芸術創造センター こぼれ話
Dropped talk of Performing Arts Center

2000年9月30日更新 Updated on September 30th,2000

2000/9/30

[9月最後の週は地獄の週でした]
 い、いかん。帰宅して遅い夕食を摂って横になったら、何時の間にやら完全に気絶してた・・・(^^;)。夕方あたりから身体的にも具合が悪くなってきて、流石にもう耐えられないと少々早めに(それでも他より十分長い時間居た)帰宅して、一時横になっていた時点から、ちょっと危ないかな、とは思ってたんですが・・・。
 でも、薬に頼らないとどれだけ疲れていても5時間が限度ですね。時計を見て比較したら今回もそれは代わりません。いっそ明け方まで寝てても良かったんですが(更新は遅くなっちゃいますが止むを得ないでしょう)。

 9月最後の週、この土曜日は朝から出掛ける予定が連続しているのでまたハードになりそう(汗)。一度数日間しっかり身体を休めないと本当にぶっ倒れるかも(実際、倒れそうになったことはあるし)。
 明日から10月。しかもいきなり定期更新。あうう・・・。この日程がまた辛い・・・(泣)。何でこうも人によって忙しさが違うのか、と心中で歯軋りすること頻りの1日でした、はい。イライラ専用の薬も飲みましたけど、結局あまり効果はなかったかな・・・。ずっとイライラしてたから(爆)。で、来週もまたこんな週になるのがほぼ確定。・・・倒れたら誰かの首一つ飛んで貰わなきゃやってられませんよ、ホントに(- -;)。
「ほほう、この俺が言わなきゃ分からんとでも言うか?」
「い、いや、そうじゃなくてだな・・・。」
「ま、お子様級のお前のことだ。どうせ乾杯して『メリークリスマス』で終わりだろ。」

 そう言ってふふんと鼻を鳴らす智一。どういうわけか自信たっぷりだが何かあるんだろうか?第一、智一は晶子を狙ってたんじゃなかったのか?

「そういう智一。お前はどうなんだよ。」
「俺か・・・。聞いて驚くな。新京プリンストンホテルのスウィートルームに豪華フランスディナーを予約済みだ!」
「・・・張り込んだな。で、相手は?」
「決まってるじゃないか。晶子ちゃんを誘うのさ。」
「!!」

 今までそんな素振りは見せていたが実行に移したことはなかったのに・・・クリスマスというある意味絶好の機会に、とうとう再び行動に出るつもりなのか、智一は・・・。
 俺の中で心拍数が一気に上昇する。喉が渇く。唾を飲み込んだくらいじゅや収まる筈もない。俺と智一の間で見えない火花が激しく散り始めたように思う。余裕たっぷりの智一に対して、俺は約束こそしているが背景があまりにも弱すぎる。何せまだ正式に付き合ってもいない状況なんだから。

「つまり、お前に再び挑戦するってことになるな。あれから多少は状況は進んでるかもしれないが、まだ俺が入り込む余地はあると踏んでるんでな。」

 智一の予測は妙に的をついている。こいつ・・・それを知ってて行動に踏み出そうと言うのか?だとしたら、このままだと俺の方が心理的には圧倒的に不利だ。

「多分・・・いや、絶対、OKしないと思うが。前だって・・・。」
「確かに晶子ちゃんはお前の方を向いてる。でも、お前は態度がはっきりしてない。そこだよ。俺が狙ってるのは。」

雨上がりの午後 第323回

written by Moonstone

「そして小ぢんまりした逃げ場のない空間でケーキとシャンパンでも用意して、『今夜は二人きりだよ』とか言って持ち込む気だろ〜?」
「な、何に持ち込もうって言うんだ?!」

2000/9/29

[これだけは言っておいた方が良いでしょう]
 新聞やテレビを見ると嫌でも五輪、五輪と目や耳に飛び込んできます。普段は五輪に付きまとう商業主義や右翼を喜ばせるだけの能天気な日の丸振りが大嫌いなのでもっぱら無視を決め込んでいますが(只でさえ良くない具合が更に悪くなる)、野球の結果に関してだけはちょっと注目していました。
 結果は4位。それで泣いていた選手も居たそうです。どうしてそうなったんでしょう?キューバや韓国が強かったから?それはあるでしょう。ならば何故選考関係者やプロ野球関係者は最強メンバーを揃えなかったんですか?(表現は失礼ですが)中途半端な合同チームでろくに練習もせずに臨むなんて、五輪をなめてやしませんか?

 日本は、金は幾つ、と騒ぐなら、万全のチームを送り込むのが当然でしょう。選手を出し惜しんだチームやそのオーナーを徹底的に批判するかと思えば「メダルに手が届きませんでした」報道だけ。そんな程度ならそこらの高校の放送部の方がまだましです。否、その方が真剣さがあるから良いでしょうね。
 マスコミにろくな追求力がないから、教育改革国民会議のメンバー曽根綾子の月刊誌での本音も報道できず、根拠もろくに示せないまま教育基本法改正を言い出させるんです。何処までマスコミは腰抜けなんだ?!
「文系学部はとっくに冬休み。晶子ちゃんにも会えないし、こんなつまらんキャンパスライフもそうそうないぞ。」

 晶子、の名が出たところで俺はドキッとする。俺はその晶子のマンションで流れのままに一緒に寝て、朝ご飯をご馳走になってさらに見送りを受けた身だ。
 そんな事情を知る筈もない智一を前にして、俺はまだ晶子との関係を話していないどころか、「勝負」に勝っておきながら晶子に気持ちを伝えてすらいない今の自分が、物凄くずるいように思う。

「まあ、今年はクリスマスが週末だからな。クリスマスまで補講なんてかなわん。教授連中はどうでも良いだろうけど。」
「・・・そうだな。」
「で、お前の予定はどうなんだ?もうレストランとかの予約は済ませてあるのか?」
「い、いや、それはそう言うのは・・・。」
「何だ、違うのか?」

 智一の頭の中では世間で言うカップルのクリスマスのイメージがすっかり定着してしまっているようだが、俺はそんなつもりは毛頭ない。
 ・・・そう言えば、晶子が自分の家でちょっとしたパーティーをしよう、とか言ってたな・・・。よくよく考えれば、クリスマスの夜を家族以外の人間と過ごすのは初めてだから−優子のときは昼間デートで会ってプレゼント交換、という過ごし方だった−いまいち実感が湧かない。

「お前、さては・・・!」
「ん?」
「自分の家に連れ込む気か?!」

 智一が俺に詰め寄ってくる。連れ込まれるのは俺の方なんだが・・・どうやって答えれば良いか分からず困っていると、さらに智一が畳み掛けてくる。

雨上がりの午後 第322回

written by Moonstone

「この年の瀬ぎりぎりまで補講だなんて、理系学部は融通が利かないよなぁ。」
「補講って要は教授とかが自分の都合で休んだ分のつけなんだから、もうちょっと日程とか考えても良さそうなもんだけどな。」

2000/9/28

[ストレスにならない範囲の試行錯誤]
 今日の更新履歴には加えませんでしたが、ご覧のとおり各コンテンツやグループの説明文の色を変えてみました。上のタイトル色(黄色)との兼ね合いで水色に見えるかもしれませんが、緑です(コードでは00ff00)。水色でも良かったんですが、私自身緑色が好きなので使ってみたかったのと、タイトルと同じ色だと目に煩わしいかな、と思ったりもしまして。
 結局世の中見た目が第一ということなので、この程度でカウンタがどかっと増えるとはさらさら思ってません。綺麗な女の子のイラストが描けなければほぼ不可能です(断言しても良い)。それは仕方ないにしても「軽さ」くらいは工夫次第でどうにかなるものです。このページみたいにタイトル画像とバナー以外はひたすらテキストというのも一つです。TABLEタグの入れ子を減らすだけでも変わりますよ。

 そう言えばそろそろ9月も終わり・・・。前の写真集が完結して久しいですし、そろそろ取材に出ようかと思っています。このページの背景も撮影済みの写真ばかりだと飽きられますしね。
 秋らしい風景といえば・・・食べ物(爆)もありますが、花が良いかな、と思っています。この週末あたりにちょっと遠出して撮影に没頭してみようかと。
 晶子立会いの元で管理人にドアを開けてもらって、俺は外に出る。通路をとおったときの数倍の冷気を伴う風が吹き付けてくる。今まで空調の効いた部屋に長く居た分、冬の厳しさが身に染みる。だが、補講を落としたら自分の首が絞まるだけだ。行かなくちゃどうしようもない。晶子はドアの向こう側から手を振る。外に出るとまたセキュリティがややこしいから仕方ない。

「じゃあ、行ってくるよ。」
「はい。いってらっしゃい。」

 顔を合わせて手を振って、俺は家路を急ぐ。吹きすさぶ風に肩をすぼめながら、さっきに言葉のやり取りを反芻する。行ってきます、に、いってらっしゃい・・・。一人じゃ味わえない言葉のやり取りに妙に心弾む思いがする。そして今日は晶子が迎えに来るという・・・いい一日になるような気がする。

 駅を降りて改札を通り抜けて、何時もの道を行く。正門にさしかかったところで、後ろから俺を呼ぶ声がする。振り返らなくてもその声と調子で誰だか直ぐに分かる。智一だ。

「よ、祐司!元気か?」
「ああ、まあな。」
「おっ、今日は結構機嫌良いみたいだな。」
「そうか?」
「分かる分かる。万年仏頂面に低周波発生装置のお前にしては、表情も良いし声が弾んでる。」

 物凄い言われようだが、実際そう言われれば自分でもああ、そんなところがあるよな、と客観的に見れる。この辺り、やっぱり俺は機嫌が良いんだと再認識する。確かに朝からこうやって調子良く喋れるのは自分でも違うな、と思う。

雨上がりの午後 第321回

written by Moonstone

 晶子はしれっと言うが、それとこれとは全然違う。あの時俺は動揺こそしたが迷惑だとは思わなかった。お互い様・・・。まさにそうなのかもしれない。

2000/9/27

[バージョンダウンと表記して欲しい。真実だから]
 昨日お話した、目的の機能が満足に実行できない(その上いきなり吹っ飛んだ!)不良ソフトのお陰で、四苦八苦の連続でぐったりしています。正直、精神的にはもう限界に近いです。まあ、力技を使って強引にそれなりのろところまで進めましたが・・・出来る保証はまるでないし、他の仕事は切羽詰ってきてるし・・・。絶対壊れるぞ、このままだと(大汗)。
 ソフトがバージョンアップすると、大抵余計な概念や機能が加わって使いにくくなったり、さらに重くなって今まで使っていたPCでは使い辛くなったりしませんか?。今回はまさにそれ。機能的にはバージョンアップ前より良くなっているのでしょうが、使い勝手は格段に悪化しています。これじゃバージョンアップじゃないぞ、普通の世界では(怒)。やっぱり、PCの世界では非常識が常識としてまかり通ることを実感します。
 これを使えないと仕事が進まないことが分かっているので、余計に神経を削られます(必要なかったら絶対触らない)。ソフトを購入するときは絶対に使い勝手を実際に体験してからでないと大損しますね。金銭的にも精神的にも。リスナーの皆様もバージョンアップという言葉には十分にご用心を。いっそ、バージョンアップという言葉はは「迂闊に買ってはいけない」という警告と受け止めた方が良いかも。

「俺、補講は2コマと3コマだから、割と早く帰ってくる・・・よ。」
「じゃあ、駅まで迎えに行きましょうか?」
「いや、良いよ。この寒空の中待ってもらわなくてもさ・・・。」
「お迎え、して欲しくないですか?」

 来た来た来た、晶子のこの表情・・・。少し上目遣いにじっと見詰めるこの表情で迫られると、断るのに物凄い罪悪感を感じるし勇気も伴う。事実、今まで袖に出来たためしがない。

「まあ・・・して欲しくないことはないけど・・・寒い中突っ立ってなきゃならないんだぞ?」
「建物の陰とか、風を凌げるところは色々ありますから。」
「・・・風邪、ひかないようにな。今、大切な時期なんだから。」
「それは祐司さんも同じですよ。」

 晶子はそう言って微笑む。こういうところ、潤子さんと何となく似てるような・・・。

 晶子が片付けをする中、俺はコートを着て出発の準備をする。途中自分の家に寄って荷物を置いたり着替えをしたりする時間を考えると、そろそろ出発しないと時間的に辛い。

「晶子、悪いけど、そろそろ俺行くよ。」
「あ、分かりました。ちょっと待ってくださいね。」

 晶子は手をさっとタオルで拭いて出る用意をする。強靭なセキュリティを誇るこのマンションから出るには、住人が居ないとどうしようもない。必然的に晶子の手をまた煩わせることになる。

「悪いな、あれこれ手間かけて・・・。」
「誰だってお互い様ですよ。私だって映画行ったときは散々迷惑かけたでしょ?」

雨上がりの午後 第320回

written by Moonstone

 晶子も口に出さなかっただけで、心の何処かでもっと喜んで欲しい、とかもっと何か喋って欲しい、とか思ってたかもしれない。そして・・・もっと自分の気持ちを正面から受け止めて欲しい、と思ってるのかもしれない。
だからさっきあんなに喜んだのかもしれない。

2000/9/26

[PCのソフトウェアメーカー(OS含む)に告ぐ]
 貴方が車を運転中に、いきなりハンドルが動かなくなったりアクセルやブレーキが利かなくなって、貴方の大切なものがなくなったら誰のせいだと思いますか?まず間違いなく、車メーカーのせいだと思うでしょう。某社はそれを分かっていながら隠していたために、会社の存在そのものを揺るがしかねない事態に陥っているのです。世間はそれを当然とさえ見ていますよ。良いですか?
 それがPCの世界になると、運転手の責任になるんですよ。そのことが分かってますか?そのためにどれだけの労力と時間をぶっ潰されてもリコールはおろか損害賠償を支払うこともなく、挙句の果てにはバージョンアップで金まで取る・・・。まったく図太い根性ですね。感服します。

 それで成立していけるのは貴方達の世界ならではですね。そのことを本当に分かってますか?・・・聞くまでもないですね。絶対分かってない。分かってたらあんなべらぼうな金額は勿論、バージョンアップで金を取ろうなんて発送は起きない筈ですもの。
・・・5時間の労力と内容を一撃で破壊されたユーザーより

「祐司さん。」

 朝食が終わりに近付いた頃、晶子が話し掛けてくる。

「ん?何?」
「夕飯も・・・此処で食べませんか?」

 晶子の提案に俺は多少驚きはするが、むせたりするようなレベルじゃない。それよりむしろ・・・。

「良いのか?朝も晩も作らせて・・・。」
「食事を作るのは量の多いほうがやり易いんですよ。それに・・・。」
「それに?」
「・・・私がそうしたいから。」

 そう言って食事を続ける晶子の表情が少し翳ったような気がする。何か・・・俺に気付いて欲しいことだあったんだろうか?俺は残りの食事をさっさと書き込んで食器を纏める。ちょっと気まずくなったような気がするこの場を変えるきっかけが欲しかったからだ。

「ご馳走様。・・・美味かったよ。」
「あ・・・そうでした?」

 少し沈んでいたような晶子の表情が見る見るうちにぱあっという効果音すら立てるかのように明るく代わっていく。そんな大層なことを言ったつもりはないが・・・美味かった、という台詞がそんなに予想外で嬉しいものだったんだろうか?
 ・・・まあ、今まで無愛想が当たり前だったからな、俺は・・・。そんな俺だからさっきの反応は晶子にとっては予想外と言えなくもないな。以前は仕方なかったとしても・・・もう無愛想にする必要なんてないんだよな。でも、何となく・・・素っ気無くしてしまう・・・。

雨上がりの午後 第319回

written by Moonstone

 朝食を共にするのはこれが2度目。前と違うのは場所と互いの服装くらいのものだ。取り立てて会話をすることもなく、それでいて気まずくなることもなく、朝食は淡々と平和に進んでいく。こうして二人で朝食を摂る時間が何の違和感もないのは、雰囲気に浸りきっているせいだろうか?それとも、それが自然なものだという認識が自分の中に出来たからだろうか?

2000/9/25

ご来場者63000人突破です!(歓喜)

 ・・・前回は閉鎖するだのなんだので書く気にならなかったんですが、やっぱり少しずつでも増えつづけるカウンタを見ていると、更新頑張らないと、と思いますね。

[水を飲む飲む、水を飲む]
 何処かで「モデルなどは1日1リットルは水を飲む」と聞いたことがありますが、モデルとは縁遠いこの私は毎日のように水を飲みまくっています。こうしてページの更新作業をするときは勿論、食事や風呂上り、読書、MIDI製作時など、ぐったりしているときや寝ているとき以外は大抵水の入った大きめのマグカップが脇にあります。
 別に水を飲んでれば落ち着く、とかそういうことはないんですが(だと良いんですけどね)、そんな要領で飲んでいるので1日1リットルは軽く飲んでいます。それで肌を綺麗にしようとか企んでいるわけでは勿論ありません(笑)が、これだけの量だともう習慣と言った方が良いかもしれませんね。
 俺はダイニングに入る。此処も暖房は十分効いている。と言うことは、晶子は随分前から起きていたんだろうか・・・。俺に膝枕をしている間起きてたとすれば、眠くて当然か。ちょっと悪いことをしたな、と思う。

「もう座ってて良いですよ。あと、ご飯だけですから。」
「・・・ちゃんと寝られたのか?」
「ええ。」

 晶子は柔らかい笑みを浮かべる。その笑みの何処を探しても嘘偽りは見当たらない。目にも紅い寝不足の稜線は見当たらない。心〜の笑みだと分かると、俺も内側からほんわかと温かくなってくるのを感じる。
 俺は何時もの席−もう何だか指定席になった感がある−に座る。晶子は鍋を時々かき回しながら俎板の上の野菜を刻んで二つの皿に盛り付ける。既に俺と晶子の席の前には茶碗と箸、そして定番の味付け海苔が揃っている。後は副食の類が出揃うのを待つだけだ。

 晶子は鍋のかかったコンロの火を止めると、続いてもう一つのコンロの火をつけてフライパンをかける。そして冷蔵庫から卵を取り出す。日本の朝食の定番、目玉焼きを作るつもりなんだろう。
 少しして晶子が片手で卵をキッチンの縁に何度か軽くたたきつけて片手で器用に割り込む。それを二回連続で見事に決める。割った後の殻はすぐさま片隅にあるポリバケツに入れる。料理をしながら後片付けもする。この辺の手際は俺では絶対に真似できない芸当だ。
 軽い焼き音が暫く続き、晶子があらかじめ用意した皿に目玉焼きを盛り付ける。そしてフライパンをさっと流しに入れて水を通す。目玉焼きの乗った皿を俺の前と自分の前に置き、さらに漬物の皿を持ってきて準備は完了だ。まさか3日続けて和食の、それもこれだけしっかりした食事が食べられるとは思わなかった・・・。居眠りが功を奏したというべきだろうな、やっぱり・・・。

雨上がりの午後 第318回

written by Moonstone

「お、おはよう・・・。」
「もう起きたんですか?もう少し寝てても良かったのに・・・。二コマ目からでしょ?講義って。」
「まあ、そうなんだけど・・・目が覚めて何か音がするから何かな、って思って。」
「見てのとおり、朝ご飯ですよ。普段よりしっかり作りましたから。」

2000/9/24

[イメージチェンジ・・・のつもり]
 金曜の夜、何時ものように更新を終えてログを取った後、ふとある方から受けたアドバイスが頭に思い浮かび、この際だから、と思い切ったかん楚歌に踏み切ってみました。ごちゃごちゃしている方が好きな私にとってはかなり思い切りを伴う作業なのは勿論、ぎっしり詰め込んだ文字列の何処をどう削って良いか分からず、徹底的に削除する道を選びました(安直)。
 ひととおり形になったのが3時間後。当初の様子は上と下以外は見る影もなくなり(笑)、これでもか、というくらい削りに削った結果になりました。幸い某チャットの方々に見てもらい、アドバイスを受けて細かい部分を整えて見やすく且つ分かりやすい構図にしようとしてみました。

 今の具合が具合なのと、この更新が精一杯だったので作品の方は次週の定期更新に期待いただくとして、イメージチェンジを狙ったトップのデザインについて何かご意見などありましたら是非どうぞ。
 俺は晶子に手を伸ばし、そっと自分の方に抱き寄せる。俺の左腕を枕代わりにさせて・・・右腕でそっと抱き締めるように・・・。

晶子・・・好きだ・・・。

俺は晶子を軽く抱き締めながら心の中で呟く。もしかしたら言葉に出たかもしれない。でもそれならそれでも良い。それが俺の偽らざる気持ちなんだから・・・。

Fade out...

 白んだ瞼の向こうに朝陽を感じる。ぼんやりと目を開けると、部屋の中は僅かに黄色がかった白い光に満ち溢れている。俺は眠気の残る目を擦りながら体を起こす。隣を見ると晶子の姿はない。代わりにドアの向こうから何か色々な音が混じって聞こえて来る。
 部屋には既に暖房が聞いているとはいえ、布団の温もりとは質が異なるから寒く感じる。俺は身を少し縮こまらせながら音のするドアの向こう、ダイニングの方へ向かう。多分、朝食を作っているんだろう。

 ドアのノブにそっと手をかけてドアを少し開けると、懐かしささえ感じさせる味噌汁の匂いがしてくる。髪を後ろで束ねてエプロンを着けて、俺に向かって斜め後ろを見せるような位置加減で野菜を刻んでいる。付け合せのサラダがそれとも漬物か・・・。ここからだとよく見えないが刻んでいるものの色が濃いから多分漬物だろう。
 その甲斐甲斐しい様子をぼうっと眺めていると、晶子が包丁を動かす手を休めて湯気を立てているコンロの鍋の具合を見る。そこで偶然、ふと横を向いた晶子と目が合う。

雨上がりの午後 第317回

written by Moonstone

 ふと晶子の横髪に手を通してみる。しっとりとした髪はすんなりと俺の指を受け入れ、その滑らかな感触を指に伝える。少しくすぐったく感じたのか、晶子が軽く身を捩って寝顔が少し俺の方を向く。その頬が、唇が、たまらなく愛しい・・・。

2000/9/23

[言動の混乱に見る自分の内面]
 ページ閉鎖がどうとか言いながら、ノベルリングなるものに仮登録するなどやってることが無茶苦茶です(爆)。結局は読んで欲しいという欲求不満が爆発しているんでしょうね。これで反響が増えるとは期待していませんが、こういうものに加わってみるのも良いでしょう。
 ・・・本当にページを閉鎖するとか言ってる人間のすることじゃないな(汗)。一時寝ぼけたせいもあるでしょうけど(ベッドでくたばってたら、慌ててテレホタイム前に接続しちゃった)。やっぱり疲れてるんですかね、私。

 それにしても最近掲示板の書き込みが増えましたね。以前なんて数日間音沙汰なしなんてざらだったのに・・・。真剣になって長いレスを返していますが、これで書き込みがどかっと増えたら・・・って、考える必要はないか(爆)。
 俺はベルトを緩めると−寝苦しいからだ−その横に身体を横たえて布団を被せる。横を見るが晶子はまったく目覚める気配がない。俺は少々冷える布団の中、じっと仰向けになって眠気が再び意識を包むのを待つ。
 だが、こういうときに限って眠気は遠ざかるものだ。隣の晶子が気になって寝られない。俺は身体を晶子の方に向けてその寝顔を観察することにする。目を閉じて−当然だが−ゆっくりとした周期で布団を少し膨らませたりちぢませたりする様子から、狸寝入りの様相は感じられない。本当に寝入っているようだ。
 俺が熱を出して寝込んだ日の朝、目覚めたら横に晶子の寝顔があったことを思い出す。あの時は呼吸が止まるほど驚いたが、今は心が温かいもので満たされているような気がする・・・。

・・・幸せ・・・なんだ・・・。

そうだ。俺は今、幸せを感じてるんだ。
まだ過去への煩いを捨てきれたわけじゃない。まだ色褪せぬ過去の残像は思い出す度に俺の胸に漣を立てる。
 だが、その過去の色合いも時が経つにつれて浅黒く変わり、良き思い出だけが懐かしさと共に思い出される。最後の記憶もその味の強さを徐々に弱め、やがて今感じるほろ苦さも和らいでいくんだろう。時が傷を癒すというのは本当だったんだと今、この場で思う。
 でも、時の流れだけで癒えたとは思えない。やっぱり・・・晶子がずっと居てくれたからだろう。あれだけ邪険に扱ったのに、あれだけ傲慢に振舞ったのに、晶子は諦めずに俺を追い続けた。そして俺と同じバイトを始め、俺のステージでのパートナーになり、そして・・・俺の心の中で揺ぎ無い存在になった。凄いというか何と言うか・・・。俺は苦笑いを浮かべながら晶子の寝顔を眺める。

雨上がりの午後 第316回

written by Moonstone

 ・・・軽い。思ったよりずっと軽い。羽毛布団を抱えているような軽さとスポンジのような弾力が両腕に伝わってくる。晶子を抱え上げた俺は晶子の感触に浸りながら、足元に注意してベッドへ向かう。整えられたベッドの布団を捲り、そこにまず晶子を静かに寝かせて、羽織っていた半纏を注意深く脱がせて床に置く。

2000/9/22

[五輪、五輪というけれど]
 朝テレビを付ければ中継、新聞では見出し大半、何処もかしこも五輪の話題でもちきりです。歴史も知らず日の丸を振って声援をしている大衆の無知やメダルを取るや否や美談で固めるマスコミの無能ぶりは今に始まったことではないですが、日本でスポーツが表舞台に上るのはせいぜい五輪とプロ野球、高校野球程度だというスポーツ貧国ということは知らないでしょう。
 各種目の選手は財政的に厳しい条件の中で練習をせざるを得ない環境下にあります。どんなに豪華な施設があっても使用料が高くて使えない、使える施設は貧弱そのもので場所も少ない、とスポーツをする環境とはお世辞にもいえない状況下にあるのが日本なのです。それを日の丸を振って騒ぐ人間のどれだけが知っているんでしょうか?

 スポーツも芸術も、マスコミが注目するものでなければ認めない。そんな風潮が一般にありませんか?私は芸術でどうにかできないか、と模索しましたが、結果見た目良ければそれで良し。・・・空しいものです。
 文化省すらないこの国にスポーツや芸術が本当の意味で市民権を得る日は二度と来ないでしょう。所詮娯楽の域を出ないまま、飼い犬根性を染み付かされたまま日々を過ごしていくんでしょうね。

これが・・・幸せってことなんだろうな・・・。

 暫く愛しさこみ上げる抱擁を終えると、俺と晶子は少し距離を開ける。口と口とがほんの少しの距離を開けて、互いの視界が相手の顔で埋め尽くされるほどの距離で・・・。間近に見える晶子の上気した顔が愛しくて、俺はもう一度晶子を抱き締める。今度はさっきよりもっと強く、しっかりと抱え込むように・・・。もう二度と離すものかというように・・・。
 すると、背中に回っていた晶子の手がより強く俺を抱き締めて、俺に身体を密着させてくる。味覚以外の全ての感覚を刺激して止まない晶子に、俺の気持ちは高ぶりと穏やかさを同時に得る。

「・・・祐司さん・・・。」

 じっとその場で抱き合っていると、晶子が喘ぐような声で俺に言う。
その艶かしさを耳元で感じて脳の血液が沸騰するような感覚に襲われる。

「・・・ど、どうした・・・?」
「お休みなさい・・・。」
「?」

 首を傾げていると、部屋の電気が段階を追って消える。見ると晶子の片手が電灯の紐を持っている。そして晶子はそのまま俺の肩口に倒れこむように、俺に寄りかかるように体重を預けてくる。急に支えを失ったように体重を預けられた俺は、危うく後ろに倒れそうになる。
 どうにか持ち堪えて晶子の様子を耳をそばだてて注意深く伺うが、軽い一定周期の吐息しか聞こえてこない。もしかして本当に寝てしまったんだろうか?それとも俺のこれからの行動を窺うための狸寝入りなんだろうか・・・?
 だが、このまま突っ立てるわけにもいかない。部屋は暗くなったとはいえオレンジ色の豆電球が灯った室内は様子が判別できないことはない。俺は少し躊躇したが、覚悟を決めて右腕を動かし、晶子の腰を救うように持ち上げる。

雨上がりの午後 第315回

written by Moonstone

 晶子はゆっくりと俺の背中に手を回してくる。耳元で軽い規則的な吐息が聞こえる。眠るような、安心して身を委ねるような吐息だ。それが耳に入ることで心にさらに凪が広がる。晶子の歌声を聞いていたときのような、そして横になったときに感じた気分と同じだ・・・。

2000/9/21

[思うこと、迷うこと]
 昨日(お話の段階では今日)は朝から具合が最悪で、帰宅してから暫くぐったりした後、ふと「もう今日でページ閉めよう」と思いました。閉鎖告示のところで創作系の感想なんて一桁さ、掲示板も閑古鳥、そのくせ作品だけタダ読みかい、こっちがどんな思いをして作品製作してきたと思ってんだ、などとと恨みつらみを書き連ねようと考えながら(爆)。
 ネットに繋いでメールチェックをすると、ある方から閉鎖に対して「残念とありがとう」と思うこと、「今まで色んなページの閉鎖とかを見てきたけど、その代わりになるページはひとつとしてない」という旨のメールをいただきました。それを読んで今日でページを閉めてやるという意思が萎えました。私はその方にまたそういう思いをさせるのか、と。

 その前に親から2回立て続けに電話があって、死んだような声を出してるからこっちが心配だとか(電話が嫌いなせいもあるけど)気分転換をしたり、もっと適当にやって良いんじゃないか、とか言われました。いろいろと。
 止めるのは簡単です。でも止めたものを再び始めるというのは始めるとき以上のエネルギーが要ると言います。閉鎖にしなくても更新を不定期にするという道もあるのでは、と考えたりしています。確かに私はページ運営で失敗しました。でも閉めたら・・・本当に負けなんですよね。
「ええ。」
「だったら・・・。」
「私と一緒に居たいっていう気持ちよりも・・・、私とそういうことしたいっていう気持ちの方が強いんですか?」

 晶子の意外な問いに、俺は言葉が出ない。

「そういうことしたいっていう気持ちは否定しません。誰だってある筈ですから・・・。でも、祐司さんは二人っきりっていう今の状況を、そういうことが出来る状況って最初に考えるんですか?」
「・・・。」
「それならそれでも・・・良い・・・。でも、私を抱くならその前に祐司さんの気持ちを聞かせて欲しい・・・。気持ちも何もなしに抱かれるのは・・・嫌。」

 晶子の切ない訴えが俺の心に張り付いていた欲望の皮膜を溶かしていく。二人っきりで即そういうことに持っていくことを考える俺は・・・結局晶子をそういう対象としてしか見ていないんじゃないのか?ずっと返事を待たせているのはじらしてじらして、自分から抱いてくれと迫ってくるように追い込むためだったのか?
俺は手をかけていたノブから手を離す。そして背後に抱きつく晶子に言う。

「晶子・・・ちょっと・・・手を緩めてくれないか・・・?」
「・・・はい。」

 晶子の強い抱擁が緩むと、俺は身体の向きを180度替えて、ゆっくりと、しっかりと晶子を抱き締める。今度は俺の方から、背中と頭を大切に抱え込むように・・・。
 この感触・・・。この温もり・・・。これを感じているだけで温もりを育んだ羽毛で包まれてくるように心が和んでくる・・・。
 二人で一緒に居るだけで安心出来る・・・。俺が転寝をする前に感じ、そう言ったことだ。今もそう感じる・・・。晶子と抱き合っているのに・・・こんな近くでシャンプーの甘酸っぱい匂いや石鹸の柔らかい匂い、そしてほんのりと立ち込める湯上りの温もり・・・。さっきまで欲望の衝動に駆られそうになってたことが妙におかしく思える。

雨上がりの午後 第314回

written by Moonstone

「・・・晶子・・・。」
「・・・はい?」
「俺が・・・普通の男だって、分かってるよな?」

2000/9/20

[これは未練か、それとも迷いか・・・]
 悩んでいます。これまで閉鎖へ一直線、もう作品をタダ見させるかで進んできたんですが、ある方から率直且つ親身な励ましを戴き、さらに悩みの種だったデザインをこうしてみてはどうか、という例示までいただきました。確かに随分様変わり出来るもので、印象を大きく変えられる可能性はあります。
 しかし、もう閉鎖すると宣言した以上、そう簡単に後に引けないというのもまた事実です。発言を簡単に撤回できるのは政治屋や業界トップといった、権力は多分に行使できても責任は無しに出来る都合の良い面々だけです。

 もう一度可能性に賭けてみるか・・・それがまた徒労に終わったら・・・。その狭間で苦悩しています。今までの試みが悉く徒労だったのだからすっぱり閉鎖して知らん顔すれば良い、これ以上タダ見をさせ続ける気か、とも思うのですが、その方が言われた一言が引っ掛かっています。

「今まで感想をくれた人はどうでも良いのか?」と・・・。

 少ししてドアが開き、ピンクのパジャマの上に半纏を羽織った晶子が入ってきた。仄かに上気した頬、しっとりと水気を帯びた茶色の髪、そして視線を集約するV字に切れ込みが入った胸元・・・。湯上り間もない晶子は魅力というか妖艶さに溢れている。

「お待たせしました。」
「あ、ああ・・・。割と早いんだな。」
「そうですか?私、自分ではゆっくりする方だと思ってたんですけど・・・。」

 晶子は少し首を傾げると、髪を後ろにかき上げてベッドを整える。それを見ていると身体が益々むず痒くなってくる。これじゃ本当に・・・夫婦か同棲カップルみたいだ・・・。このままずるずるとそういう関係になりそうで怖い。

「何処行くんですか?」

 立ち上がってドアの方へ向かおうとした俺を、晶子が呼び止める。

「・・・やっぱり・・・帰るわ、俺。」
「な、何言ってるんですか?こんな夜遅くになって・・・。」
「いや、良い。男だから夜道一人出歩いてもそんなに危なくないし。」
「そういう問題じゃないですよ!」

 晶子が走り寄ってきて、俺の背中にぎゅっと抱きつく。ノブに手をかけたところだった俺は、背中から感じる強烈な弾力に完全に動きと思考が一瞬止まる。止め方としては確実だけど・・・晶子は自分が女だってことと二人っきりだって言う状況を理解してるんだろうか?

雨上がりの午後 第306回

written by Moonstone

 俺が妄想と理性の狭間で喘いでいると、扉が開く音がした。晶子が風呂から上がったようだ。俺は混乱した嗜好をどうにか整理して、表面上はあくまでも平静を装う。

2000/9/19

[無気力状態はまだ続く・・・]
 帰宅して夕食を食べてから殆ど横になっていました。始まった世界的な国粋主義イベントに興味などあるはずもなく、ただ漠然とこれからのことを考えていました。ページを閉鎖すること、それに対する予想される反応・・・。大事(おおごと)になるとは思えないと予想できると、余計に空しさだけが募ります・・・。
 結局私がやってきたことは間違いだった・・・。そうとしか思えません。ここでこうお話してても問い合わせが来るわけでもなく・・・閉鎖しても構わない、と思ってる証拠でしょう。或いは冗談と思っているか・・・。冗談で閉鎖だなんて大きなことは言えませんよ。

 10月10日を待たずに明日にでもいきなり閉鎖するのも良いかもしれないですね・・・。意地悪な言い方ですけど、どうせ困らないでしょ?このページの一つや二つ、なくなったところで・・・。
 ただ、連載を中途半端にしてしまうのが心残りといえば心残りですね・・・。まだ途中ものもばかりですし・・・。でも、自分だけ読めればそれで良いですね。どうせ殆どの人はちゃんと読んでるかどうか分からないんですし
 俺は少しむくれた調子で言う。何だか信用されてないような気がしたからだ。もっとも・・・一つ屋根の下、女が入浴しているところに興味がないといえば嘘になる。俺もうかうかしてると足音を忍ばせて浴室の方に足を向けかねない。
 晶子は紅茶のセットはそのままにして部屋を出て行く。俺はすっかり冷め切った紅茶を少し口に含む。温もりは消えたが芳香はまだ消えてはいない。静まり返った部屋の中で、俺は一人紅茶を口に運ぶ。
 少しして遠くのほうからザーという水の流れる音が微かに聞こえてくる。それまでそんな音はしなかったから雨の音じゃないだろう。と言うことは・・・。いかんいかん。俺は慌てて紅茶を口にして理性を保つ。此処で欲望に身を任せたら、これまで気付いてきたもの全てが水泡に帰すだろう。それだけは・・・絶対嫌だ。

 中途半端な時間に目が覚めたせいかどうも頭がすっきりしない。頭の中にもやが漂っているような感じだ。未だ消えぬ紅茶の芳香と多少濃くなったような気がする味と独特の苦味も、頭のもやを晴らすには至らない。寝起きは元々良くない方だし、時計を見れば・・・2時過ぎだから当たり前か。
 寝起きでもやがかかっていた頭がようやくはっきりしてくる。此処に着いたのが10時半過ぎで、晶子の歌を聴きながら良い気分に浸ってふと横になったのが多分11時前だから・・・3時間くらい寝てたのか。転寝というレベルじゃないな・・・。あのまま朝を迎えても不思議じゃなかった。もし俺が目を覚まさなかったら、晶子はずっと膝枕を続けてたんだろうか?足が痺れてそれどころじゃないかな?

 暫くすると水の流れる音が消える。この沈黙が扉の向こうの妄想をかき立てる。身体を洗ってるんだろうか、湯船にゆったりと浸かっているんだろうか・・・。駄目だ駄目だ。こんなことに持ち込むために眠りこけたんじゃないんだ。晶子だって・・・夜中一人で帰る俺を心配して善意で泊まっていって良いと言ったんだ。
 だが・・・体のむず痒さは止まらない。晶子だって何の気もなく知らない顔ではないとはいえ男に泊まっていけば、なんて持ちかけるか?もしかしたら・・・。違う!俺は晶子にそんなことがしたくてくつろいだり挙句の果てに横になって寝入ったりしたんじゃないんだ!俺は・・・そういう目でしか晶子を見れないのか?

雨上がりの午後 第312回

written by Moonstone

「お風呂、どうします?」
「もう良いよ。冬だし、一晩くらい入らなくても死にやしないから。」
「それじゃ、私はお風呂に入って来ますね。一応言っておきますけど・・・覗いたりしないで下さいね。」
「しないよ。」

2000/9/18

[停止より閉鎖が適切ですね]
 日曜は一日ぐったりしながらこれからのことを考えてました。所詮どうあがいても、アクセス数という数値で示されるページの優劣は雰囲気と見た目で決まるんです。私のページはその観点で言えば、完全に劣っています。今更言うまでもありません。だって綺麗なCGも描けないし、洒落たデザインセンスなんて持ってません。ないものを要求されても無理です。
 某所で何度も「固い」と言われた「Total Guidance」の設立宣言を隅に追いやって「ほんわか」ムードを演出する気はありません。それは作品制作と公表の場であると位置付ける私のページの運営意図に反するからです。この精神が今までの運営における精神的支柱になっていたんです。

 それらが全て私の徒労でしかなかったと分かった今、一時停止なんて曖昧なものではなく、すっぱり閉鎖した方が賢明でしょう。これ以上精神的負担を増やすわけにはいきませんし、私のページがなくなったら困るという人なんて居ないでしょ?
 閉鎖の日も確定しました。ページ中央に示したとおりほぼ一月後です。もうそろそろ閉鎖時のインデックスファイルを用意しておいた方が良いですね。どんなものにしましょうか・・・。
 晶子が笑みを浮かべながらそう言う。それを見ているだけで起きるのが億劫になって全身が重く床に張り付いたような感じになる。こうして痛いという思いした今の俺の頭にない。

「今・・・何時?」
「もう夜中の2時ですよ。」
「?!そんなに寝てたのか?!」

 俺はその事実を知ってようやく飛び起きる。明日は2コマ目からとはいえ専門科目の補講がある。今から帰って寝たら中途半端で起きられるかどうか分からない。かと言って、何で起こさなかったんだと晶子を責める理由はない。雰囲気にどっぷりおつかって寝入ってしまったのは、他ならぬ俺自身なんだから・・・。

「今日・・・泊まっていけば良いじゃないですか。」
「泊まっていけばって・・・。」
「大丈夫でしょ?もう一緒に寝られるって分かったんですから。それに・・・。」
「それに?」
「まだ区切りをつけてないのにそう言う行動に出る人とは思えないから・・・。」

 巧みに痛いところ(?)を突いて来る。好きだと言う俺なりの区切りをつけてない相手に襲い掛かったら、俺の信用はがた落ちになるのは明白だ。晶子もその辺は心得ている。流石は策士だ。
 だが、晶子の言うとおり、今から家に帰って寝るのは中途半端だし、結局晶子が承諾しないとセキュリティを抜けられないし、それも怪しい・・・。此処は一つ・・・晶子の好意に甘えさせてもらうのが一番のようだ。

「それじゃ・・・一泊させてもらえるかな・・・。」
「ええ。服は・・・そのままで良いですか?」
「ああ、良いよ。学校に行く途中に家に寄って服替えるから。」

雨上がりの午後 第311回

written by Moonstone

「寝てたんだな・・・やっぱり・・・。」
「横になる前から、何だか眠そうでしたから・・・。」

2000/9/17

[ホームページの目的と今後の運営]
 私は、ホームページそのものはあくまでも管理者の作品発表の場であり、ご来場者と管理人、或いはご来場者同士の交流の場ではないと考えています。交流の場として掲示板やチャットは否定してませんが、あくまでホームページの一部であり、こ来場者数が増える要因は作品の内容や更新頻度で決まるべきものだと思っています。
 しかし、実情はどうかと言うと、たまにしか更新されなくても常連さんで盛り上がる掲示板やチャット、それによってうなぎのぼりに増えるカウンタ・・・。実情はまるで逆です。そういうのを目の当たりにすると、こうして毎日更新の上、隔週で複数のグループを更新することが徒労感しか感じられません。

 某所での討論でもこっぴどく言われました。ページのアクセス数は所詮見た目や雰囲気で決まるのであって、内容は二の次だと。今まで懸命に作品の充実に精力を使ってきたのは間違いだった、と思い知らされました。結局、私が「Total Guidance」で掲げるような理想は理想でしかないのですね・・・。
 やはり10月くらいを目処に一度全ての更新を停止しようと思います。だってどんなに懸命に作品を製作して更新したところで、その対価(感想やアクセス数)が得られないなら、ストライキに出るしかないですもの・・・。
「返事をすることが祐司さんにとっての大切な区切りなんでしょ?」

 俺はその場に体を倒し、晶子に足を向ける形で床に肘をついてその上に頭を乗せる。本格的に眠くなってきた・・・。ここが晶子の家という感覚がない。自分の家で横になるような気がする・・・。それだけこの雰囲気に浸っているということか・・・。

「返事をするってのは約束したことだから・・・きちんとするよ・・・。今日は・・・良い気分に浸っただけだから・・・。」
「・・・はい。」
「大体・・・晶子みたいな良い女、俺が袖にしたら勿体無いお化けが出る・・・。」
「まさか・・・。」

 晶子のはにかむ声が遠く聞こえる。視野が凪の静けさに近付く呼吸に合わせて狭くなってきた・・・。

Fade out...

 ・・・頬をしなやかな感触が走り抜けていく・・・。何だろう・・・微風かな・・・。羽か何か柔らかいものに撫でられているような感触だ・・・。無の中に漂う意識にその心地良い感触がゆったりとした周期で通り抜けていく・・・。一体何だろう・・・。
 ぼんやりと目の前が無から有へと変化していく。横倒しになった床と壁・・・。俺の手がある・・・。何か・・・柔らかいものの上に乗ってる・・・?!
 身体を捻ると、長い髪を後ろで束ねた晶子の顔を見上げる格好になった。・・・膝枕されてたんだ。晶子の手が俺の左頬をゆっくりと撫でている。無の中で感じたあの心地良い感触の正体はこれだったのか・・・。

「目が覚めましたか?」

 晶子が俺の頬を撫でる手を止めて言う。俺は確かに驚きはしたが跳ね起きることもなく、ぼんやりと晶子を見詰める。何だかこうしているのが当たり前のような感覚がする。そしてそれを不思議に思わない俺が居る。

雨上がりの午後 第310回

written by Moonstone

「何かさ・・・今こうして二人で居て・・・晶子の歌声を聞きながら紅茶を飲んで・・・匂いを楽しんで・・・。それだけでも幸せだなぁって思うんだ・・・。」
「そうですか・・・。」
「ああ・・・二人でこうして居るだけで・・・安心できる・・・。そう思える関係って・・・付き合ってるっていうのかな・・・。」

2000/9/16

[昨日の余韻]
 昨日、帰宅途中に転倒して頭部を強打したんですが、思いのほか外傷が酷いらしく、最初見たとき血漿が額まで滴り落ちていました(汗)。今でも小さいですが若干の痛みがあって、迂闊に傷の部分(頭頂部付近)を触れません。傷が今どうなっているか見るのも怖いです。
 そりゃ、相手がコンクリートじゃねぇ。逆にコンクリートが壊れてたりしたらそっちの方が怖いですね(笑)。妙に眠いのはこの傷のせいじゃ・・・ないですよね?だとするとちょっと洒落にならないかも・・・(汗)。

 で、MIDIの新作をようやく完成に持ち込みました。エンディング部分でここまで梃子摺るとは・・・。元々Fade outを想定した作りに強引にエンディングを付加したので若干の違和感は否めませんが・・・。
 それでも久々に更新が出来そうで一安心しています。明日の定期更新の音楽グループの部分にご期待ください。
 俺は一口紅茶を口に入れて、その香りと味を堪能する。そこへ曲が控えめの音量で流れてくる。これは・・・「Secret of my heart」だ。安っぽいリズム音が今日は妙に心地良い。流れてくる歌詞を思わず口ずさむ。
 そしてその隣に晶子が座る。紅茶を一口口にしてから、俺と同じように歌詞を口ずさむ。囁くような歌声が丁度歌手の歌声にぴったりで、俺は自分の歌うのを止めて聞き入ってしまう。  良い歌だ・・・。長閑な雰囲気に霧状に浮かぶような声がぴったりで、頬杖をつきながら呼吸をリズムに合わせて聞き浸る。この歌声と紅茶が織り成す時間は、俺だけが知っている、そして俺だけが味わえる憩いのときなんだ・・・。

 歌いながら晶子の視線が徐々に俺の方を向いてくる。それは歌うというより俺に歌詞の内容を語りかけてくるような・・・、否、そのものだ・・・。その目は俺を見ているし・・・。俺は飲みかけのティーカップを置いて晶子の方を注視する。
 サビの部分に入るにつれて、晶子の表情が急に艶っぽさを増す。歌詞の一言一言が俺の心にダイレクトに響いてくる。特に・・・最後の4小節は、俺に訴えかけてくるような気がする。歌詞のとおり、もう少し待ってます、だから・・・と・・・。
 普段なら迫ってきている、と思って心拍数が上がって喉が渇くのは必至だろう。  「Secret of my heart」の1番が終わると、晶子は歌うのを止めて紅茶を一口啜って小さい溜息を漏らす。そして、少し儚げな表情を俺に向ける。俺はは紅茶を少し多めに飲む。中身が半分ほどになったティーカップを置いて、頬杖をついたまま晶子の方を向く。

「浸ってた・・・。」
「何にですか?」
「この雰囲気と晶子の歌声に・・・。良い気持ちだった・・・。」

 頭がふわふわした真綿のクッションに包まれているような感覚だ。少し瞼が重い。バイトの疲れが噴き出てきたんだろうか?

雨上がりの午後 第302回

written by Moonstone

 俺は席を立ってリビングに通じるドアを開ける。晶子がありがとう、と言って中へ入る。程よく効いた暖房が室内を包んでいる。晶子はトレイをベッドの近くにあるガラスのテーブルに置くと、トレイからティーカップと小さな鍋敷きと共にティーポットを置き、紅茶を等分すると徐にオーディオデッキの方へ向かい、CDを選び始める。

2000/9/15

[今日は暴言当たり前。反論は一切認めません。]
 来週からの修羅場を控えての連休前に静養しようかと早めの帰宅を目論んでいたら、日を急ぐ依頼者がまだ仕様の一部が決まってないと言い出し(決めとけよ)、プログラムはあれこれ機能を加えたら帰宅が日付を超えて、おまけに途中で自転車のライトの蓋(?)が何度も外れて、それを取ろうとしたら転倒して頭は強打するわと、帰宅時の機嫌は最悪。
 それで励ましや感想のメールや書き込みでもあればまだしも、相変わらずの閑古鳥・・・。こりゃ、本気で10月以降のことを考えた方が良さそうですかな・・・。片や更新は一月に一度以下でも大賑わい(別に何処とは言わない)、片や毎日更新でも閑古鳥。努力は無に帰すものと教育するべきですね、これからは。結局のところ、私も体を壊しただけですし。

 何処ぞのプロを名乗る教師諸君。これが現実なんでないかい?誠心誠意、努力に根性、それらは皆楽する者が利を受けるのが現実と違うのか?!それすら分からない程度で教育のプロとほざくな!(激怒)
 もしかしたら、晶子は今の程度の関係から自然に付き合いの関係に流れ込む、というのが望みなのかもしれない。その辺、晶子は何も言わないから−迫ってきたことはあるが−何とも分からない。

「ここで突っ立っててもしょうがないから・・・行こう。」
「・・・何処へ?」

 コートの中の晶子が俺を見上げて尋ねてくる。此処でどうしよう、なんて情けないことを言うわけにはいかない。俺は見上げる晶子を見ながら必死に頭の回転を巡らせる。上がっていた心拍数がさらに上がる。喉が乾いた・・・。こういうとき晶子の紅茶が無性に飲みたい・・・。

「晶子の家で・・・良いか?」
「ええ・・・。」

 晶子は囁くように言って小さく頷く。場所は決まった。この後どうなるか・・・それこそ神のみぞ知るってやつだ。

 俺と晶子は、相変わらず頑強なセキュリティを抜けて晶子の部屋に入る。コートの中にいた晶子は暖房のスイッチを入れて紅茶を沸かし始める。晶子が抜けて随分空間が大きくなったような感じのコートを脱ぎながら、俺は居手近な椅子に座る。手際良く紅茶を沸かす井上の様子を、頬杖を突きながらのんびり眺める。
 芳醇な香りが漂い始める。この香りを嗅いでいると自然と気分が安らいでくる。あれほど緊張したり迷ったりしていたのが大袈裟にさえ思える。やがて蒸らして丁度良い具合になったティーポットと2人分のティーカップを晶子がトレイに乗せる。どうやらリビングで飲むつもりらしい。

雨上がりの午後 第308回

written by Moonstone

 街灯が灯るだけの静かで小さな交差点で、俺は晶子をコートに包んだまま立ち尽くす。時折冷気が俺の頬を掠めるが沈黙を吹き崩すには至らない。俺は勿論・・・晶子も何かしら躊躇するところがあるんだろう。そうでなかったら、このまま何時もの調子で無防備すぎるぐらい気軽に俺のコートを引っ張って自分の家に誘い込むところだろう。

2000/9/14

ご来場者61000人突破です!(歓喜)

 ・・・増えるものですね、意外と。少々投げやりな物言いですが、一昨日の日記部分を読んでいただければ理由は分かるかと思います。今日は疲れも重なってかなり機嫌悪いです(- -;)。

[分岐ものをどう創るか]
 「ねるふ・はざーど」をよりゲームらしく「遊べる」ものにしようと試行錯誤しているのですが、クッキーを使おうとすると処理が煩雑すぎて大変。で、対案(代案?)として浮上したのが、基本部分は一本道で途中に分岐を設けるというもの。
 それだけだとHTMLアドベンチャーじゃないか、と思われるでしょうが、此処でCGIを使うと得られるアイテムが違ったり、相手の反応が違ったりと複雑な分岐が出来そうです。選択で使うフォームやチェックボックスなんかは以前嫌と言うほど使ったので要領は分かってますし(笑)。
 例えば・・・「金の斧か銀の斧か鉄の斧か、どれを取る?」という選択肢で「金の斧」を選んだら「実は張りぼてだった」となって他の選択肢と同様、次に進むとか。それだと少しは実現に近付く可能性が高くなる・・・かな?
 どうしよう・・・。雰囲気は良いがそれに飲まれてしまってるような気がする・・・。俺と晶子の周囲に充満する雰囲気が言葉を出すのを善しとしないように思う。もどかしいような心地良いような・・・不思議な気分に漂う。
 冷え込みは益々強くなってくるが、人二人分の温もりを包含するコートの内側は本当に暖かい。その温もりに浸っていると、家へ帰るどころか歩くのも億劫に思う。

「そろそろ・・・歩きませんか?」
「・・・ん、ああ、そうだな・・・。」

 晶子の問いかけに俺は曖昧な返事を返す。歩くといっても二人羽織のように密着しているから、なかなか上手く歩けない。だが、それを不自由には思わない。晶子に至っては俺のコートの両裾を前で合わせて、吹き付ける冷気から完全に防備している。そして俺は晶子の温もりがじんわりと身体に染みとおるのを感じながら少しずつ前に進む。
 何時もより数倍の時間を要して、俺と晶子は小さな交差点に差し掛かる。此処からどうするか、何処へ行くか・・・それでこれからの俺達の関係が決まるような気がすると言ったら言い過ぎだろうか?
 交差点の隅に立ち尽くす俺と晶子。どちらが何を言い出そうともしない。俺は勿論だが、晶子も意識しているんだろうか?晶子の温もりと髪の匂いが気になって、話を切り出すタイミングが掴めない。

「・・・このままって訳にはいかないよな・・・。」

 俺がポツリと漏らす。普段のように気軽に晶子の家に立ち寄って紅茶を一杯と戴いて帰るという気分にはなれない。俺にはこの小さな住宅街の交差点が人生の一大岐路に思えてならない。
 これからこのまま二人羽織みたいに晶子の家に行くか、それとも俺の家に行くか・・・。それだけでも雰囲気は違ってくる。ムードたっぷりに行くならやっぱり晶子の家だろう。俺の小汚い家はムードなんて縁遠い世界だ。

雨上がりの午後 第307回

written by Moonstone

 こうしていると、言わなきゃ言わなきゃ、という気持ちが心の奥底から湧き上がってくる。それが高揚してくると身体の硬直が増してくる。緊張感だけが先走ってしまう良くないパターンだ・・・。

2000/9/13

[ねるふ・はざーど]
 好評を戴いた「ねるふ・くえすと」をよりゲームっぽくしようと企画して以来早1年近い日々が流れました(汗)。今どうなっているかと言うと、クッキーを食べさせる研究をしています。
 一方通行の(でも創るのは面倒ですけど)HTMLアドベンチャーならまだしも、後戻りがあったりイベント分岐があったりすれば、クッキーを食べさせないと本格的なものは出来ないかなぁという推論に達しました。・・・やったことないですよ(汗)。クッキーのプログラミングなんて。

 でもやらなきゃリッちゃんが怪我したままだから(笑)、専門書さぐって苦心しています。いきなり完全というのはまず(否、絶対)無理なので、どうやってクッキーを食べさせるのか、食べさせる内容はどれだけあるか、色々考えることはあります。
 この調子だと・・・何時できるかという保証はまったく出来ないです(爆)。ただ、創るからには「遊べる」ものを創りたいですね。隠れアイテムとかメッセージとか、やった人だけが分かる面白さを実現したいですね。シナリオは殆ど出来てるので、後は昨日も言いましたが、ひたすらHTMLソースやCGIを作るだけの地味な作業です。気長に待ってていてくださいね。
 そう思っていると、晶子が俺の左腕から離れる。どうしたのかと思っていたら、俺のコートの片側を捲くって自分の身体を捲くったコートで包み込む。俺がコートで井上・・・晶子を後ろから抱き締めているような体勢だ。突然のことに俺は戸惑いを隠せない。こんなこと、前だってしたことがなかったというのに。

「んー、やっぱり温かい。」
「あ、温かいって、そりゃそうすりゃ温かいだろうけど・・・。」
「祐司さんも温かいでしょ?」
「そ、そりゃ、まあ・・・。」

 曖昧な言い方で誤魔化すが、晶子とさらに密着する面積と圧力が増したことで、否が応にも晶子の温もりが伝わってくる。胸から腹にかけて全体的に・・。間近に感じる井上の髪の匂いは少し油っぽいが−潤子さんとキッチンを担ってるから仕方ない−それを包み込んで霧散させる甘い香りだ。思わず鼻からの呼気を多くしてしまう。

「クリスマス・・・雪降ると思います?」

 晶子が俺を見上げるように尋ねてくる。至近距離まで迫った顔、特にピンク色の唇に目が引き寄せられる。俺がほんの少し顔を近づければその唇に自分の唇を重ねられる・・・。そんなところに二つの魅惑の丘がある。

「電気予報だと・・・曇り時々雪、とか言ってたような・・・。」
「町が雪化粧するくらいの雪が降ると良いなぁ・・・。」
「・・・憧れるのか?ホワイトクリスマスに。」
「ええ。雪が綺麗って感じられるのは、今の自分が幸せだってことだから・・・。」

 晶子が俺の肩口に寄りかかる。もう歩くどころの話じゃない。俺は晶子をコートの中に抱きすくめた状態で道に突っ立っている。それだけで心拍数が見る見るうちに上昇する。芳しい髪の匂い、間近に迫った顔、全身に感じる温もり、どれもこれも、俺を誘っているようにしか思えない・・・。

雨上がりの午後 第306回

written by Moonstone

 俺は晶子が傍に居るから暖かい、という言葉をぎりぎりのところで飲み込む。まだこんな洒落た台詞を言うのは憚られるように俺は思う。好きだ、と言っていた後なら・・・まだ少しは様になるだろうけど・・・。

2000/9/12

[対価について]
 妙なキャプションから始まりましたが、私が以前、ページの更新をどうするか真剣に悩んだのがこれです。結論次第ではページを閉鎖するつもりでした、ええ。
 ページの更新といっても基本的にはHTMLソースをエディタで入力するだけの地味なもので、小説を書くときやMIDIを創るときにはそこに長時間の試行錯誤と検証が付加されます。写真の場合は数多く捉えた中から良いものを何度も吟味するわけですから時間がかかるのは当然です。どんなにスムーズに進んでも小説では20kB程度で10時間が限度です。長いときはそれこそ月単位です。

 それだけの時間を供して公開したものが、果たしてご来場者を楽しませているだけのものになっているのか?そうでなければ、私は途方もない無駄な時間を費やしたのではないか?そう思うことが最近でもありました。
 結果として今こうして続いているのは2つの理由からです。一つは自分がやりたいから(これが一番重要)であって、もう一つはご来場者がどう思っているか殆ど分からないから考えるだけ無駄ということです。
 凛と張り詰めた冷気には煌く星空が良く似合う。俺は思わず足を止めて空を見上げ続ける。見ているだけで心が現れているような気がする。闇と小さな光が選出する夜空のステージは、あくまで自然のままを俺たちに見せている。手を伸ばせば星屑が手に入りそうな錯覚を覚える程、星の輝きは近く見える。あれのどれかを手に取って晶子にプレゼント出来たら、なんて柄にもないことを考えてしまう。

「綺麗だな・・・。」 「冬は夜空が一番華やかになる季節ですよ。」
「こうやって見てるだけで、心が落ちついていくみたいだ・・・。」

 ふと、左腕に何かが触れてゆっくりと密着してくるのを感じる。ちらっと横を見ると、晶子が俺の腕に手を回して身体を寄せてきている。俺の肩に頭を委ねて・・・本当に恋人気分だ。
 昔なら、何するんだ、とばかりに振り解いていただろうけど、今はそんな気分は微塵もない。左腕全体を通して感じる晶子の温もりと、ほのかに感じる弾力・・・。空に向いていた意識が自然と晶子の方に傾く。このままずっと・・・こうして居たいような気がする。否、こうして居たい・・・。
 俺と晶子の歩く速さは一歩一歩、足元を確認しながら進める感じだ。普段ならじれったいほどのこの動きが今は丁度良い。このままゆったりと流れていく時間の淀みの中で歩を進めるのが惜しい気がする。
 身を切り刻むような冷気が肌に心地良くすら感じる。特に冷気に直に触れる頬が。それだけ俺の身体が火照ってるという証拠だろう。腕を組んで、しかも夜に二人だけ出歩くなんて、以前でも記憶にない。左腕にかかる重みと伝わり温もりと弾力が何とも愛しく思う・・・。

「今日は冷えますねー。」
「昼間から今までずっと暖かい場所に居たからな。」

雨上がりの午後 第305回

written by Moonstone

 晶子が指す上空を見上げると、満天の星空が闇のキャンバスに描かれている。俺が知っているのは3つ星が特徴的なオリオン座くらいのもんだが、色と輝きの違いまではっきり分かる星空に、俺は見入ってしまう。

2000/9/11

[休みの日は時間が早くないですか?(^^;)]
 昼過ぎまで寝てればそりゃ当然かもしれませんが、薬を飲んで寝る今の生活では遅くとも10時には起きるんですよ。それで作品製作とかやってると、あっという間に夜になって普段どおり片付けだ、風呂だと慌しくなります。
 作品製作の途中で時々昼寝(横になるのを含む)をするのが大きいんでしょうか?シチュエーションを考えたりするのはPCの前で考えるより横になるほうがやりやすいんですが、それだとどうしても居眠りしてしまうんですよね(^^;)。

 それを除いても、休みの日は時間が過ぎるのが早いと思いますね。気がついたら昼、また気がついたらもう夕方、という感じです。数年前はもう少し長く感じたものなんですが・・・。歳取った証拠なんでしょうか(笑)。
 MIDIもいい加減創らないといけないんですが・・・どうしても意欲が出てこないんですよね・・・。まだ完全復調には程遠いようです。
「そうですね。・・・安藤さんとお話する時間が欲しいですし。」

 井上は、晶子は俺を「祐司さん」と呼ぼうとして思いとどまったようだ。晶子の中では「祐司さん」と呼びたいという欲求が相当前からあったのかもしれない。
 まだ人前で言うのは流石に顔から火が出るような思いだが、せめて二人きりのときくらいは気軽に名前で呼び合えるようになりたい。晶子にも俺を名前で言える条件を整えてやりたい。そのためには・・・俺の返事が欠かせない。

やっぱり・・・今日の帰りに・・・何としても・・・。

 気軽に「好きだ」と言えない分、俺には相当の心の準備と万全の体制が必要だ。コーヒーを飲みながら、頭の中で色々な情景や台詞を浮かべる。
 ストレートに好きだ、というのも勿論良い。今までそれが出来なくて歯がゆい思いをしてきたんだし。だが、折角二人きりになれるんだから、さらっとそして晶子の印象に残るような言葉を伝えるには・・・どうすれば良いんだろう?

 俺と晶子はコーヒーを飲み終えると、一緒に帰途に就いた。ここまではいつもと同じだ。いつもと違うのは、会話が極端に少ないことだ。俺は言うタイミングを慎重に測り、晶子は期待している言葉を黙して待っている・・・。そんな様子だ。
 周囲に立ち込める冬の冷気が肌に突き刺さる。俺と晶子は・・・自然に身体を寄せ合い、晶子が俺の腕を取る。それが当たり前のように思ってしまうようになったんだな、俺は・・・。

「・・・祐司さん。」
「・・・ん?何だ?」
「空、見てくださいよ。」

雨上がりの午後 第304回

written by Moonstone

「ま、さっきのは行き過ぎたとしても、折角出会って初めて迎える年の瀬の大イベントなんだから、コンサートが終わったらゆっくり過ごすと良い。」
「・・・はい。」
「付き合うかどうかは別にしても、何かとペアを組む機会が多いんだから、仲良くなるには良い機会なんじゃない?」

2000/9/10

[変な生活リズム]
 金曜の夜は食事を食べた後、一休みとばかりに横になっていたら何時の間にやら眠ってしまって、気付いたときには午前2時(汗)。かなり忙しかったから疲れが溜まってたんでしょう。慌ててこのコーナーを仕上げて(幸い日記だけでした)更新して、ページ巡回をひととおり終えてから薬を飲んで寝ました。それが午前4時くらい。
 で、薬はやっぱり時間どおりしか効かず(^^;)、10時頃に目が覚めて買出しだの何だのを終えた後、作品製作を開始。このコーナーの連載の書き溜めの他、次回定期更新用の作品を中心に幾分作りこみました。そろそろ音楽の方もどうにかしたいですね・・・。第1創作グループは先週更新できましたが、第1音楽グループは未だ更新してないですからね・・・(汗)。

 9月10月は公私共々ちょっと(相当?)忙しくなることが分かっているので、定期更新用の作品は可能な限り前倒しで早めに製作しておこうと思っています。遅筆の私にはなかなか厳しいことなんですが、時間や締め切りというものには勝てません(^^;)。
 時間がかかるのは展開を考えたりする時間が長いことが大きいんですが、考えずに書いて良いものと駄目なものがあるので、一概に時間がかかるのが悪いとも言えないんですよね〜。

「おいおい、そんなに焦らなくても。」
「あ・・・焦ってるんじゃなくて、何でいきなりそういうこと言うのかって驚いただけですよ!」

 一昨日の晩、晶子を起こすほどの物音を立てておきながら、よく人のことが言えるものだ。まあ、夫婦だから俺が咎める理由はないと言われればそれまでなんだが・・・。

「この時期もうホテルとかの空きはないだろうから、どちらかの家か?」
「だから!」
「・・・私の家でちょっとしたパーティーをしようかと・・・。」

 マスターの執拗な突っつきに向きになり始めたところに、晶子が不意に口を開く。その頬はほんのりと紅い。暖房のせいじゃ・・・なさそうだ。

「私の家、紅茶がありますから、ケーキを買っておいて一緒に食べたいなって思って・・・。」
「・・・井上・・・。」

 まだ口から出る呼び方は、「井上」の方が慣れているせいかそちらが言葉の形を成す。でも、今は呼び方なんてどうでも良い。井上が、否、晶子が俺とクリスマスイブの夜を一緒に過ごそうと考えていることの方が、余程重要かつ重大な問題だ。
 ・・・別に世間一般でもてはやされているような世界に事を運びたいわけじゃない。だが、植え付けられたイブのイメージが先行して、頭の中で俺と晶子が向き合って柔らかい笑みを浮かべている場面が勢いよく膨らんでいく。艶っぽさたっぷりのサックスがメロディを奏でるBGMがそれに拍車をかける。
 返事をするなら・・・表現は悪いがそれを利用するのも良いかもしれない。何分雰囲気が整い易い状況だ。そうなれば・・・きっと言えると思う。俺は年末年始に帰省するつもりだし、そうなれば顔を合わせる機会も必然的に少なくなる。クリスマスが最後のチャンスと思った方が良いだろう。

雨上がりの午後 第303回

written by Moonstone

 コーヒーを一口啜ったところだった俺は思わずむせ返りそうになる。いきなり何を言い出すんだ?!もう俺と井上、否、晶子が一緒にイブの夜を過ごすものだと決め付けてるのか・・・。

2000/9/9

[近眼なのに眼鏡忘れる人(爆)]
 朝慌てていたのもありますが(寝起きが悪くてうたた寝してた)、眼鏡を忘れて大変でした(汗)。勿論、予備の眼鏡はあって、そちらの方がより適正視力に近いようにあわせてあるんですが、それはどうもきつすぎるので滅多に使いません(車の運転とか見知らぬ地へ行くときとか)。
 昨日はそのきつい方の眼鏡をずっとかけていて頭がより痛かったです(- -;)。帰宅してから普段の眼鏡に戻してもまだ痛い・・・。この痛み、今までの胸痛に代わるもので、日々付きまとわれるには此方の方が迷惑です。

 その日々続く頭痛をさらに強めてくれるのが、選挙カーの候補者の名前連呼。特に「地元の」「地元の」って言うけど、議員はその対象全てが地元じゃないんですかね(市議会なら市、県議会なら県)。政党政治の基礎すら出来ていない状態では「地元」即ち後援会や業界ぐるみの選挙になるのは必然的です。
 選ぶ側としてもその候補者が自治体政治をどう考えているかを第一に考えて、それを候補者に問うてみるべきでしょう。そして自分の必要な思索を持っている候補者を吟味するのです。それが本来の選挙であり有権者の姿勢なのですが、今の日本は選挙期間も短ければ大半は選挙のときしか政策を言わない政治後進国といわざるを得ません。
 今のステージは、そんな賑やかさが嘘のようにぼんやりとしたシルエットを闇に浮かべている。それを見ていると、色々なことがあったこの2泊3日の「合宿」が終わるということもあってか、ちょっとセンチな気分になる。
 全員が座っているカウンターも、照明が控えめなのに加えてBGMがサックスの音色が艶っぽい「TWILIGHT IN UPPER WEST」だから、ジャズバーののような雰囲気だ。会話もなく、コーヒーをそれぞれのペースで黙々と口に運ぶ様子は、それぞれが「宴」の後の余韻に浸り、一日の疲れを癒しているように思う。

「祐司君と晶子ちゃんは、大学は何時まであるの?」

 ゆったりと流れていた時間に潤子さんの問いかけが浮かぶ。突然のことでも慌てることがないのは、この雰囲気のなせる技だろうか?

「俺は休講になった分の補講があるんで、24日まであります。」
「私は先週でもうお休みに入りました。」
「じゃあ、今回泊り込んでもらって正解だったわね。深夜まで練習した後で大学の講義があったら、体がもたないだろうし。」
「初めて音合わせをしたけど、あれで十分だ。あとはそれぞれ出来る限り練習して本番に備えるようにしよう。」
「そうですね。」

 この「合宿」が事実上、最初で最後の本番前の音合わせになったわけだ。たかが音合わせ、されど音合わせ。人数が多くなったり組み合わせが変わる今度のコンサートでは音合わせは必須だから、やっておいて良かったと思う。

「もうお客さんもクリスマス気分でしたね。」

 井上・・・まだいまいち慣れない・・・晶子が言う。

「そうね。晶子ちゃんの歌に合わせて歌ってた人も居たし。」
「日本は12月に入ったら24日まではクリスマスって言って良いようなもんだからな。」
「そう言う祐司君。君は井上さんと何処で過ごすんだ?」

雨上がりの午後 第302回

written by Moonstone

 この日のバイトも慌しく、そして楽しく過ぎ去り、「仕事の後の一杯」の時間となった。演奏の時には練習がてら今度のコンサートで演奏する曲も幾つかこなした。クリスマスソングを演奏すると、客席からは手拍子が飛んだり、中には一緒に口ずさむ客まで現れて、早くもクリスマスの雰囲気で満ち溢れた日になった。

2000/9/8

[進んだ・・・のかな?]
 逆戻りしたものは原因が判明して(非常に微妙なタイミングだった)どうにか解決。これでほぼひととおり出来た筈なんですが、まだこれから何が起こるか分からない、というか何か起こって当たり前と言うべきですね(^^;)。今までの経過を考えると。具合は多少良いですが、まだ倦怠感が付きまとってます。解決すべき問題が公私共々多いです(汗)。
 待っていても進む筈はないので片付けていかなければならないのは分かってるんですが、思いどおりに身体と頭がついてこない(特に身体に無理がきかない)のが歯がゆいです。休み明けというのも多少はあるんでしょうが、やっぱり病気が大きいでしょうね。三食に加えて寝るときも薬飲んでますが(寝るときは特に必須)、なかなか目立った効果が出てきません。何事も根気の勝負ですね。

 特に寝るのが完全に薬頼みなのは困りますね。徹夜をしたり心身が疲れたりすれば半日くらい寝られるのが自然だと思うんですが、1、2時間、よくて3、4時間しか寝られません。これじゃ仮眠と大差ありません。意識が混濁することもあって、物忘れなんて当たり前です(汗)。
 カーテンの隙間から優しい日差しが差し込み、そこに目覚ましの音が鳴る・・・という理想的な目覚め方は望むべくもありません。目覚ましよりずっと前に目が覚めて、うつらうつらしながら目覚ましが鳴るのを待ってる状態です(爆)。これじゃ目覚ましの意味がないは勿論、薬を飲んだ時間と目を覚ました時間を計算すると、丁度薬の持続時間だというのがまた何とも・・・。

「祐司君、晶子ちゃん、居る?」
「あ、は、はい。」
「悪いけど、お店が急に混んできたから、先に昼御飯食べちゃってくれない?」
「わ、分かりました。」
「昼ご飯はダイニングに置いておいたから、お願いね。」

 そう言い残した潤子さんの足音は急速に遠ざかっていく。下へ向かって消えていく足音を聞きながら、俺は何とも言いようのない滞った雰囲気を感じずにはいられない。
 晶子は胸に軽く握った右手を当てて、やや俯き加減に視線を忙しなくさ迷わせている。俺とどうやって再び顔を合わせればいいか分からない、といった様子だ。無理もない。俺も井上の、晶子の顔をじっと見ていられない。

「・・・昼御飯、食べに行くか。」
「そう、ですね・・・。」

 今までなかったような重い気まずさをどうにか破る。だが、垂れ込めた空気が重い。俺は無言で二つのコップをトレイに載せて立ち上がる。すると晶子はすっと立ち上がってドアを開ける。

「ありがとう。」
「いえ・・・。これくらいは・・・。」

 晶子が口元に笑みを浮かべて言う。その笑みを見ると、不思議と気まずさが解れるように思うその笑みに、俺は笑みで返す。
 俺は晶子に先導される形で廊下を歩き、階段を下りて行く。結局返事は出来なかったが、潤子さんを恨むつもりは毛頭ない。店が混むかどうかはその日その時になってみないと分からないということは、俺自身この店で半年以上バイトを続けていて十分分かっている。もう少し決断できるのが早かったら・・・言えていただろう。所詮、仮定と推測の域を出ないが。
 でも、さっきの流れの中で俺の気持ちはもう分かった。既成事実も十分に出来上がった。今度二人きりになった時に、そして誰も邪魔が入らない時に言おう・・・。最もその時に近いのは・・・今日の帰りか・・・。

悪い、晶子。もう少しだけ待っててくれ・・・。

雨上がりの午後 第301回

written by Moonstone

パタパタパタパタパタパタパタパタパタ
 急速に近付いて来る足音で、俺は井上から弾かれるように離れる。足音はドアの前で止まり、軽いノックの音に続いて潤子さんの少し焦っているような声が聞こえて来る。

2000/9/7

ご来場者60000人突破です!(歓喜)

 ・・・えらく早いですね(^^;)。活動を再開してから追加更新をしたわけではないのですが。何にしてもコンスタントにカウンタが増えていくのは、やはり管理人の立場から見て嬉しいです。
[連載300回です!]
 とうとう連載「雨上がりの午後」が300回という一つの山を越えました(^^)。飽きっぽい上に忘れっぽいこの私が、1年の日数に匹敵する日数の連載をこなしたなんて、勿論初めてのことです。学生時代、一月そこらの日記を続けるのでさえも大変な思いをしたほどなのに(笑)。
 このところ忙しない、そして心身とも不調続きの日々が続いていて、連載の量も少なくなっていますが、この作品はこのコーナーに欠かせないのは勿論、一つの長編としてこのページにおける地位を確立した感があります。

 塵も積もれば・・・と言いますが、安藤君と井上さんを中心とした何処かにありそうな日常の世界「雨上がりの午後」をこれからも応援していただけると嬉しいです。JewelBoxやメールで一言メッセージをお寄せくださると尚幸いです。
 連載300回を越えて来月には1周年を迎えますし、「雨上がりの午後」特集みたいなものを実施したいんですけど・・・。今の状況では続けることに専念しますね(^^;)。
 井上が、晶子が再び首を横に振る。その顔にあの、心を羽でそっと撫でるような心地良さを感じさせる微笑みが浮かんでいる。それを見るだけで自分を責めないで、と慰められるような気がする。

「簡単に好きだ、って言える人より、ずっとずっと祐司さんの考え方の方が良いです。それだけ自分の気持ちやそれを言葉で表現することを大切に思ってるって証拠ですから・・・。」

 晶子の言葉がじんという深い響きと共に、胸の奥にまで優しく染み透って来る。晶子の気持ちを弄んでいると言われても仕方がないような俺には勿体無いような言葉だ・・・。
 俺と晶子は、晶子の肩の上で手を重ねあった状態で見詰め合う。そうしているだけで胸が高鳴る。高鳴るといっても身体の芯から振動が伝わるような激しいものじゃない。母親が子どもを寝かすときに子守唄に合わせて子どもの身体を軽く叩くような、軽くて早く、心地良いリズムを刻む。

今なら・・・言えそうな気がする・・・。

 閉じていた俺の唇が自然に少し開く。あの言葉を紡ぎ出そうとして。井上の、晶子の告白に対する答えを返そうとして・・・。
 井上の、晶子の目がさらに潤みを帯びてきたような気がする。その潤みは過去の記憶が齎した悲しみの雫から、俺が紡ぎ出そうとしている言葉、過去との決別と手を伸ばせば直ぐ届く未来へ向けた言葉への期待の呼び水に変わったと思う。都合良くそう思えるだけかもしれないが、今はそうとしか思えない・・・。

「い、井上・・・。」
「晶子、ですよ。」
「あ、御免。・・・晶子。」
「・・・はい。」

 出だしでいきなり躓いたが、仕切り直しても気分は変わらない。いまなら間違いなく言える・・・。

雨上がりの午後 第300回

written by Moonstone

 こんな弱い男だから、昨日映画を見終わった後で偶然優子と顔を合わせたときに他人のふりをして、挙句の果てに手を強引に振り解いて逃げ出したんだろう。あの時、久しぶりだな、とでも気軽に言えるような男なら、晶子への返事をずるずると先延ばしにしてはいないだろうな・・・。

2000/9/6

[朝夕めっきり涼しくなりました♪]
 日中はまだ暑さが残っているとはいえ、窓を開けると良い感じの冷気が虫の声と共に流れ込んでくるようになりました。こうしてると残暑が幾ら厳しいといってもやっぱり秋だな、と思いますね。これで何を急ぐのかぶっ飛ばしていく車の走行音と具合の悪ささえなければ最高なんですが・・・。
 具合ですか?もう絶不調の一言ですね。身体動かすのも辛く感じるくらいです。全身の倦怠感がずっと付きまとっている、という表現がぴったりですね。そういう病気なんだからそれは止む無しとして、今の私が置かれた状況を「結局はたるんでるんじゃないのか?」とか思われるのが一番嫌ですね・・・。

[「普通」って何なんでしょう?]
 日本という国は、やれ根性だのやれ気合だのと「強い」精神論が大好きな一方、「弱い」精神に対する認識はあまりにも低いです。PTSDなんて言葉が認知され始めたのもごく最近のことですし、心の病気なんてものは未だ人によっては危険視ものです。それらは誰でもなり得るものだというのに・・・。
 その一方で「ごく普通の人」の人が何かやらかすと「ごく普通の人だったのに何故」などとよく騒ぎますが、何をいわんやではないでしょうか?「普通」という単語やそういうものに安心することからはもう卒業するべきではないかと思います。
 今更こんなことを言ったところで大して慰めにはならないだろう。だけど、言わないよりはまだましだろう。俺は慰めのつもりで晶子の方に手を乗せる。すると、晶子の手がそれに重ねられる。柔らかくて少しひんやりとした感触が手の甲に伝わってくる。

「私だって乗り越えたって言えるほどのレベルじゃないんです・・・。徐々に心の奥の方に仕舞いこんで、良い思い出だけを思い出せるようにして来ただけですよ・・・。」

 晶子がようやく顔を上げる。泣いてこそいないが、その大きな瞳にはうっすらと涙が滲んでいる。ぎりぎりのところで泣くまいと堪えている・・・そんな感じだ。

「私は・・・祐司さんが思ってるような強い女じゃないんです・・・。ふられた時は泣いて泣いて・・・。泣いても涙が出なくなるまで泣いて、それでも相手のことを忘れられなくて苦しんで・・・。」
「俺も・・・泣いた。少し後で、だけど。」
「でも・・・その経験があったから今こうして祐司さんと一緒に居られるのかもしれない・・・。そう思うんです。あのまま続いていたら、祐司さんと出会っても追いかけて一緒のバイトをしようなんて思わなかっただろうし、もしかしたら祐司さんと出会うこともなかったかもしれない・・・。そう思うと、あの時ふられたから今の祐司さんとの時があるんだなって思うんです。」
「俺も・・・ふられてなかったら、あの日あの時間コンビニや本屋に行ってない筈だから、学部の違う晶子とはそのまま出会うことがなかったかもしれない・・・。」
「だから、ふられた経験は無駄じゃなくて、何処かで少しでも今の出会いに繋がってるって思うんですよ・・・。でも、昨日みたいに映画を観て思い出して大泣きした上に、さっきもつい泣きそうになった私が言っても説得力がないですよね。」
「いや、俺よりはましだよ・・・。ずっと・・・。変に拘ったりカッコつけたりしてる俺よりはずっとな・・・。」

 自嘲気味の笑みが漏れる。好きだ、と言うことのプロセスやタイミングに拘って肝心の新しい一歩が、あの記憶を過去のものとして塗り替えられる第一歩が未だに踏み出せない・・・。弱い男だ、俺は・・・。晶子を見ているとそう思えてならない。

雨上がりの午後 第299回

written by Moonstone

「良いんです・・・。祐司さんが謝ることないですよ・・・。」
「今更遅いけど・・・さっきの質問は答えなくて良い。晶子の泣くところなんて・・・もう見たくないから・・・。」

2000/9/5

[お先真っ暗、逆戻り]
 日曜夜からもう最悪(- -;)。まさにキャプションどおりです。家計簿は計算違い分かって直したら無茶苦茶違ってるし、仕事は原因不明の現象(しかも低い確率でしか発生しない)に見舞われてそれが根本的な部分に問題があるらしいし・・・。
 全然良いことがない上に悪いことばかり重なって、気分はもう「重過ぎて上がらないバーベル」(爆)。その譬えが自分で笑うに笑えない状況なのでさらに重い気分です。

 こんな状況ですので、暫くの間は日記や連載の量が少なくなったり更新時間が不規則になったりすると思います。最悪の場合、このコーナーも一時停止するかもしれませんが、それだけは避けたい・・・。
 考えれば考えるほど悪い方向に向いてしまうので良いように考えるように出来れば良いのですが、それがなかなか・・・。良いことがないので良いように考えようもないといえば、確かにそうなんですが(爆)。
「・・・何もかもお見通しなんだな。凄いよ、本当に。皮肉無しにそう思う・・・。」

 井上・・・まだ言い慣れないな・・・晶子は俺が好きだと返事をすることに拘る気持ちを知っていたんだ。だから敢えて俺が自分から言おうとあがく俺をある意味突き放したんだろう。晶子の優しさは・・・本物だ。
 そして俺は・・・その優しさの上に胡座をかいているようなものかもしれない。晶子が言えと言わないことを良いことに、ずるずると返事を先送りにしてばかりで・・・。
 俺はふと思う。同じような思いをしてきたのに、この違いはどうして出来たんだろう?それに、同じように結婚したいと思っていた相手にふられてその後どうやって立ち直ったんだろう?返事を先送りにさせている遠因かもしれないあの記憶の糸を断ち切るためにも・・・言うなれば「先輩」に聞いてみたい。そんな衝動に駆られる。

「嫌なこと聞くかもしれないけど・・・良いか?」
「何ですか?」
「・・・その・・・晶子はどうやって前の傷を乗り越えたんだ?」

 俺の質問に晶子は答えない。その代わりに徐々に視線が下へ落ちていく。茶色がかった長い髪が晶子の顔をヴェールのように覆い隠す。言ってからやっぱりこんなこと聞くんじゃなかった、と思うがもう手遅れだ。言った言葉は喉の奥に取り戻せない。
 また井上の泣くところを見てしまうのか?昨日あの映画の後で見たばかりなのに。それも今度は俺が・・・自分の言った言葉で泣かせてしまうのか?泣かせてしまったのか?何か・・・何か言ってくれ、晶子・・・。

「・・・悪い。嫌なこと思い出させてしまって・・・。」

 罪悪感を感じながら俺が言うと、晶子は視線を下に向けたまま首を横に振る。でも、まだ晶子からの言葉はない。晶子が首を横に振っただけじゃ全然安心できない。

雨上がりの午後 第298回

written by Moonstone

「ふられたら好きだって言うのが怖くなる気持ちは・・・分かるつもりです。」
「・・・。」
「その怖いっていう気持ちを乗り越えた先に、前よりもっと良い幸せがあるって思えたら・・・絶対言えると思うんです。それに・・・祐司さんは好きだっていう言葉を大事な節目に思ってるみたいですし、その気持ちは大切にしたいから・・・。」

2000/9/4

[頭が痛いぃ・・・]
 これには二とおりの意味があって、今は肉体的な意味で痛いです。土曜日の夜あたりから、痛みの強さそのものは弱い方なんですが頭の左右両側がじんじんとする痛みが続いています。大事を取って土曜から日曜にかけて随分寝たんですがそれでも収まりません。しつこい奴です(-_-)。
 週末はとある作品に集中していて、一応の体裁が整うまで進みました。これから細部を詰めていくのですが、この頭痛が見事に邪魔をしています(- -;)。あと数時間くらいで完成すると思うのですが、この頭痛が・・・邪魔です。風邪のひきかけか何か分かりませんが、何にしても早く収まって欲しいものです。

 こういうとき、何もかも自分でやらないといけない一人暮らしは辛いんですよね(しみじみ)。特に食事の準備と片付け(私にとっては料理よりこっちの方が大変)が負担に感じます。でも外食とかだと高くつくので心身に鞭打ってやってます(^^;)。
 黙ってても食事が出てきて片付けまでなくなる暮らしは良いなぁ、と思うんですが、身体の調子の良いときは一人の方が思いのままに行動できて良いですし・・・。我侭ですね(笑)。
 返事は・・・もう決まっている。それを代表する言葉を一言言えば時の流れは戻るだろうし、この場も丸く収まるだろう。だが、口が強張って動かない。昨日の夜は遠回しに言って空振りに終わったが、ストレートに言おうとすると言葉に出る以前の問題になってしまうなんて・・・。
 何とか・・・何か言わないと・・・。この機会を逃したら、一体何時になったら井上に返事できるのか分からないぞ・・・!

「・・・ずるいですね。私・・・。」

 井上、否、晶子がそう言って儚げな微笑を浮かべる。滞っていたときの流れが少しずつ動き出したように思う。

「自分で待てるだけ待つって言っておいて、言うように迫るなんて・・・ずるいですよね。」
「・・・俺に・・・勇気がないだけだよ・・・。」
「好きだって言葉を口にすることにそれだけ重みを感じてるんでしょ?」
「・・・ああ。何度か好きだって言ったことはあるけど、どれも一大決心して挑んだし・・・。まあ、その度に悉く蹴られてきたから無意識に怖がってるのもあるんだろうけど。」

 言ってて我ながら言い訳がましく思う。今まで連戦連敗なのは事実なんだが−あの女の場合は結果的に「負け」た−、気持ちは決まっていて、その上さらに状況が整っていても、どうしても肝心の「あと一歩」が踏み出せないのは、結局のところ恋愛に臆病になってるだけなんだろう。
 相手が自分のことを好きと分かっているのはあの時と同じだから、頭の何処かで記憶のリフレインが起こっているのかもしれない。あの時と違うのは、好きだと言われることに多少なりとも免疫が出来ているかどうかということくらいだ。その免疫も大したものではないが。

雨上がりの午後 第297回

written by Moonstone

 俺は目を逸らそうとするが、その瞳に捉えられて視線を動かすことが出来ない。時間の流れがさらに遅くなったような、否、滞ったような沈黙が漂う。俺の耳には早鐘のような脈動の音しか聞こえない。

2000/9/3

ご来場者59000人突破です!(歓喜)

 ・・・こちらに戻って来て確認してみたら、1000の桁が増えていてちょっとびっくり(@_@)。1週間という長期間のシャットダウン中でもご来場いただいてたんですね。改めて御礼申し上げます(_ _)。

[今日から活動再開です]
 作品製作はシャットダウン中でも続けていたんですけどね。否、シャットダウン中は作品製作に没頭してました、と言うべきか(笑)。あれだけ連日のように作品製作をしたのは本当に久しぶりのことです。そりゃ家事をやらなくて良いから(帰省してました)時間が出来て当然と言えば当然なんですが。
 普段休みの日でもやらないほど長時間PCに向かう日が続いたせいもあって、今は腰が痛いです(^^;)。その甲斐あって(?)、約10ヶ月ぶりに本編更新ができた第1創作グループの他、定期更新らしい更新内容となりました。是非ご覧下さい(_ _)。

 今日の更新内容が出揃ったのを見て思ったのですが、これだけの数を揃えるには今の状況ではやはり時間がなさ過ぎるということです。このコーナーを準備するだけでも1時間や2時間は軽く使いますしね。
 特にこの日記部分で時間かかり過ぎ(爆)。連載を書く時間の倍かかることも珍しくありません(猛爆)。この変化に乏しい日常をどうにかするのが先決かも。でも、そうなるとただでさえ少ない作品製作の時間がなくなるし・・・。うーむ。難しい問題です(^^;)。
 全身がまた熱くなってくる。心の準備がまったくないところに祐司さんと呼ばれたことのない呼ばれ方をされた衝撃は身体を火照らせるには十分すぎる威力を持っている。

「さ、さん付けは・・・や、やっぱりちょっと・・・その・・・。」
「私もちょっと恥ずかしいですけど・・・慣れの問題ですよ。」
「で、でもなぁ・・・。」
「他には祐君とか祐ちゃんとかが考えられますけど。」
「それもちょっと・・・。何か可愛過ぎる・・・。」
「じゃあ・・・祐司さん、しかないですね。」
「・・・あーっ、やっぱり恥ずかしい!それは!」

 俺はコップを放り出すように床に置くと、目を腕で覆い隠して布団に仰向けに倒れこむ。全然免疫がないところにそんな呼ばれ方をされたら、照れくささを隠しようがない。
 祐司って名前で呼ばれるのは実家の家族は勿論、バンドの仲間とかマスターや潤子さんとかごく限られた面々だけだ。それ呼び捨てか君付けのどちらかだったから、さん付けなんてのは初めての経験だ。
 井上の・・・否、晶子の言った言葉を反芻してみるが・・・やっぱり照れくさい。こんなの今は二人だけだからまだしも、マスターや潤子さんの前で呼び合ったらそれこそ格好のからかいのネタにされてしまう。俺は再び起き上がって晶子に言う。

「なあ・・・。普段は今までどおり、苗字で呼ばないか?」
「何でですか?」
「ちょっと慣れないし・・・その・・・まだ返事もしてないわけだしさ・・・。」
「じゃあ、今返事をしてくれれば良いんじゃないですか?」
「・・・それは・・・。」
「返事は・・・決まってるんですか?」

 井上・・・晶子との距離がさらに縮まる。俺の座っている位置はそのままだが、晶子がじわじわとにじり寄ってくるように思う。今この場で返事を聞かせて、とその瞳が切々と訴えているように感じる。

雨上がりの午後 第296回

written by Moonstone

 心臓が大きく、どくん、と脈打った。祐司さん、って・・・。今まで一度も呼ばれたことのない呼ばれ方だぞ。同じさん付けでも、苗字と名前とじゃ衝撃が全然違う。同じ名前で呼ばれることでも、さん付けだと衝撃が違うなんてもんじゃない。まして相手が・・・晶子なんだから。

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