雨上がりの午後

Chapter 120 夏の楽祭−4−

written by Moonstone


 青山さんが続けていた8ビートがダブルクラッシュで終わると、ステージ全体が淡いブルーの照明で照らされる。
この間に潤子さん以外の全員がステージ脇に退散する。潤子さんはステージ上段から降りてピアノの前に立ち、客席に向かって一礼する。
客席から拍手が送られる中、潤子さんは着席してピアノに向かう。
スポットライトが潤子さんを照らす。波が引くように客席が静まり返る。潤子さんのピアノ演奏を今か今かと待っているんだろう。
 高音部を中心としたメロディとアルペジオが、静まり返った会場に美しい音の波紋を広げ始める。
自然なタメを織り交ぜた演奏は聞いているだけで心を癒してくれる。
今の時代こういう言葉は禁句かもしれないが、女性らしい優美な演奏だ。国府さんとはまた違う美しさがある。これは間違いない。
 タメを含んだクイに続いて、高音部でメロディ、中音域でアルペジオというやや重厚な響きを含んだ、それでいて少しも重苦しくない演奏が展開される。
わざとらしくないクイの崩しが、水面に幾つもの波紋が広がるようで美しい。
何度となく聞いて来た演奏だが、回を重ねる度に洗練されていっているような気がする。
 自然な崩しを加えたクイが音階の階段を一段ずつ踏みしめるように上るようなフレーズが演奏された後、スタッカートを交えた、朝露が音もなく落ちるような
静かなフレーズが演奏される。
これまで綺麗な水が作り出した湖面の彼方此方に大小の波紋が広がっていたのが、広がるにつれて小さくなっていく波紋の波のみになった、とでも言えば
良いだろうか。
心地良く揺れる曲のテンポに合わせて呼吸をしていると眠くなってくる。

 中音域での春の薄日が差すようなフレーズが奏でられる。テンポの揺れが本当に自然で心地良い。
そして明るい感じで音の波紋の出現が一旦止まると、今度は高音域を使った、聞く者を眠りに誘うようなフレーズが会場全体に優しく響く。
ピアノの高音域は甲高いという印象があるが、ここでは清純な雫が幾つも零れ落ちる様を表現しているように感じられる。
作曲者と演奏者の力量が見事に融合した結果だろう。
 高音部でのクイを背景にして、清らかな湧き水を髣髴とさせるメロディが、自然なタメを含んで演奏される。
否応なしに聞く者の口を塞ぎ、耳を傾けさせるものを潤子さんの演奏は持っている。
さっき国府さんがラテンの血をたぎらせるような熱い演奏を繰り広げたのとはまったく対照的だ。
同じ楽器でこうも違うのか、と客は思い知らされているだろう。実際、何度も聞いている俺もそう思っていたりするんだが。
 タメを含んだクイに続いて、これまで控えめだったダイナミクスを前面に出した、中低域を使ったフレーズが奏でられる。
曲が盛り上がっていくということを仄めかしている。
再びタメを含んだクイを挟んで、同じフレーズがメロディを高音域に移して演奏される。
ダイナミクスがより強調された演奏は、それまでうっとりしていた意識を覚醒させるようだ。
音階を一段ずつ上っていくクイの演奏に力が入り、迫力すら感じさせる。
タイトルにある「energy」がたぎる様子をピアノが音で描いている。

 それが終わると、曲は一転して静かな雰囲気に変わる。
スタッカートを交えたダイナミクスを控えめにした演奏が、迸った「energy」の残像を描いているとでも言おうか。中音域の響きが美しい。
 そして白玉を背景に、音が高みへと上り、消えていく。最後の装飾音符を交えた音で演奏は終わりを迎える。
やや前屈みになっていた潤子さんの姿勢が元に戻る。
ピアノの響きが消えると、会場が静まり返る。
少ししてパラパラと拍手が起こり始め、やがてそれは大波となってステージに覆い被さってくる。潤子さんは席を立って客席に向かって一礼する。
 スポットライトが潤子さんからステージ左脇へと移る。マイクを持ったマスターと桜井さんが出て来る。
潤子さんは淡いブルーの照明に隠れるように、いそいそとステージ上段のシンセサイザーのところへ上がる。

「いやあ、心に染みる曲だねぇ。栄養剤のCMに使われていた理由が分かるよね。ここらで一休みしませんか、って感じで。」
「演奏したのは君の奥さんだろ。毎日心安らぎを貰ってて良いよねぇ。」

 まったくだ、とか、そのとおり、とかいう声が飛び交い、指笛まで飛んで来る。
やっぱり美女と野獣を−マスターに聞こえたら張り倒されそうだな−絵に描いたような組み合わせにはやっかみが飛んで来て当たり前か。
まあ、俺と晶子の場合も公表されてたらそうなってただろうが。

「君だって奥さん居るだろ?安らぎは自分の奥さんから貰いなさい。」
「美人の奥さん居る人は余裕だね。十分癒されただろ?」
「そりゃあ、もう。」
「やっぱり何だかんだ言って自慢したいんだ。」

 客席から笑いが起こると共に指笛が飛んで来る。

「さてさて、次は都会的なナンバーをお届けしましょうか。『BIG CITY』と『プラチナ通り』。『BIG CITY』ではラテンの血をたぎらせてくれた
プレイヤーがピアノソロを聞かせてくれる。」
「そして『プラチナ通り』では、若きギタリストが実力をいかんなく発揮してくれるからね。」
「そうそう。それじゃあ2曲続けてお楽しみください!」

 うわぁ、俺のギターの腕が誇大宣伝されちまったぞ。かと言って訂正を求めるわけにもいかない。
俺はとりあえず脇役になるべくステージに駆け出し、エレキのストラップを身体に通して演奏の準備を整える。
マスターがマイクをピアノの上に置いてアルトサックスのストラップに身体を通す。
青山さんがステージ脇から駆け出して来てドラムの前に座る。演奏開始の時は近い。
 ドラムのフィルが1つ頭を出した直後、ステージが一気に明るくなる。
フルートっぽいシンセ音によるフレーズにベル音のフレーズが混じる。16ビートを刻むドラムとチョッパーベースで固められた曲の基礎部分は完璧だ。
マスターがサックスを構える。俺も演奏準備を整えて加わるタイミングを計る。
 マスターのブロウが効いたサックスが、艶っぽく都会的な雰囲気でメロディを奏でる。俺はその影に隠れるようにユニゾンする。
ここはナチュラルトーンでサックスにツブを加えるような役割に徹する。
マスターのサックスはこのステージでは久しぶりだが、やはりかつてジャズバーを席巻したという腕はいささかも衰えていない。
客もその迫力に触発されたのか、総立ちで手拍子を送っている。
 曲はサビに入る。俺が個人的に一番気に入っている部分でもある。
ここではエフェクターを切り替えて軽くオーバードライブをかけ、サックスの3度下のメロディを演奏する。
あくまでもサックスの引き立て役に徹することは忘れちゃいけない。
マスターのサックスは音の伸びの部分を特に生かす形で、艶っぽさと都会っぽさをたっぷり含んだ音色を会場にこだまさせる。聞いていて身震いがしてくる。
 全員揃ってのキメを挟んで、曲は最初に戻る。俺はエフェクターを切ってナチュラルトーンでサックスにツブを加える役割に戻る。
最初に戻ったからといって安心しては居られない。次にこの曲を人間が演奏する時に一番難しいと思う部分が控えているからだ。

 サックスと俺が細かいフレーズをユニゾンする。
背景では主にハイハットしか鳴らないから、リズムキープと演奏の均衡を保つ必要に迫られる。何度やっても緊張するところだ。
モタったりつんのめったりしないようにサックスと呼吸を合わせてフレーズを演奏する。
そして最後は全員揃って音程の階段を駆け上るフレーズで決める。
こういう部分で誰か一人でも崩れると、他が幾ら良くても印象が全然違ってくるから油断は禁物。
練習やリハーサルでやったように、自分でしっかりテンポキープしながら弦を爪弾く。・・・上手くいった。
 曲はドラムとベースのみになる。スポットライトが桜井さんに当てられる。
ベースソロは音程の関係もあって違和感を感じるものになりがちなんだが、この曲では基本フレーズを変形させた、曲の雰囲気を壊さないようなものになっている。
今まで縁の下の力持ちに徹していた桜井さんのベーシストとしての腕前がいかんなく発揮される。
オクターブを跨ぐ部分を挟んだフレーズは、ハイハットとバスドラムだけで構成されたドラムの音を背景にしっかりその存在をアピールする。
 ドラムにスネアが加わり、更にイントロであったフルートっぽいシンセ音が加わる中、ベースソロは基本フレーズのリズム感を崩さない、
しかし非常に忙しいフレーズになってくる。
メリハリの効いた複雑なフレーズは、桜井さんの手によって見事な音の波となって会場に放たれる。
俺とマスターはそれぞれ楽器を構える。このベースソロを締めるに相応しいキメを演奏するためだ。
スネアの簡単なフィルを合図に、全員が音のツブを揃えてキメのフレーズを演奏する。・・・良し、OKだ。
 次はいよいよ国府さんのピアノソロだ。俺はマスターとのユニゾンのために演奏しなかったバッキングを演奏する。
このフレーズは俺にとってはそれほど難しいものじゃないが、音のツブが結構際立つし、失敗はピアノソロをガタガタにしてしまうので丁寧な演奏が要求される。

 スポットライトが当てられる中、国府さんはピアノソロを奏でる。
メロディのみならず中低域ではクイを多用した複雑なバッキングもしなければならない。
しかし国府さんは、念入りにプログラムされたシーケンサのように淡々と演奏をこなしていく。
後半では浮遊感のあるシンセ音が加わり、流れるようなピアノソロを引き立てる。
6連符の難しいフレーズが、まるで星屑が空から降り注ぐかのように綺麗に演奏される。
 俺は単音中心だったフレーズからストロークによるクイのフレーズに変わる。
ベースが比較的シンプルなフレーズになった分、ピアノの複雑なソロが余計に目立つ。
連符を多用している都会的な雰囲気を存分に漂わせるフレーズは、国府さんの手によって見事な音の布に織り上げられる。
洗練された演奏はまったくリズムを崩すことなく、最後の全員揃ってのキメで締めくくられる。
客席から盛大な拍手が起こる。俺も演奏してなかったら拍手しているところだ。
 スポットライトは今度はマスターに当てられる。マスターはブロウの効いた艶っぽい音色でソロを演奏する。
これまた高域から低域まで使った息吐く間もないようなフレーズだが、マスターはフレーズの流れに合わせて身体を反らしたり屈めたりしながら演奏していく。
連符も交えた複雑なフレーズだというのに、マスターはさり気なく息継ぎしながらすらすらと弾きこなす。
 途中から俺は細かいコード演奏に切り替える。ピアノのバッキングもクイが多用された複雑なものになる。
マスターは上がったり下がったりする細かいフレーズを生き物のように、そう、聖書で神が創った人型に息吹を吹き込んで人間としたように、
マスターは楽譜にすれば、ああ、ややこしいな、と思うだけで流すようなフレーズに文字どおり息吹を吹き込んで生きたものにしていく。
 サックスソロはいよいよ山場を迎える。
リフで構成されたフレーズに俺と国府さんのバッキングが絡む。そしてサックスは一気に音程の階段を駆け上り、艶っぽさたっぷりの白玉で締めくくる。
見事の一言だ。だがのんびりしては居られない。
俺はタイミングを計ってエフェクターを切り替え、マスターの3度下をなぞる形でサビのフレーズを演奏する。
マスターはまったく息切れした様子を見せずに、艶っぽく都会的なフレーズに息吹を吹き込み続ける。
 全員揃ってのキメを挟んで、曲は最初に戻る。ここはベースソロの前とほぼ同様の構成だ。
暫く最初のフレーズを演奏した後、マスターと俺がハイハットを背景にユニゾンして、フェードインしてくるシンセ音とさり気ないが難しいドラムのフィルを
挟んで全員息を揃えて最後を締めくくる。

 決まった。俺がそう思った次の瞬間、客席から大きな拍手と歓声が起こる。
マスターは客席に向かって軽く一礼すると、駆け足でステージ脇に退散する。
俺は急いでギターをエレキからアコギに切り替える。今度は俺が主役になる番だ。これまでのステージの流れを無にしないように、気合を入れ直す。

 客席からの拍手と歓声が収束に向かったところで、キラキラしたシンセ音が流れる。それに合わせて俺はグリスを入れて演奏を開始する。
他の楽器音も一斉に入ってくる。始まった以上はもう最後まで止まることは許されない。
4小節演奏したところでドラムが本格的に入ってくる。俺はこれまでの練習の成果を10本の指に注ぎ込む。
 軽快に弦の上で指を躍らせる。さっきの「BIG CITY」が夜の大都会とするなら、これは爽やかな夏の陽射しが差す歩行者天国といったところか。
一音一音の弦を弾く強さに神経を注ぎながら、かと言って固くならないように、軽やかなテンポの波に乗って演奏を続ける。
Aメロは良い調子で進む。青山さんのフィルに合わせた演奏の後、一瞬演奏が止まり、再び動き出す。
 Aメロ同様爽やかな、だがちょっと雰囲気の違うBメロを通過して、ダイナミクスと休符を活かすことがより大切なCメロに入る。
ここはちょっと混雑した通りに入ったというイメージかな。
常に頭の中に曲からイメージ出来る場面を思い浮かべる。こうすると演奏に反映されてより生き生きしたものになるように思う。
 音程の階段を一歩一歩上るようなフレーズを経てAメロに戻る。
ここでは要所要所で薄くメロディの上の音を重ねて、嫌味にならない程度に厚みを加える。陽射しを手で作ったひさし越しに見上げるような感じか。
ここでも最後に青山さんのフィルが入って−曲によって音の重みやイメージが変えられるのはやはり凄いと思う−演奏が一瞬止まり、最初に戻る。
 キラキラしたシンセ音と細かいパーカッションを背景に、俺はアコギの響きを生かした白玉中心の簡単なフレーズを爪弾く。
パーカッションがスネアに替わる。いよいよ俺のソロの出番。ここからが正念場だ。
俺は音をよく聞いてギターを加えるタイミングを計る。ベースのグリスが入る。・・・今だ。

 俺が主役になれる、ならなきゃならないソロを演奏する。
細かいフレーズの連続だが、アコギの響きを生かし、ダイナミクスと休符を生かしたメリハリのある演奏を心がける必要がある。
あくまでも爽やかに、心地良い人通りをイメージさせる演奏・・・。俺のギタリストとしての真価が問われるところだ。
 途中からAメロをなぞるフルートが加わる。柔らかい音色が耳に心地良い。曲の爽やかさをより引き立てる。
ここで俺が固い演奏をしたら折角の雰囲気が台無しだ。指に神経を注ぎつつも余計な力は抜いて、軽快なリズムに乗った演奏を常に心がける。
今までの練習の成果を発揮すれば、客にとって十分気持ち良い演奏になる筈だ。32小節の長丁場だが遣り甲斐はある。
 強めに弦を弾いた俺の演奏とタムのフィルを挟んで曲はBメロに戻る。気持ちを切り替えて休符とダイナミクスを大切に弦の上で指を動かす。
8小節目のラストで、俺は1本の弦をアップダウンストロークで細かく、しかもダイナミクスに注意して弾き、2回目のソロに入ることを宣言する。
 再びフルートがAメロを柔らかい音色で軽やかになぞる中、俺は2回目のソロを披露する。
低音から高音まで幅広い音域を使う、時に和音も加わるフレーズを、ダイナミクスに注意しながら軽快さを忘れずに演奏する。
パーカッションも加わる複雑なリズム音やさり気なく全体を下支えするベース、爽やかさの演出を助けてくれるシンセ音のバッキングを背景にソロを続ける。
ソロは32小節。これまた長丁場だが、俺がメインになれる、ならなきゃならない最後の曲だ。自然と演奏に熱が入る。
 ソロが終わると青山さんの複雑なフィルを挟んで最初に戻る。
キラキラしたシンセ音と細かいパーカッションが見事に絡み合う中、俺はさり気ない形でフレーズを入れる。
そして青山さんのパーカッションとドラムを組み合わせた複雑だが軽快なフィルを挟み、1発クラッシュシンバルが軽く入る。
細かいシンバルワークとシンセのパッドが下支えする中、俺が中高音域を、桜井さんが低音部でそれぞれアドリブを入れ、最後はふわっと髪を揺らす
微風のようなフルートと共に白玉で締めくくる。
 全ての音と残響が消えると、客席から大きな拍手と歓声が沸き起こる。自分の大役が果たせたことで緊張の糸が切れた俺は、思わず溜息を吐く。
あとは脇役に徹するのみだ。いい加減にしちゃならないのは勿論だが。
ステージの照明が淡いブルーに替わり、ステージ脇に退散していた晶子と国府さんが出て来る。
国府さんはピアノの前に座り、晶子は「AMANCER TROPICAL」で右側にずらしたマイクスタンドをステージ中央に移動させてその前に立つ。
スポットライトがステージ左脇を照らす中、マスターが出て来る。

「皆さん、お楽しみいただけたでしょうか?」

 マスターが問い掛けると、客は盛んな拍手や指笛で応える。

「ここ新京市公会堂を舞台にお送りしてきたサマーコンサートもいよいよ最後となりました。最後はしっとりメロディアスに締めくくることにしましょう。
『Fly me to the moon』。最後までじっくりお楽しみください!」

 盛大な拍手の中、マスターがステージ脇に引っ込む。
ステージ全体が淡いブルーの照明の中に浮かんでいると、沸き立っていた客席が自然に収束へ向かう。
流石に今回のメンバーを知っているだけあって、最後がどんな曲なのか知っているようだ。
 静まり返った会場に、オーケストラを髣髴とさせるストリングスの演奏が響き渡る。
少しでも心に汚れのあるものを寄せ付けない教会のような荘厳さを持ったストリングスは、両手でカバー出来る音域をフルに使っている。
聞いているだけでゾクゾクする。シンセサイザーの進歩もあるとは言え、やはりプレイヤーの力量があるからこその心に響く演奏だ。
 そのストリングスがグリスしたのを合図に俺はバッキングを始める。
これまでとは一転して、優しく静かに闇夜を照らす月光のような雰囲気を漂わせるストリングスを背景に、俺は優しくアップダウンのストロークでクイを刻む。
刻むと言うより月夜の静かな湖面に水滴を落としていくと言った方が良いか。
雰囲気を崩さないように優しいタッチでドラムとベースが加わる。
これで晶子のヴォーカルが入る舞台が整った。さあ晶子、しっかり聞かせてくれよ。
 晶子のヴォーカルが加わる。優しくて神秘的な雰囲気をたっぷり含んだ、透明感のある綺麗な歌声が流れる。
俺のギターは勿論、ピアノやストリングスも晶子の歌声の特長を引き立たせる脇役に徹する。
ベースとドラムは曲全体をしっかり、しかしさり気なく支えている。
ピアノがジャズの雰囲気を醸し出して曲にもう一つの、よく混じり合う色を加えているのが上手い。

 曲はAメロ、Bメロを通過して再びAメロに戻る。ストリングスのボリュームコントロールが本物と聞き間違うくらい、否、本物と言って良いくらい見事だ。
そこに晶子のクリスタルボイスが絡む。リズムに合わせてゆったりと身体を揺らしながら歌う様は、店で見る時以上に綺麗だ。
俺と晶子の今の関係がなかったとしても、これを見たら見とれてしまうのは間違いないだろう。
 ヴォーカルが消え−その瞬間チラッと俺と目線が合って俺は胸が締め付けられるような気がした−、一旦ギターとベースとドラムだけになり、
満を持してピアノソロが加わる。ジャズの雰囲気たっぷりで、同時に嫌味がまったくない。さり気ないが故に演出が際立っている。
途中からストリングスが薄く被さる中、国府さんのピアノソロは、これがプロの演奏だ、とあくまでもさり気なく、しかし否が応にも認めざるを得ないものを
含んで展開される。
 ドラムのフィルを挟んで、ピアノに替わってヴォーカルが加わる。
国府さんが醸し出すジャズの雰囲気に飲まれることなく、自分が持つ声の特質をいかんなく発揮している。
晶子も本当に曲毎の歌い分けが上手くなったもんだ。なまじ予備知識がなかった分、吸収が早かったんだろうか。
日を追う毎に磨きがかかっていくように思う晶子のヴォーカルに、俺はストロークを繰り返しながら聞き入る。
 Aメロ、Bメロを経てストリングスの素早いグリスを挟んで再びAメロに戻る。
シンセとピアノにそれぞれ人が張り付いている目的が、ここでもしっかり生かされている。
ストリングスは弦楽器のボリューム変化や滑らかさを、ピアノはジャズの雰囲気とヴォーカルの合いの手的役割を、それぞれしっかり担っている。
そんな人間同士がぶつかり合ってこそ生まれる「生」の良さに、シーケンサでは絶対に入れられないヴォーカルが加わり、ここだけでしか聞けない
「Fly me to the moon」が生まれている。

 ヴォーカルが消え、ドラムのフィルと同時にストリングスがボリュームを上げる。ストリングスのソロだ。
ここでもボリュームコントロールと演奏の滑らかさが、ストリングスらしさを鮮やかに演出している。
前面に出ているといっても曲の雰囲気を崩さないところがミソだ。
幅広い音域を惜しみなく使って、月光の持つ優しさと神秘性を表現している。
何も知らずに目を瞑って聞かされたら、本物のストリングスと信じて疑わないだろう。
 ラストからヴォーカルが再び加わりAメロに戻る。ストリングスは一歩下がってヴォーカルの引き立て役に復帰する。
間があったのをものともしない晶子のヴォーカルは、会場全体に美しく響き渡る。
 ドラムのフィルが入って、ヴォーカルの最後の歌詞の伸びとストリングスの広がりで曲は見事に締めくくられる。
長く伸びていたストリングスが止み、その残響が消えると、客席から大きな拍手と歓声が沸き起こる。
これで一先ずプログラムは終了だ。ステージ全体が明るく照らされ、潤子さんと青山さんがステージ上段から降りて来て、ステージ脇からマスターと勝田さんが
出て来て全員が一列に並び、全員揃って一礼する。
更に大きくなった拍手と歓声に送られる形で、ステージに向かって一番左のマスターを先頭にステージ脇に退散する。

「アンコール、起こりますかね?」

 勝田さんが言う。プログラムはさっきの「Fly me to the moon」で終了だ、とマスターが宣言したから大人しく帰る客も居ても何ら不思議じゃない。
だが、俺としてはまだ鳴り止まない拍手がアンコールの大合唱に替わるのを期待したいところだ。
全員がステージ脇から顔が見えないように客席の様子を窺う。
 少しして、拍手と歓声の中から、アンコール、という声が聞こえ始める。
彼方此方から飛び出したそれは間もなく発声のタイミングを揃え、声量も指数関数的に大きくなってくる。手拍子と共にアンコールが繰り返される。
あと2曲演奏することがこれで決まった。

「安藤君の言ったとおりになったな。プレイヤーとしてはこれに応えなきゃなるまい。大助。頭一つ出てくれ。それが合図だ。」

 桜井さんの言葉に全員が頷く。そして桜井さんを先頭にして全員一列になって再びステージに出る。
アンコールの大合唱と手拍子が大きな拍手と歓声に変わる。
全員ステージに出たところでそれぞれの配置に就いたり楽器をスタンバイしたりする。マスターはサックス、勝田さんはEWIだ。
音色がぶつかり合うのを防ぐために事前に打ち合わせたんだろうか?まあ、その辺はコンサートが終わってからでも聞けることだな。
俺はエレキのストラップに身体を通し、エフェクターを選択して演奏準備を整える。晶子はマイクをマイクスタンドから取り外す。
 ステージを明るく照らしていた照明が淡いブルーに切り替わる。客席の拍手と歓声が急速に収束していく。
アンコールの曲名までは紹介してないから、客も全員揃って何を演奏するつもりなんだろう、と思っているだろう。
 沈黙が会場全体を支配したと思った瞬間、スネアと一番低いタムが、ダンダダ、と鳴り響いて演奏開始を宣言する。
ステージの照明が少しずつ明るくなり始める。俺はこれまで何度も演奏してきたとおりのイントロを演奏する。
そこにサックスとEWI、クイのピアノと金属的なストリングス、どっしりしたベースとドラムが息を合わせて加わる、というか、ヴォーカル以外全員が
揃ってイントロを演奏する。音圧は普段の数倍だ。
客の中からどよめきが上がる。こっちの店の客は何度も聞いている「Make my day」だから、驚きが先行しているんだろう。

 サイバーチックなシンセ音が駆け上っていった後、晶子のヴォーカルが入る。透明感の中にも張りがある、曲に相応しいものに替わっている。
やっぱり歌い分けが上手くなっている。バスドラムとハイハットだけのドラムを背景に、俺はベースと呼吸を合わせてバッキングをする。
 ヴォーカルの最後でタムを加えた細かいフィルとピアノのグリスが入り、バッキング部隊の合奏が始まる。
俺のギターと国府さんのピアノ、桜井さんのベースが歩調を揃えて演奏し、それをずっしりした16ビートのドラムが支える。
背景では金属的なストリングスがコードの白玉を演奏している。
後半になるとサックスとEWIが恐らくアドリブの駆け下りるような細かいフレーズをマスターが最初の2小節、勝田さんが後半の2小節を演奏する。
やはり事前に打ち合わせしていたんだろうか?
晶子は両手を上げて手拍子をしている。客もそれに合わせるように手拍子をしている。
 ストリングスが止み、バッキングが俺のギターとピアノとベース、そしてドラムだけになり、晶子のヴォーカルが加わる。
ここはやはりヴォーカルの聞かせどころだということが分かっているんだろう。ヴォーカル的役割を持つサックスやEWIは沈黙している。
代わりに両手を上げて手拍子をしている。
 曲はAメロからBメロに移る。サックスとEWIは沈黙したままだ。
俺のギターとピアノとベースが揃ってバッキングを演奏し、ドラムが16ビートを刻む。
前半4小節はそれで過ぎたが、後半4小節に入るや否や、金属的なストリングスが加わってくる。
バッキングも形態が変わり音が伸びているような感じのところだから丁度良い。
そしてキメの部分では俺のギターと晶子のヴォーカル、そしてピアノとストリングスとベースとドラムが歩調を合わせる。
ヴォーカルとバッキングの音が伸びるところで、原曲にはなかったタムを交えたドラムのフィルに加え、サックスとEWIが見事に呼吸を合わせて駆け上がる
細かいフレーズを合いの手的に入れる。やっぱり事前に打ち合わせをしていたな。

 曲はサビに戻る。
金属的なストリングスが鳴り響き、16ビートがズッシリビートを刻む中、俺のギターとピアノとベースがバッキングを演奏し、晶子がヴォーカルを被せる。
「Fly me to the moon」の時とは正反対とも言うべき元気の良い歌声だ。自然に身体が動く。俺も随分ノッてきた。
 ヴォーカルが一旦終わると、タムを交えたフィルを挟んで再びバッキング部隊−俺のギターとピアノとベースだ−とストリングス、そしてドラムの
基本フレーズになる。
ここはこの曲の基本中の基本だからしっかりビートを刻まないといけない。固くならずに、しかしルーズにならずに演奏する。良い感じだ。
 一番低いタムとクラッシュシンバルによるシンプルなフィルを挟んで、ストリングスとヴォーカルがバトンタッチする。
Aメロは基本フレーズと殆ど違いがないから、バッキング部隊とドラムはヴォーカルを引き立てる役割に徹する。
 クラッシュシンバルを挟んでBメロに移っても、前半4小節は最初と殆ど変わらない。
唯一違うのはヴォーカルが止んだところで俺がアドリブ的な細かいフレーズを入れたことだ。
後半4小節に入ると金属的なストリングスが加わり、フィルはバッキング部隊とストリングス、ドラムがぴったり息を合わせて決める。
ヴォーカルと音が伸びたところで、ピアノが下降するグリスを、サックスとEWIが駆け上がる細かいフレーズを入れる。対比を狙った演奏だろう。
 タムを交えたフィルの最後をクラッシュシンバルの連発で締めると、再びサビに戻る。
ここも1回目、2回目と同じで、バッキング部隊とストリングス、そしてドラムを背景にヴォーカルが元気良く歌うという形だ。
しかし今度は続きが違う。間奏が待っているんだ。果たしてどうなるやら。
 クラッシュシンバルを挟まず、間奏に突入する。16ビートも勢いを抑えている。
シンセサイザーはこれまでの金属的なストリングスではなく、柔らかく広がりのあるパッドを奏でる。
そこにカウベルのようなカラカラした音がSEのように加わる。まるで水の中に居るようだ。
ピアノは白玉を背景に高音部で細かいリフを演奏する。ここはピアノとシンセサイザーの見せ場だな。
晶子のヴォーカルも快活なものから優しい感じになる。照明もブルーに替わって良い雰囲気を演出している。俺は暫し演奏の手を休めて聞き入る。
 7小節目で金属的なストリングスが音程の階段を一歩一歩上ってきて、ドラムのフィルが入って一気に曲調と照明が元に戻る。俺も演奏を再開する。
ストリングスと勢いを復活させたドラムを背景に、バッキング部隊がビートを刻む。晶子のヴォーカルも勢いを取り戻す。
台詞のような細かい歌詞を歌うと、曲がクライマックスに向かう。
俺はディストーションが効いた低音の伸びを響かせ、バッキング部隊とストリングスとドラムが呼吸を合わせてフィルを決める。
クラッシュシンバルの残響が残る中、俺は細かいアドリブ的フレーズを入れる。
その最後でスネアと一番低いタムとクラッシュシンバルが同時に叩かれ、ピアノのグリスが加わる。とても今日が初めてとは思えない。

 曲は再びサビに戻る。
ストリングスが輝き、ドラムが腹に響くビートを刻む中、バッキング部隊が揃ってバッキングをし、そこに晶子のヴォーカルが加わる。
スネアとクラッシュシンバルのみのシンプルなフィルを挟んでサビを繰り返す。これが終わるとフィニッシュは近い。
 ヴォーカルが終わり、バッキング部隊とストリングスとドラムが基本フレーズを奏でる。そこに晶子が呟くような感じで言葉を入れる。
前半4小節の最後2小節でマスターが、後半4小節最後の2小節で勝田さんがフレーズを加える。
アドリブとは考え辛い、演奏に合ったフレーズだ。これも事前に研究して考え出したものなんだろうか。
 そして最後は全員揃って−マスターと勝田さんもだ−音程の階段を上り、ドラムがクラッシュシンバルでアクセントをつける。
晶子はそれに合わせて呟くような感じで言葉を入れる。楽器の演奏がダブルクラッシュでビシッと締めくくられた直後、晶子が言葉を加えて左手を高く掲げる。
残響が消えるや否や、大きな拍手と歓声がどっと沸き起こる。
今日が初めての音合わせとは思えないほど見事に決まった。流石はプロとプロ並の腕を持つプレイヤー揃い。心配するだけ損だったな。
 照明が淡いブルーに切り替わる。そうそう、まだ全ては終わっていない。
俺は急いでエレキを外し、アコギのストラップに身体を通して、マイクスタンドにマイクを戻した晶子と同じところまで前に出る。
スポットライトが俺と晶子を照らす。
長いようで短かったサマーコンサートも本当にこれで終わりだ。締めくくりに相応しい「Fantasy」を披露しよう。俺と晶子の二人で。

 俺は目だけ動かして晶子を見る。晶子も目だけで俺を見ている。
俺が他人に分からない程度にごく小さく頷くと、晶子がすぅっと息を吸い込む。それが、歌い始めますよ、という晶子の合図だ。
俺は右手を最初に弾く弦に合わせて弾き始めるタイミングを計る。
 晶子の歌い始めと俺の弾き始めがぴったり合った。よし、一先ずOKだ。
晶子の歌声を間近で聞きながら、弦を優しく爪弾く。ハンマリングやプリングといったギターテクニックはさり気なく、あくまで自然に・・・。
晶子の歌声が静かな会場に清々しく響く。互いに歩調を合わせながら、それこそ普段手を取り合って歩くように歌と演奏が一体化している。
 サビに向かって曲は順調に進んでいく。叙情感溢れる晶子の歌声が次第に切なさを帯びてくる。
晶子は練習の過程でどんな風に歌っていけば良いかを感じ取って、それを身につけた。この歌声を無にしたくない。俺は丁寧に弦を爪弾く。
サビ前の演奏は心なしかギターの音がよく響く。
ストロークで一区切りつける。一瞬時間が止まったような気がする。

 晶子が再び歌い始める。俺のギターもそれと同時に歩き始める。
サビだからといって声量が上がるわけではない。一定の声量で歌い方を変えて曲の展開を表現している。
練習でもリハーサルでも、この歌を聞くと本当に心安らいだ。それは今でも同じだ。
俺は晶子と手を取り合って一歩一歩歩いていく。
時に俺のストロークが、時に晶子の歌声が合図になって歩いては止まりを繰り返す曲を確かなものにしていく。
 一旦晶子のヴォーカルが止まる。原曲ではシンセ音やコーラスが入るんだが、ここでは俺のギターのみだ。
ここまでの流れと歩みをぶち壊しにしないためにも、慎重且つアコギの響きを生かす演奏が求められる。
事実上のギターソロのラストを締めるノックのような音を出す。
テンポを崩さないように上手く出せた。最後だけ音程が下がるところはこれまで苦労してきたが、今回はすんなり出せた。さあ、あと一息だ。
 再び晶子のヴォーカルが入る。ヴォーカルとギターだけのシンプルで綺麗なハーモニーが会場に響く。
去年のクリスマスコンサートで隠し球として晶子と練習を重ねて準備してきた曲。それが1000人を収容する大会場で披露されている。
その現実に興奮と緊張を感じつつ、弦を爪弾く指の力加減に注意して、晶子との歩みを乱さないように気をつける。
 晶子のヴォーカルはクリスタルボイスという名称が相応しく、よく澄み切っている。
歌詞の内容は正直言ってタイトルとあまり関係がないが、セピア色の風景を脳裏に蘇らせるものがある。
楽譜もろくに読めなかったあの頃の晶子。義務感だけで教えていたあの頃。
それが今じゃどうだ。二人並んで心を合わせて一つの曲を紡いでいる。
2年近い時の流れが積み重なって今の俺と晶子があるんだ。改めてそう思わせる。

 曲は俺のストロークを挟んでサビに入る。
原曲では薄いシンセ音やコーラスが入るが、ここでは俺と晶子だけで全てを表現する。
晶子が幸せな風景を叙情的に歌い、俺がそれを下支えする。
シンセを加えない方が良い、という桜井さんの判断は正解だったようだ。もっともそうでなくても俺は晶子と二人だけでこの曲を演奏したかったんだが。
最初に披露した去年のクリスマスコンサート以来、この曲では一切シーケンサを使っていない。文字どおり二人三脚でこの曲を演奏してきた。
今日はその集大成と言って良いだろう。
 透明感ある晶子のヴォーカルが緩やかに高みに上り詰め、最後の歌詞を優しく美しく締めくくる。
残るはあと僅か。ここが曲の出来を最も左右するところだ。
俺はギターの弦を丁寧に爪弾き、徐々にテンポを落としていく。
一呼吸分のタメを作ったところで、俺はストロークを鳴らし、晶子は木漏れ日差し込む森の中のようなハミングを響かせる。
俺はギターの響きが消えるまで左手をフレットの上から離さず、晶子のハミングが消えるのを待つ。
 全ての音の響きが消えた後、客席から大きな拍手と歓声が沸き起こる。終わった、か。
俺と晶子はチラッと顔を見合わせた後、客席に向かって一礼する。拍手と歓声は更に大きくなる。
俺は頭を上げた後、ギターのストラップから身体を抜き、スタンドに立てかけてから元の位置、即ち晶子の隣に戻る。
 全体が明るく照らされたステージ脇からマスター、潤子さん、桜井さん、青山さん、国府さん、勝田さんが出て来て、ステージ向かって左から桜井さん、
青山さん、国府さん、勝田さん、晶子、俺、マスター、潤子さんの順に並び、手に手を取り合って高々と掲げ深々と一礼する。
拍手と歓声が最高潮に達するのを感じる。
 そして頭を上げると、客席に向かって手を振りながらステージ左脇から退場する。客席のオレンジ色の照明が灯り、コンサートの本当の終わりを告げる。
だが、ステージ脇からこっそり覗き見る限り、誰一人として退場していない。拍手と歓声は収まる気配がない。

「皆様、本日はご来場ありがとうございました。お気をつけてお帰りください。尚、お忘れ物のないよう、くれぐれもお気をつけください。」

 アナウンスが会場に流れると同時に幕が下りてくる。拍手と歓声がようやく収束に向かい、ざわめきに変わっていく。
幕が完全に下りたところで、全員が顔を見合わせ、一様に表情を綻ばせる。

「やったな。」
「成功だ。」

 マスターと桜井さんは、短いが深い感慨の言葉を言い、固く握手する。
俺と晶子は顔を見合わせて笑みを浮かべる。晶子の笑みは満足感と充実感に満ちている。

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