芸術創造センター こぼれ話
Dropped talk of Performing Arts Center

2001年8月31日更新 Updated on August 31th,2001

2001/8/25

[明日から暫くお休みします]
 昨日もお話したとおり、明日から約1週間シャットダウンさせていただきます。ですので、今日が8月最後の更新になります。今月はこれより前に3日ほど休みしましたが、あの時は体調不良が著しくて更新できる状況になかったんですよね。今回は体調は安定していますが、これまでのように夏休みでもシャットダウンせずに更新できるほど強くないので、休養と作品制作に専念します。
 さて、無茶苦茶暑かったこの夏も朝晩は少し過ごしやすくなって来て、ツクツクボウシも鳴き始めました。何処かへ出かけるにも良い気候になりつつあります。10年以上行っていない映画館にでも行ってみようかな、と思っています。名前は忘れましたが、面白いと評判の宮崎監督のアニメ映画にちょっと興味を持っています。家に篭って作品制作に集中するのも良いですが、煮詰まったときなどは外に出て気分転換を図った方が良いでしょうね。
 シャットダウン明けはいきなり定期更新という強行日程ですが(^^;)、貴重な夏の終わりの時間を存分に味わいたいと思います。それでは次回の更新まで!(^-^)/~~~
「やっぱり一人より二人の方が飲むのは楽しいですよね。」
「食事もな。」
「そうですね・・・。人数が増えすぎてもグループが出来てしまって面白みがなくなりますけど、今日みたいに4人くらいなのが一番楽しいですね。」
「その場に居る人間にも依るが・・・祐司君の言うとおり、二人から四人が一番会食や飲み会が楽しくなる人数だな。・・・もっと飲むか?」
「いえ、これ以上飲むと潰れちまいそうなんで・・・。」
「そうか。それならそれで良い。俺も無理に勧める気はないし、無理に勧めるのは酒席のルール違反だからな。」

 俺は内心ほっとする。大学の科であったコンパでは周囲から無理強いされて、2、3日酷い思いをしたことがあるだけに、酒に飲まれていないマスターの言動には安心させられる。酒席でも何でもルールを守る人間が尊敬される世の中になって欲しい。否、そういう世の中にするのが、所謂「若者」の役割なのかもしれない。
 トタトタ・・・という階段を駆け下りる音が近づいてくる。潤子さんが降りてきた。晶子は、と見ると、何時の間にかテーブルに突っ伏してゆっくりとした周期で背中を膨らませたり凹ませたりしている。どうやら眠ってしまったらしい。

「あら、晶子ちゃん、寝ちゃったの?」
「そう・・・みたいですね。」
「この際だ。祐司君。彼女を布団まで運んでやったらどうだ?」
「・・・そうします。」

 俺は席を立つ。宙に浮いている感覚はまだ消えないが、普通に歩く分には支障はない。俺はテーブルに突っ伏している晶子の上半身を一度起こして、晶子の肩と膝の裏側をそれぞれ抱えて一気に抱え上げる。所謂「お嫁さん抱っこ」だ。晶子は俺に抱え挙げられたことにも気づかず、スースーと気持ち良さそうに眠っている。一方、頬は真っ赤で、酒の匂いも強い−恐らく俺も他人に言わせりゃ酒臭いだろうが−。完全に酒が睡眠薬になった格好だ。

雨上がりの午後 第583回

written by Moonstone

「マスター。潤子さんと飲んだりするんですか?」
「ああ。休み前の日曜の夜は二人でビールかワインを1本は空ける。俺と潤子は二人暮らしだから、外へ飲みに行くとなると、飲酒運転になっちまうから片方は飲めなくてつまらん。だから、家で飲むのが習慣になってる。」

2001/8/24

[居眠りしなかったぞ!(^-^)]
 威張れるようなことではないんですけどね(爆)。昨日は出来るだけ立ち作業を減らしたことが(一昨日も減らそうと思えば出来たんですけど、気が早って立ち作業になってしまった)大きいですね。警備員など、立ち作業が必須の職業の方々は凄いと思います。
 今日いきなり告示しましたが、8/26〜9/2までシャットダウンさせていただきます。私自身が遅い夏休みでゆっくりしたいのと、作品制作に集中したいからです。メールやメールフォームのお返事が遅れますので、予めご了承願います。もっともネットには出来る限り接続しますし、若干の変更や更新はあります。月の変わりを挟みますからね。
 しかし日程の関係とはいえ、シャットダウンが終った翌日に定期更新とは・・・(^^;)。今度の休みでしっかり作品を揃えるのは勿論、書き溜めが出来るならやっておきたいですね。結局、今度の休みもPCの前から離れられなくなりそう・・・(^^;)。
そして晶子がうつらうつらしていることだ。今日起きたときも半ば無理矢理起こしたようなもんだから、残っていた眠気が酒で誘起されたのかもしれない。俺は眠気こそないが、頭がふわふわして、椅子から宙に浮いているような感じがする。それに何となく周囲の景色が回っているように見える。・・・単なる飲み過ぎだろうが。

「あら、晶子ちゃん、眠いの?」
「・・・ん?え、ああ、大丈夫です・・・。」

 潤子さんの呼びかけにも応答するまでにタイムラグがある。それに直ぐうつらうつらしてしまう。相当眠いのを我慢しているのが否でも分かる。

「今日は家に泊まっていったら?布団もあるし。」
「俺も潤子もかなり飲んだから、車で家まで送ってやることも出来んし、その方が良いぞ。遠慮はしなくて良いから。」
「俺は自転車で晶子と一緒に来たんですけど・・・かなり飲みましたからね・・・。」
「自転車でも飲酒運転は引っかかるぞ、確か。」
「・・・じゃあ、すみませんけど俺と晶子を泊めて貰えますか?」
「勿論良いわよ。布団敷いてあげるからちょっと待ってて。」

 潤子さんが席を立つ。潤子さんもかなり飲んでいた筈だが、随分足取りがしっかりしている。実は潤子さん、かなりの酒飲みなのかもしれない。
 マスターは未だに熱燗を飲んでいる。潤子さんや俺が何度もお酌してるし、自分でも何度か注いでいたから、相当飲んでる筈だ。なのに、少しもへべれけになってない。夫婦揃って相当の酒飲みらしい。

雨上がりの午後 第582回

written by Moonstone

 −どれくらい時間が経ったか分からない。今言えるのは、空になったビール瓶と日本酒の一升瓶がダイニングの脇にずらりと並んでいることと−1ケース分はありそうだ−、色とりどりのおせち料理が大半なくなったこと、

2001/8/23

[また寝過ごしちゃった(汗)]
 昨日は立って作業することが多かったせいで(仕事自体も行き詰まりの様相を呈し始めたし(汗))、帰宅して遅い夕食を取ったあと横になってたら、あっさり居眠りしてしまってテレホタイム開始を大幅にオーバー。先にこのコーナーを準備しておけばまだ良かったんですが、こういうときに限って準備していない(汗)。
 朝方雨が降っていたのに昼前から晴れ始めて、帰りに20分程歩く羽目になったのが、疲れを倍増させましたね。平坦な道ならまだしも、起伏がやたらと多いので・・・。前日の夜のうちに台風が去っていってくれれば良かったのに、たらたら進むもんだから(- -;)。あれほど足の遅い台風も珍しいそうで。
 居眠りしてしまうせいで、メールのお返事が後手後手に回ってしまって申し訳ありません(_ _)。いただいた方には順次お返事を発送していきますので、今暫くお待ちください。今日は居眠りせずに乗り切りたいです。でも、精神的な疲れが蓄積しそうな気配ですので、A.M.0:00前後でブラウザをリロードしてみて、更新されなかったら「また居眠りしたか」と思って下さい(^^;)。

「さて、ちょっと重い空気になっちゃったけど、祐司君と晶子ちゃん。沢山食べて飲んでいってね。まだビールも日本酒もあるし、お餅も雑煮の他に焼餅も出来るから安心してね。」

 潤子さんの心温まる笑顔を見て、俺はようやく神妙さから解放される。早速ビールを飲みつつ、豪華なおせち料理の中で特に気に入った黒豆と蓮根の煮込みと栗金団に手を出す。晶子は雑煮を食べ終えて、ビールを飲んでさらにおせち料理をあれこれと摘む。かなりハイペースだが・・・体重のことは頭にないんだろうか?お節介かもしれないがちょっと気になる。

「潤子。雑煮まだあるか?」
「えっと・・・大丈夫。餅は幾つ欲しい?」
「3つかな。」
「ちょっと待って。少し温めるから。」
「えっと、数の子はっと・・・。」
「晶子、ビール飲むか?」
「え?はい、いただきます。」
「それじゃ、どうぞ。」
「ありがとう。」

 4人で囲んだ食卓は再び食べ物と酒が飛び交い、突っ込みや笑いが渦巻く賑やかな場になる。実家に帰っていたら多分、親戚回りで俺の新京大学進学が話のネタにされて誇られるだけで、こんな楽しい場にはならなかっただろう。小さい頃に本を買ってくれたり、従兄弟との遊び場に田んぼや用水路を使わせてもらった親戚を疎ましく思うわけじゃないけれど・・・やっぱり、この町に残って良かった。俺にはこの町での生活が合っているような気がする。

雨上がりの午後 第581回

written by Moonstone

 マスターがくいっと飲み干したお猪口に日本酒を注ぐ潤子さん。二人の周囲に強力なバリアが張られているようだ。「逆襲」しようにもそれが憚られる雰囲気を感じる。これが恋人同士と夫婦の違いなんだろうか?

2001/8/22

[ひええええ〜。台風だぁ〜]
 朝方から雨だったのですが小降りでしたので、台風も少々日本列島を掠めて終わりだな、と高を括っていました。ところが時間が進むにつれて徐々に空が鉛色一色になり、昼前には相当荒れてきて、それ以後雨が横殴りに激しく降るようになって来ました。そしてとうとう、非常勤職員の方や電車通勤の方に「退去勧告」がでるまでになりました(汗)。こんなことは、私が今の場所に住むようになって初めてのことです。
 このお話をしている今でも雨は激しく降っています。私は帰宅の際に服が濡れる程度で済みましたが、この程度なら損害のうちに入りません。ハンガーにかけて吊るしておけば良いことですから。この台風で被害に遭われた方々には心よりお見舞い申し上げます。
 これで恐らく水不足も解消されるでしょう。梅雨が知らぬ間に終ったことをどこかで不足分を補うように、自然は出来ているのでしょうか?台風も連続すると農作物に被害が出ますし、水瓶を満たしてくれる程度で終って欲しいです。
会いたくても会えない日が続くかもしれない。・・・だから晶子ちゃんには、会えないことや寂しさを理由にして、他の男性に目を向けるようなことはしないで欲しいの。祐司君と一緒に居られないことが嫌いになる条件になるくらいなら・・・はっきり言って、祐司君と付き合うのはこの場で辞めた方が良い。そう思うの。」
「分かってます。祐司さんだって、私と一緒に居られないからといって、何時も以上に気を使ったり、無理に二人の時間を作ろうとしたりしないで欲しいんです。それじゃ、祐司さんが参っちゃうから・・・。」
「・・・晶子。」
「分かってくれてるみたいね。ちょっとお説教になっちゃったけど、折角貴方達二人は特別な関係になったんだから、それを大切にして欲しいの。勿論、縁もあるとは思うけどね・・・。」

 潤子さんの表情が何時もの柔和なそれに戻る。だが、潤子さんの話に異論や反論の余地は見当たらないだけに、俺はまだ神妙な気持ちだ。ちらっと晶子の様子を窺うが、その表情からして俺と同じ気持ちのようだ。マスターも潤子さんの話に賛同したのか、何度も頷いている。

「・・・会えないから嫌いになるわけじゃない。会えないのを理由にして嫌いになる。その違いってわけだな。」
「ええ。私達も結婚するまでは二人きりになれる時間がなかなか持てなかったでしょ?」
「ああ。お互い仕事も違えば活動時間も違うわで、会う日にちを調整するのが難しかったからな。」
「でも会えない寂しさや別の恋の誘惑を乗り越えたからこそ、今の私達とこのお店があるのよね。」
「そうそう。互いに我慢強かったもんだ。」

雨上がりの午後 第580回

written by Moonstone

「それに学年が進むと、理数系につきものの実験やレポートの嵐があるでしょうし、こういうご時世だから就職活動も入ってくると思うの。そうなると、今みたいに貴方達二人が四六時中一緒に居られることは少なくなると思うわ。

2001/8/21

[寝過ごしちゃいました(^^;)]
 夕食の後ぶわっと眠気が噴出してきて、気が付いた時にはテレホタイム開始時刻を思いっ切りオーバー(汗)。なかなかネットに繋げないんは当たり前。最近続けていた、前日の11:30〜当日の0:00更新が出来ませんでした。
 まあ、それは仕方ないとして(極端な話、日付の日に更新できれば良いですからね)、羨ましくて且つ悔しいのは、何と言っても倉木麻衣のライブチケットが当たらなかったこと。当たっていれば仕事早めに切り上げてでも、場合によっては休んででも行く気構えだったんですが、夢幻になりました(泣)。元々懸賞とかに縁のない私ですから、チケット獲得に挑戦しただけでも意義があったと自己満足するしかなし。あれだけ爽○美○飲んだのになぁ〜。
 勿論、またこういう機会があったら挑戦しようと思います。でも、出来ることならチケット売り場で買えるような方式にして欲しいです。直ぐ売り切れに なりそうな気がしますが、この方式の方がまだすんなり諦めがつくというもの。「あ〜あ、売り切れたか」って。関係者の方、ご一考くださいませ(_ _)。
「殆どって・・・どういうことだ?潤子。」

 マスターが俺に代わって潤子さんに問うと、潤子さんの眼が真剣なものになる。緩みっぱなしだった表情が引き締まる。その気迫に俺は思わず背筋を伸ばしてしまう。

「二人共大学生だから成人式や年齢は関係なく、もう大人と言っても良いわ。だからその場の成り行きやなし崩しで一線を超えるようなことはしないで欲しいの。二人の気持ちが高ぶって、双方合意の上で一線を超えるのは私が口出しする範疇じゃない。でも、もし一線を超えるなら最低でも婚約してからか、そうでなければきちんと避妊してね。子どもを出汁にして関係を続けるのは、本当の恋人や夫婦がすることじゃないって私は思うの。」
「「・・・はい。」」

 潤子さんの隣に座っている晶子は、神妙な面持ちで潤子さんを見ている。一語一句聞き逃すまい、という緊張感がその横顔に溢れている。

「もう一つ・・・これは特に晶子ちゃんにどうしても聞いて欲しいんだけど、聞いてくれる?」
「はい。」
「ありがと。えっとね・・・。祐司君は理数系だから、2年になると忙しくなってくると思うの。大学の講義も専門性が強まって、ついていくのが精一杯なんてことも考えられるわ。それに祐司君は店のバイト代を生活費の補填に使っているっていうから、講義のレポートがあるからといってす簡単にバイトを休むって訳には行かないと思うの。だから相当体力と気力を使うことになると思うから、無理言ったりして祐司君を困らせないであげて欲しいの。」
「・・・はい。」

雨上がりの午後 第579回

written by Moonstone

「二人がこの店で出会って約3ヶ月。その間に色々あったと思うが、そこまで親密になったのは俺達も嬉しい。なあ、潤子。」
「ええ。一時はどうなるかと心配してたけど、恋人同士にまでなったんだから、もう私達が心配することは殆どないわ。」

2001/8/20

[久々に豊富な更新が出来ました(^^;)]
 ここ最近は定期更新でも2グループが精一杯だったのですが、今回は久々に3グループ+1コンテンツを更新することが出来ました(^^)。週末に肩凝りと腰痛に悩まされ、疲れて暫くぐったりしても作品制作を続けた甲斐があったというものです。
 更新の度にほぼ毎回思うのですが、毎日少しずつか週末にしっかり書くかしないと、更新日直前で大変な目に遭いますね(今回もそうでした(汗))。そうは思っても実行に移すのが難しいです。本業の疲れを解消するのに時間がかかりますからね。
 本当はもう1グループ更新したかったんですが、「魂の降る里」で予想を大幅に上回る時間を食われて間に合いませんでした。今度の定期更新までには私の本業の夏休みがあることですし、久々に文芸関係のグループ揃い踏み、といきたいです。
その手をどけようにも、指が俺の頬にしっかりと食い込んでいるから離しようがない。潤子さんも目を輝かせて晶子の話を聞いているし・・・。こうなったら、晶子の良心(?)に賭けるしかない。

「じゃあ、キスは?」
「キスもしましたよ。クリスマスコンサートが終った後、プレゼントの一つとして私の方から・・・。」
「あら〜、晶子ちゃん、随分積極的ね。」
「ほう。クリスマスプレゼントというのはなかなか・・・ムードの面でもインパクトの面でも合格点だな。」

 あー、晶子の奴、とうとうキスのことまでばらしちまった。・・・ま、良いか。酒のせいか、もう何を話されても良いような気がしてきた。・・・い、いかん、いかん!酒席で人間関係を壊すようなことはあってはならない・・・って、壊れてないから良いのか?・・・何だか考えるのも億劫に感じる。調子に乗ってビールと日本酒を飲みすぎたかな・・・。
 マスターは椅子に座り直してうんうんと何度も頷く。潤子さんは目を見開いて興味津々といった表情で俺と晶子を見ている。多分、否、きっとことある毎に話の出汁にされるだろう。俺は少し恨めしげな目で晶子を見据える。だが、晶子は至って冷静に−頬はかなり紅いが−そして柔らかい微笑を浮かべて俺を見ている。悪いことはしてないでしょ?と言いたげだ。

雨上がりの午後 第578回

written by Moonstone

 何の悪気もなさそうに事実を話し始めた晶子に待ったをかけようとしたところで、身を乗り出していたマスターがその大きな手で−まさに熊の手だ−俺の口を封じ込める。

2001/8/19

[只今追い込み中・・・]
 今、ある連載作品の執筆中です(^^;)。昼間は買い物に出かけた以外は妙に身体がだるくて殆ど横になっていたので、今は修羅場じみています(汗)。テキスト作品の目安としている20kBへの道程は遠いです。今、書きたい展開の半分程まで進めたんですが、これだけ書いたから容量も相当増えただろ、と思って確認してみると2、3kBしか増えてなかったり・・・。なかなか大変です(^^;)。
 そんな中でこのコーナーと連載を書かなければいけないとなると、もう修羅場どころではありません(汗)。幸い連載は数日分書き溜めてあるので今回はまだましです。良かったぁ。暇を見つけて書き溜めておいて。
 明日の定期更新は何とか連載を公開したいです(燃)。このところ定期更新毎に連載を公開できているので、その調子を崩すと、一月二月と引っ張ることになって、私自身書くのが億劫になる危険性があるので、目標貫徹と行きたいところです。
 と思っていたら、急にニヤリと気味悪く笑う。い、一体何だっていうんだ?!

「どこまで進んだ?お子様じゃあるまいし、手を繋ぐくらいはしてるだろう。キスはやったか?何処で決めた?ん?」

 俺は全身から力が蒸散していくのを感じる。や、やっぱり色恋沙汰の話になるとそこに行き着くのか・・・。潤子さん、前みたいにこの変な熊を退治してください。お願いしますよ。

「そうね。ここは一つ、二人の雇用者として交際の進展状況を確認しておく必要があるわね。」

 だ、駄目だ。素面ならマスターの頭をひっぱたくようなからかいに、頼みの綱の潤子さんが同調してしまっている。潤子さん、頬がほんのり紅くなったくらいで大して変わりはないかと楽観視してたんだが、甘かった・・・。やっぱり酒は人を大なり小なり変えてしまうんだなぁ・・・。
 マスターは素面の時でもこういう質問をしてきても不思議じゃないが、潤子さん、雇用者に俺と晶子のプライベートを話す必要なんてない筈ですけど。・・・駄目なんですか?もう逃がしちゃくれないんですか?二人共。

「えっと・・・手はよく繋ぎますよ。一緒に寝るとき、手を握って私が祐司さんの腕に抱きつく格好で寝るんですよ。」
「へえ〜。祐司君、よく我慢できるわね〜。普通の男の人だったら狼になっても不思議じゃないわよ。」
「ちょ、ちょっと待て、まさ・・・むぐっ!」

雨上がりの午後 第577回

written by Moonstone

 それまで酒でふやけていたマスターの顔が、急に引き締まって真剣なものになる。何だ、一体・・・?と思っていたら、マスターがテーブルに両手について俺と晶子に迫ってきた。獅子舞じゃあるまいし、否、この場合は熊舞か、って考えてる場合じゃない。勘弁してくれ。

2001/8/18

[何とか乗り切れました]
 世間一般には盆休みというこの週、大きな波乱もなく、無事に乗り切ることができました。後半は昼間の疲れが帰宅してからぶわっと噴出して1、2時間眠ってしまうことがありましたが(このお話も寝起きでしています)、内側に蓄積されていくよりはずっとましです。
 先週末から今週頭にかけてコミケがあったのですが、今年は私が参加しているサークルがないことと(お呼びもかからなかったですし)、有給不足と資金難で、行くのを断念しました。何時かは売る側で参加したいという気持ちがありますが、ドタバタと準備に追われることのないよう、長期レンジでじっくり取り組みたいです。
 一方、この週末は定期更新の準備に追われることになりそうです(汗)。連載に加えてMoonlight PAC Editionに書きたいことも出てきましたし・・・。2、3日連続で更新するのも一案でしょうか?
「潤子さんの言うとおりです。それに・・・それまで祐司さんの後を追いかけていながら、そのときに限って祐司さんに自分の気持ちを察して欲しい、なんて虫が良過ぎたんですよ。デートを途中でキャンセルして祐司さんの家に駆けつけて、祐司さんが寝ているベッドの横に座って、初めて自分が勝手なことしてた、って気付いたんです。」

 晶子の言葉にうんうん、と頷く潤子さん。女同士だから口にしなくても分かる「何か」があるんだろうか?

「うーん・・・。女心は複雑だな、祐司君。」
「ええ。でも・・・晶子が心配して見舞いに来てくれたのは嬉しかったですよ。病気になると急に人恋しくなるって実感しましたね。」
「一人が急に寂しく思えるときってあるからね。丁度その寂しさを晶子ちゃんが癒してくれた。それが今の関係に繋がったのかしら。」
「そうですねぇ・・・。心情的なものですから、はっきりこの時、とは言えないにしても、あの頃から晶子を見る目がまた変わったんじゃないか、って思うんです。ただのバイト仲間じゃなくって、もっと自分にとって大切な、そして必要な存在だ、って。」
「む、難しい言い方だな。流石は理数系。」
「別に言い方に理系や文系の違いなんてないですよ。」
「ボキャブラリーの量の違いですね。」
「ぐわっ、いきなりチーム組んで攻撃するとは・・・やられたなぁ。」
「ふふっ、良いじゃないの。二人が仲良くやってる証拠だと思えば。」
「ま、そりゃそうだ。で、お二人さん・・・。」

雨上がりの午後 第576回

written by Moonstone

「ほらほらぁ、祐司君、そういうときに晶子ちゃんの気持ちを察してあげてこそ、男ってもんだぞ。」
「あなた、無茶な話よ、それ。その時はまだ、祐司君は晶子ちゃんにバイト仲間くらいの感情しか、抱いてなかったんだから。」

2001/8/17

[薬、間違えた(汗)]
 朝、目覚ましより早く目が覚めて、頭がぼんやりした中で食事を摂って、何時ものように薬を飲もうと、前日の夜に包んだ薬(粉薬+錠剤数種)に手を伸ばしました。此処までは此処1年余り続いている朝の風景でした。
 しかし、昨日は重大な間違いを犯しました。あろうことか夜に飲む薬を朝に飲む薬と間違えて飲んでしまったのです。気付いた時には薬は全て口の中。まさか吐き出すわけにもいかず(粉薬なんてとても吐き出せないし)、止むを得ず飲みました。
 朝、昼、夜の3回飲む薬はそれぞれ少しずつ違っていて、夜飲む薬は鎮静剤が含まれています。これは完全に目が覚めている昼や夜ならまだしも、寝ぼけ眼を擦っているような朝に飲むと、眠気がぶり返してくるんですよ、お陰で昨日は午前中、酷い眠気に翻弄されてました。それよりも以前に、その眠気でよく無事に職場に辿り着けたものだ、とさえ思いました(汗)。今日は間違いなく飲まないと・・・。
「なかなかガードが固いなぁ、祐司君は。やっぱり前の彼女にふられて間もなかったからか?」
「あなた。幾らお酒の席だからって、人の過去の傷に触れるのは良くないわよ。」
「・・・もう良いんですよ。終わったことには変わりないですから。」

 そうだ。今の俺は宮城から合鍵を取り返したし、よりを戻そうなんて欠片も思っちゃいない。もう思い出しても嫌悪感は感じない。過去との清算が俺なりに出来たんだから、人に話しても良いだろう。

「マスターの言うとおり、まだ心に壁を作って外からも内からも出入りできないようにしてましたからね。晶子がステージデビューを成功させたときは、その壁が少し低くなった、っていう感じですね。」
「それが今みたいなラブラブの関係になったのは、ズバリ、祐司君が寝込んだ時だろ?」
「今みたいな関係になったのはもっと後の話ですけど、あの時が俺にとって大きな転換点になったのは間違いないです。俺の友人と晶子がデートすることになって、それで晶子を責めたてて・・・無茶苦茶だったんですよ、あの時の俺の心って。それで熱出して寝込んでりゃ世話ないですよね。ははっ。」
「あの時は・・・止めて欲しかったんですよ。でも、祐司さんは止めるどころか、私を責めるばかりで・・・私のこと、何とも思われていないんだって思うと凄く悲しくなって・・・その場から走って帰ったんです。ううん、悲しくてその場に居たくなかったんです・・・。」

 晶子がビールの入ったコップをテーブルに置いたまま、悲しげに視線を下に落す。まさにあの時、玄関に出て倒れこんだ俺を支えてベッドに寝かせて、ベッドの横に座った時に見せた表情そのものだ。ここで泣かれると大変だ。ハンカチは・・・持って来てないんだよな・・・。こういうときに限って。

雨上がりの午後 第575回

written by Moonstone

 潤子さんが話を俺に振ってくる。此処まで話が深入りするとは思わなかったが、まあ、話しちゃっても良いだろう。

「そうですね。晶子がステージデビューに成功したとき、楽器が出来るバイト仲間だ、って思うようになりましたね。」

2001/8/16

[爪を伸ばして約5mm(笑)]
 以前、私はイライラした時などに爪を噛む癖があったんですが、何時の間にか消え失せて(これ以後、心身の調子を崩したような気がする(汗))今は爪切りで爪を切るようになっています。
 で、爪を切るまでにある程度伸ばすんですが、何時切るかで結構躊躇ったりします(笑)。爪を伸ばすとキーボードを叩く時にカコカコと軽快な音がしますし(指先で叩くんですよ)、プルトップが開けやすかったりと、気分的にも実用的にも結構役に立つので、切るのがちょっと惜しいんですよね(^^;)。
 このお話をしている時点ではキャプションどおり約5mmくらい、大体どの指も均等に伸びてます。さて、何時切りましょうか・・・。これ以上伸ばすと今度は爪を剥がす危険性が増してくるので、切る決断をしなきゃ駄目ですね。

「最初の頃、祐司君は晶子ちゃんを相当毛嫌いしてたからなぁ。歌の指導を任せたのは良いが、折角潤子念願のキッチン担当が入ったのに直ぐ辞められやしないかって、潤子と一緒にハラハラしてたんだぞ。分かるかい?祐司君。」
「ええ、よーく分かりますよ。俺だってあの頃は晶子とペアを組まされて、さらに歌の指導なんて、何でそこまでやらなきゃならないんだ、って何度も思いましたから。」
「でも、一月くらいの間によくあれだけ歌えるようになったもんだ。」
「だってマスター、祐司さんは教え方こそ厳しかったですけど、私が納得できるまで何度も同じフレーズを演奏してくれたり、楽譜の読み方も丁寧に教えてくれたんですよ。それで上手くならなかったら祐司さんに申し訳ないじゃないですか。」
「教え方が厳しいかったのについていけたのは、やっぱり教える人が祐司君だったから?」
「ええ、そうですよ。好きな人に毎日会えて、それに自分の面倒まで見てくれるんですから、頑張って上手くなって誉めてもらうんだ、って思ったんですよ。」

 素面なら慌てて言うのを止めさせるか、話題を無理矢理変えようとするところだが、今はむしろあの頃の話を聞くのが楽しいとさえ思う。こう思うのも、酒で意識が宙に浮いているからだろうな、きっと。
 酒が入ったせいで、あの頃は辛かった、悔しかった、悲しかった、なんて本音が飛び出したら−酒は強力な自白剤だ−、俺はマスターと潤子さんに徹底的に窘められても文句は言えない。だが、初ステージを終えた後の晶子の言葉と、酒が入った今の晶子から出る言葉が同じってことは、晶子は本心から俺の指導で奮起していたんだろう。改めて嬉しく思うと同時に、もっと優しく接すれば良かった、と後悔の念に晒される。

「祐司君の気持ちが変わってきたのは、晶子ちゃんがステージデビューを果たした前後じゃない?」

雨上がりの午後 第574回

written by Moonstone

「でも、私と主人は二人が仲良くなってくれて良かった、って真剣に思ってるのよ。」

 お猪口をくいっと傾けて潤子さんが言う。空になったそのお猪口に酒を注ぎながらマスターは、何度も深く頷く。

2001/8/15

[今日は終戦記念日です]
 56年前のこの日、悲惨な戦争は日本のポツダム宣言受諾、無条件降伏で幕を下ろしました。それまでにどれだけの人達が命を落してしまったことでしょう。戦争で一番の犠牲になるのは一般市民であること、そして日本は被害者の側面と同時に加害者の側面を持ち合わせていることを忘れてはなりません。
 日本の首相は靖国神社に参拝しました。靖国神社は「天皇のために」死んだ人達を「英霊」として祭り上げ、その中にはA級戦犯もいます。しかし、空襲や原爆で命を落した人達は祭られていません。「天皇のために」死んでないからです。アジア諸国の厳しい反発は、「天皇のために」死んだ人達の思想信条お構いなしに「英霊」として祭り上げ、更に加害者の中の加害者であるA級戦犯を祭り上げている靖国神社そのものが、A級戦犯を「殉難者」つまりは「被害者」として称えているからなのです。
 「A級戦犯は戦勝国の一方的な決め付け」という人も居ます。しかし、極東国際軍事裁判の判決を受け入れるということは、日本が占領下から解放されたサンフランシスコ平和条約で受諾しています。つまり、極東国際軍事裁判の判決を国際的に「受け入れる」と宣言しているのです。それを今更「戦勝国の決め付け」とか、挙句、「自衛の為の戦争だったから(A級戦犯は)殉難者だ」という言い分は国際的に通用しないのです(「自衛の為の戦争」自体、歴史の事実を歪曲するものです)。
 「自衛の為」「お国の為」・・・。そんなことのために誰も死ななくて良いように、日本は新憲法で戦争放棄をうたったのです。それが現実に合わないのは、冷戦の始まりでアメリカが占領政策を右方向に旋回させた結果であること、そして何より、戦争の最前線に放り込まれるのは国会議事堂で居眠りしている議員ではなく若者達であることを絶対に忘れないで下さい。
 俺は泡だけを残してビールが消えたコップを、少し斜めにして差し出す。そこに晶子がビールをゆっくりと注ぐ。1杯目より二口分くらい量を増やした辺りでコップを垂直にする。晶子は瓶を置いてあった場所に置いて、俺に向かって優しくて温かい微笑を向けて再び残りの雑煮に手をつける。食べながらも俺の様子を気にしてくれていたんだろうか?だとしたら・・・嬉しいな。
 マスターや潤子さんがからかいに出るか、と思ってちらっと見やるが、マスターはおせち料理を摘んでいるし、潤子さんは席を立って熱燗の準備をしている。ほっとすると同時に、ちょっと残念な気もする。からかって欲しかったんだろうか?・・・全否定することは出来ないように思う。
 そう言えば・・・優子、否、宮城と付き合っていたときも、悪意があると感じた時は別として、周囲からからかわれても嫌な思いはしなかったっけ。何と言うか・・・むしろからかわれることが俺と宮城の仲の良さが周囲にアピールできているように感じたものだ。今もそういう気分なんだろうか?
 潤子さんから雑煮やおせち料理を勧められ、マスターからは日本酒を勧められ、食べたり飲んだり話をしているうちに、宙に浮いているような良い気分になってきた。満腹に近付き、その上酒も入っているから、良い気分になって当たり前かもしれない。
 誰かが何か言う度に爆笑が起こる。俺は何時の間にか晶子とビールを飲みながらマスターと熱燗を飲んでいたりする。晶子も最初の方はコップの半分を少し超えるくらいに注いでくれていたんだが、今ではもう泡が出来るだけ出ないように注意しながら、厚さ1cm位の泡を含めてコップいっぱいに注ぐ。マスターは潤子さんに用意してもらった俺「専用」のお猪口になみなみと注いでくれたりする。
 このまま際限なく酒が進むのを警戒して、俺の年齢を盾にしようと思って「俺19なんですけど」と言ってはみたが、「今更何を言う」とマスターに一蹴されてしまった。まあ、当然だな。月峰神社で何食わぬ顔で御神酒を飲んだし、普段でもアレンジで煮詰まったり練習やデータ作成で疲れたときとかに、缶ビール1本飲んでるし。今更年齢を盾にしても何の効力もないよなぁ。
 意外なのは晶子と潤子さんだ。潤子さんは俺と同じく、何時の間にかビールと熱燗を飲んでいたりするが、頬がほんのり紅くなって−これがまた色っぽい−よく喋る以外は全く平気そうだ。晶子は日本酒こそ飲んでいないが、ビールを飲むテンポはかなり早い。女性陣は思ったより酒に強いようだ。
 雑然としてきた食卓を囲んで、飲んで食べて笑う。実家や親戚周りでは考えられない風景だ。親戚周りで俺の新京大学進学の夢を耳が飽きるほど聞かされ続けた−一応親戚の中では成績優秀で通っていた−俺には、本当に楽しい時間だ。キッチンの前にある窓の外は既に暗いが、何時帰るかなんてことは頭を掠めて意識の深遠に消えていく。

雨上がりの午後 第573回

written by Moonstone

「ビールはまだあるから、なくなったら言ってね。」
「はい。ありがとうございます。」
「祐司さん。もう1杯飲みます?」
「あ、ああ。」

2001/8/14

[平穏な日]
 お盆休みの方が多いせいか、職場も町もどこか閑散としていました。お盆に休まない私は、久々にゆったりした気分で仕事をしていました。躓いていた問題の一つが直ぐに判明したのもあって、これまた久々に気分は上々でした。
 平穏な日々は生活する分には理想的なんですが、日記のネタには困るんですよね(^^;)。そりゃ、仕事は絶対平穏な方が良いに決まってるんですが(切実)、日々の暮らしには多少変化があったほうが良いんですよね。
 ま、これも一種の贅沢かもしれません。変化が必ずしも良いことばかりとは限りませんし、その変化に自分の心情が荒れて体調に悪い影響を及ぼすことも十分考えられますからね。平穏な日はその波のない時間の流れを存分に味わいたいものです(^^)。こういう日が長く続く筈がないということは既に分かってますからね。これはこれで非常に問題なんですが(汗)。

「何だ何だ。互いにビールの栓を開けて相手のコップに注ごうとしてたのか。こりゃ面白い。」
「・・・そんなに面白いですか?」
「二人同時に立ち上がるんだもの。何かと思ったら、祐司君も晶子ちゃんも同じこと考えてたなんて・・・。」

 俺と晶子はちらっと視線を合わせて直ぐに俯く。俺と晶子の間にちょっと気まずい空気が漂う中、マスターと潤子さんはまだ笑っている。・・・そんなに面白いか?
 このまま突っ立っていても仕方ないから、俺は持っていた栓抜きで瓶ビールの栓を開ける。晶子もこれ以上笑いの種になりたくないのか−そりゃそうだろう−、コップの一つを持つ。何が何でも自分が注ぐ、というある意味押し付けがましいところがないので、瓶を手に持った俺もやり易い。
 俺はやや斜めに構えた晶子のコップに静かにビールを注ぐ。黄金色の液体がある程度コップの容積を閉めたところで、晶子はコップを徐々に垂直にしていく。これで充分、という意思表示だろう。俺はビールを注ぐのを止めて瓶をテーブルに置いて、代わりにもう一つ置いてあったコップを手に取って少し晶子の方に口を傾ける。
 晶子は俺とは逆に、ビールの入ったコップを置いて瓶を手に取って、俺のコップに静かにビールを注ぐ。泡を吐き出し続ける黄金色の液体がコップの半分を超えたところで、俺は晶子がやったようにコップを垂直にする。晶子は瓶を置いて椅子に座る。続いて俺も椅子に座る。
 俺と晶子はビールの入ったコップを手に取ると、徐にコップを軽くあわせる。そして俺はビールをぐいっと一気に飲み干す。晶子は1/3ほど飲んだところで一旦コップを置いて、残りの雑煮を口に運ぶ。ビールを相手に注ごうとしたりビールの注いだりするところは同じでも、ビールの飲み方はかなり違う。

雨上がりの午後 第572回

written by Moonstone

 俺と晶子がそれぞれ事情を説明すると、マスターは如何にも面白そうに、潤子さんは右手の先で口を押さえてくすくすと、それぞれ特徴的な笑い方をする。

2001/8/13

[本日から企画開始です]
 更新情報でも記載したとおり、本日から残暑見舞い特別企画を始めました。興味のある方は是非挑戦してください。8月31日まで実施しますので、妙な問題の解答を探す時間もあると思います。あー、でも最後の問題は常連さんじゃないとキツいかな?1月1日から順番に試していくのも一興だと思います(爆)。
 私は今、ちょっと憂鬱な気分です。あ、今回の企画は私が自分でやろうと思って失敗覚悟で準備したものですので、それは気にしていません(成功するに越したことはないですが)。憂鬱なのは・・・ちょっと訳ありなので、此処では言えません。まさかこんなに私の心に影響があるとは思わなかったです・・・。
 ま、それはそれとして・・・土曜日に私を苦しめた頭痛はすっかり治って、また今日から働く日々が始まります(夏期休暇はもう少し後で取ります)。挫折だらけの仕事もありますが、少しずつでも前に進めたいものです。
杯一杯程度では言えなかったことや聞けなかったことが飛び出すかもしれない。もっとも酒が原因で折角の人間関係をぶち壊してしまうようなことになることだけは避けなきゃならない。これは飲む側の自己責任だ。

「じゃあ俺は・・・ビールお願いします。」
「私もビールお願いします。」
「俺は熱燗を頼む。」
「ビールは丁度冷えてるから直ぐ飲めるわよ。あなた、熱燗はちょっと時間かかるけど良い?」
「構わん構わん。正月くらいのんびり行こうや。」
「じゃあ、早速準備するわね。私も飲みたいし。さて、ビールはっと・・・。」

 潤子さんは席を立って、冷蔵庫から瓶ビール1本取り出す。続いて床下の倉庫から一升瓶を取り出して、食器棚からお猪口と大きめの徳利を取り出して、手早く鍋をコンロにかけて湯を沸かし始めて、そこに徳利を入れる。そして瓶ビールを栓抜きとグラス二人分と一緒に俺と晶子の丁度真中に置く。潤子さんの動きには無駄が全くない。マスターが潤子さんにどんな魔法をかけたのか聞いてみたい衝動に駆られる。これで何度目か分からない。
 晶子が瓶ビールの栓を抜こうと席を立ったところで、俺が栓抜きを持って立ち上がる。俺と晶子がテーブルを挟んで席を立った構図に、マスターと潤子さんはきょとんとした表情を俺と晶子に向ける。

「どうしたの?二人揃って立ち上がって。」
「まさか、頼んだビールを前にして帰る、なんて言わないよな?」
「あ、ち、違うんです。ビールの栓を抜こうと思って・・・。」
「俺もビールの栓を抜こうと思って、栓抜きを持って立ち上がったんですよ。」

雨上がりの午後 第571回

written by Moonstone

「あ、そうそう。お酒飲む?」

 黒豆と蓮根の煮込みを食べていた潤子さんが尋ねてきた。料理は勿論美味いが、酒があるともっと楽しい場になると思う。

2001/8/12

[今日から再開です]
 あっという間の3日間でした。その間も完全にネットから離れていたわけではなくて、メールやメールフォームのお返事やこのページのチェックをしてました。あと、メールフォ−ムにちょっと手を加えました(機能的には変わりませんが)。
 で、今の私はどうかというと、一応心理的な体調の悪化は日常生活に支障ないほどに持ち直しましたが、風邪のひきかけなのか、頭がかなり痛いです(汗)。でも、頭が痛いからといって市販の頭痛薬を飲む、というわけにはいかないんですよね。薬の飲み合わせってやつで。
 そうそう、明日の更新で前にもお話した企画を実行します。一応ローカルでは確認しているんですが、最終チェックがまだなので。この企画は土曜日1日で仕上げたんですが、それが身体に負担をかけたのかもしれません。ああ、弱い身体だこと(- -;)。
「そう。なら良いんだけど・・・。」
「見たことのない食事が並んだ時のことを考えてたんじゃないのか?」
「?どういうこと?」
「これ以上祐司君を苛めると、晶子ちゃんが怖いから止めとく。」

 マスターはちらっと晶子の方を見て、新聞を畳んで机の隅に置いて重箱の中にある数の子を箸で摘んで食べる。何事もなかったようなその豹変振りに俺は苦笑いするしかない。潤子さんは首を傾げながら椅子に腰を下ろして、黒豆と蓮根の煮込みを−これも俺の実家や親戚のおせち料理にあったメニューだ−添えられてあったスプーンで取り皿に取って一口分食べて顔を上げる。

「祐司君も晶子ちゃんも遠慮なく食べて良いからね。むしろ食べて欲しいくらい。」
「どうしてですか?」
「実はね、二人分で良いのにちょっと作り過ぎちゃったのよ。昨日月峰神社で会った時に誘ったのは、実家に帰らない二人に正月気分を味わって欲しかったのと、作り過ぎたおせち料理を食べて欲しかった、ていう理由があったからなのよ。」
「というわけだ。二人が来てくれて良かったよ。さあ、遠慮なく食べてくれ。勿論、好みじゃないやつは無理して食べなくても良いからな。」
「「はい。」」

 マスターと潤子さんの都合があったとは言え、豪華な正月料理の、それも実家を髣髴とさせる料理の数々に、俺は雑煮と交互に重箱の彼方此方を突付く。晶子も最初こそちょっと手を出しあぐんでいたが、数の子や栗金団(くりきんとん)といった、おせち料理の中でもお馴染みの料理から手を出し、初めて口にするタイプの雑煮と共に、徐々に軽快さが出てきて他の料理にも手を出していく。晶子は食生活にかなり柔軟に対応できるようだ。

雨上がりの午後 第570回

written by Moonstone

「祐司君、どうしたの?」

 久しぶりに深い思考の海溝に沈んでいた俺は、潤子さんの問いかけで我に帰る。潤子さんは席を立って身を乗り出し、心配そうに俺を見ている。

「あ、いえ、ちょっと考え事してただけですから・・・。」

2001/8/8

[少しの間、お休みします]
 昨日お話した可能性が現実のものになりました。明日から3日間、シャットダウンさせていただきます。その理由は、月曜から続いている体調の著しい悪化です。昨日は月曜よりさらに体調が悪化したので、もう殆ど仕事になりませんでした。本業の方が大切なことは言うまでもありませんので、このページの更新をお休みして、体調の回復を優先させていただきます。
 昨日は帰宅して夕食を少し食べた後は殆ど横になってました。こういうときに限って、大切な任務が控えていたり(先方の都合で今日にずれ込みました)、行き詰まっている仕事が肩にずっしりと圧し掛かっていたりするんですよね(溜息)。
 メールやメールフォームのお返事はするつもりですが、体調がこんな状態ですので、遅れることはご了承願いたいと思います。治療を始めてきちんと1年過ぎても症状がぶり返すこと数知れず。一体何時になったら、こんな辛い思いをしなくても良くなるのかな・・・(溜息)。

「そろそろお互いの食文化の違いは知っておいた方が良いんじゃないか?」

 それまで黙っていたマスターがいきなり切り出す。俺はマスターの言葉の中に含まれたものを感じ取って、思わず続いて口に運んだ餅と白菜を噛まずに飲み込んでしまいそうになる。何故そこまで話を飛躍させるんだ、このおっちゃんは・・・。俺は胸を何度も叩いて、吐き出しそうになった冷静さをどうにか取り戻す。

「おいおい、どうした祐司君。喉に痞えたか?」
「なら大変じゃない!祐司君、ちょっと待っててね!」
「い、いえ、大丈夫です。ちょっとむせただけですから。」

 慌てて立ち上がった潤子さんをどうにか制する。表面上は落ち着いた俺は、咳払いなどして取り繕う。しかし、隣の熊さんの言ったことに対する心の動揺は隠し切れない。
 想像するとぜんざいみたいな雑煮が実家の雑煮だというなら、食文化の違いは多分これだけに留まらないだろう。まあ、洋食はそれほど影響はないだろう。現に俺は何度も晶子の作る洋食を食していて違和感を感じたことは一度もない。
 しかし、和食は地域の特色や文化が色濃く出る料理だ。刺身や天ぷらといった、割と洋食に近いとも言えるメニューはまだしも、肉じゃがやきんぴらゴボウとか、煮込みが入ってくる料理となると話は違ってくる。肉じゃがやきんぴらゴボウは2、3回食卓に上ったことがあるが、どれも甘く感じた覚えがある。そのときはあまり作り慣れてないって晶子が言う和食だから、砂糖の加減を間違えたかな、という程度にしか思わなかった。しかし、今思えばそれが俺と晶子の決定的な違いの一つだったわけだ。
 食文化に大きな違いがあるということは、そのバックグラウンドになっているその地域の文化や風習にも違いがあるってことだ。幾らコンビニやファーストフードで食文化の全国均一化が進んでいるとはいえ、地方ではまだまだその文化や風習が根強く残っているものだ。・・・もし、俺が晶子の実家に案内されるようなことになって、見たこともない食事を目の前に並べられたら・・・どうすりゃ良いんだろう?

雨上がりの午後 第569回

written by Moonstone

 潤子さんの表情に安堵の色が浮かぶ。やはり初めて自分の料理を食される緊張感が相当あったんだろう。如何に際立つ外見に加えて常連客を−もはや固定客と言って良いかもしれない−店に呼び寄せる料理の腕を持っていても、食文化の違いを超えるのは難しいだろう。料理がまるで駄目な俺でもそのくらいは想像出来る。

2001/8/7

[具合、悪いです・・・]
 ここ最近は割と好調だったんですが、土日で無理をしたのがまずかったのか(徹夜とか連載の追い込みとかありましたからねえ)、昨日は朝から具合が悪くて大変でした(汗)。吐き気はするし眠いし、仕事もやる気が出ないし・・・。
 このお話をする前にも1時間ほど寝ていました。普段ならそんなに眠くない時間帯なんですが、どうにも具合が悪くてダウンしてしまいました。夕食も栄養剤と食べ物少々で済ませました。それだけ食べるのもしんどかったです。
 場合によっては、明日か明後日に臨時にシャットダウンするかもしれません。企画の準備は整ってきましたが、余程回復しない限り、企画の準備の続きは勿論、このコーナーを更新したりメールのお返事をするのもままならない状態ですので・・・。今もかなり無理してます、はい(汗)。
「俺はこの雑煮と全く同じタイプですよ。母親の雑煮との食べ比べになりますね。」
「あら、じゃあ、私の方が不利ね。お母さんの雑煮とはやっぱり違うだろうし。」
「でも、出汁の香りとかは実家のを彷彿とさせられましたよ。」
「じゃあ、祐司君、晶子ちゃん。どうぞ食べて頂戴。」
「「いただきまーす。」」

 俺と晶子はお馴染みの食前の挨拶を済ませた後、箸を手にして出汁の香り芳しい餅を口に運ぶ。じっくり煮込まれたらしく柔らかくて旨味が存分に染み込んだ餅は口の中で容易くとろける。・・・これは美味い。実家の雑煮に全く引けを取らない、否、激しい鍔迫り合いだ。どっちが優勢なんて言えないレベルだ。

「流石は潤子さん、美味いですね。」
「どう?お母さんの味と比べて。」
「比較なんて難しいこと、出来ませんよ。」
「あらそう。良かった。晶子ちゃんはどう?」

 マスターの向かい側、晶子の隣に座っている潤子さんの顔が若干曇る。初めて目にするタイプという雑煮を食べられて、その批評を受ける身だ。潤子さんといえど緊張するだろう。だが、晶子は何度か咀嚼するうちに緊張気味だった表情が和らいでいき、飲み込む頃には満足感溢れる表情になった。

「薄味ですけど凄く美味しいです。さっぱりした醤油味が良いですね。」
「そう?タイプが根本的に違う雑煮だからどうかと思ったけど・・・。」

雨上がりの午後 第568回

written by Moonstone

「はい。実家の方では餡(あん)の入った餅を大根や白菜と一緒に砂糖で煮込むんです。だから初めて見た人はびっくりしますよ。「甘い雑煮なんて初めてだ」って。」
「そうなの。じゃあ晶子ちゃんの口には合わないかもしれないわね。祐司君はどう?」

2001/8/6

[うーん、なかなか・・・]
 定期更新前の日曜日、土曜日深夜から続けていた「魂の降る里」の執筆と仕上げに集中していました。しかし、展開はスムーズに頭の中に浮かぶのに、それを文字にするのがスムーズにいかずにイライラするばかり。原因は単純、今使っているPCのキーの反応が良くないからです。
 今まで「O」のキーくらいだった反応の悪さが「A」や「G」、「M」や「N」「T」などにまで拡大。何度も何度も変換前の文節に文字を入れ直す作業があって、軽快に文章作成が進まず(変な変換もするし(爆))、イライラが募りました。
 幸い、どうにか完成して、この度皆様の前にお見せすることが出来ましたが、キーの反応の悪さは今後も続くので、ちょっと憂鬱です(- -;)。キーボードを交換出来るデスクトップの方が、こういうとき便利なんですけどね〜。
 俺と晶子は席に着く。俺がマスターの隣、晶子がその向かい側に。丁度去年のクリスマスコンサートの音合わせで泊り込んだときと同じ位置だ。マスターの横に晶子を座らせたくないとか、潤子さんの隣に座って晶子に睨まれたくないというわけでもない。何故かこの位置がしっくり来るからだ。
 潤子さんは火加減に注意しながら大きな鍋をゆっくりかき混ぜている。出汁の良い香りが鼻を心地良くくすぐる。あの鍋の中に潤子さんお手製の雑煮があるのかと思うと、それだけで腹の虫が騒ぎ出す。潤子さんお手製の料理の味は、バイト前の夕食やクリスマスコンサートの音合わせの時の食事で充分分かっているだけに、期待も大きい。
 潤子さんが火を止めて、予めテーブルに重ねておいてあった茶碗を手に取って、そこに雑煮をすくって入れる。薄い茶褐色を帯びた餅と白菜が、湯気を立ち上らせながら茶碗に流れ込んでいく。出汁の香りをバックグラウンドにしているだけに、その様子が一層期待を膨らませる。

「祐司君と晶子ちゃん、それぞれ住んでる所によっては初めて見るタイプかも知れないけど・・・。」

 潤子さんは俺と晶子の前に雑煮の入った茶碗を置く。実家の雑煮と同じく、出し汁で白菜と餅を煮込んだものだ。実家で正月の度に食べているタイプだが、潤子さんが作ったものだけに期待は大きい。一方の晶子は・・・ん?大きな瞳をより大きく見開いて物珍しそうに見ている。もしかして晶子にとっては初めて見るタイプの雑煮なんだろうか?

「良い香りですね。これって鰹出汁だけですか?」
「そうよ。それに醤油を加えて餅と白菜を一緒に煮込んだの。晶子ちゃんは・・・初めて見る?こういう雑煮。」

雨上がりの午後 第567回

written by Moonstone

「よっ、お二人さん。いらっしゃい。」
「「こんにちはー。」」
「空いてる席に座ってて。雑煮をもう少し温めるから。その間、テーブルのおせち料理を摘んでて良いわよ。遠慮しなくて良いから。」
「「はい。」」

2001/8/5

[つ、疲れた・・・(汗)]
 8/3の夜から8/4の未明まで徹夜して、空が白んでくる兆候が見え始めた頃(A.M.4:00ちょっと過ぎた頃)バッテリーをフル充電したディジタルカメラを持っていざ出発。ところが・・・写真の題材になりそうな空じゃないし(ぼんやり曇っている空は色の変化に乏しい)、鳥はといえば、近くで朝食を(だと思う)食べていた老夫婦のおこぼれを啄ばむ鳩しかいないし、おまけに空気は存分に蒸し暑いしで、殆ど撮影することなく約1時間半で帰宅。辛うじて2、3枚、花の写真が上手く撮れたかな、という散々な結果で終りました(泣)。
 で、朝食を食べた後、午前中は就寝。早朝のリベンジと意気込んで再びバッテリーをフル充電したディジタルカメラと保存メディアの予備を準備して、花火大会の鑑賞会場へ出発。約2時間半の格闘でそれなりに撮影をすることができました(このお話をしている時点ではまだ撮影した写真を確認してません)。

 撮影した写真は厳選した上で、著作権フリー写真獲得クイズに使います。Photo Group 1の写真は著作権を宣言していますが、著作権フリー写真は文字どおり著作権フリーにしますので、加工や利用は一切自由です(^^)。それだけ価値のある写真か、と聞かれると、見て判断してください、としかいえません(汗)。
 次回定期更新の翌日が立秋なので、それまでにクイズを実施したいんですが、定期更新の準備が殆ど出来てないので、タイトルに「残暑見舞い」の枕詞が付くことは避けられないでしょう。何れにしても、このページでは久しぶりの企画らしい企画ですので、実施の際には是非チャレンジしてくださいね(^^)。
 「CLOSED」のプレートがかかっている店の出入り口には、さらに注連縄(しめなわ)が飾られていて、両脇には割と大きな門松が置かれていた。洋風そのものの店の外見からは妙に浮いて見えた。一方の裏口にも車と入り口に注連縄が飾られている。結構まめに正月の準備を施してある。
 此処にお邪魔するということは俺の家を出る前に電話で伝えてある。何時来ても良いとは言われてはいるが、いきなり押しかけるのは流石に気が引ける。潤子さんお手製のおせち料理に雑煮。どんなものか早く味わってみたいものだ。俺はインターホンのボタンを押す。少ししてガチャッという音がする。

「はい、どちら様でしょうか?」
「あ、潤子さんですか?安藤祐司と井上晶子です。」
「待ってたのよ。ちょっと待ってね。ドアの鍵開けるから。」

 再びガチャッという音がして、間もなくドアに向かって走ってくる足音が徐々に大きくなって聞こえてくる。そしてドアのノブで軽い金属音がして、ドアが開かれる。顔を出したのは潤子さんだった。長い黒髪は括られてなくて、肩口からふわりと流れている。

「さ、入って。食事の準備は出来てるから。」
「「はい。」」

 俺と晶子は、潤子さんが開けてくれたドアから中に入る。玄関もほんのりと暖かい。俺はコートを脱ぐ。ついさっきまで冷気に晒されて半ば強張っていた頬も柔らかさを取り戻し始める。

「二人共、頬が真っ赤よ。寒かったでしょ?」
「ええ。太陽は夏と変わらないように見えるんですけど、空気はやっぱり冬ですね。」
「雑煮作ってあるから、少し温めれば直ぐ食べられるわよ。」
「「ありがとうございます。」」
「ふふっ、良いのよ。日頃頑張ってくれてるんだから。」

 女神を思わせるような微笑を湛える潤子さんに先導されて、俺と晶子はダイニングに入る。と同時に、それまで新聞で上半身を隠していた人物が「正体」を明らかにする。「正体」といっても勿論、マスターなんだが。

雨上がりの午後 第566回

written by Moonstone

 その後は背後から「爆弾」を食らうこともなく、無事にマスターと潤子さんの家、同時に俺と晶子のバイト先に着いた。晶子が自転車を降り、裏口へ自転車を押す俺の後ろをついて来る。

2001/8/4

[ね、眠い・・・]
 昨日は一段と眠い1日でした。服用している薬のせいもあるでしょうが、午前中は座っているだけでもうっかりしていると意識が遠のく程でした(汗)。これまでの平日4日間の疲れが(プログラムが記述しているとおりに動かない・・・)肉体的、精神的許容量を越えて溢れ出したんでしょう。
 帰宅するとその疲れがさらに前面に出て来て、夕食を作って食べた後ぱったりと布団に突っ伏し(現在、布団をクーラーのある部屋に移設中)、程なくご就寝(爆)。テレホタイム直前まで寝てました。
 今日は朝の風景の撮影に、花火の撮影もあります。久しぶりにディジタルカメラのバッテリーをフル充電して、「その時」を待っています。今回撮影した写真の一部はあることに使うつもりですので、明日以降の更新内容にご注目ください。
「でも、何れは両親に言わないと駄目ですね。『この人が安藤祐司さんよ』って。」

 突然の「爆弾」に、俺は思わず前につんのめる。危うく転倒は逃れたが、一旦自転車を止めて足をペダルから道路に移して呼吸を整える。

「と、突然何言い出すんだよ。」
「え?両親に紹介する時の一般的な口上を口にしただけですけど。」
「い、一般的な口上、ねえ・・・。何か・・・想像できる雰囲気が一般的じゃなかったんだけど。」
「そう思ったってことは、祐司さんの意識の中にそういう雰囲気があるってことじゃないですか?」
「う、うーん・・・。」

 参ったなぁ・・・。晶子が言ったように、「そういう雰囲気」が頭に全くなかったわけじゃない。まだ付き合い始めて一月も経たないのに、もう「そういう雰囲気」を頭に思い描いているってわけか・・・?幾ら何でも気の早い話だが、想像してみると悪い気はしない。

「祐司さん。その話はまた後にして、先にマスターと潤子さんのお宅へ向かいましょうよ。」
「あ、ああ。そうだな。よし、行くか。」

 俺は何故か高ぶる気持ちを沈めて、再びペダルに足を乗せて自転車を進ませる。冷気が頬を伝っていくのが心地良い。多分、頬が火照っているんだろう。無論、温かい食べ物を食したり適温の風呂に使ったのでもない。

雨上がりの午後 第565回

written by Moonstone

「祐司さんの判断は正しかったと思いますよ。いきなり聞いたことのない女の人が看病してくれた、なんて言ったら大抵の人は誰だそれって驚きますよ。」
「晶子の場合はもっと驚くだろうな。男の家で年越しして、さらにその男の家に泊まった、なんて娘から聞かされたら親がびっくりするのは目に見えてる。」

2001/8/3

[ソフトウェアの難しさ]
 私は仕事で主に電子回路機器(ハードウェアと称します)を設計、制作しているんですが、制御方法やデータの取り込みなどの関係で、時折専用のプログラム(ソフトウェアと称します)の制作もします。しかし、これがハードウェアより厄介なんですよ。特にWindows時代になってからは。
 MS-DOS(もうこの言葉知らない人いるかも)全盛の時代には、直接I/Oアドレスを(データの入出力をする小箱と思ってください)突付くことが簡単に出来て、手っ取り早く動作試験をすることも出来たんですが、Windows時代になってからというもの、やれDLL(ライブラリの特別なやつ)だの、やれリンクだの、と簡単なプログラムを作るだけでもDOS時代の数倍の手間がかかって、ハードウェア制作にかかる時間よりテストプログラムを制作する時間の方が長いなんてことも珍しくありません。実際そんなことがありましたし、本物の制御プログラムはハードウェアより手間がかかるしさらに厄介です(- -;)。
 今、少しずつプログラムを変更しながら動作確認をしているんですが、DOSなら簡単にできるものを・・・、と頭に血が上ることもしばしば。一体何時になったら落ち着いて回路図が描けるんでしょうかねぇ〜。
だが、予想を遥かに越える短い時間で戻ってきたことで、外に出ようとしていた暗雲は簡単にその勢いを失う。往復の時間を考えても、1日遅れの新年の挨拶以外話しようがないだろう。
 俺と晶子は管理人に会釈して−入ったときに新年の挨拶をしたら、礼儀正しい若者だね、なんて誉められた−外に出て、自転車置き場に向かいながら話をする。

「早かったな。」
「基本的には新年の挨拶だけですからね。でも、親は大晦日と昨日も居なかったのはどういうことか、って聞かれました。」
「・・・どう答えたんだ?」
「お友達の家で年越しして初詣に行って、そのままそのお友達の家に泊まった、って。『お友達』以外は間違ってないでしょ?」
「ああ、間違ってない。何て言うか・・・晶子も俺も似た者同士だな、本当に。」
「え?」

 俺は晶子が自転車の荷台に乗ったのに続いてサドルに跨って、マスターと潤子さんの家、つまりは俺と晶子のバイト先へ向けて出発する。

「ほら、前に俺が高熱出して寝込んだことあっただろ?あの数日後に親から電話があって、熱出して寝込んだことを話したんだ。そしたら食事や薬とかはどうした、とか聞かれたんだ。そのとき『同じバイトの人に助けてもらった』って言ったんだよ。これも間違ってないだろ?」
「ええ。本当によく似てますね。私達。」
「本当なら、晶子に看病してもらったって言うべきだったんだろうけど・・・、まだあの時は付き合ってなかったし、親が大騒ぎすると思ってな。一体その井上晶子って娘(こ)は何なんだ、とか。」

雨上がりの午後 第564回

written by Moonstone

 「直ぐ済みますから」と言って此処で待っているように頼んだ晶子を、俺は正直訝った。そんなに聞かれたくないことを話すのか、と。だから払い除けた筈の暗雲が外に出ようとしていたわけだ。

2001/8/2

[?今日って何月何日?]
 毎日更新していればそのくらい分かるだろう、と思われるでしょうが、分からなくなっちゃったんですよ。ことの始まりは、画面右下の時計が(使用PCのOSがWindowsなもので)7/31になっていたことです。確か昨日、月始め恒例で背景写真を花火に変更したり、その他細かい変更や修正を施したのに、どうして今日が7/31なんだ?と。
 お礼メールの発送もあって(発送した日付を付記するので)大混乱した私は(パニックになりやすい(汗))、彼方此方のWebページや日付表示付きの時計、そしてこのコーナーの更新用スペースの日付で、ようやく今日が8/2で間違いない、と分かりました。ふう、やれやれ(^^;)>。
 そんな混乱があったおかげで、今日の更新がちょっと遅れてしまいました。一部のメールの送受信の日付が変になってしまいましたが(受信日付より送信日付の方が早いとか)、大事に至らなくてひと安心。慌てて2回目の「8/1付更新」をやらなくて良かったです(^^;)。
 ・・・止めだ。このままだと晶子を警察みたいに尋問しかねない。それに晶子にだってプライバシーってものがある。聞かれたくないことだってあるだろう。第一・・・また同じ苦しみと悲しみを味わいたくない、二度と騙されてなるものか、という疑心暗鬼を逃げの気持ちを乗り越えて晶子と付き合うことを選んだのは他ならぬ俺自身じゃないか。気持ちを逆戻りさせてどうするんだ?!晶子を信じないでどうするんだ?!

「そう言えば大晦日にも同じこと聞いたよな。はは、馬鹿だよな、俺って。2日で忘れちまうなんて。」

 半分以上晶子への気持ちを覆っていた暗雲を振り払うように、軽い調子で言ってみたりする。

「御免なさい。祐司さんの電話を聞いておいて自分の電話は聞かせない、なんて勝手なこと言って・・・。」
「新年の挨拶くらいだろ?謝ることなんてないさ。それより早く着替えよう。あっという間に外が真っ暗になっちまう。俺は風呂場で着替えてくるから。」
「はい。」

 晶子は微笑んで頷く。俺は服を抱えて風呂場へ向かう。・・・これで良い。もう心に壁を作って疲れるのは御免だ。試したり疑ったり、そんな駆け引きはもう恋愛ではしたくない。苦しいのは相手に想いが届かないときだけで充分だ。

「お待たせしました。」

 時間にして5分少々で、晶子は待ち合わせ場所にした、晶子の家があるマンションのロビーに戻って来た。再び外に溢れ出ることを伺う暗雲を押さえ込みながらソファに座っていた俺は立ち上がる。

雨上がりの午後 第563回

written by Moonstone

 晶子はどういうわけか自分の家からに固執しているように思う。何故だろう・・・?聞かれたくないことでも話すんだろうか?晶子が・・・俺に何か隠し事をしている・・・?そう思うと、心の中で急に疑念が膨らみ始める。疑念が膨らんでいくに合わせて、晶子への気持ちに暗雲が覆い被さっていく。

2001/8/1

[た〜まや〜!]
 月始め恒例の背景写真の変更は、7/20で未完に終った(事故だから仕方ないですけど)花火にしました。景気良く(?)炸裂した瞬間を捉えたスターマインです。まだ花火を見てない方、事情があって花火を見に行けない方、もう花火は見飽きたという方までご堪能いただければ幸いです(^^)。
 さて、今日は更新内容が多いように見えますが、実際は細々とした修正が大半です。閉鎖したJewelBoxとWordSpheresの説明とリンクを削除したり(ジャンプしたら「閉鎖しました」では申し訳ないですから)、リンク切れサイトを削除したり、といったものです。
 普段でもこれだけ作品がずらりと並べられたら良いんですけどね〜。昨日久しぶりに遅くまで残業があって、それで随分疲れ気味の私では、ちょっと無理な話ですね。でも、(作り置きを輩出した分が大きいですが)設立当初の勢いを取り戻せたら、と思います。どのグループに行こうか、って悩めるくらいの数の作品(勿論、質の高さも重要)を保有したいです。
 晶子が布団の中から尋ねる。冷気の鋭さを感じたのか、うつ伏せなった状態で布団から頭だけ出している。・・・ちょっとずるいと思う。

「ああ。よく分かったな。」
「話の内容から何となく分かりましたよ。」
「昨日の留守番電話は聞いてくれたみたいだった。いきなり『あんた、こんな時間まで寝てたの?』って言われたときは、ちょっとドキッとしたけどな。」

 実家から電話がかかってくるのは、去年の−とは言っても、まだ3日前までのことだが−12月半ば以来だ。内容もさっきとよく似たもので、大学に通っているか、変な団体に入ってないか、身体は大丈夫か、といったもので変化に乏しい。まあ、こういう場合は「変化がないのは良い便り」なんだが。
 実際、前に高熱出して寝込んだ数日後にそのことを話したら、病院へ行ったか、薬はあるか、食事はどうしたのか、とあれこれ問い質された。そのときはバイト先の人に助けてもらった、と言っておいた。晶子に付きっきりで看病してもらった、なんて言ったら大騒ぎになるのは目に見えていたし、「バイト先の人」というのは本当だから嘘はついてない。・・・我ながらなかなかの屁理屈だ。
 晶子が起き上がって床に落ちていた上着を羽織ってベッドに座る。俺は今日着る服を適当に見繕って取り出す。そして暖房のスイッチを入れる。

「晶子。今日どうする?」
「マスターと潤子さんのお宅にお邪魔しませんか?」
「そうだな・・・。昨日来ても良いって言ってたし、行くか。」
「ええ。途中、私の家に寄ってもらえます?」
「晶子の家に?・・・ああ、そう言えば晶子は実家に電話してないんだったっけ。いっそ此処で電話しても良いんだぞ?本当に。」
「・・・自分の家からにします。」

雨上がりの午後 第562回

written by Moonstone

 母親が受話器を切る音が聞こえたのを合図に、俺は受話器を置く。ちょっと乱暴な新年の挨拶だったが、まあ気にするほどのものじゃない。電話に集中していた神経が部屋の冷気に気づき、俺を身震いさせる。

「電話、お母さんからだったんですか?」


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