芸術創造センター こぼれ話
Dropped talk of Performing Arts Center

2002年7月1日更新 Updated on July 1st,2002

2002/7/31

[感動と不安]
 何時以来でしょう?寝始めてから途中で目覚めることなく起床時間に起きれたのは(感涙)。薬の力もあったことは否定出来ませんが、今まで最強と言われる某睡眠薬(その他持続剤みたいなものもある)すら最長4時間(最短2時間)で効果を破られるのが当たり前だっただけに、ぐっすり寝られてすっきり目覚められたのは嬉しかったです。
 その一方、一向に改善の気配がないのが左手首の痛み。物を持つだけで痛かったり、何もしなくても痛かったりして、仕事は勿論(PC使うのが当たり前ですからね)、日常生活やページ運営にも支障を来しています。メールのお返事やこのお話や連載を書くにも、手首の負担が少ないデスクトップPC付属のテキストエディタにファイルを移して(メインPCのと同じテキストエディタがどうしても強制終了してしまう)作業して、メインPCに戻してコピー&ペーストしているという有り様です。面倒なことこの上ない(- -;)。
 今日朝一番で精密検査を受けに行きます。果たしてどんな診断結果が出るか・・・。長期間通院するような酷いものでないことを期待するしかありません。また採血されるのかな・・・。あれ、する人によって痛みの差が大きいから上手い人にやって欲しいんですが、これは運次第ですね。でも私、運悪かったりするんですよね(爆)。
「ふーん・・・。意外と少ないんだな。もっと居るもんだと思ってた。」
「文学部は3年になったら少数のゼミ形式になりますから、それで丁度良いくらいなんですよ。」
「俺達工学部は3年になった10人から20人くらいずつ2年までの成績と希望で各研究室に仮配属になって、4年になったら3年までの成績と希望で本配属になるんだ。定員オーバーの場合は成績優先。」
「じゃあ、3年まで油断出来ませんね。」
「まあな。俺は学科での付き合いが少ないから、配属されたい研究室は自分で調べないといけないし、兎に角成績だけはしっかり取っとかないといけないな。親からは4年分の学費と月10万の仕送りしか用意出来ない、って念押しされてるから、留年なんてもっての外だな。まあ、俺だって留年は御免だけど。」
「バイトして生活費稼いで、音楽のアレンジやデータ作りや練習とかして、その上成績優秀でないと大変なことになるなんて・・・祐司さん、大変ですね。」
「ま、一人暮らしをするって言い出したのも、理系は厳しいっていうことを承知で入試を受けたのも俺自身だからな。それくらいは覚悟の上だよ。」
「無理して身体壊さないで下さいね。祐司さんはこの世に一人しか居ないんですから。」
「ああ、分かってる。前みたいに晶子に余計な手間かけさせたくないしな。」

 俺は元座っていた場所に戻って晶子の肩に手を回す。すると、晶子は俺に凭れかかってくる。・・・何だかドキドキしてきた。二人きりになるなんて初めてでもないし、珍しくも何ともないのに・・・。観覧車という場所が普段の時とはまた違う雰囲気を醸し出すんだろうか?
 空が少し黄金色を帯び始めている。もうすぐ夕暮れ時だろう。夕暮れ時だったらもっと良い雰囲気になれたかもしれないが、今でも十分良い雰囲気だと思う。晶子の髪から漂って来る甘酸っぱい匂いが鼻を擽(くすぐ)り、意外なほど華奢な身体を抱き寄せていることが、余計な飾り言葉を必要としない気分を作ってくれる。

雨上がりの午後 第888回

written by Moonstone

「へえー。多いんですねー。文学部は、私がいる英文学科、東アジア文学科、現代日本文学科、古代日本文学科、フランス文学科、イタリア文学科、スペイン文学科、ロシア文学科、欧州文学科の9学科あるんですけど、定員は何処も50くらいですから、全部合わせても500人居るか居ないかってところですね。」

2002/7/30

[労働者の現状とマスコミの乖離]
 新調した寝具は流石に寝心地良いです。うっかり横になると直ぐに寝てしまいそうで怖いです(^^;)。ただ、バランスが感ぜんに崩壊している自律神経を戻してくれませんでしたが、いきなりは無理な話でしょう。薬を2年以上飲み続けても尚、「かなり(自律神経を)やられてますね」と言われるくらいですから。
 無謀無策極まりない小泉「構造改革」とそれと連動する企業の首切り、労働強化で、私のように自律神経のバランスを崩す人は確実に増えています。中高年の自殺が多いのもその一例です。言ってみれば、余程強力な労働組合を持っている職場に居るか、そうでなくても恵まれている環境の職場に居る人でない限り、労働者は誰でも私のようになる可能性があります。マスコミがこのことを問題視しないのは、余程恵まれている職場環境だからでしょう。だから労働者の痛みが分からない。弱者の気持ちが分からない。こんなマスコミはとっとと見限るべきです。
 私が「魂の降る里」(Side Story Group 1で連載中)でマスコミの無遠慮な取材攻勢や評論家の発言などでマスコミ批判を展開しているのは、今のマスコミがジャーナリズムの精神を投げ捨て、権力に擦り寄っている姿を読者に知って欲しいからです。数々のタブーを持ち、批判精神を忘れたマスコミに制裁を下すのは、消費者であり、主権者である我々国民です。憲法と平和が脅かされている今こそ、我々はマスコミに対して不買運動を起こすべきでしょう。そうでもしないとマスコミは自分の状況を理解出来ないでしょうから。
「カップルと観覧車には密接な関係があるからな。短い時間だけど誰にも見られない小さな空間で一緒に居られるから。」
「そうですよね。誰にも見られませんものね。」

 晶子は俺の言葉を待っていたかのように笑顔を浮かべる。晶子も同じ考えだったのか・・・。智一と一緒に乗ってないことと合わせて、俺も何となく心弾む感じがする。二人で始めて乗る観覧車・・・。順番が回って来るのが楽しみだ。
 30分ほどして俺と晶子の順番が回ってきた。カラフルにカラーリングにされた観覧車に、俺が晶子の手を取る形で乗り込む。ゆっくり斜め上方へ進む中ドアが閉められ、俺と晶子は縦横2mあるかないかの閉鎖空間で二人きりになった。
ゆっくりと上昇して行く中、俺と晶子は向かう合う座席の片側に並んで座り、それぞれ眼下に広がる光景を眺める。俺が座った方向は林の中に民家が点在する程度で注視するようなものはない。市街地の方を見ている晶子はどうなんだろう?

「祐司さん、見て下さい!大学が見えますよ!」

 晶子が興奮気味に言って窓の外を指差す。俺は席を立ってドアに向かう形で、晶子が指差す方向を見る。だだっ広い敷地に点在するマンションのような建物の数々。あれは間違いなく俺と晶子が通う新京大学の全景だ。歩くとどれくらい時間がかかるか分からない広さを誇る大学の敷地も、此処から見るとミニチュアみたいで何だか面白い。

「文学部はあの辺ですね。祐司さんがいる工学部はどの辺りですか?」
「えっと・・・。生協の六角形の建物から右に、団地みたいに並んでる建物があるだろ?あの辺だよ。」
「ああ、ありますね。建物多いですねー。学科っていくつあるんですか?」
「確か・・・俺がいる電子工学科と電気工学科、機械工学科、分子工学科、建築工学科、情報工学科、微小材料工学科だから、7つか。定員は全部で1000人以上だって聞いたことがある。」

雨上がりの午後 第887回

written by Moonstone

「ええ。伊東さんには失礼ですけど、あの時観覧車に乗る機会がなくて良かったと思ってます。観覧車には好きな人と一緒に乗りたいですから・・・。なんて、ちょっと乙女チックですね。」

2002/7/29

[寝具新調]
 私は睡眠リズムの崩壊に悩んでいます。最強といわれる某睡眠薬をもってしても4時間くらいしか連続睡眠できず、そのくせ昼間や帰宅後にもの凄い睡魔に襲われてかなり辛い思いをしています。それに加えて左手首の痛みがあるのですから、たまったものではありません。
 せめて睡眠くらいまともに、と思っていた矢先、睡眠には寝具に問題がある場合もあるということを知り、思い切って寝具を新調しました。普通のブランド物ではなくて、特殊な構造をもつ身体に優しいものです。
 勿論値段はそれなりにかかりましたが、初の分割払いにして月々無理のない範囲で払えるようにして、早速寝具を敷いて横になったのですが、説明どおり非常に楽に感じられて、身体がほんのり温かくなり眠くなくても少しして眠りに落ちるところまで行きました(インターホンに叩き起こされましたが)。
 このコーナーをご覧いただいている頃には、多分初めての本格的睡眠に入っていると思います。腰痛も出てきたので、気持ち良く寝られれば良いんですが、果たしてどうなることやら・・・。
 観覧車への乗降口には行列が出来ていた。その大半がカップルだ。夕暮れ時にはまだ早いとは言え、やはりこの大観覧車から見える景色は爽快なんだろう。行列は今までのアトラクションの中で群を抜いて長い。恐らく2、30分は待たなきゃならないだろう。
 だが、急ぐ理由は何もない。のんびり待っていればいずれ順番は回って来る。観覧車はゆっくりではあるが一定の速度で回っているんだから。俺は晶子と手を繋いで少しずつ前へ進む行列の中に居る。
 こんな時に何故か思い出すのは宮城とのデートのことだ。宮城はジェットコースターとかの絶叫ものが好きな一方、観覧車も好きだった。夕暮れ時を狙って絶叫ものでふらふらになった俺を引っ張って行列に並び、観覧車に乗って茜色に染まる街並みを見るのが大のお気に入りだった。俺も気を取り直しながら宮城と一緒にあそこがどうだ、とか言って景色を楽しんだもんだ。
 今、俺の隣には宮城じゃなくて晶子が居る。そういえば・・・晶子は観覧車が好きなんだろうか?それに・・・智一と来た時に乗ったんだろうか?ちょっと後者が気になる。・・・ちょっとじゃないな。正確に言えば。

「なあ、晶子。」
「何ですか?」
「こんな事聞くのも変だと思うけど・・・前に智一と此処に来た時、観覧車に乗ったのか?」

 俺の問いに晶子は首を横に振って答える。

「乗りませんでした。そもそも此処に居た時間は午前中の2時間くらいだけで、食事は外の高級レストランへ連れていってもらいましたから。・・・緊張しっぱなしで全然味は分からなかったですけどね。」
「じゃあ、観覧車は初めてなわけか。」

雨上がりの午後 第886回

written by Moonstone

 夏空に浮かぶ光の球がかなり西に傾いた頃、俺と晶子は観覧車へ向かった。ひととおりのアトラクションを楽しんだ後、俺が観覧車に乗ろうか、と持ち掛けたら晶子は二つ返事で承諾した。

2002/7/28

[めっちゃ痛い・・・(泣)]
 ニュース速報を読んでいただいた方はご存知かと思いますが、血液検査の結果、筋肉が炎症を起こしている可能性が高いことが分かりました。今後の治療は整形外科に移ります。
 で、痛む左手首に負担がかかるキーレスポンズが良くないメインPCでの作業を控え、キーレスポンズが軽快な旧PC(デスクトップ)で作業をしていたんですが、やはり長年染み付いた手の配置は思うように直らず、左手首はキーを叩く度に痛みが走り、途中で湿布を貼り替えたものの、痛みが持続するようになってしまいました。
 久しぶりに30kB超の作品を書き上げた代償は大きかったです。現在痛み止めの薬を飲んでいるんですが(勿論飲み合わせを回避したもの)まったく効果なし。このコーナーはメインPCで作業しているんですが、痛みはかなり酷いです。このままだとページ更新が厳しくなりそう・・・。メールのお返事もままならないし、早く治したいです。しかし、災難続きだな、本当に・・・。
そして自分の兄に似ているという理由で晶子に追い駆けられるようになった。でもそれが始まりになって、今の俺と晶子の関係がある。本当に未来の賽なんてどう転ぶか分からないもんだ。

「それに変な気を使ったりしなくて良いから、気軽で良いよ。」
「変な気?」
「ほら、食事はこういう場所じゃなきゃ駄目とか、服装はこうしなきゃ駄目だとか、晶子はそういうことをあんまり気にしないタイプだから、こうして遊園地で遊んだり話をしたりすることに集中出来るだろ?普段着付き合いっていうか・・・自分を取り繕ったり装ったりする必要がない付き合いが出来るから良いんだ。」
「それは私も同じですよ。服を選んだりアクセサリーに凝ったりしなくて良いから、一緒に居られることそのものを楽しめるんです。それが本当に気軽で幸せで・・・。祐司さんと私って、似た者同士ですね。」
「まさか、俺に似たタイプの彼女が出来るなんて思わなかったな。」
「聞くべきじゃないと思いますけど・・・宮城さんはそうじゃなかったんですか?」
「割とこだわるタイプだった。デートなんだからもうちょっとお洒落に気を使ってよ、って言われたこともある。まあ、それも最初のうちだけだったけどな。多分諦めたんだと思う。」
「そうですか・・・。」
「ま、それも所詮思い出。今、こうして晶子と飾り気なしで一緒に居られることが幸せだよ。この幸せを大切にしたい。今思うのはそれだけさ。」
「私も。」

 晶子は笑顔で俺の肩に凭れてくる。俺は思わず晶子の肩を抱く。本当に和やかで幸せだ。辛い出来事も未来に生きてくるなら、経験しておくべきなのかもしれない。今が幸せだからそう思うだけなのかもしれないが。

雨上がりの午後 第885回

written by Moonstone

 俺は幸運の女神にそっぽを向かれているのか見守られているのか、よく分からない。永遠に続くと思っていた宮城との関係は、双方の思いのすれ違いがあったとは言え、電話を会して呆気なく崩壊した。

2002/7/27

[ははは。何が『公の意識』だ!(4)]
 では、「公の意識」とやらを唱える中央教育審議会のメンバーや、かつて権威に威勢良く抗していながら、自分の著作を読んでいるという右翼論客の口車に乗って権威の側に回り、「パブリック・よしりん」と自身を称したり戦争論とやらを声高に唱えるようになった小林よしのりら右翼軍国主義者らが、いざ日本有事、となった場合真っ先に戦争の最前線に飛び出すか?答えは「ノー」です。彼らは「お国のために戦え」「お国のために死ね」と安全圏で旗を振って叫ぶだけで、実際に戦争に放り込まれたり戦争の被害を真っ先に被るのは「公の意識」とやらを植え付けられた国民なのです。そしてそれに反対するものを「非国民」呼ばわりする。これは先の太平洋戦争、アジア侵略戦争で実証済みです。
 こんな「公の意識」とやらの押し付けには断固反対、抵抗しなければなりません。右翼軍国主義者らの言うがままにしておいたら、日本は再び戦渦に巻き込まれます。今度はアメリカの尻を追うという形で。先の戦争でも右翼軍国主義者らはいけしゃあしゃあと生き延び、再び勝手に侵略妄想に溺れて憲法の条文をアメリカの意向どおりに(自分達の意向でもある)捻じ曲げて自衛隊を作り、日米軍事同盟(日米安保条約)を結んだのです。そしてPKO法などの「階段」を着々と作り上げて戦争への扉へ向かおうとしているのです。
 その一方、かつての侵略戦争に唯一文字どおり命がけで反対し(当時の治安維持法で「国体の変革を狙う者」への最高刑は死刑だった)、有事法制に明確に反対している政党が日本共産党なのです。マスコミは今国会の「ムネオ汚職」追及など、よほどのことがなければ日本共産党の言動を報道しません。「アカ」呼ばわりされて右翼の街宣車に囲まれたり、権力の側からの情報がもらえなくなったり、広告主の企業から広告収入が入らなくなるのを恐れているからです。こんなマスコミの流す情報などWebページや立ち読みで充分。右翼軍国主義の台頭やマスコミが報道しない法案の実情を知るには「しんぶん赤旗」を読みましょう。(おわり)
「・・・やっぱり祐司さんは見た目で全てを決めつけない人なんですね。」
「ん?」
「こういう時にこう言うのも何ですけど・・・伊東さんは凄く意外に思ったんです。見た目から想像するにストローを使ってゆっくり飲む、って思い込んでたみたいで・・・。」
「智一はああ見えて結構ロマンチストだからな。清楚な深窓のお嬢様を晶子にイメージしてたんだろう。ま、それも見た目で決め付けていたことには変わりはないけどな。」
「やっぱり祐司さんと来れて良かった・・・。」

 晶子は心底嬉しそうに微笑む。余程言い寄られるのが嫌だったんだろうな。見た目で決め付けられるのは、良い場合は窮屈だし、悪い場合は不当に思うだけ、ってわけか。俺もそれは分からないでもない。

「祐司さんって、意外に女の人にモテたんじゃないですか?」
「いや、その逆。連戦連敗さ。ようやく手にした初勝利もあえなく幻になっちまったし・・・。」
「祐司さんが目をつけた女の人って、余程人を見る目がなかったんですね。こんなに思いやりがあって真面目で誠実な人なのに・・・。」
「褒め過ぎ褒め過ぎ。褒めたって何も出ないぞ。」
「いいえ。絶対人を見る目がなかったんですよ。接してみれば分かることなのに・・・。その女の人達も見た目で何もかも決めつけるタイプだったんですよ。」「まあ、見た目はこのとおりショボいからな。仕方ないさ。」
「あ、御免なさい。そういうつもりで言ったんじゃ・・・。」
「いや、分かってるから良いよ。それより今、俺を高く評価してくれる存在が傍に居るから、それで十分。」

 ルックスが特別良いわけじゃない。背も高い方じゃない。自分の勲章になりそうもない、多少人より成績が良い程度だった男を彼氏にしたいとはそうそう思わないだろう。そう思われても仕方がない。晶子の言葉を借りれば、見た目で全てを決め付ける人間の方が圧倒的に多いんだろうから。
 晶子も俺が兄に似ているという理由で追い駆け始めた。そういう意味では晶子も見た目で俺を追うと決めたと言って良いだろう。でも晶子は、俺が兄と違うことを知って俺から離れることはなかった。俺の中身を−俺自身は晶子のあげた「長所」を全然意識してなかったが−見て俺への気持ちを変えた。兄にそっくりな男から好きな男へと・・・。

雨上がりの午後 第884回

written by Moonstone

「ああ何だ、そのことか。最初はちょっと驚いたけど、別に気にならないよ。女だからストローを使うべき、なんて言うつもりは毛頭無いし、それにこういう氷がある飲み物は、氷と一緒に飲んだ方が今日みたいな暑い日は気持ちが良いだろう?まあ、俺の個人的な考えだけど。」

2002/7/26

[こういうのを一般にはドタキャンと言う]
 遅くなってすみません。連載を書き溜めたところで安心したのか、急に眠くなってきて、何時の間にかA.M.0:00を過ぎていました(汗)。昨日使った手法、即ち旧PCで書いてメインPCに移動するという手段が、旧PCのご機嫌斜めで(どういう条件でもセーブしようとするとエディタが強制終了する)やむなくメインPCで書くことにしました。
 メインPCは起動こそ早いのですが、キーレスポンズがかなり悪くてただでさえ負担のかかる左手首にもキーを何度も強く叩く振動が伝わってなかなか書けず、連載の書き溜めだけでかなりの時間と体力を使ってしまいました。それで居眠りして遅刻してしまったので、今日から再開するつもりだった主張を延期することにしました。
 左手首の容態は芳しくありません。今日血液検査の結果が出るので、それを見て今後の行動を決定します。ひたすら痛みが消えるのを待つか、整形外科へ行くか、或いは・・・。兎に角、明日からは主張を再開するつもりです。今しばらくお待ちください。
「互いの思惑の違いが俺と晶子を結びつけることになるなんて、考えてみりゃかなり珍しいことだな。」
「そういうのもあって良いんじゃないですか?」
「そうだな。」

 俺と晶子は顔を見合わせて笑みを浮かべる。最初の頃は物凄いストーカーに付き纏われて、挙げ句の果てには離れようにも離れられないところにまで追い込まれた自分の境遇を恨んだもんだ。でも、そういう過去があったから今の俺と晶子の関係があるんだよな。世の中、何がどう転ぶか分からないもんだ。
 昼食を食べた後、俺と晶子は再びアトラクション巡りをした。この新京フレンドパーク、思いの外広くてアトラクションも豊富だ。自分の通う大学の近辺にこんなスポットがあったなんて本当に意外だ。まあ、晶子が居なかったら此処に来ることはなかっただろう。宮城の短大が休みの土日は俺はバイトだから、一日フルに遊ぶなんて出来なかっただろう。
 流石に広大な敷地を歩き回るのは疲れるので、俺と晶子は近くのベンチで一休みすることにした。ベンチに腰掛けてオレンジジュースを飲む。ストローを使うのは鬱陶しいから、俺は細かい氷と一緒に直接口に運ぶことにした。
 すると、晶子も同じくストローを使わずに氷と共に直接飲み始めた。ちょっと驚いたが、ティータームで後片付けの時に残りの紅茶を一気飲みするところを時々見ているから、俺は幻滅したりはしなかった。第一、ペットボトルでは直接飲むのにストローが付いていたらそれを使わなきゃならないなんて法律はない。

「・・・驚かないんですか?」
「何を?」
「私がストローを使わないで氷と一緒に飲むこと。」

雨上がりの午後 第883回

written by Moonstone

「ええ。それで祐司さんは他の男の人とは違う、下心なしで女の人と接することが出来る男の人だと思ったんです。それが凄く新鮮で嬉しくて・・・。それが私の中の祐司さんの位置づけを変えることになったんですよ。兄の代りじゃなくて、安藤祐司っていう一人の男の人だ、って。」

2002/7/25

[やっぱり今日もお休み]
 左手首の痛みは一向に良くなる気配がありません。とうとう医者(とりあえず内科にした)に駆け込んだんですが、内科的には異常の可能性は少ないという所見。一応念のために血液検査をしてもらってリューマチなどの可能性がないかどうか確かめてもらうことにしました。懸案事項は潰しておけるだけ潰しておいた方が良いですからね。
 で、今メインで使っているノートPCだとタイピングの時に左手にかかる負荷が大きいので、久しく放置していたデスクトップPCを起動して、ファイルをコピーしてそこでこのお話や連載を書いてメインPCに戻して更新、というちょっと面倒な手段を取ることにしました。デスクトップPCのキーボードの場合、左手は小指を支点にしてそこから担当範囲のキーへ移動するので、手首にかかる負荷が圧倒的に少ないんですよ。
 問題なのはPCの性能の格差。メインPCは職場のPCと比べると流石に劣るとはいえceleron(周波数忘れた)、対するデスクトップPCは初代Pentium130MHx。その差は歴然です。まあ、テキストを作る分には大して支障はないですから、暫くこの方法で行こうと思います。
 あの時は本当に精神がささくれ立っていた。目に映る何もかもが薄汚い灰色にしか見えなかった。だから晶子の気持ちを少しも考えようとせず、こいつは俺を傷つけようとしている、と一方的に決めつけて跳ね除けていた。今にして思えば大人げないというか、みっともない真似をしたと思う。
 それでも晶子は、こういうと語弊があるが、俺にしつこく食らいついてきた。バイト先にまで食い込んできた。そしてなし崩し的に音楽を教えることになって、俺が初心者に対するものとしてはあまりな厳しさで接しても、一言も弱音や不満を言わずに食らいついてきた。何故そこまで、ただ自分の兄に似ているというだけの俺に食らいついて来るのか分からなかった。
 でもやがて、俺の中で何かが変わり始めた。晶子が単に俺を自分の兄の代りに使用としているんじゃないことに気付いた。そして何時の間にか晶子を好きになっている自分に気付いた。今の俺と晶子の関係は、晶子のお陰で成立していると言っても良いだろう。

「・・・人間、見た目や第一印象が全てじゃないよな。接してみて初めて肝心の中身が分かるんだよな。俺はそれに気付くのが遅すぎたけど。」
「遅すぎてなんかないですよ。祐司さんがそれに気付いたから、今私とこうして一緒に居るんじゃないですか。」
「そう・・・だな。」
「祐司さんは私を見た目で立ち居振舞いとかを決め付けないで、女としてじゃなくて人間として接してくれたと思ってます。女だから優しく、とかいう似非フェミニズムなしで、音楽を教える相手として接してくれた・・・。私はそう思ってますし、それが嬉しかったです。妙な先入観を持って接して来る男の人が多くてうんざりしてましたから・・・。」
「あの当時の俺は男と女の区別なんてつかなかったし、つけられなかった。それが、晶子にとっては良かったわけか・・・。」

雨上がりの午後 第882回

written by Moonstone

 あの時は本当に精神がささくれ立っていた。目に映る何もかもが薄汚い灰色にしか見えなかった。だから晶子の気持ちを少しも考えようとせず、こいつは俺を傷つけようとしている、と一方的に決めつけて跳ね除けていた。今にして思えば大人げないというか、みっともない真似をしたと思う。

2002/7/24

[すみません。今日もお休み]
 左手首は痛いわ猛烈に眠いわで、意識が朦朧としています。左手首の痛みは昨日より悪化して、何もしなくても重い痛みが走ったり少し曲げたり捻ったりしただけでも痛いです。今は塗り薬タイプの湿布を塗ってガーゼで固定しています。
 そんなわけで(キーレスポンズも異様に悪いし)お話も連載も当面短く済ませます。本格復帰は7/27付更新になると思います。それまで暫くお待ちください。

「やっぱり男の人って、女の人の見た目で全てを決めるものなんですか?」

 視線を感じたのか、晶子が少々迷惑そうに声を潜めて問い掛ける。内容が俺にも関わるだけに、ちょっと答え辛いな・・・。

「まあ・・・大きな要因ではあるのは確かだな。それは女だって一緒だと思うけど。」
「ええ、そうは思います。だけど、それで全て決め付けちゃうのはどう思いますか?」 「それは・・・俺が言うのも何だけど、踏み込み過ぎだな。よく言うだろ?『綺麗な薔薇には刺がある』って。全部が全部そうじゃないけど、決め付けてかかると刺にやられるだろうな。」
「祐司さんは、最初に私を見た時、どう思いました?」
「思い出してみても・・・第一印象は『何だ?この女』だな。顔を見合わせたら晶子が驚くもんだから、何で驚かれなきゃならんのだ、って訝る気持ちしかなかった。丁度・・・ふられた直後だったし。」
「改めて私を見たときはどう思いました?」
「客観的に見て美人だな、とは思った。でも、あの頃は精神がささくれ立ってたから、何で俺に付き纏うんだ、ってくらいしか思わなかった。」

雨上がりの午後 第881回

written by Moonstone

 周囲の視線が俺達に注がれる。否、正確には男の視線が晶子に注がれる。そして俺を見て残念そうに視線を戻すのが分かる。晶子が一人だったらきっと声をかけようか、と様子を伺うんだろう。気持ちは分からなくもないが、彼女持ちの奴まで目を輝かせるのはどうしたものか。

2002/7/23

[また一休み]
 連日更新時刻がずれ込んですみません。実は私、先週の金曜日から左手首の痛みに悩まされているんです。医者に診てもらってないので断定は出来ませんが、多分腱鞘炎だと思います。
 私はキーボードをブラインドタッチで叩いているんですが、その際、左掌の下側をPCの空きスペースにおいて(自宅のPCはノート型なので)それを支えにしてキーを叩くので、手首を捻ると痛みが走る今はかなり辛いです。
 今お話している頃は何もしなくても痛い上に、キーを叩くとその振動が手首に伝わって余計に痛いです。職場では湿布を巻いて痛みを和らげてはいますが、生憎自宅の湿布では直ぐに剥がれてきてしまうので放置状態です。もう暫く様子を見て痛みが引かないようなら医者へ行くつもりです。
 そんなわけでキーボードが思うように叩けないので、お話や連載を書くのに一苦労しています。居眠りしてたのが最大の原因ではありますが、あまり長い文章は書けない状態なので、連載などが短くなりますのでご了承ください。

「これからどうします?」
「そんなに人は居ないみたいだから、ゆっくり歩いて面白そうなものに乗ろう。時間はたっぷりあるし。」
「そうですね。今日は大学もバイトも考えなくて良いんですよね。」

 晶子は嬉しそうに微笑んで俺の肩に擦り寄ってくる。人目も気にせずに大胆と言うか積極的と言うか・・・。まあ、悪い気はしない。好きな相手にこうされて嬉しくない男はそうそう居ないだろう。何と言っても腕に女特有の柔らかい感触を感じられるしな・・・。これも男の性というやつか?
 それから俺と晶子は、二人共苦手な絶叫もの以外のアトラクションを手近なところから楽しんだ。絶叫ものでなくても意気投合できる相手となら何でも良いと思う。晶子も笑顔が消えないし、それだけでも気持ちが良い。
 昼前になったところでアトラクション巡りを一旦止めて、腹ごしらえをすることにした。最寄の案内図を見ると・・・飲食店は中央部に集中しているのが分かる。これだけあると目移りするが、兎に角行ってみないことには始まらない。俺は晶子を連れて−相変わらず腕を絡めている−中央部飲食店エリアへ向かう。

「何か食べたいものあるか?」
「私は好き嫌いないですから、祐司さんの好きなところで良いです。」

 俺の好きなものと言えば・・・焼肉とかピザとかこってりしたものなんだが、それ以外でも大抵のものは食べれる。焼き茄子だけは絶対御免だが−あれは食べる気がしないどころか見るのも嫌だ−、それを除けば選り取りみどりだ。
 飲食店エリアをひととおり見て回って、無難な喫茶店風の店を選んで中へ入る。かなり店内は混み合ってはいるが、待ったり相席をする必要ななさそうだ。俺と晶子は店員に案内されて壁際の席の一つに案内される。

雨上がりの午後 第880回

written by Moonstone

 俺がそう言うと、晶子は俺の左腕にぎゅっと腕を絡ませる。いきなりの「攻撃」に俺の心拍数が急上昇する。初めてでもないのにどうしてこうも緊張するんだろうな・・・。まだ慣れてないせいか?

2002/7/22

[ははは。何が『公の意識』だ!(3)]
 君が代も国歌に相応しくありません。元々君が代は「古今和歌集」に収録された、親しい人の長寿を願う歌でしたが、明治政府が「君」を「君主」即ち天皇のことと決め付け、法律などの裏付けなしに、天皇の時代が末永く続くよう願う意味を持つ国歌として国民に押し付けたものです。ですから国旗国歌法案が成立するまで、日本は法律の根拠を持つ国旗も国歌も持ってはいなかったのです。
 戦後の日本国憲法で主権在民の原則が打ち立てられた以上、天皇の時代の末永い繁栄を願うと解釈されてきた君が代が国歌に相応しくないのは明白。しかし、国旗国歌法案の審議において時の小渕首相が「『君』は日本国および日本国民統合の象徴であり、その地位が主権の存する日本国民の総意に基づく天皇」を指すと言った以上、君が代を国歌とする右翼勢力が天皇中心の国家作りを目指していることは明らかです。
 血塗られた歴史を持つ日の丸と日本国憲法を否定する君が代の何れも国旗国歌に相応しくないのはお分かりでしょう。しかし、憲法改悪を狙う右翼勢力は手始めに教育基本法を改悪し、国民を上から統制し、天皇を崇める戦前同様の国家作りを学校から推し進めようとしているのです。(つづく)。

「男の人に払わせるなんて、今時流行らないですよ。」

 晶子の厚意を−本人は当然のことと思っているようだが−受け取って、俺は自分の分2000円を取り出して大人2枚分のチケットを受け取る。そして晶子にチケットを1枚手渡して、入場門でチケットのもぎりを受けて入場する。
 中は思った以上に様々なアトラクションが詰まった、遊園地らしい風景だ。そんな中、歓声とも悲鳴とも付かない声と轟音を伴って白いジェットコースターが疾走していく。俺が見た時は逆さになっていた。今から早速、晶子があれに乗りたいと言い出したらどうしようか、と頭を悩ます。

「私、ジェットコースターは苦手なんですよ。」
「え?」
「ジェットコースターに限らず、所謂絶叫もの全体が苦手なんです。気分が悪くなりますから。」
「あ、そうなのか・・・。」

 不謹慎だが、俺は内心ほっとする。これで怖い思いをする必要はなくなったわけだ。幾ら何でも好きな相手の前でみっともないところは見せたくないからな・・・。でも、事前通告するあたりは晶子らしいな。

「祐司さんはどうですか?ああいうの。」
「ちょっと情けない話だけどさ・・・俺も苦手なんだよ。何かただ掴まってるだけで精一杯っていうか、そんな感じでさ・・・。」
「ちっとも情けなくないですよ。好き嫌いや得手不得手は人それぞれですから。それより祐司さんがそういうの好きだったらどうしようかって不安でしたよ。」
「それならそれで、事前に聞くさ。まかり間違っても楽しむ場所で嫌な思いはさせたくないからな。」

雨上がりの午後 第879回

written by Moonstone

 窓口で順番が回ってきた俺は、二人分の入場料4000円を出そうと財布を出す。その時、横から千円札2枚が差し出される。横を見ると晶子が微笑みながら千円札を差し出している。

2002/7/21

[ちょっと一休み]
 難い話が続いたのでここで一息。昨日、某所の花火大会へ行って来ました。帰省以来の遠出です。勿論私一人でですが何か?ま、それは別として(笑)巨大な大輪や派手なスターマインが入り乱れてなかなか爽快でした。最後の大掛かりなスターマインの火の欠片が向かい風を受けて客席(って言っても地べたに座ってるだけ)に飛び込んできて、ちょっとパ二くった人も居ましたが。
 で、花火はP.M.9:00前に終わり、大混雑の駅を無視してひたすら歩きました。昨年は迂闊にも最後の方で道を間違えてしまって終電ギリギリという失態をしてしまったので、今度は道路表記とバス停に忠実に歩き(昨年の失態は道路表記の裏をかいたつもりが裏をかかれた(^^;))、無事目標の駅へ到着。約1時間20分休みなし。まだまだ自家用車は必要ないようです。
 帰宅が11時を過ぎていたので、夕食は即行で作れるもので間に合わせてこのお話をしています。連載の書き溜めが殆ど底をついているのでこのお話が終わってから書きます(爆)。連日更新時刻が遅れてすみませんが今日は大丈夫でしょう。・・・多分(汗)。
 線路を潜り−今まで気がつかなかったが道路が線路下を潜るようになっていた−、バスは軽快に走る。俺は晶子から手を離して財布を取り出し、小銭入れの部分から100円硬貨2枚を取り出す。晶子もズボンのポケットから財布を取り出して200円を取り出すと、財布を仕舞って俺の腕に掴まる。俺は財布を仕舞って近くの吊革を握る。バランスを崩して転んだりしたら迷惑だし、それこそ物笑いの種になる。
 途中幾つかの停留所で止まって走ること15分ほど。巨大な観覧車が見えてきた。あそこが新京フレンドパークか。どんなアトラクションが待っているやら。ジェットコースターは正直御免被りたい。あれに乗ると怖くて目を瞑っているしかない。宮城は俺とは逆でそういうのが大好きで、最後の方で俺はフラフラになったこともあるしな・・・。
 観覧車が次第に大きくなってくると、周囲が俄かに慌しくなる。運賃200円を用意してるんだろう。俺と晶子は予め用意してあるし、出口も近いから200円を運賃箱に放り込んでさっさと出れば良いだろう。

「間もなく終点、新京フレンドパークです。お忘れ物のないようにご注意ください。」

 ワンマンバスらしい女性の声でのアナウンスが流れる。バスは緩やかな斜面を登って駐車場に入る。そして程近いところにあるターミナルで減速しながら180度方向転換して、屋根のある降車場に止まる。
 そして出口のドアが開く。前の方に居る俺と晶子は直ぐに出る順番が回ってきたので、それぞれ200円ずつ運賃箱に放り込んでバスを降りる。観覧車が間近に聳(そび)え立っている。あの頂上から見る景色はさぞかし良い眺めだろうな・・・。
 俺は晶子に腕を掴まれながら入り口へ向かう。まだ開園間もない時間だと思うが、意外に入場口は混み合っている。長蛇の列、とまではいかないにせよ、結構な混み具合だ。まあ、学生は夏休みだし、その関係で人が多いんだろう。人が居ない遊園地はかえって不気味だ。

雨上がりの午後 第878回

written by Moonstone

 少ししてその乗客は乗るのを諦めてバスから下がる。それを見ていたかのように−多分バックミラーに映っていたんだろう−、ドアが閉まります、というアナウンスが流れてドアが閉まる音がする。そしてゆっくりと動き始める。

2002/7/20

[ははは。何が『公の意識』だ!(2)]
 (昨日の続きです)前にもここでお話したと思いますが、ボランティアを点数化して入試や就職に有利にしたり、公共施設利用料金の割引など、実質ボランティアを義務化しようという動きがあります。これも「公の意識」とやらの一環でしょう。本来自主的、自発的な思考に委ねられるべきものを飴と鞭を使って上から強制しようとする辺り、全体主義、国家主義を是とする右翼勢力らしい薄汚いやり口です。
 で、そういう国家(つまりは自分達のことと錯覚している連中を含む)に幼少時から奉仕し、忠実に仕える意識を植え付けために、日の丸君が代が押し付けられるわけです。国旗国歌法案では国旗を日の丸に、国歌を君が代とすると定めているだけで義務の文字は一つもありません。しかし、文部科学省が学習指導要領という形で教育現場に押し付けているのは事実。卒業式などで君が代を歌わない教師を処罰したりするなど、右翼勢力の意図は見え見えです。
 そもそも日の丸君が代は右翼勢力のシンボルであり、同時に奴らが崇める皇室とそれの派生神話で持って繋がる神社のシンボルです。日の丸はアジア侵略戦争の際に文字どおり旗印となり、多くのアジア人民を苦しめ、殺害したという血塗られた歴史を持っています。戦時中のドイツが鍵十字の旗と日の丸は同じ歴史を持っているのです。これはどうあがこうが変えられない事実です。ドイツが戦後国旗を変えたと同様、日の丸は戦後の国旗に相応しくないのです。(つづく)

「今日は俺と行くんだからさ、思う存分楽しもうな。」
「・・・はい。」
「晶子が申し訳なく思う必要は何処にもないぞ。つまらん意地張って晶子を智一とのデートに走らせたのは、他ならぬ俺自身なんだから。」
「・・・祐司さん・・・。」
「それより、俺は今日が初めてだからさ。時間はかなり経ったけどそれなりに覚えてるだろ?面白いアトラクションとか案内してくれよ。」

 俺が言うと、晶子はようやく微笑みを浮かべて小さく頷く。やっぱり晶子にはこういう表情がよく似合う。それに今から遊園地に行くんだ。通夜や葬式に行くんじゃない。楽しくいかないとな。
 少し待っているとバスがやってきた。中からは殆ど人が降りてこない。どうやらこのバスは新京フレンドパーク直通じゃなくて、普通のバスと同様停留所が幾つかあるらしい。こう言っちゃ失礼だが、見たところ60、70の老人が朝早くから新京フレンドパークで遊んでいたとは思えない。
 前方のドアから乗客が降り終わると、今度は中央部のドアが開いて、そこから行列がバスに吸い込まれていく。整理券が必要なタイプかと思ったら−実家周辺のバスがそうだった−前の乗客が整理券を取る様子はない。俺と晶子は続いて乗車する。前を見ると「運賃200円」とある。どのくらい距離があるか知らないが安価で終点まで行けるんだから結構お得だ。まあ、距離が短い乗客には割高になるだろうが。
 乗客が入ってくるにしたがって車内が混み合ってくる。俺は晶子の手を引いて前の方に移動する。こうすれば降りる時も早いし後の乗客の邪魔にならないし、良い考えだと割れながら思う。・・・大したことじゃないが。

「間もなく発車します。扉付近の方、ご注意ください。」

 やや営業的なアナウンスが流れる。後ろを見ると、乗客が人垣に阻まれているみたいだ。全体を見たわけじゃないから確証は持てないが、恐らくこれ以上は入らないだろう。諦めて次のを待った方が賢明だと思うが・・・。

雨上がりの午後 第877回

written by Moonstone

 如何にも申し訳なさそうに下を向いた晶子の手を握る。晶子は少し驚いた様子で俺を見る。

2002/7/19

[ははは。何が『公の意識』だ!(1)]
 7/16に中央教育審議会が教育基本法見直しの骨子を示しました。そこでは国際性と日本人としてのアイデンティティー(伝統、文化の尊重、郷土愛、愛国心)、個性の伸長と創造性の涵養(かんよう)、社会の形成に主体的に関わる「公の意識」、自律心、規範意識を第1条に入れることを打ち出しています。
 一見もっともらしいことを言っていますが、右翼政権お抱えの審議会が言う「愛国心」や「公の意識」など、要は国(皇室を含む)を愛せよ、社会に奉仕せよ、という上からの押し付けに過ぎません。事実、このような意識を教育基本法に盛り込むことを提言してきたのは「新しい教育基本法を求める会」であり、それの中心メンバーと侵略戦争否定、愛国心高揚を求めるグループ(「新しい歴史教科書を作る会」など)と同じです。
 更に、「新しい教育基本法を求める会」が森首相(当時)に提出した要望書には、伝統とは「皇室を国民統合の中心とする社会基盤」としています。その一方で歴史教科書を「祖先を侮辱するような記述」と非難しています。結局今回の骨子は、民主主義教育を否定し、戦前の天皇絶対体制を支える国民を育成しようというものに他なりません。(つづく)
 人波の大半はその「新京フレンドパーク」の表示があるところで止まり、先着順で自然に行列が出来る。俺と晶子はやや後ろの方になってしまったが、多分次ので乗れるだろう。乗れなかったら次のを待てば良い。

「なあ、晶子。」
「はい?」
「俺も今の町に住むようになって1年以上経つけど、よく遊園地がこんな近くから行ける場所にあるなんて知ってたな。情報誌か何かで知ったのか?」

 俺が問い掛けると、晶子は何か言い難そうに視線を逸らす。どうしたんだろう、と思っていると、晶子は言い難そうに言う。

「実は・・・新京フレンドパークへ行くのは今日が初めてじゃないんです。」
「初めてじゃないって・・・誰と行ったんだ?」
「祐司さん、覚えてますか?祐司さんと私が伊東さんからのデートの誘いを受けたことで喧嘩した時・・・。」
「ああ、覚えてる。」
「ええ。で、その時、丁度祐司さんが熱を出して寝込んでいた伊東さんとのデートで最初に連れて行ってもらったのが新京フレンドパークだったんです。」
「あ、なるほど・・・。」

 そういえば、俺が朝から寝込んでいたあの日は、晶子が智一とデートに出かけたんだったな。俺は夜に晶子が俺の家に駆け込んでくるまでどういう経緯があったのか知らないが、新京フレンドパークがその舞台の一つだったのか。謎というほどのものじゃないが、俺が知らない間に何処に行っていたのか分かって、ちょっと安心した。

「すみません。祐司さんにそのことを話さないままつれて来てしまって・・・。」
「何も謝ることないだろ。あの日晶子は智一とデートに行ってたんだから、その時新京フレンドパークに行ってたとしても不思議じゃないじゃないか。」
「・・・そう・・・ですね・・・。」

雨上がりの午後 第876回

written by Moonstone

 人波に混じって歩いていくと、「新京フレンドパーク」という表示が見えてきた。確かF1が開催される某所でも最寄の駅からバスが出ているくらいだから、晶子が言うように大きな遊園地なら、同じようにバスが出ていても不思議じゃないよな。

2002/7/18

[変な癖]
 今日はどうにか居眠りしなかったので、ゆったり気分でお話してます。その代わりというかかなり眠いので、誤字脱字の方はご容赦願います。一応チェックはしてるんですけどあまり当てになりませんからね。ハハハハハ(笑うな)。
 さて、今日のキャプションである変な癖ですが、それは気がついたら奥歯を噛み締めているというものです。その前は気がついたら舌先を軽く噛んでいたというものでしたが、舌は危険だからということでどうにか直したら歯に来ちゃいました(^^;)。
 この妙な癖、ふと気付くとそうなっていたというものなので、気付いた時には結構な力で噛み締めていたりします。これはこのお話をしているときだけでなく、作品制作や連載の書き溜めの時、更には仕事のときにも発生します。歯を噛み締めるのは歯を痛めることになるので直したいんですが、何でこんな癖がついてしまったのか謎です。以前はイライラした時などに爪を噛む癖が合ったんですが、これもストレス絡みかな?歯医者の世話になる前に何とかしたいです。

「それじゃ、行こうか。」
「ええ。」

 晶子は嬉しそうな笑顔を浮かべる。やっぱり晶子はこういう表情がよく似合う。悲しんだり落ち込んだりしてる様子は、何分感情がストレートに表に出るから、見てて辛いんだよな・・・。見ている方まで悲しくなってくるから。

 朝飯を終えて晶子が洗い物を済まし、二人揃って歯を磨いた後、そのまま駅へ向かった。例によって例の如く、俺が運転する自転車の後ろに晶子が乗るという形で。途中俺の家に立ち寄り、定期券を持って再び出発。折角の定期なんだから使わなきゃ損だ。勿論、晶子もちゃっかり持っている。
 改札を通って普段使うホームの一角に立つ。学生諸氏は夏休みだが社会人の夏休みはまだ早い。家族連れもパラパラ居るが少数派だ。普段の通学時より明らかに少ないホームにはやはり友達集団とカップルが目に付く。向かい側のホームには鞄を持って賑やかにしている友達集団やカップル、そして若干の家族連れでかなり混み合っている。多分柳ヶ浦へ向かうんだろう。
 少しして電車が来た。降りる人が居なくなったのを確認してから乗り込む。もっとも降りる客は少ない。座席には空白が目立ち、俺と晶子はドアに近い座席に並んで腰を下ろす。間もなく自転車が動き始める。最寄の駅らしい大学最寄の駅まで10分。普段は混み合って苦痛だが今日は心理的にも余裕がある。
 やがて電車は大学最寄の駅のホームに滑り込む。そこで俺と晶子の他、複数の友達連れやカップルが降りる。やっぱりこの駅で間違いないみたいだな。それにしても・・・この駅からそんな遊園地に通じてるなんて思わなかった。意外に地理的に恵まれた場所に住んでるんだな。俺と晶子は。
 改札を出て普段利用しないバスターミナルへ向かう。さっき降りた人の多くがそっちへ向かっているから多分バスターミナルの何処かに新京フレンドパークへの発着場があるんだろう。

雨上がりの午後 第875回

written by Moonstone

 何で場所を知ってるのに、行き方は知らないんだ?情報誌か何かで知ったのか?そう考えるのが妥当か。まあ、それが行く行かないを決定する要因にはなりえない。行き方が違っていたら諦めるか誰かに聞くかすれば良いことだ。

2002/7/17

[今日もちょっと遅刻(^^;)]
 毎日きっかり11時半近傍にチェック入れている方以外は分からないと思いますが、今もネットに繋いで巡回しながらこのお話をしています。多分今日の分(つまりはこれ)もA.M.0:00近い時間になると思います。サボり癖と言うか居眠り癖と言うか、そういうものが出来てますので・・・。疲れやすい身体が行動を邪魔するんですよね。
 初期の段階ではこんな症状はなかったんですが、所謂「薬が合って安定期」になった頃から噴出してきました。うーむ・・・。薬の副作用なのか、病気が治る過程でこうなるものなのか分かりません。何にせよ、行動の邪魔になるのには変わりないですから何とか良くなって欲しいです。
 仕事の分担も決まり、初めての作業も加わることになって慌しくなってきました。まあ、以前にも何度か作ったものなので気分的には楽です。あの配線の複雑さだけはどうにも我慢ならないんですが・・・。仕方ないですね(^^;)。

「今日、どうします?」

 晶子が尋ねてくる。そういえば昨日今日と晶子の家に泊まることは約束してあったが、それ以外は何も決まっていなかったりする。まあ、昨日は昼過ぎに帰ってきたし、旅行の疲れも残ってたから此処に居たが、大学もバイトも休みというこの機会を家でゴロゴロ、なんていうのはちょっと勿体無い気がする。

「そうだなぁ・・・。買い物は?」
「今日は特に買うものはないんですよ。」
「かと言って一日歌の練習、ってのも何だしなぁ・・・。どこか遊びに行ければ良いけど、場所知らないしな・・・。」
「あの・・・。良かったら新京フレンドパークへ行きませんか?」
「新京フレンドパーク?」

 何だか何処かで聞いたことがある名前のような気がするが・・・そんな場所があるなんて今日この場で始めて知ったな。名前からして遊園地の類だろうけど、なかなか興味がそそられる。遊園地自体、行くのが何年ぶりかってくらいだからな。

「ええ。大きな遊園地ですよ。一日じゃ遊びきれないくらい大きな場所なんです。・・・何時か、祐司さんと一緒に行きたくて・・・。」
「遊園地か・・・。それも良いな。遊園地なんて何時以来だろう?」
「多分、大学最寄の駅からバスが出てると思うんですけど・・・。」

雨上がりの午後 第874回

written by Moonstone

 俺と晶子は唱和して食べ始める。勿論、食前の茶の一口は忘れない。家じゃ専ら水だけど、いきなり食べるよりスムーズに胃に入っていくような気がする。

2002/7/16

[うう、きついなぁ・・・]
 連載の書き溜めが先週末に完全に底をついてしまいました。よって今は此処のお話とあわせて書いている状態です。これは思いの外大変でして、此処のお話の量によっては更に書き足さなければならないこともあります。元々執筆速度が遅い私には、2kB程度の連載を書くのに最低30分はかかります。
 おまけに昨日みたいに食事の他に洗濯やら材料の仕分けなんかがあると疲れて寝てしまい(前々から言っているように、私は非常に疲れやすい体質)、時間前に慌ててこのコーナーを仕上げてアップしているという有様。よって更新時間が後ろにずれることが多々あると思いますので、その点はご了承願います。
 うっかり寝てしまったがために、倉木麻衣が歌う「ダークエンジェル」のエンディングテーマが聞けなかったのが(終わる直前を見計らってチャンネルを変える奴)悔しい。まあ、先週の金曜日、「あたしンち」を見るべく急いで帰宅してTVを点けたらプロ野球のオールスターやってた時のショックよりはまだましか(^^;)。
食器は既にあるからそれは良いとして、重い思いをしてまでリビングの小さなテーブルでくっついて食べようとしなくても・・・。まあ、別に構わないけど。

「お待たせしました。食べましょう。」
「あ、ああ。」

 俺は返事をして「指定席」に着く。晶子は先に「指定席」に座って御飯と味噌汁をよそっている。出来たてと分かる御飯と味噌汁、それに目玉焼きと付け合せの野菜、ひじきと豆の煮物、そして漬物。昨日まで止まっていた民宿のそれと比べても何ら遜色ない。

「よくこれだけ作ったなぁ・・・。」
「朝6時に目が覚めましたから、ちょっと手の込んだものを作ってみようか、って思って。」
「俺、あまりよく知らないけど、煮物って結構時間かかるんだろ?」
「まあ、焼いたり炒めたりするよりは時間かかりますね。」
「そういえば・・・今何時なんだっけ?」
「8時半過ぎですよ。」

 目覚し時計を見てみると、確かに8時半を過ぎている。おきてから2時間以上あればまあ作れても不思議じゃないけど・・・。よく6時に起きれたな。それに煮物まで作るなんて・・・。普段の朝じゃ絶対お目にかかれないメニューの数々に見入ってしまう。
「さ、食べましょうよ。」
「あ、ああ。それじゃ・・・。」
「「いただきます。」」

雨上がりの午後 第873回

written by Moonstone

 晶子は俺の前を通ってテーブルに手早く料理を並べる。そして再び俺の前を通って部屋を出て行く。間もなくお玉が入った、蓋の隙間から湯気が出ている鍋と炊飯器を持って戻ってくる。

2002/7/15

[また寝てた(呆)]
 昨日は朝は起きれて今日の更新にあるとおりの新コーナー新設は出来たんですが、それで一休みするつもりが6時間近く熟睡(汗)。完全に目が覚めた時には日が暮れていました。どうして日曜に限って薬なしで、それも昼間に熟睡できるんでしょうねぇ。訳分からん(^^;)。
 夕食を作るのも面倒だったので、果物と菓子とゼリーで済ませました。これで木曜と金曜の主食は決まったな(汗)。このお話をしている時点ではまだ洗濯の準備もしてないし、余熱を取った御飯も分けてないし。ネットは用が済んだらさっさと切断してすることをしないと・・・。
 月曜日からの仕事の予定は未定ですが、数をこなさないといけない上に配線が異様に面倒な仕事の分担が決まってないので、それがこっちに来そうな感じ(汗)。期日には余裕がありますから、今から始めれば充分間に合うでしょう。やれやれ。一つ終わったらまた一つか。暇すぎるのも困りものですけど、適当に分散して欲しいものです。

「おはようございます。」
「・・・お、おはよう。」
「余程眠かったんですね。私が起きても全然目覚める気配がなかったですし。」
「まあな・・・。それより・・・キスで起こしたな・・・。」
「頬にした方が良かったですか?それとももっと濃厚な方がお好みです?」
「・・・さっきので良い。」
「じゃあ、これからもそうしますね。朝御飯、もうすぐ出来ますから着替えて得下さい。」
「ああ、分かった。」

 俺が応えると、晶子は軽い足取りで部屋を出て行く。どうやらもう心配はないみたいだな。さて・・・着替えるか。安心したらちょっと眠気が戻ってきた。俺は目を擦ってやや霧がかかっていた意識をさっぱりさせて、鞄の中にある服を取り出して手早く着替える。この季節は着るものが少ないし暖房も必要ないから、着替えるのが楽で良い。
 俺がパジャマを適当に畳んで鞄に仕舞い「指定席」のクッションに腰を下ろして程なくドアがノックされる。朝飯が出来たんだろう。俺は立ち上がってドアを開ける。晶子が盆に料理が乗った皿を幾つも乗せて立っていた。夕食同様,この部屋で食べるつもりらしい。

「あ、悪い。邪魔になるな。」

 俺が脇に退くと、晶子は俺に微笑んで言う。

「どうもありがとう。御飯と味噌汁持ってきますね。」

雨上がりの午後 第872回

written by Moonstone

 再度俺を呼ぶ声が聞こえると、次の瞬間、唇に柔らかいものが触れて離れる。俺はがばっと身を起こす。横を見ると、服を着替えてエプロンを着けた晶子が楽しそうな顔をして立っていた。

2002/7/14

[出版業界は詐欺師か?!(3)]
 (昨日の続きです)今回の件を通して分かったことは、出版業界はムネオや小泉首相などと同様、過ちを過ちと素直に認めず弁解や居直り、他人事のような態度に走ること、そして自社の出版物との相違でさえも素直に認めようとしないことです。出版業界は体育会系的、政界的社会と言われますが、まさにそれを証明したような事件だったと思います。
 後で言われて知ったことですが、私の抗議の電話の声量は凄まじく、鉄扉(通気口はありますが)を介した廊下にまで響き渡り、一時は騒然となったそうです。私は昔から怒ると普段からは考えられない程の猛烈な怒声を発し、徹底的に相手を責めまくる傾向がありますが、それは今でも健在なようです。自分ではそれほど大声を出している感覚はなかったんですけどね(^^;)。
 それから肝心の機器制作の方はと言いますと、1日遅れましたが無事完成して、クライアントに引き渡すことが出来ました。まあ、これからはこの会社の書籍の内容は迂闊に信用しない方が良い、ということは分かりました。間違いを書いたものでも利益や印税を得られるのですから、出版業界というのは実に恵まれた社会ですね。痛感しました(勿論皮肉)。(おわり)
 まだ早い。俺の心の中にもう一つの声が響く。ついさっきまでまったく感じなったのに何で今になって・・・?やっぱりこれで身体を求めるだけの関係になってしまうのが怖いからか?・・・多分そうだ、否、そうとしか思えない。

「だけど、まだ・・・止めておこう。」
「どうして?身体を求めるだけの関係になりそうだから?」
「ああ・・・。せめて1年・・・それが駄目なら俺が20歳になる日まで待ってくれないか?それからでも遅くはないと思う・・・。」
「・・・分かりました。じゃあ、今日のところは・・・。」
「キスだけにしておこう。」

 俺の言葉が終わるか終わらないかの瞬間で、晶子の唇が俺の唇に重なる。俺は目を閉じて、晶子の頬に触れていた手を晶子の頭に持って行く。晶子は俺の両肩に手をかけて舌を差し入れてくる。
 俺は迷うことなく口を開いて晶子の舌を受け入れ、晶子と文字どおり濃厚なキスを交わす。途中何度か息継ぎをしながら、次第に呼吸を荒くしながら、舌を互いの口の中に行き来させ、絡ませ、吸う。これだけでも身体が熱くなってくる。俺と晶子の激しいキスのダンスは延々と続く・・・。

Fade out...

「・・・じさん、祐司さん。」

 夢うつつの中、晶子の声が聞こえて来る。もう朝なのか・・・?何時どうやってキスを終わらせたんだっけ・・・。全然覚えてない・・・。

「ゆ・う・じ・さ・ん。」

雨上がりの午後 第871回

written by Moonstone

 闇の中に晶子の声が浮かんでは消える。だが、その甘い響きは俺の胸にはっきり届く。俺の心のベクトルも晶子の心のベクトルも、互いの相手の方を向いている。今なら・・・良いのか?俺の心の中に一つの大きな疑問が湧き出す。

2002/7/13

[出版業界は詐欺師か?!(2)]
 (昨日の続きです)その書籍を見ると、入出力の式の片方にマイナス符号がある!そう、私が参考にした書籍が符号を書いてなかったのです。それで謎が解けたと同時に、私の頭の中で何かが「ブチッ」と切れました。完成直前だったところにまた基板を作って配線をやり直さなきゃならない。そんな落胆が怒りに代わり、私は参考にした書籍を真っ二つに引き裂き、カバーをズタズタに引き裂きました。
 別室で頭を冷やそうと思ったものの怒りはまったく収まらず、逆に激しくなるばかり。私は自室に戻ると真っ二つになった書籍の後ろ半分の末尾に記載されていた出版社に電話をかけ、出版局の人に書籍の間違いを指摘し、新たに手間を増やした落とし前をどうつける気か、と詰め寄りました。出版局の人は基本的に誤りを認めたものの、技術書はそういうものだ、などと言い訳に走り始めたため、私は激昂して、不正をして利益を得ておきながらがたがた弁解するのはムネオと同じだ、などと怒鳴り、詫び状と念書を書いてよこせと告げて電話を叩き切りました。
 それから少ししてFAXが届き、それは誤りを全面的に認めて謝罪する内容でした。怒りは収まらないものの相手側が全面的に非を認めたので、矛先を収めました。そして早急に回路を設計して制作を始めました(つづく)。

「私、祐司さんが私の彼で良かった・・・。」
「そうか?」
「だって祐司さんは、目の前で裸になった私を抱かないで、優しく諭してくれた・・・。祐司さんって、本当に真面目で誠実な人ですね。」
「・・・俺はいい加減な人間だよ。だけど・・・自分の言ったことや決めたことには忠実で居たい。俺は衝動的に、欲求に任せて晶子を抱きたくない。だからそうした。それだけだよ。」
「そういうのを真面目って言うんですよ。」

 晶子が上半身を起こして俺を見る。晶子の髪を梳いていた俺の指は、その動きに合わせて晶子の頬に達する。それが気持ち良いのか、晶子は俺の手に頬擦りする。

「祐司さん・・・。今は・・・どうですか?」
「どうって・・・何が?」
「私が欲しいですか?」

 単刀直入そのものの問いかけに、俺はしかし無言で頷く。自分の気持ちに正直に身体が動いた。自棄酒を飲んで絡む酔っ払いと等価なさっきの晶子とは違って、今のいつもの晶子なら・・・それが欲しい。まだ早い、という気持ちは微塵も感じられない。
 晶子が俺に覆い被さるようになって、俺の顔の真上に顔を持ってくる。俺の手はまだ晶子の頬に触れている。俺と晶子が見詰め合ったまま、ゆったりと時間が流れていく。

「私も・・・祐司さんが欲しい・・・。」

雨上がりの午後 第870回

written by Moonstone

 晶子が口を開く。その声にはもう思い詰めたようなものは感じられない。どうやらもう大丈夫みたいだ。俺はようやく胸を撫で下ろす。

2002/7/12

[出版業界は詐欺師か?!(1)]
 機器制作が大詰めを迎えて、いよいよこれまで知識でしか知らなかった回路の動作試験に入りました。これはある値の電圧を基準として(例えば10V)、そこにまた別の値の電圧(例えば3V)を足したり引いたりするものです(例では13Vと7V)。引き算は回路的には引きたい値の符号を反転して足し算することになります。
 電源電圧が必要なところに来ているのを確認して、IC挿入と配線を施して電源オン。そして加減算する値が0Vの時の出力2つの電圧を確かめてみると(ある値の電圧±0Vだから、両方共ある値の電圧になる筈)・・・値の符号が反転している?!(謎)。「ある値」が10Vだったら両方共10Vである筈が、-10Vになっている?!加減算する電圧を増やしていくと、確かに加減算はされるが符号が反転したまま・・・?!
 わけが分からなくなった私は、設計の時に参考にした書籍を見直しましたが、その書籍の式によれば(仮に全ての電圧がプラスだとすると)入力電圧と同じ符号の電圧になるとあります。基板パターンを見直してもミスはなし。釈然としないうちに昼食を終え、徐にその書籍を出している出版社と同じ社から出ている別の書籍を調べてみると・・・重大事実発覚!!(続きは明日)
 晶子は小さく頷いて立ち上がり、静かに部屋を出て行く。俺はドアが閉まるのを見届けて「指定席」のクッションに腰を下ろす。緊張感のせいか、眠気は殆ど吹っ飛んでしまった。BGMだけが薄く室内に漂う。俺はそれを聞き流しながら晶子が戻ってくるのを待つ。
 5分ほどして静かにドアが開いて晶子が中に入って来る。今度はベージュのパジャマを着ている。それを見て俺の緊張感が一気に緩んで、代わりに眠気が噴出してくる。俺は何度目かもう忘れてしまった欠伸をして立ち上がる。

「・・・今日はもう寝るか。ちょっと早いけど。」
「はい・・・。」

 晶子の表情からは悲壮感はかなり消えている。まだ不安はあるが、少なくともさっきのようなことはしないだろう。微かに頬も緩んでいたし・・・。晶子がBGMを流していたコンポからCDを取り出して電源を切り、部屋の明かりを消す。一転して暗闇に包まれた中、俺が先にベッドに入り、それに続いて晶子が入る。つものスタイルだ。
 俺が左腕を横に伸ばすと、晶子は俺との距離を詰めて肩口に頭を、胸に手を置く。これも何時ものスタイルだ。俺は左腕を折り曲げ、晶子の頭にそっと置く。そして手櫛をするように晶子の髪に指を通しつつそっと撫でる。まだ静まっていないかもしれない晶子の心を少しでも安心させたい。
 すると晶子は、それこそ猫がじゃれ付くように俺に更に擦り寄って足を絡めてくる。これで喉をゴロゴロ鳴らせば完全に猫だ。そんな子どもっぽいところを見て、俺は頬が緩む。そして晶子が顔を上げて上目遣いに俺を見る。その表情も普段の晶子とは違ってどこかあどけない感じがする。

「祐司さん・・・。」

雨上がりの午後 第869回

written by Moonstone

「この部屋は冷房が効いてる。このままだと身体を冷やして風邪ひいちまう。早く服を着てくるんだ。良いか?」

2002/7/11

[大損害だな・・・]
 7/9のレンタルサーバーアクセス不能事件は無事復旧で幕を閉じました。しかし、私は思惑が大きく外れて大損害です。私のページは定期更新日とその翌日に大きく(とはいっても1000程度ですが)回ります。その言わば「稼ぎ」の日の一つを丸々潰されてしまった為、次回定期更新までには3000くらいしかカウンタが回らないでしょう。これは普段の6割くらい。会社の売上なら損害どころの話じゃありません。
 数十万や100万のアクセス数を誇るページには到底追いつけないとは思っていますが、それに少しでも近付きたいと思って作品公開を続けてきたのが、アクセス不能で来る筈のお客さんに逃げられてしまっては話になりません。
 今回の事件は落雷による停電の長期化によるものらしいので、事故の一言で片付けられたら終わりです。でも少なくとも2週間で5000を目標にしていたところに事故に見舞われて届かぬものにされた悔しさはどうしたら良いんでしょう?幾ら懸命にやっても恵まれないばかりでは、やる気も失せてくるというものです。真面目ゆえに損をするなら、エロやグロを導入した方が良いような気がしてなりません。
 俺は晶子の両肩を掴んで自分から引き離す。晶子は戸惑っているような、何と言って良いか分からないというような顔をしている。俺は晶子の瞳を見据えて言葉を続ける。

「晶子と晶子の親の間に何があったのかは聞かない。兄さんと引き離されたのが何故なのかも聞かない。何か深い事情があったんだとは思う。だけど聞かない。晶子は以前誰かに話せば少しは楽になるって言ったけど、俺は必ずしもそうだとは思わない。思い出したくない、話したくないことだってあるはずだから。」
「・・・。」
「だけど、これだけは言える。俺が今、晶子を抱いたら今の晶子の心が癒されるとは思えない。単に俺に抱かれることで気を紛らわせることしか出来ないと思う。それは・・・俺が望んでいる形じゃない。マスターと潤子さんじゃないけど、双方の気持ちが向き合って、本当に相手の全てが欲しいと思った時にそうすべきだと思う。そうじゃないと・・・これから先、俺と晶子が顔を合わせれば、俺が晶子を押し倒すか、晶子が今みたいに身体を投げ出すかどちらかの関係になっちまう。俺は・・・そんなの嫌だ。」
「・・・。」
「欲求に全て任せれば、俺はあれこれ言わずに待ってましたとばかりに晶子をベッドに運んでさあ開始、になるさ。でも、今の晶子を抱いたら、晶子を単なる性欲処理の道具にすることと同じだと思う。そんなことはしたくない。そんなことにはなりたくない。だから・・・俺は今の晶子は抱かない。」

 俺は言いたいことを言うと立ち上がって、床に落ちた晶子のバスタオルを取って後ろから晶子の身体に巻きつける。前に持ってきたところで晶子の胸に触れたが、今はそんなことはさして気にならない。俺は晶子の両肩に手を置いて言う。

雨上がりの午後 第868回

written by Moonstone

「晶子って・・・そんな女だったのか?」
「え?」
「何か嫌なことがあったら簡単に身体を許すような、そんな軽い女だったのか?」

2002/7/10

[ここを見れたら・・・]
 多分もう大丈夫でしょう。今のレンタルサーバーを使用して初めて、長時間のサーバーダウンに見舞われ、ページは勿論FTPもメールも(普段のメールアドレスとは違うので、これは大して影響なし)利用出来ない状況が続いていました。
 この間、ページを発作的に閉鎖したのではないか、と思われた方が居るかもしれませんが、仮にページを閉鎖する場合はある日突然更新が止まってそのままになるか、何らかのアナウンスがあるか、index.htmlが変わってしまうかの何れかですので、ご安心下さい。ま、何時そうなるかは分かりませんけどね。
 このような緊急事態の場合は掲示板JewelBoxにその旨を記載するんですが、何せページにアクセスすることさえ出来ないのではどうしようもありません。このような場合の速報をお知らせできる体制作りが必要ですね。
 俺が何度かめの欠伸をした時、ドアがキイ・・・と音を立てながらゆっくりと開き始めた。やれやれ、ようやくお出ましか。さて、どんなパジャマを・・・?!な、何?!
 姿を現した晶子はパジャマを着てなくて、バスタオルを身体に巻きつけているだけだ。な、何のつもりだ?・・・その顔は切なげで思い詰めたものになっている。俺は晶子を見たまま身体が動かない。声も出ない。視線を逸らすべきなんだろう。服を着て来いと言うべきなんだろう。だが全身が固まった俺は何も出来ない。

「祐司さん・・・。」

 晶子は呟くように言うと、バスタオルの端を突っ込んだ胸元に手をもっていき・・・バスタオルを取り払う。蛍光灯の灯りに照らされて、晶子の水分を含んでしっとりした髪と、細いラインで、それでいて豊満な肢体を晒す。勿論、一糸纏わぬ姿で・・・。
 固まったままの俺を切なげに、そして思い詰めた表情で見詰めながら、晶子は俺の元に歩み寄り、両膝を床につけ、俺にゆっくりと、そしてしっかりと抱きつく。

「私を・・・抱いてください・・・。」

 晶子の呟きに似た切なげな声が俺の頭に響く。俺もそれなりの年齢だ。晶子の言葉が言葉だけの意味じゃないことくらい知ってる。甘酸っぱい香りが鼻を擽る。さっきの言葉といいこの匂いといい、普段の俺だったら間違いなく晶子をベッドに運んで、ことを始めるだろう。
 だが、今の俺はそんな気分じゃない。否、そんな気分にはなれない。だって今の晶子は、言ってみれば・・・自棄酒飲んで絡んでいるようなもんじゃないか。俺は晶子を軽く抱き締めながら言う。

雨上がりの午後 第867回

written by Moonstone

 BGMが次々と変わっていく。遅いな・・・。幾ら烏の行水の俺より風呂が長いとはいっても、今日はシャワーだけだからこれほど時間はかからない筈だ。まあ、長い髪を洗うのにはそれなりに時間がかかるだろうけど・・・それにしても遅い。遅過ぎる。まさかとは思うが風呂場で転んだとか・・・?

2002/7/9

[昨日は珍しく・・・]
 スムーズに午前午後共身体が動きました。今までは午前中から本格的に動くと、午後にはまともに動けなくなるという状況が続いていたんですが、珍しい日もあるものです。これがずっと続けば良いんですけどね・・・。
 昨日は通院日だったので病院へ向かったのですが、予約がいっぱいで順番待ちの状態だったので、座って待っていたら何時の間にかうつらうつら・・・。名前を呼ばれてようやく目を覚まして診察室へ入りました。1時間待ってりゃ眠くもなるか。来週は予約が取れたので(大体1週間おきにしか取れない)こんなことはないでしょうけど。
 帰って夕食を済ませた後、ぶわっと眠気が噴出してきたので、空調の聞いた部屋に持ってきた布団に横になってました。うつらうつらしてたんですが、どうにか寝ることなく、こうしてお話しています。連載の書き溜めも多少出来ましたし、後は無事に今作っている機器が動いてくれるのを期待するだけです。・・・でも、一部を試したら出力電圧の正負がひっくり返ってましたけど(汗)。
「良いんですか?」 「俺は全然構わない。晶子がそれで良ければの話だけど。」
「・・・じゃあ、すみませんけどそれでお願いしますね。」

 晶子は再び腰を下ろす。俺に先に入ってくれという合図だ。普段でも風呂に入るのは俺が先だしな。俺は徐に立ち上がってバッグの中からバスタオルとパジャマと下着を取り出す。民宿ででたらめに突っ込んだから、取り出すのにちょっと手間取ったが。
 元々烏の行水を地で行く俺がシャワーだけなら尚更早い。髪と身体を洗ってシャワーを全身に満遍なく浴びせてはい、終わり。5分かかったかかからないかで俺は風呂場から出て、バスタオルで身体に付着した水分を拭って下着とパジャマを着る。・・・我ながら呆気ない。
 リビングのドアを開けて中に入ると、晶子は所謂体育座りのように膝を曲げてそれを両腕で抱えていた。俺が入ってきたことで顔を上げたが、それまでは膝に顔を埋めていた。・・・こりゃ余程重症だな・・・。

「お待たせ。」
「早いですね・・・。」
「普段でも俺の風呂は早いだろ?今日はシャワーだけなんだから尚更さ。」
「それじゃ私、行ってきますね・・・。」

 晶子は何も持たずに部屋を出て行く。パジャマは持っていかないのか、と一瞬訝ったが、下着同様−前に脱衣場近くの棚を開けてその存在を知った−洗ったものに着替えるつもりなんだろう、と考えれば納得はいく。
 俺はBGMを聞き流しながら晶子が戻ってくるのを待つ。晶子は風呂の時間が俺に比べれば長いから、ここはのんびり待っていよう。眠気がかなり表に出てきたが、まだ耐えられるレベルだ。

雨上がりの午後 第866回

written by Moonstone

「お風呂、準備してきますね。」
「今日はシャワーだけで良いよ。晶子も疲れてるだろ?シャワーだけなら給湯のボタン一つで済むし。」

2002/7/8

[結局昨日は・・・]
 1日中寝てました(爆)。起きたのが昼過ぎで、PCを起動して作品制作の準備まではしたんですが、そこから先へ進めず、寝たり起きたりを繰り返してました。本格的に起きたのはP.M.10:30頃。それから今のお話をしています。
 Novels Group 2とSide Story Group 2のいずれかを更新しようと思っていたんですが、こんな状況じゃとても無理。ま、更新したところでレスポンズがあるわけでもなし、無理なら無理で構わんでしょう。ハハハ(投げやり)。
 土曜日の夜(正確には日曜日未明)Novels Group 1を読んでいたんですが、Scene1分を読んだだけで2時間以上。これじゃオンラインで読むのは余程の暇人でないと不可能ですな。圧縮ファイル増やそうかな・・・。でもレスポンズがないのにそこまで親切にする必要はありませんな、やっぱり(投げやり)。
寄り添っていると言うより、晶子が俺に密着してきていると言った方が良いか。晶子は俺の肩に頭を乗せている上に、両腕を俺の左腕に絡めている。斜め上方から見る晶子の表情には、明らかに普段と違う色が出ている。

「祐司さん・・・。」

 晶子が話し掛けてくる。晶子の方を向くと、その顔は俺の方を向いていない。余程思い詰めているのか・・・?まだ昼の電話の件が頭に残っているのか?だとしても無理はないが・・・。

「何だ?」
「私のこと・・・これからも好きでいてくれますか?」
「ああ、勿論。それに晶子だって昨日だったか?俺が宮城と出くわして逃げるみたいに立ち去った時言ったじゃないか。離れろって言っても離れない、離さないって・・・。晶子のその気持ちはどうなんだ?」
「変わりません・・・。」
「なら、何も心配しなくて良い。」

 俺が出来るだけ優しい口調で言うと、晶子は俺の腕にしがみつくように両腕に力を込める。これほど動揺というか、不安げな晶子は今まで見たことがない。それだけ晶子の心は俺を最後の拠り所とでも思って懸命に離れまい、離すまいとしているんだろうか?
 双方無言のまま時間だけが静かに流れていく。ふと時計を見ると11時を回っている。普段ならまだ寝るには早いくらいだが、旅行の疲れが噴出してきたか、俺は眠気を感じて欠伸をする。すると、晶子が俺からゆっくり離れて立ち上がる。

雨上がりの午後 第865回

written by Moonstone

 今日は旅行から帰って来て疲れも残っているし、俺もギターを持って来てないから練習はなし。食事が終わってBGMが流れる中、俺と晶子は無言で寄り添っている。

2002/7/7

[七夕、ねえ・・・]
 七夕より棚ぼたが良いと思う、夢もロマンもありゃしない管理人です。今回の週末は何時にもまして憂鬱。何も良いことがないままルーチンワークのように、更に計画どおりに動かない身体を引き摺って過ぎていく毎日に溜息が出るばかり。自殺したら周囲はどんな反応を示すだろうな、などと度々考えていましたし。まあ、私が居なくなったら、このページの運営がある日止まって、サーバーの有効期限切れとともに消滅、となるだけでしょうけど。
 そのページの定期更新は明日。今のところ順調に作品が揃ってきています。今日次第では4、5グループ以上の更新が出来そうです。まあ、日曜日は身体は動かない、やる気はしないで過ぎていくのが最近の傾向ですから、今回も何も出来ずに終わりそうですが。
 しかし、こうして作品を揃えて隔週で公開して、2、3通の感想メールが来るのを期待するだけのページ運営もルーチンワーク化しているような気がしてなりません。何処ぞのページみたいに、放っておいても1日で1000くらい軽くカウンタが回る恵まれたページじゃないですから、作品を充実させる必要はあると思うんですが・・・何をしても所詮テキストだらけのページでは望めますまい。
でも、少しずつお話したり、一緒のバイトをするようになったりするうちに、祐司さんと兄とは別人であって兄の代わりじゃないことを悟って、それに祐司さんの優しさや真面目さを知って兄の代わりなんかじゃない、安藤祐司っていう一人の男の人を好きになったんです。」
「俺が兄さんによく似てるからって理由で、晶子が俺をストーカーみたいに追いまわしてたのは分かってた。俺と兄さんを一緒にするな、俺はあんたの兄さんじゃない、っていう気持ちと、宮城と別れた直後でささくれ立ってたことが重なって晶子を疎ましく思ってた時期はあった。」
「・・・ですよね。」
「でも、不慣れなことを懸命に習得しようと俺の乱暴な指導に食らいついてきたり、晶子と触れ合っていくうちに俺の中の晶子への気持ちは確かに変わっていった。そして俺は井上晶子っていう一人の女を好きになった。これは今でも変わらない。だからっていうのも何だけど・・・俺は晶子を信じる。」

 俺が自分に言い聞かせるようにいうと、晶子は俺に頬擦りを始める。どんな表情をしているかは分からないが・・・多分安心してるんだろう。信じるって言われて嫌に思う人間はそうそう居ないと思う。晶子の頬の滑らかさを感じながら、俺は自然に口元が綻ぶのを感じつつ、晶子の頭や背中を擦る。
 俺の中で晶子に対する新たな疑問が生じたのは否定出来ない。でも、それは今の関係を続けていく上で支障にはならないだろう。否、支障になるようなことにしちゃいけない。信じること。そんな簡単そうで実は難しくて、外部からの刺激に極めて脆いものを土台にしているのが恋愛なら・・・その土台を維持強化しなきゃならない。それが今の俺に要求されていることだ。そう思う。

 とんだことになったティータイムも終わり、程なく夕食の時間となった。晶子の作った食事は文句なく美味かったが、晶子の口数は異様に少なかった。俺は「大激震」が襲って間もない晶子の心情を察して、無理に話し掛けることはしなかった。もっとも普段でも晶子が話し掛ける側の方が多いから、話し掛けようにも料理を誉めたりするくらいしか出来なかったが。

雨上がりの午後 第864回

written by Moonstone

「はい・・・。でも、これだけは誤解しないで欲しいんです。確かに最初は兄にそっくりな祐司さんに兄の面影が重なって、この人と仲良くなって寂しさを紛らわせたいと思ってました。

2002/7/6

[薬というもの]
 私は約2年間、毎日薬を飲み続けています。実はこの薬というやつ、ご存知の方も居られるかもしれませんが、「飲み合わせ」というものが存在します。単なる迷信の「食べ合わせ」ではなく、薬の飲み合わせは様々な悪影響を生み、最悪の場合は死に至ります。まさか、とお思いかもしれませんが、本当のことです。つまり私は、風邪をひいたから市販の風邪薬を飲む、というわけにはいかないのです。
 以前、風邪を引きそうだから念のために風邪薬を飲んだ、という話をしましたが、勿論この風邪薬は今飲んでいる薬と飲み合わせを起こさないように処方されたものです。何と不自由な、とお思いかもしれませんが、こうしないと本当に洒落にならないことになる恐れがあるのです。
 今は梅雨時で晴れと雨の場合で温度差が激しいので風邪を引きやすい時期です。幾ら風邪薬があるからといっても迂闊に市販の薬を飲めないため、せめて風邪だけはひかないように、と注意しています。薬を量が多いとかさばりますからね。たかが薬、されど薬。飲み合わせは市販の薬でも起こるそうなので、皆さんも薬を買う時は薬局で服用中或いは服用したことがある薬を言うようにしてください。
俺なんて弟としょっちゅう喧嘩してたから−理由は他愛もないことばかりだった−、一人しか居ない兄弟なんだからもっと仲良くしろ、と親に説教されたもんだ。なのに何で晶子の両親は晶子と兄さんを「強制隔離」したんだ?俺には理解出来ない。
 疑問はまだある。何で帰省することが生き恥晒すことになるんだ?俺なんて今の大学、新京大学に合格したことを親に連絡した後、親戚中から進学祝がどかどか贈られてくるわ−当然の如く親が電話をかけまくったんだろう−、近所中からお祝いの挨拶を受けるわで−これまた当然の如く親が仕事そっちのけで話して回ったんだろう−大変な騒ぎになった。
 新京大学は世間一般でいうところの「超難関校」だから近所や親戚に自慢できても−自慢したところでどうなるものでもないが−、少なくとも生き恥晒すことにはならないと思う。なのに帰省することで「生き恥晒させる」ことになるってのは一体どういうことだ?
 それに、晶子が口にした世間体という言葉・・・。単なる兄妹の「強制隔離」なら、親からの自立を即すためとか何とか言えば別に世間体を気にする必要はないだろう。否、それ以前に、そんなことは世間体云々の話にはならないんじゃないか?何だか晶子の言うことに矛盾というか、前後と噛み合わないものを感じる。晶子は俺に何か肝心なことを隠してるんじゃないか・・・?
 ・・・何考えてるんだ、俺は!俺が今晶子を信じなくてどうするんだ?!相手に対して疑いをかけることは恋愛関係にマイナスにはなってもプラスにはならないということは、宮城との関係で学んだじゃないか!

「・・・要するに、晶子は大好きだった兄さんから引き離されて、それに反発して親元を離れて半ば絶縁状態になってるってことか?」
「・・・はい。」
「・・・仲良かった相手と離されるのは辛いだろうな。俺は正直よく分からないけど、仲良かった分だけショックは大きかったんだろうな。だから、兄さんによく似てるっていう俺に近付こうとしたんだろ?」

雨上がりの午後 第863回

written by Moonstone

 晶子と兄さんとの絆は相当深かったんだろう。しかし・・・兄妹が仲良くするのは良いことではあっても悪いことではない筈だ。

2002/7/5

[「民間参入」の勘違い(2)]
 (昨日の続きですので、昨日の分を先に読んでください)第三種、第四種が廃止、有料化されれば皆さんが普段読んでいる新聞や雑誌の値上がりは勿論、現在無料となっている視覚障害者向け朗読テープや点字図書が有料化され、只でさえ運営が厳しい障害者紫煙施設や団体の維持活動が困難になるのは明白です。これでも「郵便事業は民営化すべき」と言いますか?
 また、郵便事業への企業参入は「いいとこ取り」です。信書の定義が先日発表されましたが、そこでは回りくどい表現ですが、要するにダイレクトメールは信書に該当しないとされています。企業が参入しやすい部分を用意することは結果的に料金値下げ競争→サービス低下、労働者の首切りという結果を生むことは明らかです。これは首相の言うとおり「郵政民営化への一里塚」でしかありません。
 マスコミはお得意のキャッチフレーズ「首相VS抵抗勢力」の図式を描いていますが、「抵抗勢力」(ここでは郵政族議員)には道路公団と同じく公社の下に子会社、孫会社を作る道を準備することで天下りや癒着という、道路公団と同じ利権構造を用意して懐柔させたのです。結局未だ小泉信仰から脱せないマスコミは、ものの見事に郵政事業民営化の旗振り役をさせられているのです。こんなマスコミは要りません。こんなマスコミに資金提供することになる商業新聞購読は直ちに止め、料金面でも情報の質の面でもお得な「赤旗」を読むようにしましょう。(おわり)
 晶子は首を小さく縦に振って言葉を続ける。

「私、今まで帰省しないことについて色々言ってきましたけど・・・本当の理由は・・・もう実家に帰りたくないからなんです。もっと踏み込んで言えば・・・親と顔を合わせたくないからなんです。」
「・・・それってもしかして・・・晶子の兄さん絡みのことか?」

 俺は一歩踏み込んだ問いを投げかける。俺と出会った時も、それから暫くも晶子は俺が自分の兄に似ていると言っていた。晶子と両親の間に何か深刻な確執があったんじゃないだろうか?晶子はそれで兄さんを相当頼りにしていて、大学進学を機に離れ離れになった寂しさの中で兄さんと似ているという俺と出会って、俺に接近してきたんじゃないだろうか?
 だが、その一方で晶子は以前、帰省しない理由として兄への依存を断ちたいとも言った。何やら頭が混乱してきたが、少なくとも晶子の兄さんが晶子にとって大きな存在だということには間違いないと思う。

「・・・そうです。」

 晶子は俺の問いに短く答えてから言葉を続ける。

「私は兄が大好きでした・・・。でも親はそれを快く思わなくて、私と兄の間に大きな距離を作ったんです。私はそれに反発して通い始めたばかりの大学を辞めて、実家から遠く離れた今の大学に入り直したんです。」
「だから俺より学年が一つ上の筈なのに、俺と同じ学年なのか。」
「ええ・・・。親も世間体を気にして、私の行動にストップはかけませんでした。今の住まいを勧めたのは親ですけど、お金は出すけど口は出さない、という条件をつけて私はそれを受け入れたんです。」

雨上がりの午後 第862回

written by Moonstone

「・・・私、この町に来てから一度も帰省してないんです。」
「一度も、って・・・今のバイトを始める前、否、俺と出会う前もずっと?」

2002/7/4

[「民間参入」の勘違い(1)]
 小泉流構造改革を未だ信奉するマスコミには、「民間参入で活力を」の文字が各所に躍ります。リスナーの皆さんも「民間参入」で何でも良くなるとお思いの方が多いのではないでしょうか?
 しかし、そう思う方をはじめ、「民間参入」で良くなると思っている国民は自分達が運営に参加できる、と勘違いしてや居ませんか?これが言葉のマジックというやつで、「民間」という言葉を使うことであたかも国民がその事業に参加できるという幻想を与えているのです。実際は大違い。政府与党がこれまで進めてきた「民間参入」とは、要するに「コスト削減、もうけ第一」という活動方針にするということです。これは今までの国鉄の場合でも電信電話公社の場合でも、そして今度の郵政関連法案での郵政公社化でも同じです。
 もうけ第一ですから、採算に合わないものは切り捨てられるか、利益の出るように仕組みを変えられます。今度の郵政関連法案の場合、第三種(定期刊行の新聞、雑誌など)、第四種(視覚障害者用文献や苗木など)の赤字を第一種(切手)、第二種(葉書)の利益で補填してる今の形式で赤字の対象である第三種、第四種を切り捨てるか、利益が出るように値上げしたりすることが示唆されています。
 あの電話は一体何だったんだろう?晶子と母親の間に何があったんだろう?帰ると生き恥を晒すことになるというのはどういうことだろう?だが、今そんなことを尋問する程俺は無神経じゃないつもりだ。今は気が済むまで泣かせてやろう。それだけしか出来ないが、それだけでも出来るならした方が良い。

 泣き声が徐々に嗚咽へと変わり、至近距離で大きな泣き声を受けたおかげで機能不全に陥っていた左耳がようやく回復してきた。どのくらい泣いていたのか分からない。だが、晶子が泣きたいだけ泣けたのならそれで良い。俺は晶子の頭や背中をさすって俺の存在を示す。晶子、お前は独りで泣いてるんじゃないんだぞ。

「・・・御免なさい・・・。取り乱しちゃって・・・。」

 嗚咽の合間を縫うように晶子の声が聞こえて来る。その声は震えていて弱々しい。何時もの晶子の声とはとても思えない。余程辛く、悲しいことがあったんだろう。泣いたって仕方ない。泣ける時に泣けた方が良いって言ったのは晶子自身だ。
 俺は首を横に振って、頭や背中を擦り続ける。こういう時、下手に慰めようと思わない方が良いだろう。疑問は幾つかある。だが、今は思う存分泣いてもらって少しでも楽になったほうが良い。俺の場合は自棄酒を飲みながら思い出の品を自分の手で引き裂き、潰し、壊した。晶子の場合はそれが大声で泣くのと等価だろう。

「・・・聞かないんですか?」
「何を?」
「私が何で電話口で怒って、そうかと思ったら大泣きした理由・・・。」
「・・・話せるなら話して良い。だけどそれが辛いなら無理しなくて良い。俺はそう思うから。」

 俺が至近距離にある晶子の右耳に囁くように言う。晶子は何も言わない。徐々に嗚咽が小さくなってくる。ようやく本当に泣き止み始めたようだ。宮城の時もそうだったが、女に泣かれるのはやりきれない思いがする。話すことで辛さや悲しさがぶり返してまた泣く羽目になるなら、心に留めておいた方が良い。

雨上がりの午後 第861回

written by Moonstone

 少し見詰め合っていると、晶子の瞳に映る俺の顔が益々滲み、とうとう哀情の水が溢れ始める。次の瞬間・・・晶子が俺にがばっと抱きついて大声で泣き始めた。耳を劈(つんざ)くほどの大声で。子どもみたいにわあわあと泣く晶子を、俺は黙って軽く抱き締めることしか出来ない。

2002/7/3

[あかん、眠い・・・]
 昨日は殆ど立ち作業で疲労感数倍(当社比(笑))。機器のフロントパネルを加工していたんですが、部品をくっつけるために必要な穴が様々で、さらに位置関係上穴を開けられない(くっついている為ドリルが滑ってしまう)個所が15箇所くらいあって、それらは細かいヤスリで削って溝を作ってくっ付けられるようにしました。
 面倒且つ疲れることになるのは目に見えていたので、夕食には疲労回復に良いという豚肉と玉葱の組み合わせを食べたんですが、回復するどころか眠くなるばかり。結局洗い物を片付けた後、ネット接続直前まで寝てました(汗)。
 只でさえ連載の書き溜めが少ない(1日分もない)状況なので、速やかに疲労回復となって欲しいんですが・・・。疲れ易いくせに回復はやたら遅い今の身体では、当分自転車操業が続きそうです。そんなこともあって、一部メールの返信が遅れますのでご容赦ください。今日は多分、昨日ほど疲れることはないと思いますので・・・(希望的観測)。

「何言ってんのよ!!」

 突然の怒声に俺は紅茶を噴出しそうになる。見ると、晶子の横顔は明らかに、それも相当怒っている。一体何があったんだ?

「どうしてそんなに簡単に帰って来いなんて言えるのよ!!私に生き恥晒させるつもり?!・・・私がどんな思いをしたか、全然分かってないじゃない!!」
「・・・?」
「・・・そんなに言うなら、あの時を返してよ!!私から何もかも奪ったくせに!!・・・悪かったと思うなら、二度と帰って来いなんて言わないで!!それが出来ないなら、もう二度と電話してこないで!!」

 晶子は窓ガラスを震わさんばかりの怒声に続いて、受話器を本体に叩きつけるように置く。肩で息をしながら受話器を持ったまま、険しい目つきで電話機本体を見詰めている。今までにも何度か晶子の怒った様子を見たが、これほど凄まじかったのは初めてだ。俺はティーカップを置いて晶子を見る。
 暫く重い時間が流れた後、晶子はそれまでとは打って変わって酷く悲しげな表情で、重々しい足取りで俺の隣に座る。その口は堅く閉ざされていて、開かれる気配はない。横顔は痛々しいほど悲しげで、見ているのが辛い。だが、晶子の苦しみや悲しみを少しでも和らげたい。

「・・・晶子・・・。」

 俺が呼びかけると、晶子はゆっくりと俺の方を向く。その大きな瞳には哀情の水が溜まっている。懸命に泣くのを堪えているのが嫌でも分かる。それが余計に痛々しい。

雨上がりの午後 第860回

written by Moonstone

 どうやら近況を尋ねられているらしい。この辺は俺と同じだな。子どもが自分の元を離れて元気に暮らしているかどうか気になるのは、どこでも同じなんだろう。俺は紅茶を口に運んで電話が終わるのを待つ。

2002/7/2

[完治には遠い・・・]
 私の病気は精神的側面では内向き、下向きにさせるものであり、肉体的には異常なまでの疲れ易さ、回復の遅さ、不眠など多岐にわたる、一般の内科などでは原因不明としか言われない症状を見せます。
 昨日は生憎の雨模様で朝歩いて職場へ向かい、1時間の会議後早速仕事を始めたんですが、その時点でもの凄い疲労感と眠気に襲われ、やむなく仮眠を取りました。ところがこれも薬がないために浅い眠りと幻聴、覚醒を繰り返す有様で本格的回復には至りませんでした。
 で、病院へ行った後帰宅して(これも徒歩。計約40分)夕食の準備&洗濯があって、それらを終えた時点でもうぐったり。何とか連載の書き溜めを増やした後、ネット接続直前までベッドに突っ伏してました。体力をつけようとトレーニングを始めて早7ヶ月なんですが、どうも効果はないようです。
晶子はやっぱりと言うべきか、俺と宮城の話し合いのことが今尚若干引っ掛かっていたらしく、俺に宮城とのことに区切りはついたのか、と不安げに尋ねてきた。
 勿論、俺としてはあの話し合いで二人共未熟ななりに−今は成熟したというわけじゃないが−精一杯恋愛をして、あの場ですっきり別れて、「かつての」彼氏彼女であり、高校の同期という関係になったつもりだ、と言った。もうわだかまりも消えたし、妙な感情を抱くこともなくなった、とも言った。神妙な面持ちで聞いていた晶子は十分納得したようで、俺もひと安心した。
 BGMに使っていたCDを晶子が別のものと交換して晶子が再び俺の隣に腰を下ろした時、流れ始めたBGMにプルルルル・・・、という軽やかな音が乗ってきた。デスクの上にある電話のコール音だ。晶子はちょっと待ってて下さいね、と断りをしてから立ち上がって、電話を取りに向かい、受話器を取った。

「はい、井上です。」

 そう応答した晶子の表情が少し変わる。驚いたような感じだ。一体誰からなんだろう?胸が俄かにざわめき始める。

「・・・お母さん・・・。」

 晶子が呟くように言う。電話の相手は晶子の母親らしい。ちょっとほっとするが、同時に何で表情があまり明るくないんだろう、と思う。まあ、俺も実家からの電話を嬉々として受けないから、人のことは言えないんだが。

「・・・うん。元気でやってる。・・・バイトは順調。皆良い人だから。」

雨上がりの午後 第859回

written by Moonstone

 旅行気分がまだ抜けない俺は、BGMが品良く流れる中晶子が用意してくれた紅茶と−ちなみにラベンダーだ−お茶菓子を飲み食いしながら、終わったばかりの旅行のことを話題に晶子と談笑していた。

2002/7/1

[一日の区切りなし(汗)]
 昨日のお話は定期更新用の連載新作執筆を中断してしたんですが、あれからページ巡回を済ませてネットを切断した後、執筆を再開しました。ところがこれが予想以上に難産になって、完成した頃には空が明るくなり初めていました(汗)。
 PCの時計を見たらA.M.5:00過ぎ。今から寝ると起きれるのは昼前だろうし、ろくに更新作業も出来ないだろうから、薬を飲まないで仮眠程度にしておくか、と思ってベッドに横になったんですが・・・どうも寝られない。眠気はそこそこあって、瞼も重いというか痛いというか、そんな感じなのに・・・。
 で、何時の間にか気絶するみたいに寝て、目を覚ましたのはA.M.7:00(汗)。当然頭はぼうっとした状態なのでまた気絶するみたいに寝て起きたらA.M.9:00(汗)。結局寝ては起きてを繰り返して諦めてベッドから出たのは昼前。こんなことなら大人しく薬飲んで寝りゃ良かった・・・(T-T)。
 俺はぽろっと本音を漏らしてしまってからしまった、と思ったが時既に遅し。横目で晶子を見ると、聞きましたよ、と言わんばかりの笑みを浮かべて俺を見ている。その視線に耐えられず、俺はさっと視線を前へ向ける。

「あ、そういう本音があるんですね?」
「い、いや、さっきのは口が滑っただけで・・・。」
「口が滑ったってことは、それで言ったことが本音だってことですよ。」
「あ、あう・・・。も、もうそのことは良いじゃないか、な?」
「駄目です。私の家でじっくりお話を聞かせてもらいますからね。」

 しまったぁ・・・。これから晶子の家でちくちく突付かれるのかよ・・・。口は災いの元っていうけど、ありゃ本当だな。何て言い訳すりゃ良いんだろう・・・?確かにあの時あそこまで、それこそあと一歩ってところまでいったのに迂闊にも寝てしまったのは勿体無いことした、と思う。だけどその一方で、勢いに任せて一気に一線突破、ってことにならなくて良かった、という気持ちもあるのも事実だ。この際だから両方本音って言えば良いかな・・・。

 それから俺と晶子は当初の約束どおり晶子の家に向かい、中に入って一息吐くなり晶子の「尋問」が再開された。俺は思っていたとおりのこと、即ちあと一歩というところで寝てしまったのは勿体無いことをしたと思うこと、そして勢いに任せて一線を超えなくて良かったとも思うことを素直に言ったら、晶子は拍子抜けするほどあっさり納得した。私もそう思ってたんですよ、という言葉をおまけして。・・・だったら尋問なんてするなよ。

雨上がりの午後 第858回

written by Moonstone

「ありがとう、祐司さん。」
「・・・寸前で寝ちまったのは勿体無いことしたなっていう思いはあるけど。」


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