雨上がりの午後

Chapter 219 君が傍に居ない時間−その2−

written by Moonstone


 ギターやサックスが陳列された楽器店のウィンドウ前に来る。此処まで来れば安心だろう。この楽器店には高校時代から出入りしている。貸しスタジオも
所有しているから、バンドのライブか近づくと此処に来て練習したもんだ。

「あ!祐司じゃない!」

 先ほどまでの本屋より少ないとは言え人通りがそれなりにある場所で、いきなり名前を呼ばれたことに驚く。声の方を見ると、薄手のコートを羽織った、肩を少し
超える程度の長さの髪の女性が手を振りながら走り寄って来る。・・・宮城だ。今日は何なんだ?朝には晶子が居なくなるし、本屋に来たら田中さんに惑わされるし、
逃げてきたと思ったら宮城に出くわして・・・。

「何よお。久しぶりの再会なのに、そんな嫌そうな顔しなくても良いでしょう?」
「そんなに嫌そうな顔してたか?」
「凄く。」

 宮城は迷わず断じる。・・・そうだろうな。今日はとことんついてない。家で寝てた方が良かった。

「井上さんは?」
「!・・・ちょっと、な。」
「ははぁ。何かあったわね。」

 言葉を濁したつもりだが、宮城は何か察したのか怖い笑みを浮かべる。そう言えば、宮城も結構色恋沙汰の話が好きだったな。誰と誰がくっつきそうだとか、
俺との話の中でも言ってた憶えがある。

「俺に構ってる暇あるのか?」
「今はお昼ご飯時だし、単独行動の許可は得てるからご安心を。で?何があったわけ?」
「・・・言わない。」
「まあまあ、そう硬いこと言わない。ひととおり話を聞きましょうか。女関係の悩みなら、女の見解を聞いておいて損はないわよ。」

 言い終わる前に、宮城は俺の腕を掴んで引っ張り始める。つんのめってこけそうになるが、どうにか堪える。宮城の奴、社会人になってから行動がいっそう積極的、
行動的になったな。確か就職先が芸能プロダクションだったな。これくらいじゃないとやっていけないんだろうか。
 宮城に連行された先は、割と大通りに近い洒落た感じの喫茶店。白を基調にした洋風の椅子やテーブルはバイト先の店で見慣れているが、バイトに行くのは夕方から
夜だから、昼間だと新鮮に見える一方、結構混み合っている店内は男女のペアか女性複数だから、どうも居心地が悪い。
さっさと従業員を呼んでホットコーヒーを注文した宮城−俺はホットレモンティーを頼んだ−は、興味津々といった顔で俺にしつこく尋ねる。言わないと解放しない雰囲気が
嫌でも感じられたから、仕方なしに俺は経緯を話す。最初は概要だけ話したが、もう少し詳しく、とかその前の事情は、とか根掘り葉掘り聞いてきた。
話を進めるにつれて興味が先行していた宮城の顔が真剣になっていったから、反応するように話した。

「−うんうん。事情は分かった。」

 どうやら質問攻めは終わったらしい。話し疲れた俺は、話の途中で運ばれてきたレモンティーを啜る。冷めているのもあるし、味そのものが薄い。
宮城もコーヒーを少し飲んで、小さい溜息を吐いてから改めて俺に向き直る。顔はいたって真剣だ。どうやら冷やかしじゃないらしい。

「一言で言うなら、今の井上さんはやきもち妬いてるってとこね。」
「やきもち・・・?」
「そうそう。」
「やきもち、って言っても度が過ぎないか?」
「今までのことや今日祐司から聞いた話からすると、そうなっても不思議じゃないと思う。」

 宮城は言い切るが、それにしては度が過ぎるように思えてならない。口を利かなくなるとか怒るとか、そういうのなら思いつく。俺自身がそうだし。
けど、前夜に激しく求めて途中と終わりに何時もどおりに愛情の確認をしておいて、朝になったら荷物を纏めて出て行くなんてありえるんだろうか?

「井上さんって相当独占欲が強いと思う。祐司も強い方だと思うけど、井上さんはそれ以上ね。」
「晶子が独占欲が強いとは思う。俺以上か?」
「うん。祐司を何から何まで自分のものにしないと気が済まないってくらい。何処かのCMじゃないけど朝起きてから寝るまで、ううん、寝てる最中もずっとね。四六時中って
言い方も出来るけど。」
「うーん・・・。そんな感じはする。」
「だって、付き合い始めて最初の誕生日プレゼントを左手薬指に填めてくれって譲らなかったんでしょ?幾ら好きだからって普通そこまでしないわよ。祐司だって
左手薬指に指輪填める意味知ってるでしょ?」
「ああ。それくらいは。」
「あたしに祐司が見せつけた時点で、付き合い始めてどのくらい経ってたのかは知らないけど、祐司があたしと別れた後だから1年は経ってない筈。なのにいきなり
指輪を左手薬指にって、普通ありえないわよ。指輪だと分かった時点で填めるよう譲らなかったっていうんだから、尚更ね。」

 改めて考えると、晶子はあの時積極的を通り越して大胆とも無謀とも言えることをしたと思う。頭が沸騰しながらそれに応じた俺も俺だが、晶子のあの強情とも言える
強請りは、俺のを上回る独占欲の表れだと考えれば納得がいく。宮城はコーヒーを1口飲んで小さい溜息を吐く。

「祐司と付き合ってた経験から言うけどさ・・・。祐司って凄く誠実で真っ直ぐだと思う。」
「・・・。」
「それは祐司の魅力でもあったし、重くも感じた。祐司があたしを一生懸命好きで居てくれるのは凄く嬉しかったけど、その想いに応えないといけないと思うと、正直
重かった。祐司が新京大学に進学して1人暮らしになったことで遠距離恋愛になってから、祐司の想いが嬉しいって気持ちより重いって感じる方が強くなっていった。
その時あたしは同じバイトの男の人と仲良くなって、言い方悪いのを承知で言うけど・・・気が楽になった。その分余計に祐司の気持ちが重く感じてね・・・。」
「・・・愛されるのが嫌だった、ってことか。」
「嫌とまではいかない。重かった。あたしには応えきれなかったから・・・。」
「だから、別の男と付き合いを深めたってわけか。」
「・・・うん。」

 想われることが嬉しいより重い、か・・・。当時を振り返ると今でもちょっとふつふつと湧き上がる部分があるが、想われる側の率直な心境は当時の状況と重ね合わせると
それなりに納得出来る。愛されることが辛いと思えることもあるんだな・・・。

「・・・井上さんの話に戻しても良い?」
「ん?ああ。」
「井上さんは、あたしを振り切ったことで完全に祐司を独占出来るようになった。左手薬指に指輪を填めて填めさせて、周囲に結婚を公言して、祐司の追認を受けて、
祐司の両親に紹介されて歓迎もされた。そこまでは井上さんの予定どおりだった。だけど、その・・・田中さんだったっけ。その女性(ひと)が台頭してきたことで、井上さんが
思い描いていた予想どおりには進まなくなった。田中さんでなくても、祐司に対して別の女性が台頭してくること自体が井上さんの予想外のことだったから。」

 宮城の言うことは、マスターと田中さんが言っていたことと重複する部分が多い。晶子の気持ちに俺が応える形で俺と晶子の関係は進んできた。今まで順風満帆だった
ところに田中さんが目立ってきて、募った危機感が許容量を突破して、逃げ出した。夜を挟んでの晶子の豹変ぶりは、今のところそう考える以外にない。

「ホントに井上さんにとっては想定外だったと思うよ。自分以外に祐司に好意以上の感情を持つ女性が現れるってことはさ。」
「だろうな。俺は、俺との仲を見せ付けられたことに対する、知能的な嫌がらせだと思ってたけど。」
「さっきの裏返しになるけど、祐司が凄く真面目で誠実ってことは、祐司の愛情を独占したいと思う女性には最高の安心感を生むと思う。浮気することは100%と言って
良いくらいありえないことだから。それはあたしも付き合ってた時に思ったし、自分が独占出来る愛情にひたすら応える、尽くすって言っても良いかな。それが楽しくて
幸せに思える女性にはどんなプレゼントや豪華なディナーとかでも適わないものだと思う。自分が間違いを犯さないように注意してれば良いんだからね。」
「・・・。」
「井上さんが押しかけ女房するようになったのも、田中さんが台頭してきたことで生じた警戒感が独占欲を高めた結果だと思う。家が別だと自分が不安だから、祐司の家で
一緒に暮らせば良い。場所は祐司の家じゃなくても良かった。祐司と寝起きも共にすれば完全に祐司を独占出来る、これで安心出来る。井上さんはそう思ったんだと思う。」
「それが、田中さんが尚も台頭し続けたことで晶子はそれ以上の対策が思いつかなくて逃げ出した、ってところか。」
「だと思う。」

 分かったような、分からないような複雑な気分だ。理屈ではそれなりに分かる。宮城の指摘どおり俺も独占欲が強い方だから、自分と晶子の立場を置き換えてみると
大体の想像は出来る。だけど、俺の場合怒ることはあっても逃げ出すことはない・・・ということもないか。話し込んでいるところに割り込んで引っ張り出したってことも
宮城と付き合ってる時にあったからな。
 だけど、今回の晶子の行動は俺の想像の範疇を超えてる。俺の場合、宮城と遠距離恋愛になって破局した。晶子の場合、俺と一緒に住むことで俺を独占出来ることが
確定してるんだから、逃げる必然性はないように思う。晶子の独占欲が俺より強くて、俺の想像が及ばない領域にあるからだろうか?

「祐司、携帯持ってる?」
「ん?ああ。」

 いきなり話題が携帯に飛んで一瞬戸惑ったが、シャツの胸ポケットから携帯を取り出す。晶子とお揃いの機種とストラップがついたそれは、晶子から何時電話やメールが
来ても良いように今も持っている。

「ふーん。PAC910ASか。割と最近じゃない?買ったのって。」
「去年の秋だ。」
「確か、成人式の時持ってなかったよね。とうとう祐司も世間の大勢に乗ったか。」
「それほど大袈裟なもんじゃないだろ。」
「携帯持ってて当たり前のこのご時世に、必要がないからって理由があっても持たないのは珍しいよ。」

 やっぱり今時携帯を持ってないのって珍しいのか。去年の秋買ったこの携帯を見た大学の人とかが、一様に物珍しげな顔をしていた。吉弘さんの一件がなかったら
携帯を買わなかっただろうし、買った今でもほぼ晶子との連絡手段専用になってるから、買わなかった場合も想像出来る。

「井上さんとお揃いのを買ったついでにファミリープランで契約した、って話なわけね。」
「そんな話してない筈だが。」
「言わなくても分かるよ。この携帯扱ってる携帯の会社、柔軟なファミリープランで有名だから。」

 年末年始の旅行でもメンツが言い当てたから、この会社のファミリープランは相当有名なようだ。確かに、結婚してなくても後で戸籍謄本の写しとかを提出すれば良いし、
引き落としの口座が別でも良いし変更も無料。自由度はかなり高い。

「携帯にメール送っておいたら?」
「メール、か。」
「メールなら今読まないと消えちゃうってこともないし、後でも読めるし。」
「何書いたら良いんだ?」
「事実上夫婦の関係なんだから、『愛してるよ』とかラブラブの内容でも良いじゃない。大学とかでそういうやり取りしてるんでしょ?」
「・・・いや・・・。今どうしてるかとか、今から迎えに行くとか、そんなのだ。」
「あ、照れてる照れてる。」

 宮城に突付かれて顔が火照るのを感じながら、俺は携帯を操作して晶子宛のメールを新規作成する。何て書こうか・・・。普段の連絡メールじゃない内容のメールって、
どんなものが良いか・・・。

「そんなに深く考えないでさ。思ってること書いちゃえば良いのよ。さっき言ったでしょ?『愛してるよ』とかでも良いし、『布団は温めておくよ』ってのも良いんじゃない?」
「おい、それって。」
「事実でしょ?一緒に住んでて双方大学生なら、することしてても全然おかしくないし。」

 宮城の指摘にあえて答えず−答えろという宮城の突っ込みはひたすら無視−、考え考えしてメールを作っていく。とは言え、決してスムーズには進まない。大学で送る
テンプレートのような文面でもそれなりに時間がかかるのに、いざ好きなように書けと言われてもなぁ・・・。

送信元:安藤祐司(Yuhji Andoh)
題名:読んでくれることを期待して
晶子がこれを読んでいるのは何時なのか、晶子が何処に居るのかは分からない。今日携帯に電話をかけても電源が切れているっていうメッセージが流れたから、電源を入れてこのメールを読んでくれることを期待して、どんな文面にしようか色々考えながらこのメールを書いている。
今朝目が覚めて隣を見ても、台所を見ても晶子が居なくて、目を疑った。家の中を全部探して居ないと知って、急いで晶子のマンションと渡辺夫妻の家を訪ねた。渡辺夫妻の家に居ることと、晶子が少し居させてほしいと言ったことと、昨日終わってからずっと寝ないで俺を見ていて、俺の分の朝飯を作ってから俺の家を出たっていう経緯を聞いた。
晶子は今どうして良いか分からないで居る、と俺が話を聞いた人が共通して言っている。俺もそういう話を聞いた最初の頃は、晶子がどうして俺の家を出たのか分からなくて、どうしたら良いか分からなかった。話を聞いているうちに、渡辺夫妻が言っていたように、ここは俺が待つべき時かとある意味腹が据わってきた。このメールも、そんな心境で書いている。
一昨年の年末年始に俺が帰省した時、晶子は1人だったよな。あの時はまだ携帯を持ってなかったから、1日1度の電話でしか話が出来なかった。その時の晶子の心境はこんな感じだったのか、とか思っている。俺の携帯は電源を入れておく。晶子が何時電話をかけてきたりメールを送ってきても良いように。

 こんな長文メールを書いたのは初めてのような気がする。兎も角、送信。メール送信完了の画面を見て携帯を閉じる。送るには送った。あとは文面どおり晶子が読んで
くれることを期待するしかない。今までは送って程なく返信が来るのが当たり前だったから、読んでいるかどうかも分からない今の状況は心落ち着かない。直ぐ連絡が
取れるっていうのが携帯の利点の筈だが、持っていてもそうならないのがもどかしい。

「とりあえず、待ってあげたら?直ぐに結論出さずにさ。祐司が心変わりしないって確認出来たら戻って来るよ。」

 宮城は少ししんみりした口調で言う。晶子が戻ってくる・・・。俺が今信じてる、信じたいことだ。

「祐司にはまったく身に覚えがないことだし、その気もないんだから、それを続けてれば井上さんは祐司を独占出来てるって確認して、戻ってくるよ。今の井上さんは
田中さん対策が思いつかないで居るんだから、最高で最後の対策、祐司が田中さんの台頭にもかかわらず浮気しないってことが見い出せたら、井上さんは安心して
戻ってくる。あたしはそう思う。」
「・・・。」
「今まで割と順調に祐司独占計画を進行出来ていた井上さんにとっては、今が正念場ね。祐司が浮気するなんてまずありえないんだから、さっさと祐司のところに
帰った方が祐司を取られないためにも良いと思うけど、本人は居ないし、待つ側の祐司に言っても仕方ないけど。」
「俺には待つ他ないって話は、バイト先のマスターと奥さんからも聞いた。やっぱり、それ以外ないか・・・。無理矢理連れ戻すなんて出来ないし。」
「無理に連れ戻そうとしたら警察沙汰になりかねない世の中だし、仮にそう出来たとしても、今の井上さんだと直ぐにまた逃げ出す。堂々巡りだし、事態を悪化
させかねないから止めといた方が良いよ。」

 自分にそんなつもりはないが、相手や周囲にはそう見えてしまうことは結構ある。晶子を無理矢理連れ戻すつもりはないが、そうしたら宮城の言うとおりの事態になるのは
俺とて予想出来る。でも、待つことしか出来ない今の状況がもどかしいことには違いない。打開策として思いつくのが強硬手段しかないから、この剣についてはこれ以上
考えないようにしよう。

「話変わって原因の田中さんだけどさ。井上さんの予感は当たってると思う。」
「当たってる・・・か?」
「うん。祐司から話を聞いて間接的に状況を把握したあたしでもそう思ったから、井上さんは尚更だと思う。」

 宮城はコーヒーを啜って一呼吸置く。

「さっきの話とも関連するけど、祐司が凄く誠実で真っ直ぐってことは、祐司の気持ちを独占したいと思う女にはお金やディナーじゃ及ばない最高の条件になりうる。
祐司と付き合うにあたっては、自分が間違いを犯さないように注意してさえいれば良いんだからね。新京大の教授に一目置かれるほど頭脳明晰なんだから、男を見るにも
ルックスが良いからとか分かりやすい条件を選択用件にしないで、付き合い始めてから安心感を得られるかとか、相手の愛情を独占出来るかとか、常に先を読んでると思う。
そういう先読みからすると、自分から言い寄ってくる男は警戒感や拒否感を生んでも、好感を生むことはないと思う。でも、自分に言い寄ってくるのはそういう男ばっかりで
辟易してた。」
「・・・。」
「そんな時、同じゼミの後輩でもある井上さんが自分の夫と公言してる祐司を知った。井上さんのある意味暴走気味の気持ちにしっかり応えて、本業の学業でも指折りの
成績を収めてる祐司は、凄く新鮮に映ったと思う。新鮮な分、好感が一挙に高まった。『好き』っていうレベルにね。」
「『好き』と匂わせることは確かに言ったけど、本当にそうかどうか、いまいち確証が持てないんだよな・・・。」
「田中さんは頭が良いから、言い回しも直球ストレートじゃなくて頭脳的なものになってるのよ。祐司にじりじりと迫って陥落させるつもりなんじゃないかな。」
「陥落って・・・、俺が晶子を見限って田中さんと付き合うことにするって意味か?」
「はっきり言えばそうよ。直球で『好き』って言うだけじゃ、井上さん一筋の今の祐司は落とせない。それより頭脳戦で祐司に迫って陥落させる方が、田中さんにとっても
やりやすいと思う。勿論、必要なら直球も交えてね。それも、強烈なのを。」
「何だよ、それ。」
「例えば・・・、祐司が抱きたいから脱げって言えば迷わず脱ぐ、とか。」

 聞いた瞬間は驚愕したが、直ぐ冷静になってその可能性はあるように思う−これ自身結構怖い−。
うろ覚えだがさっき会った時にも一緒に暮らすことを想定している感じがしたし、晶子から聞いた話でも一緒に暮らすことに言及した部分があったように思う。
晶子と同様、相手の気持ちどころか全てを独占したいタイプだとすれば、宮城が言うように俺が脱げと言ったら脱ぐことはありうる。言うつもりはないが、言わせるよう
仕向けるトラップを仕込んで誘導してくる可能性もある。
 それにしても、何で俺に照準を合わせたんだ?一言で言うなら「可愛い」より「綺麗」な田中さんの容姿は間違いなく良い方に入る。智一の従妹でもあり大学のミスコンを
2連覇した吉弘さんも脅威に思ったくらいだし、それ相応のものがある。頭の回転も流石だと思わせるものだ。他を見ればもっと良い男は居ると思うんだが。

「祐司は今のままで居れば良いよ。それが一番難しいことでもあるんだけど、祐司になら出来ると思うし、井上さんもそれを一番望んでる。」
「・・・そうだな。」
「頑張って結婚まで行ってよね。本田君達も井上さんのウェディングドレス姿を心待ちにしてるんだし。」

 耕次達が出たことには驚かない。耕次達は俺よりずっと早くに携帯を持ってるし、宮城とも何らかの形で今でも連絡を取っているだろう。その中で俺と晶子の話題が
出ていても何ら不思議じゃないし、耕次達が晶子のウェディングドレス姿を渇望していることも知っているだろう。晶子も望んでいる舞台に行き着くまでには、この状況を
乗り切らなきゃ始まらない。腰を据えて待とう。晶子が戻ってくるまで・・・。

 バイトの時間がやって来た。俺は薄手のコートを羽織って家を出る。小宮栄からは宮城と別れてから直ぐ帰った。宮城は「結婚式楽しみにしてるよ」と別れ際に言った。
俺のことはすっかり吹っ切ったようで、晶子のことに専念出来るのはありがたい。ああいう気持ちの切り替え方は見習わないといけないところだと思う。
俺の携帯には今のところ晶子からのメールや電話はない。俺が送信したメールを読んだかどうかも分からないし、帰宅してからもう一度電話をかけたが、電源が切られて
いるか電波が届かないところに居るというメッセージが空しく流れるだけだった。宮城のアドバイスもあったが、晶子から何時電話やメールが入っても良いように、携帯は
しっかり持っている。勿論電源も入れてある。
 1人店への道を歩いていく。1人がこんなに寂しいと思ったことはない。明かりが灯った窓から見える店内は、今日も混雑しているようだ。少し期待しながらドアを開ける。
カランカランとカウベルが鳴る。直ぐ見えるカウンターに晶子は・・・居ない。キッチンにも居ない。期待したのを空しく感じながらカウンターに向かう。

「祐司君、こんばんは。」
「こんばんは・・・。」

 俺が言いたいことを察したのか、キッチンに居た潤子さんは小さく首を横に振る。晶子はやっぱり店に出ていないのか・・・。
晶子が居なくなることを店も客も事前に察知している筈がないから、注文が1箇所に集中するキッチンはとんでもない忙しさになるだろう。俺も皿洗い程度しか出来ないが、
応援のためにキッチンに入る必要があるだろう。兎も角、腹ごしらえしないとな・・・。

「晶子ちゃんは昼過ぎ起きて、今日のバイトはどうするか聞いたんだけど、お休みしたいって。」
「ですよね・・・。今も2階に?」
「ええ。私とマスターの夕食を作ってもらって、その時に晶子ちゃんも済ませて、2階に戻ったわ。だから、晶子ちゃんは家から1歩も出てない。」
「昼過ぎに携帯にメールを送ったんですけど、後で電話をかけても電源が切れているか電波が届かないところに居るかってメッセージでしたから、多分読んでませんね・・・。」
「携帯があるから何時でも何処でも連絡が取れる筈なのに、そうならないんだもんね・・・。」

 潤子さんは暗い表情で溜息を吐く。晶子への対応で困り果てているようだ。そりゃそうだよな。マスターと潤子さんはいきなり晶子が訪ねて来て、更に居させて欲しいと
言われたんだから余計に困るだろう。とんだとばっちりだが、不満や愚痴をこぼさないのは大人と言うべきか。
 俺は出された夕食を1人で食べる。このカウンターで1人夕食を食べるのは、3年前まではごく当たり前だった。その「当たり前」が、晶子が隣に居ることに置き換わっていた。
ここにも変遷に順応していた片鱗がある。「当たり前」と化したものが急になくなってた今、違和感や寂しさといったものを強く感じる。

「おう、祐司君。来てくれたか。」
「あ、こんばんは。」

 マスターが駆け足でキッチンに戻ってくる。晶子が居ないからキッチンは潤子さん1人で切り盛りしないといけない。その分、マスターは接客に走り回らないといけない。
これもつい3年前は当たり前の光景だった筈だが、晶子が居ることが此処でも何時しか当たり前になっていたことが分かる。

「俺は今病気とかもしてないですし、それ以外に休む理由もないですから。・・・店の方には何か言いましたか?」
「混み始めたあたりから、少し体調を崩したので念のため静養している、と言ってある。お客の中にも動揺が見える。塾通いの中高生はまだ結構居るし、その辺りからは
不満も感じる。もう受験は終わった筈だがね。」
「あるとしたら、春期講習か新年度の新入生・・・って言っても良いのかは分かりませんが、そういうのだと思います。」

 俺は塾に行かなかった。行くつもりもなかったしバンドの練習が出来なくなるから行かなかったし、親も経済的理由を挙げて行かせなかった−家で学校の勉強をすれば
十分というスタンス−からだが、塾に行くのが当たり前の風潮は、県下随一の進学校だった俺の高校にも勿論存在した。そこで聞いた話では、塾では初夏秋冬それぞれに
大型の集中講習があって、そこで人の出入りが特に激しくなると聞いている。
 塾通いの中高生が、この店で夕食を済ませたり−定食ものも充実しているから可能−塾帰りに大人で言うところの「軽く一杯」をするのは、馴染みの光景だ。
そこでタバコや酒がないかどうかをマスターが目を光らせている。見た目明らかに強面のマスターが常時居るせいか、タバコや酒は俺もまったく見たことがない。
黙っていても20歳になったら好きなだけ吸ったり飲んだり出来るし、大学生か社会人になればそれ以下でも黙認されるのが現実だから、たかが2、3年か数年の待ち時間を
待っても良いだろう。

「店を回っている時に聞き耳を立てていたんだが、井上さんファンの男子中高生の間では、井上さんが妊娠したから店を休んでるんじゃないかという憶測が若干出ている。」
「・・・そういう時の『若干』って、直ぐ多数派になるんですよね・・・。よりによって。」

 ぼやきに続いて溜息。恋愛ごとにおいて関係の深まりやそれを感じさせる事柄は、最初少数派でも直ぐに多数派になる。「付き合い始めた」こと1つ取っても間もなく
「手を繋いだかどうか」になり、付き合いの時間が長くなるにつれて「キス」「セックス」と深まっていく。宮城と付き合っていた時もそうだったが、今は晶子が事態を先取りして、
しかも公言しているから、話題のアクセルになってもブレーキになることはより期待出来ない。
晶子は165cmほどの、女性としては長身と言える身長の他、客観的に見ても美人と言える顔立ち、スラリとした身体の稜線が織り成す美貌を持っている。
化粧やアクセサリーや華美な服装で飾らないから、美貌が直感出来る。「すっぴん美人」と言うやつだが、同様の潤子さんが既婚者、しかも強面のマスターが居ることも
あってか、男子中高生の関心は晶子に向いている。
 ところが、「同じバイト」の俺が付き合い始めて最初の誕生日にプレゼントしたペアリングを、左手薬指に填めて填めさせたと来る。晶子が店のバイトを始めて半年
程度しか経過していないのに、だ。更に、俺は出来るだけ目に付かないようにしていたのに対して、晶子はさりげない振りをして見えるようにして、聞かれたら
嬉しそうに俺からプレゼントされたことを包み隠さず話すもんだから、さあ大変。事実を知った男子中高生の俺に向けられる視線が急に鋭くなり、殺意すら
感じるようになった。
 もはや俺と晶子の付き合いは、この店に数回来た客なら知った経緯の直接間接を除いて大抵知っていることだ。その付き合いの時間も、左手薬指の指輪発覚から
数えても間もなく3年。思春期真っ只中の中高生なら尚更、俺と晶子の関係が深まっていると考えるだろう。そこに晶子の突然の休みという事態が加われば、
考えがより「発展」して嫉妬や怒りの炎が俺に向けられるのは確実。・・・とんだとばっちりだな。
 だが、今何を言って事態が動くとは思えない。キッチン周りは結構音がするから、仮に晶子が奥からこっそり聞いていたとしてもまず聞こえないだろう。
それに、俺の元から逃げ出したんだから、俺がバイトのために来るこの時間に姿を晒してしまう可能性があることをするとは思えない。男子中高生の客の鋭い視線を
浴びながら、バイトに徹する他ない。

「その話は、また後でしよう。」
「・・・はい。」
「マスター。ハンバーグ定食2つを12番テーブルにお願い。」
「おう。」

 店が忙しい時に話し込むわけにはいかないから、早々に話を打ち切る。マスターは潤子さんから料理の載ったトレイを受け取って、1つずつ両手で持って行く。
俺は食事のスピードを上げる。忙しい時間に身を投じれば、その間は晶子のことを棚上げ出来る。早く事態が打開すればそれに越したことはないんだが、
望み薄だからな・・・。晶子を待つと決めた筈なのに、出るのは重い溜息ばかりだ。

 バイトはどうにか終了。こんなに疲れるとは・・・。1人居なくなる、しかも店の心臓とも言えるキッチン担当が半分になったら忙しさが増すとは予想していたが、体感して
みると何時もの2割増3割増、否、5割増にもなったように感じた。忙しいだけなら大学の密度の濃い講義を終えてからバイトをしていた今までの慣れだけで対応出来た
だろうが、晶子が居ないことで空白の分だけ心も身体も耐久力を削られたせいかもしれない。これで田中さんが来店していたら、俺はぶっ倒れていたかもしれない。
 マスターと潤子さんも何時もより疲労の色が濃い。「待ちぼうけの午後」がBGMとして流れる中で啜る「仕事の後の1杯」もすこぶる鈍い。俺と晶子のトラブルにいきなり
訳もなしに巻き込まれたんだから無理からぬことだが、申し訳なくも思う。

「・・・井上さんには、今朝祐司君から頼まれた伝言を伝えておいたよ。」

 沈黙を破ったのはマスター。晶子と顔を合わせられるのは今のところマスターと潤子さんだけ。晶子が俺からの伝言でどんな反応を見せたのか、気がかりだ。

「晶子は何て・・・?」
「理解した様子で頷いた。井上さんも指輪とペンダントは外していない。どちらも祐司君からの伝言を伝えた後で井上さんが見せてくれた。」
「まだ・・・大丈夫みたいですね・・・。」

 自分のことでもあるのに酷く客観的な言い方になってしまう。だが、俺は晶子の顔を見られないし、今はマスターと潤子さんから様子を窺う手段がない。つい昨日まで
何時でも間近で見られたのに・・・。何でこんなことになったのかと思うと、再び情けなさとやるせなさがこみ上げてくる。

「祐司君。・・・晶子ちゃんが妊娠してるとしたら、どうする?」

 かなり冷めて来たコーヒーを啜っていたところに投げかけられた問いで、俺は瞬時に固まってしまう。
晶子が雲隠れした理由は混乱じゃなくて、妊娠・・・?晶子が安全日でない時は「儀式」で済ませていたが、避妊具を使ってないから万全とは言い切れない部分がある。

「どうする?」
「・・・産んで欲しいです。中絶はして欲しくないです。晶子が二度と子どもを産めない身体になるかもしれないですし、子どもに・・・俺のしたことに責任を取らないで
晶子に全部押し付けるなんて無責任なこと、出来ません。」
「そう・・・。それを聞いて安心したわ。」

 不安が先行したが、晶子が妊娠してるなら産んで欲しいというのは、嘘やその場限りの取り繕いじゃない。
自分が父親になることに対する実感はあまり沸かないが、晶子と避妊具なしでセックスする以上は妊娠はそれなりに覚悟している。出産にどれくらい金がかかるのかは
よく知らない。だが、今は入れていない土日や今のような長期休暇中の昼にもバイトをさせてもらうなりして何としても金を作る覚悟もある。それが・・・俺の責任だ。

「顔とかは晶子に似て欲しいですけど・・・。」
「晶子ちゃん、妊娠はしてないわよ。晶子ちゃん本人がそう言ってたし。」
「え?じゃあ、どうして・・・?」
「祐司君がそう遠くない将来にどれだけ心構えが出来てるのか、知りたかったから。」

 仮定の話だったのか・・・。安心したような、残念だったような・・・。
本当だったら驚いただろうし少しは戸惑っただろうけど、やっぱり産んで欲しいと思っただろうし、そう言っただろう。さっきもそういう気持ちの上で言ったんだし。

「この話も、晶子ちゃんに伝えておくわね。晶子ちゃんが祐司君との子どもを身篭ってるとしても、祐司君は晶子ちゃんにお腹の子を産んで欲しいし、中絶して
欲しくないと思ってるし、逃げたりしないって。・・・晶子ちゃん、きっと喜ぶわよ。」
「・・・お願いします。」

 逃げ出した理由が田中さんの台頭による混乱じゃなくて妊娠だったら、むしろ安心だ。妊娠を回避していたつもりが妊娠してしまって俺に合わせる顔がなくなったと
思ってるなら、それは思い違いだ。潤子さんに問われた時はいきなりだったし、晶子から妊娠の事実を告げられたらそりゃあびっくりするだろう。だけど気を取り直したら
産んで欲しいと言う。さっきのように。そして産んで欲しい。
 晶子は明言していないが、子どもを欲しいとは漠然と思っている節が今までに見られた。
買い物に行くスーパーでは、特に菓子売り場あたりで子ども連れを見る機会が多い。親に菓子を強請るところ、親に許可をもらって目を輝かせて真剣に菓子を選ぶ−
大抵こういう場合は1つだけという条件が伴うもんだ−ところを、晶子は微笑ましそうに見る。
 店内で親とはぐれたらしく涙目で辺りを見回していた子どもに声をかけて、迷子を引き受けるサービスカウンターまで連れて行って、親が迎えに来るまで待って
−俺も当然付き合った−、無事再会を果たして礼を言った子どもにも終始微笑を絶やさなかった。
その後、レジを済ませて店を出たところで迷子の話になって、ふと晶子が「子ども連れも良いですね」と呟いた。俺はその時子ども好きな面があるんだと思っただけ
だったが、将来の自分と俺と、2人の子どもを合わせた様子を想像していたんだろう。
 戸籍上の結婚に到達したら次は子ども、という未来予想図は晶子の中にある。昨年のサマーコンサート後の打ち上げでも、晶子は生活が落ち着いたら子どもを作る
つもりと言った。だが、自活能力があるとは言えない状況下で妊娠してしまったと知って、避妊具なしでも妊娠しないようにしていると言っておいての「失敗」に
気が動転してしまうことはあり得る。それで逃げて隠れているなら、思い違いだから帰って来い、と言いたい。

「祐司君と晶子ちゃんがそういう関係だってのはかなり前から知ってるわ。今朝訪ねて来た晶子ちゃんの話からも、それは分かった。愛し合ってのことだから無理に
止めることはしない。だけど、その結果生じた命には責任を持って欲しい。だから、私の仮定に祐司君が明快に答えてくれて、安心した。」
「答えるまでにちょっと間があったかもしれませんけど、それは言い逃れの仕方を考えてたからじゃないです。」
「それは分かってるつもり。心当たりがないわけじゃない以上、妊娠を告げられたら驚くのは無理もないことだし。」
「・・・晶子は・・・もう寝たんでしょうか?」
「お店が終わるまで起きてる、って言ってたわ。」
「じゃあ・・・1つお願いしたいことがあるんですけど・・・。」

 晶子がまだ寝てないと仮定した上で、マスターと潤子さんに頼みごとをする。マスターと潤子さんの快諾を受けて、俺は店のキッチンを通って渡辺夫妻の家に入り、
階段の真下まで歩み寄る。マスターと潤子さんが後を追ってきた。俺が我慢出来ずに階段を駆け上らないかと思ったのかもしれないが、晶子に会わないと約束しての
ことだから大丈夫。

「・・・晶子。聞いててくれ。」

 階段を見上げながら、俺は少し声を大きくして話し始める。これが、マスターと潤子さんへの頼みごと。晶子に直接会わないことを条件に晶子に呼びかけさせて
欲しい、というものだ。暗闇一色の2階から物音は何も聞こえない。メールじゃ伝え難い今の気持ちを率直に伝えるために。

「今日バイトが終わってから、晶子が妊娠していた場合どうするかって聞かれた。その回答は後でマスターか潤子さんから聞ける筈だから、此処では言わない。
少なくとも、晶子に責任を押し付けて逃げるものじゃないってことだけは言っておく。」
「「・・・。」」
「俺が親になったところは、正直いまいち想像し難い。試験期間中からずっと料理と洗濯を晶子に任せっきりだったし、そんな俺が親になったら、晶子にしてみれば
もう1人子どもが増えるみたいなもんかもしれないからな・・・。」
「「・・・。」」
「もし、マスターと潤子さんの家に居る間に本当に妊娠してることが分かったら・・・、マスターと潤子さんを介してでも良いから、俺にも教えてくれ。子どもは・・・産んで
欲しい。一緒に・・・名前考えたいしな。」
「「・・・。」」
「携帯にメール送っておいたから・・・、気が向いたら読んでおいてくれ。・・・じゃあ、今日は帰る。おやすみ。」

 言いたかったことを言った。これ以上長く居ると晶子に会いたいって気持ちが自制出来なくなりそうだから、言い終わったら速やかに踵を返す。
潤子さんの話は仮定だった。だけど、それが真実になったとしても俺の気持ちは変わらない。晶子が聞いていたかどうかは分からないが、聞いていたと思っておく。
 俺はマスターと潤子さんに礼と挨拶を言って、帰路に着く。1人でのバイトの往復は3年ほど前まで当たり前だったのに、今左隣を見ても晶子が居ないという間違いない
事実は、晶子が居ることが俺の当たり前になっていたことを改めて、そしてまざまざと実感させる。待ち続けると決めたつもりでも・・・、いきなり突きつけられた
「独り」は俺に絶えず変節を迫ってくる。この誘惑に勝てるかどうかで・・・俺と晶子の将来が決まるんだろう。厳しい戦いになりそうだ・・・。

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