芸術創造センター こぼれ話
Dropped talk of Performing Arts Center

2002年12月31日更新 Updated on December 31th,2002

2002/12/31

[今年最後の更新ですね]
 まあ、時間帯の関係で明日の午前0時前にも更新する可能性が高いですが、一応日付では今年最後ですのでキャプションどおり「今年最後」と言っておきますね(^^;)。昨日は買い物に出かける機会があって、「3×3EYES」の作者、高田祐三さんの新作「幻蔵人形鬼話」と、先日此処でお話した「魔法遣いに大切なこと」のコミックを買いました。本屋の規模の違いを実感(^^;)。こっちでは「小さい」店が私の自宅地域の「大きい」に相当しますからね。
 で、「魔法遣いに大切なこと」を読んだんですが、良い話でかなり感動しました。絵の雰囲気がどこかで見たことがあるなぁ、と思ってカバー裏の著者プロフィールを見たら、漫画を書いている人は「ああっ、女神さまっ」で有名な藤島康介さんに師事したことがあるとのこと。なるほどどうりで、と納得しました。
 今日は先日踏んで壊した眼鏡を新調しに行く予定です。私はあまり気が進まないんですが親が喧しくて・・・(苦笑)。まあ、レンズも傷だらけですし、そろそろ年貢の納め時かもしれませんね。度は壊した眼鏡に合わせてもらいます。これだけは譲れん(笑)。長時間PCに向かうことが多い私は、度が強い方に合わされると目が眩んでしまうので。
 色々お話しましたが、今年1年お付き合いいただいてありがとうございました。そして来年、つまり明日からまたこのページは始まります。激動の年になりそうですが、来年も宜しくお願いいたします。
 俺の言葉は自分自身に向けてのものと言って良い。晶子は俺を裏切ってなんかいなかった。ただ俺が、その場その時の状況で裏切ったと即断してしまったに過ぎない。信じたくない噂を耳にして、晶子を信じる、と言っておきながら信じきれなかった俺・・・。今回は潤子さんのフォローがあったから良かったようなものの、何時までも潤子さんに頼るわけにはいかない。俺と晶子の関係なんだから、俺と晶子共に信頼関係を支えあっていくようにしないといけないな・・・。

 その週の土曜日。俺は眠気が残る目を擦りつつ、普段ならまだ寝ている午前9時過ぎに起き、久しぶりに上り方向の電車に乗り込んだ。今の町に住むようになって以来一度も帰省してないし、宮城と会うのは専ら今の町だったから、約1年半、否、それ以上か・・・。バンドの奴ら、どうしてるかな。案外呆気なく出くわしたりして。
 週末なのに電車は結構混み合っている。まあ、俺が今住んでる町は大して若者が遊ぶような場所はないし、やっぱり遊びに行くなら都心、ということだろう。見た目にも俺と同年代、或いはそれ以下の顔が目立つ。顔で年齢を即決することは出来ないが、多分推測は間違ってはいないだろう。

「ご乗車ありがとうございました。間もなく小宮栄(こみやさかえ)、終点です。この電車、この駅まででございます。お降りの方はお忘れ物のございませんよう、よくお確かめ下さい。」

 久しぶりに聞く駅の名がアナウンスに乗って耳に入ってくる。小宮栄・・・。俺が住む胡桃町が含まれる新京市は、この小宮栄市のベッドタウンにあたる。小宮栄から電車を乗り継いで1時間半ほどのところに俺の実家がある町がある。ちょっとセンチな気分になるが、今日俺が小宮栄に足を運んだのにはそれなりの理由がある。
 晶子に言い寄る浮名流しの教官、田畑。晶子が返事を先延ばしにした挙句「御免なさい」と来たもんだから、恐らくプライドを傷つけられたに違いない。「御免なさい」に至った状況を踏まえると恋愛感情が−真剣なものだったかどうかなんて知りたくない−憎悪に変わることは十分ありうる。同じような経験をしたことがある身として、したくはないが同感してしまうものがある。

雨上がりの午後 第1034回

written by Moonstone

「分かりました。もう今度こそ噂になるようなことは慎みます。祐司さんに疑われるようなこともしません。」
「晶子の言葉、信じるからな。」

2002/12/30

[2日で1つ]
 キャプションは今の作品制作ペースです。正直言って遅いです。途中で居眠りしたりしてるのもありますが、一番の原因は集中出来ないことでしょうね。自宅だと自分の都合で食事時間とかをずらせたんですが、実家ではそうはいかない。まあ、黙ってても食事や洗濯が済んでしまうのは自宅じゃ絶対無理な話ですから、止むを得ないと言えばそうなんですが。
 あと一つ原因として考えられるのが、普段使う眼鏡をうっかり踏んで壊してしまったことでしょう。普段使っている眼鏡は度が比較的弱いので長時間PCに向かっていても平気なんですが、臨時用に持ってきた(車の運転の時くらいしか使わない)眼鏡は度が強いのと普段掛けなれていないせいで違和感が大きくて、落ち着いて作業に集中出来ないんですよね。もっとも眼鏡使う人間としては、眼鏡を壊すなんてのはおっちょこちょいにも程があるんですが。
 この分だと長編で3つくらいしか書き溜められそうにないです。まだ1/1用の更新準備も済んでませんし(芸術創造センターのトップからご来場の方にはあまり関係ないこともあるんですが)。ま、あまり無理しない程度にやってみますので、引き続き見てやってください。

「田畑先生には、お付き合い出来ません、とはっきり言いました。田畑先生は散々待たせた答えがそれか、って言って不満そうに立ち去りました。それから私は日が暮れるまでに祐司さんのマフラーと指輪を探して拾ったんです。マフラーはまだしも、指輪は暗くなったら探しようがなくなりますから。」
「不満そうに立ち去った、ってのが気になるな・・・。まあ、じらされた結果『御免なさい』じゃ、不満に思うのも無理はないと思うけど・・・。」
「そういうことにまで頭が回らなかったんですよね・・・。」
「晶子が穏便に自分から手を引いてもらうように、と考えた結果のことだから仕方ない。それよりこれから田畑がどんな行動に打って出るか分からないのが問題だな・・・。晶子、今、田畑の講義って受けてるのか?」
「はい。必須科目の一つです。」
「だとしたら余計に厄介だな。単位と引き換えに交際を迫る教官の話なんて、インターネットで検索すればずらりと出てくるから。」
「私の場合、自分で自分の墓穴を掘ったようなものですね・・・。」
「もう反省は良い。それより田畑のそういった復讐行為を何とかしないと、晶子の今後が大変だから・・・。」

 俺はうんと思案する。田畑が自分の立場を悪用した報復に打って出たら逆襲できるような方法というと何があるか・・・・!そうだ。あの手があるか。少々姑息かもしれないが、この際そんなことは言ってられない。晶子の今後かかかってるんだから。

「今度の週末に俺がちょっとしたものを買ってくる。晶子は常時それを身につけて、田畑が絡んで来たらスイッチ一つ押して徹底抗戦する。それで場合によっては田畑の首が飛ぶ。」
「何なんですか?それ。」
「それは見せてからのお楽しみ。それまでは極力田畑に近付かないようにしろよ。」

雨上がりの午後 第1033回

written by Moonstone

 互いに悪かった点は出尽くした。だからもう謝り合う必要はないだろう。堂々巡りになるだけだ。それより俺が去ってから何があったのか、今はそれが知りたい。
 俺が尋ねると、晶子は神妙な面持ちで答える。

2002/12/29

[見たいんだけどなぁ〜]
 先日お話出来なかったことを今日。昨日の更新で「Access Streets」に加えたリンク「魔法遣いに大切なこと」公式サイト。私がこれを加えた理由は簡単明快、主人公(菊地ユメ)が気に入ったからです。安直だ、と思われるでしょうね。でも以前話したと思いますが、私が漫画や小説などを新規に買ったりする理由は「絵柄が自分の好みに合うから」というものです。今回も菊池ユメの絵柄が気に入って、急速に興味が膨らんでリンクフリーなのを知って早速リンクに加えたということなんです。
 とりあえず予告編ムービーを見たんですが、現代世界と魔法が融合した世界が感じられて良かったです。アニメは来年1/9から放送なんですが、時間が深夜2時台という、私が寝るべき時間帯なので見れそうにないです(T-T)。ユメの声を実際聞きたいんだけどなぁ〜。
 動くユメが見られない分は、コミックでカバーすることにしました。今帰省していて、自宅がある地域にはない大きな本屋に行く機会があると思うので(なかったら自分で作る!)、帰省土産みたいになりますが買って帰ろうかと思います。あー、本当に楽しみだなぁ〜。どんなアニメになるんだろう?
「晶子に謝られたら・・・、俺はどうすりゃ良いんだよ。」

 俺は溜息を吐く。白い吐息が宙に広がり、闇に溶け込んでいく。

「晶子の言葉に聞く耳を持とうともしなかった俺は、自分可愛さに自分の耳を塞いだんだ。晶子から終わりの言葉を聞きたくない。その前に俺から言ってやる。・・・そんなことしか頭になかった。信じて裏切られることより、疑って安心することを選んだんだ・・・。臆病って、こういうのを言うんだよな。」
「臆病だなんて・・・。」
「今まで何度も痛い目に遭って来たから、先に防衛本能っていうか、そういう考え方に走っちまったんだ。智一から最初に噂話を聞いたときには、晶子を信じる、なんて言っておきながら、何時の間にやら晶子を信じるっていう気持ちを投げ捨ててた。田畑と何かあるんじゃないか。そんなことばっかり考えてた。だから頭ごなしにあんなことを言ったんだ。・・・そう思う。」
「それも元はと言えば、私が田畑先生と必要以上に仲良くするっていう、噂になるようなことをしたのが原因ですよね・・・。」

 晶子はしんみりした表情で言う。

「私、やっぱりまた調子に乗ってたみたいです。前に伊東さんからデートを申し込まれた時みたいに・・・。祐司さんに言わなきゃ良い。自分一人で解決出来るから言わなくて良い。そうやって思い上がってたのがあると思うんです。最初から噂になるようなことをしてなければ、今回みたいにこじれなくて済んだと思うと、自分がつくづく馬鹿に思えます・・・。」
「潤子さんが言ってたけど・・・タイミングが悪過ぎたな。互いにさ。」
「そうですね・・・。」
「もう互いに悪かった点は分かったみたいだから、謝り合いはもう止めよう。それより晶子。今日俺が走り去ってからはどうなったんだ?」

雨上がりの午後 第1032回

written by Moonstone

「それ以前に、私がもっと毅然と対処していれば、ここまで問題をずるずる引っ張らずに済んだんです・・・。変に気を使って返事を引き延ばしたから、自分に気があると思わせてしまったんです・・・。私は祐司さんが悪いとは思ってません。変な気の使い方をして問題をこじれさせてしまった私の方が悪いんです。・・・御免なさい・・・。」

2002/12/28

[御用納めの夜]
 昨日は所謂「御用納め」でした。まあ、仕事は勿論通常どおりやってましたが。で、区切りがついた段階であとは来年に持ち越し、として、夜の街に食事に繰り出しました。もっとも、今は台所が封印してあるので、食事は外食か食器を汚さないようなものに限定されるんですがね。
 行き先は昼食によく行く寿司屋。勿論ランチ(その寿司屋では土日もランチメニューがある)ではなく(当然だわな(^^;))、牡蠣の釜飯と寿司、そして枡酒と洒落込みました。原則酒は飲めないんですが(薬よりアルコールの吸収が早いので時間をずらさないといけない)、どうせ明日は帰省する日だし、急ぐ必要も無いし、ってことで枡酒を2杯戴きました。甘口で飲みやすい酒なんですが、調子に乗って飲みすぎると後が大変なので、2杯にとどめておきました。うーん、自制心は効いてるな(?)。
 その寿司屋は地域では伝統ある店なんですがサービス精神が行き届いた店でして、ネタの種類も豊富で独自の処理を施してあるので、単に生物を食べさせるというのではなく、「この店の寿司」を食べてもらう、という配慮があります。その上回転寿司とよく似た、一皿120円(トロと巻き寿司除く)という制度もあって行きやすいので私は気に入っています。たらふく飲んで食べて約5000円なら安いでしょう?これで満足した私は帰途に着き、今日の(お話の時点では昨日)帰省準備とページ更新の準備をしています。充実感と満足感で良い気分です。酒が入っているせいもあるかな?(笑)楽しみながら食べる食事は良いですね。
そのために訴訟沙汰にでもなったら、やはり俺が前面に出て守るものを守らなきゃならない。そうでなかったら、晶子の彼氏としての俺の存在意義が問われる。
 ・・・まあ、とりあえず晶子との関係が修復出来たことだし−俺が一方的に打ち切ったんだが−、気まずい雰囲気の中でバイトを続けなきゃならないということはなくなった。バイトが終わってから晶子が相談を持ちかけてくることは十分考えられる。その時は親身になって対策を考える必要がある。それが俺の役割だ。

 今日のバイトも終わった。始まりこそギクシャクしていたが、今はそんなごたごたがあったことが嘘のようだ。俺と晶子は何時ものように手を繋ぎ、寒風を凌ぐように身を寄せ合っている。勿論、俺の首には晶子手編みのマフラーが巻きついているし、指にはペアリングの片割れが嵌っている。
 「仕事の後の一杯」では俺と晶子双方、潤子さんから窘められた。怒鳴ったり押し付けがましくなかった分、余計に心に響いた。パートナーなら常に情報交換を。その場その時で全てを決めちゃ駄目。そしてとどめに「信じること」。俺が最初に智一の口から噂話を聞かされた時散々自分に言い聞かせた言葉を、俺は何時の間にか忘れていた。傷つくことを恐れるあまり。
 道程半ばにしてまだ会話はない。何と切り出して良いのか分からない。今回の件は潤子さんの言ったとおり、俺に黙って全てを片付けようとした晶子も悪いが、晶子を頭から疑ってろくに言い分も聞かずに関係断絶を告げたことが一番問題だ。やはりここは、俺から話を切り出さないとな・・・。

「・・・今日は・・・悪かった。御免。」

 俺は晶子の方を向いて言う。晶子は俺の声に反応するかのように俺の方を向く。その目や表情からは疑念や怒りとかいったものは感じられない。

「俺が晶子の言うことを聞いてれば、否、それ以前に晶子を信じてれば、一方的に言うだけ言って・・・もう終わりだ、なんて最後通牒を突きつけることはなかったよな。・・・本当に悪かった。」
「私の方こそ・・・祐司さんが居ながら祐司さんを頼らなかったんですから、祐司さんを信じてなかったと言われても仕方ないですよ・・・。」
「晶子・・・。」

雨上がりの午後 第1031回

written by Moonstone

 こういう時こそ俺が前面に出るべきだろう。晶子を守るために、そして自分自身を守るために。あの浮名流しの男を晶子から完全に引き離して、言い寄ることを諦めさせなきゃならない。

2002/12/27

[終わったぁ〜!(^^)]
 一昨日ひいひい言いながら書いていた年賀状ですが、昨日無事に全て書き終わりました。否、無事とは言えないかな。書き間違えて修正液で慎重に消して上書きしたりとかしたし。今回は手書き部分が多かったですからね。間違う数もそれなりに増える、と。必然的ですな。
 職場の掃除も終わりましたし、あとは家の掃除だけか・・・。正直、これが一番面倒なんだよなぁ。とはいっても埃を払って掃除機かけておしまい、って程度なんですが、私は掃除が嫌いなタイプなんで、それすらも面倒に思えるんですよ。台所は掃除が終わって封印してあるんで、洗い籠さえ洗ってしまえば完了。これはネットを切ってからでも出来ますね(^^)。
 何だかんだ言いながら今年一年どうにかここまでやってこれました。リスナーの皆様、そしてご来場の皆様、ありがとうございます。とはいっても、この年末年始はシャットダウンしないつもりですので、普段どおりお越しください。1/1にはささやかながら更新するつもりですので、宜しくお願いしま〜す(^^)。
 晶子から今回の問題について相談を持ちかけられたら、果たして俺は耳を傾けようとしただろうか?眠さで機嫌が悪くなっていたということはないと思うから−今日だってぶっ倒れそうになったから智一の厚意に甘えて帰ることにしたんだ−、多分相談に乗る構えは取ったと思う。
 問題はそのあとだ。問題があの田畑絡みだと知ったら、潤子さんの言ったとおり、俺は激昂して殴りこみに向かったかもしれない。否、そうしただろう。晶子に手を出すな、と。その点からしても、晶子が俺に黙っていたのは、俺の性格をよく把握しているという証拠だろう。それに引き換え、俺は・・・。

「さあさあ、そろそろ食べないと料理が冷えちゃうわよ。」

 潤子さんの一転して陽気になった声で、俺は目の前の夕食に意識を向ける。折角作りたての食事が食べられる機会だってのに、ごたごたに気を取られてすっかり忘れてた。バイトが始まる時間も迫っている。こりゃ急いで食べないと・・・。
 俺は、いただきます、と言って食べ始める。少し遅れて横から同じく、いただきます、という声が聞こえる。料理を掻き込むように食べていく。本当はゆっくり味わいながら食べたいんだが、時間が迫っているからそうも言ってられない。今回の騒動の余波がこんなところにも影響を及ぼしているのか・・・。田畑同様、何処までもしつこくついて回るもんだな・・・。
 食べ終えた俺は、ごちそうさまでした、の一言と共に空になった皿や器が乗ったトレイを差し出し、潤子さんが受け取ったのを見て席を立ち、着替えるためにカウンターに入り、奥へ向かう。着替えながら思う。気分がかなり軽い。ここに来た時とは大違いだ。晶子との関係に自ら終止符を打つようなことをしたが、それがどうにか修復出来て何よりだ。
 だが問題はまだ終わってない。田畑が文学部の助教授である以上、今後も晶子にちょっかいを出してくる可能性は十分すぎるほど高い。それに講義の単位やゼミに優先加入という餌までちらつかせて交際を迫ってきたことを考えると、それが不発に終わったら、その餌を脅迫の手段に切り替える可能性だってありうる。そうなると晶子のよく言えば優しい、悪く言えば甘い性格ではNOと言えなくなる状況に追い込まれるかもしれない。

雨上がりの午後 第1030回

written by Moonstone

「晶子ちゃんが最近疲れ気味の祐司君を気遣って黙っていたのは、今回は場合が場合だけにまずい行動だったと思う。祐司君が疲れているから、って言って相談に乗らないならパートナーとしての資格が問われるが、祐司君の性格から言ってその可能性は低いだろう。今回は場合が場合だけに尚更な。」

2002/12/26

[あー、終わらないーっ!(泣)]
 昨日からようやく年賀状を書き始めたんですが、例年どおりスタートが遅かったためにひいひい言ってます。このお話をしている時点で2/3ほど書き終わったくらいですかね。今回は宛名に加えて裏面のメッセージも多く手書きの文章を入れたので(イラストが小さいのを選んだから止むを得ない面もある)時間がかかるかかる。手と腰と肩が痛いです(泣)。
 前にもお話しましたが、買うのは早いんですよ、買うのは。そのくせ書くのが今までずれ込んだのはどういうことよ?と問われれば、普段は休息とページ更新&巡回(プラス、たまにメールや書き込みのお返事)で時間が過ぎ、休日は作品制作or一日休憩という状態ですから、書く時間がないんですよね。何せ今年度は40万HITを目標にしてますから、作品公開を疎かに出来ないんですよ。ページのアクセス数が増えて何になる、と言われると「それが一つの目標だから」と答えるしかありませんが。
 現状では目標達成は楽観視出来ません。そのためにも年末年始は作品制作に没頭して、コンスタントに、しかも大量に御来場者数を増やす努力をするつもりです。来年は開始早々忙しくなるので、出来るだけ大量にストックしておきたいところです。でも、なかなか思いどおりにいないんですよね、これが(^^;)。
「・・・はい。」
「ま、お腹いっぱい食べてしっかりバイトしてから、二人でじっくり反省してみることね。晶子ちゃん。先に渡すべきものを渡しておいたら?」
「はい。」

 晶子は足の上に乗せていた包みからあるものを取り出す。・・・俺が投げ捨てたマフラーだ。続いて晶子がセーターの襟元に手を突っ込んであるものを取り出す。・・・俺が投げ捨てたペアリングの片割れだ。どちらも俺と晶子の絆を示すものだ。

「受け取って・・・くれますよね?これ・・・。」
「・・・ああ。」

 俺はまずマフラーを受け取る。ふんわりした手触りが心地良い。続いてペアリングの片割れを受け取り、元の位置に、左手の薬指に嵌める。ひんやりした感触が次第に弱まっていき、指に馴染んでいくのが分かる。さっきまでなかったのが当たり前の感覚だったのに、今は指に感じる軽く締め付けるような感覚が戻ってきたという感じがする。

「まずは一件落着のようだな。」

 それまで黙っていたマスターから声がかかる。

「祐司君は早とちりだったし、晶子ちゃんはだんまりだった。それが悪い形でぶつかって今回の騒動になったわけだ。パートナーを自称するなら、些細なことでも、相手が疲れていても相談を持ちかけて対策を考えあうのが理想的だな。」
「はい・・・。」
「そう思います・・・。」

雨上がりの午後 第1029回

written by Moonstone

「晶子ちゃんはまかりなりにも祐司君が居るんだから、祐司君に相談を持ちかけて一緒に考えて貰ったり、必要ならその場に同席して貰うべきだったと思う。祐司君は・・・言わなくても分かるでしょ?」

2002/12/25

[こ、これはヤバいか・・・(汗)]
 年賀状はもはや手遅れ状態ですからもう良いんですが(良くない)、これはヤバいです。はい、親知らずがかなり顔を出して来たんです。以前から先端部分が顔を覗かせていることは知っていたんですが、最近本体部分が出てきました。舌で探ってみるとはっきり分かるまでになって来ました。
 親知らずには良い思い出はありません。まあ、普通良い思い出を作るようなものではないんですが、私は大学時代に下顎に生えた親知らずが上にではなく横に出てきてしまい、普通の歯医者では手におえず、市民病院の口腔外科で文字どおり手術を受けました。麻酔を打たれて顔にシートを被され、歯茎を切り開かれてノミ(?)とカナヅチで叩いて抜く(というより取り出す)、という恐ろしいことをされました。もうあんな思いは御免ですが(だって叩いている音と振動が伝わって来るんだもん(泣))、今の段階ではそれこそ口腔外科でないと抜けないので、もう少し様子見ですね。
 歯に限ったことではありませんが、一度悪くすると治療に時間と金がかかります。それは神経系疾患を重症化させた私が証言出来ます。はっきり言って洒落になりません。やはり何と言っても人間は身体が資本。大事にしたいものですね。
結論は勿論NO。だけど今後のことを考えるとあまり無下に突っぱねるようなことは避けた方が良い。穏便に自分から手を引いてもらうようなシチュエーションを考えてきた。それで得た結論は、人目につかないところで丁寧にお断りしよう、というものだった。」
「・・・。」
「ところが晶子ちゃんの思惑通りにことは進まなかった。問題の先生は今日まで答えを引き伸ばしたのは自分に気があるからだと思い込んでしまってて、尚も詰め寄ってきた。晶子ちゃんはやむなくきっぱりNOと言おうとした。その時に運悪く話を物陰から聞いていた祐司君が現れた。事情はこんなところ。」
「・・・。」
「双方タイミングが悪かったのよ。祐司君にとっては、晶子ちゃんが口説かれててきっぱりNOと言わないのは、祐司君が言ったように、自分と問題の先生を天秤にかけているように見えたし、晶子ちゃんにとっては、問題の先生が自分に気があると思い込んで迫ってくるからやむなく突っぱねようとしたところに、よりによって講義を休んで近道して帰ろうとしていたところで、ことの成り行きを聞いてしまっていた祐司君が現れた。第三者の私にしてみても、タイミングが悪かったとしか言いようがない事態ね。」

 そんなことがあったなんて・・・。まさか晶子が俺のことを気遣って、自分一人で問題を解決しようと思い悩んでいたなんて・・・。そんなことを今まで一言も口にしなかったし、顔にも出さなかったのは、自分自身の今後のことは元より、俺を気遣ってのことだったなんて・・・。
 潤子さんが、今の俺とマスコミが同じ、と言った意味がようやく分かった。俺は自分が傷つくのを恐れるあまり、ことの背景に深く突っ込まずに見たこと聞いたことだけが全てと即決して、それに対する態度を早々に表に出して決着をつけてしまったんだ。猿芝居をやっていたのは晶子じゃなくて俺の方だったんだ。だからあの時、晶子は俺を引きとめようとしたんだ・・・。なのに俺は話一つ聞かずに・・・おまけに無関係な人間に激情をぶつけて・・・。怒りと苛立ちに換わって出てきた罪悪感があまりにも重い。

雨上がりの午後 第1028回

written by Moonstone

「食べながらで良いから話を聞いてて頂戴ね。晶子ちゃんは今日返事をすると問題の先生に言って、それまで対策を色々考えてきた。ただでさえ疲れ気味の祐司君にこれ以上負担をかけるわけにはいかないから、自分一人で問題を解決する道を選んだってわけ。

2002/12/24

[書き損ねた・・・(大汗)]
 昨日は一昨日に引き続いて怠惰なことこの上ない生活を送ってました。6時間の間に朝昼晩三食を済ませたっていうんですから、ろくでもないですね(^^;)。昨日未明に台所回りを掃除して封印したので(単に年明けまで使わないということ)、食事は手っ取り早く済ませました。今日からは外食三昧の日々です。でもあまり高い店には行きませんけどね(特に今日は、そういう手の店はぼったくりメニューが並ぶし)。
 Photo Group 1の更新作業が思いのほか順調に進んだのを良いことに安心していたら、年賀状を書くのをすっかり忘れてました(爆)。毎年毎年、買う時は早いくせに書くのは遅いんだもんなぁ・・・。絶対元旦には届くまい。下手すると実家に持っていって書いてたりして。そ、それだけは避けたい(汗)。今週の帰宅からの空き時間は年賀状一色にしないと・・・。
 仕事は山場を越えたので、後は片付けくらいです。ですから早めに帰宅してえっちらおっちら年賀状を書く、と。裏面は手抜きも良いところですが(予め印刷された小さなイラストだけ)、今の財政事情を考えると止むを得まい、ということで。来年から年賀状書くの止めようかな・・・。面倒だし。
 俺が沈黙したのを見計らったかのように、潤子さんはコンロの火を消し、フライパンの落し蓋を取る。そしてハンバーグと野菜を二つの皿に盛り付けて、電子レンジの加熱調理を始める。加熱調理の間に二つのトレイにハンバーグと付け合せの野菜が乗った皿とサラダの入った器を乗せる。あとはポタージュスープの加熱調理完了を待つのみ、というとこところか。
 そこまで準備を整えたところで、潤子さんが再び俺の方を向く。怒ってるようには見えないがその真剣な表情を前にすると、事実と思ったことを素直に話さないといけないという気分になってくる。「落としの達人」と言われる刑事が容疑者に迫る時は、こんな感じなんだろうか?

「今の祐司君の心理状態じゃ、晶子ちゃんから言っても聞く耳持たないみたいだから、私が代弁するわね。晶子ちゃんはね、最初からNOと言うつもりだった。ただ、問題が後々まで尾を引かないように思案してたのよ。」
「え?」
「晶子ちゃんが祐司君に相談を持ちかけなかったのは、祐司君が問題の先生を敵視しているから、晶子ちゃんを問題の手段で口説きにかかってることを知った祐司君が怒って実力行使に訴える危険性があったこと、それに祐司君が今回の問題はあくまで自分関連のものだから、自分で処理するのが適切だと思ったこと、もう一つ添えると、今後の講義やゼミの選択のことを考えると単純に突っぱねたら問題の先生がどういう対抗手段に打って出るか分からないから、その場その時にNOと言えなかった。理由は以上三点。質問はある?」

 俺は無言で首を横に振る。チン、と電子レンジの加熱調理終了の音が鳴る。潤子さんは電子レンジから二つの器を取り出してラップを取り、湯気が立ち上る器をトレイに乗せ、炊飯ジャーから御飯を二人分よそってトレイに乗せて、トレイを俺と女・・・晶子に差し出す。俺と晶子はそれぞれ、ありがとうございます、と言ってトレイを受け取る。

雨上がりの午後 第1027回

written by Moonstone

 潤子さんの問いかけに俺は答えられない。確かに女がNOと言わなかった理由なんて聞いてない。俺の目の前でNOと言わなかった事実。それだけをもってして俺と田畑を天秤にかけて、傾きが決まったから天秤から取り出そうとしている、だったら取り出される前に自分から出てやる、と思ってマフラーと指輪を投げ捨ててその場から走り去ったんだ。

2002/12/23

[ね、眠い・・・]
 昨日は寝たり起きたりを繰り返していたため、意識がはっきりしません。やりたいこと、やらなきゃならないことはまだあるんですが(年賀状なんてまだ白紙だぞ、おい(汗))、どうやら深夜にごそごそやることになりそうです。何だか夜行性化がどんどん進みそう・・・(汗)。
 一応「追加更新予定」とぶち上げましたが、そこまで身体がもつかどうか甚だ疑問です。出来なかったら御免なさい(_ _)。どのみち更新しても大してアクセス数には影響ないグループなんですけど、今時期に公開しないと時期を逸脱しちゃいますからね。ま、それならそれでも仕方ないんですが。
 そんなわけでこれをお聞きいただいている頃には、えっちらおっちら作業をしているか、他のことをしているか、或いはくたばっているかのどれかだと思います。何が更新されるかどうかはアクセスを繰り返してください。で、午前中までに更新がなければ明日以降になると思ってください。期待させといて更新はこれかい、と思われるかもしれませんが、その辺がご容赦の程を。
「遅いくらいですよ。」
「傷つくなら傷が浅いうちに、ってこと?」
「ええ。何で騙されてることが分かっているのに、猿芝居に付き合わなきゃならないんですか?こんな馬鹿馬鹿しい話なんてそうそうないですよ。」
「・・・祐司君。」

 潤子さんは、悪さをした生徒を嗜める教師のような目で俺を見据えて言う。

「祐司君は、マスコミの報道が全て事実だと思う?」
「いいえ。でっち上げたり上っ面だけ報道することもままあります。」
「そうね。それはつまり、自分の目や耳で捉えた情報が表面上のものだけでその背景に何があるかまで突っ込んでいない。そして時には視聴率や部数稼ぎのために自ら偽るってことよね。決め付けや憶測で記事を書く・・・。」
「・・・それで何なんですか?」
「マスコミのそういうところは、今の祐司君にも当てはまるってことよ。」

 鋭利な日本刀で一刀両断するかのように潤子さんが言う。「斬られた」俺は一瞬わけが分からなくなったが、直ぐに潤子さんの言いたいことを察する。俺が押さえた現場は上っ面に過ぎない、と言いたいんだろう。
 だが、女が俺に黙って俺と田畑を天秤に掛けていたのは−普通そんなこと公表しないか−事実だ。女は田畑の口説きにNOと言わなかった。これも事実だ。特に、餌をちらつかせての口説きにNOと言わなかったということは、上っ面もへったくれもない。潤子さんは、それすらも上っ面を捉えただけ、と言いたいのか?

「単位とゼミの優先加入っていう餌をちらつかせての口説きに明確にNOと言わなかった事実が何で、上っ面だけ捉えたものになるんですか?!」
「じゃあ祐司君は、晶子ちゃんがNOと言わなかった理由を晶子ちゃんの口から聞いた?」

雨上がりの午後 第1026回

written by Moonstone

「まあ、今回の晶子ちゃんの行動に問題があったのは間違いないけどね。」
「問題があったから終わったんです。約束を破ったんですから。」
「その約束も晶子ちゃんから聞いたけど、現場を見たら即終わりってのは、結論の急ぎ過ぎじゃない?」

2002/12/22

[何とか実現出来ました(^^;)]
 長らく夢となっていた文芸部門6グループの揃い踏みが出来ました。一月以上前からコツコツ準備を積み重ねてきた甲斐があったというものです。勿論金曜日は明け方近くまで起きてましたよ。圧縮ファイル用ファイルの作成(圧縮ファイルの拡張子は原則.htmです)や圧縮ファイルの更新、完成済み作品の校正といった細かい作業をやって、昨日で残りのグループの作品を仕上げたというわけです。
 流石に疲れましたが、やはり充実感や達成感はこれまでと違いますねぇ。何せ何ヶ月ぶりに更新というグループもありましたし、足並みを揃える為に続きを書いたグループもありましたから。更新内容を見て唖然呆然とされたかもしれませんが、期間限定作品じゃありませんからゆっくり読んでやってください。感想くれるともっと嬉しいんですけどね〜(さり気ないつもり(笑))。
 年末を飾るに相応しい(?)大量更新の後はさっぱり、ということはありません。時間の関係で間に合いませんでしたが、Photo Group 1で新写真集の作成準備を進めていますし、広報紙Moonlight PAC Editionの最新号発行も控えています。この連休の間、退屈させないようにひと踏ん張りしますので、お付き合いくださいますよう宜しくお願いします。
『こんな条件は滅多にないことだよ。これは君を見初めたからこその話なんだ。僕としても真剣に君と付き合いたい。勿論、普段はこういうところで話をするような秘めた関係になるけどね。』その男は、教官なんですけどね、そう言いました。それに対して横の女は一度もNOと言いませんでした。『君だって彼氏に黙って考えてたんだろ?』って詰め寄られたら『それはそうですが』って躊躇うような素振りを見せて、『それだけ君の気持ちは揺れてるってことだ。』って言われたら何も言えない。そしてさっきの口説き文句を暢気に聞いていた・・・。まだ再現する必要がありますか?」
「その必要はないわ。それは晶子ちゃんからも聞いたから。」
「だったら誤解もへったくれもないでしょうに。」
「その会話の背景まで踏み込んだの?」

 会話の背景?潤子さんも妙なことを言う。俺と田畑を天秤に掛けてた以外にどういう背景があるっていうんだ?

「背景も何も、俺と教官を天秤に掛けてた以外に何があるっていうんですか?」
「・・・違うのよ、祐司君。」
「何も違いません。潤子さんも俺がさっき再現した現場の状況を聞いたんでしょう?それが事実なんです。事実は覆しようがありません。そうじゃないんですか?」
「・・・ここまで頑なになっちゃうなんてね・・・。」

 潤子さんはコンロの日を緩めてフライパンに落し蓋をする。そして湯が煮立っている鍋にスパゲッティの束を入れて鍋の枠に沿うように分散させ、スパゲッティが柔らかくなっていくのに合わせて菜箸で軽く突付いてスパゲッティ全体を湯の中に浸け込む。
 潤子さんは俺が頑なだと言う。さしずめ俺は、湯に入れられる前のスパゲッティか?柔らかくしたいんなら、それだけのものを示して貰わないと無理だ。スパゲッティが湯で柔らかくなるように。まあ、何を示されたところで事実は覆りやしない。言い訳はスパゲッティを柔らかくする湯にはなりえない。

雨上がりの午後 第1025回

written by Moonstone

「『君は彼氏と別れて、僕と付き合ってもらう。僕の担当の講義の単位とゼミへの優先加入もセットでだ。』

2002/12/21

[何様のつもりだ、アメリカ!(2)]
 (昨日の続きです)また、アメリカはイラクが飛行禁止区域を飛ぶ時刻機に攻撃してくるから危険だ、と喧伝していますが、この飛行禁止区域を勝手に決めたのはアメリカとイギリスです。これには何ら法的根拠はありません。そして自分達が勝手に決めたその区域を無差別爆撃しているのですから、イラクが国連憲章51条に基づいて自衛のために反撃するのは当然です。それを持ってしてイラクを危険視すること自体、アメリカの無法ぶりが現れているといえます。
 また、アメリカはイラクとテロ組織アルカイダとの関係を喧伝していますが、今の今までその関連を示す証拠を何一つ示せないでいます。あの悪名高き国際的諜報機関CIAなどを総動員しても、です。ありもしないことをでっち上げてあいつらは危険だ、と喧伝するのは、拉致問題を捻じ曲げて共産党は危険だ、と喧伝する公明党=創価学会と同レベルの、極めて悪質な行為です。これこそ無法行為として厳しく糾弾されなければなりません。
 アメリカという国が自由と民主主義の国というのは、日本人の勝手な幻想に過ぎません。アメリカは日本以上に軍隊や大企業が幅を利かせる、右翼国粋主義の国であり、これまで国連でも国連憲章違反とされたパナマ、グレナダ侵攻などをやってきた、自国の利益に反する国家に対する侵略、干渉を当然視する国家です。このような国に国連本部があること自体が間違っていると言えます。国際機関が無実かどうか検証中の他国に一方的に軍事攻撃を仕掛けようとし、それを国家元首や政府高官が高言する様は異常と言わざるを得ません。
 アメリカと関係の深い中東諸国は一致してイラク攻撃に反対しています。また、アメリカと同盟関係にある欧米諸国もイギリス以外はドイツをはじめ、異論や懸念を表明しています。暴走するアメリカの尻馬に跨っているのはイギリスと日本のみです。まして日本は憲法で戦争放棄を宣言している国。それが戦争に組すること自体許されないことなのです。日本は即刻アメリカへの軍事協力を止め、自衛隊を帰還させ、アメリカに戦争を止めるよう進言すべきではないでしょうか。(おわり)
 潤子さんはカウンターの内側に入ると、マスターに伝票を見せて、自分は料理に取り掛かる。先に注文の品を作るつもりなんだろう。マスターはコーヒースタンドのアルコールランプに火を灯す。この季節、ホットコーヒーの注文は多い。生演奏が聞けるだけじゃなくて料理が上手いというのが、この店の繁盛の理由だからな。
 潤子さんはパスタを茹でるための大鍋に湯を入れてコンロにかけ、火を点けると今度はレタスを千切ったりキャベツや胡瓜を切ったりする。どうやらスパゲッティの注文が入ったらしい。手際が良く、そして機敏な潤子さんの料理の様子を見ているだけでも飽きない。
 サラダが二人分出来たところで、マスターは冷蔵庫からハンバーグの形に整えられた挽き肉やサラダが入った器、ポタージュスープが入っている容器を取り出し、コンロにフライパンをかけて挽き肉を乗せる。付け合わせの人参とジャガイモも−先に茹でてある筈だ−そのフライパンに入れ、二枚の皿にブロッコリーを−これも茹でてある筈だ−乗せる。そしてポタージュスープを二つのカップに注いでラップを被せて電子レンジに入れたところで、俺の方を向く。その表情は真剣というか、深刻というか、どっちにせよ決して安心出来るタイプのものじゃない。

「祐司君。晶子ちゃんから話を聞いたんだけど・・・喧嘩したんだって?」
「喧嘩じゃありません。終わっただけです。横の女が俺から別の男に乗り換えただけです。単位とゼミの優先加入をセットで。」
「それって違うわよ。」

 潤子さんはきっぱりと言う。晶子のいうことを真に受けているようだ。こういうことは先に言った方と女の方に分があるからな。無理もない。だが、真実は覆しようがない。俺はこの耳で話を聞き、この目で現場を見たんだから。

「何が違うんですか?俺とセット付きの別の男を天秤にかけてたのを、この目と耳で押さえたんですから。生の現場をですよ?」
「祐司君、完全に誤解してるわよ。」
「してません。さっきも言ったとおり、俺はこの目と耳で現場を押さえたんです。何ならその現場を再現してみましょうか?今でもしっかり覚えてますから。俺としては忘れたいんですけど心が忘れさせてくれないんですよね。まったく良い迷惑ですよ。」
「・・・聞く耳持たないってことね?」
「聞く耳持たないも何も、俺はこの目と耳で確認した事実を踏まえて言ってるんです。事実は覆しようがありません。何をどうしても。そうでしょう?」
「・・・事実なら、ね・・・。」

 潤子さんは溜息を吐いてハンバーグをひっくり返し、人参とジャガイモをフライパンの中で掻き混ぜる。香ばしい臭いが立ち込めてくる。

雨上がりの午後 第1024回

written by Moonstone

「こんばんは。」
「こんばんは、祐司君。・・・ちょっと待っててね。」
「ええ。構いませんよ。」

2002/12/20

[何様のつもりだ、アメリカ!(1)]
 今、イラクで国連検証査察委員会(UNMOVIC)と国際原子力機関(IAEA)による大量破壊兵器の査察が行われていますが、その報告書に対してアメリカとイギリスが「疑惑あり」と言って、先制攻撃への動きを強めていますが、これはまったく道理のない話です。
 イラクに対して大量破壊兵器の査察を求めた国連安保理決議1441では、査察を行うのはUNMOVICとIAEAであり、イラクに履行義務違反があった場合の措置について次の措置を決定するのは安保理であると明記されていて、この決議にはアメリカもイギリスも賛成しています。アメリカの国連大使自身「自動的な武力行使を排除した」と明言しています。アメリカやイギリスに、イラクに履行義務違反の疑惑があると報告書を判断する権限はありません。自分達が国連の上を行くとでも言いたいのでしょうか。
 更に先に述べたとおり、決議1441ではイラクに履行義務違反があった場合の次の措置を決めるのは安保理と明記されていて、自身もその決議に賛成しておきながら、イラクに履行義務違反の疑いがあるということを口実に武力行使の準備を進めるのは、自身も賛成した国連決議を踏みにじると同時に、自衛のための反撃以外の武力行使を禁じた国連憲章51条違反に他なりません。日本がイージス艦を派遣したのは、アメリカとイギリスの無法に手を貸すのと等価です。
 アメリカとイギリスは戦争をしたがっているとしか言いようがありません。特にアメリカは自身の中東での石油利権確保のために邪魔なイラクを攻撃したいのであって(ブッシュ大統領の支持基盤は石油業界が主体)、そのために国際的ルールである国連憲章や自身も賛成した安保理決議に違反するようなことは許されてはなりません。「ならず者国家」はアメリカやイギリスの方であり、大量破壊兵器を現に有するのもアメリカやイギリスです。自分達は持って当然、他の国は持ったら攻撃、というのは道理がありません。アメリカとイギリスは二重に矛盾した行動を慎まなければなりません。(続く)。
 俺はベッドから出て眠気覚ましに流しで顔を洗い、タオルで水気を拭き取ってから椅子の背凭れに被さっていたコートを羽織り、鏡の前に立って髪の乱れを整えてから、鍵を持って家を出る。外の冷気が一層鋭さを増して頬を首筋に絡みつく。マフラーは・・・捨てたんだったな。俺はコートの襟を立てる。これで多少はましになった。マフラーはまた新しいのを買うか・・・。それくらいの金はあるからな。
 ドアに鍵をかけてすっかり暗くなった通りに出てバイト先へ向かう。あの女は・・・来てるんだろうか?先に行ってる。そうに違いない。そして俺が店に入るなり、言い訳を始めるんだろう。天秤の傾きが変わった言い訳なんざ聞きたくない。傾きが代わったっていう事実だけで沢山だ。
 今日からもうあの女の家に行くことはない。歌は一人で練習できるだろうし、予定していたコーラスは潤子さんに代役を頼むから行く必要はない。家に帰って暖房が効くまでの間、インスタントコーヒーで身体を温めることに戻ると思うと、むしろせいせいする。誰にも気兼ねすることなく、自分のことだけ考えてりゃ良いんだから。
 丘の上に立つ白い建物が見えてくる。窓から飛び出す灯りが何故か温かく感じる。気の良いマスターと優しい潤子さんの下でバイトに励む毎日が今日から始まる。それ以外は何も考えなくて良い。考える必要もない。この耳で密談を確かに聞いた以上、それに関する言い訳に聞く耳持つ必要なんてない。そんな暇があるなら、潤子さん手製の夕食を味わうことを楽しんだ方がずっと良い。
 ドアを開けると、熊さんマスターの髭面と・・・こっちを振り向いたあの女が目に入って来る。カランカラン、というカウベルの音がこれからの嵐を告げているように聞こえる。・・・聞くことなんてない。聞く必要なんてない。俺はバイトをしに来たんであって、わかりきったことを改めて聞きに着たんじゃない。

「こんばんは。」
「話をすれば何とやら、だな。こんばんは、祐司君。」
「こんばんは、祐司さ・・・」
「誰が名前で呼んで良いって言った?」

 俺が睨みながら言うと、女は口篭もって俯く。マスターは無言だ。俺はコートを脱いで、女と一つ挟んだ席に腰を下ろす。座り慣れた位置から一つ右にずれたから違和感があるが、直ぐに慣れるだろう。このバイトだって、最初は注文を取るのもおぼつかなかったのが一月もしたらさらさらとメモ出来るようになったんだから。

「潤子さんは?」
「今、オーダーを取りに行ってる。もう直ぐ戻って・・・と思ったら、来たぞ。」

 俺が客席の方を向くと、エプロン姿の潤子さんが駆け寄って来る。その表情に笑顔はなく、深刻ささえ浮かんでいる。どうせあの女が自分が被害者みたいな顔してあれこれ言ったのを聞いたんだろう。こういう時、決まって男の方が加害者にされるんだから始末が悪い。

雨上がりの午後 第1023回

written by Moonstone

 まだ眠気は残っているが、寝る前よりかなり楽になった。やっぱり寝て正解だったようだ。背中が寒い。暖房を入れなかったから部屋は外の冷気と歩調を合わせて冷えている。こういう時は保温するのが親切というものだろうに・・・。って、部屋に文句たれても始まらないか。

2002/12/19

[お話することが・・・]
 ありません(爆)。昨日は仕事が忙しくててんてこ舞いしてたので、帰宅して夕食を済ませた後は、連載の書き溜めしかしてません。写真の閃光をするつもりが、寒さ凌ぎにベッドに潜ってたらまた寝てしまって・・・(^^;)。最近こんなんばっかりです。まあ、宮仕えの社会人の平日なんてこんなもんじゃないでしょうか?連載の書きためというのは私特有でしょうけど。
 その連載書き溜めのファイルは今4つ目なんですが、現時点で300kB超。毎日4kBくらいずつ書いていっているんですが、結構溜まるもんです。それでも消費が多い時はごっそり持ってかれちゃうんですけどね。Novels Group 3に掲載する時点でChapter100突破は確実。それで終わりはまだ見えない。こんな長い作品になるとは・・・。私の計算違いを他所に、連載は間もなく4度目の年越しを迎えます。これからもこのページと共に続けていきたいものです。
 電車が徐々に減速を始め、これまた見慣れたホームに入る。窓の風景の流れが止まって少しの間を置いてドアが開く。俺は席を立って電車を降り、改札を通って自転車置き場へ向かう。ぎっしり詰まった自転車の中から自分の自転車を取り出し、押して外へ出てサドルに跨る。ペダルを漕ぎ始めると、またあの女との思い出が鮮明に蘇ってくる。何年かぶりに自転車の後ろに人を乗せて走ったことを・・・。だが、今、俺の後ろには誰も居ない。元に戻ったんだ。そうだ。それだけの話だ・・・。
 寒風が頬を掠めていく中、自転車を運転していく。その風が妙に心地良く感じる。この風があの女との思い出を全て吹き飛ばしてくれれば良いんだが、走った時と同様、そんなに都合良くはいかないだろう。また傷と痛みを引き摺って過ごす日々が暫く続くのか・・・。前の教訓を踏まえて二度と女に目を向け、耳を傾けるんじゃなかった、とつくづく思う。自業自得の一言だな、まったく・・・。
 あの女と出会ったコンビニの横を通り過ぎ、自分の家に辿り着くと、何時ものとおり自転車を押してドアの近くまで持っていき、鍵を開けて中に入る。薄明かりが差し込む室内はしんと静まり返っている。これも元に戻ったんだ。俺は溜息を吐いて鍵をかけ、鞄を机の上に放り出してコートを脱いで椅子の背凭れに放り投げ、枕元の目覚まし時計を5時半にセットし直して布団に潜り込む。時計を見たら3時半前だったから、大体2時間くらい寝られる。計算だ。
 急に眠気が強まってきた。瞼が重くなってくる。このまま夢から覚めて、女と縁のない一人の生活に戻れれば良いのに・・・。俺の願い事は叶わないように世の中動いてるんだろうか・・・。畜生・・・。

Fade out...

 ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ。
音域の高い規則的な音が深淵から聞こえて来る。ゆっくりを目を開けると、目に映るのは見慣れた濃い藍色一色の天井。目覚ましの音量が増してくる。俺は布団から手を出して目覚し時計のスイッチを押して音を切り、背面のスイッチを操作して音が鳴らないようにしてから、身体を起こす。

雨上がりの午後 第1022回

written by Moonstone

 聞き飽きたのを通り越して耳に馴染んだアナウンスが車内に響く。寝不足のところにひと暴れした上に気が緩んできたせいか、急に眠くなってきた。自転車で居眠り運転することはないが−上り坂でペダルを終始漕がなきゃならないから寝るどころじゃない−、この調子だと家に帰ってベッドに横なったら即KOだな。目覚ましをセットするのを忘れないようにしないと・・・。

2002/12/18

[年末年始のシャットダウンについて]
 これまで年末年始はシャットダウンして休養と作品制作につぎ込んできました。今は体力が著しく低下しているので、休養は不可欠です。でも、その反面、このコーナーを約1週間更新停止することが忍びなく思うのも事実です。たかが1週間、されど1週間。継続することは重要なことです。
 まだ不確定要素が大きいのですが、今年の年末年始はシャットダウンしないで最低限このコーナーは続けるか、1/1の0:00にぱっと更新するかいずれかを考えています。それはこれから暫くのお客の入りを見て最終判断を下したいと思います。お客も来ないのに更新するのも、ねえ(^^;)。
 今のところ後者が有力です。今まではタイムラグがありましたが、それを最小限に抑えて新しい年を新しい背景写真で(まあ、今までの使いまわしですが)迎えたいな、と。今年は年賀メールを発送しましたが、今年はどうしようかな・・・。これは実物の年賀状自体がまったく手付かずという毎年恒例の状態を(この時点で問題)どうにかしてから考えたほうが良いですね(^^;)。
・・・それにしても・・・神経を逆なでするような嘲笑を交えたからかいをしてきたとはいえ、あそこまでやる必要はなかったんじゃないか?ひたすら無視して電車に乗ればそれで済むことじゃなかったのか?潤子さんが言ってたゆっくり10数えろ、は行動にも当てはまることなんだな・・・。
 だが、あの話はこの耳でしっかり聞いちまった。自分が担当する講義の単位とゼミへの優先加入という「おまけ」までつけて交際を迫る田畑と、それに対してNOと言わず、俺と天秤に掛けて迷っていたあの女の会話・・・。何が違うのか分からないが、NOならNOと言える筈だ。なのにNOと言わずにいたということは、そして俺に黙っていたということは、俺と田畑を天秤に掛けて、それが激しく揺らいでいたという何よりの証拠だ。
 結局1年ちょっとで終わっちまったか・・・。電車の窓の外の風景がビデオの早回しのように流れていく中、様々な思い出が蘇ってくる。「忘れることなんて出来ませんよ。」あの女は以前、そう言った。全速力で走ったら心から零れ落ちていくと思ったけれども、実際は何一つ零れ落ちちゃいない。むしろ心にしっかりこびりついて離れようとしないように感じる。
 疎ましい。憎らしい。こんな思い出はとっとと捨て去りたい。所詮時間が解決してくれるのを待つしかないのか?人間の心ってものは、どうしてこうも都合の悪いように出来てるんだろう。忘れたくないことはあっさりと忘れてしまい、忘れてしまいたいことはしつこく抱きかかえて離さない・・・。これも神や仏とやらの嫌がらせの一つだろうか?弱いものが苦しんでいても助けもせず、強いものがより強く、よりやりたい放題やり倒すのを眺めている・・・。嫌がらせもここまでくれば完璧だ。

「ご乗車ありがとうございました。間もなく胡桃町駅です。お降りの方はお忘れ物のございませんよう、よくお確かめ下さい。」

雨上がりの午後 第1021回

written by Moonstone

 暫く電車に揺られてふと下を見る。右膝には血飛沫が転々と付着している。さっきのガキ共の一人の顔面に膝蹴りを入れたときに付いたものだろう。家に帰ったら着替えないといけないな。

2002/12/17

[マスコミはまた戦争の旗を振るのか!]
 12/13、各界の著名人(小田実、なだいなだ氏など)が呼びかけたイラク攻撃反対集会に2200人が渋谷公会堂に集結し、集会後、国会までデモ行進しました。果たしてこの事実をご存知の方はどのくらい居るでしょうか?商業新聞を読んでいる方で知っているという方は、朝日新聞を余程隅から隅まで読んでいるという方でしょう。何せこの集会を報じたのは商業新聞では朝日のみ、それも社会面最下段僅か17行という扱いだったからです。
 昨日、横須賀基地からイージス艦がインド洋に派遣されました。軍事行動に給湯活動という形で協力すること自体が集団的自衛権の行使であり、憲法違反であることは明白ですが、イージス艦を派遣することでイラクへの戦争準備を進めるアメリカ軍により積極的に貢献しようという意図は見え見えです。これは山崎自民党幹事長も明言しています。
 護衛艦では居住性が悪いとか理由付けしていますが、居住性が問題ならとっとと帰ってこれば良いのです。何も無理してアメリカ軍に協力する必要はありません。それより必要なことは、日本がイラク攻撃回避へ向けてアメリカに進言することや、イラクに誠実に査察を受けることを求めるなど、国連を中心とした平和的解決に努力することではないでしょうか?
 こんな戦争協力に向けたきな臭い動きがあるにも関わらず、その戦争反対の動きを黙殺するというのは、事実上政府に肩入れし、戦争協力に賛同しているということです。マスコミは先の侵略戦争で文字どおり「大本営発表」を行い、国民を真実から遠ざけ、多くの犠牲者を出す手助けをし、その痛切な反省の元に再出発した筈です。それすら忘れたマスコミなどいい加減に見限り、戦争反対、平和的解決を正面から訴える「しんぶん赤旗」を読むべきです。

「泣いて悪いか。」
「「・・・。」」
「悪いかって聞いてんだよ!!ガキが!!」

 俺の力任せの蹴りが、もう一人の頭を捉えて横に吹き飛ばす。残った一人の腹にも間髪入れずに爪先蹴りを叩き込む。そいつは口から唾液か何かを吐き出してひっくり返る。俺は倒れてうめいているガキ共に容赦なく蹴りの連打を浴びせる。

「人おちょくるのも大概にしやがれ!!」
「す、すみません、すみません・・・。」
「すみませんで済んだら警察要らねえんだよ!!ああ?!」

 俺はガキ共の顔や腹に靴底を叩き込み、靴先をぶつける。そして痙攣している一人の髪を掴み上げてホームの屋根を支える鉄柱にその顔を力任せにぶつける。ぐしゃっという音がする。手を離すと、鮮血を鉄柱に塗りながらそのガキはずるずると倒れていく。俺は残る二人も同様に髪の毛を掴んで身体を起こさせ、一人には顔面に膝蹴りを入れ、もう一人には鳩尾(みぞおち)に爪先蹴りを叩き込む。そいつはそれで派手に嘔吐する。
 ホームの踏み切りが鳴り始めたところで、俺は「制裁」を止める。ガキ共は痙攣していて立ち上がる気配はない。俺はとどめに三人に満遍なく蹴りを浴びせて、程なくホームに入って来た急行に乗り込む。ホームがざわめく中、俺は人気が少ない電車の席に腰を下ろして、何食わぬ顔で電車が出るのを待つ。
 ホイッスルの音がしてドアが閉まり、電車がゆっくりと動き始める。誰かが呼んだらしい駅員が駆けつけて来るが、俺は電車に揺られてその場を後にする。少々胸がすっとしたような気がする。俺を挑発するようなことを言うからだ。相手が泣いてるからって調子に乗って嘲笑するようなあいつらが悪い。
 ・・・泣いてた・・・か・・・。急に重苦しい気分が垂れ込めてくる。今日この日であの女とはただのバイト仲間になったってわけか。否、仲間じゃない。単なる同僚だ。クリスマスコンサートの候補曲は変更しなきゃならないな。危うくぶっ倒れそうになるほど睡眠不足になる状況で、さらに半月後に押し迫った今になって変更するのはかなりきついが、あの女とはもう係わり合いになりたくないから・・・。あ、コーラスは潤子さんに頼めば良いことか。潤子さんは曲を知ってるし−演奏する曲は決定している−、CDを貸して少々練習してもらえば十分客に聞かせられるものになるだろう。

雨上がりの午後 第1020回

written by Moonstone

 その言葉が発せられた次の瞬間、そう言った奴の顎に俺の力任せの蹴り上げがヒットする。そいつは口から歯と血を吹き出しながらもんどりうって後ろに吹っ飛ぶ。

2002/12/16

[今日で今月も中日です]
 早いものでもう今月も折り返し地点です。というわけで背景写真を変更しました。前のよりちょっと分かり辛いかもしれませんが、建物の壁に門型のイルミネーションがあって、手前に汽車を象ったイルミネーションがあるんです。汽車が横に長い関係で撮影が難しかった覚えがあります。
 昨日は予想どおりダウンしてました。日曜日は日中ラジオを聞きながら転寝を続けるのがお決まりのパターンになったようです。まあ、金曜の夜から土曜にかけて滅茶苦茶な生活をしてますから、月曜日からの仕事に体のリズムを合わせるには丁度良いのかもしれません。さて、今日からまた頑張りますかね・・・。
 俺は改札を通ってホームに立つ。時刻表と時計を見比べると、あと2、3分で急行が来る。これから家に帰って・・・一先ず寝よう。智一の厚意は大切にしなきゃな・・・。俺は滲みが収まらない目をもう一度袖でぐいと拭う。これで家に帰ってベッドに潜ったら、まさしく泣き寝入りってやつだな。はは・・・。バイトが終わったらビールでも飲みまくるか。ぐっすり眠れるだろう。宮城と切れたあの夜の再現だな。

「おい、あの兄ちゃん、泣いてやがるぜ。」

 声の方を向くと、三人の中学生か高校生か分からない学ラン姿の奴らが、しゃがんだ姿勢で俺を見てにやついてる。再び腹の底からふつふつと怒りが煮え立ってくるのを感じる。

「おっ、こっち向いたぜ。」
「今から傷心旅行にお出かけかな?」

 その言葉で俺の頭の中で何かが音を立てて切れた。俺はその三人に向かって歩み寄る。そいつらはちょっとビビったような様子を見せつつ、嘲笑混じりのからかいを浴びせてくる。

「な、何だよ、やろうってのかよ。」
「おいおい兄ちゃん、痛いとこ突かれてお怒りか?」

雨上がりの午後 第1019回

written by Moonstone

 喉の喘ぎが多少収まったところで、俺は袖でぐいと目を拭うと正面を向く。まだ視界が滲んできやがる・・・。畜生。悔しくなんかない・・・。悔しくなんか・・・。悔しくなんか・・・。畜生・・・。

2002/12/15

[あー、薬使うんだった]
 更新が遅くなりました(^^;)。理由は簡単、夕食後に寝てしまったからです。昼間に作品1本書き上げた疲れと前日の寝不足が一気に噴出した感じです。こういう時にこそ睡眠薬を飲んで、心行くまで寝れば良かったんですが、なかなかそうは上手くいかないものです。横になったときも最初は軽い休憩のつもりでしたからね。
 文芸部門の揃い踏みまでに必要な作品はあと2つ。1つはちょっと考えれば直ぐ出来るものですが、もう一つはしっかり時間を確保しないといけません。果たして今日出来るか・・・。これまで連続してダウンしてきているだけに可能性は低いですが、何とか完成させて文芸部門揃い踏み、と行きたいところです。
 でも、よく考えてみたら、定期更新制度を撤廃したんですから作品公開の足並みを揃える必要なないんですよね(爆)。よく考えなくても分かるか(汗)。ま、まあ、「これだけ公開したぞ。読めるもんなら読んでみろぃ」ってな感じでやれば良いですかね。6つのグループが一堂に会することなんてそうそうないことですから。
 とうとう怒りが爆発した。俺の喉からあらん限りの怒声が迸る。

「俺に黙ってたのは、俺とそいつを天秤にかけてた以外に何があるっていうんだ!!俺とこれからも付き合う気があるから、問答無用で断るところだろうが!!そりゃ俺に話したくないよなあ!!単位とゼミの優先加入の餌がちらついてるんだからな!!」
「ち、違うんです!私は今日・・・」
「もうお前とはこれまでだ!!勝手にその浮名流しの教官と付き合え!!もうお前なんか知らん!!どうにでもしやがれ!!」

 俺は左手薬指に嵌っていた指輪を引き抜いて投げ捨て、首に巻いていたマフラーも解いて放り投げる。そして二人の間を割って走り出す。後ろから待って下さい、と声が聞こえるが、もう知らん。もう聞くことなんてありゃしない。俺は見事に天秤にかけられてて、傾きが決まったから天秤から取り出されるところだったんだ。それ以外に何もありゃしない。
 俺は走る。懸命に走る。目が熱くなってくる。途中車のクラクションがけたたましく鳴り響いたが、何があったかそんなこと知ったことじゃない。走ることで全てを捨てたい。あの女との出会いも、付き合うまでのストーカー張りの粘りを受けたことも、俺の心の変化も、告白も、共に祝い合った誕生日も、季節に絡まる思い出も、一夜を共にしたことも、出会って1年の記念日も、何もかも・・・!
 駅に着いた俺は、膝に両手をついて呼吸を整える。視界に入るアスファルトが滲む。そしてアスファルトに幾つもの染みが浮かぶ。・・・泣いてるのか?俺は・・・。悔しいのか?あの教官に女を取られたことが。悔しくなんかない。前に約束したんだ。今度あんな場を見たり噂話を聞いた時点で関係は終わりにするって。今更何で泣く必要があるっていうんだ・・・。
 畜生・・・。また女心に弄ばれちまった。また痛い思いを味わわされちまった。俺が掴んだと思った幸せはほんの一瞬で幻になるって、宮城との経験で学んだ筈だったのに・・・。やっぱり耳を貸すんじゃなかった。心を傾けるんじゃなかった。今度こそ、なんて思うんじゃなかった。結局俺が痛い目に遭うことは分かってたのに・・・。畜生・・・。俺の馬鹿野郎・・・!

雨上がりの午後 第1018回

written by Moonstone

「講義はどうしたんだい?」
「睡眠不足で頭がふらつくから、近道して帰ろうと思ったところだよ。」
「ゆ、祐司さん・・・。ち、違うんです。私は・・・」
「何が違うんだ!!この裏切り者!!」

2002/12/14

[寒さ感覚の計測による実証]
 仰々しいキャプションですが、要は温度計を自宅に導入したということです。勿論わざわざ買ったわけではありません。計測機器メーカーの展示説明会で貰った粗品(数種類から選べた)を持ち帰ってみたんです。湿度計も付いているという、粗品というには結構なものです。で、帰宅して直ぐに暖房を入れ、十分(1時間ほど)時間が経過した頃、メインPCが置いてある机の隅に置いておいた問題の温度計を見たところ・・・

14℃しかあらへんやん!(唖然)

 どうりで何時まで経っても寒い筈だわ。湿度が50%くらいあるから多少暖かく感じてただけか・・・。22度設定なんですが、その大半は自然の法則にしたがって上空を暖めてるわけですか、そうですか。・・・何か悔しい。

 話はころっと変わりますが、昨日「あたしンち」を見てて衝撃を受けました。

新田って、女やったんかぁー!(愕然)

 タイトルが「新田のカレシ」だったのでそこでまず目を疑ったんですが、実際に彼氏が登場して仲睦まじいところまで見せてくれてもう愕然。その彼氏に「この人が一番美人だね」と言われて舞い上がり、我に帰って号泣しながら走り去るみかんに同情しました。侮れん「あたしンち」(見てない人には分からんな。すみません)。来週が今年最後の放送ですか。そうですか。・・・特番なんか止めてくれ(切実)。
一体こんな人目につき難い所で何を話してるんだ?そんなに聞かれるとまずいことなのか?俺の頭の中に嫌な予感が続々と浮かんでくる。どうにか声が聞こえるところまで距離を詰めたところで俺は木の陰に身を隠して、晶子と田畑の会話を聞く。

「−そろそろこっちとしても明確な返事が欲しいんだよ。」
「それは先生の都合じゃないですか?」
「君だって今日まで考えさせて欲しいって言ったじゃないか。彼氏にも黙っておくって言ってまで。」
「・・・それは・・・そうですが・・・。」
「それだけ君の気持ちは揺れてるってことだ。」

 お、俺に黙って、だと?!晶子の奴、俺に黙って何を考えてたんだ?!俺に言えないことなのか?!一体何があったっていうんだ?!話を先に進めろ!俺に黙っていたことを言え、晶子!!

「僕は君の彼氏に浮名流しと言われたが、そろそろその汚名を返上したいんだ。君は彼氏と別れて、僕と付き合ってもらう。僕の担当の講義の単位とゼミへの優先加入もセットでだ。」
「!!」
「こんな条件は滅多にないことだよ。これは君を見初めたからこその話なんだ。僕としても真剣に君と付き合いたい。勿論、普段はこういうところで話をするような秘めた関係になるけどね。」
「・・・先生。私は・・・。」
「そうか・・・。そういうことだったのかよ。」

 俺は今にも破裂しそうな怒りを押し殺しつつ木の影から出る。俺の声の方を向いた晶子と田畑がそれぞれ驚いた様子を見せる。晶子は口を押さえ、田畑は目を見開いている。そりゃ驚くだろう。まさか俺が此処に来るとは思わなかっただろうからな!許せない・・・!絶対に許せない・・・!

「秘めた関係ね・・・。そりゃそんな条件がセットになってりゃ、人前で話は出来んよな。」
「君・・・。何時の間に此処に・・・?」
「フン、ちょっと前からだよ。お前とその女が付き合う話とセットの条件、それに口説き文句も聞かせてもらったぜ・・・。」

雨上がりの午後 第1017回

written by Moonstone

 やや朦朧としていた意識もくっきり輪郭を帯び、晶子と田畑の会話を聞きうける耳に集中する。

2002/12/13

[頭痛いっす・・・(泣)]
 キャプションには二通りの意味があります。一つは本当に頭が痛いということ。風邪のひきかけか何か分かりませんが、このお話をしている最中も重い痛みを感じます。暖房はかけてますよ(かけなきゃやってられない)。でも頭が痛いのには変わりありません。職場に居たときからずっと痛いです。
 もう一つは仕事が行き詰まっているということ。万全を期して実験に臨んだ回路がまったく動かない。更に何処から来たのか高周波(数十MHz)のノイズが信号経路に乗っかって、それを増幅するもんだから始末に終えない。おまけに入力段で発生するオフセット電圧(本来0Vであって欲しいところで何Vか勝手に発生する電圧)が回路の信号経路の許容範囲をオーバーしていて、出力段では振り切れちまいやがんの(怒)。6時間延々と試行錯誤を繰り返しましたが解決せず、今日(お話時点では明日)に持ち越しとなりました。
 正直言って、私には手が負えません。応援を頼んでも簡単に解決しそうにありません(ノイズの問題は原因が特定し辛いので尚更)。果たしてどうすれば良いものやら・・・。考えてるだけで憂鬱になってくるので、このくらいにしておきます。すんなり解決してくれれば良いんですが、そんなに上手くいった例がないし・・・。また病気が悪い方向へ向かいそう(汗)。
 俺と智一は挨拶代わりに手を挙げる。俺は足取りを確かめるように講義室を出て行く。ここんとこ、連日睡眠時間3、4時間ってのが続いてたから、とうとう身体が悲鳴を上げ始めたか・・・。人間ならストライキが暴動を起こすところだろう。まあ、今の腰抜け労働組合にストライキなんて出来やしないだろうけど。
 それより少々意外だったのは智一だ。まさかノート取りとそれを貸すことを自分から買って出るとは思わなかった。恋愛問題とこういう時は話は別、ってわけか・・・。智一の奴、嬉しい心遣いしてくれるもんだ。自分が困っている時に自ら手を差し伸べることが出来る奴こそ本当の親友だって言うが、智一は何だかんだ言っても、俺の親友なんだな・・・。普段は尻の軽いところに呆れさせられたり、晶子との仲に割り込もうとするところに警戒感を抱かされたりするが、智一が親友だってことが実感出来たのは不幸中の幸いってところか。
 俺は少しでも歩く距離を短縮しようと、文系学部の建物がある方向へ向かう。生協の前を通った先に、獣道に毛が生えた感じの道がある。それを横断すれば普段工学部の講義棟への往復に使っている道に通じる。そこを通るのは随分久しぶりだが、迷っていられる状態じゃない。
 俺は何とかぶっ倒れることなく生協の建物に向かって歩いていく。頭が重い。これは間違いなく寝不足の証拠だ。とっとと帰って仮眠した方が良さそうだ。バイトは生活が懸かっているだけに休むわけにはいかないからな・・・。そうでなくてもクリスマスコンサートの予行演習も兼ねる時間が確保出来るから、演奏者の一人として行かないわけにはいかない。
 生協の前を通り過ぎ、左手に建物、両脇に木々が林立する狭い場所に差し掛かる。ん・・・?建物の壁に凭れてるのは・・・晶子?その頭の横に手をついて何か言っているのは・・・田畑じゃないか?!何やってるんだ、晶子の奴は!俺は駆け出したくなるが頭が重くて足が思うように動かない。とりあえず声が聞こえて表情がはっきり見える位置まで接近して、何をやってるのか確認しないことには・・・。
 俺は晶子と田畑に気付かれないようにゆっくりと距離を詰める。何で晶子の彼氏の俺がこんなことしなきゃならないんだ・・・?だが、何を話しているのか確かめないことには、晶子を責めたり出来ない。・・・つまりは晶子を責める材料になるかどうかを聞くためってわけか・・・。何てこった。

雨上がりの午後 第1016回

written by Moonstone

「じゃあ悪いが、ノートは頼む。」
「おう、任せとけ。それより気ぃ付けて帰れよ。新聞沙汰になったら笑うぞ。」
「好きにしろ。じゃあな。」
「ああ。」

2002/12/12

[酒まで税金上げる気か!]
 自民党の税制調査会が発泡酒とワインの税金引き上げを検討していますが、もう取れるところから何でも取る、といった感じですね。配偶者控除の廃止など各種控除の廃止、縮小という大増税計画に始まり、健康保険3割負担などの社会保障関係3兆円負担増計画・・・上げればきりがありません。
 所得は落ち込む、首切りの嵐が吹き荒れるでおちおち財布の紐を緩められない、その結果企業の業績が悪化する、銀行がその企業への融資を打ち切ったりする(貸し渋り、貸し剥がし)、結果企業は倒産、失業者が増大するというデフレ・スパイラルの真っ只中に居る以上、税金や各種負担を挙げるなどもってのほかです。こういう時は余計なデカ物を作るのを止めるとか(公共事業費削減)、攻め込まれる可能性もないのに攻めるための装備を増強するのを止めるとか(軍事費削減)すれば、十分余裕が出来る筈です。それをやらないのは、「自民党をぶっ壊す」というスローガンが空文句に過ぎないという何よりの証明です。
 それでも尚自民党を支持するというんですから、この国の国民は余程痛めつけられるのが好きなようですね。つくづく呆れます。そういう方達は自民党と一緒に心中してください。私はそんなこと御免ですから、自民党と本当に正面から対峙出来る政党を応援します。

・・・。

 世の中そんなに甘くなかった。この講義が発音や会話中心、即ち音声が頻繁に飛び交うものということを忘れていた。教官の発音や話し掛けで−勿論英語だ−学生がそれを復唱するもんだから、意識が途絶えたと思ったら直ぐに50人くらいの一斉の復唱の声量で叩き起こされてしまった。
 結局まともに寝られないまま、講義は終わった。寝るか寝ないかはっきりしない状態が連続したもんだから、余計に意識が朦朧とするようになった。講義が終わって席を立ったが、目の前がぐらっと揺れて危うく倒れそうになった。

「くそ・・・。頭がふらふらしやがる・・・。」
「マジで休んだ方が良いぞ、祐司。」

 額を押さえる俺に智一が声をかけてくる。

「ノートくらい責任持って取って貸してやるからさ。今日はもう帰ってバイトの時間まで寝ろ。抗議1階休んだくらいで死にゃしない。それより今時期睡眠不足は風邪に結び付きやすいんだ。風邪ひいたらそれこそ洒落にならないんだろ?」
「ま、まあな・・・。」
「いつもお前にゃ実験で世話になってるからな。ノート取って貸すことくらいお安い御用だ。さ、本当に倒れちまう前に帰って寝ろ。」
「・・・すまん。」
「気にすんな。困った時はお互い様ってやつさ。」

 俺は態勢を立て直して額を押さえ、首を何度か振って正面を見る。どうにか視界のぶれはなくなった。智一の言うとおり、ぶっ倒れないうちに帰ってバイトへ行く時間まで寝てた方が賢明だな。今からなら大体3時間くらいは寝られる。それだけでも結構違ってくる筈だ。

雨上がりの午後 第1015回

written by Moonstone

 俺は椅子の背凭れに体重をかけて、やや俯いた姿勢で身体の力を抜く。するとそれを待っていたかのように、猛烈な睡魔が俺の意識に覆い被さってくる。駄目だ。もう耐えられない・・・。智一の厚意に甘えて90分間寝させてもらうか・・・。

2002/12/11

[忘年会のシーズンですね]
 私の職場でも昨日忘年会がありました。人数が少ない(10数人)ので小ぢんまりとした感を持たれるかもしれませんが、大人数でわいわい、というのが苦手な私には丁度良いくらいでした。妙な気を使わなくて済みましたし。
 その場でカメラ談義となり、まかりなりにも自分が撮った写真をページで公開している私には大変興味深い話が聞けました。カメラはレンズが重要であること、そのレンズの良し悪しを決めるのは研磨と製造環境(塵などがあると工程でレンズ内部に混入して、後に染みやカビの原因になるそうな)ということなどなど・・・。カメラも奥が深いなぁ、と思うこと頻りでした。デジカメで安住してたらアカンっちゅうことですね(^^;)。デジカメが悪い、って言うつもりはありません。念のため。
 あと、飲酒運転の罰則の話題が出て、飲酒運転の末に定員オーバーで引っ掛かったマイクロバスの乗客が、総額4百数十万もの罰金を取られたという話には背筋が寒くなりました。私は車を持っていないので直接関係はないとはいえ、飲酒運転の車に轢かれるっていうろくでもない事態も考えられるので、決して他人事じゃありませんね。飲んだら乗るな、の精神を皆さんもお忘れなく。特にお酒好きな方は、ね。ひと時と引き換えに一生棒に振りたくないでしょ?
前に晶子があの浮名流し教官と一緒に歩いているところを目撃した時の講義とは別枠であって、あっちが文法や読解中心なのに対して、こっちは発音や会話が中心になっている。教官曰く、「当大学は英語が読めて書けて話せるエンジニアや研究者を養成するカリキュラム」らしい。
 前の講義が早く終わったから、歩いていっても十分間に合う。俺と智一は時折吹き抜ける寒風に身を縮こまらせながら講義のある部屋の方へ向かう。講義室には暖房が完備されているから、特にこういう寒い日は早めに行って、後ろの方の席を確保するに限る。
 講義室に入ると、半分ぐらいの席が埋まっていた。自転車や原付といった移動手段を持ってる奴は流石に早い。それでもまだ後ろの方の席は空いているようだ。俺は智一と並ぶ形で鞄を置いて席を確保する。これで一安心だ。俺は鞄から教科書とノートとペンケースを取り出す。あとは教官が来るのを待つのみか・・・。暖房もよく効いてるし、このまま寝てしまいそうだ。
 ・・・いかん、一瞬だが、本当に寝てしまった。智一が推測したとおり、疲れが溜まっているのは事実だ。高校までと同様、木の机と椅子で寝心地は決して良いとは言えないが、そんなことお構いなしに強力な睡魔が度々襲ってくる。まあ、この講義は指名されることが少ないし、指名されても名簿順だから、今日俺が指名される確率はほぼゼロに近い。今回は素直に睡魔の言うことを聞いた方が良さそうだな・・・。

「おい、祐司。大丈夫か?」

 智一の声で消えかかっていた俺の意識が急激に戻ってくる。この睡魔は今まで以上に強力なようだ。専門教科の時はノート取りで必至になっていて忘れていたが、一旦気が緩むともう防ぎようがないらしい。決壊した堤防と同じだな。

「眠いんなら寝た方が良いぞ。どうせ今日は指名される可能性はないに等しいんだしさ。ノートは講義が終わったら貸してやるから。」
「悪いな。ちょっと耐えられそうにないから頼む・・・。」

雨上がりの午後 第1014回

written by Moonstone

 そんな話をしながら、俺と智一は専門教科の講義を終えて教養課程棟へ向かっている。残された一般教養科目、英語の講義を受けるためだ。

2002/12/10

[茨城県議会議員選挙について]
 失望しました。この期に及んでまだ自民党、公明党ですか。このまま痛めつけられることを望むわけですか。痛めつけられても先生、先生と擦り寄るマゾの道を歩みたいわけですか。史上最低の投票率?こんなことは有権者としての責任放棄です。とっとと選挙権を放棄してください。
 茨城県民が如何にマゾか、今の現状を甘んじて受け入れたいか、そういうことをまざまざと見せ付けてくれました選挙結果です。もはや救いようがありません。自分達で変える機会をむざむざ放棄して、旧来の勢力に盲目的に縋りつくような県民は、大量の借金を子々孫々の代まで背負い、社会的弱者が苦しみ泣くのを旧来の勢力共々踏みにじれば良いのです。
 他の都道府県の皆さん、これ以上痛い目に遭いたくないなら、茨城県民の真似などしないで旧来の勢力とスッパリ縁を切り、大胆な方向転換への道を選んでください。仕事か来なくなるぞ。もう来ないし単価は切り詰められるし、首切りが横行してるじゃないですか。アカでも良いのか。良いじゃありませんか。今が嫌なら自分で変える一歩を踏み出すんです。自分一人くらい良い、という考えは、茨城県民と同じ道を選ぶことに繋がることを強く警告しておきます。

「業者に掃除頼むなんて、会社とかじゃあるまいし・・・。」
「親父の会社で清掃を委託してる業者があるんだ。そこにやって貰ってるから料金は実家持ち。流石にプロだけあって、綺麗にしてくれるぜ。」
「金持ちの生活は違うな・・・。」
「まあ、俺ん家は会社経営してるからな。しかし、お前んところは厳しいな。仕送りは最低限で、必要分はバイトで賄え、だなんて。」
「仕方ないだろ。家は自営業だけど、一人暮らしするなら最低限度しか仕送りは出来ないって条件を俺が飲んだんだから。」
「お前の実家って、生活苦しいのか?」
「家に居る分には感じなかったけど、一人分の生活費を毎月捻出するのは厳しいんだろうな。私立には行かせられない、って受験前から言われてたから、滑り止めもなかったし。」

 俺はまさに後がない状況で此処を受験した。私立は合格しても行かせられなから、ってことで受験すらしなかったから、此処ともう一つ受験日程の違う、割と地元に近い大学に賭けるしかなかった。まあ、結果両方合格してこっちを選んだんだが、今にして思えば、地元に近い方にしていた方が自宅から通学出来るし、洗濯や食事の面でも不自由しないから良かったのかもしれない。
 でも、こっちを選んで厳しい条件を飲んでこっちに一人で来たから、何だかんだ言いつつ気心知れた友人と出会えたし、趣味が結構いい金になるバイトにも巡り会えたし、何より晶子と出会えたわけだ。もう一つの方にしていたらそれらがなかったわけだから、やっぱりこっちを選んで良かったんだろう。こういうのはどっちが良いと断言できないところがあるもんだ。

「今時お前みたいな苦学生も珍しいな。」
「馬鹿言うな。俺より苦学してる奴は全国にいっぱい居る。それに苦学しようにもそれさえ出来なくて進学を諦める奴だって大勢居るんだ。インターネットで少し調べりゃ、そんな事例はわんさか出てくる。俺はまだ恵まれてる方だよ。」
「少なくとも俺には真似出来んな・・・。全く大したもんだよ、お前は。」
「ま、夜行性になっちまうのは仕方ないけどな。」

雨上がりの午後 第1013回

written by Moonstone

 呆れたと言うか何と言うか・・・。時々郵便受けにそんな関係のチラシが紛れ込んでるが、掃除ごときに金払いたくない。そんな金があるならもっと良いもの食べる方に回すぞ。智一の奴、金に任せて楽し放題してるって感じだな・・・。

2002/12/9

[やっぱり休みは必要]
 日曜も作品制作を手がけたんですが、金曜、土曜と明け方まで制作に明け暮れた上に薬が満足に効かなかったせいもあって眠気と倦怠感が酷く、導入部だけ書いたところで通常どおりダウンしました。やっぱり人間、休む時は休まないといけないようです。特に睡眠不足はダメージ蓄積が大きいので、風邪の元になるんですよね。現に今ちょっと喉の調子が悪いです。
 このままのペースで行くと、大体12/21若しくは12/22あたりに大きな更新があると思いますが、そこで久々に文芸関係のグループが揃い踏み出来そうです(^^)。書ける時はどんどん書けるんですが、書けない時は全然書けないんですよね。でも薬が効かないのは辛いっす(泣)。
 12月はNovels Group 3を断続的に更新する予定です。季節のずれが大きいのと、予想以上に現在展開中の第7部が長引きそうなんで・・・(^^;)。でもあんまり連載との距離を詰めると、また時間稼ぎ(ではなくアナザーストーリー)が必要になりますから、調整が難しいところです。

「そう見えるか?」
「見えるも何も、俳優とかだったら相当メイクしないと誤魔化せないくらいだぞ。マジで一日くらい休んだ方が良いんじゃないか?」
「講義休んだらその日の内容が分からなくなるじゃないか。ただでさえわけ分からないところをどうにか追いかけてるっていう状況なのに。」
「他の奴らもただノート取ってるだけで、講義の内容を理解してる奴なんて、殆ど居やしないって。ノートくらい後で写させてやるさ。それより身体壊したら、そっちの方が洒落にならんぞ。」
「そりゃそうだけどさ・・・。今の状態じゃ講義は休もうにも休めないし、バイトはあるし、洗濯とかもしなきゃならんし・・・。」
「あ、そうか。お前、一人暮らしの上にバイトで生計補ってるんだったな。となると、バイトはそうそう休めないか・・・。」
「そういうこと。」

 そう言えば、智一も一人暮らしだったか。ま、こいつん家は裕福だから、仕送りで十分生活していけるんだろう。食事も外食で済ませりゃ良いだろうし。でも、洗濯と掃除は自分でやらないと出来ない筈だが、それはどうしてるんだ?

「智一。お前はバイトやってないんだろ?」
「ああ。仕送りで十分やっていけるからな。ありがたいことに。」
「掃除とか洗濯とかはどうしてるんだ?こればっかりは自分でやらなきゃならんだろ?」
「洗濯は全自動で乾燥機付きだし、上物の服はクリーニング行き。掃除は月に一度業者に頼んでる。その方が確実だし手っ取り早いからな。」
「・・・業者に掃除頼んでるのかよ。」

雨上がりの午後 第1012回

written by Moonstone

 智一が話し掛けてくる。かく言う智一の方は何時もと変わらない口調と表情だ。こいつは疲れってものを知らないのか?

2002/12/8

[昨日は失礼しました]
 大体の方は「追加更新が完了しました」とか書いてあっても何のことやら分からなかったことと思います。実は昨日、久々にNovels Group 2の連載の新作を書き下ろしていたんですが、更新時間に間に合わず、書き終え次第アップするという手段を取ったんです。そのためNovels Group 2の更新の横に「←追加更新」と書いてあったりしたわけです。
 その他ごちゃごちゃやっていたら、寝たのはA.M.6:30過ぎ。そして目覚めたのはA.M.10:00過ぎ。何時ものように買出しに出かけた後、新作を1本書き下ろして、現在2本目の途中です(寝不足が出て寝入ってしまった)。今度は更新まで何ヶ月も間が空くことがないようにしたいと思います。
 そういえば、音楽グループは二つ揃って2年以上放置されてるんですよね(大汗)。それでもご来場者が10000人を越えているのは不思議というか申し訳ないというか不思議な気分です。シンセが一部ぶっ壊れていますが使えないということはないので(ディスクドライブが壊れた程度)、今年中には新作をアップ出来るようにしたいと思います。(計画倒れで終わりそうな予感プンプン(大汗))。
 同時に俺と晶子は重大な約束をした。今度こんなことになったらもう俺と晶子の関係はおしまいだ、と。双方崖っ淵に立った状態でこれから付き合っていくことになる。今までにない緊張感を背負ったことになる。でも、それくらいの覚悟はあったほうが良いと思う。宮城との時みたいに俺が怒って宮城が謝って一件落着、っていうんじゃ相手を心底理解したとは言えないしな。それに、晶子も覚悟を決めたんだから、今後こういうことはないだろう。否、ない筈だ。
 冷気が頬に突き刺さる。吹き抜ける風が肌に突き刺さるような感覚を残して去っていく。晶子の家で紅茶をご馳走になるのが待ち遠しくて仕方がない。ほんの数分前まではそんなこと微塵も思わなかったのに。感情が変わるとものの見方ががらりと変わるところはどうにかした方が良いかもしれないな・・・。

 クリスマスコンサートの日があと半月後にまで迫ってきた。だが、俺の周囲はそんなことなどお構いなしに忙しさを提供してくれる。こんなプレゼントははっきり言わなくても御免だ。実験とそのレポートに始まり、普通の講義でもレポート提出が度々あるしで、おちおちギターの練習に専念出来やしない。
 平日はバイトが終わってから深夜までレポートに追われて、その上ギターの練習を指慣らし程度でもするもんだから、翌日寝不足でフラフラになるなんて珍しくもない。だから週末は昼過ぎまで寝て過ごす。そうしないと破綻を来たすと身体が無意識のうちに動きを停止しているんだろう。
 そんな中幸いなのは、晶子とのペア曲が順調に仕上がってきていることだ。「Tonight's the night」の方はほぼ完璧だ。「Mr.Moon」の方は原曲の出だし部分が拍子が取りにくいので、その辺を俺がアレンジして、晶子にはアレンジ版のMIDI音源出力のMDを渡して、最初の8小節を重点的にしっかり感覚を掴むように頼み、俺は俺でその部分でつんのめったりモタったりしないように同じく重点的に練習している。で、月曜日の夜には音合わせをしてチェックしている。その成果でどうにか形にはなってきたが、まだもう少し練習が必要だろう。

「祐司。お前、疲れた顔してるな。」

雨上がりの午後 第1011回

written by Moonstone

 俺と晶子は静かな夜の通りを歩いていく。一時はこれでおしまいか、それならそれでも良い、とさえ思ったが、怒鳴るという好ましくない形ではあったにせよ自分の気持ちを伝えられたことは良かったと改めて思う。

2002/12/7

[茶番劇の党首選挙]
 民主党はとうとう鳩山代表が辞任し、二人の「有力候補」が投手選挙に立候補を表明するだの、どちらが選ばれるかだの、とマスコミが騒いでいますが、どちらが選ばれても民主党の体質が大きく変わるはずはありません。以前にもお話したとおり、民主党はこのままでは選挙を戦えない、と危機感を抱いた自民党や旧社会党、旧民社党(覚えている人はどのくらい居るやら)の議員が野合して出来た党。支持基盤もそれぞれの議員の従来の支持基盤である労組などを引き摺っており、都道府県、市区町村レベルに広がるほど組織が脆弱な、頭でっかちの党であることに変わりありません。
 それに民主党の政策そのものも自民、公明の連立与党と基本的には同じです。現に地方政治レベルでは自民、公明と平気で連立を組んでいて、連立を組んでいない方を探す方が難しいです。マスコミはこの点に突っ込まずに党首選挙を祭りに仕立て上げていますが、与党と明確に対立出来ないどころか同じ政策の(不良債権処理の加速策など)スピードやレベルの違いを競うだけの党首選挙など、茶番劇に過ぎません。それを指摘出来ないマスコミも所詮茶番劇の演出者でしかありません。
 自民、公明(保守もあるか)の連立与党が進める悪政に正面から対峙し、対案を示せる、示している政党らしい政党はどこか。これは皆さんが様々な方向にアンテナを伸ばして探してみてください。これまでの経緯を踏まえることも忘れてはいけません。それが議会制民主主義の主役である有権者の責任なのです。
「うーん・・・。潤子さんに対する俺の気持ちは、晶子の言うとおり、単にバイト先の女の人というより憧れてみたいなものがあると思う。」
「やっぱり。」
「でも、それは俺がずっと前から姉さんが欲しいっていう気持ちがあるのと、たまたま潤子さんが年齢的に姉さんと言っても良い歳の差だから、それが重なってるんだと思う。」
「お姉さんが欲しかったんですか・・・。」
「ああ。男兄弟しか居ないせいかもしれないけど、何か昔から姉さんが欲しいって思ってたんだ。まあ、これは親に相談したところでどだい無理な話だけど。」

 晶子がくすっと笑う。別にウケを狙うつもりで言ったんじゃないんだが、まあ、結果的にそうなってしまったかな。姉さんや兄さんを作れる夫婦が居たら、是非会ってみたいもんだ。

「それに、バイトが初めてで右も左も分からなかった俺を親切に指導してくれたのが潤子さんだったんだ。マスターが無関心だったとかそういうことはないけど、姉さんみたいな人が親切にしてくれるってことが嬉しかったんだ。その名残が憧れになって今でも残ってるんだと思う。」
「何だか・・・妬けちゃいますね。」

 晶子が身体を寄せてきて、俺の手を握る手に力を込める。焼餅焼いてますっていう意思表示だろう。気持ちは分かるつもりだ。自分が意識する存在に相手が憧れていると知って良い気分を感じる奴はそうそう居ないだろう。でも、焼餅を焼くなんて、可愛いところがあるじゃないか。ついさっきまではそんなこと欠片も思いもしなかったけど。

「祐司さんがこの町に来てバイトを始めてから私と出会うまでの約半年間の間には、私には埋められないものがあるんですね・・・。」
「それを言い出したら、俺が高校時代、宮城と付き合っていたことまで絡んでくるぞ。逆に晶子が以前付き合っていた相手との出来事は、俺でも埋められないんだから。」
「そうですね・・・。出会うまでの時間は埋め合わせのしようがないですよね。」
「だからその分、重なってる今の時間を大切にしよう。どうにも出来ない過去の埋め合わせ方法を考えるより、その方がずっと建設的だと思う。」
「祐司さんの言うとおりですね。私、今回のことで色々分かりました。祐司さんのものの見方とか、今の気持ちのあり方とか、色々・・・。」

雨上がりの午後 第1010回

written by Moonstone

「祐司さんの場合、潤子さんとの距離が気になるんですよね・・・。どうしても祐司さんが潤子さんを見る目が、バイト先の女の人を見る目じゃなくて、憧れめいたものが多分に混じっているように見えてならないんですよ。」

2002/12/6

[公明党の 正体見たり 自民党]
 テロ対策特別措置法に基づいてインド洋に派遣されている自衛艦に、イージス艦を加えることが決定しました。イージス艦は通常の艦船より情報収集能力(何処から敵や敵のミサイルが来るかを把握する能力)が格段に高く、攻撃力も抜群。まさに戦争する為の艦船です。これを派遣するということは、ますますインド洋に展開してイラク攻撃の機会を窺うアメリカ軍への協力を強めることに他なりません。
 これを決定した自民党は批判されて当然ですが、同じく与党でありながら、「平和」を看板に掲げる党でありながらそれを黙認する公明党も厳しく批判されなければなりません。先に述べたとおり、イージス艦がより戦争色の強い艦船であり、それがアメリカへの戦争協力=憲法が禁じる集団的自衛権の行使に繋がることである以上、自民党の「暴走」(というかやりたかったこと)を批判し、止めないようなら連立を止める、位のことが何故言えないか。それは党の看板より与党の枠組みを壊したくないという党利党略を優先させているからに他なりません。
 公明党の「平和」の看板は完全に剥げ落ちました。もはや公明党に反戦平和を語る資格はありません。口を開けば反共一点の公明党は、完全に身も心も自民党に染まりきってしまった、否、自民党の有力支持基盤になったと言って良いでしょう。このような党、そしてその母体である創価学会の自民党的体質を見抜き、自民党と共に壊滅させないことには政治の刷新はありえません。有権者の皆さん、肝に銘じておいてください。
俺にとってはそれが浮気に映ったんだけど、宮城にとっては、俺にとっては気分の良い表現じゃないけど、視野を広く持ちたいっていう考えに基づくものだったんだって、その時初めて知ったんだ。そういう考え方の違いをぶつけ合うのが怖かったからそのまま関係が続いて、でも結局は距離が出来たら考え方の違いが気持ちのずれになってしまった・・・。」
「どちらが悪いって問題じゃないですね。」
「ああ。自分の内面まで全部出し切らなかったのが、破局の一因になったんだと思う。今回、言葉はきつかったけど自分の考えをはっきり口に出来て良かったと思う。もう晶子も何が何だか分からないのに俺の機嫌を損ねてしまったって思うこともないだろう?」
「ええ。私は祐司さんが他の女の人と単に話をすることは全然気にしません。一緒に食事ってこともそれ相応の必然性があるなら、例えば職場の飲み会とか、そういうことなら気にしません。でも、他の女の人と仲良くなりたいっていう意思が感じられるようなら、絶対その人から引き離します。」
「それって、かなり主観的じゃないか?」
「そう思います。でも、自分の大切な人を取られるようなことを未然に防ぐには、主観的判断に委ねるのが一番だと思うんです。」

 晶子のいうことはある意味もっともだ。そういう現場を目撃して、相手があの人だから浮気じゃないだろう、って楽観視してたら、何時の間にか自分の手から離れてた、ってことになりかねない。俺はその境界線がかなり低いところにある。晶子の場合は許容範囲は割と広いが、ピンと来たらそこが境界線を越えたってことになるわけだな。
 俺の足が自然に動き始める。それに少し遅れて晶子も動き始める。もう立ち止まってああだこうだ言う状況じゃなくなったし、晶子の家で温かい紅茶をご馳走になりたいところだしな・・・。

「俺は工学部で女は片手で数えられるくらいしか居ないし、そいつらと話をしたこともない。俺が女と事務的じゃない話をする機会があるとすれば、宗教か何かの勧誘か、潤子さんくらいしか考えられないな。」

雨上がりの午後 第1009回

written by Moonstone

「この夏に宮城と二人で話し合った時、高校時代に宮城が他の男と仲良くしてるのを見て俺が何度も怒ったことが話題に出たんだ。

2002/12/5

[案ずるより生むが易し]
 仕事が佳境に入ってきて、心臓部だけ取り出して先に実験するか、完全に筐体に組み込んでから実験するかで散々悩んだ挙句、結論が出せずに休憩室で寝込んでいたんですが(今の私には即断するということは出来ないどころか体調を悪化させる原因になる)、今回扱う電圧がμV(10の-6乗)〜mV(10の-3乗)という小さな範囲なので、心臓部だけで実験するやり方では入力段で信号がノイズに埋もれてしまうだろうし、筐体に組んだ方がやり易いだろう、と思ってもそもそと取り掛かり、結局心臓部を除いて全体を組み上げました(心臓部は順番を間違うと組み立てたてられない構成になってるので後回し)。
 やってみたら、ものの半日で出来るようなことでした。こういうことはやってみないと分からないことが多いんですが、今回はその典型例でした。こうなるくらいなら、えいやっと全体組み上げに取り掛かれば良かったと思います。不都合があれば取り外せば良いことですから(面倒ですが)。
 今の病気になってから良く言えば思い切りの良さ、悪く言えば後先考えない無鉄砲さがなくなったようです。慎重になるあまり手が出せず、今回みたいに時間的なツケを後に残してしまったり・・・。後先考えないというのは問題ですが、迷ったら、これだ、と思った方法でとりあえずやってみるのが解決の近道だと思い知りました。でも、いざそういう時になるとなかなかそれが出来ないんですよね・・・(^^;)。
「どうしてですか?」
「仮に表に出てきたら、今の俺はそれを退けるだろ?そうなったらその相手は大なり小なり傷つくことになる。自分の現状が誰かの犠牲や悲しみの上に成り立ってるなんて嫌なんだよ。」
「・・・。」
「突き詰めりゃ、今こうして親元離れて大学に通ってること自体、親の犠牲の上に成り立ってるってことになる。だからせめて、きちんと大学に行って4年で卒業する。犠牲の上に成立してるものなら、その現状を最大限に生かすことが大切だって、俺は思う。」
「・・・やっぱり、祐司さんって真面目な人ですね。」

 俺の左手に晶子の手が優しく、包み込むように絡み付いてくる。もう離そうと思ったり訝ったりしない。その必要もない。

「私はその真面目さを踏みにじるようなことをしたんですね・・・。祐司さんの気持ちをもっと考えるべきでした・・・。」
「まあ・・・自分にとって何処からが浮気で此処までは許せるっていう境界線について話し合ったことはないから、今回のことはある意味必然的だったのかもしれないな。これは宮城との時もそうだったけど、あの時は気付くのが遅かった・・・。」

 俺は空を見上げる。闇一色の空には三日月が一人、煌々と輝きを放っている。その光は不思議と温かく感じる。此処からは見えない位置に居る太陽の光を反射しているせいだろうか?それだけじゃなくて、肌をさすような冷気の中で輝くその様がランプのように見えるせいだろうか?
 今回のことは嫌な思いこそしたが、自分の我慢の限界点を晶子に示す良い機会だったとも言える。このままそういうことを話さずに関係を続けていったら、今回のようなことがあった時に、それまでの時間や思い出が積み重なった分だけ崩れるものが大きいし、もう取り返しのつかないダメージを追うことになっていたかもしれない。宮城の時がそうだった。なのにその教訓を生かしてないな、俺は・・・。

雨上がりの午後 第1008回

written by Moonstone

「俺に言い寄ってくる女なんて居やしないぞ。」
「自分でもてないと思ってる人ほど、もててたりするんですよ。それが表に出てこないだけで。」
「そんなもんかねえ・・・。まあ、そうだとしても、表に出てこない方がありがたいな。」

2002/12/4

[ちょっと・・・]
 体調がいまいち芳しくありません。別に風邪をひいたとかそういうわけではないんですが、身体の倦怠感がかなり酷くて、なかなか動くことが出来ません。またちょっと持病がぶり返してきたみたいです。
 薬を変えてもらって良くなったと思ったらまた悪くなる・・・。これは薬に耐性がついてしまっているせいかもしれません。何せ毎日3回を連続ですからね。寝る前の睡眠薬も満足に効きやしませんし。普通の人間なら5分でKOされるくらい強力なものなんですが・・・。
 まあ、一進一退を繰り返してきて今の状態まで持ち直したわけですから、これも回復の一過程なんでしょう。それにしても時間がかかるものです。そろそろ治って欲しいのは山々なんですが、風邪みたいに温かくしてよく寝れば回復が早まる、というようなものじゃないですからね。完全回復にはあと1、2年は見込んでおいたほうが良さそうです。
 最後の言葉は俺自身にも当てはまる。晶子が今度今回のようなことをしたら、俺は晶子との関係を終わらせなければならない。そこまで言わなくても良かったか、と思うが、言ってしまってからではもう遅い。言う前にゆっくり10数えろ、というのは、まさにこういう時か・・・。
 だが、俺も後にはひけない。俺にとって浮気に相当する行為を見せ付けられて、更に今後もそれを見せ付けられたりそんな話を聞いたら黙っているわけにはいかない。何事もけじめってものがある。晶子が俺とあの男を天秤にかけて、結果あの男の方に走るならそれはそれで仕方ない。俺も覚悟を決めなきゃいけない。相手の浮気心に振り回されたり、気持ちを確かめさせられたりするのはもうまっぴらだ。傷ついたら傷の原因を切り離す。それが一番確実だ。
 晶子が俺の提案を承諾したということは、晶子にはその覚悟が出来たということだ。ならば尚更前言撤回、なんてことは出来ない。これで双方崖っ淵に立った状態になったわけだ。もう後には引けない。引くなら切るしかない。今までにない、危険と背中合わせの付き合いになるってことになるな・・・。だが・・・

「覚悟が出来たんなら、今日のことはなかったことにする。何時までもぐちぐち言いたくないしな。但し、これが最後だってことは忘れるなよ。」
「はい。」
「はあ・・・。やれやれ。美人の彼女を持つと苦労するよ。他の男が言い寄ってこないかどうか、四六時中心配してなきゃいけないんだから。」
「それは私も同じですよ。」

 晶子の顔に笑みが戻る。それが何だか久しぶりに、それに嬉しく思える。俺の感情もようやく何時もの状態に戻ってきたということか。でも、何で晶子が俺に誰か言い寄ってこないかどうか心配する必要があるんだ?口に出しちゃ悪いから言わないが、俺に言い寄ってくる女は余程奇特な類だと思うんだが。

雨上がりの午後 第1007回

written by Moonstone

「・・・だったら誓えるか?もう二度とあの教官と仲良くしないって。」
「・・・はい。」
「今度今日みたいな光景を見たり、そんな話を聞いたら、俺とお前の関係は終わりだ。その覚悟は出来るか?」
「・・・はい。」

2002/12/3

[新党結成の動きをどう見るか]
 今、民主党と自由党の間で新党結成の動きがあり、それを巡って党内調整をしくじった(というかしなかった)民主党の鳩山代表の早期辞任論などが浮上していますが、私から見れば「また始まったか」という思いです。元々民主党と自由党自体、今の党籍では選挙を戦えない、と危機感を抱いた自民党と旧社会党の議員が勝手気ままに野合し、様々な党名を経てようやく頭を決めた党と(民主党)、自民党の急進右翼の一部が飛び出して結成した党なんですから(自由党)、再び野合を始めようとしても何ら不思議ではありません。
 要は12月末日までに決着がつけば良いのです。何故ならその時点の会派議員の数によって配分される政党助成金の額が決定されるからです。このあたりの企みなど、これまでの経緯を知っていれば容易に察しがつくというもの。それが出来ないあたり、マスコミの勉強不足と上っ面だけ捉えて勝手にお祭り騒ぎにする馬鹿っぷりが見えるというものです。
 そもそも政党助成金自体、自分達で賄うべき活動資金を税金から山分けするという、憲法の思想信条の自由を侵害する違憲の存在です。その政党を支持していなくても自動的に税金が山分けされるのですから。これは参議院で論客ぶっている中村氏をはじめとする無所属議員の会も受け取っています。受け取っていないのは日本共産党だけです。先の見えない不況で公務員までも給与が減少する中、税金配分を巡って野合を繰り返したり、何の躊躇いもなく政党助成金を受け取る政党は切り捨て、自分の活動信金は自分で賄う近代政党としてのあり方を実践している日本共産党に目を向けるべきです。自分達で苦労して集めたお金で動いているからこそ、お金のありがたみや重みが分かる筈ですから。

「私にとって田畑先生は気軽に話が出来る先生でしかないんです。決して恋愛対象としては見てません。祐司さんと天秤に掛けてるつもりもありません。だから・・・この指輪は返せません。返したくありません。」
「じゃあ、何で俺が慎めって言ったことを堂々とやってのけたんだ?!」
「それは・・・ことの成り行きで自然にそうなっただけで・・・。決して親密になろうとかそういうつもりはありません。」
「お前はそう思ってなくても、相手はそういうつもりかもしれないって考えたことはないのか?!」
「そ、それは・・・。」
「それ以前に!何で俺が慎めって言ったことを、俺の舌の根が乾かないうちに堂々とやってのけたんだ!きちんと質問に答えろ!」

 俺が一喝すると、晶子は言葉を失ったかのように立ち尽くす。万策尽きたか、と思った俺は、更に畳み掛ける。晶子が可哀相だ、とか晶子のその時の心情がどうだったのかとか思う気持ちは欠片もない。

「どうせ俺が見ることはないだろうと思って安心してたんだろう!まさか見られるはずがないと思ってたんだろう!それが計算違いで運悪く俺に見られちまった!違うか!」
「・・・。」
「良いか!一度しか言わんから良く聞け!俺にとっては、相手が他の男と親しそうにしてる段階で浮気と断定出来る材料になるんだ!ましてや問題の男は浮名流しの教官!いいや、相手が誰だかなんて関係ない!浮気の材料を堂々と俺に提供したんだよ、お前は!」
「・・・。」
「今度お前がこんなことをしたり、そんな話を耳にしたら、もう俺とお前の関係はおしまいだ!勝手に浮名流しの教官といちゃつくなり、どうにでもしろ!俺はお前と付き合う前に、相手の浮気心が原因で別れた経験があるんだ!もう二度とそんな思いはしたくない!そんな思いをする前に、俺がお前をふっても良いんだぞ!」
「そ、そんなこと言わないで下さい!」

 晶子が切なげな表情で訴える。胸の前で左手を右手で覆って。神に訴える信者のような光景だ。

「私は祐司さんと別れたくありません。私は、祐司さんが私の指に合わせてプレゼントしてくれた指輪の感触を忘れたことはありません。だから・・・だから、私をふるなんて言わないで下さい。そんな恐ろしいこと、聞きたくありません!」

雨上がりの午後 第1006回

written by Moonstone

 晶子が右手で左手を覆い、泣きそうな顔で首を横に振りながら言う。俺は軽く肩で息をして、一旦言うのを止めて晶子の反応を見ることにする。言いたいことがあるなら言わせてやっても良いだろう。言葉次第じゃその先どうなるか・・・分かってるだろうからな。

2002/12/2

[お休み、お休みぃ〜♪]
 昨日も作品制作をしようとは思ったんですが、休みたい、という身体には逆らえず、大人しく横になってました。ですので、家事以外は殆ど何もしてません。もう身体を動かそうというのは止めて、休養する日と考えた方が良さそうです。動かないものは仕方ありません。
 今日からまた仕事が始まります。一つが佳境を迎えているので油断ならない時間が続きそうですが、更新の方はまあボチボチやっていきます。日曜日が塞がるので思い切った更新はあまり出来ないでしょうが。紅葉の写真集が11月中に完成出来なかったのは心残りですが、多少季節がずれてもこの際黄にしない方が精神衛生上良いでしょうね。ほほほ。

「・・・本当に、浮気しようなんて思ってないです。」

 俺の左隣で声が聞こえ始める。俺は声の方を向かずに歩を進める。

「2コマ目の講義が田畑先生なんです、この曜日は。講義が終わってから数人と世間話していて、他の子達は皆揃って食事に行っちゃったんで、じゃあ一緒に、っことで生協へ向かう途中だったんです。」
「仲良く二人で飯食いながらお話か?」
「そう言われれば否定出来ません。でも・・・」
「俺から見れば、一緒に食事ってだけで充分浮気なんだよ!」

 我慢の限界に達した俺が晶子に向けて怒声を発する。晶子はびくっとして「言い訳」を止める。俺は立ち止まり、晶子を見ながら口から出るに任せて言いたかったことを言う。

「何で3日前俺が慎めって言ったことを堂々と人前でやったんだ!否、人前じゃなければ良いってもんじゃない!他の男と、それもよりによって浮名流しの教官と分かってて、どうしてそんなことが出来るんだ?!お前にとっては日常行為でも、俺にとっては充分浮気に値する行為なんだよ!」
「・・・。」
「その左手薬指の指輪の重みは感じないのか?いい歳の独身教官が言い寄ってきたから、俺と天秤にかけてるのか?それで俺から乗り換えるなら遠慮は要らん!この場でそう宣言しろ!その指輪を返せ!」
「それは・・・嫌です。」

雨上がりの午後 第1005回

written by Moonstone

 吐く息が煙のように立ち上り、闇に消えていくのを眺めながら足早に坂を下っていくと、後ろから早い足音が近付いてくる。そして足音の主が俺の左隣に来る。早い息をそのままに、晶子が恐る恐るといった感じで俺を見る。目が合った瞬間、反射的に俺は視線を前に戻す。今は視線を合わせることすら嫌に感じる。歩を進めるごとに怒りが増す。そんな感じだ。

2002/12/1

[模様替え(と言っても一部)]
 とうとう師走になっちゃいましたね〜。丁度週の始まりが日曜日という今年の12月、背景写真も私の信念をあえて崩して(それほど大袈裟なもんじゃないか)、撮影間もないイルミネーションにしてみました。如何でしょうか?120枚の中から選んだのがこれじゃ、他のものは大したもんじゃないな、と思われると悲しいですが(苦笑)、こういう季節になったんだと感じていただければ幸いです。
 で、この際いっそ、と思って、連載の一部をトップページに掲載することにしました。レイアウトがちょっと崩れてしまいましたが、これをきっかけに連載の読者が増えてくれれば良いなぁ、などと甘い期待を抱いています(笑)。これは掲示板JewelBoxをご覧になればお分かりかと思いますが、ある方の提案を採用したものです。寄せられるご意見、ご感想が少ない分、それらが実際のページ運営に影響を与えることはままあります。
 昨日は1日がかりで作品を書いていました。何かはお教え出来ませんが兎に角しんどかったです。でも、労力に見合う分の作品は出来たと思います。公開の際には是非ご覧下さい。これから色々慌しくなると思いますが、ページの方はちょこちょこ更新していくつもりですので、出来れば毎日チェックしていただけると嬉しいです。

「推論だから間違いがあったら遠慮なく言ってね。多分晶子ちゃんが祐司君の信頼を壊すようなことをしたか、晶子ちゃんにはその気はなくても祐司君にはそう見えたか、どちらかのことがあったんだと思う。前者の場合は100%晶子ちゃんが悪い。自分が好きな人の信頼を壊すようなことをするなんて自殺行為よ。でも後者の場合はどちらが悪いとは断言出来ない。祐司君から見て信頼を壊すようなことをした晶子ちゃんも悪いし、確証がないのに一方的に晶子ちゃんを疑った祐司君も悪い。」
「「・・・。」」
「どちらにも共通することは、これから二人で話し合うんだろうと思うけど、結論を急がないで欲しいってこと。特に祐司君は、その時の激情に任せて縁起でもないけど関係断絶とかに突っ走らないで。今の問題の結果が最終的にどうなるかは分からないけど、性急に結論を出したら絶対に後悔すると思うわ。前にも祐司君には言ったけど、言う前にゆっくり10数えてみて。それだけで随分違ってくる筈だから。」

 潤子さんの忠告が頭にガンガン響く。前に言われた時はこんなことはなかった。でも今はそれが耳元で乱雑に打ち鳴らされる鐘のように耳障りに感じられる。潤子さんのせいじゃないことは重々承知してはいるが、3日前冷静に諌めただけで終わったからこんなことになったんじゃないか、と思う。頭から押さえ込むつもりで念入りに釘を刺しておくべきだったんじゃないか、と思う。
 正直言って、今の俺には潤子さんの忠告を受け入れることは出来ない。やんわりとではあるが釘を刺したにも関わらず、晶子は堂々と俺が慎めといったことをやってのけた。俺が目撃しなかったらどうなっていたか、考えるだけで腸(はらわた)が煮え繰り返る思いだ。
 俺は残りのコーヒーをぐいと一気に飲み干す。腹に温かさが広がると同時に席を立ち、ご馳走様でした、と言い残して店を出る。晶子のことは考えない。ドアがカウベルの音と共に閉まった背後で慌てているのかもしれないが、そんなこと知ったことじゃない。

雨上がりの午後 第1004回

written by Moonstone

 俺は勿論、晶子からも言葉はない。何もかもお見通し、とばかりに言い当てる潤子さんに誤魔化しは通用しない。ただ沈黙でそのとおり、と示すだけだ。潤子さんの言葉には重みがある上、押し付けがましさがないから逆らったりそ知らぬふりをしたり出来ない。

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