芸術創造センター こぼれ話
Dropped talk of Performing Arts Center

2002年3月31日更新 Updated on March 31th,2002

2002/3/31

[あああ、最後の週末がぁ・・・]
 新年度且つ「創立祭&さくら祭」最初の定期更新を間近に控えていながら、昨日は殆どやる気が起こらず、ベッドに転がっていました。どうにか完成予定の1/3くらいまでは出来ましたが・・・。この分だと、今日は1日PCに向かう覚悟でないと作品が出揃わない危険性が高いですね(汗)。
 まあ、先は長いですし、力入れて更新したところで大した反応があるわけでもなし(前回の定期更新でも感想はSide Story Group 1の3通とPhoto Group 1の1通だけでしたし)、のんびりやるのも一つですかね。さあやるぞ、と意気込んで投稿規程を作ったり、作品を揃えようとしたりしているわけですが、一人芝居で終ってしまいそうな気が・・・。ちょっと空しい。花見も出来ないし(違)。
 兎も角、私はやれるだけのことをやるだけです。今日出来なかったら後日でも良いわけですし(「祭」の間は定期更新の枠にはこだわらないつもりなので)、無理して自分の身体をぶち壊したら話になりません。新年度と「祭」はページ運営の原点に、即ち自分の作品を公開してその場所を管理するということに立ち返るつもりで臨みたいと思います。
 俺がその「催促」に応えて口を開けると、開き切るのが待ちきれないかのように、その柔らかくて熱いものがずいと口の中に割り込んでくる。そしてそれは俺の口の中を歯の裏側や上顎に至るまで彼方此方這い回り、そして俺の舌に絡み付いてくる。
 それを離すまいと舌を絡めようとした途端、晶子の舌はするりと俺の舌から離れ、入って来た時と逆にそそくさと「逃げて」いく。俺はその後を追って晶子の口の中に舌を入れて、晶子がやったように口の中を満遍なくかき回し、その不思議と甘酸っぱい味を堪能した後に晶子の舌に絡みつかせる。
 晶子の身体から力が抜け始めて、何とか踏み止まろうとするかのように、俺の左手を握る右手と俺の左手にかかっている左手に力が篭る。俺は晶子の身体が崩れ落ちないようにと、晶子の左腕から手を離して晶子の背中に腕全体を回して自分の方に晶子の体全体を押し付ける。
 時に互いを離すまいと二つの舌が動き、時に吸い合ったりしているうちに、俺はふと鼻でしている呼吸が荒くなっていることに気付いて呼吸の勢いを落とす。すると晶子の舌が何をしてるのと叱咤するように、より激しく舌を絡め、吸ってくる。俺の鼻の近くの頬にかかる晶子の呼吸は何時になく荒いが、晶子はそんなことなどお構いなしというか、キスに専念していて気付かないらしい。
 暫し激しく舌を動かし、互いの口の中を行き来させた後、俺と晶子はほぼ同時に長く潜っていた水中から顔を出すように口と口との距離を置く。荒い呼吸が静まるのを待ちながら、俺は晶子を見詰める。晶子の目は閉じたままで、恍惚とした表情をしている。これで満足できたんだろうか?

「もう一回・・・。」

 晶子は目を閉じたまま首を少ししゃくりあげて言う。何処か切なげで、それでいて艶かしいその表情に俺は思わず息を飲む。夏という季節と周囲を包む暗闇が晶子に魅惑を発する魔法をかけたんだろうか?俺は迷わず晶子との距離をゼロにして、今度は俺の方から舌を差し込む。晶子の口はどうぞと言うように自然に開いて俺の舌を出迎える。

雨上がりの午後 第772回

written by Moonstone

 柔らかくて弾力のある感触が唇に伝わってくる。程なく晶子の唇が開く。何かと思ったら、俺の唇を割って入って歯に別の柔らかくて、そして熱い感触のするものが、開けと言わんばかりに小さく何度も触れる。

2002/3/30

[社民党、お前もか]
 鈴木宗男議員疑惑追及の場で感情的に迫り、民放テレビでは社民党の幹部として露出度が高かった辻元清美議員が政策秘書の給与詐取疑惑で議員辞職しました。辞職は当然です。当時の参議院議員の秘書の名義を借りて実体のない政策秘書を仕立て上げ、その人物には5万円しか渡さず、残りを自分の事務所運営の経費にしていたというのですから、立派な詐取行為ですから。
 問題なのは、名義借りの指南を誰から受けたのか、他にも同様の議員が居ると言うがそれは誰なのか、当初は自身の証人喚問をしてくれと言いつつ即座に議員辞職しなかったのは何故か、肝心の疑惑の焦点については何一つ明確にせず、自分の感情の変化の経緯を述べて議員バッジを外しただけのパフォーマンスで終っただけです。当然辻元前議員を証人喚問して疑惑の全容解明をするべきですし、これで鈴木、加藤両元自民党議員の疑惑から焦点をそらさせるようなことをさせてはなりません。自民党は元々ああいう体質の党ですから、調べれば疑惑は際限なく出てくるでしょうが。
 辻元前議員の辞職会見以上に情けないのは社民党です。所属議員に疑惑がかかった時点で即刻調査して、全容を明らかにして議員辞職させるべきところを、辻元前議員がテレビで「釈明」するのを止めることすら出来なかったのは、指導部が如何に力ないものか、自浄能力に欠けるかを示したものです。社民党も活動資金を税金の山分けである政党助成金に依存し、相変わらず労組依存の脆弱な地方組織を持つ「逆ピラミッド型」政党の一つであり、国民の信託を受けるに値しない党だと言えるでしょう。地方首長選挙でも自民党や公明党など与党と一緒になっていることからしても、社民党が自民党と大差ない政党であることが証明された。そう思います。
「人妻って・・・。」
「この指輪をこの指に填めた時から、私の中では大きな区切りが出来たな、って思ってるんです。私は祐司さんから貰ったこの指輪で他の男の人を容易に寄せ付けない、強力な力を得たんだって思うと嬉しくて・・・それに・・・幸せなんです・・・。」
「俺には言い寄ってくるような女は居ないけど・・・この指輪を見てると、晶子と距離は離れていても繋がってるんだなと思う。この指輪の片割れが好きな相手の同じ指に填まってるって思うと、何て言うか・・・こう・・・安心できる。」
「私、日記まがいの小説かいてるでしょ?それでキーボードを叩いている時に必ずこの指が視界に入るんですよ。それで、ああ、今日はこんなことがあったなとか、祐司さんとあんなお話したなとか、自然と頭に浮かんでくるんです。記憶の引出しの鍵みたいですよね。」
「・・・無くすなよ。その指輪はこの世にそれ一つしかないんだから。」
「はい。」

 晶子は柔らかい笑みを浮かべる。民家などからの淡い光で浮かび上がったその笑みは、月の女神という代名詞が相応しい。俺は晶子と向かい合う形になって、その華奢な左腕を取って目を閉じながら晶子に顔を近付ける。晶子もそれに合わせるかのように目を閉じていく。
 俺の唇に柔らかくてほんのり温かい感触が伝わる。少しして俺の右腕がそっと掴まれる。晶子の左手だろう。俺と晶子は暫しの間、俺が少し屈みこむ形でそのままの姿勢を保つ。
 どのくらい波の音が繰り返されたかは分からない。俺は近づけたときと同じくらいゆっくりと晶子の唇から距離を開けていく。唇の感触がなくなったことを感じてか、晶子は俺の動きに呼応するような速さで目を開ける。その表情は暗闇でよく分からないが、何故?と言いたげなものだ。

「・・・もう、止めちゃうんですか・・・?」
「これからでも出来るだろ?」
「・・・もう一回。」

 晶子は呟くように言うと再び目を閉じる。去年のクリスマスプレゼント以来何度となくキスをしてきたが、キスの催促なんて初めてだ。だが据え膳食わぬは男の恥。周囲をひととおり見回してみるが、暗闇に隠れて人影は殆ど見えないし、見えたとしてもカップルが俺と晶子と同じ、否、場合によってはそれ以上に濃厚なラブシーンを展開している。俺はちょっと覚悟を決めて、目を閉じながら唇を「標的」に近づけていく。

雨上がりの午後 第771回

written by Moonstone

「私、あまりアクセサリーとか付けないほうじゃないですか。それだから、この指輪、結構目立つみたいなんです。この指輪を貰ってから言い寄られる回数が激減しましたよ。昼間、潤子さんが言ってましたけど、人妻に手を出そうとする人はそうそう居ないですね。」

2002/3/29

[ね、眠かった〜(汗)]
 昨日は昼過ぎまで強烈な眠気に振り回されました。今服用している薬は元々眠気を誘発するものなのですが、あの眠気は薬のものではなかったですね。薬を飲んで眠くなるということは最近では殆どありませんし。出張の疲れがどかっと噴き出たんでしょう。寝る前も何時の間にか座椅子で居眠りしてましたから。
 自分の体験から言うと、疲れは眠ることで取れないことがあって(長時間労働やストレスetc.)それが蓄積されていって、何かの拍子に(酒が入ったりストレスから解放されたりetc.)それがどかっと噴出すようです。その時に身体を休めないと後々身体や心を蝕まれることに繋がる、と。英語になった日本語の「過労死」や心労による自殺などは、それが最悪の形となったと言えるでしょう。
 私はその一歩手前まで行ったことがあるだけに、疲れが噴き出るほどの時は大人しくして居たいんですが、今の仕事の情勢がそれを許してくれません。折角良くなってきた病状がぶり返さないよう、気をつけて毎日を過ごしていこうと思います。でも、4月はこのページの行事も控えてるし・・・(^^;)。多忙な日々は当分続きそうです。

「一緒に泳いだり水を掛け合ったり、こうして夜の浜辺を歩いたり・・・。丁度今日と同じような感じで・・・。」
「だから、兄さんにそっくりな俺を選んだのか?」
「そういうわけじゃないです。ただ、祐司さんを見てると、時々どうしても兄の面影が重なるんですよ・・・。この夏も実家に帰らなかったのは、兄に会うことで祐司さんとの今を壊してしまうような気がしたからなんです・・・。」
「そうか・・・。俺達、それぞれ思い出を背負って今一緒に居るんだな・・・。」

 俺はふと空を見上げる。工場もない、民家も遠いこの場所は、夜空の宝石が人工の光に遮られることなく煌びやかに輝いている。微かに天の川も見える。新年早々の宮城との遭遇から半年以上過ぎた。あれ以来宮城からは何の音沙汰もない。俺の中でようやく宮城への気持ちが綺麗な思い出だけ残して整理されたように思う。
 再び俺と晶子の間に沈黙の時間が流れる。波の音だけが、幼子をあやすようなゆったりした周期で繰り返される。聞いているだけで心が安らぐ。俺と晶子は立ち止まって、安らぎの音の源である海の方を見る。夜の海は砂浜に近付く時に波が崩れ落ちる時の白さを見せるが、それ以外は墨を流し込んだように真っ黒に染まっている。星が煌く空とは違うその色合いは、不気味ささえ感じさせる。
 ふと晶子の方を見ると、晶子は自分の左手を愛しげに見詰めている。その薬指には勿論、俺がプレゼントしたペアリングの片割れが光っている。リングは僅かな光を受けて白銀に煌いている。砂浜に零れ落ちた星のように。

「どうかしたのか?」
「この指輪を私がこの指に填めてること、嫌に思いませんか?」
「・・・照れくさいな。前にも話したと思うけど、智一が俺のを見て、晶子が同じ指に填めてるって聞いて半分錯乱したくらいだし。左手の薬指ってのは特別な位置だからな。一つの大きな絆を意味するから・・・。」

雨上がりの午後 第770回

written by Moonstone

 今度は晶子が過去を語り始める。しんみりとした口調で・・・。思えば晶子が自ら過去を語るなんて、そうそうなかったことだ。

2002/3/28

[ただいま〜!(^^)/]
 というわけで、出張から帰ってきました。相手先の仕事場の見学と内容説明をうけて、同業者なのに場所によってこんなに環境が違うのか、と実感させられました。研究室も幾つか見学させてもらって内容説明を受けましたが、狭い部屋の中に機材が詰め込まれているという状態で、さらに建物は古いしで(私の職場も結構古いですが)、厳しい条件下で頑張っているなぁと思いました。
 本務以外では今回割と余裕がある日程でしたので、夜の繁華街に繰り出したり(約4ヶ月ぶりに酒を飲みました)、某所へ行って参拝や観覧などしてきました。これらの風景(と展示物)は持参していたデジカメで撮影しましたので(本務の方でも撮影させていただきました)、整理して公開できるようであればPhoto Group 1で公開したいと思います。風景そのものは少ないから隠し部屋送りかな〜(笑)。
 今日から早速本業に復帰します。難産の仕事もかなり大詰めに近付いて来たので、帰宅時刻が後ろにずれ込む覚悟が必要でしょう。私が持つ特殊技術を投入したものですので、何としても完成させて役立ってもらいたいものです。
 夜の浜辺は波が寄せて返す音が周期的に聞こえて来るだけで本当に静かだ。勿論、浜辺の彼方此方にはカップルが居て、歩いていたり座っていたりしながら仲睦まじく談笑している。遠くに漁火(いさりび)、近くに民宿や民家の明かりが見えるくらいの暗闇は、カップルにとって絶好の愛の語らいの場だろう。

「・・・こんなこと話すのも何だけどさ・・・。」

 暫く無言で晶子と歩いていた俺は、ちょっとした決意の後に口を開く。

「こうして夜の浜辺を付き合ってる相手と歩くのは初めてなんだ・・・。」
「優子さんとは海に行かなかったんですか?」
「行ったよ。2年と3年の夏に。でも高校生だったから二人きりで行くなんてどだい無理な話だから、日帰りだった。親を騙す口実が見つからなかったしな・・・。」
「バンドの人達とは一緒に行かなかったんですか?」
「バンドの連中とは海へは行かなかった。代わりにスタジオで練習三昧の日々だった。学校の夏期講習が終ってからスタジオへ直行、なんてこともしょっちゅうだったな。・・・宮城には私を放ったらかしにして、って怒られたこともある。」
「そりゃ怒りますよ。バンドの練習も大切でしょうけど、彼女には出来るだけ構ってあげないと。」
「その分、卒業旅行では二人きりを満喫したけどな・・・。二人揃って親を騙して・・・。」

 俺の口元から小さな溜息と共に笑みが零れる。今更過去の思い出に浸ったところでどうになるわけでもないのに・・・。それに今、俺はその思い出を思い出に留めて、新しい相手と時間を共にしているっていうのに・・・。

「・・・私は・・・兄と二人で海に泊りがけで来たことがあるんですよ・・・。」

雨上がりの午後 第769回

written by Moonstone

 晶子は昼間の一件のことなどすっかり忘れたように、俺の左手をしっかりと握ってぴったりと身体を寄せている。半袖の白のポロシャツにベージュのキュロットスカートという出で立ちの晶子は、濃い目のグレーのTシャツに明るいグレーのズボンという俺の服装よりずっと夏らしい。俺は服装には無頓着だからな・・・。

2002/3/25

[またまたシャットダウンです]
 明日明後日と私が出張で不在となりますので、シャットダウンさせていただきます。今回は前回と違って泊りがけなので、多少負担は少なくなるかな・・・。ただ、明日は何時もより1時間ほど早く起きる必要があるし、万が一遅れたら完全にアウトなので、早く寝ないと駄目ですな。
 今回の出張ではデジカメを持っていく予定です。今回の出張の日程は割と余裕があるので、もしかしたら写真撮影できる機会があるかもしれません。そのときに備えて充電しておかないと、バッテリー残量を気にしながら走り回らないといけませんからね(^^;)。
 それから今日発行した「Moonlight PAC Edition」第18号では、4月1日から始まる「Moonstone Studio/芸術創造センター創立祭&さくら祭」(長い)の投稿規程を掲載しましたので、是非ご一読の上、作品を投稿してください。勿論私も積極的に作品を制作&公開しますが、こういうイベントでは皆様のお力添えが不可欠です。是非とも投稿という形でご協力いただきますよう、お願いいたします。
「潤子さんがそれなりの対策をしてない筈がないでしょ?祐司さんは余計なこと考えないで私の方だけ見てれば良いんです!」
「わ、分かった!分かったから離してくれ!」

 俺が懇願すると、晶子はようやく俺の耳から手を離す。手を離した後でも耳がじんじんと痛むが、晶子がこんなに嫉妬の感情を露にするなんて初めてなんじゃないか?それだけ潤子さんをライバル視してるってことかもしれない。

「祐司君。生憎だけど、ちゃんとサポーターを着けてるから安心して。」
「は、はい。それにしても痛い・・・。」
「ははは。祐司君。余計な心配したお陰でとんだ目に遭ったな。まあ、晶子ちゃんの言うとおり、彼女のことだけ心配することだな。」
「・・・そうします。」
「さて、四人一斉に泳いでみましょうか。」

 俺達は海に入って腰の辺りまで浸かったところで、一斉に沖へ向かって泳ぎ始める。ついさっきまで泳いでいた俺は疲れも大して感じることなく、海水を掻き分けて泳ぐ。晶子も疲れた様子はない。こうなったらマスターや潤子さんに負けるわけにはいかない。頑張って泳ぐか。この暑い陽射しの下で・・・。

 その日の夜、宿で夕食を食べた俺達は外に散歩に出た。勿論と言うか当然と言うか、宿を出るところまでは四人一緒で、それ以後はマスターと潤子さん、そして俺と晶子のペアに分かれてそれぞれ自由に夜の浜辺を散策することになった。四人一緒でわいわい楽しく、というのでも良かったんだけど、やっぱり晶子と二人きりになれるほうが良い。

雨上がりの午後 第768回

written by Moonstone

「痛い、痛い、痛い!」
「何考えてるんですか?妙な考えは許しませんよ!」
「だ、だからちょっと心配になっただけで・・・。」

2002/3/24

[眠気との戦い(1日目?)]
 昨日は朝から用事があったので何時もとほぼ同じ時間に起きて、手っ取り早く朝食を済ませて出発。戻って来て間もなく買出しの時間になったので再び出発。帰還してからようやく「魂の降る里」次回作の執筆を開始しました。
 前の休み(3/21)で半分ほど書いておいたので直ぐに完成すると思いきや、今までの内容と食い違いが内容に何度となく前の章を参照し、さらに台詞の見直しを迫られることも多々あってなかなか思うように進まず、結局完成までに要した時間は普段より1時間ほど早いだけ(汗)。前の休みの分も合わせると帰って時間がかかった計算になります。書いた後は眠気に翻弄されて、テレホタイム直前になって慌ててこのお話をしています(^^;)。夜ネットサーフィンしてて寝るのが遅かったから・・・。
 次回と次々回あたりで大きな山場を迎えることになります。一方の情勢を大きく変えると同時にもう一方の情勢を更に悪化させる可能性があります。このあたりを如何に丁寧に、緊張感を維持しながら進めるかで、「魂の降る里」の完成度が大きく変わってきそうです。さて、どうなることやら・・・。

「私も行くわ。折角海に来たんだから、海に入らないと損よね。」
「じゃあ、行くか。」
「ええ。」
「俺達も行きます。」

 俺は晶子の手を取って立ち上がる。晶子はちょっと驚いた顔をしながら立ち上がる。俺の方から晶子の手を取るのはそうそうないからな。本来は俺の方から積極的に手を繋ぎに出るべきなんだろうけど、何だかな・・・。

「四人一緒だったら、楽しさ倍増ね。」
「よし、俺も君達若い者に負けないところを見せてやろう。」
「無理は禁物ですよ、マスター。」
「ふふふ。俺の肺活量を甘く見るなよ。」

 マスターは不敵な笑みを浮かべる。その人相が災いしてかなり怖い。もっとも当の本人は欠片も意識しちゃいないだろうけど。俺達四人は横に並んで海へ向かう。マスターが近付くと人波に大きな空間ができるのは、気のせいじゃないだろう。本当にこんないかついおっさんを潤子さんが怖がらないのは不思議でならない。

「潤子さん、白い水着で水に入って大丈夫なんですか?」
「勿論よ。それとも透けるところが見たいとか?」
「あ、いや、そういうつもりじゃ・・・。」
「ゆ・う・じ・さ・ん。」

 横に居た晶子が俺の左耳をぎゅっと引っ張る。その形相がこれまた怖い。下唇をぐっと噛み締めて眉を吊り上げたその表情は、去年の俺の家の大掃除の休憩がてら出かけた喫茶店で、俺達に誹謗中傷を並べ立てたおばさん連中に見せた表情を思い起こさせる。

雨上がりの午後 第767回

written by Moonstone

「さて、俺もひと泳ぎしてこようかね。」

 マスターがコーヒーの缶を置いて、サングラスを取ってゆっくりと立ち上がる。それに続いて横にいた潤子さんも立ち上がる。

2002/3/23

[♪待ちぼうけ〜、待ちぼうけ〜]
 通常の仕事としては異常に難産な手持ちの仕事2件が、現在完全に立ち往生しています。立ち往生と言っても設計が出来ないとか分からないとかいう問題ではなく、私自身の力ではどうにもならない事情によるものです。
 1件は電圧(直流120V)を出力するデバイスが(といっても長さ10cmくらいの既製品)壊れてしまって、新しいものを注文していてそれが来るまで手が出せないからです。デバイスは完全に密封されていて、私がどうこう出来る範疇にありません。こういうのは注文から納入まで半月はかかりますからね・・・。
 もう1件は、工作工場が(フライスとか旋盤とかが置かれている材料加工専用の場所)機械の移設作業の真っ最中で機械が全く使えない状態でして、採寸を済ませたパネルを加工出来ないからです。電源配線もやり直すらしいので、来週後半くらいにならないと使えないそうです。
 暫くはデスクワークに専念するしかなさそうです。デスクワークですることといえば、来月の業務内容発表の広報紙で使う原稿くらいしかないですし、それも先に概要が出来てますからその気になったら1日で終っちゃうんですよね(^^;)。その後どうするかはその時次第、ということになるでしょう。工作工場の移設作業と手伝うという選択肢もありますが、足手纏いになりそう(爆)。

「結構長い間遊んでたわね。一旦休憩、ってところ?」
「かなり沖の方まで泳いだんで・・・そんなところです。」
「あら、二人して沖の方まで泳いで行ったなんて・・・さては何か良いことしてたわね?」
「そ、そんなことないですよ。」

 潤子さんの鋭い突っ込みに、俺は一瞬動揺を見せてしまうが何とか知らん振りをしてみせる。・・・俺のことだから多分顔に出てるんじゃないかな・・・。こういう時は知らぬ存ぜぬを通すに限る。

「潤子。若い二人が沖の方まで出かけていったんだから、何もないほうがおかしいぞ。」
「そう言われてみれば確かにそうね。」
「あっさり納得しないで下さいよ。」
「ペアリングを左手の薬指に填めてるお二人さんが幾ら弁明しても、全然説得力がないぞ。」

 マスターの言うことはもっともだ。ペアリングを填めてる場所が場所だからちょっと若い夫婦と思われても仕方ないし、実際泳ぎに出かける前に晶子に言い寄ってきた男達にも効果絶大だった。この指輪を晶子の願いどおりに左手の薬指に填めたと同時に、また一つ既成事実が出来てしまったようだ。まあ、それならそれでも良いんだが。
 ペアリングを左手の薬指に填めるようになってから、店での客の視線が明らかに変わった。何せファンが多い晶子が左手の薬指に俺と同じ指輪を填めているんだから。それに気付いた男性客、特に塾帰りの高校生集団が俺を見る目には、強烈な敵意と言うか殺意と言うか、そんな感情が篭るようになった。
 だから出来るだけ左手を客に、特に男性客には見せないようにしているんだが、ステージに上がってギターを弾くときや注文を取ったりする時にどうしても見えてしまうし、晶子に至ってはさり気ないつもりで見せびらかしていたりする。ペアリングをプレゼントしたのは早まったことだったかな・・・。

雨上がりの午後 第766回

written by Moonstone

 俺と晶子は手を繋いだまま浜辺に上がり、マスターと潤子さんが居る場所へ戻る。マスターは手を後ろで組んで横になっていて、潤子さんは長いすらっとした足を投げ出して両腕で支えるようにして座っていた。

2002/3/22

[昨日の続きです]
 何故政府与党が有事法制立法化に躍起になっているか。それにはアメリカとの関係があります。日米安保条約による日米同盟をより具体化、密接化するための「日米防衛協力の指針」(所謂「ガイドライン(=ウォーマニュアル)」を「活用」出来るよう、もっと端的に言えば日本の「周辺事態」に変化があった場合、米軍と自衛隊が円滑に活動できるようにするためです。
 「周辺」とは東アジア限定と形式上はなっていますが、拡大解釈が得意な政府与党はアメリカが軍事行動を起こした、割と手近な場所と考えているようです。アメリカがイラク攻撃に踏み切った場合、石油資源に関わる「周辺事態」の変化、と捉える可能性が高いです。アメリカが「対テロ戦争」と銘打った戦争に加担できる参戦法案(対テロ特別措置法案)もありますからね。
 仮に有事法制が立法化され、「有事」と政府与党が判断した場合(判断するのは主権者である国民ではない!)港湾、空港などの軍事利用優先、医療、輸送関係の動員が強制されます。それを拒否すると罰則が課せられるように、防衛庁が検討しています。つまり、戦争に協力することを拒否することが犯罪となってしまうのです。こんな馬鹿げた話がありますか?!憲法第9条がある国で!
 昨日お話したように、日本に有事法制など不要です。日本が攻め込まれる可能性よりアメリカが戦争を仕掛ける可能性のほうが遥かに高いことは明瞭です。こんな状況下でただアメリカと一緒に戦争をしたいがために「備え」る有事法制立法化の企てを断固阻止しなければなりません。それには何と言っても、我々一人一人が有事法制反対の声を上げることが必要です
 と思ったら、晶子の舌は直ぐに引っ込んでしまう。その代わりに俺の口に芳しい匂いの息が吹き込まれてくる。俺はその息を外の空気で満杯に近い肺に深く吸い込む。・・・成る程。晶子のしたいことが分かったぞ。俺は晶子からの域の吸入が終ると、ゆっくりと息を晶子の口の中に吹き込む。少し漏れた空気が大小の泡になって浮上していく。
 海の中でのキス、それも互いの息で呼吸するなんて勿論初めてだ。滅多に読まない小説でもこんなシーンは見たことがない。俺は晶子を抱き寄せて、その背中に両手を回す。俺の剥き出しの胸に晶子の胸が水着一枚を挟んで強く押し付けられる。その柔らかい感触が気持ち良くて、その感触をもっとしっかり感じようと晶子を強く抱き締める。んん、というくぐもった声がして、晶子の口から少し多めの息が一気に俺の肺に吹き込まれる。・・・ちょっと強過ぎたか。
 俺は少し手を緩めて晶子に息を届ける。晶子は俺の首に腕を回して少しも息を漏らすまいとする。少しして晶子から息が戻ってくる。そんな海中での息の送り合いが何度も続く。こうしていると、何時までも潜っていられそうな気がする。
 それでも少しずつではあるが、空気が口と口の隙間から漏れて往復させられる息の量が少なくなってきた。ちょっと息苦しく感じたところで俺は晶子からゆっくりと唇を離し−いきなりだと海水を吸い込んでしまいかねない−、晶子を抱き締めたまま浮力に身を委ねて水面へ向かう。晶子の腕は俺の首から離れないでいる。
 水面にほぼ同時に顔を出した俺と晶子は、肺の空気を入れ替える。晶子の息を散開させるのはちょっと惜しいが、このままじゃ窒息してしまう。両腕が俺の首に回されたままだから、晶子の顔は俺の直ぐ傍にある。鼻先同士が触れ合うくらいの距離だ。

「・・・あんなキス、初めてだよ。」
「私もですよ。前に読んだ文庫本でよく似たシーンがあったんで、折角人気の少ないところに来たからやってみようかな、って。」
「こんな遠浅のところまで俺を連れてきたのは、最初からそれが目的だったとか?人魚姫。」
「そうかもしれませんよ。王子様。」

 俺と晶子は笑みを浮かべると、少し息を吸い込んで再び海中に潜り、今度は海面すれすれのところで軽いキスを交わす。そして海面に浮上すると、晶子はようやく俺の首から両腕を離して、自然に手を取り合って浜辺の方へ泳ぎ始める。人魚姫に王子様、か・・・。御伽話の世界で仮に俺と晶子がそういう間柄だったら、溺れた俺を晶子が救ってくれたんだろうか?さっきみたいに息を吹き込むことで・・・。

雨上がりの午後 第765回

written by Moonstone

 俺の唇に柔らかいものが当たり、そっと割って入ってくる。海の中で人に見られないのを良いことにディープキスか?!俺は観念して−内心興奮していたりもするが−口を開いて晶子の下を受け入れる準備をする。

2002/3/21

[ちょっと真面目にいきますか]
 ここ数日他愛のない話ばかりだったので、今日は真面目なお話をしましょう。これは皆さんにも大いに関係のある話です。それも場合によっては罰せられる可能性すらある話なんです。
 有事法制、という言葉を知ってますか?商業新聞などでちらっとみたことがある、という方が大半ではないかと思います。無理もありません。商業新聞は派閥争いや所謂「専門家」の話に(政府寄りの旗振り役の話)ページを割いても、肝心なことにはことが寸前まで進まないと(本会議に上程されたりした時など)書かないという重大な欠点があるからです。
 この有事法制という言葉は単純に言えば、「日本が他国から武力攻撃を受けたら自衛隊や米軍の行動を優先し、国民をそれに協力させる」というものです。その可能性はあるから必要だ、と言う方も居られるかもしれませんが、それは「SAPIO」などの右翼雑誌で中国や北朝鮮の「脅威」を煽り立てているせいでしょう。では実際に日本が武力攻撃を受ける可能性があるでしょうか?答えはNOです。これは有事法制整備を企てている政府与党も認めていることです。中国や北朝鮮が日本を攻めてくるより、アメリカが「悪の枢軸」と決め付けた北朝鮮、イラク、イランやアメリカが核兵器の標的にしているそれらの国やロシア、中国などにに戦争を仕掛ける可能性の方がどれだけ高いでしょうか?少し考えてみれば簡単に分かることです。
 有事法制は今の日本には必要ないのです。世界第2位の軍事大国日本を、それも石油などの資源があるわけでもない国を何処の国がどうして攻めるでしょうか?では何故政府与党が有事法制立法化を企てているのかについては、明日お話することにしましょう。
 晶子がゆっくりと俺の方に近付いてくる。そして俺の手を取って沖の方へ向きを変えてゆっくりと泳ぎ始める。俺はそれに倣って晶子と共に沖の方へ向かって足をゆっくりばたつかせる。人魚に海の城へ連れて行かれるような感じだ。
 人の下半身が殆ど見えなくなったところで、晶子は急上昇して海面へ向かう。俺も釣られて海面に向けて急浮上する。肺に詰め込んでいた域を一気に解放して周囲を見回すと、人が大勢居る浜辺周辺がかなり遠くに見える。俺と晶子の周囲には殆ど人は居ない。二人きりになったと言っても過言じゃない。

「かなり泳いだなぁ。」
「久しぶりって言う割にはちゃんと泳げるじゃないですか。」
「まあ、苦手な方だった体育で唯一と言って良いほど人並みに出来たのは水泳くらいだったからな。身体は結構しっかり覚えてるみたいだ。」

 人気が少ない、否、殆どないこの場所は、波が身体に当たって立てる音以外は無音と言っても良い。改めて晶子を見てみると、水分をたっぷり含んだ髪が頬や首筋に張り付いていて、上から照りつける光で彼方此方が虹色に輝いている。本当に御伽(おとぎ)話に出てくる人魚みたいだ。その大きな瞳で見詰められると、何か魔法をかけられたような気分がする。

「祐司さん。」
「あ、ん?何だ?」
「もう一回潜りっこしましょうよ。」
「このまま竜宮城へ連れてってくれるとか?」
「ふふっ。そう出来たら良いんですけどね。」

 そう言って目を細めて微笑んだ後、晶子は大きく息を吸い込む。俺も大きく息を吸い込んで晶子とほぼ同時に海に潜る。マリンブルーの世界は何の音もしない。下をチラッと見れば、群青色の世界が奈落の底のように広がっている。此処がかなり深い場所だということが分かる。
 そんなことを思っていると、俺の手がぐいと手繰り寄せられる。少し遅れて身体が引き寄せられると、その先には・・・晶子の唇の出迎えがあった。俺と晶子は海の中でキスをしている。その幻想的で俄かに事実だと信じられないことに俺は目を大きく見開いて晶子を見る。晶子は目を閉じていて、何処かうっとりと陶酔しているような雰囲気を感じる。

雨上がりの午後 第764回

written by Moonstone

 俺と晶子は大きく息を吸い込んでほぼ同時に海に潜る。目を開けると異物を含んだ水が多少目に染みるが、開けていられないほどじゃない。直ぐ前には晶子が見える。長い髪が海藻のようにゆらゆらと潮の満ち引きに揺れている。人魚が居たらこんな感じなんだろうか?

2002/3/20

[笑うしかないや(^^;)]
 一昨日は気だるかった、と昨日お話しましたが、昨日は更に気だるくて、食事を済ませて暫くして眠くなってきたのでベッドの上に転がったんですが、間もなく爆睡。目が覚めた頃には更新時間は勿論オーバー、日付が変わるまであと20分少々というところでした。
 昨日は部屋を行き来したり、階段を上り下りしたり、ネジ穴が潰れた(固くて力任せにドライバーで捻っていたら潰れた)ネジをドリルで強制排除したりと、かなり体力と精神力を使いましたからね〜。それがベッドの上に横になったことで一気に疲れとなって噴出して爆睡と相成ったんでしょう。ははははは(乾笑)。
 幸い今日さえ乗り切れば休みなので、何とか仕事を進めて良い気分で眠りこけたいものです。昨日は昼間から眠くて、エンジンがかかるのに時間がかかりましたからね。パネル加工、部品実装と進めてひととおり配線終了、と行きたいところです。そのためにはすんなり早く眠れることが必要なんですが・・・更新時刻、つまりはネットに繋ぐ時間が大幅に遅れたので、これからページ巡回をしていたら何時寝られるんだろう?(とっとと寝ろよ)
 潤子さんがそこまで勧める以上、躊躇う理由はない。俺は今度は自分から晶子の手を取って立ち上がる。晶子も釣られるように立ち上がる。

「行こうか、晶子。」
「はい。」

 俺は晶子の手を取ったままビーチパラソルの影から外に出る。影が作り出す柔らかい光に目が慣れていたから、直射日光が強烈に眩しく感じる。

「それじゃ行ってきます。」
「おう、仲良くな。」

 マスターの声援(?)と潤子さんの見送りを受けて、俺は晶子の手を引いて海へ向かう。晶子は直ぐに俺の横に並んで俺に微笑みを向ける。俺は微笑みを返して、行き交う人波を抜けて歓声と共に波の音が次第に近付いてくるのを耳にしながら歩き続ける。海はもうすぐそこだ。

「きゃっ!お返しですよぉ!」
「うわっぷ!あはは、やられたなぁ。」

 俺と晶子は腰まで海に浸かるくらいの場所で海水をかけ合う。水飛沫が飛び散る度に太陽の光を受けて宝石のように輝く。そして少しひんやりした海水を浴び、晶子に海水をかけて遊んでいると、暑さを忘れてしまう。

「ねえ、祐司さん。潜れますか?」
「久しぶりに海に入ったからちょっと不安はあるけど、大丈夫。」
「じゃあ、潜りっこしましょうよ。」
「オッケー。それじゃあ・・・せーの!」

雨上がりの午後 第763回

written by Moonstone

「二人共、海へ行ってらっしゃいよ。」
「潤子さんとマスターは?」
「私とこの人はもう暫くゆっくり休んでるわ。貴方達は若いんだし、折角海に来たんだから、思いっきり楽しんできなさいよ。」

2002/3/19

[あー、眠いっす・・・]
 土曜、日曜と頑張ったせいか、昨日はどうも身体が気だるかったです。眠気が身体の彼方此方に染み付いているという感じです。本当なら今日ニュース速報で4月開始を予定している行事の速報をお伝えするつもりだったんですが、夕食と洗濯という義務的なもの以外は眠気に負けて何一つ手がつけられませんでした(汗)。明日には何とかお伝えしたいと思います。余裕がないと辛いでしょうし(意味深だな)。
 今日の更新はちょっと遅れてしまいましたが(まあ、何時間も違うわけではないですが)、これも眠気に負けてベッドの上に転がっていた為です。ネットに繋いでページを巡回しながらお話しています。こういう日に限って回線の調子が良かったりするんですよね(^^;)。普段はなかなか繋がらないところもあったりするのに。
 私の家からだと繋がりにくいページが職場からは直ぐ繋がったり、或いはその逆もあります。これってどういうことなんでしょうね?単に回線の太さや速さだけの問題じゃないような気がします。ISDNやらADSLやらで高速化するネット環境の中で、私は未だアナログモデム(だって今のメインPCのノートPC内蔵だから替えようもない)。ネット環境の改善は新しいデスクトップPCを買ってからですな。
 ・・・うーん、何だか支離滅裂なお話になりましたね(^^;)。某鈴木議員の(某になってない)答弁みたい。今週は木曜日が休みなので、それまで何とか持ち堪えるようにしないといけませんね。早く寝よっと。
 男達はマスターの迫力に相当ビビったらしく、視線をマスターに固定したままゆっくりと後ずさりを続けて、人波に隠れるように逃げていった。男達が居なくなったことを見計らって、マスターがサングラスをかけ直す。

「肝っ玉の小さい奴等だな。ちょっと睨んだだけなのに。」
「マスターのその出で立ちでサングラスの下から睨まれたら、大抵の人はビビりますよ。」
「そうか?こんなにダンディに決めているのに。」
「マスターの場合はダンディって言うよりヤクザの幹部ですって。」
「そんなに怖いか?」
「私にお呼びがかからないのは、あなたが直ぐ隣に居るからよ。」

 潤子さんに言われてマスターは首を捻る。確かに潤子さん一人だったら男共からお呼びがかかっても不思議じゃない。マスターが直ぐ傍に居るから近寄ることさえ出来ないんだろう。さっきの男達が潤子さんでなくて晶子に声をかけてきたことは果たして喜んで良いものなんだろうか?

「それにしても、ペアリングを見せつけるなんて、晶子ちゃんもやるわね。」
「折角のプレゼントですから、有効に利用しないと。」
「有効利用って言うのか?ああいう場合。」
「祐司君。さっきの晶子ちゃんの態度は賞賛されて然るべきよ。世の中、夫婦に声をかけてくる男はまず居ないけど、恋人同士だったら付け入る価値があると思ったら遠慮なく声をかけてくるものよ。」
「そうなんですか・・・。」

 潤子さんも左手の薬指に輝くリングを見ないと結婚してるなんて判らないと思うんだが・・・。やっぱりマスターの「影響力」がそれだけ大きいっていう証拠だろう。言い換えれば、それだけマスターが女性を守る術を自分なりに心得ているということか。さっきの男達、今考えてみれば話が通用しそうになかったな・・・。そういう時のためってことも考えてペアリングをプレゼントした筈なのに。俺は全然有効利用できてないな。

雨上がりの午後 第762回

written by Moonstone

 後ろから威圧感たっぷりの低い声が響く。振り返るとマスターがサングラスを少し下にずらして鋭い眼光を見せている。まさに幾つもの修羅場を潜り抜けてきたヤクザの幹部を思わせるその雰囲気に圧されて、男達はじりじりと後ずさりする。日焼けした顔が青ざめているのが良く分かる。

2002/3/18

[今回は頑張ったなぁ〜]
 トップページの更新情報のとおり、今回の定期更新では創作文芸部門3グループ、二次創作部門1グループを更新することが出来ました。何れも書下ろしです。これで創作文芸部門と二次創作部門に関しては、最近の更新日が昨年の日付であるということはなくなりました。前々から気になっていただけに、我ながらよくやったものだと思っています。
 残念だったのは昨日お話した+1の更新が出来なかったことです(体力と集中力を使い果たしたので)。これは遅くとも来週には御見せできるようにしたいと思います。昨日もお話したとおり、このページの開設3周年に関する行事の告示がありますので。あと、久しぶりの更新があったので「担当より」の内容が少々ずれた感じになってしまいましたが、これも追って更新するつもりです。
 書下ろし4本を書くのは大変でしたが、何とか予定どおり達成できて満足しています。何はともあれ、是非ご覧下さい。よろしければメールでも掲示板でも一言でも構いませんから感想を寄せてくだされば幸いです。
 色白なのは元々だ。俺は普段日焼けするような場所へ行ったり日焼けするようなことをしないし、それに日焼けすれば肌が赤くなって痛くなるのが関の山なんだから。日焼けしてるかどうかで優劣を決めないで貰いたい。

「日焼けはしてないけど、事実は変わらない。さあ、行った行った。」
「何だとてめえ、偉そうに・・・!」
「これを見てもまだ私をナンパしようと思いますか?」

 晶子が俺の左腕を取って手の甲を向けさせ、晶子も左手の甲を見せる。性格には左手の薬指なんだが。それを見て男達はギョッとする。まあ無理もない。俺と晶子の左手の薬指には同じ指輪が光っているんだから。

「け、結婚指輪・・・?」
「そうですよ。」

 否、結婚指輪じゃないんだが・・・。まあ、填めてる場所が場所だからそう見えてもそう言われても仕方ないか。俺と晶子の指輪は5月2日、晶子の21回目の誕生日祝いに考えに考えた末にプレゼントしたものだ。所謂ペアリングってやつなんだが、晶子は左手の薬指に填めて欲しいといって譲らなかったし、俺も左手の薬指に填めるようにと言って聞かなかった。まさかこんな場でそれが威力を発揮するとは・・・。

「だ、だって彼氏だって・・・。」
「夫を彼氏と言っても構わないでしょ?二人で居るんですから昔に戻った気分になってそう言っても。」
「う、うう・・・。」
「おい、そこのガキ共。諦めの悪い男は嫌われるぞ。」

雨上がりの午後 第761回

written by Moonstone

「か、彼って・・・ホント?」
「何度言えば分かるんですか?」
「・・・そ、そんな色白の貧弱男より、俺達の方が良いだろ?」

2002/3/17

[寝不足はやっぱりいけません]
 金曜日の出張前は深夜2時半に寝て6時半に起きるという強行日程だったのでやっぱり寝不足になって、夕食後に寝入ってしまって更新時刻が遅れたのは昨日お話したとおり。で、更新してから素直に寝れば良いものを、週末ということで気が緩んでいたのか、暢気に2時半頃までネットサーフィンしてしまい、昨日は眠気に翻弄されました(馬鹿)。
 布団から出たのは11時少し前。それから恒例の買出しに出かけて帰宅した後眠くて仕方がなくて、日中殆ど布団に潜ってました。蝙蝠みたいだな(^^;)。眠気がようやく消えた午後7時頃になってから動き始め、夕食を食べてから作品制作に取り掛かり始めました。その合間にこのお話をしています。
 今度の定期更新では4グループ+1の更新を目指しているんですが、いきなり暗礁に乗り上げてしまったような気がします。一応先週の週末で2グループは更新確定したので、何とか残る2グループ+1の制作をしたいところです。特に+1は、このページの開設3周年に関係する行事の告示しようと思っているので、早めにこなしたいんですが・・・。なかなか進まずちょいと煮詰まっています。果たしてどうなることやら。
潤子さんは大胆にも白の水着だし−まあ、透けないようにはしてるだろうけど−、晶子は胸のカットが目を引くビキニスタイルだし・・・男の目を引くのは当然かもしれない。
 そうしていると、数人の如何にも夏の男を気取った格好の男達がこっちに近付いてきた。愛想の良さそうな顔をして、それでいて目はぎらついているんだが、さも自然なふりを装っている。狙いはやっぱり・・・。

「はぁい、彼女。一人?」

 やっぱり晶子だった。潤子さんは隣にヤクザの幹部を思わせる風貌のマスターが居るから、声をかけたら殺されかねないと思ってるんだろう。だが、晶子は「一人」じゃない。ここは俺が毅然とした態度で割って入らないと・・・。

「ちょっと待てよ。」
「ああ?」

 俺が男達の「野望」を横から阻止しようとすると、男達は露骨に嫌そうな顔をして、喧嘩売る気か、というような目で俺を見る。此処でひるんじゃ元も子もない。第一晶子は「一人」じゃないんだから。

「その娘(こ)は俺の彼女だ。女漁りなら他所でやってくれ。」
「彼女ぉ?お前の?ははは。笑わせるぜ。全然バランスが取れてないじゃねえかよ。」
「な・・・!」
「失礼なこと言わないでくれませんか?彼の言うとおりなんですから。」

 晶子が男達を見据えて言う。その横顔は何時になく厳しい。去年の俺の家の大掃除を手伝ってくれた時、昼飯を食いに出かけた先でおばさん連中に誹謗中傷された時に見せた表情を髣髴とさせる。男達もその迫力にビビったのか、ちょっと尻込みする。

雨上がりの午後 第760回

written by Moonstone

 俺達一行は暫く無言で海を眺める。その間、当然人が目の前を行き交うわけだが、男の視線がちらちらとこっちに向いてくるのが分かる。その視線はマスターの直ぐ横に居る潤子さんと、俺と少し距離を置いて座っている晶子に交互に向けられているような気がする。

2002/3/16

[はい、活動再開です]
 2日間の出張の内容はお話してもつまらないと思いますので省略。2日目の昨日、寝るのが遅くて起きるのが早かったがために、案の定夕食後に寝入ってしまって更新時刻をオーバーしてしまいました(汗)。「ク○ヨ○し○ち○ん」で良いこと悪いことを学ばせようとするのは、なんか間違ってやしないか?と思う今日この頃、如何お過ごしでしょうか?
 さて、「ク○ヨ○し○ち○ん」など比較にならないワルさぶりを次々暴露された鈴木宗男議員、やはり離党しましたね。自民党の首脳はこぞって「英断」と評価してますが、証人喚問での証言が偽証である可能性が極めて濃厚というより明らかなのに離党でほとぼりが冷めるのを待って、後に復党、というのは(多分間違いない)自民党などでは簡単です。これが共産党だったら即刻議員強制辞職&除名でしょう。
 ことは離党で住む問題ではありません。公共事業における政官業の癒着、外交の私物化と歪曲化、「地元」優遇の行動(利益誘導)という、自民党的体質の端的な例が浮き彫りになっただけです。まして歴史的に日本の領土である千島列島はおろか北方四島の変換無用論を口にするような人物を首相特使として対ロシア外交に使ってきたわけですから(小泉現首相もその一人)、相手国の主権を踏みにじった臨時大使への身分証明票発行妨害と同様、国益を損なう重大問題です。これを究明して明らかにすることなく、離党というごまかしで幕を引こうという自民党を含む政府与党の責任は重大です。これを「英断」と評価する自民党首脳の認識の甘さは言うまでもありません。「国家の為」として沖縄や日本各地で米軍のやりたい放題にやらせ、その米軍の軍事行動に国民を「有事」の名で強制動員しようと企む勢力の正体みたり、です。
もう、どうとでも言ってくれ、というある種投げやりな気持ちと同時に、何と言うかこう・・・もっと言って欲しいという相反する気持ちが俺の心の内に存在している。こういう気持ち、宮城と付き合っていた時にも色んな場面で感じたな・・・。
 晶子はここへ来てようやく俺から離れてビーチパラソルが作る影の下に入る。俺も厳しい夏の日差しから一時的にも離れようと、晶子に続いてビーチパラソルの影の下に入る。影がある分まだましだが、日差しが作り出す夏独特の熱気はかわしようがない。まあ、これが夏なんだと言われればそれまでだが。

「お二人さん、随分汗かいてるな。」
「まあ、夏の直射日光の下に居れば汗もかきますよ。それに、それだけが原因じゃないですけどね。」
「どういうこと?」
「私と祐司さんの二人で空き缶を捨てに行ったでしょ?その塵箱の彼方此方に空き缶が散乱してたんで、私、見てみぬ振りが出来なくて祐司さんと一緒に拾ったんですよ。」
「あら、立派ねえ。やろうと思ってもなかなか出来ないものよ。」
「私一人だったらもしかしたら見て見ぬ振りしてしまったかもしれませんけど、祐司さんが一緒だったし、祐司さんも一緒に拾ってくれるって言ってくれましたから。」
「マナーのなってない奴がカッコ良いつもりでそうしてるからな。カッコ良いように見えることが実はカッコ悪くて、カッコ悪く見えることが実はカッコ良いってことは往々にしてあるもんだ。その点ではお二人さんはカッコ良いぞ。」
「・・・全ては晶子の行動力の賜物ですよ。」

 そう。俺は最初衆人環視の中で空き缶を拾うことを躊躇った。でも、晶子が拾おうと誘ったから一緒に拾った。晶子が居なかったらそれこそ、見て見ぬ振りして戻っていただろう。こういう時こそ、俺が率先して拾い始めるべきだったんじゃないかと今になって思う。・・・マスターが言ったんじゃないが、カッコ悪い奴だ、俺は。
 視線を海の方に向ける。浜辺に近いところで水着姿の男女や家族連れが水と戯れている。海水浴と言っても泳いでいる人の姿は全くと言って良いほど見かけない。まあ、これが海水浴の典型的な様子と言えばそうなんだが。
 俺は汗が染み込んだジャンパーを脱いでシートの隅に置く。晶子も暑さに耐えかねたか、同じようにジャンパーを脱いでシートに置く。晶子の水着姿が完全に衆人に疲労されたことになる。どうだ、俺の彼女の水着姿は、と自慢したい気持ちより、あまり他人に、特に男の目には晒したくないという気持ちが強い。これも独占欲だろうか?

雨上がりの午後 第759回

written by Moonstone

「二人共、なかなかお似合いよ。」

 潤子さんも笑みを浮かべながら言う。この状況を見れば、大抵の人間は俺と晶子が仲睦まじいものだと信じて疑わないだろう。

2002/3/13

[明日明後日はお休みします]
 トップページに表記してありますとおり、明日3/14と明後日3/15はMoonstone Studio並びに芸術創造センターはシャットダウンします。理由は単純、私が出張で不在になるからです。回路設計をはじめ、材料加工や(旋盤やフライスを使う)情報処理、低温技術など様々な分野における私のような技術者が全国から集う年に1回の大会に出席します。
 それは日頃の仕事内容の報告や成果、或いは失敗談やその過程で得たノウハウなどを聞ける重要な機会です。今回私は発表しないのですが、過去に3回発表していて、来年の大会では発表する予定です。本当は今回でも良かったんですが、私の持病の具合が良くなかったので見送ったんです。
 一応メールや掲示板のチェックはしますが、お返事やレスをする余裕はないのでご了承ください。シャットダウン終了後に直ぐ出来るかと言われると、ちょっと厳しいですね。15日の朝が早いので帰宅後に寝てしまう可能性が高いので(^^;)。勿論、シャットダウン中とはいっても更新されないだけで、コンテンツそのものは通常どおり閲覧できますので、何時ものようにお越しください(_ _)。

「この水着、祐司さんの前でしか見せないようにしようかな・・・。」
「そうして欲しい気持ちはあるけど・・・折角海に来たんだし、その水着よく似合ってるから、隠すのは勿体無いよ。」
「・・・似合ってますか?」
「ああ。よく似合ってるよ。」

 俺が面と向かってはっきり言うと、晶子が空いていた左腕を俺の左腕に抱きかかえるように絡めてくる。手とは違う、これまた独特の柔らかい感触が水着一枚を通して左腕に伝わってくる。その突然で強烈な「一撃」に、俺は思わず晶子から弾き飛びそうになる。

「な、何だよ、いきなり。」
「だって、似合ってるってはっきり言ってくれたから。」
「い、今は止めてくれ。周囲の視線が・・・。」
「そんなこと気にしてたら、この水着着て祐司さんと一緒に歩けませんよ。」

 参ったなぁ・・・。周囲の視線が余計に鋭さを増したような気がする。だけどまさか晶子の腕を払い除けるわけにはいかないし・・・。このままマスターと潤子さんの居る場所まで行くしかないか。でも、このままの状態で戻ったら、マスターと潤子さんに絶対突っ込まれるだろうな。ああ、嬉しいやら悲しいやら。

「おお、随分仲のよろしいことで。」

 サングラスをかけたマスターが俺と晶子を見て開口一番、予想どおりのことを言う。勿論、俺の左腕には晶子が抱きつくように腕を絡めて、その上、手を繋いでいる。こんな状況じゃあ、マスターが突っ込まない筈がないだろうな。

雨上がりの午後 第758回

written by Moonstone

 晶子が俺の手を握る手に力を込めてくる。柔らかい感触が掌全体によりはっきりと伝わってくる。

2002/3/12

[うがあ〜っ、マウスがぁ〜]
 此処暫くずっと、マウスの調子が悪いです。具体的に言うと、左右の動きは問題ないんですが、上への動きが時に反応が鈍く、時に過剰反応して、下への動きが慢性的に鈍いんです。お陰でPC起動直後の常駐ソフトを終了させる為にマウスカーソルを下へ持っていくのに苦労するし、クリック&ドラッグが思うようにいかないしで、かなり困ってます(- -;)。
 で、マウスパッドを使えるように設定したんですが、これがまた敏感過ぎてクリック&ドラッグはまともに出来ません。果てさてどうしたものか・・・。勿論、マウスはボールを(で良いのか?)含めて掃除してますよ。以前は何ともなかったんですけど、あるときを境に急に調子が悪くなったという感じです。
 職場のPCにも勿論マウスはあるんですが、それは購入依頼一度も掃除してないにも関わらず、マウスの動きにカーソルがきちんと追従してくれます。てことは、ボールの回転を感知する部分の調子が悪いんでしょうか?何にせよ、早くこの困った状態を解決したいです。
全く・・・さっきまで物珍しげに、或いは軽蔑して眺めてただけのくせに、女のことになると目の色を変えやがる・・・。そう言えば高校の時、宮城と海に来た時も周囲の視線がいやに俺と宮城に集中してたな・・・。いい女と見れば身体が疼くとでもいうのか?勝手な奴らだ。
 俺は周囲の視線が集まる中、晶子の手を引いて砂浜を歩く。視線は鬱陶しいが、それだけ晶子を連れていることが羨ましく見えるのかと思うと、ちょっとした優越感を感じたりする。全く俺は男として幸運な奴だ。相手こそ違うが、高校の時も今も、こうして人目を引く女を連れて歩けるんだから。

「さっき、祐司さんが一緒に空き缶を拾ってくれて、嬉しかったです。」

 直ぐ隣に居る晶子が晴れやかな表情で言う。

「私、ああいうのを見ると放っておけない質(たち)なんですよ。祐司さんは気が進まなかったかもしれませんけど、それでも一緒に拾ってくれて嬉しかったです。」
「まあ・・・空き缶拾ってる晶子を一人放って行くわけにはいかないしな。」
「私を一人きりに出来ないんですか?」
「出来るわけないだろ。周囲の男共が目の色変えて言い寄ってくるに決まってるからな。そんな目に遭わせるわけにはいかないし、晶子一人で空き缶を拾わせるのは気が引けるし・・・。今までも視線がこっちに集中してたから、晶子を一人にしたらどうなるか、分かったもんじゃない。」
「私も視線を感じるんですよ。私に向かってか祐司さんに向かってかは分かりませんけど、何かこう・・・突き刺さるような視線を。」
「多分両方だと思う。もっとも晶子にはその水着姿に、俺には晶子を連れてることにだろうけど。」
「・・・やっぱり私の水着、人目引きますか?」
「引くも何も・・・晶子が気付かない方が不思議だよ。」

雨上がりの午後 第757回

written by Moonstone

 俺は晶子に左手を差し出す。最初きょとんとしていた晶子だが、直ぐに嬉しそうな笑顔を浮かべて俺の左手を握る。それで周囲の視線がまた変わったような気がする。

2002/3/11

[外へ出られん・・・]
 土曜日に続いて昨日(日曜日)も作品制作に半日を費やしました。昨日は午前中眠くてベッドに突っ伏していたので一時作品制作が危ぶまれたんですが、午後1時から絶対PCの前に向かう、と決めてそのとおりに実行したところ、無事1つ作品を制作することが出来ました(喜)。出来れば先週伸び悩んだカウンターを回すべくSide Story Group 1に書き下ろしの新作を投入したかったんですが、流石に体力と精神力と時間が足りなくて見送りました。
 どうにか此処最近、休日ほぼ一日ベッドに突っ伏しているということがなくなってきて、安定した定期更新が出来るようになってきました。これは勿論良いことなんですが、作品制作で半日使うので、土曜日の買出し以外で外に出ることが出来ないんですよね(^^;)。作家の人ってこんな感じなのかなぁ、と思ったりしてます。私の場合は大体1時間で5kBくらいですけど、これって遅いのかな・・・。
 経験のある方ならお分かりかと思いますが、テキストで10kB単位の作品を制作するのはかなりしんどいことです。肩は凝るし目は痛くなるし・・・。まあ、作品1つにつき長くても30kB弱という軽さが、サーバー容量の圧迫を抑えているとも言えます。量が増えればそれなりにかさばりますが、それでも写真や絵よりは容量は少ないでしょう。その中で色々な表現や展開が楽しめる・・・。そこにテキスト作品の制作の面白さと難しさがあるんだと思います。

「そこまでしなくて良いんじゃないか?それは捨てた奴の責任なんだし。」
「それはそうかもしれませんけど、見過ごすわけにはいかないです。」

 晶子の決心は固いらしい。まさか晶子を一人置いて行くわけにはいかないし・・・。仕方ない。俺も俄かボランティアになるとするか。

「じゃあ、一緒に拾おう。」
「はいっ。」

 晶子は俺が一緒に拾おうと言ったことが余程嬉しいのか、はっきりした口調と笑顔で応える。やれやれ・・・。まあ、晶子の性格じゃ、この惨状を見て見ぬ振りすることはしないかもしれないとは思ってはいたが。
 俺と晶子は手分けして周辺の空き缶を拾う。中には相当前から放置されていたらしく、熱砂同様熱くて持ち辛いものもある。それに量も意外に多い。10個程度じゃない。固まって何個か落ちていたりするし−多分一気に投げ入れようとして失敗したんだろう−、砂が中に入って重たくなっているものもある。
 砂が中に入っているものは逆さまにして砂を出してから塵箱に放り込む。手間はかかるが砂が入った空き缶はリサイクルの時に支障を来すらしいし、晶子が居る手前手を抜くわけにはいかない、という気持ちが働く。周囲を見るとある者は物珍しげに、ある者は軽蔑の目で俺と晶子を見ているのが分かる。そいつらは俺と晶子を見て何かこそこそ話して笑うだけで何もしない。腹立たしいのは勿論だが、そんな奴らのことを気にしてたらこんなことやってられない。
 全身から汗が滴り落ちる頃になって、ようやく空き缶拾いは終った。塵箱を見ると、空き缶を拾い始める前よりかなり量が増えている。もう一度同じ量を拾ったらいっぱいになってしまうくらいだ。それだけ砂浜に放置されていた空き缶の数が多かったということだ。本当にマナーのなってない奴が多い。只捨てるだけなんだから、塵箱の真上で手を離せば良いものを・・・。

「どうにか拾い終わりましたね。」
「そうみたいだな。ふーっ、それにしても暑いな。」
「直射日光の下ですからね。一度マスターと潤子さんのところへ戻りましょうか?」
「そうだな。ジャンパー着たままじゃ海にも満足に入れないし。」

雨上がりの午後 第756回

written by Moonstone

 晶子はボランティア精神を発揮し始めたらしい。確かに塵箱周辺の様子は見るに耐えないものがあるが、何も俺や晶子がこんなところで俄かボランティアになる必要はないだろう。

2002/3/10

[書き溜めのこと]
 この日記と同時に連載中の「雨上がりの午後」は、その場その時で書いているのではなくて、予め書き溜めておいた文章の(以後、「書き溜め」)一部をコピー&ペーストしています。特に定期更新用の作品を制作する大事な時間である週末は連載を書いている余裕がないので(1つ作るのが体力と集中力の限界)、尚更書き溜めは重要なものとなります。
 今の書き溜めファイルは3代目です。3000行を区切りとしているので(流石に重いから)今日現在あと約900行ほどで4代目に移ります。それだけあれば暫く書かなくても大丈夫じゃないか、と思われるかもしれませんが、1回のコピー&ペーストで10行以上食われちゃいますし、さらに台詞以外の部分は1行がウィンドウ上で複数に跨る(大体4行か5行くらい)ので、かなり消費は早いんです。
 木曜日の夜に頑張って書き溜めを進めたんですが、いきなり「不正処理」で全部吹っ飛ばされて(一度もセーブしてなかった)頭が真っ白に(爆)。翌日金曜日の夜にCDをドーピング剤にしながら(笑)、それ以上の量を書き溜めて現在にいたります。一足早い夏のシーンはまだ続いてます。この分だとラストを迎えるのは書き溜めファイルが5代目や6代目では終りそうにないな・・・(^^;)。

「変な突っ込みしないの。それより二人とも。安心して行ってらっしゃい。折角二人一緒なんだから、仲の良いところを見せつけちゃいなさい。」
「見せつけるって・・・。」
「さあほらほら、行った行った。」

 潤子さんの後押しを受けて、俺は照れ隠しに頭を掻いて返答する。

「それじゃ改めて、行ってきます。」
「行ってらっしゃい。待ち合わせ場所は此処だから、それだけは忘れないでね。」
「はい。」

 俺は短く返答して、再び前を向いて歩き始める。俺のジャンパーの袖を掴んでいる晶子も俺に並んでついてくる。夏の日差しを受けた砂はかなり熱い。ビーチサンダルを履いてきて正解だったとつくづく思う。
 それにしても・・・さっきから周囲の視線が感じられて仕方がない。気のせいじゃない。実際に俺と晶子の方を見ている奴が居る。それも何か、羨望と嫉妬がごちゃ混ぜになったような表情で。俺は視線を気にしないようにして砂浜を進む。いちいち視線を気にしてたら身が持たない。
 5分ほど砂浜を歩き回った俺と晶子は、ようやく空き缶を入れる塵箱を見つけた。周囲には多分投げ入れようとして失敗したんだろう、かなりの数の空き缶が砂から顔を出している。全くマナーのなってない奴らだ。俺と晶子は塵箱に空き缶を入れる。そして俺が引き返そうとしたとき、晶子が俺のジャンパーの袖をくいくいと引っ張る。何かあったのか?

「どうした?晶子。」
「落ちてる空き缶、拾って塵箱に入れておきましょうよ。」

雨上がりの午後 第755回

written by Moonstone

 来た来た、マスターの突っ込みが。どうかわそうかと考え始めたとき、潤子さんがマスターの頭を引っぱたく。マスターの首ががくんと下に折れる。潤子さんが爆弾を炸裂させたか。しかし、何時見ても強力だな。

2002/3/9

[宗男疑惑は宗男だけで終らない]
 昨日の仕事は順調に進みました。半田付け作業でかなり肩が懲りましたが(^^;)。此処最近私の仕事の話ばかりしていたので、今日はちょっと視点を変えてみることにしましょう。特に労働者の方、心してお聞きください。
 2月13日の衆議院予算委員会で日本共産党の佐々木憲昭議員が暴露したことに端を発する一連の鈴木宗男議員の疑惑は、調べれば調べるほど幅も底も深くなっていっています。ここまで行政が議員の言いなりになっていたこと、出身選挙区などの業者と癒着していたことが分かって、こんなに酷いのか、こうして税金を我が物にしていたのか、とお怒りの方も居られるでしょう。
 あるいは逆に「やっぱりそうか」と思った方も居られるでしょう。私はその一人です。自民党は企業、とりわけ大手ゼネコンや大企業、出身選挙区の企業の支持と献金で行動している政党です。その中で利権の元が違うことで生じるのが族議員であり、派閥であったりするわけです。ですから私に言わせれば、こんな疑惑は自民党のみならず、企業、団体献金を受けている日本共産党以外の政党の議員の身体を叩けば必ず出て来る埃と言って良いでしょう。
 元々企業、団体献金は献金元が見返りを期待して行うものです。財界関係者もあけすけに語っています。それを廃止するから代わりに、と導入されたのが税金から捻出される政党助成金なのですが、未だ企業、団体献金はなくなりません。政党助成金は無所属議員の会派にも分配されています。
 リスナーの方、自分が支持しない政党に約250円の税金を(消費税も勿論含まれる)払う気になれますか?一人一人の額は小さくても、それが国民全体で積み重なれば何十何百億という金額になるんです。それが議席の数に応じて山分けされるのですよ。「既得権益」である企業、団体献金はそのままに、更に税金を山分けするような政党をどうして支持するですか?棄権や白紙投票で野放しにしておくんですか?これを疑問に思わないようでは、真の政治改革は夢幻(ゆめまぼろし)です。
 俺はほんの少し語気を強める。塵捨て場が何処にあるかなんて探さなきゃ分からないし、晶子と一緒にという俺の野望、もとい、希望が水の泡になっちまう。それに・・・今の晶子を一人で行動させたくない。そんな思いもある。格好が格好だしな・・・。

「晶子ちゃん。この際だから祐司君と二人で行ってらっしゃいよ。私はまだ半分以上残ってるし、ナンパ男がうろちょろしてる中に晶子ちゃんを一人で行かせたくないっていう祐司君の気持ちも察してあげたら?」

 流石は潤子さん。良いこと言ってくれる。俺が口に出来ないことを代弁してくれた。本来なら俺が率先すべきなんだろうけど。積極性のなさがまた出てしまった格好だな・・・。

「そうそう。俺は暫く此処でゆっくりするつもりだし、若い者同士仲良く一緒に海を満喫すれば良い。それに今の晶子ちゃんを一人にしたら、ナンパ男でなくても黙ってないだろうし。」
「そんな大層な人間じゃないですよ、私。」
「晶子はそう思ってるかもしれないけど、他人もそう思ってるとは限らないんだよ。」

 俺の口から思ったことがポロポロ零れだす。それもはっきりした口調で。晶子のよく言えば謙虚さ、悪く言えば実情を知らない上での自分の過小評価をこうやって面と向かって言うなんて、もしかして初めてなんじゃないか?

「それじゃ・・・一緒に行ってください。」
「ああ、そうする。」

 俺は徐に立ち上がって晶子の右横に着く。すると晶子が再び俺のジャンパーの袖をぎゅっと掴んでくる。その横顔は少し照れくさそうで、目はやや下を向いている。腕を組んでるわけじゃないのに、こうしているだけでドキドキする。何でだろう?もうキスも済ませて胸を愛撫した程仲が深まったのに。

「じゃあ、行ってきます。」
「おう、頑張ってこいよー。」
「何を頑張るんですか、何を。」
「決まってるじゃないか。晶子ちゃんのボディーガードだよ。それとも何か?もっと先のことを想像したとか?ん?」
「いや、それは・・・。」

雨上がりの午後 第754回

written by Moonstone

「俺も飲み終えたから、一緒に捨てに行こう。」
「まとめて捨ててきますよ。」
「良いから。」

2002/3/8

[うー、細かいぞぉ〜]
 最近仕事の話が続いてますが、今日もそれ関連。昨日は基板の絶縁処理と切り出し(周囲の余分な部分を切り取る)、そしてケース内部に実装するときに使う穴を開けるのと半田をつける部分の絶縁膜剥がし、その他一部の部品作りをしました。件数が多いので行ったり来たりがかなりあって、一時ぐったりしました(^^;)。
 絶縁膜剥がしというのは、先に行った絶縁処理で出来た絶縁膜の(グリーンレジストという)半田付けをする部分を剥がすというものです。これは手作業でするしかありません。さらに今回は基盤は大して大きくないのに(10×20cmくらいかなぁ)剥がす個所が軽く100を超えるので、大変でした。
 回路基板を見たことのある方はお分かりかと思いますが、この穴というのが直径2mm弱という小さなもので、それを周囲の無関係な絶縁膜を剥がさないようにしながら剥がすという細かい作業で、2時間くらいかかりました。でも、絶縁膜剥がしはこれで終わりじゃなくて、さらに部品の実装が控えてます(- -;)。この過程が機械化できたら便利なんですけどね〜。
否、気のせいじゃない。明らかに驚いている人も居れば、羨望と嫉妬の入り混じった視線を向けてくる奴も居る。どちらかと言えば前者はマスターと潤子さんに、後者は俺と晶子に向けられているんだろう。何せマスターと潤子さんの組み合わせはヤクザの幹部と女優のカップルに見えるからな。
 賑わっているといっても平日だからそれ程ゴミゴミしていない。空いていた適当な場所にマスターがビーチパラソルを立てて、さらにシートを敷く。これで場所は確保できた。マスターがクーラーボックスをシートの上に置いて蓋を開けて缶ジュースを4本、適当に取り出して全員に配分する。一先ず一服といったところか。俺はプルトップを開けてグレープジュースを一口飲む。よく冷えた葡萄の味がする液体が喉を通って胃に入り込み、じんわりと腹全体に広がるように感じる。
 暑い最中に冷たいものを飲むのはすっきりして気持ち良い。暑い時こそ熱いお茶、とかいうけれど、俺には単なる我慢大会にしか思えない。それなら何で寒い時こそ冷たい飲み物ってのはないんだ、とも言いたくなる。まあ、捻くれ者の俺ならではの言い分かもしれないが。
 やがてジュースを飲み終えて、俺はさてどうしたものか。マスターと潤子さんはまだ残りがありそうだし−酒とは違ってゆっくり飲むもんだな−、晶子はというと、缶を持ったまま海の方を眺めている。一人で缶を捨てに行くのも何だしな・・・。もう暫くゆっくりするか。慌てる必要なんてないし。
 そう思っていると、やおら晶子が立ち上がる。何か面白いものでも見つけたんだろうか?

「どうしたんだ?」
「いえ、飲み終えたから空き缶を捨てに行こうかと。」

 何だ、晶子も飲み終えてたのか。それなら話は早い。一緒に行動する口実が出来たってもんだ。

雨上がりの午後 第753回

written by Moonstone

 俺と晶子は、見せつけるように腕を組んだマスターと潤子さんの後を追って人が溢れる浜辺へ向かう。何だか周囲の視線が俺達一行に集中しているような気がする。

2002/3/7

[基板作成も楽じゃない]
 一昨日の段階で回路基板を作成できるようにデータを揃えておいたわけですが、昨日は本番とも言える作成作業に入りました。とは言っても、作成作業は機械任せなので、私は作成用のツールを取り替えたり、加工場所を変えたりするだけでした。
 ところが、作成段階で重大な欠陥が発覚。本来繋がっていなければいけないところが作成過程によって経路を寸断されて、一部が孤立状態になってしまったんです。こうなると回路は当然トラブるので(電圧が等しい位置で等しくないと動かないか妙な動作をする)やり直そうかとも思ったんですが、実装段階で手配線で結線すればどうにかなると判断して続行しました。
 その基板とは別に、暫く放置していた別の基板も作成したのですが、こちらは表と裏で別のファイルを組まないといけない上に、加工にやたら時間がかかることが判明したので、ツールを大口径のものに変えて実行したら基板を刳り貫かれてしまってアウト(爆)。データの欠陥も発覚したので、データを作り直して再度作成。出来た時には終業時間をとっくに過ぎてたそうな(^^;)。
「彼女の水着姿より他の女の人の水着姿に目が行くようじゃ彼氏失格よ。それに祐司君はそういうタイプじゃないってことは、晶子ちゃんが一番良く分かってるんじゃないの?」
「・・・。」

 潤子さんの言葉に晶子は小さくこくんと頷く。その様子が凄く可愛らしい。思わず抱き締めたい衝動に駆られる。

「さ、胸張って。折角の水着とプロポーションが台無しよ。」
「は、はあ・・・。」

 潤子さんに諭されて、晶子はようやく猫背気味になっていた姿勢を元に戻す。するとスタイルの良さと水着の大胆さが相俟って、モデルを思わせる雰囲気を醸し出す。潤子さんと比べてもちっとも見劣りしない。むしろ個人的感情の分だけ、晶子の方が魅力的に見える。
 晶子が俺の方に向かって歩み寄ってくる。何をするのか、と一瞬警戒したが−まあ、いきなり平手打ちはないだろうが−次の晶子の行動でその警戒は霧散する。晶子は俺のジャンパーの袖を右手でぎゅっと掴んだ。やや俯いているが、ジャンパーの皺は深い。それだけしっかり掴んでいるという証拠だ。それだけで胸が高鳴る。付き合い始めて約半年。それでも尚、こういう「ドキドキ感」が健在なのは良いこと・・・なんだろうな。

「よし、二人の準備も出来たようだし、海に繰り出すか。」
「そうね。さ、お二人さん。行きましょう。」
「「はい。」」

雨上がりの午後 第752回

written by Moonstone

「は、はい・・・。嬉しいです・・・。」
「折角良いプロポーション持ってるんだから、堂々と披露しちゃえば良いのよ。」
「だ、だってやっぱり恥ずかしいですし、それに・・・潤子さんと比べられると・・・。」

2002/3/6

[久しぶりだと上手くいかないもので・・・]
 通常の仕事としてはかなり難産になっている今の仕事は、ようやく配線図が完成して回路基板作成用データに変換するところまで進みました。ところが此処でトラブル続出。一気に必要な3枚の基板を作ろうとしたら、データがまともに作成されず失敗。止むを得ず1枚ごとに分割したらようやく正常なデータが出力されたので、それを基板作成機で作れるようなデータに変換しようとしたら(要は2回データ変換作業が必要なわけ)、どういうわけか穴データだけしか出力されずに立ち往生。
 別の場所に出向していて戻って来た上司に相談したら、肝心な1つの操作を(これも変換の一種)忘れていたことが発覚。その操作を行ってみたら見事に作成データがPCの画面に現れたんですが、先にプリント基板に穴だけ開けてしまっていたので、その位置にぴったり正常なデータを合わせることができないことに気付いて基板1枚お釈迦。データにも一部不具合があることが分かったので、昨日はその不具合を修正して作成用データを作るところまでで終わりました。
 思えば基板作成機を使うのは何時以来か、というほど間が開いていたので、操作方法なんかを殆ど忘れてたんですよね(^^;)。たまには動かすようにしないとこうも簡単に忘れてしまうものか、と思い知らされた日でした。
 痺れを切らしたらしい潤子さんが晶子のジャンパーのファスナーに手をかけて一気に下ろす。そこから顔を覗かせたものは・・・下の生地と同じピンク色のビキニスタイルの水着だった。それもかなり布の面積が狭い。胸を三角巾で吊るしたような水着だから、胸の膨らみが布から溢れている。胸の谷間もしっかり見える。俺は思わず生唾を飲み込んでしまう。

「潤子さん!何するんですか?!」
「ジャンパー着たままじゃその水着の意味がないって言ったでしょ?それよりほら、祐司君を見て御覧なさいよ。完全に虜になってるわよ。」
「え?」

 晶子が改めて俺を見る。その視線で俺は我に帰って改めて晶子の水着姿をまじまじと見詰める。確かに・・・よく似合っている。それにプロポーションの良さもしっかり分かる。水着の大胆さに気を取られていたが、晶子全体を通して見てみれば、そのプロポーションに相応しい水着姿だと思う。

「ほらほら祐司君。折角彼女が勝負水着で決めてきたんだから、何か一言言ってあげてやらないといかんぞ。」

 隣に居たマスターが肘で俺を軽くつつく。俺は頭を掻いて前に進み出る。だがどうも視線を晶子に合わせ辛い。合わせようとするとどうしても胸の方に行ってしまうからだ。何て言ったら良いか・・・。俺は色々な言葉を思い浮かべてその中から一つを選び出して、晶子の方を向いて言う。

「あ・・・その・・・よ、よく似合ってるな。それに・・・スタイル良いんだな。」
「ほらぁ。言ったでしょ?祐司君、絶対誉めてくれるって。誉めてもらって嬉しいでしょ?」

雨上がりの午後 第751回

written by Moonstone

「ええい、じれったいわね!」
「きゃっ!」

2002/3/5

[うーん・・・。良いのかなぁ・・・。]
 「ニュース速報」で既報のとおり、本日付で掲示板JewelBoxでのIPアドレス表示を取り止めました。IPアドレスを表示することは荒らしの襲撃を押さえる強力な手段の一つなのですが、IPアドレスが固定の方だと逆に被害にあってしまう、というご指摘を受け、本日付から表示しないようになりました。
 IPアドレスが表示されるのは怖い、という方にはこれで安心して書き込んでいただけるでしょうが、私の中では果たしてこれで良いのか、という疑念が未だ燻っています。自分の言わば「所在地」まで明らかに出来る内容を書き込んでいただくという、徹底した自己責任に基づく管理運営を考えていたので、それが人足を遠のかせていたのなら残念ですが、そこまで自分を隠さないとネット社会で行動できないのか、と訝っています。
 以前の荒らしは、匿名性と掲示板のリアルタイム性を悪用して執拗な書き込みを行い、最後には誹謗中傷の言葉が並んだというもので、私は今回の掲示板JewelBox復活の際にその教訓を踏まえて、自分を明らかに出来ない人間は立ち去ってくれ、という姿勢で臨んだわけですが・・・。それが理解されなかったとすれば残念というか、むしろ悲しく思います。
潤子さんは楽しそうにこっちに向かって手を振っているが、晶子は潤子さんの陰に隠れるようにほんのり頬を赤らめて恥ずかしそうにしているのが対照的だ。

「おう。俺もついさっき着いたところだ。祐司君は先走って待ちぼうけを食らっちまったみたいだが。」
「あら、祐司君。そんなに晶子ちゃんの水着姿が楽しみだったの?」
「あ、いや、その・・・。」
「ふふふ。晶子ちゃん、勝負水着で決めてるわよ。祐司君が悩殺されるのは間違いなしね。」 「潤子さん。あんまり誇大宣伝しないで下さいよ。」
「そのプロポーションでその水着じゃ、どうぞご覧下さい、って言っているようなものよ。」

 順子さんの陰に隠れるように立っている晶子は、本当に恥ずかしそうだ。余程大胆な水着なんだろうか?潤子さんが勝負水着という晶子の水着姿とはどんなものなんだろう?心ならずも期待が膨らんでくる。勿論表面上は平静さを保っているつもりだが・・・どうしても晶子のほっそりした白くて長い足に目が行ってしまう。その上にあるピンクの布地が妄想を、もとい、期待をそそる。

「ほらほら晶子ちゃん、前に出て出て。ファスナー開放よ。」
「ちょっと潤子さん。変なショーじゃないんですから。」
「そんなにこそこそしてたら、その水着の意味がないわよ。ほら。」

 潤子さんが晶子を前に押し出す。晶子はジャンパーのポケットに手を突っ込んで前を隠すようなポーズをしていて、いかにも恥ずかしいと言わんばかりに頬をほんのり赤く染めてこちらを上目遣いに見ている。
 しかし、晶子はファスナーを開けて水着姿を見せようとしない。そんなに恥ずかしいものなら着なきゃ良いのに、とも思うが、それだけ潤子さんの白い水着に匹敵、或いはそれを上回る大胆な水着なんだろうか、という期待が膨らむ。いっそ自分で開けてやろうか、という大胆な、否、邪な考えが頭を過ぎる。

雨上がりの午後 第750回

written by Moonstone

 潤子さんの声が背後から聞こえる。俺とマスターが振り向くと、ベージュのジャンパーを来て前のファスナーを締めた晶子と、大胆にも白のワンピースに白いジャンパーを羽織った潤子さんが歩み寄ってくるのが見える。

2002/3/4

[ぎりぎりセーフ(^^;)]
 土曜日にまさかのダウンで危ぶまれた定期更新ですが、どうにか日曜日は朝から作品制作に取り組めて、最低限の面子を揃えることが出来ました(^^;)。今回は投稿作品があるので、更にもう1グループ、ということが労せずして出来ました(コラ)。今回は時間的に厳しかったですね。次回はきちんと睡眠を取って朝から動けるようにしたいです。
 さて、今回の定期更新で久々に隠し部屋を更新してみました。内容はみてのお楽しみということで。皆様はもう見つけましたか?今はファイル名が単純明快なものではなく、入り口もかなり妙な場所にあるので、探すのはちょっと難しいかもしれません。まだの方は頑張って探してみて下さい。隠し部屋に行くには最低2クリック必要ということがヒントです。

「おいおい祐司君。何をぼうっと突っ立ってるんだ?」

 不意に背後から声がかかる。見ると明るいブルーのトランクスの水着と、白地に背中に英文が書かれたジャンパーを来たマスターが立っていた。意外にも筋肉質な身体と髭面にサングラスという出で立ちは、半径3メートル以内に人を近付けない迫力を持っている。その手には銃・・・では勿論なく、ビーチパラソルとクーラーボックスがある。
 勿論俺もトランクスの水着を着て、マスターと同じように淡いブルーのジャンパーを着ている。着替えを先に済ませて勢い良く外に出たまでは良いが、そこから先どうすれば良いか分からずに、前もって待ち合わせ場所に決めておいたとある海の家の傍に突っ立っていたというのが実情だ。マスターの登場に驚くと同時にほっとしたのは間違いない。

「女性陣は・・・まだみたいですね。」
「女は着替えるのに時間がかかるもんだよ。日焼け対策もしてるだろうし。まあ、心配しなくても井上さんの水着姿は拝めるから。」
「な、べ、別にそんなことは・・・。」
「とか何とか言いつつ、実際は楽しみなんだろ?」

 マスターがにやつきながら俺を突っついてくる。一応否定はするものの、初めて見ることになる晶子の水着姿が楽しみなのは事実だ。あと、潤子さんの水着姿との「競演」も期待していたりする。

「お待たせー。」

雨上がりの午後 第749回

written by Moonstone

 柳ヶ浦に程近い民宿に宿を取って、2泊3日の海水浴に来た・・・は良いが、高校以来風呂以外まともに水に浸かったことがない俺は少々不安だ。一応かなづちではない筈だが、時の流れは俺の運動中枢から水に浮くことを奪い去ってしまっているかもしれない。

2002/3/3

[あ、あかん。まさか土曜日に・・・]
 今までは土曜日には何ともなくて日曜日にダウンするのが通例だったんですが、昨日はその通例を外れて、日中の大半をダウンしてしまいました(汗)。定期更新直前で重要な時だっていうのに・・・。
 この症状、どうやら睡眠不足がかなり絡んでいるようです。金曜日の夜に寝るのが遅かった(A.M.3:00頃)のと、A.M.7:30頃に目が覚めてそれ以降買出しにでるA.M.10:00頃まで寝ては間もなく目を覚まし、を繰り返して満足に寝られなかったんです。そのせいで起きるのも辛くて、一仕事終えたらもう疲労感がピークに達してベッドに倒れこみました。
 今飲んでいる睡眠薬、効き目は割と強い筈なんですが、飲み続けてきたために耐性が出来てしまったのかもしれません。かと言って睡眠薬がないとまともに眠れないので、今日がすっきり目覚められるかどうかにかかってます。早く寝るのも大事なんですが、中途覚醒しないことが一番重要なんですよね。これは運というか自分でコントロール出来ないのが嫌なんですが・・・。
 あ、そうそう。昨日背景写真についてお話したんですが、昨日身体が動くうちに梅の花を撮影して差し替えました。背景写真を月始め以外で変えるのは初めてなんですよね。如何でしょうか?
 勿論、このことは俺と晶子二人だけの秘密だ。こんなことをばらしたら、智一は錯乱しかねないし、マスターや潤子さんは格好の冷やかしのネタにするに決まってる。でもそう思う一方でばらしてみたいなぁとも思ったりする。こういう気分になるのも幸せな時間の中に居るという証拠だろう。
 晶子は通い婚だと言った。俺は同居への既成事実の積み重ねの一つだと思った。どちらも正しい表現だろう。やってることはまさにそのものなんだから。ただ一つ相違点を挙げるとすれば、セックスという行為がないことだろう。だが、それがなくても今は充分だ。何れ時が来ればそういうことになるだろう。そこからそれだけの関係にならないようにしていかなければいけないという、意外に難しい問題があるんだが・・・まあ、それもなるようになるだろう。今は沿うとしか思えない。
 通りを勢い良く走っていくと、俺の家があるアパートが見えてきた。一旦家に帰って服を着替えて、改めて出発だ。こうしてまた、平凡にして平穏な日常が始まる。さあ、今日も張り切っていこう・・・。

 波の音が耳に届いてくる。高くから降り注ぐ日差しが眩しい。ざわめきや歓声が彼方此方で起こっている。時は流れて早7月下旬。勿論晶子の家への「通い婚」状態は続いている。今俺は柳ヶ浦に居る。去年の冬、足と推測に任せて晶子と訪れた海水浴場だ。あの時とは違い、白砂には大勢の人で溢れている。あの時はなかった屋台や海の家も活気いっぱいだ。
 そもそも今、こうして柳ヶ浦に来ることになったのは、1週間ほど前の「仕事の後の一杯」の席上でマスターがこう話を切り出したことが発端だ。

夏だし、一度海に行こうか。

まあ、夏と言えば海を連想するのは不思議じゃない。しかし、店を3日間も臨時休業にしてまで本格的に繰り出すことになるとは、最初は想像だにしなかった。だが、来年になると進路を決める時期に入ることで夏休みだからといって遊んでいる状況にないかもしれないだろうから行ける時に行っておこう、というマスターの事情「解説」にすんなり納得して今に至る、というわけだ。

雨上がりの午後 第748回

written by Moonstone

 心なしか足が軽い。これから毎週月曜日、こうして晶子と時を同じくできる。そう思うだけで心が軽く感じる。朝靄(もや)がまだ晴れ止まぬ通りを軽快に自転車で駆け抜ける。頬に感じるほんのり温かい風が心地良い。

2002/3/2

[背景写真裏話]
 今月の背景写真はご覧のとおりタンポポです。この写真、昨日復活させた掲示板JewelBoxの背景写真と同じなんですが、本当は梅の写真にしたかったんですよね。ただ、梅の写真が1枚もなくて用意が間に合わなかったこと(1週間前は月が変わることにさえ気付いてなかった)、春が1日も早く来ることを願って春らしいものを、ということで選んだんです。
 掲示板JewelBoxの背景写真は最初からタンポポの写真にすることに決めてました。含まれる部署が(まあ、大まかなジャンル分けですが)丁度Dandelion Hill、つまりタンポポが名前に含まれるので、WordSpheresの背景写真が晴れの日の空の写真なのに対してより部署に近いものにしようと思って選んだんです。
 問題だったのは文字の色合わせ。あの写真、様々な色が混じっていて文字の色合わせが難しくて、最終的に今の色に落ち着いたのですが、管理用の画面の色合わせがこれまた大変で、結局TDタグにBGCOLORを多用することになりました。最終調整と言っていたのは、実は大半が色合わせだったんですよ。
 晶子はズボンのポケットから鍵を取り出して鍵を閉めると−準備がいいなぁ−、俺の左腕に手を回して心底嬉しそうな表情で俺に尋ねる。

「どうでした?通い婚第一回目の感想は。」
「そりゃ・・・幸せな時間だったさ。」
「私も。」

 晶子はそう言ってかかとを上げる。その直後、俺の左頬に熱い点が出来る。・・・これじゃ本当に新婚さんじゃないか。俺は思わず周囲を見回すが、幸にも人は居ない。女性専用のマンションでさっきの様子を見られたら、どんな目で見られるか分かったもんじゃないってのに・・・晶子の奴、本当に大胆だな。
 俺と晶子は並んでエレベーターに乗って1階に辿り着く。ロビーに出たところで晶子はようやく俺の左腕から手を離して、そのまま出入り口へ向かい始めた俺に向かってにこやかに言う。

「いってらっしゃい。気をつけて。」
「・・・ああ。行ってくる。」

 俺が晶子に向かって小さく手を振ると、晶子はそれに応えて小さく手を振る。俺は何度も前と後ろを向きながら、名残惜しさを感じつつ外に出る。ちらっと振り返ると、晶子は笑顔を見せつつ手を小さく振っている。俺は小さく手を振って、名残惜しさを振り払うように前を向いて少し急ぎ足で自転車置き場へ向かう。
 振り返ってみればあっという間だった。でも幸せな時間だった。一緒に食事をして音楽に親しみ、身体を寄せ合って一緒に寝た・・・。これが幸せでなかったら何が幸せなんだろう?付き合い始めてから一気に俺と晶子の距離が近くなったように思う。以前はこんなことになるなんて欠片も思いはしなかったのに・・・。まったく、人も状況も時間が経てば変わるもんだとつくづく思う。

雨上がりの午後 第747回

written by Moonstone

 俺は再びギターを背負ってアンプと鞄を持って玄関へ向かう。その後を晶子がついてくる。俺が靴を履くと何時の間にか靴を履いた晶子がドアの鍵を開ける。俺はドアを開けて先に晶子を外に出してから続いて外に出てドアを閉める。

2002/3/1

[お待たせしました!掲示板JewelBox復活です!]
 前回の閉鎖から約半年。月も新たになった今日、掲示板JewelBoxを復活させました。今度はレスポンズの面で多少なりとも改善が見られるはずです(回線が混んでいる時はもたつくでしょうが)。使い方はよくあるタイプのものですので、使用に際して戸惑うことはまずありえないと思います。
 それにしても、今日は随分忙しい更新準備でした(^^;)。背景写真の選定、変更や掲示板JewelBox開設に伴うTotal Guidanceの紹介文追加や内容の変更、ニュース速報の更新など、定期更新前を思わせる忙しさでした。それでもどうにか無事に更新が完了したので、ひと安心しています。
 折角掲示板を設置したのに書き込みがないと寂しいですので、一言でも構いませんからメッセージを残して欲しいというのが本音です。ルールさえ守ってもらえればどんなことでも結構です。作品のご感想、ご意見は勿論、それとは全く関係ない雑談も歓迎しますので、リスナーの皆様も是非ご利用ください。

「あー、すっきりした。」
「そうでしょ?そう言えばタオルはどうしました?」
「これ、使わせてもらったけど・・・拙かったか?」

 俺が洗面台にかかっていたタオルを手に取ってちょっと引き気味に尋ねると、晶子は首を横に振って何故か嬉しそうな表情を浮かべる。

「全然。歯ブラシは別としてもタオルや櫛は共用ですよ。その方が一体感があって嬉しいですし。」
「一体感・・・ねえ。」
「だって夫婦や恋人同士だったら洗面台のタオルや櫛を共用してても不思議じゃないでしょ?」
「まあ・・・そうだな。」
「祐司さんもこれからのために、家で新しい歯ブラシを用意しておいて下さいね。」

 おいおい、それって自分が俺の家に泊まりに来た時のために準備しておけってことか?・・・口に出すまでもないか。歯ブラシ1本約200円。それで晶子が気兼ねなく泊まれるなら安いもんだ。

「ああ、そうしておくよ。」
「これから出かけるんでしょ?外まで見送りますよ。丁度洗い物も終りましたから。」

 晶子は本当に新婚間もない妻みたいな振る舞いを見せる。でも悪い気はこれっぽっちもしない。俺自身、晶子にそうして欲しいと思っているという無意識の欲求の表れだろう。

雨上がりの午後 第746回

written by Moonstone

 何時も夜寝る前と同じ調子で歯を磨いて、コップに水を注いで口の中を濯(すす)ぐ。数回濯いだ後洗面台にかかっていたタオルで口を拭って歯磨き終了。確かに口の中がすうっとして気持ちが良い。ついでに顔も洗わせて貰って髪に櫛を何回か通す。やっぱり一人で迎える朝とは気分的に全然違う。

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