芸術創造センター こぼれ話
Dropped talk of Performing Arts Center

2000年7月31日更新 Updated on July 31th,2000

2000/7/31

 眠いときに羊を数えてはいけません(笑)。あ、スピネル・サンの正体はカッコ良いですな♪(CCさくらの地上波放送より(笑))

[もう7月も終わりですか・・・]
 今月は3回の定期更新があったのですが、2、3回の定期更新を過ぎればもう一月の終わりなんですよね。隔週でやってるんですから当然といえば当然なんですが。
 シャットダウン日程の関係で来週はいきなり定期更新とぶち上げましたが、昨日の写真集の短文も結局眠気に負けて出来てなかったりします(爆)。短文なしにアップしたのは初めてなんですよね。焦っていてさらに余裕がなかったりして仕方なかったのですが・・・早めに何とかします。
 英訳でどうしても梃子摺るんですよ、はい。でも、英訳ソフトはないし、それを使うと見て明らかに変な文章が出来てくると聞きましたし・・・。誰か英訳してくださいっと頼みたいところです(汗)。もっとも今の英訳は正しいのか、と問われると、まあ意味は通じるんじゃないですか?としかいえませんが(爆)。

[出来なくなって気付くことってあるものです]
 止むを得ない事情で雨戸を締め切っていた窓をようやく開けられるようになりました♪で、早速開け放って太陽の光を・・・とはしてません(^^;)。この季節、太陽光を部屋に入れることは暑くしようとしているようなもの。冷房を使ってても意味がない上に電気代がかさむばかりです(これは重大)。
 窓を締め切っている間、帰宅しても篭った熱気に襲われることがなくて、カーテンを閉めておくだけでは不足なのか、と思ってこの週末に雨戸を閉めておいたらその違いは明らかでした。時間の流れが分からないのが難点ですが、省エネの観点からすればこうした方が良いのではないかと思います。
 井上と手を繋ぎながら静かな住宅街を歩く。知らない風景が延々と続く。違う世界に迷い込んだと言っても良いかもしれない。同じ町内でもこんなに違うものか、とある種の新鮮な感動すら覚える。

「此処って・・・安藤さんや私が住んでる町なんですよね?」
「その・・・筈だけど、見たことも来たこともない所だ。」
「全然違う場所に来たみたいですね・・・。」
「身近な場所での観光ってところか。」
「何か良いですね、こういうの・・・。」

 徐々に普段行き来する道の方へ歩みを変えていく。それでも見たことのない風景が続く。休日の住宅街は遠くに子どものものらしい歓声が聞こえるが、通りを車が疾走することもなければ、人とすれ違うことも殆どない。もしかしたら何かの拍子に本当に別の世界に迷い込んでしまったんだろうか、とちょっとした不安感すら感じさせる。観光地でも初めて訪れたところだとそう感じるだろう。俺と井上は本当に身近な場所で観光をしているわけか・・・。
 殆ど会話のないまま、でも手を繋いだまま歩いていくと、見覚えのある建物が見えてくる。さらに歩いていくと、そこは何と俺がよく使う、そして井上と出会った日に二度目の遭遇をした、そして前に井上と食事に行った帰りに立ち寄った本屋の裏に通じていた。まさかこの本屋の向こう側にあんな知らない世界が広がっているとは・・・自分の知ってる世界の狭さを思い知ったような気がする。

「本屋の裏側に通じてたんですね。」
「知らなかった・・・。」
「此処からなら店には簡単に行けますね。ちょっと惜しい気もしますけど・・・。」
「終わりは・・・意外に呆気ないものなんだな。何でも・・・。」
「・・・安藤さん・・・。」
「・・・あ、悪い。しみったれたこと言って・・・。」
「なかなか・・・映画や小説みたいにはいかないものですよ。現実って・・・。」

 周囲がありふれた風景に戻ったことで俺と井上の身近な観光は終わったわけだ。理想と現実の違いとよく言うが・・・今、それを実感する。
 だが、井上と手を繋いでいるという事実は今尚続いている。そしてそれを不思議とも思わない自分が居ることも事実だ。主観で変わる現実と違って誰が見ても同じこと・・・それが事実。
 見慣れた風景の中を歩いていく。何度となく自宅と店とを行き来した道を歩いていく。普段と違うのは・・・井上と手を繋いだままだということだ・・・。

雨上がりの午後 第274回

written by Moonstone

 俺は井上の提案を受け入れることにした。否、そうする以外に考えられるものがない。井上と手を繋いだまま駅とは違う方向へ歩き始める。駅の方へ向かうとあの女、優子がまだ居るかもしれない・・・。あの女もそんなに暇じゃないだろうからもう居ないと思うほうが自然なんだろうが、少しでも可能性が、否、危険性があるなら、そっちの方に自分から足を踏み込むようなことは避けたい。

2000/7/30

[忙しいったら・・・(^^;)]
 自宅での無気力状態が長く続いたせいで更新準備が殆ど出来てなかったため、土曜日は家事の他は更新準備一色でした。言ってみれば自業自得の結果なんですが、元々の更新予定が遅れに遅れているので気ばかり焦って・・・という良くない考え方をしてしまうので、急ぐことは急いでも出来なかったから駄目だとは思わないようにしました。
 懸案の一つだった戴き物のオリジナルCGの扱いは、第2CGグループとして新規に設置することにしてどうにか間に合いました。ですが、Moonlight PAC Edition(投稿作品の掲載がぁ・・・)と第1音楽グループ(新作上げたの・・・何時だっけ?(爆))、SSグループ2つ(書くネタはあるのに(泣))が間に合いませんでした。で、第1写真グループの文章も現時点では未完成です(汗)。今日のテレホーダイ時間中には完成させるつもりですが・・・英訳で梃子摺る、絶対(爆)。
 で、連載もこのお話をしている時点では全然書けてなかったり(猛爆)。あああ、せめてもう1日欲しい〜(ToT)。それより無気力状態をどう改善するかが先決ですか(汗)。

[壁紙]
 私はPCの壁紙をあまり変えないほうです。CG系ページを回って「これは!」というものがあるとそれを壁紙に設定します(HDDの容量の関係でダウンロードはしてません)。ですので相当期間が開かないと替える気にもなりません。
 今日たまたま巡回してたら(そんな暇あんなら早よ準備せい)「これは!」と思うCGがあったので早速壁紙に。替えたのはどうでしょう・・・PCを今のに切り替えてからでは初めてですから約3ヶ月ぶりですね(笑)。暑苦しくなくそれでいて夏らしい壁紙を見ては、こうやって自分でも描けたらな、と思ってます(^^;)。思うだけじゃ描けないのは分ってますが、無い物強請りというやつです。
 やがて少なくとも表面上は普段と変わらないまでに回復したところで、改めて井上を見る。井上も回復したらしく、胸を押さえていた手は既に体の横にあり、俯き加減だった姿勢も元に戻っている。

「・・・落ち着きました?」
「何とか・・・。運動不足の身にはちょっと堪えたな・・・。」
「それより、安藤さんの心の方が・・・。」
「・・・それも何とか・・・落ち着いた・・・。」

 井上が心配していたのは俺の身体より心の荒れ具合だったようだ。身体は暫く休めばそのうち元に戻るが、心の方はそう簡単にはいかない。目に見えない分余計に厄介な代物だ。
 思い返してみるが、あの女を目の前にしていたときのような嫌な蠢きは殆ど感じない。どうにか心の方も落ち着きを取り戻したようだ。井上は映画を見てかつての幸福な時間を思い出し、俺はあの女、優子を目の当たりにしてかつての不幸な記憶を思い出してそれぞれ取り乱したということか・・・。
 俺の場合は度が過ぎるのかもしれないが、やっぱりあの女を前にして冷静で居られるほど、まだ心の整理は出来ていないようだ。こんなことで井上への気持ちをはっきりさせるなんて、出来るんだろうか?

「これから・・・どうします?」
「・・・どうしよう・・・。」

 情けない言葉が漏れるが、実際俺は何も思いつかない。駅の方に戻ればまた出くわすかもしれないし、もう諦めて帰路についたかもしれない。だが、あの女のことをいちいち考えなきゃならないってことには変わりはない・・・。

「・・・戻りませんか?店に・・・。」
「・・・まだ時間はあるけど・・・。」
「歩けばそれなりに時間かかるでしょうし、今の安藤さんの様子だと・・・優子さんのことがちらついて集中できないような気がして・・・。」

 完全にお見通しって訳か・・・。益々自分が情けなく思える。あの女の影に振り回されて、井上との時間を楽しむつもりが自分のせいで台無しにしてしまうなんて・・・。

「・・・悪い、井上・・・。」
「謝る必要なんてないですよ・・・。気持ちは・・・分かるつもりですから・・・。」

 井上の優しさが傷口に染みる。心地良いと同時に・・・痛い。

雨上がりの午後 第273回

written by Moonstone

 俺と井上の荒い呼吸音だけが1車線の道路の片隅に広がる。車が全く通らない閑散とした感さえある通りで、ただ呼吸と脈拍が落ち着くのを待つ。俺はそれに加えて前のように荒れた胸の内を静めないといけないが・・・。
 ふと左手に意識を移すと、まだ柔らかい感触がある。井上と手を繋いだままだ。井上の指は俺の手の甲から離れてはいない。離して欲しいという意思はないようだ。そう思うと静まる速度が速まったように感じる。

2000/7/29

[またやっちゃった・・・]
 昨日帰宅してから疲れで体に力が全く入らず、さらには意識は朦朧とするばかりで殆どぶっ倒れるように寝てました(汗)。薬が見事に効いたのもあって、完全に熟睡。6時半頃に目が覚めたときにはさすがにすっきりしてました。やはり人間には睡眠は大切なんだな、と改めて実感。
 薬を使わないときちんと寝られないという問題はあるにしても、兎に角寝ないことには話になりません。昨日、仕事場で職員総出の清掃作業があって、私は午後一番から延々と4時間近くぶっ通しで作業していたので、当然の如く疲労困憊の極みに達して、その後の仕事でもマウスやキーボードがまともに使えないほど腕が硬直してました。それで少し仮眠を取ろうと思って横になったのですが、寝られない(汗)。結局やれるだけのことはやってから切り上げて帰宅した次第です。これが不眠の恐ろしさです。どれだけ疲れても薬を使わないとまともに寝られやしないんですから。

 普段の大凡の更新時間(0:00〜2:00)は完全に熟睡してました(^^;)。それも帰宅直後に更新作業をしようと思ってPCの電源を入れ、ネットに繋いだ状態で(爆)。テレホーダイ契約してなかったら、NTTからの請求書を見て益々神経に負担がかかっていたでしょう(^^;)。
 明日は定期更新。本来なら金曜夜はほぼ徹夜で追い込みをするんですが、逆に夜しっかり寝たことで昼間にしっかり作業が出来ると思います。疲れたなら大人しく寝る。この人間の基本的な行動は重要ですね。この体になって改めて実感します。寝る前は2時間PCの前に居ても1行も書けなかったというのに、起きてからだとものの10分で書けてしまいました(笑)。
 俺の中でかつて蠢いていたどす黒い濁流が一気に増幅して口から噴き出す。もう止まらない。止めようがない。この女を前にして、あの記憶を刻み込んだ奴を再び目の前にしては・・・!
 俺は右腕を強引に優子の手から引き剥がすと、井上の手を引いて走り出す。もうこの女の顔は見たくなかったのに・・・ようやくセピア色になろうとしてたところなのに・・・

何で俺の前に現れたんだ!

 ・・・どれだけ走ったか分からない。気が付いて周囲を見回したら、見たこともない場所に来ていた。どうやら住宅街の何処からしいが・・・俺の普段の行動範囲外であることは確かだ。所詮、大学と自宅とバイト先、あとは書店とコンビニくらいしか使う道程がなければ、少し脇道に出れば未知の世界になるのは当然か。
 しかし、いきなりのダッシュはやっぱり辛い。心臓の辺りが痛いし呼吸は当然早い。井上はどうかと思ってみると、胸を押さえて下を向いて肩で息をしている。激情に翻弄されてのこととはいえ、結局井上を巻き込んでしまったという罪悪感が俺を襲う。

「・・・わ、悪い・・・。いきなり・・・走ったりして・・・。」
「それより・・・今の女性(ひと)って・・・。」
「・・・。」
「・・・優子さん・・・なんですよね・・・?」

 俺は井上から顔を背ける。あの女の名前を口にしたくない・・・。その一念が口が動くのを頑なに阻む。

「・・・当然・・・私が見るのは・・・初めてですけど・・・可愛い女性ですね・・・。」
「・・・誉める必要なんて・・・ない・・・。あんな奴・・・。」
「まだ・・・思い出には・・・成りきれてないんですね・・・。」
「・・・。」
「責めたりはしません・・・。一応・・・気持ちは分かるつもりですから・・・。でも・・・話くらい聞いてあげても・・・良かったんじゃ・・・。」
「人のことあっさり切り捨てて・・・気まぐれに立ち寄って友達面して話し掛けてくるなんて・・・俺には許せない・・・。もう・・・あの女には・・・関わりたくない・・・。」

 別れても良いお友達、なんて器用な真似は俺には無理だ。別れたらもう他人でしかない。おまけに勝手に乗り換えて捨てた相手を友達だ、って思うなんてできっこない。俺にしてみれば・・・あの女は敵だ!敵でしかない!

雨上がりの午後 第272回

written by Moonstone

「離せ!」
「だから、そんな言い方ないでしょって言ってるじゃないの!」
「まだ俺に用があるのか?!何だ!言ってみろ!」
「祐司・・・。」
「邪魔するな!離せ!!」

2000/7/28

[昨日7/27付の更新について]
 昼頃にいきなり更新されていたと思いますが、勿論管理人である私に原因があります。昨日分の日記の部分をご覧いただければお分かりかと思いますが、現在の私は自宅でかなり深刻な無気力状態に陥ります。作品製作や更新作業はおろか、日常生活もままなりません。
 帰宅するなり横になって寝ては目覚めて、何かやろうと少しは思ってもやっぱりやる気がしないから止め、とそのまま横になってまた寝て・・・を繰り返して(汗)、明日(日付では今日ですが)の仕事に支障が出るから、と所定の薬を飲んでそのまま「お休みなさい」(爆)。これでは更新できるはずがありません(小人さんがやってくれるなら別ですが)。  辛うじて日記の部分と連載の一部が書いてあったので(実はあまり記憶がない(汗))、出る前にFDにコピーして、仕事の昼休みに一気に仕上げて更新しました。こういうときはやたらと手際良く出来るくせに・・・。我ながら困ったものです。

 仕事中心の生活と精神状況が続いてきたので比較的楽になったこの状況にまだ身体と精神が慣れてないのか、或いは仕事で全ての気力を使い果たしてしまうように心身が覚えてしまったのか、それは分かりません。ただ、これでこのコーナーの毎日更新や定期更新を撤廃したらどうなるか・・・。このページの時の流れが止まるのは確実でしょう。
 心身が回復するのが先か、破綻を来たすのが先か・・・。何れにせよこのページの運営を続けることが管理人である私の権利であり、同時に責任であることには変わりありません。運営が出来ないとなれば即刻ページを閉鎖します。私にとってのページ運営はそれくらいの重みのあるものなんです。
 兎に角一刻も早く、あの女の視界から消えなくちゃ・・・。だが、此処で走り出せば井上が余計に疑問に思うだろう。否、井上のことだ。俺の様子から薄々勘付いててもおかしくない。呼びかける女が、俺が以前付き合っていた相手、優子だってことを・・・。
 だからって鉢合わせさせて「前の彼女の優子だ」なんて紹介するのか?!そんなB級コメディーみたいな真似が出来るか!第一、井上には俺の無様な過去のホログラフィーを見られたくない!

「何で無視するのよ!」

 歩く速度を速めようとしたところで足音が急速に近づいてきて、怒声ともいえる大声と共に俺の右腕が掴まれる。・・・この場合、捕まってしまったと言った方が適切か。無理矢理後ろに振り向くと、少し息を切らしたあの女・・・優子が居た。
 ストレートの黒髪を肩口を少し超えるところまで伸ばしているのは最後に見たときと同じだ。だが、服装が違う。紺のブレザーに膝丈のタイトスカート、茶色のバッグを肩から下げている。そして薄めの化粧。所謂「リクルートスタイル」というやつそのものだ。

「・・・何の用だ。」
「そんな言い方ないでしょ?久しぶりに会ったっていうのに。」

 ・・・まるで友人にでも会ったような言い草だ。俺の方は名前で呼ばれるだけでも腹が立ってくるくらいなのに・・・!お前が2ヶ月ほど前、俺に何をしたか分かってて言ってるのか?!

「説明会の会場へ行く電車が丁度新京神線だったから、帰りに寄ったのよ。この時間ならまだ家に居るんじゃないかって思って。まさか駅を出たところで会うとは思わなかったけど・・・。」
「・・・説明会?」
「そ。私、就職活動の真っ最中。来年からじゃ到底間に合わないって学校で言われてたけど、まさかこれほど大変とは思わなかったわ・・・。最初から女子はお断りって会社も珍しくないしね。」
「ま、このご時世だしな。・・・それじゃ。」

 3年、否、2年後の自分を思うと多少身に染みるものがあるが、こいつの苦労話を聞いてても仕方がない。第一、他人の俺が知ったことじゃない。俺は井上の手を引いて立ち去ろうとするが、右腕が掴まれたままで前に進めない。
 自分から告白したくせに、ずっと一緒に居ようね、なんて言ってたくせに、電話一本であっさり終わらせたくせに!今更離さないなんてどういうつもりだ?!

雨上がりの午後 第271回

written by Moonstone

「待ってよ、祐司!」

 またあの声がする。明らかに呼びかけは俺に向けられている。今更何の用だ?!俺を捨てた理由を説明しに来たとでもいうのか?!止めてくれ!もうお前の声そのものだって聞きたくないのに!

2000/7/27

[怠けてるわけじゃないけど、無気力状態]
 仕事が大きな峠を越えてかなり楽な状態になってきたのもあって、以前では考えられない時間に帰宅できるのですが、そこから先が問題・・・。まず食欲が湧かない。以前なら腹が減ってのイライラと仕事の進行でどう折り合いをつけるかでかなり難しい選択を迫られたのですが、今はあまり腹が減ったという感覚が出てきません。
 疲れというか倦怠感がどかっと出てくるので、横になって何時の間にかお休み(汗)。2、3時間で必ず目が覚めるので当然夜もたけなわ、テレホーダイも近い時間になっているわけですが、食べるのも料理を作るのも面倒に感じます。このまま食べなくても良いや、とすら思うのですがそれだと体力がますます落ちるので止む無く食べる、という感じです。ですから菓子とか牛乳(某社のは何処にも置いてない(^^;))をちょこちょこと摘んでおしまい、ということも珍しくないです。水曜日にはようやく食事らしいものを食べましたが、昼食から約11時間後<(爆)。それでもやっぱり止む無く食べたという状態です。

 こんな酷い無気力状態は仕事場では出てこないんですが(出たら大変だ(汗))、帰宅すると途端に発生します。これもどかっと噴き出した神経症の範囲で有り得ることで、今は投薬の効果を気長に期待するしかありません。こんな状態で来週日曜の定期更新は大丈夫なんだろうか、と甚だ不安です(大汗)。
 今の私の状態では隔週の定期更新は相当の負担になっていることは間違いありません。かと言って、元々ずぼらな上に無気力状態が加わった私が定期更新という目標を取り除けば、更新が途絶えるのは目に見えているので判断が難しいところです。取り敢えず、普段の更新時間がでたらめになりますが、その辺はご容赦ください。それこそやる気にならないとどうにもできないので・・・。

「・・・安藤さん。どうしたんですか?」
「・・・え?」
「顔・・・強張ってますよ。」

 傍らの井上の問いかけで優子に向いていた意識が元に戻る。見ると井上は不安げに俺を見ている。ついさっきまで、ぎこちないまでのそれなりに良い雰囲気に向かっていたところに、突如俺の様子が急変したから不安がるのも当然だろう。

「・・・い、いや・・・何でもない・・・。行こう。」

 俺はあの女、優子から視線も意識も何もかも逸らそうと、身体の向きを強引に反転させる。井上は恐らく予想外の俺の動きに面食らったのか、前につんのめりながら向きを反転させる。・・・済まない、と心の中で詫びる。だが、今はこうした理由を話したくない。

「ど、どうしたんですか?いきなり・・・。」
「・・・何でもない・・・!」

 表面上は平静を装ったつもりだが、やはり不器用な俺では完全に誤魔化しきれない。語尾がどうしても荒くなってしまう。
 俺が歩き始めると井上もそれについてくる。井上は何がどうしたのか問い質そうとはしない。内心ほっとするが、同時に心の中に生じた嫌な蠢きを感じずにはいられない。何で此処に居るんだ?何をしに来たんだ・・・?俺を電話であっさりと捨てておきながら・・・今更・・・!

「祐司!祐司でしょ?!」

 背後から俺の名を呼ぶ声が飛んでくる。女で俺の名前を言うのは潤子さんと・・・あの女だけだ!井上は俺を名前で呼ばない!

「・・・安藤さんのことじゃ・・・?」
「人違いだよ。俺の名前なんて、それほど珍しいもんじゃない。」

 誤魔化しにはありふれた答えを返して歩みを早めようとする。間違いない。あの声は・・・あの女、優子の声だ!

もう、俺の名を呼ぶな!お前にその資格はない筈だ!!

雨上がりの午後 第270回

written by Moonstone

 何で・・・あの女が・・・優子が此処に居るんだ?!何をしに来たんだ?自分がすれた俺の様子を見に来たとでも言うのか?俺がバイト先に泊り込むようになる前にも、優子からは何の連絡もなかった。もっとも電話があったとしても即座に叩き切っていただろうが、連絡もなしに何をしに来たんだ?

2000/7/26

ご来場者54000人突破です!(歓喜)

 ・・・定期更新の谷間ですが、ちょいと客足が鈍いですかな?これは去年の夏や年末年始とかにも見られた傾向ですから、「学生さん@学校からネット接続」の数が多いということなんでしょうか?

[創ってみたいCGI]
 ページを回ってみると、色々なCGIを目にします。掲示板やチャット、メールフォームといった定番ものから、クイズや投票(管理が大変らしいですが)とかありますね。レンタルサービルもあるくらいですから、それだけ需要があるということなんでしょう。欲しくても創れないとかそもそもCGIを置けないという場合もありますしね。
 私も掲示板への書き込みの他、時々それらのCGIを楽しませてもらってるんですが、特に「○○判定」とかいうのが面白いですね。「何だこりゃ?」という笑えるものからかなり真面目なものまで様々。意外な判定結果が出たり、違うページで同様の結果が出たりします。ストレス判断では全て「要対策」とか「早めに解消しましょう」とか出たのは、前にもお話しましたっけ(^^;)。

 で、色々やっていると自分のページでもやってみたくなるというのが人情というもの(?)。創ることそのものはそれほど難しいものではないので(少なくとも掲示板よりはずっと簡単)、肝心なのはどういうものにするか、というアイデアです。この手のものを自分で創るからには試す人が面白くて、初めて見るなぁと思われるものが創りたいですからね。
 現在までに構想がほぼ固まって、判定材料をリストアップしている段階です。当然出来たらトップページの最上段にある更新内容に載せますので、試してやってくださいませ。
 さっきの喫茶店は昼時だというのもあって混んでたし、衆人環視の前であいこの言葉をやり取りするなんて何処かのTV番組みたいなことはしたくなかった。俺自身、そんな大胆な神経は持ち合わせていないし、周囲の好奇の目に晒されることになる井上のことを考えると、止めておいて賢明だったと思う。
 身を寄せ合って時間と風景が進むのを惜しむように、俺と井上はゆっくりと歩く・・・。さて、あと残された時間で何処に行くか・・・。勿論、何処へ行くかなんてことは副次的なことでしかない。二人だけになれて、尚且つそういうことに相応しい場所は・・・この近くにあったか?まさか、路地裏に引っ張りこんで・・・などとするわけにはいくまい。内緒の話をする場所という点では共通項がなくもないが、雰囲気をわざわざぶち壊しにするようなものだ。

「安藤さん・・・。これからどうします?」
「取り敢えず・・・人気の少ない場所へ行こうかな、と。」
「・・・。」
「あ、こ、断っとくけど妙な意味じゃなくって・・・その・・・場所の選択が重要というか・・・。」

 こんなことが勝手に口から出て行くが、これじゃ何かあります、と仄めかしているようなものじゃないか。雰囲気をどうこういうより自分で壊すようなことをしていてどうするってんだ?

「あんまり人の多い場所じゃなかったら・・・私はそれほど拘りませんよ・・・。」
「・・・も、もうちょっと歩くか。」
「はい・・・。」

 雰囲気を保持しながら相応しい場所を見つけて、なんて気の利いた芸当は俺では難しすぎる。だが、井上は俺の意味ありげな−そりゃ分かるだろう−様子に待ち望んでいたことが近付いていると察したのか、すんなり応じてくれる。やっぱり・・・ストーカー並に執念深いところすらある井上で良かったと思う。
 かと言って目ぼしい場所を知っているわけでもないから、俺は井上の手を引いてぶらぶらと駅前の通りを散策する。随分のんびりした時の流れだが、今はこの方が良い。

 電車の到着する音が聞こえて来る。本数の多いこの路線は結構な数の電車が行き来する。世間的には休日ということもあってか、客足はかなりまばらだ。通勤通学のためにこの駅はあるといっても過言ではないから尚更かもしれない。
 駅の構内から出てくる人を見ていると・・・何処かで見たような、否、見覚えのある顔が見える。まさか・・・何で・・・優子が居るんだ?!

雨上がりの午後 第269回

written by Moonstone

 太陽が西に傾き始める時間が早い季節とはいえ、時間としてはまだ余裕がある。さっきの喫茶店から出るときにちらっと時計を見たら1時を少し回ったところだった。あと5時間弱・・・井上と二人で居られる時間はまだある。気分的にも雰囲気的にも良い感じのこの時にこそ、自分をはっきりさせておきたい・・・。

2000/7/25

[マスコミよ、自己矛盾に気付かないのか?]
 無駄金使っただけとか宴会だとか、終わってみれば批判だらけの九州・沖縄サミット。まあ、それは今更言うまでもないこととしてですね、それと同じくらい大問題なのがキャプションどおり、自己矛盾を来たしながらそれに一向に気付く気配のないマスコミ報道です。
 今回の報道を見てマスコミの程度も此処まで落ちたか、と改めて認識すると同時に、マスコミは言葉遊びが出来ればやっていけるのか、とすら思いました。先日亡くなられた黒田清さん(私が尊敬する数少ないジャーナリスト)はどうお思いだったでしょう。
 問題のサミットでも取り上げられた「IT」という単語・・・。情報通信技術の略語なんだそうですが、普段マスコミは盛んに言ってますよね。IT革命だの何だのと、さぞそれが出来ないと時代遅れだ、とばかりに。ならばサミットはそれを率先して実行すべきではないのか、とどうして言えないのか?多額の資金を投じて全国から人員を駆り立ててまで各国の首脳を集めなくても、ITとやらを使えばそれこそ宴会じみたお膳立てをする必要はないのではないか?IT、ITと言いながら何故そのことがマスコミには分からないんでしょうか?

 このページではマスコミを風刺、批判する内容の作品が多いですが、それはマスコミ不要と切り捨てるためではなく、報道が誰のために、何のためにあるのかということを考えて欲しい、という願いを込めているからです。
 しかし、こうも自己矛盾を来たしてそれに気付かないなんて、自分の書く作品が文章の中の世界ではなく、事実として先行しているのを見せ付けられると、やはりこう言わなければならないのでしょうか?

(彼らが使う首切りの意味での)リストラは自分達こそ実行しろ!

、と・・・。何処まで落ちれば気が済むんでしょうか?マスコミは・・・。
 外へ出ると急に寒くなったように感じる。映画館を出るときはそんなこと考える余裕もなかったが、やはり年の瀬の寒さと暖房の効いた室内の温度差は激しい。全身がぎゅっと収縮させられるような気がする。
 左腕に密着感と微かな温もりと弾力を伴う柔らかさを感じる。井上がぴったりと俺の横に密着している。俺は一旦ジャケットのポケットに突っ込んだ左手を出して、手をさ迷わせる。何だか・・・無性に井上と手を繋ぎたい。気恥ずかしさは勿論あるが、肌が触れ合う温もりが兎に角欲しい・・・。

 ゆっくり歩きながら手をさ迷わせていると、何かに触れる。明らかに服や髪ではない。弾力のある温もりと滑らかな肌触りが指の先を通して伝わってくる。井上の手も俺の接触に反応したのか、手の向きをもぞもぞと変える。
 やがて掌同士が触れ合うと、互いに指の間を開いてその間に指を滑り込ませる。そして軽く、でもしっかりと握り合う。それだけで胸が高鳴る。全身が熱くなる。伝わる全ての感触が俺の意識を完全に支配してしまったようだ。

「安藤さんの手って、温かいですよね・・・。」
「・・・そうかな・・・?」
「何だか・・・こうして繋いでるだけでほっとしますよ。一緒に居るんだなって・・・。」
「一緒・・・なんだよな。」
「そうですよ。少なくとも・・・私はそうありたい。」
「・・・俺も・・・今はそう思う・・・。」

 よくもまあ、こんな台詞がほいほい出てくるものだ。我ながら口と頭が切り離されて口だけ勝手に動いているような気がする。それでもその方が、自然と会話ができるというのは妙な気分だ。
 やっぱり思ったことを口にするってことも時には必要なんだろうな・・・。相手の気持ちを考えるのは勿論だが、考えてるばかりじゃ何も進まないんだ。今日のデートで−といえるかどうか不明だが−、それがおぼろげにでも分かっただけ、俺は変わって来たのかも知れない。

「・・・ねえ、安藤さん。」
「・・・ん?」
「安藤さん、以前よりずっと柔らかくなりましたね・・・。」
「・・・片意地張ってただけだよ。思いどおりにならないのが嫌で、それが自分のせいなのに全部相手が悪い、周囲が悪いって決めつけてさ・・・。」
「でも、そうやって自分を率直に見れるなんて、なかなか出来ることじゃないですよ。」

 井上の言葉が嬉しい・・・。手痛い思い出のあとが井上で本当に良かったと今改めて思う。

雨上がりの午後 第268回

written by Moonstone

 紅茶を飲み終えた俺と井上は店を出た。料金はこういう場でのマナー(?)に則って俺が出そうか、と思ったが、それより先に井上が自分の分を俺に差し出した。聞くまでもない、というのはちょっと違和感を感じなくもないが、単になれの問題というか、妙な慣習に縛られていただけなのかもしれない。

2000/7/24

 昨日は久々に第2SSグループを更新しました。前回以上に主役が暴走してます(笑)。週末で一気に仕上げましたが如何でしたでしょうか?次回の対象者(被害者)は決定して展開もほぼ固まってるので、あとはひたすら書くだけです。

[時間の感覚]
 私は元々睡眠リズムが不規則なのもあって(自分とそれ以外の理由両方で)平日でも結構でたらめなのですが(汗)、休日は徹夜の製作作業でさらにでたらめになります(爆)。そんな中でも自宅で時間の流れが分かるのは太陽のお陰です。光の強さや差し込む方向、色によって朝、昼、夕方、晩の流れが分かるからです。
 ところが今はとある事情で窓が殆ど塞がれてるので、もう何が何だか・・・(汗)。朝かと思ったら時計を見るともう昼過ぎだったり、まだ昼だろうと思ったら夕暮れだったりして、時間の感覚が完全にでたらめになってしまいました。

 以前、太陽の光が差し込まない密閉空間の下で暮らしたらどうなるか、という実験をTVでやっていましたが、その結果を身を以って体験したようなものです。食欲がまた低下し始めてほぼ1日1食の状態ですし(汗)、夜に寝ようと思ったら睡眠薬が必須です(大汗)。あれは後を引くので控えたいんですが・・・。
 窓が塞がれているのは期間限定であと1週間ほどですが、太陽の重要さを実感してます。早く開け〜と唱えたところで開く筈はないので(^^;)、ひたすら待つだけです。
 それに・・・井上と意地を張り合っていたことに収拾が着いて、それまでより俺の中での井上の存在が大きくなったと自覚できたのも、ただ井上に居て欲しいと思ってそれをそのまま言葉に出したからじゃないだろうか?
 行動してから考える世代、と言われるようになって久しい。まあ、そういう世代の奴等がどれほど考えて動いていたか歴史を見れば正体が見えて嘲笑するだけのことだし、何も考えずに行動するのはトラブルの元になるのは分かってるつもりだが、感情に突き動かされるような行動ってのも時には必要なんじゃないだろうか・・・?

 ・・・それにしてもこの紅茶、あんまりというか・・・湯に薄い紅色をつけて匂いを足しただけのような味だな。出涸らしなんじゃないか?それも安物のティーバッグの。これなら・・・

「井上の入れる紅茶の方がずっと美味いよな・・・。」
「・・・え?」

 井上の問いかけに俺ははっと我に帰る。・・・井上の入れた紅茶の方がずっと美味いなと思って、それが口に出て・・・。自分の言動の関係というか法則というか、それが全く分からなくなってきた。と、兎に角今は井上に何か返さないと・・・。

「・・・いや、そう思って・・・。井上の紅茶って色々種類があって、俺にでも味の違うが分かるし、匂いもはっきり分かるからさ、それに慣れてしまったんだな、って・・・。」
「・・・もう数を忘れるくらい飲んでもらってるんでしたっけ、そう言えば・・・。」
「もう年の瀬だからな・・・。知り合ったときはまだ朝晩肌寒いかなってくらいだったか・・・。」
「あっという間ですよね、本当に・・・。」

 気まずかった雰囲気が徐々に和らいでいく。過去というにはまだ大した時間の積み重ねでもないが、それを今振り返ってみると、もう女は、恋愛は嫌だと井上を弾き飛ばそうとしていた時間の方が圧倒的に長い。改めて思うと・・・そんな自分が単に八つ当たりしてただけのように思える。
 前よりちょっとは気持ちの整理がついたように思う。どう悔やんで悲しんでも、怒って憎んでももう終わったことなんだ。あのことは・・・。だからもう・・・目の前にある新しいものに手を差し出しても・・・良い筈だ。

雨上がりの午後 第267回

written by Moonstone

・・・何かと考え過ぎなのかもしれないな、俺は・・・。

 食後に持ってこられた紅茶を飲みながら、ふと思う。井上を映画館から連れ出して此処に入ったとき、俺は兎に角昼時だったのと取り乱した井上を落ち着かせる場所を映画館の中の食事場以外に求めただけだった。

2000/7/23

[宴の後で:後編]
 「本線の駅まで歩く!」というせっかちならではの決心に達した私は、前回のリベンジ(いや、だからね)を果たすことも兼ねて、そのまま直進・・・とはいきません。人が多くて直進どころか前進すら思うようにいかなくて(^^;)。それでも前回よりはましかな〜と思えるのは、既に二度も居直っている人間ならではでしょうか?(笑)
 最初の交差点はもはや映画でありそうな「怪獣が現れました!直ちに避難してください!」状態で、車は動かないわ人も動かないわでもう大変(^^;)。それでも一応信号が守られてるのはまだまだ捨てたものではないマナー意識と、大量に動員された警察官の方々の力かな?トップは頭でっかちの無能ばかりですけど、現場の方はこうして地道に職務に就いているものです。

 さて、その交差点を抜けてもまだ結構な人の列。もしや私と同じことを考えている?!・・・それは違うか(爆)。私は妙に歩く速さが早いのと(だから他人にテンポを合わせるのがかなり辛い=>ストレスになってる?)単独行動なので、人の間を掻い潜ってバスの停留所を目印にひたすら進みました。40分ほど歩くと車の流れもスムーズで、人は多少多くても夜の街らしいものになってきました。やはり歩いて本線まで行こうなどとは思うまい(当然でしょうね)。
 順調にバスの停留所が進んで行き、このまま行ける、と思って間もなく、大きな十字交差点に。この方向を間違うと遠回り必至どころか最悪の場合迷ってしまう。しかし、これまでの標識からはどちらに行って良いか分からない!おまけに私は方向音痴(爆)

 時計と睨めっこしながら考えること約1分、これまでの進路方向から一方を選択してひたすら直進。すると1時間を越えて暫くして見覚えのある看板が見えてきました。選択はどうやら間違いではなかったようです。
 出発から服も内側はすっかり乾いた約1時間15分後、無事本線の駅に辿り着きました。足は張るし息も上がって疲れも相当蓄積しましたが、諦めずに歩きとおせたことに充実感を感じながら改札を通り、程なくやってきた電車に乗りました(^-^)。
・・・でも、電車を降りてからもさらに歩かなきゃ駄目だったとさ(猛爆)。

雨上がりの午後 第266回

written by Moonstone

「安藤さん・・・。私・・・」
「・・・。」
「お待たせしましたー。」

 一気に意識の焦点が井上から周囲全体に拡散する。驚いて振り向くと、さっきとは別のウェイトレスが皿を両手に持って立っていた。ウェイトレスは少し怪訝な顔をしている。注文の品を持ってきて驚かれては当然か。

「あ、どうも・・・。」
「失礼しまーす。」

 少々機械的な挨拶の後、ウェイトレスは持っていたライスが乗った皿を俺と井上の前に置く。時が止まったような状態の俺と井上を尻目に、ウェイトレスが往復してカップスープとハンバーグと付け合せの野菜が乗った皿を置く。
 注文の品は紅茶を除いて出揃った。紅茶は食後を見計らって持ってくるつもりなんだろう。まあ、そんなことはどうでも良い。極限に達した緊張感と雰囲気が一瞬にしてぶち壊しにされたから、かなり気まずい・・・。あのウェイトレスにそんなつもりはなかっただろうが・・・あの空気があのまま続いていたら・・・

はっきりさせることが出来たかも・・・しれない・・・。

「・・・取り敢えず・・・食べませんか?」
「・・・あ、そ、そうだな・・・。」

 井上が滞った空気を切り分ける。こういうとき俺の方から空気の入れ替えが出来れば良いんだが・・・生憎不器用な俺には厳しい要求だ。さっきあんな大胆な行動に出られたのが、今ではちょっと自分でも信じられない。どうやったら気持ちどおりに自分を動かせるんだろう?
 気持ちばかりが先走ったり手を拱いたりして何一つ出来ないこともある。かと思えば、大して考えもしないで行動したら思いのほか上手く運んだこともある。俺はどうすれば・・・良いんだろう?

2000/7/22

[宴の後で:前編]
 一昨日に取材のため花火大会に行って大雨に降られたということはお話しましたが(^^;)、その後についてはお話し切れなかったので、今日はその続きでも・・・って、まだあるのか?とお思いかもしれませんね。これがあるんですよ(笑)。

 「この地方に大雨洪水警報が発令されました」というアナウンス(爆)が遠く聞こえる中、花火大会は終了。私はカメラをビニール袋に直ぐ仕舞い(このときもう少し水分をきちんと拭き取るべきだったなぁ)それを小脇に抱えて逃げ惑う人々の中を悠然と歩いて岐路につきました。もう全身ずぶ濡れなんだから逃げることも雨宿りも必要ないわい、と完全に居直ってました(笑)。そしたら数分歩いたところで雨の勢いがどんどん弱まって止みました・・・。
 嫌がらせとしか思えない自然の成り行きはさておき、以前来たことがあるので十分予想していたとはいえ物凄い混雑。4車線が人でいっぱいでした。勿論見る限り全員ずぶ濡れです(笑)。当然最寄の駅とその次の駅は人でいっぱいで増発されているとはいえ当分入れやしない。待ってたら何時になるか分からない(せっかち)。となれば・・・

「本線の駅まで歩く!」(決心)

 ちなみに本線の駅から花火大会の最寄の駅まで、往路で使った電車で約15分。そして本線の駅は大まかな方向しか分からない(爆)。さらに前回来たときも歩いたものの(理由は今回と同じ)、電車1駅分のところで道に迷ってギブアップ(猛爆)。言わば今回はリベンジであるっ!(大袈裟)
 さあ、体力が確実に落ちている自分が恐らく1時間以上はかかる(前回そのくらい歩いた)道程を歩きとおせるか?そして終電までに本線の駅に辿り着けるか?壮大なリベンジ(だから大袈裟だって)が今始まった!
・・・以下、明日(^^;)
 そんな様子を見ていて、俺の方まで急に気恥ずかしくなってきた。考えてみればかなりストレートな、それもドラマででも出てきそうな台詞じゃないか?そう思うと体の彼方此方が痒くなってくる。思わず頭に手をやってがしがしと掻く。
 多分、この分だと頬にも出てるに違いない。参ったな・・・。こんな人の多い場所でこんなシチュエーションになるなんて、思っても見なかった・・・。これもあの映画の影響か?

「・・・。」
「・・・。」
「・・・いや、さっきのは・・・その・・・。」
「・・・冗談・・・ですか・・・?」
「そ、そうじゃなくて・・・何て言うか・・・思わず口から出たっていうか・・・。」
「・・・そうなら・・・その方が嬉しい・・・。」

 消え入るような音量しかない井上の言葉が、一言一言、深く深く、俺の胸に食い込んでくるように思う。周囲の音が消えたようなこの感覚・・・これは3年前に経験したあのシーンそのままだ・・・。違うのは場所と、目の前の相手くらいで・・・。
 もう俺の目も耳も、井上から離れない。井上以外は何も見えないし、井上の声以外は何の音も感じない。あの時と同じこの状況で井上が再びあの言葉を口にしたとき、俺もあの時と同じように答えを返すんじゃないか?

「安藤君のこと、好きです。良かったら・・・付き合って・・・。」
「俺で良ければ・・・。」

それは嫌だ!

 あの時と同じ状況で同じことを言い合えば、また同じことの繰り返しになるんじゃないのか?それだけは絶対、何が何でも御免だ!もうあんなどうしようもない思いは、後になって怒りと悲しみしか湧き上がらないような結末は絶対嫌だ!
 だけど、そんな思いも、以前なら直ぐに口や態度を動かしたどす黒い感情すらも呆気なく霧散してしまう。井上の一点に集中した意識は他の思考が働くのをもはや許さないみたいだ・・・。

 井上がゆっくりと顔を上げて、俺と向き合う。俺の意識はさらに絞られる。キーンという軽い耳鳴りのようなものが走って、周囲の音から完全に意識が隔絶されてしまう。

もう・・・受けるしか・・・そして・・・
言うしか・・・ない・・・?

雨上がりの午後 第265回

written by Moonstone

 言おうと思って試みてもきっと言えなかったと思う。だからこそ今まで延々と返事を先送りにしてきたんだろうが。井上は一瞬驚いたような顔をして−そりゃ驚くだろうな−視線を少し下に傾ける。そしてその頬がじわじわと赤味を増していくのが手に取るように分かる。

2000/7/21

[こんなときに降るなぁ〜!]
 普段なら「あー、傘置いてあったなー」とか「洗濯物どうしよう・・・」とかで割と気楽に流せる雨なんですが、昨日ばかりは恨みましたとも(- -;)。いきなり、それも寄りによって傘も持ってないし持ってても差せない場面で降られたんですから(- -#)。今日はこの顛末をお話します。

 第1写真グループの次回写真集の取材に某所の花火大会に行ってきました。昼寝が長引いて出遅れたので(^^;)凄い混雑に巻き込まれましたが、まあ、これくらいは単独行動なら割と楽。間を掻い潜って撮影ポイントへ。周囲を見るとカップル若しくは家族連れというのはこういう場面でのお約束ですが、そんなこと気にしてて撮影は出来ません(笑)。
 いやー、やっぱり動きのある物体を撮影するのは難しいです。今回は特に一瞬に等しいのでシャッターを押すタイミングがなかなか・・・。途中で確認してみたら真っ暗に等しいものも結構ありました。カメラを使うのも一月ぶりだからというのもあるかもしれませんが。

 で、どうにか慣れてきて途中で確認してもなかなか上手く撮れてる、と思えるものが出てくるようになって、さらに派手になるぞ、というところで上空から何かが落ちてくる(汗)。気のせいかと思っていたら激しさを増してくる(大汗)。気にしてたらチャンスを逃すとカメラを向けていたら滝のように降ってくる(爆)
 悲鳴と逃げ惑い何かを頭に乗せる人々の中、私はその場でずぶ濡れになりながらカメラを向け続けてました(猛爆)。もう此処まで濡れたらどうなっても良いや、へっ、と半ば居直ってました(^^;)。
 1回撮影するごとにレンズを拭いて、撮影終了したメディアは鞄代わりに持ってきたビニール袋に即収納しました。こういうとき自分よりレンズの具合や(雫があると当然駄目)メディアが大事に思うのは(一応)カメラマンならではでしょう(笑)。

 何とか撮った写真は総数で約150枚。1枚のメディアが水分にやられたらしくて読み出せなかったのですが(T-T)、最初の方なので多分失敗だらけだろう、と自分を納得させて整理開始。次回定期更新からお見せできると思いますので、お楽しみに!・・・でも、見た感じではボツがかなり出そう・・・(汗)。

雨上がりの午後 第264回

written by Moonstone

 すると井上は首を横に振る。

「絶対後悔してますよ。だって安藤さん、自然にあんな優しいことしてくれる人なんですから・・・。」
「優しいことって・・・?」
「涙を拭いてくれたことですよ。さっきだって・・・。」
「・・・ああ、それは・・・井上の泣くところはもう見たくなかったから・・・。」

 俺が熱を出して寝込んだあの日・・・井上は泣いて俺に詫びた。まさか泣くとは思わなかった意外性もあるが、あの時の強烈な印象は未だに忘れられない。その原因の一つが俺の妙な意地を張ったことだったというばつの悪さが、井上の泣き顔を見たくないという気にさせるのかもしれない。

「泣くな、って言うかな、とも思ったんですけど・・・優しくしてくれて嬉しかったです・・・。」
「・・・そうか?」
「ええ。」
「妙に好いところ見せようとか思わない方が良いのかな・・・。そういうの出来るほど器用じゃないけど。」
「器用じゃない方が良いです。器用な人だと・・・本気かどうか分からないから・・・。」
「・・・そんなもんかな。」

 智一にも不器用なのに誤魔化そうとするな、と言われたくらいだから、妙に気負わない方が良いみたいだ。だが、もし俺が器用な人間だったら、優子と長続きできたかもしれない。どっちが良かったか・・・今はもう迷うことはない。

「不器用でも・・・たまには良いこともあるもんだな。」
「良いことって・・・何ですか?」
「今、こうして井上と一緒に居ること。」

 ・・・言ってからはっと気付く。自然にそんなことが言えた自分に・・・。

2000/7/20

[学生さんは今日から夏休みですかね]
 良いですね〜。羨ましいですね〜。何にしても楽しく過ごして下さいね。出来れば遊ぶ方に力を入れた方が良いんじゃないかな、と思います。勉強なんて後で嫌というほどしなければならないですし、遊びに夢中になれるのは時間に余裕のある学生時代の特権でしょう。
 かくいう私が何も考えずに楽しんだ夏休みは、小学生くらいかもしれません。中学のときはクラブがあったし、高校のときはクラブに加えて課外授業、大学のときはバイトにレポートor卒論。で、今は勉強しなくて良いかというとその逆ですからね(汗)。だから学生時代にもっと遊んでおけば良かったと思うことがあります。最近、心身の調子を崩してからは特に。

 勤勉を善しとするあまり、遊びは悪という考えが根強く残っています。しかし、勤勉さのみを要求するのは、働き蟻に徹しろと言いたい支配層にとって都合が良いからであって、その勤勉さをも小馬鹿にしているのが今の社会ではないか?そう思えて仕方ありません。
 勤勉を笑うことはしません。ただ、勤勉ばかりで何になるのか?個人の時間は誰のためにあるのか?何処ぞの太鼓もち集団が青少年の奉仕活動義務化を言い出した今だからこそ、学生さんには遊ぶことを通じて慣習や世間体に囚われない生き方を模索して欲しいと思います。ただし、最低限のマナーは忘れずに(^-^)。大人の真似をしてはいけませんよ(笑)。
 やっぱり・・・正直なところ、井上があれほど取り乱した理由が気になる。以前の俺はあの女に一方的に別れを通告されてから暫く、何かと過剰かつ過激な反応をした。井上の反応は俺のような反応が内に向かって爆発したからなんじゃないだろうか?
 そう言えば・・・井上の過去はあまり知らない。ふられた事があるということは何度か聞いたが、それ以上深くは知らない。聞いてもいないから当然なんだが、今は無性に聞いてみたい衝動に駈られる。

「気になりますか?何で私があんなに泣いたか・・・。」
「まあ・・・多少はな・・・。」
「・・・。」
「言わなくても良いよ。尋問する気もないから・・・。」

 また泣かれたら余計大変だし、やっぱり目の前で泣かれるのは辛い。涙は女の武器、というが確かに強力だ。相手の方が悪いと自分にも周囲にも思わせる力があるから、譬えるなら強力な爆弾みたいなものか?

「私も・・・前にふられたことがあるって、言いましたよね?」

 俺と同じように一口水を飲んでから、井上が呟くように話し始める。やや俯きがちな視線の向きが、あまり話したい内容ではないことを感じさせる。

「・・・ああ。」
「結婚しようね、とか言ってたんですよ。・・・映画みたいな感じで・・・。でも・・・ふられちゃって・・・。」
「・・・似たもの同士って訳か、俺達二人って。」

 成る程、というのも何だが、井上も俺と同じような経験をしてたのか。ずっ続くと思ってた絆を相手から一方的に切られて・・・。だから、俺が最初の頃あんな荒っぽい態度でも我慢できたのかもしれない。自分がかつて経験したようなことを味わわされたから仕方ない、って・・・。

「でも、今頃その相手は後悔してると思うぞ、きっと。ああ、勿体無いことしたなって。俺の場合は多分けろっと忘れられてるだろうけど。」
「・・・安藤さんの場合も・・・同じだと思いますよ。」
「まさか。」

 俺は苦笑いをする。疲れた、なんて言って放り出した奴が後悔してるとは思えない。

雨上がりの午後 第263回

written by Moonstone

「落ち着いた・・・みたいだな、ようやく。」
「ええ、もう大丈夫です。御免なさい、本当に・・・。」
「いや、良い・・・。」

 俺は首を横に振って急に表に出てきた喉の渇きを癒そうと水を一口飲む。井上の嵐が一先ず収まってほっとしたのもあるが、ある種の気まずさのようなものがあるからだろう。

2000/7/19

[書き込みが多いってことは]
 嬉しいことです(^^)。このお話を始める前に掲示板JewelBoxのチェックをしたのですが、3件も新規若しくはレスがあってびっくり(笑)。早速レスを初めて全てのレスを完了して、気がついたら1時間以上かかってました(爆)。
 時間かかりすぎ、といえばそうなんですが、いろいろ考えて言葉を選びながらレスをしてますので、どうしても時間がかかるんです(^^;)。調子に乗るあまり失礼になってはいけませんしね。そのせいで他より固い印象を受けるのはこの際止むを得ないでしょう。出来るだけ早めにレスしますので一言でも書き込んでもらえれば幸いです(^^)。

[考えるだけ考えて・・・]
 これ以上お話することが思い浮かびません(爆)。JewelBoxの件が無かったらどうしてたんでしょう(^^;)。仕事はひたすらバグ探し(潰せやしない(泣))ですし、一日中眠気に翻弄され続けて、今も考えてる最中に何度もうつらうつらしてました(汗)。寝られるのは良いんですが、これはちょっと困りものです・・・。
 井上と向かい合わせに座って、少しして注文を取りに来たさっきのウェイトレスに−やっぱり何となく視線が厳しく感じる−紅茶と手頃なところでハンバーグセットを2つ頼んでおいた。少々強引かもしれないが、腹ごしらえより井上を落ち着かせることが重要だ。
 井上はどちらかというと洋食好みのようだし紅茶好きなのは前から知っているから、妥当な組み合わせじゃないかと思うが・・・。それより気になるのは目の前のことだ。

「・・・どうだ?ちょっとは落ち着いたか?」
「え、ええ。本当に御免なさい・・・。みっともないところ見せちゃって・・・。」
「いや、それは気にしなくて良い。メニューは・・・勝手に決めたけど。」
「それは良いです。私がどうこう言える状況じゃなかったですし・・・。」

 まだ目の充血は完全には消えていないが、どうにか平静を取り戻し始めたようだ。俺は内心胸を撫で下ろす。このままぐずっていられたら、俺はこの店に居る全員の視線を敵に回すのは必至だっただろう。

 少しして、井上は軽く深呼吸をする。微かに吸い込む息が震えている。感動してジワリときたというレベルの泣き方ではなかったことは確かだ。気にはなるが・・・聞かない方が良いだろう。聞かれて嫌な思い出とかだったらまた泣かせてしまうかもしれない。周囲の目も気にはなるが、それ以上に井上の泣き顔は見たくない。
 ・・・涙の跡がまだ見える。井上は気付いてないみたいだ。俺はハンカチをもう一度取り出して、身を乗り出す感じで井上の目元を頬を軽く拭う。拭い終わると、少し驚いたような顔になっている。

「・・・ど、どうかしたか?」
「・・・ありがとう、安藤さん。」

 井上の表情が解れて柔らかい微笑が浮かぶ。また泣き出すんじゃないかと冷や冷やしたが・・・どうやらもう大丈夫のようだ。

雨上がりの午後 第262回

written by Moonstone

 俺は井上の手を引いたまま、映画館から程近い喫茶店に駆け込んだ。場所を知ってたわけじゃない。兎に角たまたま目に付いた看板の方へ行って中に入っただけだ。混んではいたが幸い席にはまだ余裕があったので、俺と井上はウェイトレスに店の中心付近の席に案内された。
 その時のウェイトレスと周囲の視線が妙に痛く感じた。俺が泣かせたわけじゃないんだが・・・。まあ、そう見られても止む無しといえばそれまでだが、こういうとき男は不利だとつくづく思う。

2000/7/18

ご来場者53000人突破です!(歓喜)

 ・・・定期更新の数が揃わなかったせいか、ちょっと客足が鈍いかな?特に第1SSグループが製作中&構想中ですからね・・・。まあ、高望みはしますまい。楽しみにされている方(居るのか?)、もう暫くお待ちくださいませ(_ _)。

[バグ潰し]
 バグ、と聞いただけで身を硬くする方も居られるかもしれません。無論、私もその一人です(^^;)。仕事でCGIをプログラムしたときは「Internal Server Error」の嵐を経験しましたが(共同作業だったから連携が難しくて・・・)、仕事でよく作る制御用プログラムが(身近な例:プリンタのドライバーソフト)バグに侵食されると、もう大騒ぎです(泣)。
 特に本体の電子回路を製作中でその動作確認のために作っているときに発覚すると、どっちにバグが居るのか分からないので大混乱必至です(号泣)。時に両方に居たりしますが(爆)。

 WINDOWS(制御でMacは見たこと無いです)が制御でも主体になってからというもの、ドライバーやDLL(動作のとき参考にする辞書のようなものです)の衝突、横文字だらけの上にそのヘルプも訳が分からないと(これじゃヘルプの意味なし)、神経を削る材料がとみに増えましたね。今は電子回路が出来てるだけずっとましですが、結構単調なんですよ、バグ探しって・・・。
 さすがに困った・・・。このままだと格好の見世物だし、かと言って強引に井上を引き剥がすのは気が引けるし・・・。どうにか落ち着かせるしか対策は無いみたいだな。

「井上・・・あのさ、ここだと人目に付くからだな、その・・・。」
「・・・。」
「・・・一旦、離れてくれないか?此処だと・・・目立つから・・・。」

 何だか、人目につかないところなら構わないような言い方だが、兎に角周囲の視線が−男の羨望と嫉妬を強く感じるのは気のせいか?−突き刺さる以上、一先ずこの状況を終息させるのが先決だ。これで平然として、さらに見せびらかせるほど図太い神経は持ち合わせていない。

「・・・無理か・・・な?」
「・・・いえ。ちょっと取り乱しちゃって・・・。」

 井上は自分の方からゆっくりと離れる。多少は状況を理解できるくらい落ち着いてきたんだろうか・・・。しかし、こんなに取り乱すなんてかなり気がかりだ。
 もしかしたら、前の彼氏のことを思い出したんだろうか?今でこそ話せるがその時はどうしようもないくらいショックを受けてってことも十分考えられる。思い出したくないような別れ方だったかもしれない。だとすれば納得がいく。何せ、俺自身つい最近までそうだったんだから・・・。

「ちょっと何処かで休もう。丁度昼だし。」
「・・・はい。」

 この時間だと館内の食事をする場所は混んでるのは目に見えてるが、かと言って外の目ぼしい飲食店の場所を知ってるわけでもない。こういうとき行動範囲の狭さを思い知る。だが、迷ってる心理的余裕は今の井上にはなさそうだし、「どうしようか?」なんて聞くのは優柔不断をひけらかすようなものだ。
 恐らく館内の喫茶店なんかは、映画の余韻に浸っていたりその上に自分達の世界に入っているカップルや女集団で混んでるだろう。そうなると客の回転は鈍い筈だ。となれば・・・。
 俺は井上の手を引いて外に出る。軽く見渡してもそれっぽい建物や看板は見える。兎に角今は、井上を落ち着かせることが先決だ。あれこれ考えるより行動に出ないことには・・・始まらない。

雨上がりの午後 第261回

written by Moonstone

 手を繋いでいるカップルは当たり前のような感すらあるし、相手の腰に手を回すように歩いているカップルも場所が場所だけに周囲の注目を集めるには至らない。だが、さすがに抱き合っているカップルは少々見回しても見当たらない。当然の如く、周囲の目が俺と井上に集中する。

2000/7/17

[深夜の格闘(?)の後、自然と向き合う]
 昨日の定期更新をしてからどうにか追加更新できないかと作品製作を進めていましたが、そんなに甘くない。元々時間がかかる上に気ばかり先走る。それなりに進めた後休息がてら朝食を食べて久々に散歩へ。外へ出ることを勧められているのもありますが、何時間もPCの前にいたので一度は外へ出たいなと思いまして。
 意識的に車の通る大通りを避けるように歩いていたら、あっと言う間に見たこともない風景に(笑)。普段どれだけ行動範囲が狭いかということと初めて見る風景の新鮮さを感じつつ徐に歩いて行く・・・。雲混じりの朝陽が浮かぶ空も綺麗でした。カメラを持っていたら、と少し惜しい気もしましたが、公園のベンチに座ってぼんやり周囲や空を眺めていると、胸の中にあったしこりのようなものが少しずつ昇華されていくような気がしました。
 此処暫く自分の心身の不調に悩まされ続けているのは別として、素直に何かに感動したことってあっただろうか・・・。6月の早朝、雨の中ひたすらカメラを向けていた時くらいじゃなかったか・・・。余裕のなさは物事と向き合う機会を奪い、疲弊した心は感動することを忘れる。ここに全ての原因があるのかもしれない・・・。梅雨らしいやや湿気の多い空気の中、そんなことを考えていました。

 弱いながらも散歩途中から胸の痛みが続いていたので、それを抑える薬を飲んだら、それが引き金になって(これにも眠気の副作用あり)昼間は殆どぐっすりお休み(爆)。このお話は夜になってから始めました・・・って、これじゃ平日と大して変わらない(^^;)。
 今週はかなり長時間の撮影も決行する予定ですし、MIDIが遅れている「水無月便り」、何かと遅れがちな作品製作も休みを利用して一気に進めたいと思っています。そのためにも心身を少しでも万全の体制に近づけていこうと思います。

[皆既月食、見ましたか?]
 私は見ました(^^)。漆黒の空にぼんやりと浮かぶ赤銅色の月・・・。月食を自分の目で見たのは実はこれが初めてなんですが、作業を中断して外に出た甲斐がありました。
 思い返してみると、仕事で帰宅が遅くなって見ようと思えば夜空が見えるのに空を見上げた記憶は殆ど無いです。本当に余裕が無かったのですね。いろいろな面で・・・。この日曜日は自然と向き合い、そして自分と向き合えた良い一日だったのではないかと思います。

雨上がりの午後 第260回

written by Moonstone

 館内に黄白色の照明が戻ってその眩しさに目が馴染んだ頃になって、ようやく井上が顔を上げた。直ぐにハンカチで目を拭ったが、ほんの僅かな時間だけ見えた横顔に涙の筋が煌いていたのがはっきり見えた。その横顔は相反する感情を抱かせる。見ていたいと思わせるのと同時に見たくないと思わせるという・・・。

「・・・御免なさい。ちょっと・・・。」
「・・・それより、もう、良いのか?」
「ええ・・・。」
「じゃあ、行くか・・・。」

 俺は井上にテンポを合わせるように立ち上がる。半分以上の客は出て、もう次の客が入り始めている。本当なら新しい客の邪魔になるし、混み合わないうちに急いで出た方が良いんだろうが・・・ちょっと手を引っ張る気分にはなれない。
 それより井上の手をしっかり握っておきたい。痛くないと思う程度に力を込めて握った井上の手は・・・やっぱり弾力があって柔らかい。

 俺はそのまま井上を引っ張るような感じで部屋から出る。入れ替わりの客でごった返しているが、その間を縫うようにしてまだ余裕のあるロビーに出る。やっぱり泣いている女が目立つ。女が強い時代と言ってもこの手の映画で泣くのはやっぱり女の方なのは変わらないようだ。しかし、井上が暫く立てなくなるまで泣くとは思わなかったな・・・。
 時計を見ようとするが・・・駄目だ。腕時計のある左手は井上が握っているから引っ張るわけにもいかない。まあ、感覚的に昼ぐらいだということは分かるし、そんなに時間を気にしなくても良いか・・・。
 後ろの井上を見ると、眼が充血している上にハンカチを左手に持ったままだ。どうやら完全に泣き止んだわけではなかったようだ。この表情は痛々しくて見てられない。俺が熱を出して寝込んだときのことを思い出してしまう。俺は井上の方に向き直って近付き、ハンカチを取り出して頬にまだ残っている涙の跡を拭ってやる。

「大丈夫。綺麗なハンカチだから。」
「・・・。」

 次の瞬間、井上ががばっと俺に抱きついてきた。俺はその場に立ち尽くして髪を撫でることくらいしか出来ない。一体どうしたって言うんだ?井上は・・・。

2000/7/16

[ふぃーっ、疲れたぁ・・・w(_~_)w]
 結局今回は薬の副作用に負けました(汗)。1回飲むと最低3時間は強烈な眠気に翻弄されて殆どの場合そのまま寝てしまうし、起きる時は気だるいし・・・(- -;)。仕事のときは寝るわけにはいかないので辛い辛い(大汗)。
 じゃあ飲まなきゃ良いのに、と思われるでしょうが勝手に飲むのを止めたりしてはいけないんです。指示どおりに飲まないと処方の意味がないんですよ。私だって毎回眠気と一戦交えるなんて御免ですから、出来れば飲みたくないです。大抵負けてるわけですし(爆)。早く治して薬を飲まなくても良いようにするのが最善でしょうね。
 それにしても、睡眠薬はさすがに強烈・・・。飲んだら最後、30分で立ち上がることもままならなくなります(汗)。横になったらそのまま「お休みなさい」です。そのための薬なんだから当然か(^^;)。

[連載の映画のこと]
 前にもお話したと思いますが、私自身、此処10年以上映画館に行ったことがありません。で、ラブロマンスものはマンガでもそうですがあまり肌に合わないので尚更縁遠いジャンルです(爆)。
 大体、今時デートで映画なんて・・・と思われるかもしれません。逢瀬なんて言葉自体、死語に近いでしょうし。でも、私は恋愛事に関してはこういう古典的なことに憧れがあるんですよ(笑)。もうちょっと余裕が出来たら、この映画をきちんと小説にしたいです。
 二人は自然に手を繋いで歩いていく。優子と付き合っていたときにはあまり手を繋がなかった−キスより気恥ずかしかったように思う−俺は少し羨ましいと思ったりする。だが、今はどうかというと、俺の左手は井上に抱きかかえられているような状態になっている。闇に紛れて、というわけではないが、こっちの方が凄いといえば凄い状況だ。
 二人は殆ど会話のないまま、あの丘に向かう。時にどちらかが言い出したり手を引っ張ったりしたわけじゃない。二人の意思がそのまま丘の方へ足を向けさせたというのか・・・。台詞がない分、色々と考えてしまう。
 台詞が少ない映画だな、と最初は妙に感じたが、今はその方が銀幕に映る人物の心情を考える余地があって良いような気がする。むしろ、今の映画やドラマは無意味に台詞が多すぎるのかもしれないとすら思う。

 画面の光がだんだん強まってくる中、二人は丘の上に辿り着く。ぴったり寄り添ったまま見詰め合う二人の背後から、シルエットを捉えるようなカメラワークを見せる。クライマックスが近いと印象付けられる。

「逢瀬の丘にて・・・再び逢える日を待ち・・・。」
「時の流れが再び交わるとき・・・契りの言葉を交わさん・・・。」

 女から男へ、本当に詠うような台詞が流れる。そしてそのままプロポーズの言葉が出るのかと思ったがその予想は外れ、二人は再び前を向く。鮮やかな黄金色の光の中で佇む二人とその横に立つ、二人の名前が刻まれた樹を捉え、カメラはゆっくりと引いていく・・・。

 映画はエンディング曲の流れる中、スタッフロールとなる。呆気ないといえばそれまでの終わり方だった。だが・・・久しぶりに見た映画がこれで良かった。素直にそう思える。他の客もなかなか席を立とうとしない。通路を挟んだ隣の席では、泣いている女も結構居る。
 井上はどうだろう?そう思ってちらっと見ると・・・俯いていて、長い髪が顔を隠していて見えない。だが、俺の手を握る力の強さと微かに震える肩が、井上の感情を物語っている。・・・小さく溜息をついた俺は、そのまま井上が顔を上げるのを待つことにする。

雨上がりの午後 第259回

written by Moonstone

 映画はさらに時が流れ、一夜を共にした二人が白みが増してきた空の下、散歩に出るシーンへと移る。微かな光がカーテンの隙間から差し込む主人公の部屋の中で主人公が目を覚ましたシーンは、以前の自分の状況を見せ付けられているようで冷や汗が出た。

2000/7/15

[状況が一転することもあるものです]
 昨日大騒ぎしていた仕事の件は、関数の記述が1文字違っていただけでした(爆)。たった1文字違うだけで動作が無茶苦茶になるなんて信じられないと思うかもしれませんが、プログラムではそういうことは珍しくありません。特にC言語のように(この単語で拒絶反応起こす人も居そう)変数の宣言に厳格な言語だと、1つの間違いで大量のエラーを出してくれたりします。
 でも、エラーを出してくれるなら良い方です。今回はエラーを出さなかったが故に(データは読むけど別の解釈をしてしまっていた)大騒ぎする羽目になったわけですから。

 その間違いを見つけ出してようやく本題に復帰。後は動作の検証を繰り返していました。その点気分的には楽だったのですが、その代わり強い痛みが頻繁に襲って来て、そっちの方で唸ってました(汗)。まあ、これなら暫く我慢するか痛み止めの薬を飲めば対処できますから、ずっとましというものです。
 このお話を終えてから定期更新に向けてひと踏ん張りします。・・・眠気(薬の副作用)に負けなければ・・・って、見事に1時間ほど負けました(爆)。やっぱりきついです、副作用は・・・(^^;)。気を抜くと簡単に寝てしまいます。

・・・しかし、最近の連載、改めて見直してみると誤字が相当多いですね(汗)。気をつけます(_ _)。

「逢瀬の丘にて・・・再び逢える日を・・・」

 転校生の詠うような呟きが風に乗る。そこで視点が転校生から何かを思い出したような表情の主人公に切り替わり、一気にアップになる。
 視点が転校生の顔を映した瞳にまで迫ると、今度は一転して画面の色がモノトーンになる。風景は一見同じだが、樹は半分ほどしかなくて、主人公と転校生が立っていた位置に小学生くらいの子どもが二人居る。女の子の方が樹の傍に居て、男の子がその後ろに居る。

「明日、行っちゃうんだね・・・。」
「うん・・・。」
「折角友達になれたのに・・・。」
「友達になったら、ずっと友達だよ。」

 女の子は男の子に向かって微笑んで、樹の方に向き直って小さいナイフを取り出す。そしてその幹に平仮名と漢字が混じった自分の名前を刻む。

「何してるの?」
「あたし達が此処に居たってことを残しておきたいの。」
「じゃあ、僕も・・・。」
「・・・ダメ。」
「え?何で?」
「・・・あたしのこと好きなら・・・今度逢うとき名前を書いて欲しいの。その時まですっと・・・あたしのこと好きで居てくれたら・・・忘れないで欲しい・・・。」
「・・・うん。」

 再び画面がカラーに戻る。主人公の晴れやかな、そして懐かしさと嬉しさが溢れた表情が映し出される。長い時を経て再開を果たしたのだ。この逢瀬の丘で・・・

「・・・名前、刻んでくれる?」
「・・・ああ。勿論・・・。」

 主人公はナイフで自分の名前を転校生の横に刻む。振り返って向き合う二人・・・。逢瀬の丘は時を越えた二人の想いの場だったんだ。

雨上がりの午後 第258回

written by Moonstone

 場面は沈黙が長く続く。視点が二人の周りを回るように動き、そこに自然のささやかな効果音が混じるというカメラワークだ。こうも台詞がないと退屈どころか、逆に何か期待めいたものを感じさせる。

2000/7/14

[何だかなぁ・・・]
 また仕事が慌しくなってきた・・・(T-T)。以前出来たものが何故か出来なくなっちゃった。ソフトウェアの問題だと目星はついていますが、こういう逆戻りは神経に来ますよ、ホントに・・・。眠気と引き換えに薬で抑えてなかったら、多分胸を押さえてのた打ち回ってるでしょう。「相性が悪い」で済ませられりゃ、どれだけ楽なことか(泣)。
 「水無月便り」に応募いただいた方すみません。こんな環境と精神状態ですので発送まで暫くお待ちを・・・(_ _;)。

[CGIを自作してみて]
 「水無月便り」で必要に駈られてアンケートフォームを作って、それを再利用する形でメールフォームを作ったわけですが、更新履歴に載せないまでもちまちまと改造を加えてきました。で、何回目かの改造でようやくメールフォームとして完成した形になりました。管理者に内容をメールで送信する機能がなかなか出来なかったのですよ。前に仕事で作ったときに使えた関数(?)が使えなくて・・・。
 試しに送信してみて、意図どおりのフォーマットでメールが受信できたときは嬉しかったです(^^)。まあ、まだちょいとバグがありましたけど(動作に影響はないですが)。自分の好みに合わせてレイアウトや機能を変えたり出来るのはプログラムの面白いところです。動かないと神経を削られていきますが(爆)。
 話は意外に淡々と進んでいく。何処にでもあるような学生生活の中で、主人公とその転校生は何かぼんやりした記憶を思い出すが、目立った接点もなく日々は流れていく。退屈といえば退屈な展開だが、その記憶が何なのか、どうしても気になって、居眠りをする気にはならない。
 ちらっと井上を見ると、真剣な表情で見入っている。始まる前に恋愛ものの過程が好きだといっていたが、かなりお気に召したようだ。

 そのまま話が淡々と進む中で、ある日、主人公が休日にぶらぶらと散歩するシーンに変わる。そして小高い丘にある1本の巨大な樹に吸い寄せられるように歩み寄る。その視線の高さには拙い字で転校生の名前がナイフか何かで刻んである。
 主人公はそこでぼんやりとしていた記憶が徐々に明確な輪郭を帯びていくのを感じていくようだ。セピア色の中で何か大切な思い出があるような・・・。だが、記憶の確信まではどうしても迫れないようだ。

「随分大きくなったものね、この樹も・・・。」
「・・・。」
「何か・・・思い出さない?」

 転校生が思わせぶりなことを言う。大人喉お回りもあるほどに成長した巨大な一本の樹。微風にざわめく枝葉。その中で主人公と転校生が見詰め合う。
 その時、左手に柔らかい感触を伝わってくる。見ると、井上が肘掛の上に会った俺の手の上に自分の手を重ねている。俺は手の向きを180度ひっくり返して、井上と掌を合わせる。自然に両手の指が開き互いの指をその隙間に入れて具と握る。
 何の違和感もなしに自然と井上としっかりと手を握りあう・・・。ほんの数ヶ月前までありえなかったことが今、実行に移っている・・・。しっかり指の色魔に入り込んだ井上の手が徐々に井上の方に引っ張られていく。まるで俺の手を抱き寄せるかのように・・・。

 俺は手の方に向いてしまう意識を映画の方に半ば無理やり向ける。木々の微かなざわめきの中、主人公と転校生は無言で見詰め合う。主人公は記憶を手繰り寄せるように、転校生は記憶が蘇ることを願うように・・・。

雨上がりの午後 第257回

written by Moonstone

 最初の数分くらい脈絡のないCMが続いた後、ようやく本編が始まった。大人のラブロマンスかと思いきや、舞台は高校だ。主人公の男のクラスに美人の転校生が−結構有名な若手女優だ−入って来る。当然クラスの男は大騒ぎだ。でも、これとあのチケットのデザインとどういう関係があるんだ?

2000/7/13

[久しぶりに動き始めて・・・]
 前回の定期更新以来殆ど、否、全くと言って良いほど何も作品製作や間近に迫った定期更新の準備をしていなかったのですが、ようやくやってみようか、という気になりました。まだコミカルな作品を書けるほど回復していませんが(あの手の作品は相当気分が乗らないと書けなかったりする)、可能なものから手をつけています。看板CGを少し変えたのは衝動的なものです(笑)。
 進捗状況も併せて更新したのですが、日付は2週間以上前のものも・・・。如何に長く休業状態にあったかを実感しました。ただ、これで自分がだらしないとか怠けているとか思わないようにしています。そう思うと際限なく落ち込んでしまうんですよね。自分一人しか居ないのに自分を責めてばかりだったら、最終的には消えて無くなった方が良い、となるのは目に見えてます。一時は本当にその一歩手前まで踏み込んだくらいですから・・・(以前お話しましたよね。走って来る車の前に飛び出しそうになったって)。<=危険だが事実(汗)。

 幸い、今は仕事の方も一段落していまして、この機会にゆっくり心身を休めようと思います。とはいえ、定期更新まで日がなかったりする・・・(^^;)。ま、可能な限り進めますので、気長にお付き合いいただけると嬉しいです。

「映画観るのって、久しぶりなんですか?」

 井上が話し掛けてくる。そう言えば、井上はこの映画館の場所を知っていたな・・・。何度か来てるんだろうか?・・・誰と?

「高校のとき以来かな・・・。こっちに来てからは一度も観てない。」
「私もこっちに来てからは初めてなんですよ。」
「?じゃあ何で此処を知ってたんだ?」
「此処って線路沿いですよね。通学途中にああ、あそこに映画館があるんだなって。」
「あ、なるほど・・・。」

 言われてみれば確かにそうだ。俺が気付かなかったのは乗り降りの時に出入りする人波に翻弄されるのが嫌で奥の方に入り込む習慣がある上に、毎度の混雑で外の景色を見る空間的余裕も心理的余裕もなかったからだろう。

「今から観る恋愛ものの映画って好きですか?」
「んー・・・。どうかな・・・。映画自体あまり観ないからなぁ・・・。」
「私は結構好きなんですよ。結末より過程の方ですけどね。」
「・・・過程・・・か。」
「結末に至るまでに出会いから始まって、お話したりデートしたり、喧嘩したり色々あるじゃないですか。そういう人と人との触れ合いが上手く出ている映画は好きですね。」
「いっぱしの評論家みたいだな。この映画は井上先生のお目に叶うかどうか、要注目だな。」
「からかわないで下さいよ。」

 井上は照れくさそうな笑顔を浮かべて俺の肩に寄りかかってくる。少しドキッとするが、少しも不快に思わない。上映開始を告げるブザーのような音が鳴り響く。それに続いて照明が落とされる。闇に包まれた館内に白いスクリーンが浮かび上がる。間もなく上映が始まる・・・。

雨上がりの午後 第256回

written by Moonstone

 黄白色の照明に照らされた館内には、パンフレットを見ながらの展開の予想や映画とは関係ない会話が複雑に雑じりあって浮かんでいる。時計を見ると上映までまだ少し時間があるが、売店に行って飲み食いをするには足りない。まあ、飲み食いしながら観るようなタイプの映画じゃなさそうだから、大人しく待っている方が良いだろう。

2000/7/12

[品質管理のこと]
 某食品メーカーが食品製造にあるまじき大失態をやらかして、自身はおろか小売店や畜産農家にまで大打撃を与えています。それで社長は9月に辞任などと暢気なことを言ってますが、最高責任者なら退職金を返上してとっとと辞任すべきでしょう。組織の不祥事はトップの責任と言い逃れが出来る筈。それがトップダウンというものです。それが出来ないなら役員など用無しです。
 でも、品質管理という観点で見れば、PC業界も同レベル、或いはもっと問題かもしれません。新しい周辺機器やアプリケーションをインストールしたら動作不良を来たして、問い合わせたら「相性が悪い」の一言でおしまいだなんて、消費者を愚弄しているといわれても仕方ないでしょう。前にもお話しましたが、家電製品でこんなことをしたら唯では済みますまい。

 IT革命という聞こえの良い言葉を評論家やマスコミが乱発していますが、こんないい加減なことがまかり通る業界に雇用や経済成長を託せると本気で思ってるんでしょうか?「不正な処理」でデータ抹消、再起動を幾度となく経験した身としては、とても信用する気になれません。まあ、所詮太鼓持ちには関係のないことなんでしょうけどね。
 それは平日ならまず間違いなく顔を突き合わせていた状況から一転して声だけが頼りの状況に変わる遠距離恋愛で陥りがちなパターンだし、だとするとあの女と切れるのは時間の問題だったのかもしれない。
 だが、智一も言っていたとおり、井上は今時簡単にお目にかかれないタイプだと思う。自分より相手のことを第一に考えるなんて、言うのは簡単だが実行するのは無茶苦茶難しい。なのに天秤にかけて軽く感じたなんて、その男も後で悔やんでるかもしれない。あの女の場合はとっくに思い出の一つになってるだろうが・・・。

「・・・そう思います?」
「ああ。」
「私も・・・ふられてて良かった・・・。」

 井上が俺の腕を抱き寄せるように腕を絡ませて体を寄せてくる。緊張はするし喉に痞えるものも感じるが・・・不思議とその感覚が心地良い。行列は着実に進んでいくが、もう少し遅くなってくれれば・・・。

 映画館には1回で入れた。複数の映画館が共存するという、今よくあるスタイルで、案内表示が3つもある。俺と井上が見る映画は中央の通路を進んだ方向で上映されるそうだ。入り口でチケットのもぎりと引き換えに貰った薄いパンフレットを手に、俺と井上は上映会場に入る。
 中は予想以上に広い。他に2つ映画館があるとはいえ、あれだけの行列を吸い込めただけのことはある。コンサート会場を思わせるような整然と並んだ座席は前の方からぎっしりと埋まっている。二人分の席は確保できるんだろうか・・・?

「凄い人ですねー。」
「本当だな・・・。兎も角、席を探そう。」

 俺と井上は二人分の席を探して通路を歩く。前の方は全く入る余地がないが、後ろの方は割と空いている。こういう場合、前の方から席が埋まっていくというのは確か心理学の講義で話があったな・・・。
 歩いていくと正面やや左寄り、通路に面した席が丁度2つ空いていた。スクリーンがさすがに小さく見えるが、この際贅沢を言っても始まらない。俺は井上を先に座らせて、続いて横に座る。

雨上がりの午後 第255回

written by Moonstone

「それにしても・・・勿体無いことしたもんだな。」
「何がですか?」
「天秤にかけたら井上の方が軽く感じたなんてさ・・・。」

 俺の場合は付き合いの価値観が違っていたし遠距離だったから、高校の時だったら自然消滅していたようなずれが埋められない溝になったんだろう。

2000/7/11

[あれこれ変えてみました]
 トップページにコンテンツが増えたり位置(管轄)が変わったりしています。まず1つは先日設置したメールフォーム「Shooting Star」のフォーマット一部修正です。実は9日くらいにこっそり変えたんですけど、ページをお持ちの場合URLを書いてもらう欄を追加しただけなので、更新情報には載せませんでした。今回、「Dandelion Hill」から「広報委員会」に移管したので(レイアウトの都合ですけど)改めて更新情報に追加しました。まだ機能強化が必要なんですが・・・。
 もう一つは懸案だった1行リレー専用掲示板の設置です。今まで通常の掲示板JewelBoxと共存させていたのですが、書き込みが加わると当然のごとく後ろにずれて、その度に前面に持ってくるのが億劫で・・・(汗)。今回、上位レス機能を備えた高機能掲示板がようやく動くようになったので、JewelBoxから過去の書き込みを引っ張り出して新装開店しました。さて、どれだけ賑わうやら・・・。

[現在投薬治療中ですが・・・]
 日々続く強烈な副作用の眠気、上がらない能率、湧かない意欲。ですが、他から見れば単に怠けているとしか思えないでしょう。弁解する気もありません。実際、メールフォームの修正や「WordSpheres」の稼動まで1週間以上かかってるんですから・・・。
 このまま続くようだと定期更新の延期はおろか、更新そのものも続けていく自信がありません。「内に篭ると尚良くない」と言われているので気力を振り絞ってお話しているのですが・・・。今だって大して変わりないような気がしないでもないです。だって(以下音声カット。所詮負け犬の戯言です)。
 考えてみれば、街中で中高生が堂々と手を繋いでいるのが珍しくなくなったのはつい最近のことだと思う。優子と付き合っていた頃は、デートも何処か秘め事のような位置付けだった。
 今観ようと並んでいる映画のタイトルの如く、逢瀬の雰囲気を守るか仲の良さをアピールするか、どっちが良いのかは分からないが・・・。俺にとって女と腕を組むというのは、なまじ慣れてないだけに緊張感で体を硬くするには十分だ。まあ、一つの布団で手を繋いで寝てからこう思うのも何だが・・・。

「・・・安藤さんの不幸を喜ぶ気は全くないですけど・・・。安藤さんが優子さんと別れてて良かったです。」
「・・・。」
「そうじゃなかったら・・・こうして一緒に出掛けたり、お話したり出来なかったかもしれない・・・。安藤さんが優子さんと付き合ってたら、私は遠くから見てるだけだったか・・・、もし言ったとしてもふられるか、二人の仲を壊してしまってたかもしれない・・・。そんなことはしたくなかったから・・・。」
「・・・遠くから見てるだけでも良かったのか?」
「二人の仲を壊して自分が幸せになって良いのか、って思うんです・・・。それで誰かが泣くことになるのは、どうしても罪悪感を感じるんですよ。」
「・・・。」
「選ぶのはその人の自由ですけど・・・選ばれなくて泣く人だって居るんです。私も・・・昔そういう思いをしたから嫌なんですよ、そういうのは・・・。」

 井上の声が沈んでいるのが分かる。そうか・・・。井上も前に振られたことがあるって言ってたな・・・。同じような傷を抱えた者同士が出会ったってことか・・・。お誂(あつら)え向きというか、類は友を呼ぶというか・・・。だけど・・・。

「・・・俺は今・・・不幸だとは思ってない。」
「え?」
「あの女と別れてなかったら、井上とこうやって居られなかったんだろうから・・・。」
「・・・。」
「あれはあの女の勝手だからどうしようもない。でも、それで井上と出会えたなら・・・あれで良かったと思う。」

 こういうのをプラス思考というんだろうか?眉唾物の思想家もどきを信用する気はないが・・・。今は本当にそう思う。

雨上がりの午後 第254回

written by Moonstone

 井上と腕を組んでいる・・・。それだけで心拍数が上がる。周囲の状況を考えれば何も不自然じゃないが・・・。あの女、優子とは腕を組んだ覚えは殆どない。それどころか手を繋いだこともあまりない。勿論嫌だったわけじゃない−それなら3年も続かなかった筈だ−。気恥ずかしさがあったのは勿論だが、地元の高校だったから、繁華街を歩けば誰かに見られるという思いがあったと思う。

2000/7/10

ご来場者52000人突破です!(歓喜)

 ・・・ここ数日ズタボロの精神状態でトップページとこのコーナーを更新するのが精一杯だっただけに、ご来場者数がコンスタントに増えているのには救われる思いがします。このコーナーのリスナーも5000人を突破しまして(前後賞の方も報告いただいたのは初めてです)、ちょっとは続けている甲斐があるのかな、と思います。
 精神状態はまだ回復したわけではありません。進捗状況をご覧いただければ、全く進んでいないのがお分かりでしょう。ただ、昨日よりは幾分ましになって、3日ぶりにご飯を炊いて料理を作ってまともに食べました。何かをしようと思うようになっただけましでしょう。無気力状態だとそれ自体が嫌に思えてさらに無気力になるという悪循環に陥るんですよ。・・・あまり誇れる経験ではありませんけどね(^^;)。

[昼はやたらと暑いですが・・・]
 夜は随分涼しいです。湿気も少ないし、窓を開けるとひんやりした微風が入ってきます。天然のクーラーですね。私は冷房に弱い方で、手足が冷える上に体の調子が悪いときは胃腸の具合まで悪くなってきます(自宅でドライしか使わないのはそのため)。
 この風は気持ち良いんですが・・・窓を開けると夜中の12時を過ぎても結構な数の車が走っていく音が耳障りです(- -;)。何で夜中に走る必要があるんですかね・・・。
 ・・・ちょっと待て。俺と井上はカップルじゃない筈だ。なのに、無意識にそう思い始めている・・・。俺の気持ちは本物なのかどうか頭であれこれ考える以前に、頭の中ではもう一つの方向に向いているのか・・・?

「1回目じゃ無理かもしれませんね。」

 井上が溜息混じりに言う。見ると確かに凄い行列だ。係員が出てロープを張って、列を蛇行させているくらいだ。俺と井上が並んだ位置は2回蛇行した後の最後部にあたる。映画館の広さにも依るが、井上の言うとおり1回だと無理かもしれない。

「1回の上映が2時間くらいとして・・・1回目では入れないと昼過ぎになるな。」
「・・・どうします?」
「どうしますって・・・観たかったんじゃないのか?」
「ええ。でも、待ち時間が退屈じゃないかなって・・・。」
「待ってればそのうち入れるさ。昼は中で食べれば良いし。」

 こういうとき、俺は何故か気長だったりする。実際、行列は少しずつだが確実に前に進んでいるし、行列の長さからしても2時間くらい待てば確実に入れるだろうと楽観的に考えている。・・・普段はこういう考え方がなかなか出来ないくせに・・・。
 ふと井上を見ると、俺の顔をじっと見ている。何かを問い掛けるような瞳に見詰められると、俺が何か悪いことをしたような気になってしまう。

「・・・どうかしたか?」
「ん・・・ちょっと分からなくて・・・。」
「?」
「何で・・・優子さんが安藤さんをふったのかなって・・・。」
「・・・そんなこと、俺より良い男を見つけたからに決まってるだろ。」

 俺は視線を横に逸らす。何を聞くかと思えば・・・。自分の中で品評会をした結果、俺より「身近な存在」とやらが良かったから、電話一本で俺を捨てたんだ。・・・まあ、以前ほど腹立たしくは思わないが、思い出したくないことには変わらない。
 左の袖に何かが触れる。そしてその感触は添えられるようなはっきりしたものに変わる。ちらっと左腕を見ると、井上の手が俺の腕に回っている。

雨上がりの午後 第253回

written by Moonstone

 行列に近付いてみると、やはりというか殆どがカップルで後は女友達で誘い合って来たようだ。まあ、テレビか雑誌で評判を見聞きして、話の成り行きで行ってみようかとなったクチだろう。カップルにしたってこの手の映画を見たいと思うのは大抵女の方と相場が決まってる。俺と井上の場合もそうだし・・・。

2000/7/9

[寝て過ぎた土曜日]
 別に無茶苦茶疲れていたわけではありません。急に熱を出して魘されていたわけでもありません。睡眠薬が効きすぎて起きたら夜だったというわけでもありません。ただ、起きる気力がなかっただけです。
 寝ていたというより横になっていた以外は、パンと牛乳、ポテトチップスを口にして、シャワーを浴びて、買い物に出掛けただけ・・・。いつも聞くラジオも殆ど聞かず、テレビも付けず、換気のために窓を開けても車の走行音が何時も以上に耳障りですぐに閉じて、後はベッドでぐったりしてました。

 先日も酷かったですが、それよりさらに酷い、どん底に近い状態です。本当は戴いた作品を広報紙に掲載したり、1行リレー専用掲示板をオープンしたり、多少なりとも更新するつもりだったのですが、とてもそんな気分ではありません。今こうしてお話しているのもぎりぎりの状態です。親からの電話で「しっかりしろ」なんて言われたけど、どうしようもないんだって・・・。所詮、誰にも分からないんでしょうね。端から見ればだらけてる、の一言で片付けられる状況なんですから。

[昨日アクセスが上手く行かなかったようです]
 一時FTPも不可能で、緊急告示をしようにも掲示板JewelBoxのHTMLも読み出せない状態(爆)。どうしたものかとホスティングサービスの会社に問い合わせたら、「こちらからはアクセスできます」とのお返事。で、もう一度試したら確かにアクセスできたけど、暫くしたらまたダウン(爆)。FTPだけは出来たので更新は出来ましたけど。
 上のような脱力度400%の状態でメールチェックしたら、ホスティングサービスの会社からメールがあって、サーバーに障害が発生して不安定だったのでリフレッシュをかけたとのこと。今は正常にアクセスできる筈です。
 某食品メーカーは杜撰な安全管理の上に社長が逆ギレするという醜態を晒しましたが、このホスティングサービスの会社は契約前から対応が非常に丁寧かつ迅速だったので、やはり素晴らしいと改めて思いました。こういう会社は大きくなって欲しいものです。

雨上がりの午後 第252回

written by Moonstone

 井上に引っ張られるように、俺は裏口から外へ出る。暮れも押し迫ったこの時期にしては意外に暖かい。空気の刺々しさも少なくて、柔らかい日差しが冷気を含んだ風に吹き飛ばされることなく肌に達する。春の兆しを思わせるような陽気に、本能的に縮こまらせていた体の力を抜く。

「暖かーい。デートには丁度良い日よりですね。」
「デ、デートって、映画見に行くだけじゃ・・・。」
「二人で映画見に行くのもデートのうちですよ。」
「・・・。」
「さ、早く行かないと第1回目の上映に間に合わないですよ。」

 井上は俺の手を引っ張って走り出す。勢いの良さにつんのめってしまうが、どうにか体制を立て直して井上に並ぶ。手は取り合ったままだ。でも、それに何の抵抗も感じない。頬を撫でるような陽気とは違う柔らかさを伴う温もりが心地良い。
 映画館の場所は知らないから完全に井上任せだが、どうやら何時も通学に使う駅の方向へ向かっているようだ。途中から何時も通学に使う道に入る。そのまま駅に向かうと思いきや、途中で左に折れる。何時も電車の窓から見えるか見えないかの線路沿いの通りを進んでいくと−混雑で周囲の人間の頭しか見えない場合が多い−、大きな現代風の建物が見えてくる。その前にはかなりの行列が出来ている。どうやらそこが映画館のようだ。

「・・・凄い混雑じゃないか?」
「人気の映画なんですよ。カップルお勧めの映画だってラジオで言ってました。」
「・・・カップルねぇ・・・。」
「さ、急ぎましょ。」

 行列に並ぶのは最近だと学食くらいだし、行列が出来るものというのはマスコミが作った一時の人気だというのが俺の認識だ。まあ、内容を見てみないことには断言できないが・・・。

2000/7/8

 今、気分最悪です・・・。落ち込むなんてレベルの話ではありません。僅かに残った気力を振り絞ってキーボードを叩いています。何故かと尋ねられても答えようがないんですが・・・出てくるのは溜息ばかりです。

[ドキュメント:病院、行ってきました(番外編2)]
 今回、心療内科での診察の経緯を紹介した理由は2つあります。一つは自分自身の記録を残すためです。リスナーの方は覚えておられるかもしれませんが、私は此処2ヶ月の間に何度か相当酷い精神状態に陥りました。その時は胸の痛みがしつこい上に主に仕事の問題が重なったから、落ち込みが何時になく大きかったのだと思っていました。しかし、今改めて思うと、それは心療内科に駆け込むべき状態だったのです。
 一歩誤れば最悪の事態もありえただけに、こうして日々の状況を書き残しておけば(PCにはログもとってありますしね)後で経緯を知る一助になるでしょう。・・・洒落にならんようなことを言いましたが、今は実際そういう気分です(汗)。

 理由のもう一つはこのような心の病は誰でもなる可能性があることを知っておいて欲しいということです。私自身、少なくとも胸が痛くなる3ヶ月前までは、知識こそあれ、まさか自分がこのような状況に陥るとは思いませんでした。過労で鬱状態になって自殺したのを争う裁判が相次いでいるのも、対岸の火事ではないということを思い知りました。
 ドキュメントの最初でお話したとおり、心療内科は大変な混雑でした。つまりはそれだけ心の問題を抱えている人が多いということです。「根性が足りない」「甘えだ」と黴の生えた精神論を声高に叫ぶ輩が居ますが、なってみれば分かります

 ・・・2時間以上かかってようやく此処までお話しました(爆)。久しぶりに早く帰宅しても何もする気力がなくて(食べる気力も)、ぼんやり横になってたくらいですからね・・・。この分だと相当長引きそうな気配です・・・。
 懸命に仕事をしてそれなりの信用を獲得して、ページの更新もシャットダウン以外欠かさず続けてきた結果がこれですか・・・。「何事も真面目にやれ」と私に教え込んだ親を恨む気はさらさらないですが、真面目にやっても損の方が多いなんて、馬鹿馬鹿しいとしか思えません。

雨上がりの午後 第251回

written by Moonstone

「安藤さん。仕度出来ました?」
「ちょっと待ってくれ。」

 ドアの向こうから井上の急かす声が聞こえる。普通外出の準備は女の方が時間がかかるというが、今回はまるで逆だ。目を輝かせてドアが開くのを待っている井上の様子が想像できる。
 俺が井上を待たせているのは、井上より食べるのが遅かったのもあるが、外出用のこんなことになるなんて思いもしなかったし、バイトは専用の服があるから、外出用の服なんて持ってきてやしない。まあ、元々服装には無頓着な方だから、家に居たとしても何を着るかで困るだろうが・・・。
 かと言ってあれこれ迷っていてもシンデレラみたく豪華な服を用意してくれる妖精が−魔女だったか?−出てくる筈はないから、持ってきた服を着るしかない。手早く着替えてズボンのポケットに財布を突っ込んで、櫛と歯磨きセットを持って−出掛ける前の身嗜みくらいは頭にある−ドアを開ける。

 真正面に立っていた井上の服装は・・・バイトに出てくるときと大して変わらない。・・・そうか。井上だって俺と出掛けることになるとは、願っていたかもしれないが本当にそうなるとは思ってなかっただろうから、普段着るような服しか持ってきてなくて当然か。ほっとすると同時に、あれこれ悩んでいたことが我ながら馬鹿らしく思える。

「待たせたな。服どうしようかちょっと迷ってて・・・。」
「普段着の方が良いですよ。服装が余所行きだと気分も余所行きになっちゃいそうで。」
「・・・そうだな。」
「じゃあ、行きましょ。」

 井上は俺の手を取って走り始める。俺は引っ張られるままに前のめりに走り出す。井上に主導権を握られてしまっているが・・・それも悪くない。それに、この機会に言えるかもしれない・・・。延々と引き伸ばしている井上への返事を・・・。

2000/7/7

[ドキュメント:病院、行ってきました(番外編1)]
 薬を処方してもらったのですが、兎に角種類が多い。朝昼の食後に飲むのが3種類、寝る前に飲むのが2種類、そして胸が痛いときに飲むのが1種類。1日3回は飲むわけです。粉薬は口に残るのが苦手なので、錠剤で良かった・・・という問題ではなく(^^;)、効果は確かにあります。薬を飲むようになってから胸の痛みは殆どありませんし、夜に飲む薬のうち1種類は睡眠薬でして、これのお陰で酒を飲まなくても、それも長時間連続で寝られるようになりました。
 しかし、これらの薬には眠気が延々と続くという厄介な副作用があるんです。薬と同時に渡された説明書にも「眠気を催すことがある」ときちんと書いてあるとはいえ、まさかこれほどのものとは・・・(汗)。仕事のメールを書くときも文章をなかなか纏められなかったですし・・・。睡眠薬そのものも弱いという割にはかなり強力で、すっきり目覚めるとはいきません(^^;)。

 実際、このお話をしている最中もかなり眠いです。ぼんやりしていると意識がすうっと遠のくくらいです(相当疲れた状況を想像して下さい)。連載を書き進めるのもかなり辛かったりします。考えが纏まりにくいんですよ(汗)。
 これから暫く眠気との格闘になります。文中妙な漢字や文章があったら、「眠気に負けたな」と思ってください(^^;)。最近校正漏れが多いのは、単なるうっかりミスです(これはこれで問題ですな)。もし誤字脱字を見つけたらメールなり掲示板なりでご一報ください。早急に直しますので。

「今日、二人は大学の講義はあるの?」
「いえ、土日は休みです。サークルとかも入ってませんし・・・。」
「あ、そうなの。私の頃は土曜日も午前中はあったんだけどね。」
「どうしてですか?」

 俺が尋ねると、潤子さんは箸を置いて席を立ち、冷蔵庫にマグネットで留めてある長方形の紙切れを取ってきて、俺と井上の間に差し出す。・・・映画のチケットだ。タイトルは『逢瀬の丘』。丁度俺くらいの年齢の男女がアップで向かい合い、その背景に朝日を逆光に見る構図で男女のシルエットが見えるという、いかにもラブロマンスもののデザインだ。

「新聞屋さんに貰った招待券なんだけど、店を休むのも何だし、丁度2枚あるから二人で行ってきたらどう?」
「二人でって・・・」
「良いんですか?これ、最近封切りになった人気の映画ですよね?」
「晶子ちゃん、知ってるの?」
「ええ。前売り券買おうと思ったんですけど、買いそびれちゃって・・・。」
「なら丁度良いわね。何時もの時間までに戻ってくれれば良いから。」

 ・・・俺が口を挟む余地は全くない。既に井上は行く気でいる。クリスマスコンサートが近いからという理由で泊り込むことになったというのに、昼間の空き時間に遊んでいて良いんだろうか?

「あの・・・昼間は練習した方が・・・。」
「練習ばかりだと息が詰まるわよ。練習はバイトの途中でも出来るし、店が終わってから皆でするし。」
「音楽以外のことに触れておくのも大切なことだぞ、祐司君。」

 3対1か・・・。それは兎も角、映画なんてあの女、優子と付き合っていた頃行ったきりだし、この町に来てから行ったことはおろか、映画館の場所すら知らなかったりする。

「俺、映画館の場所知らないんですけど・・・。」
「私、知ってますから。」

 井上が目を輝かせて即答する。・・・ま、たまには良いだろう。それに、井上と一緒なら・・・。

雨上がりの午後 第250回

written by Moonstone

 のんびりした雰囲気の中、朝食は進む。4人の食卓は実家を出て以来初めてだ。最初のうち、井上と一緒に寝ていたことをあれこれ突っ込まれるのかと思って気が気でなかったが、そんな気配はまったくないので緊張が徐々に解れて食事を味わう余裕が出来る。同年代だと食べる暇もないくらい突っ込んで来るだろうが、何だかんだ言ってもマスターと潤子さんは大人だな、と思う。

2000/7/6

[ドキュメント:病院、行ってきました(3)]
 問診を進めていくうちに、「この仕事だとストレスは相当大きいでしょうね」と言われ、指し示されたのが2つのパンフレット。医者は病名を言わないのですが(多分ショックを受けたりするからじゃないかな?)、パンフレットが代弁している(笑)。パンフレットの内容を示しながら、この病気だとこういう症状が出る、という説明を受けました。要するにストレス過多による神経症ということです。ある程度予想していただけにすんなり納得(笑)。だって、ストレス診断を幾つか試したら、全部「早急な対策が必要」でしたし(爆)。
 で、薬の説明。サンプルがずらりと並んだものを見せてもらいつつ、薬の効能と組み合わせ(これによって効果の強弱や問題が発生することがある)を丁寧に説明してもらいました。随分丁寧でしたね。最近は大抵病状や薬などについて説明がありますが、心理的に負担を増やさないようにという配慮でしょうか?さすがは心療内科(違う?)

 診療時間は15分か20分ほど。意外に呆気ないものでした。当面毎日薬を飲んで、断続的に通院する日々が続きます。パンフレットを見ていたら必ず治療できるけど治療に時間が必要とのこと。まあ、気長に治療を続けていくことにします。しかし、十分な休養というのはちょっと難しいぞ(^^;)。
 それはそうと・・・井上はどうしたんだろう?てっきり俺より先に降りて来てると思ったんだが・・・。

「あの・・・井上は・・・?」
「ああ、晶子ちゃんはもう降りて来てるわよ。」
「そうですか・・・。」
「おっ、井上さんのことが心配か?」
「い、いえ、俺よりきっちりしてるから、先に来てる筈だと思って・・・。」

 新聞を読んでいたマスターがいきなり話に首を突っ込んでくる。聞いてないようでしっかり聞いていたのか・・・。井上と一緒に寝てたことや手を繋いで密着していたことも知っているに違いない。何となくこの場に居辛い・・・。
 潤子さんがガスコンロの火を止めて、椀を順番に取って鍋の味噌汁を注いでいく。4人分の味噌汁が食卓に並んだ頃、井上が階段と反対側から姿を現した。髪を梳いたり顔を洗ったりしていたんだろうか?

「晶子ちゃん、丁度良いところに戻って来たわね。さ、座って。」
「何か手伝いましょうか?」
「もう皆の食器に盛り付けるだけだから大丈夫よ。」

 井上は俺と向かい合う形で座る。俺は視線を何処に向けて良いか分からず、何気なく目の前の朝食に一時待機させることにする。井上と見詰め合うのはちょっと・・・気恥ずかしい。
 朝食はご飯に豆腐の味噌汁、厚焼き玉子に漬物、海苔と、それこそ何処かの旅館で出てきそうなメニューだ。厚焼き玉子なんて、高校のときの弁当以来だと思う。母親が作っているのを見たことはあるが、俺では到底出来ないと思ったものだ。
 潤子さんが茶碗にご飯をよそっていく。4人分の料理が出揃ったところで、潤子さんがエプロンを取ってマスターと向かい合う形で座る。マスターも新聞を畳んでテーブルの隅に置く。

「じゃあ皆揃ったことだし、戴きましょうか。」
「「「「いただきまーす。」」」」

 声を揃えていただきます、なんて小学校の給食みたいだが、これだけ人が居るとそれも楽しく思える。

雨上がりの午後 第249回

written by Moonstone

「あら、祐司君。おはよう。」
「・・・おはようございます。」
「マスターの隣に座ってくれる?」
「はい。」

 俺は潤子さんの指示どおり、マスターの横に座る。朝食の席で食べる前に新聞を読んでいる姿は実家の親父を思い出させる。

2000/7/5

[メールフォームを設置しました]
 メールアドレスは持ってない(学生さんなどで学校のものを使ってるとか)、掲示板に書き込むのはちょっと・・・という方、お待たせしました(待ってないか?)。メールフォームを本日から運用開始しました。名前は「願い(メッセージ)を乗せる」という意味合いを込めて「Shooting Star」としました。
 メールアドレスを書いていただければ必ずお返事しますが、ない場合も大切に保管して運営の励みに致します。ガンガン使ってやってくださいませ。・・・何処かで見たような、と思われる方、思い当たる節があっても知らない振りをして下さい(爆)。

[ドキュメント:病院、行ってきました(2)]
 思ったより私の順番は早く回ってきました。時間にして20分くらいかな?まあ、今まで検査&診察のために通院していた病院が待ち時間長過ぎだった(1時間は当たり前)といえばそうなんですが。少々緊張しながら中に入ると、これまた病院の雰囲気まるでなし。洋間に大きい木製のテーブル、本が並んだ本棚、ソファ、白いカーテンなどなど、書斎という雰囲気でした。
 ほっとすると同時に多少の違和感も感じながらテーブルを挟んで医師と向き合いました。白衣こそ着ていましたが、部屋の雰囲気が雰囲気だけに医師という雰囲気はなし(笑)。薬のサンプルと用意された新しいカルテが診察の場なんだなと思わせるものでした。

 で、診療が始まりました。診察といっても・・・他の病院の初診と同じく「どうしました?」から始まって、痛みの期間、ここ(今回の病院)に来るまでの経緯、その他の自覚症状の問診でした。
 決定的に違ったのは「ストレスとして思い当たる節は?」と尋ねられたことです。うーん、さすが心療内科(違う)。思い当たる節といえば厄介極まりない仕事とそれによる長時間労働ですが、その状況の詳細、そして現在の生活状況とかなり踏み込んだところまで問診が続きました。(以下、明日)
 潤子さんが部屋を出て、足音が遠ざかっていく。俺と井上は改めて顔を見合わせて苦笑いする。

「何だか・・・結局、潤子さんに当てられっぱなしだったな。」
「そうですね・・・。でも、羨ましい。」
「何で?」
「だって、それだけ好き合ってるってことでしょ?」
「・・・そうだな。」

 少なくとも潤子さんにとっては、あれは秘め事ではないわけだ。むしろ、私達はそれだけ夫婦仲が良いという証明なんだろう。

「私達もあんなふうになりましょうね。」
「・・・ちょ、ちょっと待て。俺は・・・。」
「着替えるから部屋に戻りますね。」

 俺が言おうとしたところで、井上はそれをはぐらかすように立ち上がっていそいそと部屋を出て行く。何だか・・・もう一歩のところで逃げられたような口惜しさを感じる。まだ好きと言ったわけじゃない、と言おうとしたつもりなんだが・・・。
 俺は小さい溜息を吐く。あそこで俺もあんな風になりたい、とか気の効いたことを言えれば、何かが変わっていただろう。どうも俺にはそういうセンスのようなものがない。俺と井上の関係が変化したとき、井上は俺のそういうところを許せるんだろうか?我慢できなくなったとき、或いはそれがない存在を見つけたとき、関係は終わりへと向かうだろう。俺の気付かない間に・・・。

やっぱり俺は、恋愛をしない方が良いんじゃないか・・・?
その方が・・・俺も井上も余計な傷を増やさなくて済むんじゃないか?

・・・そうとも思う。でも井上には俺の傍に居て欲しい・・・。同じくらいそう思う。どうすれば良いんだろう・・・?考えれば考えるほど分からない・・・。

 着替えを済ませて階段を下りていく。台所に出ると、テーブルに4人分の食事が食器が並んでいる。その内の1つには、新聞を広げているマスターが座っている。潤子さんはコンロにかけた鍋の様子を見ている。微かな味噌の匂いが漂ってくる。

「おはようございます。」
「おっ、おはよう。昨日はお疲れだったらしいな。潤子から聞いたぞ。」
「・・・お疲れなのはマスターの方じゃないんですか?」
「いや、お陰でよく寝られたよ。」

 反撃に出ようと思ったんだが、呆気なくかわされた。やっぱり年季が違う・・・。聞いていないかのように鍋を時々かき回していた潤子さんが、手を休めて俺の方を向く。

雨上がりの午後 第248回

written by Moonstone

「まあ、その話は置いといて、皆で朝御飯食べましょ。準備は出来てるから着替えて降りてきてね。」
「は、はい。」

 さらに追求するのかと思ったが、潤子さんは井上の沈黙が少し続くと自ら話を切り上げる。この辺り、タイミングを心得ているというか・・・。押すか引くかしか知らないような俺や井上には未熟な、人間関係での技だ。

2000/7/4

ご来場者51000人突破です!(歓喜)

 ・・・定期更新の後で一気に突破したようです。第1SSグループの久々の更新が大きかったかな?製作途中で止まっている作品もまだありますし、公開に持っていきたいと思っています。折角作り始めたのに日の目を見れないままHDDに眠らせておくのは忍びないですからね。

[ドキュメント:病院、行ってきました(1)]
 夏真っ盛りといっても過言ではない暑さの中、もう2ヶ月以上続いている痛みの原因を突き詰めるべく病院へ行ってきました。前にもお話しましたように、人間ドッグさながらの検査をしても(痛い思いも何度もしましたよ、ええ(T-T))異常なしの診断だったので、心療内科に初挑戦(というのか?)しました。
 予約時間より少し前に行ってみたら・・・人がいっぱい、いや、ぎっしり(*_*)。予約でもすぐに診療というわけにはいかなかった(そもそも予約が必要だとは思わなかった)ことを考えれば多少の混雑は予想できましたが・・・まさか玄関の土間が靴を脱ぐ場も殆どないくらいとは思わなかったですよ(^^;)。

 中は何て言うんでしょう・・・小さいホテルのロビーを縮小したような雰囲気で、病院の待合室という感じではなかったです。一昔前の病院だと白一色の部屋に消毒液の臭い、忙しなく行き交う医師や看護婦・・・というイメージがあったのですが、イメージ改善を図っているのかもしれないですね。新しいところだとちょっとお洒落なリビングという感じの待合室が多いです。
 診療までまだ時間があったので椅子に腰掛けて待っていると、診療待ちの人が一人、また一人と呼ばれて診察室に出入りしていきました。どんな診療なのか、初挑戦(^^;)の私は胸の痛みを感じながら待っていました(以下、明日)。

「二人ともなかなか寝ぼすけさんねぇ。」

 呆れたような声は・・・潤子さん?!ばっと目を開けると、布団の横に両膝を落とした、エプロン姿の潤子さんが居た。がばっと身を起こそうとするが左腕の方が錘でも付けられたように重くて傾いてしまう。起き上がった勢いで掛け布団が捲くり上がり、俺の姿勢が傾いた「原因」が潤子さんに晒されてしまう。・・・井上はまだ俺の左腕に密着している。

「・・・なるほどぉ。起きられなかったのはこういう理由だったわけね。」
「あ、いや、これは、その、昨日、いろいろ、ほら、・・・。」
「そんな状況で弁解しようとしても、説得力ないと思うけどな・・・。」
「・・・ん・・・どうしたんですか?いきなり・・・。」
「えっとね、もう9時だからそろそろ良いかな、って思って起こしに来たんだけど・・・。」
「潤子さん・・・?あ、おはようございます。」

 状態を少し引っ張り上げられるような格好になってもまだまどろんでいた井上が、潤子さんの体裁を整える程度の理由説明にようやく目を覚まして俺から手と腕を離して布団に座る。モーニングコールをするときの声からは想像もつかないが、意外に目覚めは良くない方なのかもしれない。

「どう?晶子ちゃん。よく眠れた?」
「はい。二度寝だったんでちょっとぼんやりしてますけど・・・。」
「あら、休憩を挿んでも続けるなんて、祐司君たら随分頑張ったのね。」
「な・・・何言ってるんですか!元はと言えば、井上がここに来たのは・・・」
「夫婦だから良いでしょ?」

 そう言われるとどうにも言い返しようがない。確かにこの家はマスターと潤子さんの家なんだし、そこで二人が夜中勤しんでも誰にも干渉する権利はないわけだ。
 しかし、多少は照れたり誤魔化そうとしたりするかと思ったが、全くそんな素振りは見せない。夫婦だからそういうことがあっても何も不思議はないし、隠すようなことではないと思っているんだろうか?

「ちょっと五月蝿かったかもしれないけど、隣の部屋への響き具合まで知ってるわけじゃないからね。」
「・・・かなりよく聞こえましたよ。」
「あら、そうだった?参考になったかしら?」

 潤子さんは隠すどころか逆に尋ねてくる。井上は口篭もって俯いてしまう。答え辛いことをわざわざ尋ねるなんて、潤子さんも人が悪いなぁ・・・。

雨上がりの午後 第247回

written by Moonstone

・・・じくん、・・・さこちゃん・・・。

・・・誰だ?井上か?ちょっと声の質が違うような気がする・・・。

・・・うじくん、まさこちゃん。

え?俺?・・・まさこって・・・誰だっけ?

2000/7/3

[週末、家から出なかった・・・(^^;)]
 出る予定も用事もなかったですし、昨日の連続更新で唯でさえ少ない精根が尽き果てたので、大人しくしていました。日曜も「曇り、所によって一時雨」(この予報って反則だよなぁ」)という予報を見事に裏切る快晴で相当暑かったようなので、体力の落ちている私は出なくて正解だったでしょう。痛みの方も金曜日あたりよりはましになったとはいえ、あまり芳しくないですしね・・・。
 その煽りで(言い訳か?)家事は食事と一部の掃除以外はサボり続きです(^^;)。机の周りには参考書籍やコミックスやら辞書やらが散らばっています(汗)。さすがにこのままでは・・・と思って整理はしましたが、整理だけ(爆)。だって、物置も整理しないと入らないし・・・(^^;)。部屋の容積の割に本が多いんだな。思い切って捨てた方が良いんでしょうが、それがなかなか・・・。MIDIも作ってるし、ページの更新もあるし、必須のこと以外はどうしても後回しになっていくんですよね。掃除は必須じゃないのか、という質問はこの際しないで下さい(爆)。

[通院再開します]
 人間ドッグさながらの検査を受けて異常なしといわれて以来、未だに胸の痛みは消えないどころか、時には前より酷くなったりします(^^;)。検査結果は信用するにしても(写真とかも見せてもらいましたしねぇ)、痛みが続いているのは事実ですし、このままだと不安なばかりか心身が参ってしまうので、別の医者に行って原因を突き止めてもらう予定です。

「待てるだけ待つって言ったのは私だから・・・良いですよ。」
「・・・悪い。」
「好きだって言ってもらえるときは、迷いなく言って欲しいですから。」
「・・・好きって言うとは一言も・・・。」
「違うんですか?」
「・・・ノーコメント。」

 このまま井上と問答していたら、ぽろっと好きだと言ってしまいそうだ。元々策士の上に誘導尋問も巧みだと・・・浮気は絶対ばれるだろう。する気もないが。悪戯を仕掛けたことを分かっていながら子どもに詰め寄るような井上の表情に耐え兼ねた俺は背中を向けようとするが、左腕をがっしり抱え込まれていて首だけ横を向けるのが精一杯だ。

「・・・あ、あのさ、井上。そろそろ・・・手を離してくれないか?」
「どうしてですか?」
「だ、だって・・・もう良いだろ?」
「・・・嫌。」

 井上は少し怒ったような声でより強く腕を抱え込んで来る。そんなに強く抱え込むと・・・胸の感触が余計に強くなるじゃないか・・・。ますます井上の方を向けなくなる。昨日の夜と同じ状況だ。

「な、何で?」
「潤子さん、あと1時間くらいしてから起こしに来るんでしょ?」
「だから?」
「それまで私達は寝てることになってるんですから、手は繋いだままで居ます。」
「何だ、その理屈・・・。」

 引き抜こうにも腕は抱え込まれているし、手はしっかり握られているからどうしようもない。強引にやれば出来ないこともないだろうが、それにはちょっと・・・躊躇いがある。腕と手を通して伝わってくる井上の手や胸の感触−どうしても気になる−、そして温もり・・・。あと1時間ほど浸って居たい。抵抗するのは止めにしておこう・・・。

雨上がりの午後 第246回

written by Moonstone

 前に井上に看病してもらったときもそう思った。この気持ちは熱で寝込んで心身共に弱り切っていたから、自分に尽くしてくれる相手に依存する気持ちを好きだという気持ちと錯覚してるんじゃないかって・・・。
 もしそれが本当に錯覚だったら、前に経験したパターンとよく似てる。白されたことが嬉しくて付き合うようになって、本気になってこのままずっと、と思っていたら、相手の方があっさり乗り換えたんだ。・・・もう、あんなことは御免だ。絶対に・・・。

2000/7/2

[久々の大量更新です(^-^)]
 一眠りしたら痛みが治まったので、その間にとばかりに更新の追い込みを図りました。その結果、今回はグループの青色表示(更新しましたって合図のつもり)が4つになりました。特に今回、第1SSグループは更新したかったんですよね。開催中の「綾波展」で推薦を戴いたのに、それ以来更新していないようではあまりにみっともないので・・・(^^;)。
 で、このコーナーが更新された段階では間に合わなかったのですが、もう少しで更新できるグループがあります。テレホーダイ時間までに間に合えば連続更新を行いますので、可能でしたら時々ご来場してみてください。

[あ〜つ〜い〜ぞ〜!(-o-;)]
 兎に角きちんと寝ようということで、目覚ましをオフにして横になったのですが・・・やられました。暑さで目が覚めました(- -;)。昨日まで湿気は多くても日差しが強い、所謂「夏らしい」気候ではなかったので不意打ちを食らったような気分です。体力が以前より落ちている身にこの暑さは辛い〜。
 早速冷房(ドライですけど)を使用開始しましたが、この熱気はなかなか消えませんでした。更新準備をしながらラジオを聞いていて、その天気予報で気温が30度を超えて一番の暑さになった、と・・・。そりゃ目も覚めるわな(^^;)。

 夜になったら多少ましになったのですが、それでも普段より明らかに暑い!ということで冷房(やっぱりドライ)はそのまま使用。こういうときビールを飲むと上手いんでしょうが、更新できるかどうかの瀬戸際で酔っ払いになるわけにはいかないので(^^;)氷水で凌いでました。ドライだと喉が渇くんですよね。一先ず更新が出来れば打ち上げがてら飲もうかな(をい)。
 ・・・やっぱりそう来たか・・・。まんまと井上の術中に嵌ってしまったとはいえ、あれは先走りが過ぎた。あれがそのままマスターと潤子さんの耳に伝われば、今日の夜はどちらかの部屋に布団が二つ並べて敷かれるに違いない。・・・今こうして寝てる時点で、潤子さんの胸のうちは決まっているかもしれないが。

「な、何で目を開けたんだよ。」
「やっぱり開けない方が良かったですね。」
「べ、別にそ、そんなつもりは・・・。」
「じゃあ、何のつもりだったんですか?」

 井上があの得意の悪戯っぽい笑顔で詰め寄ってくる。そんなこと聞かれても返答に困る。自分がやっていたこと自体、本人を目の前にして言い訳出来そうもないんだが・・・。
 井上の表情がまた変わる。少し切なげで何かを訴えるような瞳から、俺は目を離せない。

「順番は・・・守って欲しい・・・。」
「井上・・・?」
「私から挑発するようなことしてて説得力ないかもしれないけど・・・」
「・・・。」
「そういうことは・・・気持ちを聞かせてからにして欲しいなぁって・・・。」
「・・・そうだな。」

 そうだ・・・。彼女だったら、と思って引き寄せられるように井上の髪に手を通したけど、俺はまだ井上に返事をしていなかったんだ・・・。じゃあ、あの気持ちは何だったんだろう?キスしたいと思った・・・それは間違いない。じゃあ何故?・・・井上の寝顔があまりにも無防備だったから?それもある。他には・・・?

・・・思い当たらない。

 キスしたいということが邪な欲望に基づくものだったとは、少なくともさっきの場合は思えない。本当にただキスしたくて・・・。それが邪な欲望だとすれば、何を以って純粋な想いと言ったら良いんだろう?

「もう少しだけ・・・時間をくれないか?」
「?」
「俺の気持ちはもう固まってると思う・・・。だけど、それに自信がない・・・。純粋な気持ちなのか、それとも自分の欲望を満たしたいだけなのか・・・。だから・・・。」

雨上がりの午後 第245回

written by Moonstone

「・・・寝てるところを起こしたくなかったしな。でも、寝た振りしてるとは思わなかった・・・。」
「嬉しかったから、そのまま寝た振りしてたんですよ。もう一度潤子さんが起こしに来るまでこのままで居られるって思ったから。」
「寝た振りってのは・・・ちょっとずるいぞ。」
「本当に寝てたら、キスできたのにって?」

2000/7/1

[1年もよく日記(?)が続いたなぁ(爆)]
 今日から7月。1年の折り返し地点を回りました。と同時に、このコーナーも開始から1周年を迎えました。日記などが長続きしない性分なので、始まった頃は1年も続くか甚だ疑問だったのですが(爆)、何時の間にやら毎日PCの前に向かうことが日課になっていました(笑)。
 始めてから今まで、仕事は困難と試行錯誤の連続で、ページの運営は思うように行かず、挙句の果てには原因不明の胸部の痛みに悩まされるようになり、明るい前向きな話題より、暗くて内向きな話題が多かったと思います。でも、此処に書き留めていく過程で自分の考えを少しは整理していけたのではないかと思います。かと思えば時々萌える感情を前面に出したりして「よく分からん奴だな、こいつは」と思われたかもしれません(笑)。

 このコーナーで産声を上げた連載「雨上がりの午後」は後にログから集約され、一つのグループとなりました。何もかもまだまだこれから、始まったばかりです。時に立ち止まり、振り返ったりすることはあっても、一日一日一歩一歩進んでいきたいと思います。

★★★リスナーの皆様、本当にありがとうございます(_ _)★★★

[あ、あかん、洒落にならない・・・]
 木曜の夜から急に痛みが強くなってきて、此処最近では一番酷い状況になっています(大汗)。もう寝る食べるどころではなくて、昨日も暫く横になっていたのですが一向に良くならず(T-T)。うめきながらのた打ち回っていました。
 明日の定期更新は久々に充実できそうなところまで漕ぎ着けたのに・・・。痛み止めも効かないと分かっているので、次の診療まで我慢して待つしかないです。全くどうしたものやら・・・。
 その気持ちが本当に好きという気持ちかどうか分からない・・・。以前は確かにそうだったと思う。だが結局それは、好きだという気持ちに気付くのを無意識に避けようとしていたからじゃないんだろうか?またあんな思いをしたくないからって・・・。

 俺は布団に再び身を横たえて、空いた右手で掛け布団を整える。井上の顔は掛け布団に覆われて半分ほどしか見えないが、よく眠っているようだ。握られた手と抱え込んだ腕は解放してもらえそうもない。どうやら潤子さんがもう一度来るまで、このままで居るしかなさそうだ。
 ・・・つまりはもう一回、知らない人間が見たら説明のつかない状況を見せなければならないということだ。今度はマスターも来そうな気がする。

「・・・ううん・・・。」

 井上が布団の中でくぐもった声を出す。こういう声をこういう状況で出されると気になって仕方がない。どんな顔して寝てるんだろう?・・・ちょっと見てみるか、ちょっとだけ・・・そっと・・・。
 右手で井上の顔下半分から下を隠す布団の裾を少し捲ってみる。井上は俺の腕に抱きつく格好で眠っている。本当に無防備な寝顔だ。彼女だったら気付かれないようにキスの一つでもしたくなる。

・・・彼女だったら・・・。

そう思うと胸がぐっと掴まれたような感覚が走る。井上の顔を少し上に向けて、俺が顔を寄せれば、唇同士を触れ合わせられる・・・。胸が高鳴り始める。右手を井上の髪に通して・・・絹糸のような滑らかな感触・・・。
 その時、井上がぱちっと目を開ける。突然のことに俺は慌てて手を引っ込めて距離を開けようとする。しかし、左手と左腕をしっかり拘束されているから逃げようがない。

「・・・何時から起きてたんだよ。」
「・・・ついさっき。」
「ついさっき、って・・・何時からだよ?」
「『井上が寝てるみたいなんで』って言ったところから。」

 それじゃ俺がさっき井上の髪に手を通していたところを、じっと様子見していたってことか?これじゃ言い訳しようがない。寝顔に騙されちまった・・・。

「・・・嬉しいです。」
「な、何が?」
「寝てるみたいだから、って私を気にかけてくれたこと。」

 井上の微笑が何時も以上に柔らかい。どう言い訳しようか半ばパニックになっていた頭が急に落ち着いていく。

雨上がりの午後 第244回

written by Moonstone

 井上はその怖さを乗り越えた。ぶっきらぼうにしている俺に邪険に扱われるかもしれない、一笑に付されるかもしれない、そんな負の可能性があっても尚、井上は気持ちを口にすることを選んだ。
 ・・・あの時は友人ではいられなくなったことに若干のショックを感じたし、その告白に対する答えも、自分の気持ちも、これからのことも何が何だか分からなかった。だから何れ返事をする、と言って今に至るわけだ。もう俺の気持ちは・・・自分自身で分かってるんじゃないか?否、分かってる筈だ。

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