿り着いたら・・・ATMまで撤去されてやがる!(激怒)
 結局無駄足を踏んだことになり(仕事はまだ残ってた)、怒り心頭で職場へ戻りました。「お客様の利便を考え・・・」とかいうならATMくらい残しておけ!公務員以上に税金貰ってるんだから、それくらいの余裕はあるだろうが!ええ!○○○銀行さんよぉ!(激怒)・・・明日、また行かなきゃ(溜息)。
 耕次の呼びかけに人垣が拍手や声援で応える。俺は額に汗が滲むのを感じてスーツの袖でぐいと拭う。身体が火照っている。演奏を始める前の、手が悴む感触は何処かへ行ってしまった。見ると手は赤みを帯びている。汗をかくのも当然だ。

「皆は今日成人式に出席するために此処へ来たのか?」

 耕次が尋ねると、そうだ、とかいう声が彼方此方から飛んで来る。

「実は俺達も本来なら成人式に出る人間だ。だけど高校卒業のときの約束で、20歳の成人式の日に此処で会おう、そしてライブをやろう、ってことで集まったんだ。」

 人垣から大きなどよめきが起こり、続いて拍手と歓声が沸き上がる。

「折角の機会だ。ここでメンバー紹介といこうか。」

 人垣からの拍手と歓声に混じって、ハイハットのハーフオープンを使った8ビートのドラム音が始まる。人垣の「構成員」はそれに合わせて手拍子をする。本当にライブをやっているという感じだ。高校時代の記憶が鮮やかに蘇ってくる。

「まずは熱いビートを刻む、ドラムの則竹宏一!」

 耕次の紹介を受けて、宏一がタムのフィルに続いてシンバルを叩く。

雨上がりの午後 第1146回

written by Moonstone

「皆、聞いてくれてありがとう!」

2003/4/22

[CDの売上低迷の原因は?]
 ここ最近音楽CD(以下CD)の売上が低迷しているそうです。音楽業界に言わせると、それは違法コピーが横行しているからだとのこと。しかし、本当にそれだけでしょうか?確かに違法コピーが横行しているのは事実です。それは著作権を侵害するものでもあります。しかし、それだけでCDの売上が低迷するのでしょうか?
 この際ですからはっきり言いましょう。現在のCDの売上低迷の最たる原因は、消費者の志向の多様化と供給側(ミュージシャンの作る音楽)がそれに対応せず、既存のブランドにしがみついたり同系列の音楽を大量生産しているからです。もっと掘り下げれば、誰もが同じ音楽を聞くという時代はとっくに終わっていることをレコード会社が気付いていないというところに問題があるのです。
 情報が氾濫する現在、消費者の音楽の志向は益々多様化しています。しかし売上に固執するレコード会社は、確実に利益が取れる道、即ち既存のブランドにしがみつき、新しい分野、未開拓の分野に目を向けようとしません。言わば消費者とのギャップによる売上低迷を違法コピーに押し付けて、対応しているプレイヤーでしか聞けないCCCDを作ったところで何の解決にもなりません。手持ちのプレイヤーで聞けないCCCDを製造したところで、かえって売上を低迷させるだけです。誰が高々3000円程度のものに、安くても数万円の機器を新しく買うでしょうか?完全に的外れです。
 レコード会社は既存ブランドに安住することなく、新規分野、埋もれている才能の発掘を追及すべきです。買いたいと思うCDならコピーがあっても買います。そういう当たり前の消費者の心理に立って経営方針を転換することが求められているのではないでしょうか。
 ヴォーカルが終わったところで再び俺と渉のユニゾンが入る。その締めくくりの白玉にフィルから入ってきた宏一のダブルクラッシュが加わって迫力を増す。そして曲調は一転して静かになり、宏一のシンバルワークに乗った勝平のシンセソロが始まる。まさにシンセといった感じの浮遊感ある音色とピアノの白玉中心のバッキングが複雑に絡み合う。
 俺はストロークを効かして渉と共にナチュラル音での白玉のバッキングに務める。8小節シンセソロが続いた後、クイが混じり始めたピアノに合わせて俺がディストーションを効かせたバッキングを加え、それを渉の低音ベースが支える。白玉だがどっしりした音色が腹に響く。宏一のシンバルワークはタムやスネアを加えたパラティドル(註:左右の手で不規則に強弱を付けてドラムを叩くこと)に変化していき、どんどん盛り上がっていく。

♪ひたすら足掻き続ける俺は さながら風に吹かれる花弁
♪この電脳が支配する世界は 俺に何を求めるのか

♪Be careful this world 何かが何処からかやって来る
♪Be careful this world 何時かが何処からかやって来る

♪Be careful this world 何かが何処からかやって来る
♪Be careful this world 何時かが何処からかやって来る

 一旦転調してサビを繰り返した後、調を元に戻し、俺がギターソロを入れる。4小節分の短いソロだが、ライトハンドを多用した激しいソロだ。最初にこの曲の楽譜を見せられた時、一瞬だが勝平を恨んだもんだ。だが、弾き慣れるとこれが爽快なんだよな。流石はバンド一のテクニシャンだ。
 ギターソロが終わると、また俺と勝平と渉のユニゾンが宏一の複雑なフィルに乗って冬空に響く。宏一のバスドラムとクラッシュシンバルによるロックらしいフィルが続く間、俺と勝平と渉は動きを止めて音が自然消滅するのを聞く。ギターとキーボードとベースの音が消滅する前に、耕次が両手を上げる。終わるという合図だ。耕次が両手を振り下ろすと同時に楽器部隊は一斉にそれぞれの音を強調して音を止める。
 その直後、大きな拍手と歓声が俺達に降り注ぐ。人垣はさっき見たときより厚みを増したように思う。成人式より想像だにしなかったライブ演奏の方が興味をそそられるんだろうか。人垣を構成するのはスーツ姿だったり振袖姿だったりで、どれもこの成人式会場に来た新成人だろう。

雨上がりの午後 第1145回

written by Moonstone

♪Be careful this world 何かが何処からかやって来る
♪Be careful this world 何時かが何処からかやって来る

2003/4/21

[有事法制反対の声を!]
 昨日の更新で追加更新をしました。作品ではなくリンク先の変更です。イラク戦争や新型肺炎SARS報道に隠れて(隠されて)いますが、先の通常国会、臨時国会で継続審議になった有事法案を成立させようと与党がしゃにむになっています。イラク戦争のごたごたに紛れた火事場泥棒的なものです。
 「ニュース速報」でも危険性を訴えていますが、有事法制は日本を守るためのものではなく、イラク戦争のような介入、侵略戦争に日本国民を強制動員する仕組みを構築し、国民の目と耳と口を塞ぐのが真の目的です。こんな法案を許したら、それこそ日本は破滅です。
 有事法制推進の端を振る右翼連中は、有事とやらの際に真っ先に戦場に出て行くようなことはありません。戦争で犠牲になるのは弱い立場にある一般市民だと決まっています。それはイラク侵略戦争でも証明済みです。右翼軍国主義の策動を許さず、有事法制反対の声を大きく広げてください。
 すると周囲から拍手と歓声が飛んで来る。改めて見回してみると、周囲に人垣が出来ている。それも二重三重のものだ。俺達の演奏を聞いて会場から出てきたんだろうか。スーツ姿や振袖姿の、俺達と同じ年代らしい集団が惜しみない拍手と歓声を発している。

「皆、ありがとう!」

 耕次がマイクで呼びかけると、拍手と歓声がより大きくなる。ふと腕時計を見ると、成人式はもう始まっている時間なんだが、少なくとも此処に入る観衆はそんなことなどお構いなし、ってところだろう。しかし、久しぶりのセッションだっていうのにリズムが乱れなかったのは不思議だ。

「もう一曲いくぜ!曲は『Cyber dimension』!聞いてくれよ!」

 「Cyber dimension」。これもライブでの定番メニューの一つだった曲だ。俺は気を引き締め直す。作詞は耕次、作曲は勝平の、テクニカルな曲な上に久しぶりのセッションだから油断は禁物だ。宏一のスティックを叩く音に続くシンプルなフィルに続いて、俺と勝平と渉のユニゾンが宏一の複雑なフィルに乗って響く。やはりここでも不思議と乱れない。高校時代に培った阿吽(あうん)の呼吸は健在ってことか。

♪前を弄(まさぐ)るひたすらに 此処は何処かは分からない
♪電子音と光が支配する 前後も上下も分からぬ世界
♪ひたすら彷徨い行く今の俺は さながら人生に迷う若人(わこうど)
♪この不可思議奇怪な世界は 俺に何を求めるのか
♪誰かを求めるひたすらに 今は何時(いつ)かは分からない
♪電子音と光が支配する 過去も未来も分からぬ世界
♪ひたすら迷い続ける俺は さながら世間に溺れる木の葉
♪この奇妙未開の世界は 俺に何時を求めるのか

雨上がりの午後 第1144回

written by Moonstone

♪Over the rainbow 虹を越えて行こう
♪涙と光が作った橋は 俺達の未来のためにある
♪Over the rainbow 現在(いま)を越えて行こう
♪過去の雫にこだわるな 前を向いて歩いて行け

 俺のコード音と渉の低音に勝平の激しいピアノのバッキングが乗っかる。そして宏一のテクニカルなフィルが入る。エンディングだ。耕次以外の全員がそれぞれの楽器を激しく響かせ、耕次のジャンプで締める。

2003/4/20

[作詞うんちく]
 今日の連載で祐司君がギターを担当するバンドの演奏する歌詞が掲載されています。勿論これはオリジナルです(既存曲だとJASRACめが喧しいのもある)。この歌詞はほぼ即興で作ったもので、一応メロディを当てはめやすいように作ったつもりですが、その保障はありません(きっぱり)。
 前にもお話したと思いますが、詩を作るのに際してはあまり深く考えない方が良いと思うんです。表現を特異なものにしたりする場合はそれなりに考えるべきでしょうが、それ以外は思いつくままに書いていった方が自分の書きたいことをストレートに反映出来るのではないかと思うんです。
 今後暫く歌詞が出てきますが、読者の方はそれぞれメロディを考えたりして楽しんでくだされば、と思います。実際につけられた場合は是非当ページに投稿してください。掲載間違い無しですよ(笑)。あ、そうそう。手の爪は昨日切りました。何となく指先がスースーするんですが、直ぐに慣れるでしょう。
 俺のギターがコードを掻き鳴らす。勝平のキーボードが力強いピアノのバッキングを鳴らす。渉の低音ベースが響く。宏一のパワフルなドラムが突き上げてくる。8小節のイントロが終わると、耕次がマイクを構えて歌い始める。

♪涙の雨は終わりにしよう これからは太陽の出番だ
♪流した涙は無駄じゃない 変わるんだ俺達は
♪もう雨と風は止んだんだ 次は光溢れる世界の番だ
♪苦しみの爪痕は直(じき)癒える 変えるんだ俺達を
♪見上げろよ空を 雨雲は撥ね退けろ
♪眩しく輝く光を受けて 虹の橋が生まれる

 耕次のヴォーカルが盛り上がりへの狼煙を上げると、俺と渉がユニゾンして、そこに勝平のグリスが入り、宏一のシンプルなフィルが絡む。2小節分のフィルを挟んで、耕次が再びマイクを構える。

♪Over the rainbow 虹を越えて行こう
♪あの虹の橋の向こうに 俺達が生きる世界がある
♪Over the rainbow 現在(いま)を越えて行こう
♪未来を掴みたいのなら 自分の足で歩いて行け

 耕次が力強く歌い上げた後、俺がソロを始める。約2年ぶりの演奏にも関わらず、指が自然と滑らかに、そして激しく動く。耕次から、勝平から、渉から、宏一からパワーを分けてもらったのかもしれない。8小節分のソロを終えると、再び俺と渉のユニゾン、勝平のグリス、宏一のフィルが入り、耕次がマイクを構える。

雨上がりの午後 第1143回

written by Moonstone

 「Over the rainbow」。作詞が耕次、作曲が俺の、ライブで定番だった曲の一つだ。懐かしさが込み上げて来る中、宏一がドラムのフィルを入れる。それを合図にタイミングを見計らって、俺はディストーションを効かせたギターのグリスを入れる。

2003/4/19

[爪を伸ばして]
 今、かなり爪が伸びています。以前、というより身体を壊す前にはイライラする時などに爪を噛む癖があってろくに爪が伸びなかったのですが、どういうわけか身体を壊したとほぼ同時期にその癖がなくなって、今では時々爪を切らないといけません。まあ、それが普通なんでしょうけど。
 私は幼少時から大学受験直前まで音楽を習っていたせいで指先を立ててキーボードを叩くので、爪が伸びてくるとカタカタ・・・といかにもキーボードを叩いているという感じの音がして、それで満足感を感じるんです(変)。そしてふと指先を見詰めて、ああ、爪が伸びたな、とまた満足感に浸る、と(変)。
 ただ、仕事をする上で爪が長いのは良いことばかりではありません。シールを剥がしたり細かい部品を取ったりするときは便利ですけど、材料加工をする時には煩わしいし、ケースを分解したり組み立てたりする時とかに爪が欠けたりするんです。爪を剥がすとどれだけ痛いかは経験で知っているので、そろそろ切らないとまずいかな〜、と思ってます。今日あたり切るかな。
 思わず笑いが漏れる俺の肩を、耕次がポンと叩く。その表情には変な同情や哀れみはない。吹っ切れたな、と言っているように見える。

「祐司。どのみち俺達の目的はお偉いさんの話を聞きに来たわけじゃねえんだ。どうだ?指慣らしに一曲いってみようぜ?」
「ああ。」
「よし、決まりだな。さあて、全員で準備だ。宏一!一旦止めろ!準備を手伝え!」
「了解だぜ、ベイビィ!」

 宏一は派手にタムを打ち鳴らしてからダブルクラッシュを決めて返答する。よく聞こえてたな。てっきり自分の世界に浸りきってて聞いちゃいないかと思ったんだが。
 俺達は手分けして発電機やアンプを配置し、配線をする。キーボード担当の渉はプログラムチェンジ(註:音色やそのキーボード配置の切り替え)の確認をしてエフェクターやミキサーが入ったラックを通してアンプに配線するからちょっと面倒だ。でも勝平はその作業を淡々と手早くこなす。
 俺と渉はアンプの電源を貰ったら、手持ちの楽器を繋ぐだけで良い。ディストーションはアンプの出力をそのように切り替えれば完了だ。寒さで悴んだ指を元に戻すため、音量を控えめにして適当にフレーズを爪弾く。そして手を何度か握ったり開いたりして指の動きが戻ったことを確認してボリュームを上げる。
 耕次はスーツの胸ポケットからワイヤレスマイクを取り出し、電源を入れてマイクを軽く叩いて自分のアンプから−アンテナ内蔵のやつだ−音が出るのを確認する。そしてそれぞれの位置について耕次が振り向いて言う。

「ようし。全員、準備はOKか?」
「ああ。」
「問題なし。」
「こっちも。」
「OKだぜ!」
「よし、最初は『Over the rainbow』だ!」

雨上がりの午後 第1142回

written by Moonstone

 宏一はそう言うが早いか、ドラムの前に座って激しくドラムを叩き鳴らす。会場に来ていた人達が何事か、というような目で宏一を見る。だが、宏一は自分の世界に浸りきっているらしく、恍惚とした表情でドラムを叩きまくる。こいつ、全然変わってないな・・・。

2003/4/18

[昼寝の必要性]
 身体を壊して以来、私は昼休みに横になって寝るようにしていたんです。そうしないと極度に疲れやすい身体がとてももたないからです。で、最近は出来るだけ寝ないようにしていました。どうしても頭がはっきりするまでに時間がかかるし、身体を壊してから約4年。いい加減治って来ていることを周囲にアピールする必要性があったからです。
 しかし、寝つきの悪いことでは自分自身認める私が昼休みに椅子に座ってじっとしているだけでもかなり眠りの坂道を転げ落ちてしまうのは避けられず、寝ないと疲れが取れないままでフラフラなので作業能率がかえって悪いことが分かりました。昨日はそれを痛感しました。
 やはり無理は出来ない身体のままのようです。仕事は順調に進んでいるんですが、昼寝の分だけ時間を削られる(目覚める時間を含む。私は寝起きも悪い)ので残業が多くなり、また疲れて夜寝てしまう、という悪循環に陥りがち。本当に早く良くなって欲しいものです。

「優子ちゃんもこの市の住人だろ?成人式に来るんじゃないのか?だとしたら鉢合わせだぞ。」
「オゥ、ベイビィ!別れた二人の巡り合いかよ!何て皮肉な運命なんだ!」
「宏一。いい加減にしろよ、お前。」
「耕次、良いって。俺と宮城とはもう・・・終わったんだから。高校の同期になる、って決めたんだ。二人でな。」
「祐司・・・。」
「それに、俺は去年の暮れに小宮栄で宮城と会ったんだ。俺はちょっとした買い物で、宮城は一人暮らし用の家電製品とかの買出しでな。その時にも別に妙なわだかまりなしで話し合えたんだ。だからもう・・・大丈夫だ。」

 そうだ。俺と宮城とは高校の同期ってことになったんだ。あと腐れなくさっぱりと。何時までも噛みまくったガムの味の復活を求めるようなことをしてちゃいけない。こういう時こそ、語弊があるかもしれないが、男の真価が問われると思う。

「まあ、祐司が大丈夫だ、って言うなら良いか。俺達が騒いだところでどうになるものでもないし。」
「同感。」

 耕次と渉は言う。勝平は納得した様子で小さく頷く。

「ようし!それじゃ祐司を元気付けるためにも、ここらで一発いこうぜ!」
「別に俺は落ち込んじゃいないんだが・・・。」
「がたがた言うな、祐司!お前の中の熱いパトスを俺のドラムで蘇らせてやるぜ、ベイビィ!」

雨上がりの午後 第1141回

written by Moonstone

 勝平が言う。

2003/4/17

[写真の整理]
 この前行った夜桜見物の際に撮った写真と、運良く晴れた翌日に撮影した桜の写真は、未だデジカメから転送したまま倉庫ディレクトリに入ったままです。このまま公開しないわけにはいかないので(何のために撮影したか分からない)、このお話を終えたら整理を始める予定です。
 写真の整理って、意外に時間がかかるんですよね。撮影する時は後先考えずに、これだ、と思ったものを、ここだ、と思った角度から撮影しますから、何でこんな写真になるかなぁ、と思わず苦笑いしてしまう写真も数多くあります。今回は撮影しながらチェックしたのでそういうのは少ないでしょうけど。
 で、兎に角枚数が多い。最低でも50枚はありますからね。その中から公開に耐えうると思えるものを選び出し、ファイル名を変更してサムネイルを作って・・・とやっているとなかなか大変です。早いうちの公開を目指しますが、月が変わったら御免なさい。北国の方向けということでご容赦を(爆)。
「オゥ、何てこったい!二人の間に迸ってた熱いパトスが止んじまったなんて!」
「だから、お前が言うといやらしく聞こえるから止めろっつってんだ。」

 4人はそれぞれの反応を見せる。宏一はちと大袈裟過ぎるが、まあ、驚くのも無理はないだろうな。高校時代の俺と宮城の付き合いを知ってる奴らばかりなんだから。それにしても・・・何処で渉はこのことを知ったんだ?

「渉。何で知ってたんだ?俺と宮城が別れたってこと。」
「優子ちゃんの友達から聞いたんだ。一昨年の秋に別れた、って。それも別れ方が双方のすれ違いっぽくて、きちんとケリをつけられたのは去年の夏、海で偶然会った時だ、ってな。」
「・・・そのとおりだよ。後に引き摺る、一番悪い形での別れ方だった。俺はその晩自分の家で自棄酒飲んでひと暴れしたし、宮城は好意を持っていた相手と付き合うようになった。まあ、宮城の方は直ぐに別れたらしいけどな。」
「「「「・・・。」」」」
「渉の言うとおり、去年の夏、海で偶然宮城とその友達集団と出くわして、二人だけで清算の話し合いをしたんだ。このまま尻切れトンボのままで終わるのは良くないんじゃないか、と思ってな。まあ、俺の背中を押してくれたのはバイト先の人だけど。」

 俺は概要を説明し終えて溜息を吐く。白い息が勢い良く宙に吐き出されて、出た時とは対照的にゆっくりと消える。やっぱり・・・まだ胸が少し重い。恋愛事では男の方が未練がましいっていうけど、あながち出鱈目じゃないみたいだな・・・。

「しかし・・・、そうだとするとヤバいんじゃないか?」

雨上がりの午後 第1140回

written by Moonstone

「そうか・・・。まさかお前と優子ちゃんが別れるなんてな・・・。意外だぜ。」
「ホントホント。遠距離恋愛の果てにゴールイン、って結末を信じてたんだが・・・。」
「こればっかりは仕方ないな。二人の問題だから。」

2003/4/16

[何故儚い夢の記憶]
 このお話の前に2時間くらい寝てたんですが(寝るな、というツッコミはなし)、目覚めるとそれまではっきりしていた筈の話の展開に関する記憶が一気に曖昧になるんですよね。それで時間の経過と共におぼろげにしか思い出せなくなる・・・。何故なんでしょね?
 見た夢には話の繋がりがあってないようなもので、前半は遠い昔に付き合っていた彼女とのやり取りで、これが何だったのか殆ど思い出せません。色もカラーかモノクロかすらも。後半はどういうわけか母と弟が出てきて料理や掃除絡みの話に急展開。匂いや味まであって、こちらはカラーバージョン。一体何がなんだかさっぱり分かりません。
 カラーと言えば、今日から背景写真を八重桜に変えました。そろそろこちらでは咲き始める頃ですからね。薔薇に見えるかもしれませんが八重桜ですのであしからず。こっちもなかなか綺麗なんですよね。あまり注目されませんけど。
 渉が言うと−こいつは実家から通える範囲の大学に進学した−、俺以外の全員が驚いた様子かそうそう、といった様子で俺の方を向く。蒸し返すなよ。幾ら綺麗さっぱり別れたとは言っても、まだ傷が完全に癒えたわけじゃないんだから・・・。

「オウ、ベイビィ!なんてこった!祐優コンビにピリオドが訪れたのかよ!祐司!何でそんな大事なことを俺達に言わない?!」
「普通、そんなこと自分から進んで言うもんじゃないだろう。」
「何言ってるんだ!二人の間に迸ってた熱いパトスが止んだなんて、俺達に話さなくて誰に話すって言うんだ!」
「宏一。お前が言うと何かいやらしく聞こえるから止めろ。」
「まあ、宏一は放っておいて・・・優子ちゃんと別れたのは本当なのか?」

 勝平の制止に続いた耕次の問いに、俺は小さく頷くだけで答える。・・・まだ・・・こだわってるのか?もうあの夏の夜で綺麗さっぱり清算した筈なのに・・・。それとも清算したのは表面だけで、心の何処かではまだ清算し切れてないってことなんだろうか?どっちにしても・・・胸が重い。少しだけ。
 俺の肯定の頷きに、耕次と勝平は驚きの、渉はそうか、といった感じの、宏一はOh!my God!と言いたげに頭を抱えて愕然たる表情を浮かべる。まあ、驚くだろうな。このメンバーでは俺と宮城の関係を知らない筈がなかったし、このバンドに俺が居たから宮城の告白を受けたんだ。言い換えれば、このメンバーと宮城との思い出は切っても切れない関係にある。

雨上がりの午後 第1139回

written by Moonstone

「ところで祐司。お前、優子ちゃんと別れたんだって?」

2003/4/15

[道具は使って慣れろ、と言うけれど]
 4/13の結果については先日少し触れましたが、日本人のマゾっぷりと政治判断能力の低さを晒したものになりました。所詮日本人の大半は仮性右翼。日の丸と君が代を抱いて借金を子や孫の代に残して自民党や公明党と心中するつもりなんでしょう。愚かしいことこの上ない。
 さて、仕事で製図をすることになりました。これまで私が機器のパネルや内部を材料加工して(穴を開けたり削ったり)部品を実装するには現物合わせ、即ち実物のパネル上に部品を配置してレイアウトを決めていたのですが、それだと後に残る図面がメモ程度にしかならないので、今後のことを考えて今回から先に製図をしておこうと(部品のサイズは分かっている)思って実行に移したのですが・・・。
 使えない(爆)。全然思うように動かない(爆)。きちんと寸法が測れないじゃないか、何で操作がこうも面倒なんだ(ドラッグ&ドロップによる移動さえ出来ない)、・・・とまあ、ツールの不便さに悲鳴を上げた次第。結局前に書いた図面を消してそこから出来るだけ実際に近い寸法で描こうということにしたんですが、これなら現物合わせの方が絶対早いな(爆)。
 宏一は大声でそう言ってドラムを派手に叩きまくる。俺達はちょっと躊躇うものの、ドラムが欠かせない−誰一人として欠かせないが−以上は仕方がないので、のろのろと横付けされたトラックの方へ向かう。そして全員で手分けしてドラムを下ろして噴水前まで運んで再び組み立てる。トラックの運転手は宏一と笑顔で手を振り合って走り去っていく。

「や。待たせたな、ベイビィ!・・・どうした皆。しけた面しやがって。」
「・・・宏一。あのトラックの人、誰だ?」
「俺の兄貴さ。成人式会場までドラム叩きながら行くって言ったらノッてくれてさぁ。あー、本番前から汗かいちまったぜ。」

 俺の問いに宏一はあっさりと答える。ここまでドラムを叩きながら来たっていうのかよ・・・。冗談にも程があるぞ。迷惑の度合いで言えば右翼の街宣車並に質が悪い。確信犯と愉快犯の中間だから余計に質が悪い。こいつも全然変わってないな。否、むしろ派手さと迷惑さを増したように感じる。

「お前なぁ〜。幾ら何でも、ドラム叩きながら来るこたぁないだろ。何者だ、お前は。変わってないといえば変わってないが・・・。」
「寒空の下、熱くドラムを叩いて道行く振袖姿の女の子に声かけたんだけどさ、皆笑うか視線を逸らすかのどっちかだったぜ。」
「当たり前だ。ったく、問題児ぶりは相変わらずだな・・・。」

 耕次の呆れが多分に混じった言葉にも宏一は堪えた様子を見せない。それどころか、何故自分のナンパに引っ掛からなかったのかが疑問らしく、頻りに首を捻りながらぶつぶつ言っている。やれやれ・・・。まあ、耕次と並んでフランクな−少々過ぎた部分があるが−人柄でバンドのムードメーカーだったから、大人しくなってないのは良いのかもしれない。

雨上がりの午後 第1138回

written by Moonstone

「ヘイ、ベイビィ!俺一人じゃ相棒を下ろせないから手伝ってくれ!」

2003/4/14

[惰眠貪る日]
 今週の土日は殆ど寝てました(爆)。本当は小説2作を書き上げるつもりだったんですが思うように進まず途中で投げ出してしまい、結局1/3くらいしか出来てません。まあ、来週まで持ち越しですね。一つはストックもありますからそんなに切羽詰らなくても良いですし。
 昨日の選挙は徹夜を決め込んで一番乗りを果たすつもりだったんですが、うっかり居眠りしてしまって飛び起きた時には7:00を過ぎてまして、8番目か9番目になってしまいました。うう、この時期の選挙は出だしが早いから(暖かいのが大きい)、早めに会場入りするつもりだったのに・・・(泣)。
 結果は一部しか見ていませんが、やっぱり日本人はとことんマゾですね。これだけ痛めつけられてもまだ自民党、公明党ですもの。子々孫々の代まで借金地獄にして、それでも尚自民党、公明党なんですから、日本人は子どもや孫まで痛めつけても平気なんですね。呆れたもんです。
 耕次が勝平の肩をポンポンと叩いて笑顔で言う。それで勝平の表情も明るくなる。やはり耕次はリーダーに相応しい。こうやって即座に相手を励ましたり労わったりするのは耕次の得意技だ。
 この勝平も耕次に誘われてバンドに入った人物だ。ロックバンドでキーボードは日陰の存在ということが多いが、ベースやドラムと共にリズムを支えたり、特にバラードでは見事なソロを奏でたりと多彩な演奏技術を見せる逸材だ。俺と共にバンドのメロディーメーカーをやっていた。更に料理が得意という一面も持っていて、泊り込み合宿の時は重宝されたもんだ。

「あとは・・・宏一だけか。」
「あいつ・・・約束忘れて女引っ掛けてるんじゃないだろうな。」

 渉の言葉に耕次が嫌な予感を感じさせる言葉を続ける。まさかドラムの運搬中に女を引っ掛ける余裕なんて・・・ありゃしない・・・と良いんだが。あいつ、とんでもない女好きだからな。ありえないと言えないのが怖いというか情けないというか・・・。
 やはり5分ほど経過した後、ドラムの音が近付いて来た。ま、まさか・・・。俺達四人は顔を見合わせて小さく首を捻る。しかし、ドラムの音はだんだん近付いてくる。俺は嫌な汗が流れるのを感じる。

「ヘーイ!待たせたな、ベイビィ!」

 ダブルクラッシュ(註:クラッシュシンバルを同時に二つ叩くこと)の後、やたらと威勢の良い声が飛んで来る。トラックの上でスーツの上着を脱いでドラムを叩いていた奴。奴こそバンド一番の問題児、則竹宏一だ。ルックスの良さと口の軽さを武器に女を引っ掛けまくり、俺と付き合っていた宮城にも度々ちょっかいを出したとんでもない女好きだ。そのくせドラムの腕は確かだとくるから余計に始末が悪い。

雨上がりの午後 第1137回

written by Moonstone

「改めて・・・、ひ・・・久しぶりだな。悪い。ちょっと遅くなった。」
「構うな構うな。人は逃げても約束は逃げやしないんだからさ。それよりよく来たな。待ってたぜ。」

2003/4/13

[たまに見るから魅力的♪]
 昨日買出しついでに本屋に立ち寄り「名探偵コナン」41巻を購入して読んだんですが、その中に登場するシェリーこと灰原哀(本名:宮野志保)。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、彼女はコナン(工藤新一)同様、薬を飲んで(コナンは飲まされた)幼児化した人物。実際は18歳なんです。
 彼女、普段はクールで表情の変化が少ないという、綾波レイみたいな少女なんですが(CVは両方、林原めぐみさんなんだよな(^^;))ごくたまに普段では見られない表情をするんです。それが今回の特徴。p163最上段の、粥を食べて熱がる表情(分からん人は買うべし)。これにはドキッとしました。普段見せないような表情を見せられると魅力的なんですよね〜。
 「名探偵コナン」でイチオシなのは勿論毛利蘭なんですが(あのヘボ親父に似なくて良かったなぁ(笑))、灰原もなかなか捨て難い。少女だからっていうんじゃなくて、見た目は少女だけど中身はコナンに恋する年頃の女性、それも今回のように普段引き締まっているところがたまに緩む時を見せるところが気になるんですよね。彼女、最後は何処へ行くんでしょう?元に戻って阿笠博士のところに住み込んで、蘭と新一を取り合う場面が見たいです。
「それを見越して早めに準備して来るべきところだと思うんだがなぁ。」
「相変わらず細かいな、渉は。」
「細かいんじゃない。事情の把握の仕方を言ったまでだ。」
「まあ、二人共やめろよ。遅れてくることはない筈だからさ。」

 口論になりかけたところで俺が仲裁に入る。だが、耕次の言うとおり、勝平−和泉勝平−と宏一−則竹宏一−はキーボードとドラムだから、俺達みたいに簡単に持ち運び、とは出来ない。間違いなく車を調達してくるだろう。しかし、キーボードやドラムを運んで成人式会場に乗り付けるなんて、想像すると結構凄いように思う。
 5分としないうちに、道路に車が横付けする。車の横付けは珍しくないが、そこから降りてきた男の顔を見て、懐かしさが込み上げて来る。後部座席からキーボードの入ったソフトケースとスタンドを取り出して持ってきたのは、キーボードの和泉勝平だ。

「スマン。キーボードとかを乗せるのに手間取ってな。」
「発電機とかは?」
「トランクの中だ。悪いけど手伝ってくれ。車を駐車場へ入れなきゃならんからさ。」
「分かった。」
「おっしゃ。任せとけ。」
「俺も手伝おう。」

 俺はギターとアンプを渉の荷物の傍に置いて、耕次と渉と一緒に勝平の荷物搬入の手伝いに向かう。屋外ライブに欠かせない発電機は勝平が持っていて−家が中規模の工場だからそういうものはゴロゴロしているらしい−、今回も必要分の発電機を持って来てくれることになっている。
 俺達は手分けして発電機を運び、勝平はアンプを運び終えると直ぐに車に戻って一旦その場を去る。程なく戻って来る。律儀にも走って来た。息が切れるのも構わずに言う。

雨上がりの午後 第1136回

written by Moonstone

「勝平と宏一は遅いかもな。」
「あの二人は扱うブツがでかいからな。そう簡単に動けやしないから仕方ねえって。」

2003/4/12

[詩を書く時]
 Novels Group 4では詩篇を公開していますが、最近はもっぱら私の作品を隔週で公開する場になっています(投稿募集中です)。その作品は何時書いているのかというと、実はページ更新直前、つまり前日ネットに繋ぐ直前に一気に書いてしまっているんです。
 この事実を知って、驚く方と呆れる方、納得する方と様々でしょうね。でも、歌詞でもそうですが、詩というものはあまり深く考えると言葉に詰まってしまって書けるものも書けなくなってしまうんじゃないかと思うんです。その場その時の心情をさっとしたためる、っていう感覚が良いんじゃないかな〜、なんて(^^;)。
 そのうち連載でも歌詞が登場します。その時また改めてお話しますが、これも殆ど時間をかけてません。曲を付け易いようにはしたつもりですが。こういう突発的なことが出来る場ってのは、兎角長編に偏りがちなこのページを運営するにあたって、結構良い潤滑罪になっているように思います。
 不意に呼び声がかかる。声の方をみると、地面に敷き詰められたタイルの上に置かれたアンプの傍で手を振っている奴が見える。あれは・・・バンドのリーダーでヴォーカルの本田耕次だ。その隣で、やはりアンプとギター型のソフトケースを傍に置いた奴が手を振っている。ベースの須藤渉(わたる)だ。懐かしい顔触れを見て、俺は表情が緩むのを感じながら駆け寄る。

「久しぶり。」
「久しぶりなんてもんじゃないぜ、祐司!面子が揃うのは卒業式以来だぞ。全くお前は変わってないなぁ。」
「耕次。お前に言われたくない。お前のそのフランクなところは相変わらずだな。」

 耕次はバンドのリーダーであると同時に、俺をバンドに誘った人物だ。こいつの誘いに乗ってバンドに入らなかったら、俺の高校時代は全く別のものになっていただろう。恐らく味気ない、勉強ばかりの毎日だったに違いない。宮城に告白されて付き合うということもなかっただろう。

「誰が一番だったんだ?」
「俺だよ。久しぶりの集合だから、全員喜び勇んでもっと早く来てるかと思ったんだがな。」

 渉が少々不満気味に言う。渉はステージ上では熱いがそれ以外では結構クールで、時間に一番五月蝿い奴だ。ちょっと時間にルーズなところがある耕次と口論になることも度々だったが、それでもバンドを離れることはなかった。バンドの雰囲気が良いからだ、と言っていたのを思い出す。

雨上がりの午後 第1135回

written by Moonstone

「祐司!こっちだ!」

2003/4/11

[今更遅いですが]
 4/1でこのページも4周年を迎えることが出来ました。月並みな台詞ですが、ご来場者の皆様には深く御礼申し上げます。4周年というと長いようですが、それに見合うような活動をしてきたのはごく最近のことではないでしょうか。更新の内容と回数をより充実させて、「追いつき追い越せ」の精神で進んでいきたいと思います。どうか皆様、今後とも宜しくお願いいたします。
 今年は去年と違って、4周年企画はしません。前回まるで不発だっただけでなく、問い合わせておきながら投稿しない、という肩透かしを食らったのが未だに尾を引いているからです。こっちだって一月も期待して待っているほど暇じゃありません。その代わり投稿規程を設けましたので、投稿は随時受け付けています。
 何やら感謝しているのか突き放しているのか分かりませんが、私は投稿におんぶに抱っこというのではなく、自分の作品を中心にして勝負していきたいと思います。どちらが良いとか悪いとかは言いませんけど。
こんなことは高校時代じゃ考えられなかったことだ。長い間、とは言っても約2年だが、家を離れていた家族が戻ってくると、しかも期間が限られているとなるとこんなもんなんだろうか?
 しかし、良いことばかりじゃない。正月の親戚周りに1日中引っ張りまわされ、行く先々で新京大学進学祝に併せて食べ物や飲み物−勿論酒だ−を否というほど勧められて、帰宅した頃には腹いっぱいの上に酔いでフラフラ。風呂にも入らず寝てしまった。こうなることは大方予想できていたこととは言え、嬉しさ半分、迷惑半分だ。新京大学進学で全てが決まったわけじゃないのに・・・。
 そんなこともあった実家での正月休みは全体的に退屈そのもの。暇を持て余してギターをポロポロ弾いていた。そんな中で楽しみと言えばやはり晶子からの電話だった。毎晩9時頃、ほぼ同じ時間にかかってきた。殆ど親が取り次いだが、礼儀正しい娘じゃないの、と母親にも好評を得た。
 話をするといっても大して話題があるわけじゃない。だから今日の出来事を話し合っておしまい、という程度のものだった。晶子は正月をマスターと潤子さんの家で迎えたということだった。やっぱり一人は寂しいんだろう。それを思うと胸が痛む。成人式が済んだら直ぐ帰る、と言ったら喜んでくれた。待っている人が居るというのは嬉しいもんだ。
 そしていよいよ成人式当日。世間的には仕事始めを過ぎた最初の日曜日だ。俺は年末に親に新調してもらったスーツを着て、ギターとアンプを父親の車に積み込んで成人式会場の市民文化会館へ送ってもらった。歩いていくには距離がありすぎるし、交通の便も良くないから、車で送迎してもらうのに限る。終わったら電話をしろ、と去り際に父親が言った。
 バンドのメンバーとの待ち合わせ場所は正面入り口前にある噴水。この寒い時期に噴水というのは気分的な寒さを増すばかりだが、そう言われたんだからそこへ行くしかない。俺はスーツ姿でギターを背負い、アンプを持つという奇妙な出で立ちで待ち合わせ場所へ向かう。少々周囲の視線を感じるが、この程度は店での演奏で慣れてるから気にならない。

雨上がりの午後 第1134回

written by Moonstone

 大学に進学して以来初めての実家での正月を過ごした。家じゃすっかりお客様扱いで、高校時代までのように店の手伝いを命令されることもない。弟も以前より話し易くなって、冬休みの宿題をみてやったりした。

2003/4/10

[うーん・・・]
 昨日は特別変わったことはありませんでした。まあ、連日の途中覚醒&早朝覚醒で蓄積した眠気が爆発して、ネットタイム直前まで寝ていたくらいですね。身体の方はぼちぼち元どおりになってきているんですが、睡眠に関しては薬に頼りっきりで、それも満足に効かなかったり。普通に夜寝て朝起きるという生活に憧れています。
 や、やられた・・・。唇から感触が消えた後、俺はそう思うしかない。周囲に人が居なかったから良いものの、なんて大胆なことを・・・。キス自体は大胆じゃないか。もう何度もしてるから。しかし、タイミングがな・・・。本当に晶子には時々驚かされる。悪い方向じゃないから良いんだけど。

「電話、しますからね。」
「あ、ああ。待ってるからな。」

 俺は手を振って晶子から離れる。晶子はその場で手を振って俺を見送ってくれる。その顔には笑みこそ浮かんではいるものの、何となく寂しげな雰囲気を漂わせているのは思い過ごしだろうか?
 1週間程度の距離を開けての生活・・・。何だか心にぽっかりと穴が開いたような気分がする。まあ、毎日電話がかかってくる手筈になっているから、そこで互いの心をしっかり繋ぎ止めておかないとな。俺と晶子の首にかかった、俺がクリスマスプレゼントで贈ったペアのペンダントのように・・・。
 姿が見えなくなるまで手を振った後、俺は自転車置き場へ向かう。籠に鞄を放り込んで自転車置き場から自転車を押し出して通りに出る。冬の朝の空気は冷たくて凛としている。俺はそんな空気に包まれた静かな通りを自転車に乗って走り出す。晶子、暫く我慢してくれよな・・・。俺も我慢するから・・・。

雨上がりの午後 第1133回

written by Moonstone

 俺は最も相応しい言葉を告げて外へ出ようとする。その時、不意に腕を掴まれる。何事かと思った俺は晶子の方を向く。すると・・・!

唇に温かくて柔らかい感触が伝わってきた・・・。

2003/4/9

[桜散りぬ後は]
 こちらでは昨日の雨で桜の花が大半散ってしまいました。散ったと言うより落ちたと言った方が良いかもしれません。そんな一見寂しくなった桜の木には若葉が目立ってきました。全ての花が散った後、今度は緑の花が大きく広がることでしょう。暖かい陽射しを遮るように。
 さて、昨日は久しぶりに職場の人々がそろって会食しました。外は雨降りだったので、勿論料理屋で。私は大抵一人で昼食を食べているので、最初は何となく落ち着かなかったんですが、料理を食べているうちに気分が解れてきました。こういうのもたまには良いですね。
 のんびりした昼食の後はじっくりPCに向かう時間。これまで構想してきた制御プログラムを入力してはシミュレーション、と繰り返したのですが、なかなか上手くいかない。この手のプログラムは久しぶりですからね。どうも感覚が戻って来ない。慣れて来た頃になって依頼者の要望を聞かないとどうにも出来ない部分にぶつかりました。今日はその打ち合わせとプログラムの続きで終わるでしょう。暫くの辛抱です。
 俺は晶子から誕生日プレゼントに貰った手編みのセーターをコートの中に着込んで−濃厚なキスもおまけでついてきた−荷物を持って出発の準備を整える。一旦家に寄って荷物を置き、ギターとアンプを持って駅へ向かう、という段取りは決まっているからその通りに動くだけだ。
 準備を終えた俺は晶子と一緒に出口へ向かう。晶子は沈んだ顔をするのかと思ったら、何時もと変わらない横顔を見せてくれる。意外と芯が強いからな。行かないで、なんて駄々をこねられたらそっちの方が困るんだが。
 エレベーターで1階に降りてロビーに到着する。晶子と出会って恐らく初めての、長期間−1週間程度だが−距離を離して−電車を乗り継げば位置に近からずに会える距離だが−時間を過ごす時がやってきた。名残惜しいのは勿論だが、何時までもここの居心地の良さに浸っているわけにもいかない。俺には守らなきゃならない約束があるんだから。

「それじゃ・・・。」

 適当な言葉が思いつかない俺は曖昧な言葉を使う。すると晶子はにこりと微笑んで言う。

「行ってらっしゃい。」

 ・・・そうだ。これでさよならするわけじゃないんだ。ちょっとの間出かけるだけだ。また戻ってくるんだから、そういう挨拶で良いんだ。晶子の挨拶に対する応えは勿論・・・。

「行ってきます。」

雨上がりの午後 第1132回

written by Moonstone

 楽しい時間というものは本当にあっという間に過ぎ去るものだ。晶子の家に2日厄介になって、とうとう今日晶子の家を離れる。そして住みなれたこの町とも暫しお別れだ。約2年ぶりに帰省するからだ。

2003/4/8

[反戦の声が偽善とは!]
 米英軍によるイラク侵略戦争が激化する中、日本と世界の文化、スポーツの著名人が反戦の声を上げています。その声は私の想像を上回る範囲に広がっています。しかし、そんな著名人の反戦の声を偽善だの売名行為だのと罵る輩が居るといいます。まったくもって許し難い侮辱です。
 このページの決議でも指摘しているように、今回の米英軍によるイラク侵略戦争は自衛のための反撃でもなければ国連安保理が決めた制裁でもない、一方的な先制攻撃であり、国連憲章違反であると同時に国際法を踏みにじる暴挙です。それに対しておかしい、と思い、戦争止めろ、の声を上げるのは立場の違いはあっても全く自然なことです。それを偽善だ売名行為だと言うことは、戦争反対の声を押さえつけ、この無法な戦争を後押しするのと同じです。言い換えれば米英侵略軍やそれを支持する日本政府と同じレベルです。
 また、戦争反対を今更言っても遅い、という向きもありますが、これも戦争を後押しするのと等価です。始まったものだから認めろ、と言っているとの同じです。このような戦争後押しの動きを許さず、徹底的に米英軍の侵略行為とそれを支持する日本政府を厳しく批判し、戦争止めろ、の声を高めるべきです。破壊と殺戮で構成される戦争と相反する、創造と平和で構成される芸術の名を冠するページの管理人として、此処で改めて訴えます。
イラク侵略戦争反対!米英軍は直ちに撤退せよ!

「だけど・・・晶子は変に思わないか?その日暮らしの男を経済的に支える人生を。」
「いいえ、ちっとも。自分にしか出来ないことが出来るんですから、そんな幸せな人生はそうそうないですよ。」
「そうか・・・。」
「それに、人生の形なんて色々ですよ。他人がどう思おうがそれは自由ですけど、妙な口出しをする権利はない筈です。」

 晶子の言葉が心に染みる。仮に俺が音楽を飯の種にする道を選んだとしても、晶子は俺と一緒に居てくれる。それが温かい陽射しの中で芝生に大の字になるような気持ち−他に何と表現すれば良いのか分からないが、兎に角心地良い気分にさせてくれる。

「ありがとう、晶子。まだ将来のことは何とも言えないけど、心はすっきりした。それに心強いよ。晶子がずっと俺の傍に居てくれるってことが分かったから。」
「前にも言ったかもしれませんけど、離れたいと思っても離しませんからね。私はそういう性格ですから。」
「そうじゃなかったら、邪険に扱う俺をストーカー顔負けの執念で追い回したりしないよな。」

 俺が言うと、晶子は頬をほんのりと赤らめる。過去の自分の執念深さを指摘されて恥ずかしいんだろうか。でも、晶子の言うとおり、晶子があそこまで、勿論良い意味で執念深くなかったら、今の俺と晶子の関係はなかったんだ。晶子に感謝しないといけない。
 俺と晶子はコンサートやそれに至るまでの話に花を咲かせる。時に相手の話に聞き入り、時に笑い・・・。心地良い時間が過ぎていく。こんな時間が過ごせるのなら、コンサートの準備や後片付けもそれに至る凸凹道でしかない。部屋は何時の間にか暖かくなり、紅茶はすっかり冷めてしまったが、俺と晶子の時間は温かいまま過ぎていく・・・。

雨上がりの午後 第1131回

written by Moonstone

 俺が言うと、晶子の表情が微かに緩む。自分の気持ちと一致した言葉が出たことが嬉しいんだろうか。

2003/4/7

[夜桜見物]
 当日行けるかどうか不安はありましたが(体力と気力の問題)、「昼まで睡眠」でじっくり休養を取って、夕暮れ時を見計らっていざ出発。途中夕食と酒(私が好きなチューハイ)を買って現場へ。既にあたりは真っ暗でそんな中桜がライトアップされていました。おお、綺麗(^^)。
 例に写真撮影をしてみたら「何も見えん(汗)」。目では見えても持ってきたデジカメでは感度が悪いのか暗過ぎるのか、兎に角真っ黒。てなわけで、初めてのフラッシュ使用での撮影。普通のカメラだと現像してみない限りちゃんと撮影されているかどうか分からないんですが、こういう時にデジカメは便利。撮影画像を確認しつつ、失敗したものは削除して、を繰り返しながら屋台が並ぶ方へ歩いて行きました。
 ひたすら桜を撮影したのですが、たまに屋台の行列や人ごみも撮影。春の祭典らしく、ちょっと冷えるけど歓声や呼び声が飛び交う賑やかな光景でした。休日は自宅で終日PCに向かう、ということが多いんですが、たまには外へ出るのも良いですね。心残りは青空の下での桜が撮影出来なかったことです。まあ、これは仕方ないでしょう。天と運との巡り合わせですから。
祐司さんが音楽との生活を選ぶなら、それを金銭的に支援出来る仕事を選ぼうと思います。私はあまりよく知らないんですけど、有名になるまで生活はその日暮らしみたいな感じなんでしょ?音楽家に限らず芸術に携わる人達って。」
「ああ。こと芸術に対する認識が低い日本では特に、な。」
「主体性がないって言われるかもしれませんけど、私は祐司さんをサポート出来る道を選びたいんです。私は文学部で資格とかもないですから、就職先と言ってもせいぜい事務職。それが悪いとは思いませんけど、仕事に生き甲斐を見出すことは、私には難しいと思うんです。」
「・・・。」
「それなら祐司さんを安心させたり、支えたりする人生を選びたいんです。女性は、女性は、とか言いますけど、私は前面に出るばかりが人生じゃないと思うんです。パートナーを安心させたり支えたりすることも選択肢の一つとしてあって良いと思うんです。」
「晶子・・・。」
「今の祐司さんは将来を模索している段階ですから、具体的にこうしたい、ということは出来ませんけど・・・祐司さんとの今の関係は大学時代の思い出だけにしたくありません。これだけははっきり言っておきます。これからも続けていきたい。大学時代の思い出を作るために祐司さんを追い掛け回したり、祐司さんと家を行き来するような関係になったりしたんじゃないんです。私は・・・祐司さんと生涯一緒に居たいと真剣に思ってます。」

 晶子ははっきりした口調で言う。一点の曇りも迷いも感じられない。それだけ真剣に俺との関係を大切にしたいと思っているんだろう。この気持ちを大切にしたい。どんな道を選ぶにしても、その一点だけは変わらない。

「俺も・・・晶子とずっと一緒に居たいと思ってる。」

雨上がりの午後 第1130回

written by Moonstone

「私は・・・このまま祐司さんについて行きたいです。祐司さんが会社員や公務員とか、世間的に言うところの真っ当な道を選ぶのなら、祐司さんとのふれあいの時間を持てるような仕事を選ぼうと思います。

2003/4/6

[本日、花見を予定]
 天候は晴れの予報が出ています。私の方は鼻風邪もかなり回復してきたので、身体さえ動けば花見へ繰り出せるでしょう。桜の咲き具合やここ数日の天候からして今日が最後のチャンスでしょうから、何としてでも出かけたいものです。
 やりたいことは他にもあるんですが、花見は今回を逃したら恐らく二度とそういう気分にならないでしょうし、タイミングの問題もありますし、来年度から状況が一変するのでのんびり花見、とはいかないかもしれませんから、出来る時に出来ることをやっておきたい。そんな思いです。
 連載は未だ冬から脱出出来ないでいますが、どうしても書きたい展開が控えているのですっ飛ばすわけにはいきません。花見、花見、と言っていながらよく冬のことが書けるな、と思われるかもしれませんが、作品と季節は必ずしもリンクしないものです。もう暫く若者の冬にお付き合いください。
「・・・。」
「それに、コンサートのMCでマスターが言ってたように、今の学科に居ることで将来が全て決まるとは考えたくないんだ。企業に就職する道を選ぶのは否定しない。それが悪いことだとはさらさら思っちゃいない。だけど・・・果たして俺の人生それで良いのか、って思うんだ。」

 俺の半ば愚痴みたいな回答を、晶子はじっと聞いている。就職活動のカウンセリングとかってこんな感じなんだろうか?否、こんなに真剣に俺の話を聞いてくれる保障は何もない。今は兎に角、心にあること全てを吐き出したい。そんな気分だ。

「それなら音楽の道か、ってなると、これは・・・会社員か公務員かという選択肢より難しいと思う。自分の腕が百戦錬磨の人達の中で通用するようなものなのか見当もつかない。それに音楽を職業にするってことに対する躊躇いがあるのも否定出来ないんだ。」
「ご両親とかの反対があるからとかですか?」
「それもある。まあ、それはとりあえず置いておいて・・・音楽を職業にするってことは、真っ当な人生からはみ出したことかもしれない、っていう思いがあるんだ。それは今まで親や親戚から将来は良い大学へ入って良い会社へ、とか散々言われてきたせいで、変な規定概念が出来ちまったせいだと思う。責任問題は別としても、音楽と四六時中べったりくっついて生きていく人生に耐えられるのかどうか分からない、ってこともある。趣味に留めておいた方が良いんじゃないか、とも思う。将来闇の中、って感じだよ・・・。」
「凄く真剣に考えてるんですね。言葉は悪いですけど、感心しました。」

 晶子がそう言って紅茶を啜る。心の中のものを出し切って幾分すっきりした俺は、紅茶を啜って喉の渇きを癒す。

雨上がりの午後 第1129回

written by Moonstone

「どうなるんだろうな・・・。俺自身分からない。」
「目標とかはあるんですか?」
「それさえ漠然としてるよ。俺は電子工学科だけど、正直言って俺は会社員としてやっていけるタイプの人間じゃないと思う。人間関係の構築が下手くそだからな。じゃあ公務員か、となると、選び方にもよるだろうけど何のために今の学科に入ったのか分からないことになりかねない。」

2003/4/5

[春雨じゃ。濡れて参ろう(2)]
 ・・・なーんてカッコの良いこと言ってますけど、帰宅時に雨が降っていてすっかり濡れてしまって、回復したばかりの鼻風邪がまた酷くなったというだけです(爆)。今日も日中は雨の予報。今日の花見は無理ですな。明日は散っちゃうんだろうなぁ・・・。桜吹雪の中で花見というのも良いですが、満開の状態を晴れで写真撮影したかったです。今年はどうも無理っぽい。
 桜って、咲くまでは時間がかかるのに咲き始めると早くて、気がついたらあっという間に満開になって散っちゃうんですよね。「しずこころなく はなのちるらむ」とは良く言ったものです。写真撮りの端くれとしては、せめて半月ぐらい満開状態を保って欲しいところです。
 今日は作品制作一筋になると思いますが、本当は今日花見がしたかったんですよね。日曜も動けるようになってきたとは言え、まだ不安定要素がありますから。まあ、のんびり花見が出来るのも恐らく今年が最後の機会。雨で花が落ちないことを祈るばかりです。
 俺と晶子はティーカップを軽く合わせる。カツン、という軽い音がする。芳香を伴う湯気が立つ紅茶をゆっくり飲んでいくと、心が静まっていく。そしてようやくヤマ場を乗り切った、という気分がする。ティーカップから口を離すと、自然と溜息が漏れる。

「終わりましたね。今年のコンサートも。」
「ああ。こういうのって、終わってみればあっという間なんだよな。準備とかコンサートそのものが遠い昔のことのように思えるよ。」
「今年はコンサートまでに色々ありましたから。」
「そうだな・・・。」

 俺はもう一口紅茶を啜る。一時は晶子との仲が断絶する危機に陥ったこともあった。講義や実験で練習の時間が思うように取れず、危機感を募らせたこともあった。でも終わってみれば大団円。意外に何とかなるもんだ。

「来年はどうなるんでしょうね・・・。」

 晶子が少しばかり不安げな表情で言う。来年は順調にいけば研究室への仮配属があるし、就職活動も始まる。将来のことを考えなければいけない時期だ。それに加えて講義や実験もある。音楽に触れる時間がどんどん少なくなっていくような気がしてならない。
 俺としてはバイトや今回のコンサートのような形で音楽と接していたい。だが、時期や周囲が容易には許してくれないだろう。かと言って、バイトを止めることは死活問題に繋がるからそう簡単に行く回数や時間を減らせない。あっちもこっちも並行して進行させなければならないという、難しい時期に入るわけだ。本当にどうなるんだろう?

雨上がりの午後 第1128回

written by Moonstone

「それじゃ・・・お疲れ様でした。」
「「乾杯。」」

2003/4/4

[使われないなぁ・・・]
 何が、って感想用掲示板STARDANCEのことですよ。要望があったから設置したは良いものの、使われたのは一度だけ。3月始めの設置以来約一月音沙汰なしですよ。これじゃ何のために苦労して設置したのか(今回のCGI設置は思いの他難しかった)分かりゃしない。
 何でなんでしょうね。私の企画や準備が悉く無反応に終わるのは(今回のはまだ終わってないけど)。ドメインやコンテンツの名称からして、何処かの組織の公式ページと思われて、迂闊に手が出せないんでしょうか?orgドメインしか空きがなかったから仕方なかったんですけどね。
 かと思えば、放置しておいても書き込みがどかどか入って対応が追いつかないような(というかしてない)掲示板を抱えるページがあったりして・・・。やっぱりこのページ、スタートで失敗しましたかね。作品を数揃えたところで反応が返ってくるとは限らない、ということを今、再認識しています。

「お茶入れますから、うがいと手洗いだけ済ませてください。」

 キッチンで湯を沸かし始めた晶子に言われて、俺は鞄からタオルを取り出して洗面場へ向かう。面倒な気もするが風邪で寝込んで看病される、なんて御免だから−自分が苦しいのは勿論、晶子に迷惑をかけたくない−するべきことはしておくに越したことはない。水が冷たいが文句は言わない。
 タオルで念入りに水分を取り除いてキッチンに入ると、晶子は紅茶の準備をしている。少し前に昼食を済ませたばかりなのに紅茶を飲むなんて、と思われるかもしれないが、晶子の家にお邪魔したらまず紅茶、というのが慣例だ。特に寒いこの時期は、入れたての紅茶を啜ることで晶子の家に来たという実感が沸く。
 晶子はキッチンでうがいと手洗いを済ませたらしく、手と顔が赤い。自分の家なんだから先に洗面場で済ませば良かったのに・・・。晶子らしいといえばそうなんだが、そんなに気を使わなくても・・・。晶子にとっては気遣いの中に入らないのかもしれないが。
 何時もの席に座って待っていると、程なく芳香を漂わせる茶褐色の液体を含んだ透明のポットとお揃いのティーカップが出てくる。晶子がティーカップを俺の前と向かい側に置き、そこにティーカップから紅茶を注ぐ。この香り・・・。よく出てくるミントやフルーツ系のものじゃなさそうだ。何だろう?心なしか高級感を感じるが・・・。

「今日のは何なんだ?」
「ウヴァですよ。久しぶりですね、そう言えば。」

 ウヴァか。最初はシヴァと聞き間違えて晶子に笑われたが、出会って1年を祝した時に出た紅茶だ。そんな記念すべき日に出された紅茶が出てくるということは、今日は「とっておきの日」ということなんだろう。晶子が俺の向かい側に座ってティーカップを手に取る。

雨上がりの午後 第1127回

written by Moonstone

 晶子が鞄から鍵を取り出して、鍵を開ける。ドアを開けて晶子が先に中に入り、俺はそれに続く。薄暗い室内は外同様芯まで冷え込む寒さだ。晶子は家に上がるなり早速暖房のスイッチを入れる。暖かくなるまではコートは手放せそうにないな。まあ、これが冬の風物詩なんだが。

2003/4/3

[春雨じゃ。濡れて参ろう]
 てなわけで昨日は小雨がぱらつく中を自転車で職場へ向かいました。実際はそんな風情ある感覚が理由じゃなくて、三度寝(薬を飲んでも一度目が覚めてしまうので必然的に二度寝することになる)してたら遅刻しそうな時間になったので慌てて自転車で強行突破、という事態になっただけなんですが(^^;)。
 一昨日の夜から振り出したらしい雨のお陰で、桜の花が多少落ちてしまいました。残念ですが、まだ大部分は満開直前ということで無事なようです。週末まで雨が降らなければ、週末の夜桜見物は実行に移せるでしょう。楽しみ楽しみ♪
 桜といえば今の背景写真もそうなんですが、晴れの日に撮ってないので何となく暗い印象なんですよね・・・。体力に余裕があって、且つ晴れてくれれば、週末に桜の写真を撮りに行こうと思います。青空に映えるピンク色の花・・・。この地味なページを彩る写真になりそうです。

「そんなに力まなくて良いぞ。作るのも大変だろうし。」
「一人だったらしませんけど、今日は大切な人が居ますからね。手抜きはしませんよ。」

 晶子が微笑んでみせる。さり気なく、大切な人、と言われて俺はちょっと照れくさく感じて頭を掻く。好きな相手からそう言われて嬉しく思わない奴は居ないだろう。補講があるということで少々重かった気分が一気に軽くなる。

「今年は祐司さんの家を掃除出来ませんね。」
「去年晶子に手伝ってもらって綺麗にしたから、今年は塵を捨てる程度で終わりさ。それより晶子の家の方は?」
「ちゃんと掃除してますよ。でも1週間空けちゃいましたから、また掃除しないといけないですね。申し訳ないですけど手伝ってくれますか?」
「ああ、いいよ。それで少しでも去年俺の家を掃除してもらった礼になれば。」
「十分ですよ。」

 晶子はまた微笑んでみせる。この微笑みを見ると心がふわりとした感じになる。寂しげだったり悲しげだったりするものは見たくないな。明後日その表情を作らせることになっちまうかと思うとちょっと胸が痛い。だが約束は破るわけにはいかない。毎日かけるという電話でしっかり絆を保とう。
 俺と晶子はゆったりしたペースで晶子の家があるマンションに辿り着く。何だか妙に久しぶりに来たような気分がする。1日だけと1週間連続の違いだろうか?まあ、今までは家族気分を満喫出来たから、今日明日は晶子の家で幸せ気分を満喫するとしよう。
 自転車置き場に並べて自転車を置いて、俺と晶子は例のガチガチのセキュリティを晶子に解除してもらって中に入る。管理人に会釈して、晶子に先導される形で家に向かう。廊下に人通りはない。時間がまだ社会人の帰宅時間には早過ぎるから、少なくて当然といえば当然かもしれない。

雨上がりの午後 第1126回

written by Moonstone

「食事は張り込みますからね。」

 隣で自転車を押している晶子が言う。晴れやかで、そして活気刈るその表情からはやる気がたっぷり感じられる。潤子さんの料理で染まった俺を舌を自分の料理で染め直してやる、といった感じだ。

2003/4/2

[鼻風邪か?花粉症か?]
 ここ最近、鼻水が酷くてしょっちゅう鼻をかんでいます。ティッシュの消費量も馬鹿になりませんが、それ以前に息苦しくて仕方ないです。私は鼻呼吸をしているので、鼻を塞がれると口で息をするしかなく、そうすると口がやたらと乾くし(飲んでいる薬のせいで元々口が渇きやすい)頭も何だかふらつくし、大変です。
 日によって程度の差があって、まるっきり大丈夫という日もあるので花粉症ではないと思うんですが、ちょっと目が痒いのでもしかしたら・・・という気がしないでもないです。そう言えば、毎年この時期になるとこんな症状に見舞われているような気がしないでもない・・・(汗)。
 そんなこんなで身体の方は大変だったのですが、昨日は仕事も大変でした。半年に一回の出庫集計でそのデータ生成(これはプログラムで半自動的に出来る)とExcelでの整理(これは手作業)に追われていました。午前中の体力消耗が激しくて午後が暫く大変だったのですがどうにか終了。また今日から通用業務に復帰です。さあ、忙しくなるぞぉ〜(^^;)。
「そのつもりです。」
「・・・羨ましい。」

 成人式会場で実施されるであろうライブ演奏の話題で盛り上がっていたところに、晶子の呟きが飛び込んでくる。俺の方を見ているその顔は何時になく寂しげだ。一人にしてしまうってことをもうちょっと考慮に入れて話をした方が良かったな。

「祐司君もそうだけど、晶子ちゃんは、此処が実家だと思って良いのよ。寂しかったり辛いことがあったりしたら、遠慮なくいらっしゃい。歓迎するから。」
「・・・はい。」

 潤子さんの言葉を受けて、返答した晶子の表情に明るさが戻る。やっぱり一人にするのは不安だな・・・。かと言って「先約」であるバンドのメンバーとの約束を破るわけにはいかない。辛い選択だが、その分一緒に居る時間を大切にしておかないといけないな。
 昼食はあっという間に終了し、食器は完全に空になった。潤子さんは4人分の鉄板を重ねて、そこにサラダが入っていたガラスのボウルを重ねて店の方へ向かう。店の食器だから店のキッチンで洗い物をするんだろう。美味い料理をたっぷり食べて、腹の虫はすっかり大人しくなった。
 潤子さんが洗い物を済ませて戻ってきた後−幾ら俺でもそれくらいの礼儀は弁えてるつもりだ−、俺と晶子は荷物を持って一緒にマスターと潤子さんの家を出る。これから向かうは晶子の家だ。今日明日は晶子の家で厄介になる。こうも他所様の家に居続けると、自分の家がどうなっているのか少々心配になる。まあ、ゴキブリが餌を探して喘いでいるのが関の山だな。

雨上がりの午後 第1125回

written by Moonstone

「ほほう。成人式会場でライブか。なかなか面白いじゃないか。若いうちは色々やっておいた方が良い。どこぞの偉いさんの長話を聞くよりその方が有意義ってもんだ。此処で培ったステージ度胸を存分に発揮してきなさい。」

2003/4/1

[眠い、眠い・・・]
 昨日は兎に角眠い日でした。少し気を抜くと直ぐにうつらうつらしてしまい、帰宅してからは当然の如く熟睡。これからまた更に寝るんですから、子どもみたいですね(笑)。寝る子は育つ、と言いますが、もうこれ以上育ったところでどうしようもあるまいて。
 さて、イラク侵略戦争ですが、どうもアメリカなどの思惑どおりには進まないようです。「イラク国民の解放」を謳ったところで結局のところはフセイン政権の打倒が本音なのですから、イラク国民の抵抗にも遭っているのでしょう。「戦争で非戦闘員が死ぬのは当然」と言って憚らない連中が指揮する侵略戦争は泥沼化するのが必然です。過去のベトナム侵略戦争然り。
 それにしても、NHKの報道姿勢は何とかならないものでしょうか。アメリカの「大本営発表」を垂れ流すばかり。「大本営発表」報道が戦争を煽り、国民に多大な犠牲を負わせた過去の教訓を忘れたのでしょうか。まあ、戦争推進勢力の政府与党の息のかかった特殊法人のやることですから、その意向を反映しているとも言えますが。
 半ば犯罪者扱いされた俺は少々むきになって反論する。俺だって晶子と離れたくない。出来れば去年同様一緒に年を越したい。だが、親は成人したんだから、といって親戚周りをさせると言っているし、それ以前にバンドのメンバーとの約束がある。それを反故にするわけにはいかない。

「何だ、先約があるのか。それじゃ仕方ないな。」
「晶子ちゃんはどうするの?」
「え・・・。別に何も決めてませんけど・・・。」
「良かったら家にいらっしゃいよ。一緒に初詣に行くのも良いし、一人じゃつまらなかったら何時でもいらっしゃい。ね?あなた。」
「ああ。一人だと心細いだろう。遠慮は要らんからね。あ、井上さんも実家に帰るとか?」
「その予定はありません。」

 晶子はきっぱりと言う。そう言えば晶子は過去のごたごたのせいで親とは半ば絶縁状態にあるんだったな。幾ら一人が嫌でも実家には帰るつもりはないとなると、こりゃ相当帰省を嫌ってるな。まあ、晶子は一人で何でも出来るし、マスターと潤子さんの誘いどおり、年末年始を此処で過ごすのも良いだろう。嫌々帰省するより気心の知れた人間と一緒に居るほうがずっと良い。

「祐司君の、バンドのメンバーが集まろう、っていう約束は同窓会みたいなもんかい?」
「まあ、そんなところですね。ほぼ3年間ずっと同じメンバーでやってきたし、思い入れもありますから。ギターとアップを持って来い、って念押しされてるんですよ。」
「どうして?」
「多分ですけど、成人式会場でライブ演奏するんだと思います。そうじゃなかったらギターとアンプを持って来い、っていう必然性がないですから。」

雨上がりの午後 第1124回

written by Moonstone

「俺だって好き好んで放り出すわけじゃありませんよ。今年は成人式があって、そこで高校時代のバンドのメンバーが集まろう、っていう約束があるから、それを守らなきゃならないんです。」


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