芸術創造センター こぼれ話
Dropped talk of Performing Arts Center

2000年12月31日更新 Updated on December 31th,2000

2000/12/29

[今年最後の更新にあたって]
 明日から1週間ほどシャットダウンします。よって年末年始、このページはこの状態のままということになります。この場をお借りしてこのページにご来場いただいた皆様全てに御礼申し上げます。
 1月のシャットダウン明けから困難な仕事と作品制作の両立に明け暮れ、とうとう3月下旬に発生した胸部の痛みに始まり、仕事と作品制作に加えて病院通いが加わりました。そして9月あたりに作品制作の労力の対価(感想など)が非常に少ないことに痺れを切らしてページ閉鎖直前まで突っ走り、辛うじて持ち直したものの10月中旬にはもはや全てをこなすことは困難という意思の診断に基づき、1ヶ月の長期療養を行いました。そして療養を終えて現在に至るわけです。

 総括するなら私にとって2000年は良い年ではなかった、と思います。対価の少なさは相変わらずですし、心身の調子を崩すし・・・。ですが、寄せられる僅かな対価は私を暖かく励ましてくれて、次の制作に打ち込む大きな原動力となりました。また、ご来場者数は昨年度を既に上回り、創作系小説のグループの伸びも緩やかではありますが確実に上昇しており、明るい材料も少なくありません。
 来年以降このページがどうなっていくか、それを明言することは出来ません。ただ一つ言うなら、「芸術創造センター」と名付けた時の方針を堅持し、作品の質と量を充実していくつもりだ、ということだけです。

それでは皆様、良いお年を!(^-^)/

 潤子さんの一言がずしっと心に圧し掛かる。あれだけの演奏を聞かされた後で俺と演奏と晶子の文字どおりの「歌」がどれだけ観客を魅了できるんだろうか・・・。椅子に座る前から不安は尽きない。
 だが、もう迷ったり悩んだりする暇はない。俺は椅子に腰掛けると素早くストラップに体を通してギターのセットアップを始める。ギターのチューニング確認が済んだところで足元を確認する。フットスイッチのうち一番左のスイッチを踏めばギター以外の楽器の演奏が始まる手筈だ。マスターの『STILL I LOVE YOU』のバックもこのフットスイッチを踏んでシーケンサをスタートさせていた。
 あまり余計な間を空けるのはコンサートでは禁物だ。準備不足と思われるだろうし、何より客がしらけてしまう。俺は思い切ってフットスイッチを押す。すると聞き覚えのあるイントロが流れ始める。俺も演奏を始める。さあ、晶子。次は・・・お前の番だぞ!
 何のことはない、いともあっさりと晶子はその歌声を会場に投げかけ始める。変に緊張してたのは俺だけか・・・。そう思うと指先に篭った嫌な力があっさりと抜ける。

 広がりのある晶子の歌声にギターの音色を控えめに乗せる。此処では俺は脇役だ。晶子の歌声をより豊かに聞こえさせるのが俺の役目だ。良い感じで歌声が会場に拡散する。歌声のシャワーが客席に優しく降り注ぐ。
 後半、本当ならサックスが担当するソロを、俺がギターにエフェクタを効かせてサックスっぽい音色に切り替えて演奏する。これが終われば後は晶子がきっちり纏めてくれるのを演奏しながら待つだけだ。
 晶子は最後のフリーな部分も巧みにメインの歌詞をちりばめる。俺との練習のときにも色々試していたが、その試行錯誤が功を奏したようだ。ますますヴォーカル本来の歌う腕と「見せる」腕を身に付けているな・・・。
 晶子のヴォーカルが消えてエンディングを俺とシーケンサが纏めると、客席からわっと拍手と歓声が起こる。初めての披露となるこの曲は、観客を十分満足させることが出来たようだ。まあ、殆ど晶子のヴォーカルの腕によるものだが。
 晶子はこれで一旦休憩だ。だが俺は安心していられない。次は俺もメロディやソロを数多く弾く『JUNGLE DANCER』だ。マスターがステージに上がってきてサックスの準備を素早く整える。やはり動きに無駄や迷いがない。
 俺はフットスイッチを押す。コンガの音に続いて俺はギターを動物の声に似せて鳴らす。客の反応は見えない。此処がこの曲の最初の見せ場と言って良い場所。今はフレットの位置とアーミングと音量に集中するときだ。

雨上がりの午後 第384回

written by Moonstone

 充実した疲労感の滲む潤子さん。だが、潤子さんをこれ以上気遣う余裕はない。次は俺と晶子のステージなんだから。

2000/12/28

[やっぱり今日も疲れたぁ〜]
 2日目の材料置き場の掃除、私はまずストック部品の仕分けをすることになりました。何せ箱の中が滅茶苦茶になっててあっちにこっちに部品が点在していたので、これを仕分けして整理する必要があったのです。
 それは多少の混乱を伴いましたが無事終了。そして予想どおり拭き掃除と、使用不能物品の廃棄。実は今回これが一番の曲者で、台車に方向転換も侭ならない程の重さの使用不能部品を満載して、建物の2階から地上の遠い別棟の指定場所まで捨てに行かなければならなかったからです(汗)。

 それを繰り返すこと2回。よくもまあ、これだけ溜め込んだな、と思う程でした(大汗)。掃除を終えた部屋はすっきり綺麗になってこれで2日に渡る大掃除はおしまい。来年もまた此処と居室を往復する日々が続くんだろうな、と思いつつ・・・。
 で、帰宅してやっぱり2度にわたる使用不能物品廃棄のための往復が効いたらしく、ベッドに横になると同時に2時間ぐっすりお休み(爆)。もう何度もやったことですが、メールのお返事早く書かなきゃならんというのに・・・。
 徐々に音の雫が大きくなり、波紋に重厚さも伴い始める。それでいて滑らかで心地良い旋律・・・。潤子さんによってピアノが命を吹き込まれて歌っているように聞こえる。

そう、歌うように・・・。

 一つ一つの音がそれぞれの響きを伴って大合唱をしているように聞こえる。日曜日にはもはや恒例となっているリクエストで弾くときよりずっと、ずっと豊かな響きを持っているように聞こえる。うろ覚えだが天使が主なる神を賛美する歌を歌っているというが、潤子さんの下に天使が舞い降りたのだろうか・・・。その後姿に大きく広がった6枚の羽が見えるような気がする。
 曲は後半へと差し掛かる。客席を見るが誰一人として身動き一つしない。潤子さんの奏でる音の虜になっているようだ。これもまた「見せる」音楽の一つの形。誰もがその音の魅力に囚われ、その音以外は何も聞こえない魔法のような演奏だ。音の波紋が幾重にも重なり、鮮やかな模様を描く。それが『ENERGY FLOW』という名の曲として完成に少しずつ近付いていく・・・。
 最後の一音の響きが止むと、客席から割れんばかりの拍手と歓声が飛び交う。潤子さーん、という呼びかけなど当たり前で、中には結婚してくれー、という声まで聞こえる。潤子さんが既婚者だって知らないんだろうか?それとも知ってて尚言わせるだけの何かをあのピアノの歌う歌が秘めていたんだろうか?
 潤子さんはゆっくり立ち上がり客席に一礼するとステージを下りる。潤子さんの額には大粒の汗が浮かんで頬を幾つも伝っている。潤子さんにとって全精力を込めた演奏だたんだろう。

「久々に会心の出来だったわ。」
「潤子さんのピアノが・・・歌ってるように聞こえました。」
「そう聞こえた?なら私も少しは上達したってことかしらね。」

雨上がりの午後 第383回

written by Moonstone

 ピアノの高音域を使ったメロディが控えめのアルペジオを伴って流れ始める。波一つない湖面に木の葉から雫が零れ落ちて出来る波紋・・・。譬えるならそんな音だ。どこか自分が別の世界に居るような感覚に見舞われる。

2000/12/27

[疲れたぁ〜]
 職場で大掃除が始まったのですが、これが大変。拭き掃除は勿論、ゴミとそうでないものを分けたり(何でも溜め込む癖あり)、重い物体を持ち運んだり、彼方此方動き回ったりと、普段の仕事並の疲労がたまりました。前日に可能なところをやっておいて良かったとつくづく思いつつ大掃除は1日目終了。
 はい、私の職場では大掃除は2日間あります。そっちの方が大変だろうなぁ・・・。重いケーブルとかあるし、拭き掃除必須の部分が多いし・・・。面積的には今日(居室)より狭いので、その二大関門を突破すれば何とかなるかな・・・?

 帰宅してからも大変で、夕食を準備しながら洗濯機を回し、食事しながらPCで不足分と予備の年賀状を作って、眠い、と思ってベッドに潜り込んだらあっさり23時前、否、ちょっとタイムオーバー。幸い直ぐに繋がったから良かったですけど、疲れたときにベッドに潜るのはやっぱり眠ってしまうものですね(それが普通だ)。
 それでも約2時間で目が覚めてしまうのはまだ変わりません。先日医者に診てもらったときも「疲れた顔をしてる」と言われたし、寝ても根本では疲れは取れてないのかな・・・。
 次はお待ちかね、潤子さんの『ENERGY FLOW』だ。俺と晶子の前で控えていた潤子さんはマスターがステージの向こう側に消えるのを見計らってステージに上がる。そのとき、俺の方を向いてぼそっと囁く。

「折角の水入らずのときなんだから、ゆっくり楽しんでね。」

 何で後ろに居るのに今の俺の状況−俺の左肩に晶子が頭を凭れている−が分かるんだ?知らない間にちらっと見たんだろうな・・・。後でからかいのネタにされる予感が凄い濃さで漂っている。
 それは兎も角としてステージに注目する。ステージには潤子さんが颯爽と姿を現す。それだけで「潤子さーん」なんて呼びかけが幾つか客席から上がる。潤子さんは普段日曜日だけの限定リクエスト受付だから、それが曜日に関係なく、それもリクエストで人気の高いことでは随一の『ENERGY FLOW』となれば、こういう反応も理解できる。そうでなかったら、アイドル−というには年齢が高いか?−のミニライブだ。
 潤子さんは歓声や拍手に微笑みで応えながらピアノの前に座る。するとその瞬間から真剣さと気迫が潤子さんの背中からはっきり伝わってくる。そんな潤子さんの発する何かを感じたのか、ざわめいていた客席が急速に静けさを取り戻していく。楽器の前に座るだけで客席を自分の出そうとする音に集中させることが出来るなんて・・・。
 マスターはかつて数々のジャズバーを席巻していた、言うなればバリバリのサックス・プレイヤーだ。だが、潤子さんについては何も知らない。只一つ知っていることは、潤子さんはピアニストでも何でもない、普通のOLをやっていたことがある、ということだけだ。
 これはバイトを始めて少しした頃、俺が直接聞いたことだ。だが、どうやってマスターと知り合ったのか、そしてどういう経緯でマスターと結婚してこの店を営むようになったのか、そういうこことについては、さあ、昔のことだから、とあっさりかわされてしまった。それ以来一度も聞いたことがない。

雨上がりの午後 第382回

written by Moonstone

 エンディングを見事に決めてサックスがマスターの口から離れると、盛大な拍手と歓声が起こる。普段はコーヒーを沸かすのと入り口正面で威圧感を与えているだけ(?)の存在とは思えない凛とした風貌に、思わず感嘆の溜息を吐く。

2000/12/26

ご来場者78000人突破です!(歓喜)

 ・・・日曜の更新で届くとは思っていましたが、やっぱり超えましたね。このくらいの更新ペースが今の私には一番合ってるのかな・・・?

[ようやく完了(一部除く)]
 どうにか年賀状書きをほぼ終えました。一人一人宛名を書いて、裏面のメッセージを書いて(これらは手書きにするのが拘り)ほぼ無事に完成しました。
 ・・・この「ほぼ」というのはですね、昨年来た年賀状の中で出す分(喪中とかあるから)と今年出す分の数が合わないからです(当然出す分の方が足りない)。理由は昨日もお話したようにプリンタに出力できるようになるまでに5枚パーにしてしまったから。それに月曜に買いに行くつもりが、具合が悪すぎて横たわるだけで外に出られず失敗。今日こそ買いに行って全員の分を一気に投函するつもりです。
 しかし、やろうと思えば2日3日で出来ることを今までほったらかしにしていたのが何とも・・・。で、来年こそは、と思っていても結局そのときになると同じことを繰り返すことを今まで何度やってきたやら(爆)。
 晶子も続いてステージを降りてくる。井上も間近で見ると額や頬に汗が流れている。白熱電球の照明を浴びてあれだけ動いて歌えば、汗もかいて当たり前か。

「疲れただろ?結構動き回ったし。」
「私はそれ程・・・。それよりずっと演奏してた祐司さんの方が・・・。」
「次の2曲が長いから、それで休めば大丈夫だよ。音合わせの時だって連続でやってきたんだし。」
「もし痛かったりしたら早めに言ってくださいね。冷やすための氷とか何か持ってきますから。」
「・・・ありがとう。心配してくれて。」

 俺は晶子が心配してくれることが心底嬉しく思う。俺の口元に自然と笑みが浮かぶ。晶子も微笑で応える。こんなやり取りが出来るようになるなんて、最初の頃は想像すらしなかったな・・・。
 ステージではマスターのサックスが甘い音色を奏でる。シーケンサで演奏される楽器の音にただ機械的に合わせるんじゃなくて、シーケンサの演奏に生命を吹き込むような豊穣な音色が会場いっぱいに響き渡る。
 この曲は俺にとっては思い出深い−記憶に新しいというべきか−。優子と切れてやり場のないもやもやしたものが涙になって噴出した曲だ。あの時流した涙は何年ぶりか、というものだが、泣けたことで少し気分が楽になったことも覚えている。
 マスターのサックスの音色が会場全体を甘い音色で溶かしていく。カップルの姿も目立つ中でこの音色を聞けば、二人だけの甘い世界に染み込むのは簡単だろう。実際、男の肩に凭れたり一体になったように密着しているカップルもちらほらと見える。マスターの術中に嵌ったというべきか。
 その時、俺の左肩にこつんと何かが当たったのを感じる。何かと思って見ると、晶子が頭を凭れさせていた。目に付くかもしれないから離れて欲しいんだが、晶子もマスターのサックスの甘い調に気分がとろけてしまったみたいだ。
 俺は払い除けるわけにもいかず、退けよ、というわけにもいかず、ただその場に突っ立ったままでエンディングに近いマスターのサックスを聞く。確かに俺もこの音色に酔ってしまいそうになる。マスターのサックスには魔法が掛かっているんだろうか?

雨上がりの午後 第381回

written by Moonstone

 ここでようやく俺は一休みとなる。『ENERGY FLOW』とマスターが言ったところで会場にどよめきが起こったから、やはり楽しみにしている客が多いようだ。噴き出る汗はステージを降りてから隠れた場所でタオルで拭う。比較的長い曲が続くから腕の疲れも十分取れるだろう。

2000/12/25

[今頃になって]
 年賀状の準備を始めました(汗)。兎に角機能の更新が優先でしたし、それ以外は寝てばかりだったので(これがいかん)始めるのが先延ばしになってきたんですよね。日曜も日曜で昼過ぎまで寝てたし(大汗)。
 直ぐに準備できるだろうと思っていたのが甘かった。今メインで使っているノートPCの画像がプリンタが使えるサブPCで使えない(ノートPCとプリンタは接続できない(泣))。よって、ノートPCで作った原稿をサブPCに持っていって使おうとしたら、Wordのバージョンが違うし、「はがき」の項目がノートPCにないし、四苦八苦してサブPCで使える原稿が出来ました。このために年賀状5枚パーにしちゃいました(爆)。だって、プレビューと印刷が違うんだもの(泣)。

 干支とは関係ない、Photo Group 1の作品の中から厳選した3種類を使ってプリントアウト。これだけでも2時間は掛かりました。表側(宛名の部分)に余計な直線が入ったので、修正液で消すのがまた一苦労。やっぱり寝てばかりいないで早めに手を打つべきだったなぁ・・・。
 しかし、去年来た分の中で今年返す分で枚数がぎりぎりだから・・・追加で買っておいたほうが無難ですな、これは。今頃売ってるんだろうか、ちと不安。売ってなかったら官製はがきで我慢しますか。
勿論このコンサートも初めての体験です。・・・最後まで練習のとおりに、否、それ以上に聞いてもらえるような演奏を心がけたいです。・・・以上です。」

 少々抑揚が不規則に揺れながら思いついた言葉を適当に並べる。会場から拍手に混じって女の声で「安藤くーん」なんて呼びかけが聞こえる。声の方を見ると常連のOLが手を振っている。俺はそれに応えるつもりで苦笑いしながら手を小さく振る。
 続いてマスターは晶子を前面に来るように手招きして、晶子が来たところでマイクを向ける。晶子も予想外だったらしく明らかに戸惑った様子を見せるが、右手を胸の中央に当てて覚悟を決める。

「私は・・・こんな大勢の人の前で自分の歌を聴いてもらえるなんて、ほんの3ヶ月くらいまでは夢にも思いませんでした。・・・でも、練習して少しずつ場数を踏んで、今日こうして色んな曲を聴いてもらうことが出来て、私は幸せです。まだプログラムは続きますから、最後まで聞いてください。」

 晶子がそう言って小さく一礼すると、俺のときより大きな拍手と歓声が沸く。まあ、客層は男の方が多めだし、晶子目当ての客も居るだろうから−井上さーん、なんて呼び声も結構聞こえる−無理もないか。やっぱり上手いヴォーカルは人の注目を引きやすい。晶子にヴォーカルをやらせてみたら、と勧めた潤子さんはこのことも計算に入れていたんだろうか?
 マスターは盛り上がる客席を前に司会を続ける。これだけの密度の高い観客の興奮を前にしても滑らかな話しっぷりを見せる辺り、相当場数を踏んでいる証拠だと思う。そりゃジャズバーを席巻してるんだったら、ステージ慣れしてる筈か。

「さて、続いてお送りする曲は、私の『STILL I LOVE YOU』、潤子の『ENERGY FLOW』、今回初披露となる安藤君と井上さんの『THE GATES OF LOVE』、そして安藤君と私のノリの良い曲『JUNGLE DANCER』、4人揃ってクリスマスの定番『赤鼻のトナカイ』です。」

雨上がりの午後 第380回

written by Moonstone

「コメントと言うことなんて全く頭になかったんで・・・何を言えば良いやら分からないというのが正直なところです。兎に角、この店でバイトを始めて最初のクリスマスを迎えました。

2000/12/24

[年末恒例の・・・]
 このページも年末年始は昨年同様シャットダウンします。で、シャットダウン明けいきなり定期更新なので、PCに向かう日々が続きそうです(^^;)。まあ、外に出るようにと何度も言われそうですが・・・。出来れば何所へも出掛けたくないです。人と会うのが億劫なので。
 今回の定期更新は準備が遅かったのとどうしてもやる気が出なかったので(週末なんて寝てばかりだったし)、更新数は非常に少ないです。一応今年最後の定期更新なので、もっと色々公開したかったです。来年最初の更新で豪勢に公開、といきたいところです。2週間で何所まで出来るか、時間との勝負ですね。

 クリスマスについてはこのページを含めて完全無視といって良いですね。まあ、普段滅多に食べないケーキを幾つか買って食べる程度です。自作はコストの関係で見送り。だって自作用の市販品を揃える金額で売ってるケーキが幾つも買えるんだもの(爆)。それに買い物の途中で買えたし。この寒い中何度も家を出入りするのは辛いし、その店の味は知ってますから安心。
 クリスマスを越えたら今度は年越し一色でしょ?忙しなく変わる世相からは我が身に降りかかる国民負担への怒りなどは感じられません。私としてはこの方が遥かに問題だと思うのですが・・・。
 何時ものとおり、ストリングスをアレンジした4小節に続いてボサノバのリズムを刻む4小節の基本ストロークを軽く奏でる。晶子はゆったりと身体を上下させてリズムを取る。俺のストロークに合わせて歌い始めるタイミングを計っているんだろう。
 そして何度も耳にしたあのヴォーカルが会場に広がり始める。聞きなれたヴォーカルだが飽きは全然感じない。練習を始めた頃から比べると比較にならないほど上達した晶子のヴォーカルに、俺はギターのストロークを委ねる。
 途中俺のソロを挟んで再び晶子のヴォーカルが客に向かって、否、会場全体に放たれる。その透明感のある、それでいて輪郭のはっきりしたヴォーカルは豊かな響きを伴って会場を優雅に漂う。何度も聞いたが、伴奏の俺自身リラックスして思わず寝入ってしまいそうになる声だ。
 最後まで歌い上げた晶子のヴォーカルに続いて俺がエンディングのストロークをかき鳴らすと、客席からどよめきを伴う拍手と歓声が降りかかる。客も晶子のヴォーカルにすっかり酔いしれて良い気分になったようだ。自分の声でこれだけ観客を魅了できれば本当に大したもんだ。
 マスターがステージに出てくる。晶子がマイクをスタンドから離して少し下がってマスターに手渡す。その動作にも妙な緊張は感じられない。ヴォーカルとしての風格が漂っていると言っても良いくらいだ。

「3曲続けてお送りしましたが、如何でしたでしょうか?」
「もう最高ー!」
「井上さーん!」
「さて、これまで聖夜の前夜祭ということでしっとりとした感じでお送りしてきましたが、ここからはノリの良い曲もどんどん入ってきますよ。その前に新たな感動を齎してくれた若い二人に一言コメントを貰ってみましょうか?」

 おいおいマスター、ちょっと待て。そんな話聞いてないぞ。だが、マスターは髭面に笑みを浮かべて少し屈んで俺の口元にマイクを差し出す。・・・言うことなんて考えてる筈ないから適当に言っておくか。まったく・・・。

雨上がりの午後 第379回

written by Moonstone

 俺は小さく頷く。大丈夫という意味を込めて。すると晶子は正面に向き直り、髪を一度かきあげて歌う準備を整える。ならば俺がもう待つことはない。早速始めるとするか・・・。

2000/12/23

[古き年を忘れ、新しい年を望む]
 金曜日は仕事が終わってから職場の望年会がありました。望年会というのは忘年会の誤変換ではなく(普通に変換すりゃ忘年会になるよなぁ)字のとおりです。キャプションにもあるように新しい年を望むという意味でこうしたのでしょう。幹事じゃないので詳しい事情は知りませんが。
 私に限って言えば、今年はろくな年ではなかったです。仕事は相変わらず大忙しだし、このページの企画は悉く失敗するわ(応募してくれた方、忘れてはいません。暫しお待ちを)、挙句に自分が心身の調子を崩して自宅療養にまで追い込まれるわで・・・。こんなろくでもない年はとっとと忘れてしまいたいものです。その意味では私には「忘年」の意味も強いです。
 来年こそ良い年であって欲しい。切にそう思います。その意味では「望年」の意味も強いです。どちらが強いか、と尋ねられても両方共としか答えられないですね(汗)。それだけ私の状況が深刻だということです。
 ただ、忘れるばかりでなく、教訓として自分の財産とすることも必要でしょうね。失敗の方が貴重な体験である、とも言いますし。でも、心身にダメージを食らうような失敗はもうしたくないです。絶対です(きっぱり)。
 そして一瞬演奏が止まる。静寂が会場を包んでいる。再び俺のギターを合図に演奏が始まる。原曲のストリングスの部分をアレンジして取り込んでいる潤子さんのピアノが時に引いていく波のように、時に打ち付ける波のように激しく躍動する。ピアノが生きている。そう感じさせるには十分だ。
 俺も負けてはいられない。押し寄せる音の波の上に懸命に爪弾いたビターの音を浮かべる。自然と俺の指に篭る力が強まる。その後も曲調に相応しくないような激しい音のぶつかり合いが展開される。一瞬でも気を抜いたら、恐らく10本全部の指を使っているだろう潤子さんのピアノに飲み込まれてしまう。

 曲も終盤に差し掛かるとギターとピアノの格闘みたいな構成からジャズっぽくなる。油断は出来ないが−ストリングスのアレンジの抑揚が激しい−どうにか正気を保ったまま最後を迎えられそうだ。
 演奏がようやく終わる。汗だくになった俺とピアノの前でふうと溜息を吐く潤子さんに、大きな拍手と歓声が浴びせられる。客の顔を見ると驚きの顔がちらほら見える。あれだけ難しい曲だったからよく演奏できたもんだな、と思ってるんだろう。
 何にせよどうやら無事成功に終わったようだ。そう実感すると、溜息の代わりに汗がどばっと噴出す。出来ればこれからあまりリクエストされたくない曲だな、これは・・・。

 おっと、まだ終わりじゃない。俺には次に晶子のバックを担当するという重大な任務がある。体力をかなり使ったがそれを表面に出さないのも、こういう場では重要なことだ。演奏者のへばった顔を見たら、客がしらけてしまう。
 晶子が俺の後ろをしなやかに歩いてステージ正面に立つ。今度はマイクスタンドにマイクを立てたまま、両手をそれに添えて歌う何時ものスタイルだ。晶子が俺の方を窺う。少し不安そうなのは、俺の額や頬を伝う大量の汗を見たからだろうか?
 確かに疲れはしたが、今はそんなこと言ってられない。それにこの曲はもう指が覚えている。軽い気分で晶子のヴォーカルとのセッションを楽しむことが出来るだろう。

雨上がりの午後 第378回

written by Moonstone

 俺のギターのトリルに潤子さんの音圧の強いフレーズが上から下へ、下から上へと鳴り響く。あの細い指の何所にこんなメリハリのある音を出す力があるのか分からない。

2000/12/22

[今になって何を言う]
 愛知万博のの開催が正式に承認されました。ところが今になって愛知万博が抱える問題、そしてこれからの問題を新聞は言い始めました。完全に他人事です。まあ、言える筈もありますまい。何と言っても政権は自民かその亜流でなければ駄目、一番大切なのは読者ではなく広告主の商業マスコミですからね。
 しかし、皮算用に等しい入場者数、巨額の投資と債券発行、待っているのは多額の借金とそれに比べればごく僅かな助成金の切り捨て。これほど問題が大きいのに万博推進を煽った無責任なマスコミはもう見限るべきでしょう。
 新聞はWebでも読めます。それで十分です。どうせ新聞は親の世代から読んでるものを引き継いでいるだけでしょうし、読むのは三面記事とテレビ欄くらいでしょう?テレビ欄はテレビガイドか何かで十分。良識ある市民になるにはまず旧来の権威に胡座をかく商業マスコミを見捨てるべきでしょう。ちなみに私はとっくの昔に見限っています。
 最後の一音を弦から解き放つと、大波のような拍手が起こる。この曲は最初の公開のときからマスターと潤子さんの受けも上々だったが、これだけ大勢の客を前にこういう拍手を受けるといい演奏が出来たんだな、という実感が湧いてくる。
 俺は一度安堵の溜息を吐くと早速次に備える。次は一番の問題と考えている潤子さんとの『EL TORO』だ。ぼんやりしていると大失敗をしかねない。潤子さんがステージに上がってピアノの前に座ると、俺の緊張感が一気に増す。俺のギターが始まりの旋律を奏でたとき、もう止められない自分との戦いが始まる。
 潤子さんの方をチラッと見ると、準備OKと言うように小さく頷く。もう後には退けない。退けるはずもない。この曲のギターを弾けるのは、此処では俺だけしか居ないんだから。俺は決意を固めてギターを爪弾く。

 ピアノの低音域主体のアルペジオに俺のギターを乗せる。此処までは順調だ。問題はもう少しして現れる駆け下りて行くフレーズの部分だ。音合わせの段階で潤子さんは完璧に仕上げていた。俺はまだ納得のいく出来じゃなかった。ぎりぎりになって晶子に良い評価を貰ったことが唯一の自信の拠り所だ。
 曲調が盛り上がってとうとう問題の部分が近付いてきた。まず此処をしっかり決めないことには・・・。指が緊張で固まり始める。ヤバイ。こうなると滑らかに滑り落ちるフレーズが階段を転げ落ちるようなものになっちまう。
 焦りかけたその時、晶子の言葉が脳裏に蘇ってくる。潤子さんのピアノを意識しないで、普段どおりにやれば良い。そうだ。俺は潤子さんのピアノのおまけじゃない。今はメロディを担っている楽器の演奏者なんだ。
 そう思うと再び指が柔らかさを取り戻す。もうそのフレーズの直前というところだが、ぎりぎりのところで間に合った。俺はフレットの上に指を滑らせながらフレーズを滑らかに駆け下ろしていく。キュッ、キュッというフレットノイズが思ったとおりのイメージでフレーズに混じって鳴り響く。成功だ。どうにか大きな山を越えた・・・。

雨上がりの午後 第377回

written by Moonstone

 今までの中で一番良い出来かもしれない。そう思うと自然と弦を操る指に静かな、しかし熱い感情が篭る。一音一音が自分の中で昇華していくのが分かる。それは音と心との静かな共振・・・。

2000/12/21

[上手く行かない日]
 火曜日に続いて水曜日も失敗だらけで、いい加減情けなくなってきました。そうすると出てくる胸の痛み。またぶり返してきたのかな・・・。せっかく落ち着いた状態になってきたのに。仕事に関係している以上、絶え間ないストレスとは縁が切れないようです。
 まあ、仕事で心身共に疲れた状態でこのコーナーの準備をするのも結構大変なんですが・・・これもストレスになってるのかな?義務感が入り始めるとストレスになるって言うし、ちょっと考えたほうがいいかもしれません。

 考えるといっても廃止するというのではなくて、もっと楽しくお話できるように・・・って、楽しいと思えることがなかったりするし(爆)。家と仕事場の往復の平日なんて特に。この単調な生活をどうにかするのが先決なようですね。仕事で波乱万丈というのは絶対に御免被りたいですが。
 エンディングを終えると大歓声と拍手が沸き起こる。指笛まで飛んで観客の興奮はピークに達したようだ。晶子がマスターにマイクを渡す。サックスの次は進行役。マスターもなかなか大変だ。

「皆さん、3曲連続でお送りしましたが如何でしたでしょうか?」
「最高ー!」
「凄く良かったぞー!」
「ご声援ありがとうございます。この店がこの地に構えて以来、年末の恒例行事となっていたこのコンサート、今年は音楽的センスに溢れる若い二人が加わったことで、更なる興奮と感動を皆さんにお届けできるようになったと思います。」

 マスターの言葉を受けて拍手や指笛が鳴る。俺はまだ脇役だけだが、大勢の前で誉められるというのには勿論悪い気はしない。

「ここからさらに色々な曲をお聞かせしていきます。まずはこれまで脇役に徹してくれていた安藤君のソロ曲『AZURE』、初めての組み合わせ、安藤君と潤子のペアによる『EL TORO』、そして今やこの店の定番となった安藤君と井上さんによる『FLY ME TO THE MOON』と続けて3曲、お聞きください。」

 とうとう俺のギターが前面に出る番がやってきた。嬉しい気持ちより緊張感、否、責任感の方が強い。ここまで上手く進んできたコンサートを俺の番で台無しにしたら元も子もない。俺はおまじないのようにチューニングを確認してから、静まり返った客席にギターの調(しらべ)を流し込む。
 ・・・いい感じだ。何時も以上にリラックスした指が弦を爪弾き、フレットを滑る。抑揚もテンポも問題ない。こんな大舞台なのに−高校時代のライブよりは小さいが−客席の様子を窺う余裕まである。

雨上がりの午後 第376回

written by Moonstone

 8小節分のヴォーカルが終わると、マスターが再び全面に出てきてサックスとヴォーカルのデュエットが始まる。客には相当珍しく映ったらしく、おおっと歓声が沸き、続いて手拍子がより大きくなる。こうして演奏する側と聞く側が一体になって楽しめる。これがコンサートの醍醐味だと改めて思う。

2000/12/20

[やっぱり寝ちまった・・・]
 仕事疲れたからね〜。次から次へと見つかるミスの連続(他人様に迷惑かけはしないが)。一日ではどうにもならないのとミスばっかりの自分が情けなくて、ぐったりした気分で帰宅しました。
 午前中は物凄く具合悪かったし・・・。さらにとうとう胸の痛みが再発してきました。午前中とこのお話をしているときの2回。そう言えば、胸の痛みを感じ始めたのが今年の3月下旬。それからもう9ヶ月も経つんですかい・・・。もういい加減治って欲しいです(切実)。

 考えてみれば、今年は、否、今年もろくな年じゃなかったです。仕事に追われっぱなしで、来年持ち越しの仕事を抱えて未練というか不安というか、嫌な気持ちを抱えて御用納め、となって・・・。はあ(溜息)。
 それに加えて今年は病院通いもプラス。こんなのプラスされても迷惑ですが、自分の心身がそうなってしまった以上仕方ありません。来年こそ良い年にしたいです。・・・本当にそう思います。
 俺は小さい溜息を吐くだけで何もしない。向かい側の客席から見えているかもしれないという懸念もあるし−一応ステージ分の陰になる部分があるが−、まだ肩を抱いたりする余裕が俺にはない。
 マスターの口がサックスから離れ、潤子さんのピアノがイントロを基本にしたアレンジのエンディングを静かに鳴らす。一瞬の間をおいて、客席から大きな拍手が飛ぶ。その演奏に聞き惚れて拍手をするのを忘れていたんだろうか。それだけのものをまだ持っていない俺と晶子は、ただ二人に感服するしかない。
 しかし、余韻に浸っている暇はない。次の曲は4人全員が揃う1回目の曲だ。俺と晶子は急いでステージに上り、所定の位置にスタンバイする。この曲は潤子さんの4小節のイントロから始まるから、耳をピアノの方に集中させる。
 いよいよイントロが始まった。俺は頭の中でリズムを刻みながらストロークを入れるタイミングを計る。4・・・3・・・2・・・1・・・今だ!

 潤子さんのピアノ、俺のギター、そして晶子のヴォーカルが同時に陽気なメロディを奏でる。しっとりしていた客席から再び手拍子が起こる。晶子の流暢な英語でのヴォーカルは、聞いていて全く違和感を感じない。一番最初のレパートリーになった『FLY TO THE MOON』も英語だったが、あの曲を練習しているときもリズムや音程は兎も角として発音は上手いな、と思ったものだ。
 一頻り晶子が歌うと、次はマスターが前に出てきてメロディをソプラノサックスで奏で始める。歌っているようなサックスの音色がジャズっぽい雰囲気に甘味をプラスする。あまり音合わせをしていないにもかかわらず、上手い具合に曲は進んでいく。コンサートだからこそ成せる「ノリ」の魔術だろうか。
 そしてマスターが一旦退いて晶子が再びヴォーカルを披露する。『ジングルベル』のときと同じかそれ以上にステージを動き回り、聞かせると同時に「見せて」くれる。歩くときに緩やかに舞う茶色がかった髪が、ライトを反射して煌く。その様についうっかりと見入ってしまう。

雨上がりの午後 第375回

written by Moonstone

 この二人、本当に息が合ってるよなぁ、と思って腕組みをしながら聞いていると、ふと左横に何かが触れるような感覚を感じる。見ると、晶子がさり気なく−本人はそのつもりだろう−俺の左横に密着している。

2000/12/19

ご来場者77000人突破です!(歓喜)

 ・・・嬉しいことですが、キリ番踏んだよー、とんおご報告が殆どないのがちょっと寂しいです。何も差し上げられませんが、トップページにお名前を掲載させていただきますので、キリ番踏んで気が向いたら是非ご一報を。

[何も出来ぬまま時は過ぎ行く]
 朝は勿論、夜にも相当の眠気が襲ってくるようになって久しい(でも連続2時間程度しか寝られない)今、このままでは何も出来ないと思い、帰宅後頑張ってPCの前に向かい続けました。そうしたら、9時半から11時にかけて来ました。座っているのも侭ならない凄い眠気が。その間当然何も出来ず。連載の方は先に出来ていたのですが、この日記の部分が1行も進みませんでした。
 そりゃその時間にベッドに潜ってりゃ寝て当然ですわな。その眠気をどうにかやり過ごしたので、この日記を終えてアップしたら、作品制作を開始するつもりです。しかし、朝をどうするかがまだ未解決なんですよね・・・。
 晶子が歌い始める。勿論英語の歌詞だ。透明感のある声が流暢な発音で会場に響く。自然と会場から手拍子が始まる。晶子はステージを彼方此方動き回って時々くるっと身を翻してみたりする。
 その度にスカートがふわりと舞って、どよめきか歓声か分からない音が会場から聞こえる。普段マイクの前から動かない晶子とは全然印象の違う、随分活発なステージだ。
 なるほど、晶子もそろそろ「見せる」ことを考え始めたということか。マイクの前で直立不動だと「聞かせる」ことは出来るが「見せる」ことは出来ない。コンサートでは「見せる」ことも大事なことだと前に晶子に言った覚えがあるが、それを覚えていたんだろうか?
 俺の短いエンディングで締めると、客席から拍手と共に歓声が噴出す。「井上さーん」なんて呼び声も聞こえる。晶子はぺこりと客席に一礼してゆっくりとステージ脇へ降りる。俺もストラップを通して身体をギターから外してそそくさとステージから降りる。

「二人とも、良いステージだったわよ。」

 通り道でピアノの横を通るとき、潤子さんが小声で言う。俺は笑みを返す。俺と晶子は一旦休み。次はマスターと潤子さんの息の合ったところが伝わると言って良い『WHEN I THINK OF YOU』だ。盛り上がった客席をまたしっとりとした気分にさせる選曲だ。
 それまでステージ脇に控えていたマスターがアルトサックスを持ってステージ正面に出る。マスターが楽器を持ってステージに立つと印象が全然違ってくる。かつてジャズバーを席巻したという風格が漂っているような気がする。
 曲の雰囲気を察したのか、客席の興奮が徐々に収まっていく。そして潤子さんのゆったりしたイントロが流れ、マスターがサックスを構える。抑揚豊かな甘いサックスの音色が会場いっぱいに広がる。目を閉じてじっと佇んで聞いている客も居る。カップルらしい二人は肩どころか頭を寄せ合って二人の世界に入って聞き入っているようだ。

雨上がりの午後 第374回

written by Moonstone

 晶子はマイクスタンドからマイクを取る。普段ならマイクに両手を乗せて歌うスタイルなんだが、どうしたんだろう?兎も角、俺は4小節分のイントロを始める。潤子さんが途中でピアノの音を散らしてくれる。ピアノの高音域を上手く使うとベルのように聞こえる。良い感じのイントロになった。

2000/12/18

[また寝てました(汗)]
 どうも体が動こうとしません。本当は「魂の降る里」の新作の制作とかその他やるべきことはあったんですけど・・・。何だか少し動くたびに疲れてそしてベッドに潜って寝る。この繰り返しでした。本当に体力がなくなったというか疲れやすくなっています。まだ、本調子には程遠いようです。
 で、深夜になると割と元気に動けるようになるんですよね。朝は滅茶苦茶弱いくせに・・・夜寝るとき以外はベッドに潜らないような習慣をつけるしかないですね(汗)。更新時間も前後して申し訳ないです(_ _)。

 来週はもうクリスマスイブなんですが、このページでは特に特別企画などをするつもりはありません。定期更新をして終わりです。去年はNovels Group 2で企画らしいものをやりましたが、あれは相当皮肉った内容ですので、記念企画とはいえませんね(笑)。背景もクリスマスとは縁遠いし、このページでクリスマス気分を味わおうなどとは思わないほうが賢明でしょう(笑)。
 手持ちの写真にもクリスマスらしい写真はないですし、クリスマスを題材に小説(SS含む)を書く気もないので、企画をする方が無理というものです。イベントを題材に描くのは難しいんですよ。私にとっては、ですけどね。
 メロディと低音域でのアルペジオが絡み合う、ゆったりした音が会場に響く。ライブ会場さながらの熱気に包まれていた客席が、徐々に落ち着きを取り戻していく。
 そしてメロディが和音になり、アルペジオも高音域を交えてクラシック調のアレンジが展開される。本当に潤子さんのピアノは有無を言わさない「上手さ」がある。一体何所でマスターと出会ってどうやって口説かれたのか気になるところだ。
 テンポがゆったりと前後して、揺り篭に入って優しく揺すられているような気分になる。客もそう感じているのか、身体を前後に不規則に揺らしている人がぽつぽつと見える。うっかりしていると立ったまま眠ってしまいそうになる。

 エンディングの一音一音小さく刻むような高音域のアルペジオの最後の音が消えると、それまで水を打ったように静まり返っていた客席から一斉に拍手が沸き起こる。歓声のない拍手は客が興奮より感動をより強く感じたからだろう。
 さすが潤子さん。早速立派な腕前を披露した上に客席を良い雰囲気にしてくれた。ライブ会場じゃないから客が興奮してばかりである必要はない。これから続くクリスマスソングに繋げるには、今が一番良い状態だ。
 マスターが素早くステージに上り、マイクをステージ正面中央に立てられたマイクスタンドに立てる。俺と晶子は続いてステージに上る。晶子はマイクを持つマスターの横に並ぶ。進行はマスターが行うから、それが終わってから位置交代ということになる。

「さて、しっとりと纏めた後は定番のクリスマスソングに、普段ステージで演奏している曲、そして本日初めてお聞かせする曲を交えて進めてまいります。まずは井上さんと安藤君による『ジングルベル』、私と潤子による『WHEN I THINK OF YOU』、そして初の4人同時演奏となる『メリークリスマス』、この3曲を続けてお聞きください。」

 とうとう最初のステージがやってきた。まあ、メインは晶子のヴォーカルだが。晶子は白いブラウスの上に黒いベストを着て、下は黒のフレアスカートという出で立ちだ。ちょっとコンサートでは地味な気がするが、4人全員こんなスタイルで統一しているから良いのか。

雨上がりの午後 第373回

written by Moonstone

 マスターが洒落た台詞を−別に台本などは持っていないのに−口にすると、潤子さんの両手が動き始める。4小節分聞き慣れないメロディが続くが、多分潤子さんがアレンジしたイントロだろう。

2000/12/17

[寝る子は育つ、というけれど]
 寝過ぎました(汗)。土曜日、昼頃買い物に出てそれから夕食を挟んで断続的に寝てました。本日のこのコーナーも寝起き直ぐに書いています。こんな状況ですので作品の更新はありません。元々更新しようにも直ぐに出来るネタがないし、連載はまだ執筆途中なのでほぼ不可能な状態だったのですが。
 昼の買い物(この後も寝てた)と夕食の準備でもう体力がなくなったようです。夕食は久々に魚を捌いて、刻み葱をたっぷり振りかけて生姜醤油でいただきました・・・ってその後殆ど寝てました。やっぱり体力の低下が激しいです。かと言ってこの週末に出来るだけ執筆しておかないと間に合わないので、日曜日は何とか寝ないで作品制作に打ち込むつもりです。

 連載は丁度クリスマスイブの夜に入りました。実際もう来週なんですよね。今年は手作りの料理に加えてケーキも自前で準備するつもりです。簡単に出来るセットものの段階ですけどね。
 俺と晶子もステージに向かおうとするが、人垣が固くてなかなか前に進めない。1コマ講義のときの満員電車を思わせる厄介な代物だ。

「すみません。演奏者が通りますので、道を開けていただけませんか?」

 潤子さんがステージから客に依頼する。客も俺と晶子に気付いて日と一人と折れるくらいの幅を確保してくれる。潤子さん、良いタイミングだ。俺は心の中で潤子さんに感謝する。
 どうにか俺と晶子もステージに上り、全員一列に並ぶ。マイクが潤子さんからマスターに渡り、マスターがマイクに向けて第一声を放つ。<BR>

「皆様こんばんは。ようこそ当店のコンサートへお越し下さいました。」

 マスターの第一声に客席が拍手と歓声で反応する。

「これまでは私と潤子の二人で細々と続けてきましたが、今年は一気に新しく二人、それも実力も相当な二人が加わり、よりバリエーション豊富なコンサートに出来ると思います。是非、ご鑑賞下さいますようよろしくお願いいたします。」

 一礼するマスターに倣って潤子さんと俺と晶子も一礼する。客席から再び拍手と歓声が沸き起こる。もう会場は暖房が要らないくらいの熱気を帯びている。薄手の服にしておいて良かったと思う。
 俺と晶子は予め決められたとおりにステージの脇に下りる。潤子さんがピアノの前に腰掛けて髪をさっとかきあげる。最初の曲は潤子さんのピアノソロによる「清しこの夜」。興奮収まらない客席を静めてクリスマスの雰囲気を醸し出すにはもってこいだ。

「それではまず最初は、聖夜をしっとりと彩る『清しこの夜』・・・。」

雨上がりの午後 第372回

written by Moonstone

 マスターがほっとした様子でドアを閉める。どうやら客はスペースぎりぎりのところで収まったらしい。それでも客はテーブル席、椅子席は満員で、立ち見客も残りのスペースを埋めるくらい居る。マスターはすみません、を連発しながら人垣を掻き分けてステージに上る。

2000/12/16

[悪夢の再来なるか?(なったら迷惑)]
 私を散々苦しめて今の病気になる大半の要因ともなった「もの」が、私のところへ帰ってきました。改良の為に。今までの経緯を辿ればずっと簡単な部類なので、多分それほど困ることはないと思いますが・・・不夜城を数え切れないほど体験する羽目になった「もの」だけに油断なりません。
 しかし、今年もその「もの」を手元にしたまま年越しになるとは・・・。まったく油断ならない世の中です(?)。目の焦点が合わせ辛い今の状態で、きちんとできるかな(やらなあかんのですが)・・・。ちょっと、否、かなり不安です(汗)。

 今週の日曜日の更新はどうしましょうかね。定期更新の谷間ですし書き溜めた作品もないのでその日(というかこのお話終わった頃から)何か思いついたら一気に書いて更新、というパターンですね。無理にはやりません。今はあまり精神状態が良くないので・・・。
 どうせ「魂の降る里」を更新するまでメールは来ないでしょうし、時間の流れに委ねてキーを叩くだけに留めておいた方が無難でしょう。・・・何と言うか、心の中のもやもや感が消えません(溜息)。
 実際、俺が優子と続いてて晶子が前みたいに付きまとっていたらどう対応してたんだろう?しつこい女だな、とは思っただろうが−現に最初の頃はストーカーかと思ったくらいだ−どんな関係になっていたんだろう?こうして同じ店でバイトをして時にパートナーとしてステージに上がる間柄になっていたんだろうか?
 その場合はもしかしたら、自然と晶子を受け入れていたかもしれない。俺には優子という彼女が居るんだし、あくまでも演奏のパートナーとして接していたと思う。俺には二人同時に付き合うなんて器用なことは出来ないし。
 どっちが俺にとって幸せなのか分からない。ただ、今俺がいる現実、優子と切れて晶子と付き合うようになった、その現実が幸せなことは感じる。それで・・・良いだろう。

 夕食も終わり、いよいよ開場の時間が近付いてきた。マスターと潤子さんも準備のときの服装からちょっとお洒落な服に着替えて、開場へ向けて緊張感と雰囲気が盛り上がる。
 俺と晶子はカウンターから客席に繋がるところに向かい合って並んで、客を迎え入れて客席へと誘導する。潤子さんがステージに立ってマイクで前の方から詰めるように案内する係だ。
 マスターが入り口のドアを開けて掛かっていたプレートを「OPNEING」に変える。そしてドアを開け放つと、どやどやと厚着のカップルや男性、それに混じって高校生らしいが入ってくる。まさか、開場前からこんなに並んでいたとは・・・。しかし驚いている暇はない。

「さあ、前の方から並んで座ってくださーい。」
「前の方が良く見えますよー。」
「席の数に限りがありますので、前の方から順番にお座りください。」

 客は素直に前のテーブル席から椅子席へと順番に座っていく。それにしても客は多い。テーブル席はもとより椅子席もどんどん埋まっていく。予想以上の観客数にドアの近くに居るマスターは客席の方と入ってくる客を交互に見て閉めるタイミングを窺う。幾らなんでもスペースには限りがある。先着順だからスペースが埋め尽くされたらそこまでだ。

雨上がりの午後 第371回

written by Moonstone

 俺も優子とまだ切れてなかったら、呼び寄せていたんだろうか・・・。隣の晶子をチラッと見てそんなことをふと考えたりする。優子はやきもち焼きではなかったし、男友達と彼氏とは分けて考えるほうだったから−俺にはそれがどうも納得いかなかったが−晶子との仲を疑ったりはしなかっただろう。

2000/12/15

[今日言っておきたいこと]

卑怯者!!

 ・・・リスナーの皆様には何のことか分からないと思いますが、分からなくて結構です。兎に角今日(14日)はこの一言が力いっぱい言いたかった。それだけです。こんな馬鹿の溢れる国はとっとと出て行きたいです。
 何だか、この4人が揃うと家族という感じがしてならない。飄々としているが押さえるところはきっちり押さえている親父−というにはちょっと若すぎるが−、気さくで朗らかで心強い相談相手になってくれる母親−わ、若すぎるか−そして子どもが俺と晶子。そんな感じがする。
 俺は高校時代にバンドをやっていたのは、ギターの腕を同じ中学出身の奴を通じてバンドのメンバーに知られたからだ。最初はバンド組んでやるなんて鬱陶しいとさえ思ったが、練習をしたりコンサートの曲順を決めたりしているうちに仲間意識が出来てきた。少なくともあの時、俺は独りじゃなかった・・・。
 俺があれほど突っぱねていながらも晶子のヴォーカルと音楽の指導を引き受けたのは、無意識に独りからの脱却をしたかったからかもしれない。そうでなかったら、あんなに熱心に教えたりしなかったかもしれない。

「はあい、お待たせ。出来上がったわよ。」

 潤子さんが湯気の立ち上るチンジャオロースを2皿ずつカウンターに出す。そしてサラダに中華スープ、そしてご飯と続いてカウンターに並ぶ。まるで魔法だ。
 調理師免許はマスターも潤子さんも持っているが、潤子さんは聞くまでもないような気がする。流石に俺や晶子が入るまで殆ど独りでキッチンを切り盛りしていただけのことはある。
 潤子さんもエプロンを外して、カウンターを出て自分の席に座る。4人揃ったところで一斉に、いただきます、と言って食べ始める。・・・本当に家族みたいだ。
 この夕食を終えたら「CLOSED」になっている店のドアにかかっているプレートを「OPENING」にして開場して、客を順に前の方から詰めていくように誘導する。何でも話に聞いたところでは、開場を並んで待っている客が年に4,5人は居るらしい。単なる喫茶店のコンサートとは思えない。やっぱり潤子さん目当ての男の客が多いんだろうか。あとはカップルくらい・・・かな。

雨上がりの午後 第370回

written by Moonstone

 普段は店の「昼休み」−14:00〜17:00となっている−にマスターと潤子さんが食べて、俺と潤子が18:00に店に入って食べるから夕食の時間がかち合うことはないが、今日と明日に限っては特別だ。

2000/12/14

[観てもみないで決める大人達]
 薬を仕事場に置き忘れたので、睡眠が連続できなくて大変な目に遭ってます。今は1回目の目覚めの状態です。更新、メールのお返事遅れてすみません(_ _)。
 ま、それは兎も角として・・・「バトルロワイヤル」に対して文相が業界団体に自粛徹底を要請(事実上は命令)を出しました。自由民主を名乗る党の代議士のくせに、文芸や映画といった芸術に対して何だかんだと規制をするのは、その作品を自分の目で確かめてないからでしょう。ま、もっとも観たところで理解できるとも思えませんし、党是そのものが自由民主とは程遠い党ですからね。
 トライガンのときは同じく民主を名乗る党の代議士が噛み付きましたし、この国の政党の名称は必ずしも政党の本質を指し示すものではないことがお分かりでしょうか?結局名前が示すとおり、彼も自由民主の名を抱く党の亜流に過ぎない、ということです(実際、元自民の代議士が半数居る)。

 彼らは表面だけを見て有害だとか青少年の健全な育成に悪影響を及ぼす、などと未成年の子どもを持つ親が喜ぶ文句を並べて規制するだけ。これでどんどん芸術の幅を狭め、良い子が観る作品ばかりが揃うことになります。
 槍玉に上がった二つの作品は、それぞれ暴力や殺人に至るまでの背景があるのです。その背景があるからこそ、その人物がいかにして暴力に走ったか、殺人を犯したかを知ることが出来るのです。それを代議士諸氏はお分かりでない。暴力や殺人シーンがある=有害という短絡的な見方しか出来ないような代議士など、国民を代表してこの国の文化や芸術を論じるに相応しくありません。まあ、野球=巨人、選挙=自民やその亜流のこの国では、自ら変えようとする大人は僅かでしょう。そういう教育を受けて忠実に実演してますしね。
「あれ?祐司君は高校時代にバンド組んでたんだろ?だったら大勢の観衆の目に晒されることなんて慣れっこだろう。それに人前に立つことは今日が初めてじゃないし。」
「高校時代はクラスの奴とか顔知ってる奴が少なからず居ましたからね。それに今回は珍しく見合わせのセッションがあるでしょ?それが上手くいくがどうか不安で・・・。」
「多少なりとも経験者の君がそんなに緊張してたら、井上さんはどうなるんだ。小さな店のささやかなイベントなんだから、気を大きく持ってだな・・・」
「あなた。それは無理よ。祐司君は殆ど出ずっぱりだし、厄介な曲も多いから・・・。」

 潤子さんが俺の気持ちを代弁してくれる。ぼやっとしてるとどれがどれだか分からなくなるくらい弦を引っ掻くから、不安にもなるというものだ。
 勿論、マスターの言うことも理解できる。井上は初めて単独のヴォーカルとして普段より多い客の目に晒される、それも多少なりとも好奇の目も混ざって。その不安は俺よりもずっと大きいかもしれない。

「マスター。ゆ・・・安藤さんはそんな脆い人じゃありません。私よりずっと多くの曲を練習して弾きこなしてるんですから。」

 晶子も続いてフォローを入れる。祐司さん、と呼びかけて寸前で安藤さんに替えたのは、まだ此処で関係が進展したと悟られたくないんだろうか。気遣いが嬉しい反面−何せどう突っ込まれるか分からない−、ちょっと残念な気もする。複雑な気持ちだ。

「さあ、夕食作るわね。しっかり食べてコンサートに備えてね。」

 潤子さんが明るい調子で言う。この弾んだ声を聞くと不安が一気に解消されていくような気がする。
 俺は残りの蜂蜜ミルクを飲み干してカウンターの前のほうへ置く。幾分気が楽になった俺は、両手に顎を乗せて潤子さんが夕食を作る様子を眺めることにする。4人分の夕食を用意するのは大変だろうが、重いフライパンを軽く煽って炒め物をする様には驚きすら感じる。

雨上がりの午後 第369回

written by Moonstone

「ん?どうした祐司君。落ち着かないみたいだな。」
「準備が終わってほっとしてるのもあるんですけど、やっぱりコンサート当日ですからね。何だか落ち着かなくて・・・。」

2000/12/13

ご来場者76000人突破です!(歓喜)

 ・・・早すぎ(汗)。某チェックページで更新情報が載ると、どかっといらっしゃるようです。全盛時より下火になったとはいえ、エヴァSSは健在ですね。

[オリジナルの可能性]
 只一つ4万以上のアクセスを誇るSide Story Group 1以外は開設時からまだ1万の大台に達したものはありません。創作系というのはやはりCG系でないとアクセスを獲得するのが難しいようです。特に連載ものに関しては。
 当然感想など来れば御の字なのですが、Novels Group 3がぽつぽつと感想をもらえて感激しています。現時点でChapter32まであるこの作品を読むのはさぞ大変だと思いますが、作品の基礎になるこの連載を続けていくことが何よりも肝心なことでしょう。出来れば文庫本サイズに纏めてみたいな、と思っています。何時か売る側に回りたいコミケの場で・・・。
 俺と晶子は極力マスターか潤子さんの指示を受けてから動くようにする。そうしないと出鱈目なことになってしまう可能性が大きいからだ。マスターや潤子さんは俺と晶子の問いに嫌な顔一つせずに指示を出してくれる。こうしてくれると手伝いの側としては楽だ。
 早回しにしたようにテーブルや椅子の配置が進んでいく。晶子も途中でセーターを脱ぐ。やっぱり暑くなったんだろう。暖房が控えめになっているのは作業で身体が熱くなることを想定してやっているんだろうが、それを通り越して身体が熱を持つようになるからだ。
 俺達が来て1時間ほどで全ての作業が完了する。いかにも気楽なコンサート会場という雰囲気だ。マスターと潤子さんが額の汗を拭う。

「やっぱり人手があると違うよ。圧倒的に早い。」
「そうですか?」
「そりゃそうよ。今まではこれだけの数のテーブルや椅子を二人で並べてたんだから。二人が一生懸命にやってくれて助かったわ。」
「指示どおりに動いただけですよ。」
「それが居ると居ないでは大違いだよ。去年までは更に2時間はかかってたからな。」
「2時間も・・・。」
「それだけ君達二人の存在が大きいってことだよ。さ、夕食には早いからちょっと休憩しよう。」
「蜂蜜ミルクを作ってあるから、それを飲みましょう。」

 俺達はカウンターの何時もの席に座って、潤子さん手製の蜂蜜ミルクを飲む。暖かいミルクと甘い蜂蜜が丁度良い具合に溶け合っている。飲む度に小さな溜息が漏れる。ステージが出来たという安堵の気持ちと、益々迫ってくるコンサートの緊張感がそうさせる。

雨上がりの午後 第368回

written by Moonstone

 マスターと潤子さんは、俺と晶子がバイトに入るまでずっとこの準備を二人でやっていたのか・・・。さぞ大変だっただろう。それでもこのコンサート毎年の恒例行事としてやってきたのは、マスターと潤子さんが如何に音楽とこの店が好きなのか、ということだろう。

2000/12/12

[一時はどうなるものかと・・・]
 帰宅して夕食後、何時もの2時間睡眠(「何時もの」にするなよ)を終えてこのコーナーの準備をしようとしたとき、急にしゃっくりが出てきて困りました。何せ気を抜くとマウスカーソルが変なところに飛んでしまったり、近くの違うキーを叩いたりして・・・。どうにか連載部分を書き上げるところで(先に連載部分を書いてます)止まりましたが、困りものですね、しゃっくりは。
 連載を書く時間ですからおよそ1時間。この間体が飛び跳ねるようなしゃっくりが出て胃は苦しいし、前述のとおりPCが満足に扱えなくて苦労しました。夕食のとき出なかったのが不幸中の幸いでした。多分食べるどころの話じゃなかったでしょう(笑)。

 どうなるか全く分からないのがアメリカの大統領選挙。もう完全に「世界のアメリカ」の面目を潰しましたね。200年以上も前の古いやり方をそのまま踏襲しているところと、双方が裁判で泥仕合を演じているのを、国民はどう見ているのでしょうか?
 私はどちらが勝っても日本に大した変化はないと思います。自国ではやらない住宅地での戦闘機訓練(マスコミは書かないが)、自国が不利になると圧力をちらつかせるやり方、基本的に政策に大差がないのだから変化はなくても当然でしょう。
 勿論このことは事前に店の入り口や窓、各テーブルといった目に付きやすい場所にチラシを置いて知らせているから、大きな混乱はないだろう。そう言えば、塾帰りの高校生が井上さんを見るぞ、とか息巻いてたな。今年は俺と晶子が加わるから、客はかなり増えるだろうとマスターは予測していた。
 俺もそう思う。晶子は中高生を中心に人気が高いし、潤子さんは言わずもかなだ。その二人のデュエットもあるから、相当の盛り上がりになるだろう。俺はさしずめ脇役ってところだな。
 俺は晶子と一緒に裏口から店に入る。一緒に行こうと昨日晶子から言われたからだ。店の方からがたがたと何かを動かす音がひっきりなしに聞こえて来る。もう会場の準備は始まっているようだ。俺と晶子はキッチンの方から店に出る。

「マスター、潤子さん。」
「おっ、来たか。早速だが机や椅子を動かすのを手伝ってくれ。」
「「はい。」」

 俺と晶子は声を揃えて応える。あまりにも声が揃いすぎていたので、晶子と顔を見合わせて小さく笑う。
 店の壁や窓には既にクリスマスのデコレーションが施されていて、マスターと潤子さんがシャツにジーンズというお揃いの格好で机や椅子を並べなおしている。席に座れるのは先着10数名ほどで、後は立ち見になるようだ。
 しかし、潤子さんのジーンズ姿って言うのは初めて見る。何時もは接客のことも考えて割と良い服を着ているが、こういうのも新鮮で目を見張る。ん亜害黒髪を後ろで編みこむ髪型も初めて見る。何だか本当に高校の文化祭みたいだ。
 俺はコートとマフラー、そしてセーターを脱いでカウンターにどかっと置いて作業に加わる。晶子もいそいそとコートとマフラーを脱いでカウンターに置く。セーターは脱がないようだ。そのうち暑くなって脱ぐことになるだろうが。
 マスターの指示で大きめの机だけを前に並べて、2、3人用の小さな机はステージの背景の裏に−実は物置になっている−持っていく。そして椅子は大きめのテーブルに5,6個ずつ並べ、残りは後ろに並べていく。結構な重労働だ。

雨上がりの午後 第367回

written by Moonstone

 いよいよクリスマスイブがやって来た。コンサートの初日、俺と晶子は会場準備の為に2時間ほど早めに店に入ってくれ、と昨日マスターから言われた。今日明日は開場までは閉店だ。入場料は取らないが、会場の都合なんかもあって19時に入場を締め切ることになっている。

2000/12/11

[平穏無事な日]
 先日2回更新しましたが、2回に分けた(分けなければならなかった)理由は、「魂の降る里」の執筆がこのコーナーの仕上げと重なって大幅に遅れたためです。流石に一日で仕上げるのは辛かったです(汗)。
 一応「魂の降る里」は月一回更新を目標にしていますので、濃いお茶を飲みながらキーボードを叩きました。・・・こまめに書いてればこうはならなかったでしょうけどね。何せ普段は帰宅してから寝て起きてこのコーナーを仕上げて更新するのが精一杯ですからね。体力なくなってます、はい。

 全ての作業が終わったのが確か午前3時半頃。それから薬を飲んで寝て、普段の休日に起きる時間よりも1時間ほど早く起きれました(「こんにちは」の時間帯ですけど)。まあ、前日12時間近くPCと格闘していましたから、それなりに疲れたんでしょうね。
 今回の更新では文芸関係のグループの2/3を更新しましたが、こうやって更新のタイミングが揃うのはなかなかないんですよね。音楽や美術関係もあわせてこのページが「生きている」ことを示していきたいです。さて、連載ものの書き溜めをしておきましょうか・・・。
 ふと練習の手を休めて椅子の背凭れに体重を預けて考える。俺は何時から晶子のことが好きになったんだろう・・・?気持ちを告げられてその返事を迫られたからか?それとも俺が熱を出して寝込んだとき、駆けつけてつきっきりで看病してくれたからか?どれもそうだと思えるし、どれもそれだけじゃないような気がする。
 もしかしたら、音楽のパートナーと教育係を引き受けた時点で、俺の中で好きだという気持ちが固い心の殻を破り始めていたのかもしれない。本当に毛嫌いする相手だったら頑として断っていた筈だ。
 好きだ、という気持ちは色々なシチュエーションで生まれるものだ。一目惚れも勿論そうだし、同じクラスやクラブで自然と気になる相手になったり、いきなり告白されて驚きと嬉しさで、などなど・・・。以前は3つ目だったが、今回はあえて言うなら2つ目か。同じ店のバイトをやってるし。
 今思うとやっぱり優子との関係が切れるのは仕方のないことだったのかもしれない。晶子と共有する時間と比べても優子と共有した時間は少ない。2つ目のパターンで出来たカップルが進学と同時に切れやすいのは、時間の共有が圧倒的に少なくなることで相手の印象や相手への想いが薄らいでいくからだと思う。
 ・・・だとすれば、同じバイトと音合わせという晶子との時間の共有が少なくなれば、必然的に今の関係は薄らいで、やがては切れる運命を辿るんだろうか?そんなことがないとは言い切れない。本当に・・・付き合ってくれと言って良かったんだろうか?
 何を今更。単なるバイト仲間のままで終わりたくなかったから、晶子の気持ちが俺から逸れるのが嫌だったから付き合ってくれ、と言ったんじゃないか。所詮俺は、また傷つくことが怖かったんだ。それを敢えて乗り越えることで、晶子との距離を自分から縮めたんじゃないか・・・。

「俺は・・・どうしてこうもあれこれ考えるんだろうな・・・。」

 心の呟きが微かに口から漏れる。時はもうすぐクリスマス。コンサート本番の日も近い・・・。

雨上がりの午後 第366回

written by Moonstone

 それからコンサート当日まで昼間は晶子と一緒に練習して、夜は例の曲のアレンジと練習に費やした。時計の針が一気に回転を早めたような感覚だ。でも、不思議と疲れは感じない。好きなことを好きな相手の為にやっているからだろうか?

2000/12/10

ご来場者75000人突破です!(歓喜)

 ・・・最近少しカウンタの伸びが早くなったような気がします。まあ、先週の更新でエヴァSSがあったからでしょうね。

[今日で1年分書きました]
 連載がとうとう1年分の365回を数えるに至りました。その割にはなかなか話が進まず、じれったい思いをされた方も居られるかもしれませんが、1周年に続いて新たな区切りを迎えることが出来て、ひと安心しています。
 しかし、まだ物語は構想の半分程度です。これから二人がずっと仲良く暮らしていけるのか、家にまで押しかけてきた前の彼女である優子や、飄々としていて実はまだ晶子を狙っていそうな智一との絡みなどなど・・・。繋がったばかりの二人の絆の行く末にご注目くださいませ。
 音となっては消えていく、耳でしか感じられないプレゼント。俺に出来るのはそれくらいのものだ。だからそれを残された時間でアレンジして晶子に聞いてもらう。それが俺が今出来る最大限のことだ。
 既に休みに入っている学部も多くてキャンパス内は閑散としている。そんな中続く俺と智一のいる電子工学科の嫌がらせのような補講も今日でどうにか終わる。週末までの時間は晶子に送る曲のアレンジと練習に費やすことが出来る。

「あーあ。結局今年は愛しい人とロマンチックな聖夜、というわけにはいかなかったな。」
「でも、ディナーには人を誘うんだろ?」
「女友達の中で一番仲の良い奴だけどさ、やっぱり好きな人とって言うのがないとなぁ・・・。」
「どうしてクリスマスに拘るんだろうな、日本人って。別にキリスト教でもないのに。」
「お前も分からん奴だな。日本のクリスマスは恋人達のためにあるようなもんだ。恋人がいない奴は独り者として物笑いの種になる。俺は層はなりたくないんだ。」
「じゃあ、好きでもない相手と過ごすのは何で?」
「仕方ねえだろ。狙ってた相手をお前に見事に取られちまったんだから。イブの夜を一人で迎えたくないんでね。」
「・・・好きでもない相手と一夜を過ごすなんて・・・。そんなこと出来るのか?」
「俺は出来るぜ。その世限りの関係ってのも悪くない。俺にとってはな。」

 何と言うか・・・女友達に不自由しない智一ならではの余裕の台詞だ。だが、その余裕が単に寂しさを紛らわせようとしているように感じるのは気のせいだろうか?

雨上がりの午後 第365回

written by Moonstone

 自分がマフラーを編んでいるところを想像するが、全く様にならない。それに編んでいるものも口で言わないと分からないし、言っても信じてもらえそうもない物体が出来そうな気がする。

2000/12/9

[煙が出てるぞ、焦げてるぞ(爆)]
 金曜日はやたら疲れて仕事を続ける気力がなかったので、早めに帰宅してベットへ直行(爆)。寝ること実に3時間。今更夕食、なんて気にはなれなかったので、チョコレートを齧っておしまい。その後胃の要求があって、焼き芋にチャレンジしようと思いました。
 材料:芋は前に貰ったものがまだ残ってるので準備はOK。水で洗ってラップに包んで電子レンジへ。焚き火が出来る環境は我が家にはないですし、暗闇の中、一人焚き火をしていたら警察屋さんのご厄介になる可能性もあるし(笑)。タイマーはうろ覚えで10分にセット。出来上がりを楽しみに待っていたら暫くして焦げ臭い匂いが部屋に充満し始め、部屋を見回すと煙で真っ白(爆)。慌ててレンジを止めて換気扇を回しつつ、レンジを開けると黒焦げになった焼き芋「らしいもの」が残ってました(汗)。
 失敗にめげずに芋をもう一つ用意して、今度はタイマーを5分にセット。出来上がりは表面がちょっとかさついているけど中まで十分柔らかくなってました♪この日記はその焼き芋を食べながらお話しています。
 そう言えば明日は定期更新。それなりに準備は出来てますけど、SSグループがぎりぎりかな・・・。今日はまた、PCの前に向かって必死に作ることになりそう(^^;)。
 智一は俺の思いなど他所に、両手をコートのポケットに突っ込んで飄々とした様子で歩いている。気持ちの切り替えが早いな・・・。切り替えが出来なくてその晩は荒れに荒れて、暫く極度の女嫌いになった俺とはえらい違いだ。

「でさあ祐司。クリスマスの予定はあるんか?」
「イブはないけど、クリスマスの夜にちょっとしたパーティーをするつもり。」
「お前、クリスマスと言えばやっぱりイブの夜だろ?それを別々に過ごす恋人同士なんてあるのか?」
「現にその片割れが此処に居るだろ。」
「うーん、その辺の妙な思考回路が、お前が女にもてない理由の一つじゃないか?」
「別にもてようと思わないから良い。」

 智一は首を捻る。クリスマスは12月25日。24日じゃない。何所か間違ってると思うのは俺くらいなもんだろうか?それとも24日も大切な日なんだろうか?どっちも正しそうで俺には何ともいえない。だが、俺の場合は店のパーティーが終わってから、晶子の家で二次会みたいにパーティーをする。それだけだ。

「あ、そう言えばお前、プレゼントは用意してあるのか?」

 智一からの次の問いに俺は急に何かを思い出したような気になる。そう言えばパーティーのことは頭に焼き付いているが、そこで晶子がケーキと紅茶を用意するということ意外、何も考えていない。
 ・・・あ、良いのか。俺はクリスマスまでに以前作った曲をアレンジして披露できるようにしておけば。というか、それが晶子との約束だったっけ・・・。

「お前どうしたんだ?表情くるくる変えて。」
「あ、ああ。プレゼントの件は大丈夫だって思い出してさ。」
「ふーん。お前もやるときはやるってことか。指輪かアクセサリーか?」
「いや、値段はない。自前で用意するやつだから。」
「何、お前マフラーでも編んで渡すつもりか?」
「んな馬鹿な。」

雨上がりの午後 第364回

written by Moonstone

 俺の胸には勝利や優越感は少しも沸いてこない。晶子を延々と待たせ、智一に成り行きを黙っていたばつの悪さくらいのものだ。こんなことならもっと早く晶子に好きだと言って、智一に交際を宣言するべきだった。

2000/12/8

[う〜、眠いぞ〜、疲れたぞ〜]
 昨日はやることが2つ同時にあって、しかもそれぞれの現場が遠くて何度も廊下を歩き、歓談の上り下りしました(汗)。良い運動になったと言われればそれまでですが、体力が相当低下している身には応えますよ、十分すぎるほど。
 夕食など作れる状態じゃなかったので外で食事を済ませて、家に帰ったら「布団つむり」になって熟睡。そのときは電話のコール音さえ気付かなかった暗いです。たまたま目を覚ましたときに電話が鳴ったから起きれたようなものです。電話がなかったら多分また寝てたでしょうね。となると・・・このページは更新できたんだろうか?(大汗)

 今日もまた同じように遠いところを行ったり着たりしなければなりません。何だか運動会みたいな気分(- -;)。眠いのは仕方ないにしても、朝きちんと起きられない(直ぐ「布団つむり」になろうとする)し、午前中は頭がはっきりしません。せめて朝くらい問題なく起きられれば良いんですがねぇ・・・。
 今飲んでいる薬は症状を大きく改善する引き換えにかなりの眠気が出てきます。それも他に同じような薬を数種類同時に飲んでるから、余計に眠くなる。早く薬がなくても大丈夫な身体になりたいです。
 位置関係や状況はちょっと違うが、俺も前によく似た経験をしたからな・・・。遠距離であまり会ったりしなくても気持ちは通じるって信じてたところに、相手が別に男を作って俺を切り捨てたんだから・・・。あの時俺は優子を恨んだのは勿論、その「身近な存在」とやらにもどうしようもない気持ちを覚えたものだ・・・。智一は・・・どうだろう?

「まあ、それなりに分かってはいたけどな。お前が気にならないかって聞いたらそうじゃないって言うし、晶子ちゃんに至っては、俺とのデート中にお前の様子を聞いて、寝込んでると分かるや飛んで帰ったからな。お前と晶子ちゃんが相手の方を向いてたから、俺が割り込む余地はとっくになかったのかもな。」
「・・・。」
「まあ、イブのディナー予約は別の女を誘えば良いからいいとして・・・何で昨日まで言わなかったんだよ。」
「何でと言われても・・・今までの友達感覚が良かったというか、恋人同士になるのが怖かったというか・・・。」
「なんて理屈だ。それでも待っててくれたなんて、ある意味お前、凄く運が良いぞ。分かるか?女は待つのが苦手な生き物なんだ。もっと待たせていたら、俺が誘ったときに俺のほうになびいたかもな。」

 智一の言葉で、昨日の晶子の言葉を思い出す。待ちに待って待ち侘びてたこと、もしこのまま言わなかったらどうなっていたか分からない・・・。智一の言うとおり、俺は本当に運が良かったのかもしれない。晶子が気長で一途で・・・。その運の良さをもう少しのところで逃してしまうところだったのかと思うと、あの時言って良かったと改めて思う。
 もしあの機会を逃していたら、俺と晶子は単なるバイト仲間で終わっていただろう。そして晶子は、もしかしたら智一の方に心を向けていたかもしれない。あの時は言葉に出すことの難しさと大切さを同時に味わった瞬間といって良いかもしれない。

雨上がりの午後 第363回

written by Moonstone

 智一がそう言って顔を手で覆って天を仰ぐ。してやられた、という様子だ。オーバーアクションに見えなくもないが、実際智一に恨まれても仕方ないだろう。

2000/12/7

[眠くて「布団つむり」になっちゃう(爆)]
 私は寒さが大の苦手としているのは昨日お話したとおりですが、それらは暖房ではなかなか解消されません。風呂に入るか布団に潜るかどちらかが極めて有効です(笑)。風呂は出るときが寒いのとこの時期湯冷めしやすいのが欠点ですが、布団は暫く潜っていれば程よい温もりが得られます。
 疲れいっぱいで帰って夕食を食べ終わることには、疲れがピークに達します(自炊派ですから)。そこで布団の誘惑に負けて布団に潜りこむと間違いなく2時間は寝られます。でも2時間以上寝るにはやはり睡眠薬が必要です。

 朝、意識がはっきりしてないときにも眠気が襲ってきて、さらに体が冷えているので布団に潜り込みやすくなります。これは極めて危険な行為で、ぐっすり30分は寝てしまって、目が覚めたときに飛び起きることになります(汗)。
 帰宅したときも寒いんですよね。暖房入ってないし。だから疲れているときは尚更「布団つむり」になってそのまま寝てしまうこともあります。体力の減少が顕著に出て辛いですね。巡回もあまり出来ないし・・・。毎日何かが更新されることが確実なページくらいしか今は巡回してません。このコーナーを仕上げた頃にはまた眠くなってるので(連載その場で書いてるし)、更新終わって巡回したら本格的に「布団つむり」になります(爆)。

「どうだ、お前も欲しいか?」
「いや、要らない。」
「あれ?仮にもお前の方を向いている晶子ちゃんの住所と電話番号を知っておくのは必要だと思うけどなぁ。」
「・・・いや、いい。」

 知らないも何も、電話番号はずっと前に交換し合ってるし、住所も言わずもかな、だ。今年のクリスマスは−イブは別として−晶子とささやかなパーティーをするって決まってるんだから。
 この一連のことを智一に言っておくべきだろうか?・・・言っておいた方が良いだろうな。優越感はないが、俺と晶子が気持ちを確かめ合い、距離を近づけあったことは事実なんだから。

「俺、とっくに知ってるから・・・。」
「知ってるって・・・。祐司、お前まさか?!」
「・・・ああ。正式に俺が付き合ってくれ、って言ったのは昨日だけどな。それより前に前に・・・井上から好きだって言われて、俺がずるずると先延ばしにしてきた、って感じ。」

 俺と智一の間に隙間風が吹き抜けたような気がする。智一は本当か、といいたげな表情で固まってるし、俺はばつの悪さを感じる。言ってみれば、俺は挑む準備を整えた智一の見えないところで、智一の標的と付き合いに合意したようなもんだからな・・・。ある意味、反則と言えなくもない。

「何だそりゃ?結局両想いだったってことで、お前が一言言うのを今の今まで怖がってきたってことか?」
「・・・そういうことになるかな。」
「何だ何だ!結局俺ってピエロみたいじゃねえかよー!それも晶子ちゃんの方から好きだって言ったんじゃ、俺が入る余地なんて何所にもねえ!」

雨上がりの午後 第362回

written by Moonstone

 智一はしてやったり、という表情でニヤニヤ笑っている。住所は兎も角、電話番号を知って豪華ディナーに誘い出すとか言ってたな。

2000/12/6

[兎に角眠い日]
 今、朝と晩に兎に角眠いのが問題です。朝はうっかりすれば二度寝で遅刻だし、晩は2時間くらい寝てしまうので更新準備が当然遅れます。でも、少なくとも夜は寝ないと何もする気力が起きません。
 病気を患う前は2時3時でも起きていたし、今みたいに夜2時間くらい寝たら夜明けを迎えることも可能だったんですが、今は1時半が限界ですね。薬を飲んでいるせいもありますが、それくらいに寝ないと朝起きれなくて大変なんです(汗)。

 外が急激に寒くなってきて頭と身体が冬眠状態になってるのか?寒さが大の苦手の私には、屋内と屋外の温度差が辛くて出来るだけなら外に出たくないです。外に出るにはコートとマフラーは必需品です。時々コートだけで自転車に乗っている人を見ますが、あれでよく寒くないな、と感心してしまいます。
 これから冬至までどんどん昼間が短くなって寒さも増してきます。早く春になって穏やかな日々になってもらいたいです。でも、寒いときに寒くないと大変なことも多いし、四季のある日本では我慢すべきことなんでしょうね。
 そういえば今日の優子の服装は、前に出くわしたときと同様の所謂リクルートスタイルってやつだったな。まだ就職活動は続いてるってことか・・・。それにしても、前と同様、近くに来たからついでに寄った、なんて感覚が俺には全く理解できない。女って恋人と友人の割り切りが出来るものなのか?それともただ俺が厳密すぎるほどの区切りをつけているだけなんだろうか?
 やがてお決まりのアナウンスが流れ、遠くの方から電車が近付いて来る。その姿を確認してから、俺は何時もの位置に立つ。少しして電車が減速しながらホームに滑り込んでくる。通勤ラッシュはとっくに過ぎたから結構空いてるな・・・。周囲にいる乗客を見回してもどうやら座れそうだ。たまには座って大学に行くのも悪くないな。
 何時もの駅に着いて無意識に肩をすぼめて歩いていると、後ろから肩をぽんと軽く叩かれる。こうやって挨拶する奴は決まっている。

「よっ、祐司。」
「智一・・・。」
「相変わらず暗い後姿だな。この時期そんなんだと寂しい一人者って思われるぜ。」
「大きなお世話だ。」

 別に思うなら思えば良い。どうせ俺の事情を知らないんだから見た目で勝手に推測するしかないんだから。それに今年は・・・本当に一人じゃない。昨日どうにか踏み出した一歩で、晶子と気持ちを近づけあうことが出来たんだから。

「そうそう、俺さ、晶子ちゃんの電話番号掴んだぜ。」
「?!どうやって?!」
「文学部の連れに頼んで名簿を貸して貰ったのさ。そしたらありましたよ。晶子ちゃんの住所と電話番号が。」

雨上がりの午後 第361回

written by Moonstone

 駅に着くと自転車置き場の適当なスペースに自転車を突っ込んで改札を通ってホームに向かう。時間的には多少余裕がある。あの女の声を振り払おうとペダルを力んで漕いだのが良かったんだろうか?

2000/12/5

ご来場者74000人突破です!(歓喜)

 ・・・此処まで伸びたのはやっぱりエヴァSSの力ですかね。「魂の降る里」のときはもっと凄い伸びですけど、ダークな話(それもゲンドウだし)はちょっと苦手かもしれませんね。でも、ゲンドウならああやっててもおかしくないと思います。個人的には。

[底をついた日]
 底をついたのは米びつでも冷蔵庫でもありません。ついでに金でもありません(もうまもなくですが)。連載の書き溜めです。今まで居眠りしたり気分が重いときに療養中やそれ以前に書き込んで溜めておいた分を使っていたんですが、昨日の段階でとうとう書き溜めがなくなりました(汗)。
 書き溜めをしようにも時間はかかるし、居眠りしてしまうし(これがいけないが寝ないと辛い)、これから1週間は厳しいやりくりをしなければならないようです。前の連休のときに少しでも書いておけば良かったと今更思います。
 本当は顔を見たくないんだが、ドアを開けないことには俺が出られない。仕方無しにドアを開けると・・・

「おはよう、祐司。」
「・・・何で・・・?!」

 ・・・優子が立っていた。俺はその場に立ち尽くす。まさかこんな時に押しかけてくるとは思わなかった。何で、何で優子が此処に・・・。

「近くに来たから寄ったの。この近くにある会社の面接を受けるからさ。」
「・・・俺は補講があるんでな。それじゃ。」

 俺は前に立っていた優子を押し退けるように外に出て、ドアの鍵を閉める。電車までそんなに余裕があるわけじゃない。なのに、こいつと暢気に世間話と洒落込むわけにはいかないし、そんなつもりも毛頭ない。
 大体こいつ、どうしてこうもあっけらかんとしていられるんだ?まるで恋人関係は終わったら友達関係になった、といわんばかりだ。冗談じゃない。お前はお前の方から俺との関係を切ったんじゃないか!それとも恋人じゃなくなっても友達になれるっていうつもりか?ふざけるな!!

「ちょっと祐司!折角着たのに何の挨拶もないわけ?」
「・・・今更何を言うことがあるっていうんだ。俺達は・・・終わったんだろ?」

 俺は自転車のチェーンロックを外すとさっさと自転車に乗り、優子を無視して走り出す。後ろで俺を呼ぶ声らしいものが聞こえるが、あの声で自分の名を呼ばれるのはもう嫌だ・・・。

雨上がりの午後 第360回

written by Moonstone

 身づくろいもちょいちょいと済ませてエアコンの電源を切ってさて行くか、というときになってインターホンがなる。相変わらず無駄に良く響くインターホンだな・・・。しかし、こんな時間に来る奴は、大抵何かの勧誘員だ。これから出掛けると言って振り切れば良いだろう。

2000/12/4

[疲れた一日だったなぁ〜]
 朝が弱い私は休日であることをいいことに惰眠を貪り(最近早く起きるのが辛いのもあるが)、暢気に空調の聞いた中でPCのキーボードを叩いていました。作りかけの作品をふと仕上げたくなり、暫くして完成。これで今度の定期更新は何とかなるでしょう(笑)。一度文芸関係揃い踏みを久々にやりたいんですが、それはどうなるか未定です。SSグループ2つが揃ってないからな・・・。
 それにしてもちょっとのことで疲れる体は困りものです。作品を仕上げて少しすると急に眠くなってきて、ちょっと横になるかと思ってベッドに潜ったのが運の尽き。CCさくらの殆どを見逃してしまいました(爆)。
 それでもまだ連続で長い間は寝られないですね。長くて最大5時間。まだ暫くは薬が手放せない日々が続くようです。ああ、出費がかさむなぁ・・・。

「私から言い出して何ですけど・・・無理はしないで下さいね。」
「まだ多少の無理はきくさ。今までも練習やアレンジとかで夜を明かすことなんて珍しくなかったし・・・。」

 実際、クリスマスコンサート用に揃えた曲のアレンジで結構夜更かしを連発したし、もともと夜には強い方だから無理なことじゃない。それよりも2年間封印してきたあの曲を晶子に聞いて欲しい。その時きっと、俺の中で思い出が昇華され、新しい思い出が生まれるだろう・・・。

星の輝きって、こんなに綺麗だったっけ・・・。

 翌日、まだ補講のある俺は朝の冷気を振り切ってどうにか起きる。身支度や食事と朝は何かと忙しい。朝が苦手な俺にはこのときが一番辛い。でも、今日の補講は2コマ目からだからまだましな方だ。1コマ目からだったら起きれたかどうかすら怪しい。
 ちゃんと効いて来る頃には出掛けなきゃならない時間になるだろうが、気休め程度に暖房のスイッチを入れて、食事を先に済ませる。それから着替えてみっともなくない程度の身づくろいを整えて大学に行く段取りだ。
 一先ず食事は済んだ。食パンのトーストに苺のジャム、そしてコーヒーというメニュー・・・というにはさもしい内容だ。今となっては泊り込みのときの潤子さん手製の食事が懐かしい。
 続いて手早く着替えを済ませる。一時とはいえ冷気に肌を多く晒すことになるからのんびり出来ない。積み重なった服から適当に選び出し、コートを持って準備完了。服が積み重なっているところからして晶子の家と違う。

雨上がりの午後 第359回

written by Moonstone

 こういうことが自然に出来るようになったのは、俺が晶子の方に一歩近付いた証拠なんだろうか?今までだったら硬直するのは勿論、自分から抱き寄せるなんてことは出来なかっただろう。

2000/12/3

[ふう、疲れたよ・・・。それじゃお茶でも一杯・・・。]
 今日は定期更新の谷間と言うことで何も更新しないつもりだったんですが、始めた連載「理想の恋人」Case 3の骨格が固まったので、これを逃したらまたやる気なしの穴に嵌る、と自分を叱咤しながら、夕食と多少の休憩(居眠り(爆))を含めて10時間。一気に書くことが出来ました(^^)。次は何時骨格が固まるか不安ではありますが(汗)、一仕事終えてほっとしています。読んだら感想下さい。楽しみにお待ちしております。
 さて、12月に入ったということで我が家ではポットの湯を常備し始め、作業や休憩のときに飲む飲み物も冷水や某スポーツ飲料からお茶と紅茶に切り替わりました。お茶や紅茶は疲れやすくてすぐ眠くなる今の私には丁度良い刺激物でしかも無害。特に濃く入れた緑茶を飲むと思わず溜息が出ますね(^^;)。何かおじさんみたいですけど、今日みたいに一気に仕上げたいものがあって眠気は大敵というときには打ってつけですね。
 更新されたこのページが皆さんの目に触れる頃には、私は何をしているでしょうか?少なくとも台所の掃除と溜まったアイロンかけがあるのは事実です(爆)。

「そのフレーズ、凄く素敵だったし・・・今日此処で気持ちを確かめ合った私達の思い出作り第1号にしたいから・・・。」
「じゃあ、クリスマスまでに弾き語り用にアレンジして下さいよ。」
「クリスマスまで、か・・・。」

 店のクリスマスコンサートの練習だけでも手一杯で、そこにもう一曲新たに一からアレンジするとなるとかなり大変だ。だけど・・・聞かせてやりたい、否、聞いて欲しい。だってあの曲は・・・晶子は聞いてなくても優子は聞いている。正直な話、優子との思い出になるように作った曲だから・・・。
 優子との思い出になるように作った曲を晶子に聞かせるのは、何となく詐欺のような気がしないでもない。でも、晶子に聞いてもらうことで、晶子との思い出が出来て優子への変な蟠りを捨てられるきっかけになるかもしれない。

「・・・まあ、何とかする。」
「本当ですか?」
「ああ。時間が少ないからちょっと様にならないかもしれないけどな。」
「そんなこと、気にしなくていいですよ。だって、どんなことだって思い出になるんですから。」

 晶子は俺との思い出を作りたがってる。やはり明らかになった俺の過去、優子とのことが気になるんだろうか?・・・多分そうだと思う。晶子のことだ。俺に多少の無理を承知で敢えて曲を聞かせるようにせがむのも、俺の過去を新しい思い出の雪で柔らかく包み込もうというつもりなんだろう。
 俺は晶子の左腕の上の方に手をかけて少し抱き寄せる。すると晶子が身体を寄せもう少し俺の方に寄せて、俺の背中にそっと手を回す。抱き合っている、とは言い難いが、晶子の温もりを間近に感じる。

雨上がりの午後 第358回

written by Moonstone

 晶子が顔を上げる。頬には涙の跡が生々しいが、その表情は眩しいほどに輝いている。

2000/12/2

[やっちゃったよ・・・]
 朝は勿論、昼間でも目眩はするわ、脱力感が酷いわで維持が難しい身体なのに、大幅に帰宅時間がずれ込んで、いつもネットに繋ぐ時間の30分弱でようやく帰宅しました。それからこのコーナーの準備ですからね。親が知ったら激怒するな、きっと(^^;)。でも、今日やるところまでやっておかないと、どんどん物事は先延ばしになっちゃいますからね。そうなると自分の首を締めるのと同じ(汗)。
 本当は明日、多少なりとも更新したいんですけどね〜。それまで体力と意識が持つかどうか・・・。意識は濃いお茶を飲んで何とか維持してますが、体力はなぁ・・・今日の残業で殆ど使い果たしたし・・・。やっぱり、週末だけで更新用に作品を揃えるのは厳しいですね。せめて体力さえ元に戻れば・・・。

 あ、今日の連載中で安藤君が口にする曲の一部、あれは架空のものです。実際作るとなると絶対間に合わないので、要望が多数寄せられれば作ってみることにします。目安は10。まあ、これまでの実績(?)からすれば不可能でしょう(笑)。

「・・・言って・・・くれましたね。」
「・・・何とか、な。」
「ちょっとずるい言い方でしたね、私・・・。言うのを急かすみたいで。」
「正直、そんな感じはした。」
「御免なさい・・・。」
「良いさ。言うのをずるずると先延ばしにしてきたのは俺だし。」

 俺は空を見上げる。晶子のマンションや他の家々の間から見える空には眩いばかりの星が無数に煌いている。星が祝福している・・・なんて俺には似合わないか。でも、今は不思議とそう思う。

「もし・・・俺が何も言わなかったら晶子はどうしてた?」
「今までどおりの付き合いだったかもしれない。でも、これから後で他の人に好きだって言われたら・・・分からない。祐司さんが今までずっと言わかったのは、気持ちが私の方を向いてないからだって思ったら・・・私を好きだって言ってくれた人の方に気持ちを向けてたかもしれない・・・。」
「・・・そうかもな。」
「何にしてもクリスマスまでは絶対待つつもりでした。TVとか雑誌とかでよくいってるのとはちょっと違いますけど・・・ああいう雰囲気に憧れがないわけじゃないから・・・。」
「聖夜の中、愛を告げ、その気持ちを抱きしめ合う・・・か。」
「?何ですか?それ。」
「俺、高校のときバンドやってただろ?そのときのクリスマスコンサートのときのために俺が書き下ろした曲の一部。高2のときだけだから1回しか客に披露したことないけどな。」
「・・・それ、私も聞きたい。」

雨上がりの午後 第357回

written by Moonstone

 晶子が一歩一歩俺に近付いて来る。暗がりの中で見えなかった晶子の瞳は涙で潤んでいる。両手を後ろに回して俺の胸に額をくっつける直前には、溢れた涙が頬を伝い始めていた。

2000/12/1

[居眠りのある生活]
 仕事から帰宅して食事の準備をして食べ終わる頃には、疲れが相当溜まっています。底に現れるベッドの誘惑(爆)。ふらふらとベッドに潜り込んで1〜2時間寝てようやく次のことが出来るようになります。でもまだ少し眠い・・・。
 今週は療養を終えて初めて5日連続で仕事に行くのですが、まだそれが可能な身体ではないようです。やっぱり家事をやってくれる人が欲しいですね。家事がなくなればそれだけで至れり尽せり。誰かやってくれないかな〜。

 で、連載の方は月が師走に変わった今日、とうとう安藤君が返事を口に出しました。今かまだかとじれったく思われたかもしれませんが。お互いに近付きあった二人のこれからを、ゆっくりと描いていこうと思います。返事を告げてそれで終わりじゃありませんので(笑)。

「・・・晶子!」
「は、はい?!」

 喉に嵌った蓋を吹き飛ばすように出た呼び声に、晶子は驚いて振り返る。俺は叫んだ勢いそのままに肩を上下させる。晶子は呼び止められた。後は俺が言うだけだ。ずっと先延ばしにしてきたあの言葉を・・・。

「・・・俺は・・・このとおりはっきりしない臆病な奴だ。まだ過去に振り回されている・・・。」
「・・・誰だって・・・同じですよ。」
「だけど・・・何時までもこの関係が続けられるなんて思わない。学年が上がればだんだんとバイトだけで繋がっている関係は薄くなっていく。それで晶子と離れて思い出に変わるのを待つなんて・・・嫌なんだ・・・。」
「・・・祐司さん。」
「今の関係は確かに心地良い。だけど・・・そのままで終わらせたくないんだ。だから・・・俺と・・・

付き合ってくれ・・・!」

 最後の言葉は晶子の耳にはっきり届くようにいった筈なのに、搾り出すような声しか出てこない。肝心なところで声にブレーキがかかったか・・・。はっきりというには程遠いが、どうにか言えた・・・。晶子は?
 晶子は左手の手袋を外したまま、俺と向かい合う形で立ち尽くしている。そして手袋を外した左手を口の前に持っていく。俺の言葉は届かなかったんだろうか?

雨上がりの午後 第356回

written by Moonstone

「・・・それじゃ、お休みなさい。」

 俺に背を向けて左手の手袋を外した晶子。まだ言葉が出てこない。もう此処で言葉を出さないと、晶子が・・・行ってしまう!

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